2014年10月31日金曜日

イコライザー



予告編で19秒ですべてを片付ける男!みたいな宣伝に、
興味をひかれて、見てきました。
主演はデンゼル・ワシントンなんですが、
ワシントン無双!って感じで、超楽しかったです。
監督はトレーニング・デイとか撮ってるアントワーン・フークア
映画秘宝におけるギンティ小林氏が言うところの、
「ナメテタやつが実は殺人マシーンだった映画」の系譜で、
アジョシのような重厚さはないけど、いわゆるハリウッド的なことを
逆張りで全開で見せて、ギャグの領域まで昇華しているなー
と見ている間に思いました。
デンゼル・ワシントン演じるロバートは、
ホームセンターに勤務する超真面目なイイおじさん。
冒頭、彼が朝起きてから寝るまでの行動パターンが描かれるんですが、
そこでウルトラ几帳面な性格が窺い知れる。
寸分違わず、日々の生活を営んでいるのが、
なんかかっこいいんですよねーア(↑)コガレ
彼は不眠症で、深夜には24時間営業のダイナーで、
本を読むことを日課としています。
そのダイナーで出会うのが、
クロエ・グレース・モレッツ演じるロシアン売春婦。
彼女を売春生活のループから救ってあげようと決意し、
普段は真面目で、几帳面で、優しい彼が、
pimpであるロシアンマフィアに殴り込みをかけるところから、
映画全体のアクセルがかかる。
マフィアが「初老のおっさんが来るところじゃねーよ!」
と完全になめた態度を取り、彼女を奪還する交渉は決裂。
あきらめて帰るかと思いきや、
机に置いてある髑髏を丁寧に3人のマフィアと正対させ~の~
ドアを謎に何回もパタパタ開け閉めしてからの~
ミ・ナ・ゴ・ロ・シ!!!最高やないか!
物語中で彼の一貫した姿勢として、自分で武器を携行しません。
敵の武器や周りにあるもの、環境を利用して、
的確に急所を狙い、K.U.F.Uの精神でぶっ殺していきます。
例えば、この最初の殺しのシーンではコルク抜きを
下あごにぶっ刺して、グリグリするのがFRESH!
無事にクロエの救出には成功するんだけど、
ロシアンマフィアの親玉に目をつけられ、
ロバートvsマフィアの全面戦争が始まります。
敵のマフィアがまた好敵手でよいんですよねー
陰惨で慈悲のかけらもなく、相手に容赦ないし、
全身タトゥーだらけなんですが、
それを舐めるように見せるショットが超COOL!
それに対して、ロバートは常に敵の裏をかきながら、
ボコボコにしていくのが痛快なんだよな~
殺し屋のときは完全にその顔なんだけど、
普段の生活ではすげーイイやつで、そのギャップに惚れるし、
ゆえに「悪い奴は許さん!」という姿勢に共感しやすい作り。
ホームセンターで働いている設定が本作では重要で、
その設定を生かした様々な演出が素晴らしいです。
人を車の中に監禁し、排気口とホースをつないで、
社内へ排気ガスを充満させるDIY拷問装置。
強盗に対して報復する際には、
ホームセンターのハンマーを拝借して、それを売り場に戻す。
1個1個がK.U.F.Uにあふれてるし、笑っちゃうギャグになってる。
タンカー爆破なんて、ザ・ハリウッド!な感じなんですが、
ロバートがあまりに無双過ぎて笑えてくる。
(やってることデカい割に、実際の作業は省略してました。笑)
終盤はロシアンマフィアとホームセンターで決戦となります。
同僚を人質に取られますが、ロバートはそんなことで動じません。
直前に車で移動するシーンあるし、
マフィア側も30分で着かないと同僚を殺すって言ってるのに、
本人はバスで現場まで移動します。
笑かしにかかっているでしょ、これは?!
ホームセンターという彼にとっては殺しの道具が、
山ほど揃っているホームグラウンドで、
集大成と言わんばかりに、その場にあるもので殺しまくる!
最後の最後も銃かと思いきや…電動釘打ち機!笑
結局すべてをミナゴロシにして終わるんですが、
こんだけ殺人マシーンと派手に暴れたんだから、
別の町で別の人生を歩むかと思いきや、
またダイナーでいつも通り本読んどるやないか!
っていうボケも入れてきて最高でした。
この監督の作品をもっと見ようと思わされた傑作でした。

白ゆき姫殺人事件


こんな機会でもなかったら、
一生見ないだろうなと思って、出張の道中にて見てみました。
サスペンスとしてオモシロくないし、
かといって別に際立つ要素がある訳でもないし…
インターネットにおける匿名性と実名性が持つ、
それぞれの暴力的側面の怖さは確かに伝わってくるけど、
そんなこと、ほとんどの人がSNSやってる2014年に
改めて訴えかけられてもなぁ。
人の記憶が都合よく改ざんされるっていうことを
同じ場面を同じカット割りで見せつつ、
それぞれ異なる形で見せるのは素晴らしかったです。
あと映画内でワイドショーの番組のシーンがあるんですが、
大概、ドラマや映画でTV番組が流れるときって、結構雑じゃないですか?
本作では、このクオリティが異常に高い。笑
こんな番組ありそう~って思わせてくれます。(生瀬さん最高!)
細かい部分を凝ることで、
全体のリアリティが増す効果を発揮しているように思いました。
その一方で、インターネットの取扱いが雑というか…
本作はTwitterのタイムラインを大きくフィーチャーしてる訳ですが、
画面に文字を見せるのはダサいけど、100歩譲るとして、
それをもう一度ナレーションで読むという演出は本当にダサい!
いちいちうるせーよ!と言いたくなります。
確かにこういった事件が起こったときには、
本作が描くようなレスポンスがTwiiter上で存在するのかもしれないけど、
普段使っている僕が本作に違和感を抱いているということは、
観客は感情移入しにくい作りなのかなーと。
ラストの方は「インターネットは危険だ!」みたいな、
馬鹿な結論に見えちゃうのももったいなくて。
真犯人が明らかになるくだりも雑だし。
最後も「はぁ?」な感じだしなぁ。
全然オススメできないですが、菜々緒の最高に嫌味な感じと、
ダンカンのお父さん役が最高だったので、そこはオススメです。

2014年10月28日火曜日

誰よりも狙われた男



ジョン・ルカレが原作ということと、
主演のフィリップ・シーモア・ホフマンが亡くなり、
本作が遺作となったため、RIPの気持ちを抱きつつ、
心して鑑賞いたしました。
ジョン・ルカレ原作らしく、重厚なスパイアクションでした。
同じルカテものだと「裏切りのサーカス」のほうが
断然好きだなーとは思います。
舞台は現代のドイツで、
ホフマンは諜報機関のテロ対策チームのボスを演じています。
911以降、怪しい人物を徹底的に探すことを生業にしている。
そんな中で、イッサというチェチェン人が、
ドイツに不法入国したことを確認し、
彼の調査を行うことが前半のメインの話です。
このイッサっていうやつがいかにも怪しくて、
それを人権派弁護士の女性が助けてあげる。
そもそも彼がなぜドイツに来たかといえば、
亡くなった父の手紙に財産の約束があって、
預けてある銀行を探してやってきたという流れ。
この前半はイントロなんだけど、
結構ダラダラしてて、少し退屈でした。
怪しいヤツはすぐに捕まえて拷問!というのは、
TVドラマの24以降の定番の流れですが、本作では、
「こいつ泳がして、もっと大物捕まえようや」
というスタンスがフレッシュ!
一方で、それを危険だと思う警察内の勢力、
中立のようなスタンスのアメリカのCIAと、
内部での駆け引きも見所の一つになっています。
上記のスタンスは徹底されていて、
最後の最後まで泳がせ戦術を選択するんですが、
それが想定外の形で帰結していく。
まさにミイラ取りがミイラになるかの如し。
その瞬間のホフマンの叫びが凄まじくて、
ウルフ・オブ・ストリートの過剰な”Fuck”に対して、
本作は溜めに溜めまくってからの〜
渾身の”Fuuuuuuck!!!!!!!”が最高でした。
これが遺作だなんて信じたくない仕上がり。
映画用にもっと派手な攻防を描けたと思うんですが、
かなり抑制された演出で、現代の情報戦は、
ハイクオリティな盗聴、盗撮で成り立っていることが
よく分かるような作りになっていました。
シリアスなトーンの中でアクセントになるのが、
ホフマンの茶目っ気のある言動。
めっちゃオモシロい訳でもないんだけど、
急にギアを緩めてくるから、つい笑っちゃう。
俳優陣はかなり豪華布陣で、
レイチェル・マクアダムス、ウィレム・デフォー、
ダニエル・ブリュールなどなど。
画面自体に派手さが無い分、
俳優の顔を含めた演技が重要な訳ですが、
十分に応えうる迫力でした。
重厚なサスペンスが見たい人にはオススメ。

2014年10月27日月曜日

まほろ駅前狂騒曲



前作はTV録画で見て、結構好きだなーと思い、
元の小説を読んだら、更にハマってしまい、
3冊出てるまほろシリーズはすべて読んでしまいました…
2作目はTVドラマシリーズで大根監督によって、
映像化されていますが、未見のまま鑑賞いたしました。
本作は3作目の映像化で、監督は大森立嗣氏。
1作目も監督を担当していて、
他にはさよなら渓谷とかも同監督作品。
かなり好きな要素が揃っている作品なんですが、
今イチ…っていう結果でした。なんでなんだよ!
先に原作を読んでいたことも影響したんですが、
改訂したところが、あんまりうまくいってない印象。
もともと原作自体も散らかっているんですが、
本だとその雑多感こそ「まほろ感」という形で、
落とし込んでいるので、好きだったんですよね。
一方で、映画化にあたっては、
膨らませるところと端折るところを、
間違ってしまったかなーと個人的に思いました。
ここから先はある程度前作を見ている、
もしくはまほろシリーズを読んでいる方しか、
分からないような書き方しますが、ご容赦ください。

行天が多田便利軒にやってきて2年後が舞台となっていて、
行天が遺伝子上の父である「はる」という子の子守りをする話と、
HHFAという無農薬野菜を売る団体にまつわる話の
主に2本立てで構成されております。
今回は行天中心の話が多く、今まで謎だった過去に、
上記2つのストーリーから迫っていきます。
何が不満だったかって、この2つのエピソードのバランスです。
確かに野菜団体の話の方が、
派手な要素が原作に多かったのは事実。
それで、その風呂敷の広げ方が良かったらいいんだけど、
安っぽいんだよなー全体的に。
背景説明が不自然なセリフ説明だとか、
終盤はバスジャックが起こるんですが、
ここのリアリティラインの設定も本当に不可解。
見た目は派手に見えるけれど、浅くてつまんない。
このまほろシリーズは2人がバディとして、
働いている瞬間が一番輝いているのに、
その要素がほとんどないのも至極残念。
それが前述したバランスの話にも直結するんですが、
この2人はそれぞれ「子ども」に対して、
過去の経験から抱える思いがある訳です。
ゆえにこの2人が子どもを預かるということは、
ただ単に子守りをするっていうことではなくて、
業を肯定する作業なんですね。
その部分も描いているんですが、
もっと掘り下げようあったんちゃうかなーと思いました。
それこそバディ要素と絡めて子どもの扱いに
四苦八苦する姿はもっと見せて欲しかったです。
ただ、1個1個の小ネタはやっぱりオモシロくて、
マジでくだらないんだけど、
2人のじゃれ合いは見てて微笑ましくてしょうがない。
永瀬正敏以外の脇を固める俳優陣も良くて、
特に監督および大森南朋の父である麿赤兒の
ふんどし姿は一生忘れないショットでした。笑
何気ない日常の機微のオモシロさを描いた作品なのに、
変に受け狙いで非日常を無理矢理つめこんだ結果、
歪みが出てしまうという誰も得しない映画になったことが、
本当に哀しくてしょうがないと思った作品でした。

2014年10月25日土曜日

28日後…



最近ゾンビ成分足りないな〜と思い 、
見てみましたよ、ダニー・ボイル監督作品。
単純なゾンビ映画というより、
ゾンビを使ったヒューマンドラマって感じで、
ダニー・ボイルっぽい味付けされてんなぁという印象。
特に音楽が特徴的で、おどろおどろしい音楽ではなく、
ブリティッシュロックが、たくさん使われていました。
TVドラマのウォーキング・デッドを、
シーズン2まで見ているんですが、
もろに本作の影響下にあると思います。
ただ、本作のゾンビは「速いゾンビ」なので、
そこは少し違いますが…
基本的に追い込まれてる状況が続くんですが、
ときおり見せる息抜きシーンが好きでした。
トンネル内での爆走やスーパーでの買い物などなど。
絶望の中に見る一瞬の安らぎ。
終盤にかけては、軍が統制しているエリアに逃げ込むんですが、
ゆるさは一切なくて、主人公が仲間を救出するシーンは、
上半身裸で狂気炸裂させまくりで最高でした。
エンディングが結構キッチュな仕上がりで、
ゾンビ映画っぽくないなーと思っていたら、
別エンディングもDVDに付いてて、
そっちはハードな形で終わっていました。
僕はキッチュなやつの方が好きでしたが、
気になる人は自分の目、耳で確かめてみてね!

2014年10月21日火曜日

マンダレイ



ラース・フォントリアー監督作品。
彼のフィルモグラフィーを追いかける一環で見ました。
ドッグヴィルの続編なんですが、
まーこれも例のごとくキツい内容でした。
暴力やSEXはかなり抑制されているものの、
本作はテーマ、メッセージが痛烈過ぎて…
構造フェチとしては最高に興味深い作品。

ドッグヴィルの主人公の女性が、
ギャングの父と、ある村を訪れたところ、
とっくに無くなったはずの奴隷制度が存続している。
女性は理想に燃え、その村に自由と民主制をもたらし、
奴隷を解放しようと意欲的に働きます。
最初はうまくいくように見えるんですが、
徐々に歯車が狂ってきて…という話。
ドッグヴィルと同様、演劇の舞台のように、
広いところにセットが設けられ、
白線で区切られている空間で話が進んでいきます。
ざっくりまとめちゃうと、
余計なお世話だバカヤロウ!な話なんですが、
果たしてそれだけなのか?と考えさせる作りなのが、
ラース・フォントリアー監督ならでは。
両方の良いところと悪いところを見せて、
物語上は結論が出るんだけど、
どうしたって考えさせられるんだよなー
奴隷制度が悪いものってことは、
ある種、思考停止で受け入れる事実だとは思うんですが、
奴隷側がそのロールを積極的に受け入れ、
その生き方を自ら選択していたとすれば?
それと同時に、主人公が提示する自由や民主主義が、
絶対的な正解ではないってことを提示してくる。
最初と最後のむち打ちの対比はヤラレター!と思いました。
エンドロールでDavid BowieのYoung Americans が流れる中、
過去のアメリカの映像が流れることから、
アメリカの対テロ戦争へのカウンターを意識している。
このあたりの内容については、
荻上チキさんの素晴らしい解説ありましたので、
見終わったら、これも読んでみると良いと思います→リンク
ドッグヴィル見た人は必見。

Book (2014 September)


教養としてのプロレス
今、すべてのエンタメの中でもっともオススメしたいのは、
東京ポッド許可局です。
マキタスポーツ、サンキュータツオ、プチ鹿島という
芸人3人があーでもない、こーでもないと、
屁理屈をこね倒すポッドキャストなんですが、
まーそれが無類にオモシロくて色んな人に薦めております。
その一員であるプチ鹿島さんの新書。
プロレスの考え方を通じて見る世の中は、
こんなにオモシロいのか!と改めて思いました。
実は僕もかつてプロレス野郎でして、
適当に部活をやっていた中学時代に、
親父が録画していた親日本プロレス、ノアのTV放送を
血眼で見ていた時代がありました。
そんな頃もレミニスしつつ、
半信半疑のスタンスによる見立ての数々に興奮。
唐揚げを食べる人生を僕は選びたいと思いました。


短夜明かし
佐々木中さんの本は出れば必ず買うようにしており、
今回は小説でした。まず装丁が鬼カワイイ。
中身は短編集で、恋愛ものが収録されています。
彼の文章はかなり詩的というか、
情景描写がこれでもかと続くし、その文体もかなり独特。
プロットじゃなくて、表現を楽しむことを知ったのも、
彼の小説のおかげかなと思っています。
前置きは長くなりましたが、
これまでの小説の中でも、格段に読みやすくなっています。
とくに好きだったのは「親知らぬ」という話。
佐々木中の小説入門編としてぜひ!


日本人は民主主義を捨てたがっているのか? 
映画監督である想田監督の著書。
想田さんの映画はどれも非常におもしろいので、
まずそっち見て欲しいんですが、本も興味深かったです。
政治について考えて、能動的に行動しないと、
これまで享受してきた自由を失うかもしれないよ、
という提言が多く見られました。
「気分だけは一家言持ったコンシューマー」が、
あまりにも溢れ過ぎて、政治に対しても同様のスタンスになっている、
その気持ち悪さや危険性は共感しました。
ただ、この本の内容を鵜呑みにするのではなく、
しっかり自分で考えるきっかけにすれば良いと思います。



毛深い闇
園子温監督の書き下ろし小説で、
女子高生と殺人事件を絡めたホラーサスペンス青春物語。
最近はTVにも結構出てるし、
TOKYO TRIBEや新宿スワンといったメジャー作品が多い中で、
これまでの園さんの世界観が限りなく表現されています。
かなり青春要素が強いのが印象的で、
がむしゃらに走り続けるんだよ、バカヤロー!
っていうメッセージ性が好きでした。
「非道に生きる」は名著なので、未読の方はそちらも是非。


映画術 その演出はなぜ心をつかむのか

今月、もっともプッシュしたい本です。
映画監督の塩田明彦さんの講義を書籍化したもので、
以前、タマフルの本特集でも紹介されていました。
本作では、映画を見ていて、
そこまで気にしない動線、視線、顔などに関する、
演出について塩田監督なりの分析が書かれています。
そのすべてが目から鱗でした。
計算され尽くされた演出の数々が紹介されていて、
そのどれもが興味深かったです。
見たことない映画が多かったんですが、
読むとどうしても見て確認したくなるやーつ。笑
これきっかけで成瀬監督の「乱れる」も新文芸坐で見ました。
講義を文章化しているので、とても読みやすいので、
映画好きには超おすすめ!


映画も見たので、原作も読んでみました。
岩波と新潮の両方から訳書が出てるんですが、
新潮の方を読んでみました。
映画とほとんど変わらない内容で、とても好きでした。
児童文学とカテゴライズされてますが、
十分大人向けの内容だなぁと。
しかも、これをあの形で映画に落とし込んだ、
ジブリスタジオはやっぱスゲーと改めて思いました。



「あかんやつら」「天才 勝新太郎」でハマって、
著作を読み進めてる中で、新作が出たので読みました。
かなり痛烈な時代劇評で、そういう状況なのか…
と非常に勉強になりました。
ただ、過去のハードな時代劇が良いという前提なので、
そこに乗れない人はいるかも。
時代劇に関わらず、クリエイティブな産業にまつわる、
構造欠陥の話に置き換えれるので、
時代劇好きじゃない人にもオススメです。

2014年10月19日日曜日

泣く男



アジョシを撮ったイ・ジョンボム監督最新作。
気合い入れて、初日に見てきました。
多少、話運びに難があるものの、
前作同様のハンパなきアクションによって、
すべてを凌駕している素晴らしい作品でした。
韓国映画のアクションレベルは、
とんでもない領域に突入しているように思います。
この映画、オープニングがとても好きで、
それだけで何回も見たくなるくらい今年ベスト級。
始まって、黒人女性歌手がナイトクラブで、
ライブショーを行うところから始まるんですが、
歌うのがSadeのSmooth Operator!
ウォっ!マジか!って意表を突かれたのも束の間、
主演のチャン・ドンゴンと女の子の他愛もないやり取りから、
実は彼が殺し屋で取引中の奴らを皆殺し!
部屋の外で物音がしたから、反射的に撃ちまくったら、
扉の向こうにはさっきの女の子がいて血を流している…
タイトルどーん!はい、最高!
この時点で心をギュッと鷲掴みにされ、
あとは主人公の殺し屋と同様、物語に身を委ねるばかり。
話としては冷徹な殺し屋が誤って、
子どもを殺してしまった罪悪感から、
贖罪の気持ちで子どもの母親を悪の組織から守るというもの。
冒頭しかりなんですが、アクションがとにかく凄まじい!
チャン・ドンゴンはアメリカの特殊部隊で訓練も行っているそうで、
それはもうハンパなき迫力でした。
アジョシは肉弾戦重視だったのに対して、
今回はガンアクション重視で銃弾の雨あられ。
ハイライトはマンションでの銃撃戦ですね。
殴り込みかけて、得意のナイフアクション見せつつ、
そっから板挟みの状況に陥って、
ショットガンをとにかく撃ちまくる!
(銃弾を避けるのに、体を細めてタイヤ部分に隠れるのとか、
なんかリアリティを感じて好きでした。笑)
どこを取っても素晴らしいの一言に尽きます。
登場人物はほぼ漢なんですが、全員がイイ顔してんすよね〜
韓国映画はここも強みだと思います。
チャン・ドンゴンは丸2日寝てない、
渡辺いっけいみたいな顔だし。笑
漢だらけの中で紅一点のキム・ミニもまた良くて。
子どもを殺された母役なんですが、
仕事は万事うまくいってるものの、
離婚時に子どもを仕事のために手放した、
という業の背負い方は切ない。
子どもと母を繋ぐ「ダニーボーイ」は号泣メーン!でした。
この業こそが、冷徹な殺し屋である、
チャン・ドンゴンの過去とリンクしていく話の展開も好きでした。
この2人は計3回しか劇中で顔を合わせなくて、
彼が殺し屋であるということを知らないまま。
マンションでの一線を越える/越えないところが、
きっちり動線で表現されてる演出も素晴らしかったなぁ。
最後の1回は悲劇的なんですが…
ただ、話運びをもうちょっとシンプルにしても良かったのかなー
とは思いました。USBがマクガフィンなんですが、
それにしても終盤の雑な扱いがなんだかなぁって感じでした。
泣く男というタイトルの意味は最後に判明するんですが、
ここで初めて中盤にあるシーンが回収されて、
「あぁ…」という気持ちになりました。
劇場の大きなスクリーンで、
凄まじいガンアクションを目撃すべきだと思います!

39 刑法第三十九条


最近、精神病にまつわる映画を、
期せずしてたくさん見ているというのもあり、
気になっていた本作を見てみました。
森田芳光監督作品。
もう亡くなって3年というのが信じられませんが、
膨大なフィルモグラフィーがあるので、
1本1本楽しみたいと思います。
本作は刑法第三十九条を題材にしたサスペンスです。
実際の三十九条は以下の通り。

第39条
心神喪失者の行為は、罰しない。
心身耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

要するに、精神を病んだ人は法的に罪に問わないってこと。
堤真一が殺人犯役で、二重人格を持っていて、
精神鑑定の結果も、彼が二重人格だと立証する。
そんな中で鑑定助手の鈴木京香だけが疑いを持ち…という話。
なんとも言えない味わいというか、
この法律に中指立てる内容なんですが、
その方法がめっぽうオモシロい!
加害者であり、被害者でもある人間の執念が起こす、
あエキセントリックとも言える手段。
それが押入れに入っていた、
大量の本から分かる演出が素晴らしいなーと思いました。
ラストの法廷でのバトルも秀逸。
実際に自分が関わる可能性は低いかもしれないけれど、
この法律について考えるには十分な映画。

2014年10月18日土曜日

復讐者に憐れみを



パク・チャヌク復讐三部作の一番最初の作品。
復讐連鎖系の話でございました。
その後の2作に比べると、かなりシュールでしたし、
ギャグっぽい部分も多いんですが、
やはりどうしようもない結末を迎える。
耳の聴こえない青年が主人公で、
彼のお姉さんは病気で腎臓が悪いため、
移植手術をなんとか受けさせようと懸命に働いたところ、
臓器ブローカーに騙されて、移植代を根こそぎボラれる。
そこから誘拐を彼女(ペ・ドゥナ)と企てるものの …という話。
はじめは皆が幸せな形で解決しそうになるんだけど、
1つのきっかけからすべてが悪い方向へと向かっていく様は、
「なんでこんなことに…」と言いたくなること山の如し。
拷問スタイルとか殺し方が役柄によって異なるんですが、
どれもフレッシュでおもしろかったなー
青年は耳の聴こえない役なので、
躍動感全開でど突き回すのがナイスでした。
ソ・ガンホは電気屋の社長役なんですが、
それを生かした電気ショック、
アキレス腱をピッ!としちゃうのがナイス。
「目には目を、歯に歯を」という、
ハンムラビ法典の原理では、
最終的に殺し合いしか産まないなーと思った作品でした。

ニンフォマニアック vol.1



ラース・フォントリアー監督最新作。
メランコリア、アンチクライスト、ドッグヴィル、
ダンサー・イン・ザ・ダークと色々見てきましたが、
劇場で見るのは初めてということで非常に楽しみにしていました。
本作は2部に分かれていて、その前半なんですが、
すでに特濃でございました…
お話の進行具合でいうと、
前半なので煮え切らない形で終わるものの、
この映画が持つ濃厚な性の臭いを十分に堪能できます。
ここまでtimpoとmankoが露になってる様子を、
映画で見たのは初めてかも知れません…
冒頭から狂気の片鱗を見せていて、
1分ぐらい何の映像もスクリーンに写らない。
水のしたたる音がひたすら鳴っていて、
はじめはオシッコの音かな…って思ってたら、
水の滴る映像がインサートされて物語がスタート。
道ばたに倒れているシャルロット・ゲンズブール演じる、
ジョーという女性をおっさんが助けたところで、
ギターリフガンガンのメタルが鳴り響く!狂気!
そこからがジョーが自らのSEXに狂い倒した半生を、
おっさんに語るという回想スタイルで話が進んでいきます。
本作の特徴として、過剰なまでの説明演出が。
日本だと近年の大林宣彦作品に見られる
「それ要る?」っていうテロップとか映像が、
これでもか!と合間に挟まれていました。
完全にギャグの領域で、これが逐一最高なんですねー
処女喪失のピストンカウントや、
おっさんとの話の中で動物の例えが出てきたら、
その動物の映像をインサートしてくるとか。
一番オモシロかったのは、和音の構成と、
ジョーがそれぞれの男性に求めるSEXを対比させるシーン。
「く、く、くだらね〜」と思わず言いたくなる。
ジョーの話の聞き役であるおっさんも頭おかしくて、
彼女がいかに男を誘惑するかを、趣味の釣りと対比して、
嬉々として語る、セッションさながらのやり取りは好きでした。
ただ、後半にかけて、この2人のトークが
物語が進む上でのブレーキになっているようにも…
そもそも回想で起こっている事態が、
あまりにもショッキングなことが多過ぎて、
2人の哲学的な話が頭に入ってこない。笑
早よ次を見せんかい!という下劣な欲望に駆られる。
あと本作のMVPはユア・サーマンですよねー
ジョーがSEXした男性の奥さん役なんですが、
その男性が家族を置いて、ジョーのところへ来たために、
ユア・サーマンとその子ども3人がジョーの家に殴り込み!
数々の悪態がどれも最高で、
「さぁーこれがベッドよー
セラピーのときに役立つから覚えときなさ〜い」とか、
去り際の絶叫は「たまんねーな、おい!」って感じでした。
ひたすら欲望としてのSEXを続けてきたジョーが、
愛に近づいたところで終わるので、
物語全体がどういったテーマになるかはまだ分からないですが、
vol.2も非常に楽しみであります!

2014年10月16日木曜日

特攻大作戦



映画秘宝のジェームズ・ガンのインタビューで、
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
プレゼンするときに、まっさきに挙げた作品とのことで、
見てみました。ロバート・アルドリッチ監督作品。
古い戦争映画かーと思いつつ見てみたら…
最高やないか!!最高やないか!!(2回言ってみた)
原題はThe Dirty Dozenで、
刑務所にいる重罪人達12人を鍛え上げて、
ナチスをぶっ倒す集団と化し、暴れまくる!
このプロット聞いただけでワクワクしませんか?
筋金入りのならず者達を、
鬼少佐役のリー・マーヴィンが鍛え上げる!
単に厳しいだけじゃなくて、
アメとムチを上手い具合に使い分けていく。
とくに女性を街から呼んで、
パーティーするシーンは最高だったなぁ。
男女をカットバックで見せていき、
ダンスの何とも言えない無骨さがイイ!
あくまで極秘作戦なので、バレる/バレない演出もあり、
そこでの将軍なりすましのくだりが最高。
終盤は凄まじい銃撃戦の応酬!
ラストにはとんでもない爆発まで用意されていて、
合成の無い時代にここまでやるってハンパなきこと!
と思ったりしました。
漢達に捧ぐ不滅のクラシック!

2014年10月14日火曜日

GONIN



先輩方にオススメされまくってたけど、
全然見てなかったシリーズ。とんでもない作品やった…
こんなに漢の色気に溢れてる素晴らしい邦画があるだなんて。
今のキ○タマ抜かれた邦画を作ってる人に煎じて飲ませたい!
北野武監督作品に限りなく感触は近いんだけど、
この作品は鋭角に狂っているような気がします。
バブルはじけた直後の時代に、
金に困った5人のメンバーで暴力団の事務所へ強盗して、
殺して、殺されてというお話。
そもそも出てる俳優が選りすぐりの人ばかりで、
主演の佐藤浩市を筆頭にモックンとか、
根津仁八、竹中直人、椎名桔平、ビートたけしなどなど。
本当に出てくる人達が皆かっこいい!
It's a man's, man's, man's world.
結構長回しのショット多い中で、
狂気に溢れた演出を随所に挟んできます。
ビートたけしが演じるヒットマンが出てきてからは、
殺しの速度が加速していき、ラストまで怒濤のごとく駆け抜ける!
全部本当に好きなんだけど、
特に竹中直人の家に帰ったところは相当グッときました。
来年になんと続編が公開されるみたいなので、
それも楽しみなところでございます。
http://gonin-saga.jp/

親切なクムジャさん



パク・チャヌク監督作品。
イノセント・ガーデンでハマり、
遅ればせながらオールド・ボーイも見たりして、
粛々とフィルモグラフィーを追いかけています。
本作は彼の復讐三部作と呼ばれる作品群の最終作。
クムジャさんという女性の復讐にまつわる話です。
彼女が13年の刑務所での服役を終えたところから、
物語は始まり、罪をなすりつけた男をぶち殺すお話。
服役から始まるのがオモシロくて、
刑務所ではめっちゃ親切。
恩を売ることで出所後の復讐計画に利用する。
復讐と贖罪は表裏一体で、クムジャさんは加害者でもあり、
被害者でもある部分なのがオモシロかったですね。
また最終的な復讐の方法が被害者の気持ちを、
最大限に利用したおぞましい方法…
そこからのラストまでの流れは、
許される/許すとは一体何なんだろうと考えさせられました。
豆腐とケーキを使った演出も興味深かったなぁ。
次は「復讐者に憐れみを」を見ようと思います。

2014年10月13日月曜日

ブラックブック



先日、某パイセンの結婚式だったんですが、
その人に幾度となくpushされたにも関わらず、
スルーしていました。ポール・ヴァーホーベン監督作品。
ジャケ写でナチものかーぐらいの感じだったんですが、
かなり複雑な事態の話で、サスペンスとしても
オモシロいのはさることながら、
ナチものとしてのバランス感覚がfreshだなーと思いました。
主人公はオランダにいるユダヤ人の女性。
第2次大戦当時、オランダはナチス軍占領下。
当然の如く、彼女は迫害の危機にさらされている中で、
オランダ軍に潜入し、スパイ活動するものの…という話。
前半はスパイものとして、彼女が活躍するのが中心。
中盤から後半にかけては、スパイとして行動したことによる、
苦難が待ち構えている作り。
いかんせん、彼女は信じた人にことごとく裏切られるのが辛い。
ナチスものの場合、歴史的背景から考えて、
ナチスが100%悪という形で描かれることが多い中、
本作は「必ずしもそうではないのでは?」
という問題提起がされています。
確かにナチスは最悪で決して良い訳ではないんだけど、
そのシステムの中で適合し、
生き延びるための選択肢だとしたらって考えられませんか?と。
一個人の信念ではなく、個人を取り込むシステムに問題があり、
でも、そのシステムに抗うと、どうしようもない。
とくに終戦後のオランダの描写は、
その辺を考えさせられる作りになっていると思います。
(歴史に残る糞尿ぶっかけシーンが辛い…)
過去として客観視して、それは悪だって言うのは簡単なんだけど、
果たして、地獄のような環境の中で自らの命を投げ打ってまで、
理想、信念のもと行動できるかっていうねー
ラストに彼女が戻る場所がまたさぁ〜イスラエルかよっていう。
ユダヤ人が受け入れる苦難って何なんだ。。
この辺はたくさん勉強しないとなーと思います。

イフ・アイ・ステイ 愛の還る場所



大阪滞在の隙間の時間に見ました。
クロエ・グレース・モレッツが出ているというだけで、
その他の情報はとくにないまま見たんですが、
クロエの甘酸映画としては100点だし、
死が日常に切迫したときに、人はどうするかという
個人的に好きなテーマであったので、好きな作品でした。
見終わってから日本の公式HP見たんですが、
もうゲンナリしまくり…
そんなに泣きたいの?みんな?って感じ。
映画を見て「泣いた」っていうことが悪いとは思わないけど、
それを売りにしてんの本末転倒。
日本国内の映画ならまだしも、海外の映画持ってきて、
勝手に「泣ける」という文脈を組み込むのは気持ちが悪いと、
ここで改めて言っておく!

クロエは高校生でチェロのプレイヤー
父は元パンクロッカーで、バンドしていたけど、
子どもを育てるために先生に転職。
母はその追っかけというパンク家族。
ある雪の日に家族で車で出かけていたところ、
交通事故に遭ってしまう。
目を覚ますと、幽体離脱状態で、重体の自分がそこに…
事故までのクロエの生活を回想型で紹介しつつ、
彼女の事故後の周りの人々を交互に描いていき、
人生とは何ぞやということを説く物語です。
クロエは幼い頃から、ひたすらチェロを演奏している女子。
その彼女にアダムというイケメンロッカーが、
恋におちて、交際が始まっていきます。
物語の半分くらいは2人の恋にまつわる話。
それがまー甘酸っぱい!
それぞれ夢を追いかけるバンドマンとその彼女という、
非常にベタな色恋沙汰なんですが、無償に愛おしい。
ジャンルは違えど、音楽が好きという共通点をもって、
音楽ジャンルのdiscommunicationが解消されるのもナイス!
この通り、過去の回想は甘酸っぱいんだけど、
事故った現実は受け止めるのが辛いくらい悲惨な出来事が続く。
クロエ自身が幽体離脱している設定を入れることで、
昏睡状態の彼女が生きるか/死ぬかの選択する部分を
可視化することで、より分かりやすくなって良かったです。
哲学的な話で、いったい何のために生きてるのか?と。
自分の夢(理想)のためなのか、
誰かと生きることが大切なのか、とかね。
それは事故以前の回想でも、
人生が選択することの連続ということを描いているがゆえに、
事故後の生きる/死ぬの究極の問いは全てに繫がっている…みたいな。
当たり前のことなのかもしれないけれど、
改めて直面させられると、そうだよなぁと考えさせられました。
物語内で生きる/死ぬが、ある程度フラットに描かれてるんですが、
本人の思いはさておき、家族(とくにおじいちゃん)が、
そんなフラットになる訳なくね?とは思いました。
孤児としては生きられない→アダム、チェロのこと
という形で主体的な人生を歩むことの大切さに気づく。
それと表裏一体なのが誰かと生きることだったりねー
ラストの唐突感も好きでした。
人生の選択の話で興味深く、楽しく見れました。

精神



想田監督作品。
友達にも何回も薦められていたんですが、
内容を少し知っていた分、躊躇していました…
当然のことなんですが、最高にオモシロかったです。
普段接することがない世界を、
特に説明もなく、ひたすら見せてくれるという、
観察映画スタイルは見ている間に、
色んなことを考えさせられました。
岡山にあるグループホームのような精神病院に通う、
様々な患者の言動を捉えていくんですが、
どれも本当に強烈な話ばかりで。。
少し変な行動を取った人を見たときに、
「この人は頭おかしいから」と片付けるのは簡単やけど、
大きな枠に当てはめた、ひとくくりの議論は、
なにも解決しなくて。病院の先生みたいに、
1つ1つ真摯に向き合わないとな〜と思いました。
終盤の統合失調と向き合うオジさんの話は、
確かにと溜飲を下げたんですが、
果たして身の回りにいたら…
と考えたときに、その思考に至れるのか?
想田監督の映画は見終わった後に考えることが楽しいので、
関連書籍や映画を見たり、読んだりしようと思います。

2014年10月11日土曜日

シュガーマン 奇跡に愛された男



ずっと見ようと思っていたけど、放置していた作品。
Macbookも新しくなったので、新幹線にて。
嘘のような本当の話のドキュメンタリーなんですが、
最高にオモシロかった!なんで劇場で見なかったのかと後悔…
人目も気にせず、泣いてしまいました。
ロドリゲスという70年代にデビューし、
あまり売れなかったミュージシャンのアルバムが、
南アフリカで爆発的に売れていて…というお話。
デニス・コフィーに気に入られてというのが、
すげーなと思ったし、それで売れなかったという悲劇。
時は経ち、アパルトヘイト真っ只中の南アフリカ。
検閲が平気でまかり通る中で、
彼の歌声が国民を勇気づけていたという、
ドラマチック過ぎるストーリー。
南アフリカ内では彼は死んだことになっていたんですが、
CDのライナーノーツとある音楽ライターの出会いによって、
事態は急速に進展していきます。
デトロイトでつつましく生きている姿が発見される。
このロドリゲスという人の聖人っぷりたるや。。。
粛々と人生を生きていて、たまたま歌に出会って、
その才能があったから歌っただけみたいな。
彼が見つかってから、実際に南アフリカでコンサートを行い、
I wonderという曲を歌い始めたところで、
歌詞の内容と彼の状況がリンクして号泣メーン!
サントラをソッコーで買いたいと思います。

レッド・ファミリー



東京国際映画祭で観客賞を受賞したというのを以前に聞き、
タマフルの課題作品になったので、見てきました。
中盤くらいまではチープやなぁと思ってたんですが、
終盤にウルトラC級の演出があって、
それに心を鷲掴みにされてしまいました。
見終わってから、キム・ギドグが脚本と知り、
あぁっ…て感じでした。(彼の過去作も見ないとなんですが…)
お話としてはスパイもので、
ある偽装家族の正体は北朝鮮のスパイ集団。
彼らは韓国社会に溶け込みつつ、
北朝鮮から日々送られてくる指令をこなしている。
彼らには事情があって、北朝鮮で家族が人質の状態。
そんな中で、隣に住む家族と触れ合い、
自らの家族というものに思いを馳せつつも…という話。
冒頭、仲の良さげな家族が、
仲睦まじく食事、ドライブをするシーンから始まる。
何気ない家族の日常かと思いきや、
家に帰ってきた瞬間に、規律の厳しい工作員の顔に。
工作員としての上下関係に変わるので、
今まで優しかった奥さんがビンタしまくりで、
めっちゃ怖いという設定でツカミはOK!
前半はこういったスパイギャップで笑わせつつ、
彼らの内情が明らかになっていく作り。
で、隣に住む家族がいて、構成は核家族+祖母。
夫婦仲は悪く、四六時中喧嘩ばかりしている。
その様子を見た祖母と息子があきれる、
という構図を何度も見せられます。
単純に見れば、羨ましくも何ともない訳ですが、
家族とずっと会えずに、スパイをしている彼らからすれば、
喧嘩できることの素晴らしさを感じてしまう。
終わりの見えないスパイ活動、
家族も無事かどうか分からない、
っていう状況だからこその思いは感情移入はしにくいけど、
切ないなぁと思いました。
スパイものなので、定番のバレる/バレないシーンも。
ここが最高で、特に奥さんの身もふたもない発言と、
それにソフト(?)に反論する工作員の発言が何とも。
それはバレるやろ!っていう。笑あ
中盤から後半にかけては、班長の単独行動が裏目に出て、
シリアスな方向へと物語はシフトしていきます。
究極の選択をしなきゃいけない状況まで追い込まれていく。
アリランの歌を挟みつつの、
「家族」を思うがゆえの彼らの行動が切ないし、
ラスト手前の演出は本当に素晴らしかったなぁと。
それは反則だぜ!と泣きながら思いました。
本質的には何も解決しないんですが、
それをすべて代弁するかのような女の子の表情が
また良かったんだよな〜
ブラックユーモアに溢れつつ、
家族の大切さを改めて感じるという、
不思議なバランスの映画でございました。

2014年10月10日金曜日

サイド・エフェクト



スティーブン・ソダーバーク監督作品。
先日見たマジック・マイクが本作の前作にあたるんですが、
こっちの方がソダーバークっぽいなぁと思いました。
タイトル通り、薬の副作用を巡ったサスペンスです。
俳優陣が豪華で、
ジュード・ロウ、ルーニー・マーラ、チャニング・テイタム、
キャサリン・ゼタ・ジョーンズがメイン。
抗鬱薬の副作用が原因で、夢遊病となり、
マーラが旦那であるテイタムを殺す事件が発生し、
そこから薬の副作用を巡る駆け引きが行われていきます。
精神的な病を薬で抑えること自体に、
僕自身は抵抗があるんですが、その考えを強化するような内容。
サスペンスとしては、仕返しの仕返しで、
最後にねじ伏せるのは誰だ?って感じで楽しめます。
途中、医師が精神を病んだように見えてからのぉ〜
っていう展開は、精神病の境界線が非常に曖昧である点と、
サスペンスとしての迫力を両立していて良かったです。
前情報なしで見ることをオススメします。

2014年10月8日水曜日

ウェイキング・ライフ



リチャード・リンクレイター監督の、
フィルモグラフィーを追う流れで見ました。
心に残って離れないBeforeシリーズよろしく、
「おしゃべり」を描く才能あるなぁと改めて。
(Beforeシリーズのジェシーとセリーヌも登場!)
本作は主人公が夢の中で、
色んな人から哲学じみたことを、
ひたすら話しかけられるという奇怪な映画です。
そのテーマで劇中の人物が語るときには、
「確かに」とか、「それはちゃうやろ」とか思うんですが、
見終わったあとに何にも残ってない。笑
でも、人間の夢なんてそんなもんだし、
夢=人生みたいな物言いがずっと言及されていたので、
そういう意味では、この感触は監督の意図したものなのかも。
哲学的な内容の興味ある無しは大きいと思いますが、
かなり平易な形で表現してるし、
あくまで会話という形を取っているので飽きない。
インセプションのような夢の多層構造の設定も良かったと思います。
本作はアニメなんですが、
この画の製作方法が実写で撮って、
それをデジタルペインティングでアニメ化してるらしい。
画面がずーっと小刻みに揺れてて、少し気持ち悪いんですが、
trippy表現ってことで納得してました。
Boyhoodもあと少しで公開なので、
それまでになるべく彼の作品を見ておきたいところです。

FRANK



テアトル系でPUSHされていたので、見てみました。
あの強烈なお面のvisualが印象的ですが、
中身はインディーロックバンドのシットリした話でした。
バンドメンバーものと言えば、
Jersey Boysと似たような話だけど、
本作は2014年現在の若者によるバンドの栄枯盛衰を描く。
今ならではの設定(SNS等)を生かしているし、
なにより物語内で栄光を掴む瞬間は一瞬っていう…
主人公はサラリーマンとしても働きながら、
ミュージシャンを夢見るジョンという青年。
お面をかぶったFRANKが率いるバンドのキーボードが、
突然自殺未遂を起こしたことで、
その代役としてジョンがバンドに加わることになります。
メンバーとなったジョンはアルバム作りに参加。
その様子をYoutubeにアップロードしたことで、
バンドの人気が急上昇。
SXSWというフェスに参加できるようになるものの…という話。
エンドロールの冒頭にdedicated Chris Sieveyとなっていて、
誰かなーと思い、wikiっちゃったところ、
本作はSieveyのFrank Sidebottomに、
インスパイアされたとのこと。
バンドの登場シーンが強烈で、ドラム, ギター, テルミンという、
謎の構成で、奏でる音楽がかなり尖っている。
そこへボーカルのFRANKの歌詞が乗り、まさにケイオス。
ジョンがメンバーに加入してまもなく、
森の中でのアルバムを制作することになります。
ジョンはひたすら売れたいと思っていて、
POPな音をケイオスなバンドに取り込もうとする。
この対立およびFRANKのオモシロさが繰り広げられる。
特にオモシロいのはテルミンのクララ。
ジョンが「このメロディどうだろう?」と
FRANKに提案して、彼も気に入るんだけど、
「いや、ここは半音ずらして、音色も変えて…」
といった感じで邪悪なサウンドへ変換していく。
終始くだらないことばかりなんだけど、
もう、あのお面はズルくて、
日常における異物感がハンパじゃないから、
ちょっとしたギャップで笑ってしまう。
アルバムが完成すると、マネージャーが自殺という、
急にトーンダウンした話になる。
この辺から物語全体に何とも言えない不穏な空気が漂う。
ジョンが勝手にYou tubeへアップロードしていたことに、
メンバーは怒るものの、より多くの人に聞いてもらえることに
FRANKは喜びを感じ、フェスへの出演を決定する。
フェスのくだりからはバンド内紛物語へと大きくシフトしていく。
さながら三角関係のメロドラマを見ているかのよう。
ライブまでの間に空中分解しちゃうんだけど、
それをバネにお客さんが大挙して押し寄せる。
その栄光の瞬間にかき鳴らされる音が、
本当の意味での終わりの音となり、
そのときのFRANKのセリフは、
見ていた観客が思っていたことをまさに代弁。
ジョンは自分のエゴが間違っていたことを悟る。
この辺は確かになーと思いつつも切なかったです。
終盤はFRANKが何者かという点にフォーカスしていく。
その中身がマイケル・ファスベンダーという
衝撃の事実が明らかになりーの、
ラストの酒場でのシーンへと収束していく。
ここがまた切なさと愛しさと心強さを兼ね備えた、
何とも言えないシーンでかなりグッときました。
音楽好き、ロック好きにはオススメです。

2014年10月5日日曜日

悪魔を見た



韓国映画で何が好きかという話の中で、
かなりの頻度で出てくるので、見ました。
監督はキム・ジウン。
このあいだ、ラスト・スタンド見て最高だな!
と思っていたんですが、この人とんでもない!
という思いが改めて強くなりました。
もはや韓国のお家芸といっても言い、
「復讐」が題材なんですが、
本作の容赦の無さ具合は恐ろしや。
「目には目を、歯には歯を」という、
ハンムラビ法典から脈々と続く復讐の地獄。
しかも、これは生かしながら一番苦しいところで
ぶっ殺すという、キャッチ&リリース形式。
主演がイ・ビョンホン×チェ・ミンシク
チェ・ミンシクの猟奇っぷりが痛烈だし、
復讐に身を焦がすイ・ビョンホンの仕事人っぷりも
見ていてオモシロかったです。
バイオレンス描写の厳しさは去ることながら、
精神面でのエグさもあるから韓国の映画は
攻めてるし、オモシロいなぁと思う訳です。
同じ復讐という観点でも、「倍返しだ!」
とか言ってヘラヘラしてるうちは、
こんな映画は日本で絶対作られないんだろうな…
ジウン作品は他のも見ようと思います。

パイレーツ・ロック



リチャード・カーティス監督の
フィルモグラフィーを追う観点で見てみました。
むちゃくちゃオモシロかった!
今年見たDVDで一番良かったかも…
(見終わってからDVDとサントラをソッコーで買いました)
1966年のイギリスではBBCでは音楽がほとんどかからない中で、
海賊ラジオ局がたくさんあった時代。
その中のRadio Rockという局にまつわる物語。
このラジオ局は船から放送していて、
簡単に説明すると南極料理人のラジオ版みたいな。
主人公は18歳の青年で、彼が非行によって、
更正という名のもと、ラジオ局の手伝いをすることに。
そのラジオ局での仲間たちとの愉快な共同生活を描いていきます。
いかんせん、音楽が逐一最高過ぎた!
60年代のロックってこんなgood musicに溢れてたのかと。
本作のような映画をきっかけに、
ここ2~3年でロックも好きになっているんですが、
その流れが一気に加速しまくり。
見ている間にShazamを何回かざしたか分からない。笑
あとは役者陣の魅力。それぞれがキャラ立ちしてるから、
起こっていることは大したことじゃないけど、
見てて楽しい時間がひたすら続く。
(最近亡くなったフィリップ・シーモア・ホフマンも、
最高のキャラだったので亡くなったことが余計に辛かった…)
この映画が好きなのは、
日常に音楽があることの素晴らしさを感じさせてくれところ。
とくにラジオの良さというか。
1960年代はラジオが音楽メディアの中心だったこともあるんだけど、
それぞれ異なる環境で聞いていて、
世界でその音を共有してるんだという何とも言えない気持ち。
政府がそのカウンターで出てきて、
音楽が無い生活、状況の閉塞感がよく分かる作り。
音楽好きな人には是非見て欲しい傑作!