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2017年12月28日木曜日

2017 BOOK RANKING

  1. ゼロヴィル
ゼロヴィル

  2. 往復書簡 初恋と不倫
往復書簡 初恋と不倫

  3. 降伏の記録
降伏の記録

  4. ミズーラ
ミズーラ 名門大学を揺るがしたレイプ事件と司法制度 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ II-12)

  5. 茄子の輝き
茄子の輝き

  6. ビニール傘
ビニール傘

  7. 劇場
劇場

  8. ヤバい社会学 一日だけのギャングリーダー
ヤバい社会学

  9. プリズン・ブック・クラブ
プリズン・ブック・クラブ--コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年

10. 塔と重力
塔と重力

映画と同様、去年よりも読めていないけど、
自分の人生に影響を与える本に出会えてよかったし、
毎年友人と本の話を長々できる楽しみを
改めて感じた年でした。

2017年11月1日水曜日

高架線

高架線

滝口悠生最新作。
短編集がこのあいだ発売されたばかりですが、
立て続けのリリースで今回は長編。
なんともいえない感覚と読了感がありつつ、
かなりピースな内容で平穏な気持ちになりました。
本作も過去作から一貫した記憶と土地の話で、
前作が記憶に軸足を置いているとすれば、
本作は土地に軸足を置いた物語でした。
東京の東長崎にあるボロボロの木造アパート、
かたばみ荘を中心として、
そこに歴代住んだ人達が登場人物で、
それぞれの日常が丁寧に描かれています。
賃貸の場合、新築でなければ
自分の前に住んでいた人がいるわけですが、
その人に会う可能性は現実にはほとんどないと思います。
つまり、ファクトとしての繋がりとしてはユルい。
けれど同じ空間を共有しているメモリーとしての繋がりは
かなりタイトという奇妙な関係が描かれているゆえに
読んでいるときに独特の感覚がありました。
あと毎回滝口さんの作品で思うのは文体への新しい挑戦。
今回はパラグラフごとに主人公が名前を宣言する。
それは物語の語り部が変わることを意味し、
登場人物が思い出を語りかける形になっていました。
芥川賞を取った死んでいないものは
映画でいうところのカットが長かったのに対して、
本作はカットの切り替えがパッと変わっていくので、
同じ人の話だけど他人のような、
他人だけど同じ人のような、という
境界が曖昧になっていくところもオモシロかったです。
個人的には、東京に初めてきたときに
西武池袋沿線に住んでいたので、
あの高架線が懐かしい気持ちになりました。
住んでいた頃は何も思わなかったけど、
今は地下鉄で通勤していて電車で風景を一切見ないので、
読んでいるあいだレミニスしまくり。
東京ではかなり地味な街かもだけど、
どの街にもストーリーがあるのである。
と強く実感した1冊でした。

2017年10月28日土曜日

ゼロヴィル

ゼロヴィル

長年本を読む生活を続けていますが、
久々に震えるほどの圧倒的な読書体験でした。
主人公はシネフィルというレベルでは語りきれないほどの
映画に狂った男で帯の言葉を借りれば映画自閉症。
もし人間が生まれてからずっと映画のことだけ
考え続けていれば、こんな人間になるのかも?
という映画好きの心をくすぐる設定。
さらに彼は「陽のあたる場所」という映画に心酔するあまり、
頭の左右に主人公2人のタトゥーを左右に入れている。
(本の表紙の2人です)
彼がハリウッドにやってきて映画の仕事に携わり、
そこからどんどんステップアップしていく過程を描いています。
読んでいるときの感覚としては、
チャック・パラニュークのファイトクラブに
かなり近いものがあって。
本の世界に取り込まれるというか、
TVドラマに後ろ姿を見つけられなかったやつらの
神話を読んでいるような感覚がありました。©RHYMESTER
作品中で大量の映画が引用されていて、
それは見たことがない古典が多いんですが、
どれも無性に見たくなる作品ばかり。
しかも、ただ引用するだけではなくて、
物語内のシチュエーションに混ぜ込み、
有機的に物語と強く結びついていて、
推進力に繋がっているがゆえにスルスルと読める。
(安定の柴田元幸による翻訳)
登場する映画を知らないから読めないではなく、
知らない映画を見たくさせる力を持ちながら、
物語自体がめっちゃオモシロいというバランスの良さが
本当に最高だなーと思いました。
(巻末に映画の索引が付いているのも超便利!)
主人公はハリウッドに来て美術の仕事から始めて、
最終的に映画の編集者になります。
ここが凡百の小説だと監督のパターンが多いと思うんですが、
編集者というのが渋いし、
これもまた物語の構造と繋がっている。
本作はパラグラフが細かく別れていて番号がふられています。
それはまるでカットの断片を並べているかのようで、
つまり物語をブツ切りにして繋ぎ合わせる、
編集の仕事を表現しているんですなー
しかも、その番号がある瞬間から変化していく
仕掛けとタイトルの結びつきがもう。。最高最高!
登場する映画を見てから読み直したいし、
映画好きの友人すべてにオススメしたい1冊。

アフロ・ディズニー2 MJ没後の世界

アフロ・ディズニー2 MJ没後の世界

今年出たJAZZDOMMUNISTERSの
アルバムがとても好きなのですが、
そんな2人の大学での講義録をまとめた1冊。
ずーっと前に大学の近くで音楽イベントを
友達とやっていた頃、そこに来た年下の後輩に
「めっちゃオモシロいので是非」
と薦められてから約5年越しに読みました。
毎回講義にゲストを迎えて、
その人が専門分野を語った後に、
菊地さん、大谷さんがセッションしていく形で、
久々に脳みそ使ったー!という内容でした。
カルチャー、哲学、思想まで
あらゆるジャンルを横断しながら、
様々な論考が提示されていきます。
正直、全部理解できたとは到底いえない。。
オモシロかった見立ては、
オタクカルチャーと60年代ブラックミュージックの
構造的な類似性。マジョリティにも関わらず、
当人たちの意識および実態が
被差別対象にあるという点で結びつけてるんですが、
圧倒的な逆サイドが実は隣同士なのかも?
という話はいつもオモシロいと思ってしまう。
登場するゲストでいえば、
村上隆と松尾潔というHIPHOP、R&Bに関係する人達と
2人のセッションがオモシロかったです。
とくにファレル、カニエがどういった人物なのか?を語る、
村上さんの話はめちゃくちゃ貴重だし超オモシロい。
(カニエはとにかく巨乳。とか最高すぎ。)
2から読み始めてしまったけど、1に戻っていきたいです。

2017年10月15日日曜日

ホームシック 生活 (2〜3人分)

ホームシック: 生活(2~3人分) (ちくま文庫)

ECDが癌を患い闘病している中、
過去のエッセイ集が文庫で
リリースされたので読みました。
近年はECDの奥さんの植本さんの著作から
彼の生活を見てきた訳ですが、
本作は植本さんと結婚、
1人目の娘を出産するまでをECDが書いています。
以前に読んだ半自伝的小説でも感じた、
淡々とした独特のリズムの文章と
日常を語るエッセイのバランスが素晴らし過ぎました。
劇場型とまでは言いませんが、
植本さんは感情で生きている印象を
本を読んでいる限りでは受けるのですが、
ECDはそれを達観しているような視点がオモシロかったです。
確かに年齢が上だから、
ということが理由の1つなのかもしれないけれど、
それだけじゃない2人のコンビネーションが
2人の著作を読むことで立体的に浮き彫りになる。
しかも2人ともすべて明け透けに語っているだなんて、
こんな夫婦はそうそういないでしょう。
この2人を見ていて感じるのは
必ずしも夫婦が似た者同士である必要はないということ。
お互いが他人であるということを理解して
初めて生活が回っていくのかもしれないなーと。
(結婚もしてないテメーが語んなという意見は
胸にそっとしまってください、今すぐに。)
あいまに挟まれている植本さんの写真も
生活の瞬間が切り取られていて、
エッセイを補完する材料として見事に機能していました。
僕が一番好きなのは「一日」という話。
ここ数年、一番オモシロいのは日記という
持論をことあるごとに感じるのですが、
それを体現するかのようなエッセイ。
ただただ起こったことの記録でしかないんだけど、
静謐で無駄のない文章が醸し出す、
生活することの豊かさがたまりませんでした。
とか思ってたら友人のレビューでも
「一日」が引用されていて
シンクロニシティ感じました→リンク
ECDの著作の最新作も合わせて早く読みます。

2017年10月14日土曜日

世にも奇妙なマラソン大会

世にも奇妙なマラソン大会 (集英社文庫)

こちらもブックオフでサルベージ。
(特大ボリュームの謎の独立国家ソマリランドが
ついに文庫化されたとの報を聞き、それも早く読みたい!)
マラソン素人の高野さんが
アフリカの砂漠でのマラソン大会に
参加する過程を描いた作品です。
もはや、このレベルの話を聞いても
「へーそうなんだー」となり、
そこまで驚かなくなっている自分に驚きつつ、
毎度のことながらオモシロかったです。
初めてのことに何の抵抗もなく、
とりあえず突っ込んでいて乗り切っていく姿は人間力の塊。
舞台となる西サハラも行くまではよく知らないし、
マラソンも今まで走ったことがない。
多くの読者と同じフラットな目線から突入して、
そこで起こっている事態を理解していく、
究極の体感型ドキュメンタリーだなぁと感じました。
しかも、単純なレポートに陥ることなく、
その国の背景を解説してくれるからとても勉強になります。
本作では西サハラという難民キャンプエリアと
モロッコの関係を図らずも知ることができました。
(イスラエルとパレスチナ的な関係ね)
スポーツとナショナリズムの結びつきが
あまり好きになれないんですけど、
本作のエンディングで悪くないかも?と少し思いました。
あとマラソン大会以外に入っている短編群もかなり好きでした。
とくに「ブルガリアの岩と薔薇」がオモシロくて、
ブルガリアで親切なおじさんに付いていったら、
その人がバイセクシャルでひたすら言い寄られるのを
逃げ切るというハラハラする話。
おじさんにちやほやされる中で
高野さんが女性の気持ちを良い意味でも悪い意味でも
悟るところが最高でした。
膨大な量の著作があるので、
少しずつ読み進めていきたいです。

映画にまつわるxについて2

映画にまつわるXについて2

1作目は持っているですが、2作目が出たことを全く知らず
ブックオフでたまたま見かけてサルベージ。
西川監督の映画はもちろん大好きなんですが、
エッセイもかなり好きなので楽しみにしていました。
昨年公開の永い言い訳の製作記録といった内容で、
僕は映画も本もとても好きだったので
その舞台裏を知ることができてオモシロかったです。
永い言い訳は西川監督にとって、
これまでの定石を捨てた作品とのことで、
小説→映画という手法、スタッフの入れ替え、
主演の 本木雅之との向き合い方など、
荒波に乗り出す過程で苦労したことや
それによって得たことが書かれていました。
分かりやすくぶっ飛ばされるのは
本木雅之という男の存在ですね。
俳優としての確固たる地位を持つ、
しゅっとした大人の俳優というイメージを持っている人が
世間の大半だと思いますが、
実は過剰な自意識の塊に苛まれてる系男子。
出演交渉、打ち合わせの度に送られてくる
彼のメールの文面が掲載されているんですが、
あまりにエキセントリック過ぎてドキドキしました。
本当にこのメールを打っているのが、あの本木雅弘だなんて!
立ち読みでここだけでも読んでほしい、たぶん震えるから。
映画の製作記録は映画が好きな人にとっても
もちろんオモシロくて
何ごとも真剣に向き合って妥協せずに
生きていくことが大切だとよく分かる。
んなもん、自己啓発と同じやんけと言われればそれまでですが、
ゴリ押しではなく自分の好きなもの=映画を通すから
響くものもあるってもんですよ。
あと一瞬の切り取り方、世間の見方が本当に抜群で、
パンチラインに付箋つけてたら付箋だらけになってしまった。。
最後には映画評や書評がついていて、
そこでイ・チャンドンの小説について書かれていて
一刻も早く読みたいところです。
それよりも何よりも永い言い訳をもう1度見たい。

2017年10月13日金曜日

文学会議

文学会議 (新潮クレスト・ブックス)

海外文学を積極的に読むモードの中で、
以前に友人から薦められたことを思い出し読みました。
信頼と実績の新潮クレストブックスなので、
当然オモシロかったんですが
南米文学という新たな扉を開いたなぁ
という読書体験が楽しかったです。
2つの話が収録されていて、
1つはタイトル作の「文学会議」、
2つ目は「試練」という作品。
文学会議は文学兼科学博士が主人公。
冗談ではなく世界征服を目的として
クローンを生み出すマッドサイエンティストを自称している。
彼はベネズエラで開催される文学会議に参加し、
その参加者の細胞を採取してクローンを作る。
しかも、その対象者はなんと小説家で、
サイエンティストの思考過程と
文学会議で彼が過ごす様子が並行して描かれる構成になっています。
思考過程は半分哲学のようなもので、
延々と語り倒している内容自体が興味深かったです。
主人公も小説家なのでメタ的な部分が多々ありました。
一方で文学会議自体は作中内で言及されている通り、
常人の想像がおよばない方向へ物語が向かっていく、
そのスリリングさとくだらなさのバランスが好きでした。
人の細胞かと思ったら、衣服(絹)の細胞を
クローン化してしまって巨大蚕が街を襲うっていう。。。
モスラかよ!というツッコミしたくなった。
また、あとがきを読むと南米文学に置ける作者自身の
立ち位置にまでリーチしていると知り、
この内容でそんな奥深いことが?!と勉強にもなりました。
なんといっても僕が好きだったのは2つめの「試練」
ふくよかな女の子とパンクス女子2人が街で出会って、
スーパーへ強盗へ行くという話。ガールミーツガールもの。
前半は乙女とパンクスの相互理解のための
会話が延々と続くんですが、
理論と感覚がぶつかり合うガールズトークが
超オモシロかったです(デス・プルーフ的)
この部分を読んでいるときに、
なかなか理解が進まない場面が多く、
これが南米文学のノリなのか。。。と痛感しました。
(他の作品を読んでみないと分からないけど何となく)
タイトルの試練と愛の関係を含めた
前半のじゃれ合いのディベートを終えてからの
終盤の強盗におけるハードなバイオレンス=試練。
このギャップにやられちゃいました。
単純に内容がハードコアなだけではなく、
初期北野映画の生死との距離感を
想起させるドライな暴力表現。
すでに「ある日、突然。」
というタイトルで映画化されているようで
これだけ読み手にビジュアライズさせる内容を
どんな感じで映像化しているのか見てみたいです。

2017年9月27日水曜日

塔と重力

塔と重力



上田岳弘最新作。
新刊出たら必ず購入している作家の1人で、
本作も楽しみにしていました。
結果的に2回読んだんだけど、
今回も上田節健在!といった内容でオモシロかったです。
上田さんの小説の何が好きかといえば、
SFと文学のバランスの良さです。
完全にSFという訳ではなく、
SFのモチーフを使った純文学とでも言えばいいのかな?
SFの設定が近年のトレンドを汲んでいるので、
突拍子がない様に見える中にも
「もしかして近い将来あるのかも…?」
と思わせられてしまう。
表題作がメインに据えられていて、
スピンオフ的な短編が2作収められています。
以前から集合知の考え方を作品で提示していて、
それを「肉の海」という言葉で表現していましたが、
本作でも大筋としてズレはない。
ただし、本作は過去の作品に比べて
かなり卑近な物語になっていました。
僕がオモシロいと思ったのは、
人間の個性をパターンの組み合わせと考えるところ。
これだけ演算技術が高まった世界で、
なおかつAIが本格的に活用される時代において、
自分という存在は本当に唯一無二?
もうすでに存在しているパターンの
組み合わせの1つにしか過ぎないのでは?という問い。
また、自分は下界で生きる器でしかなく、
本当の自我は別のところにあるっていう、
マトリックスに代表される設定も、
「小窓」から世界を覗くという表現になっているのが
「肉の海」と同様の感覚でオモシロい。
ハイテクな話って横文字使って
かっこ良く言いたい願望ってあると思うんですけど、
それに冷や水ぶっかけてるみたい。
あとFacebookを使った展開がフレッシュかつ、
確かに!と思うところ山の如し。
全体に厭世観が漂っているものの、
ラストは性→生へとランディングしていくので
読後は比較的穏やかな気持ちになりました。
次作も必ず買います。

2017年9月23日土曜日

愛について語るときに我々の語ること

愛について語るときに我々の語ること (村上春樹翻訳ライブラリー)

バードマンで本作の存在を知って、
ずっと読みたいと思っていて遂に読みました。
短編集でタイトル作も当然オモシロかったのですが、
他の短編も何ともいえない余韻を残す作品が多く
新しい読書体験でした。
とにかく物語の切れ味の鋭さが
他の作家にない部分だと思います。
これは結局…?という気持ちになることも多々。
あとはお話自体が全体に物悲しさに包まれていて、
なおかつシュールさが漂うというね~
なんとなく全体をぼんやりと読了したあとに
付いているのが村上春樹による解説。
カーヴァーのキャリアを振り返りながら、
本作が彼にとってどういう位置づけにあるのかを
説明しつつ、収録された全ストーリーについて
解題と称して解説してくれています。親切設計。
この解題が物語の理解の促進にめちゃめちゃ役立ちました。
もしこれから読む人がいるなら、
1話読む→解説読むという形で
読むのが良いかもしれません。
僕が好きだった話は「ダンスしないか?」「ファインダー」
「私の父が死んだ三番めの原因」「深刻な話」
「出かけるって女たちに言ってくるよ」
「足もとに流れる深い川」
「何もかもが彼にくっついていた」
表題作はバードマンの中の
舞台原作として扱われていたんですが、
想像以上に映画とこの作品の結びつきが
大きいことを知りました。
改めてバードマンを見なければ。。。

2017年9月17日日曜日

コンプレックス文化論

コンプレックス文化論

武田砂鉄さんの新刊はマスト!なので読みました。
普段皆が気にはしているものの、
何となくスルーしていることや人に対して、
必要以上に真剣に向き合って矛盾点を
あぶり出していくその論法は10年代を代表する、
本当の意味での社会批評だと僕は勝手に思っています。
本作も例に漏れず最高にオモシロかったです。
本作はコンプレックスを抱える人が
産み出すエネルギーはカルチャーの充実に
繋がっているはずだ!という見立てのもと、
天然パーマ、下戸、一重、実家が金持ち、
ハゲ、背が低いなどの様々なコンプレックスへの
武田さんの論考+そのコンプレックスを抱えた
アーティストへのインタビューという構成になっています。
ご存知のとおり、僕は天然パーマという
不治の病と長年格闘している立場なので、
我が意を得たり!と思える話の連続で救われる気持ちでした。
一方で自分が持っていないコンプレックスについては、
普段考えることがほとんどないこともあって、
「あぁ、こういう苦しみがあるのか…」
という新たな視点を得ることができました。
とにもかくにも本作でも武田さんの切れ味が
あまりにも鋭過ぎてニヤニヤが止まりませんでした。
ジャンルレスな引用から見える圧倒的な読書量と、
単純なディスではなくwitに満ちた意見が超オモシロい。
コンプレックスの最近の話題といえば、
豊田議員の「このハゲ〜」がありましたね。
東京ポッド許可局で話されていたときに、
他にも色んな暴力的なこと言っているのに、
「このハゲ〜」だけが免罪符を得たかの様に
マスコミで喧伝されるのはおかしいのでは?
という議論がされていてなるほどなーと。
ハゲは傷つかないからOKでしょ?
という暗黙の了解が社会で形成されてしまっている。
確かに彼女の暴言の中で一番キャッチーだったけど、
お前の娘が強姦されて云々のほうがよっぽど危ないでしょ。
話が逸れてしまいましたが、
コンプレックスとの向き合い方については、
クソな自己啓発本を読むより断然本作を薦めたい!

精神病とモザイク タブーの世界にカメラを向ける

精神病とモザイク タブーの世界にカメラを向ける (シリーズCura)

映画監督の想田さんの精神という
素晴らしいドキュメンタリーがあるんですが、
それについて深掘りした著書です。
結構前に見たんですけど、
記憶が蘇ってもう1回見たくなった。。。
想田監督の作品は観察映画というスタイルで、
ナレーション、テロップ、音楽がない中で、
見る側が主体的に映画を観察することで、
能動的な映画体験が得られるもの。
こちら側が読み取ったものと
実際どうだったのか?を確認するのも楽しいし、
こんな裏側が…という話も興味深かったです。
精神という映画では岡山にある精神診療科での日常を
撮影したドキュメンタリーなんですが、
何が画期的なのかといえば
被写体となる患者にモザイクをかけていない点。
本来は患者のプライバシーを守るはずのモザイクが
作り手側のセーフティーになってしまい、
精神病が「危ない」というイメージの
一方的な押しつけになってしまっている。
あとは精神病と非精神病の境目についての
論考もとても興味深かったです。
自分とは全く異なる人と見切ってしまうのではなく、
自分がいつ罹患するか分からないし、
正しく思考できないというレッテルを
一方的に貼ってしまうのは違うんじゃないか?
社会から排除することで見えなくするのではなく、
何がどの程度問題なのかを可視化していく作業が
必要だなーと感じました。
いきなり何かが劇的に変わることはないのかもしれないけど、
こういった映画が広まることで
社会が変わっていけばいいなぁという
うすぼんやりした希望を持ったりしました。

2017年9月14日木曜日

動物農場

動物農場〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)

ジョージ・オーウェル作の
クラシックということで読みました。
動物が主人公の寓話で
独裁国家の誕生とその過程を描いています。
あとがきによると第二次大戦時に
スターリンを中心としたソ連の腐敗した
社会主義体制を批判するため、
本作を書いたとのことでしたが、
寓話になっているので、
かなり普遍的な内容となっており
悲しいかな今の時代でも
十分当てはまることがあるなーと思いました。
ざっくりのストーリーとしては、
ある人間の農場で豚を中心としてクーデターが起こり、
動物の動物による動物のための農場を取り戻し、
そこで動物たちの自治が始まるものの、
知能を持った豚たちが横暴な政治を繰り広げていく。
今の時代でも特に通用するのは、
プロバガンダでコントロールしていく過程。
権力者は自分たちの都合しか
考えていないことを突きつけられました。
また本作がオモシロいのは横暴な権力者だけではなく、
その支配下におかれた人たちの無知が
悲劇を生むことも描いているところ。
ニコニコしながら
「何も悪いことはしてないんだ!」
「君たちのためなんだ!」ということを鵜呑みにしていると、
どんな結末が待っているのか?
「あのとき抗議・反対していれば、、、」
と後悔しても遅いのかと近年の政権運営のことを思い出して
頭が痛くなりました…
他人事と思っていたら、いつの間にか自分が追い込まれて
生きにくい世の中が形成されているってホントやだなぁ。
1984年も早く読みたい!

2017年9月6日水曜日

裸足で逃げる

裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち (at叢書)

以前にSession22で特集されていて、
それで興味を持って読んでみました。
帯コメントの岸政彦さんの言葉がとても印象的で、
読み終わったあと確かに暗いなぁと思いました。
(全然関係ないけど、OMSBのTwitterで見た
田我流のパンチラインが素晴らし過ぎて、、
ラッパーかくあるべし→リンク
上間さんは沖縄出身の社会学者で、
東京で勉強したのちに沖縄へ戻り調査しています。
本作は沖縄で生きる10代の女の子たちの
インタビューをまとめたものです。
登場する女の子たちはDVに苦しんでいたり、
若いうちに出産して貧困に苦しんでいたり。
それぞれが複雑な事情を抱えながら
何とか生きていく方法を模索している様子が
本人たちへのインタビューを筆頭に
痛いほど伝わってきました。
沖縄と聞くとリゾートのイメージしか
沸かない方も多くいると思いますが、
その裏側を知ることも重要だと僕は思います。
それは本作で描かれるような貧困然り、
第二次大戦中、および戦後の米軍基地の扱いも含めて。
楽しけりゃそれで良いじゃんでは終わらない。
僕が一番強く感じたことは
本作で登場するような立場の女の子を
国や自治体でもっと包括的に助けられないのか?ということ。
キャバクラや性風俗で働くしか、
シングルマザーが生きていけないというのは
あまりにも選択肢が少な過ぎるように思います。
(上記の職業を卑下してる訳ではないです)
自己責任論の空気が醸成されている
今の世の中においては彼女たちも
その餌食になってしまうかもしれないんだけど、
子どもに罪はないと思うんですよね。。
あまりに辛い経験の羅列にも関わらず、
この本から伝わってくるのは
たとえ抜け出せそうにない暗闇にいても
光は必ず射すということ。
むしろ懸命に生きていく彼女たち自身が輝くことで、
自らがいる暗闇を光で満たしていく、
という表現の方がしっくりくるかな?
そんな素敵で無敵なLadyの話に耳を傾けてみて欲しいです。

2017年8月29日火曜日

内面からの報告書

内面からの報告書

最近は図書館へ行くようになったのですが、
そこで助かるのは普段読まないような本を読めること。
とくに海外文学は高単価なので、
なかなか冒険できず読めないものにも手が出せる、
こんなに嬉しいことはありません。
(所有欲を捨てきれない自分もいますが…)
めんどくさい前置きはさておき、
人生で初めてのポール・オースター作品。
POPEYEの本・映画特集のムックで
彼の作品をよく見かけたので
これを機に読んでみよう!ということで読みました。
タイトルが示すとおり、
小説というよりも自伝的考察のような内容で、
1冊目間違えたかな…という気がしつつも、
どういう人なのかがよく分かる話でオモシロかったです。
主語が「君は」になっていて、
幼いころのポールに筆者が語りかける文体であり、
単純な自伝とは異なります。
時代は限定されていて主に6歳〜20歳ごろまで。
過去を振り返りながら、
自意識の形成過程を彼の思い出とともに
見守っているような印象を持ちました。
安定の柴田元幸翻訳ということもあり、
とても読みやすいんだけど、
よくこんなに幼少期のこと覚えてるな〜
と思いました。創造された部分があるにせよ。
その当時は気付いていないけど、
子どもの頃に様々な決定的瞬間を迎えていて、
それをこれだけ緻密にそして鮮やかに語れるのは
エッセイストではなく小説家だからでしょう。
彼もまた日記について言及していて、
どこまでもこぼれ落ちていく時間への
危機感とでもいいましょうか。
忘れていくことへの恐怖と後悔は
滝口さんの新作と共通している点でした。
あと、日記を書けなかった理由として、
誰に向けて語ればいいか分からなかったというのは
とてもよく分かるなーと。
(僕も三日坊主で書くことを止めてしまっています…)
「脳天に二発」という話では
彼が衝撃を受けた映画について、
初めから最後までネタバレ全開で語っています。
この語りがめちゃくちゃオモシロい!
ネタバレ厳禁思想が跋扈する世の中ですが、
それを知らされた上でも見たいと思えるものもあると
個人的には思っていて本作はまさにそれ。
これもまた小説家ならではの語り口だと思いました。
(とくに流れるようなストーリーの解説)
日記をつけていなかった彼でも
唯一残っていた過去の断片が
大学時代に付き合っていた前妻への手紙。
遠距離恋愛の期間が長かったために、
大学生活を手紙で彼女に報告していて、
その手紙を引用しながら当時を回想しています。
孤独で疲弊しながらも、ひたすら書いていることが
伝わってくる内容だし、ほぼ日記なのでオモシロかったです。
冬の日誌という作品も同様の自伝的考察のようなので、
そちらを次は読もうかと思いつつも、
純粋な小説も読んでみたいなと悩ましい気持ち。

2017年8月24日木曜日

ユングのサウンドトラック

ユングのサウンドトラック 菊地成孔の映画と映画音楽の本

radikoのタイムフリー機能が導入されてから、
菊地成孔の粋な夜電波を毎週聞いていて、
それに影響されて読んでみました。
本作は色んな媒体に掲載されていた
映画レビューのまとめ+書き下ろしで構成された
映画について菊地さんが語っている著作です。
冒頭、いきなり松本人志が監督した
大日本人、しんぼるの批評から始まる、
その意外性に驚いたし、
まだ未見なので見てから改めて読まなきゃなーと思います。
映画レビューがオモシロいのは、
見る人によって様々な視点がある点だと思っていて、
菊地さんはその視点が他の人と全く違って超フレッシュなので、
めちゃくちゃオモシロかったです。
当然見てから読むと理解が深まったり、
新たな見方を獲得できて良いのですが、
逆に見る前に読むとめちゃくちゃ見たくなる。
本作で僕の中でビットが立ったのはゴダール。
お恥ずかしい話なのですが
1作も見たことがないのです。。
そんなトーシロでも見たくなるような、
音楽の切り口と共にオモシロい見立てが
次々と繰り広げられています。
(音と映像の同期、OSTと既存曲の取り扱い方など)
他にもオモシロいものはたくさんあって、
個人的に刺さったのはSATCとグラントリノのレビュー
SATCをNYとJAZZを絡めて、
ここまで真剣に考えている人がいるのか?!
と驚きましたし、グラントリノのエンディングにまつわる話は、
その部分全然覚えてねー!な話で猛烈に見直したくなりました。
最後には昔公開されていたブログからの転載で、
映画のことを書いた日記が掲載されていて、
「やっぱ日記おもしれー」となりました。
(というか菊地さんの文体が好きですね。)
まえがきで「何を観ているか」と同等に
「何を観ていないか」に可能性があって、
単純に面白いと書いてあって、なるほどなーと。
豊かな映画鑑賞生活のお供に是非!

2017年7月29日土曜日

往復書簡 初恋と不倫

往復書簡 初恋と不倫

坂元裕二という脚本家の作品。
過去に上演された朗読劇の脚本で、
「不倫の初恋、海老名SA」
「カラシニコフ不倫海峡」という
2作品が収められています。
すでに決定的なレビューが
とあるブログにアップされていて、
読み終わった人はこちらを読むことをオススメ!
坂元裕二『往復書簡 初恋と不倫』 - 青春ゾンビ

2作とも恋愛物語なんだけど、
不穏な空気がどちらも溢れている。
通底するのは他人の痛みは他人事ではないということ。
しかもそれを世界レベルのマクロな出来事から
一気に卑近なミクロの出来事へと
フォーカスを移動させるスキルが凄過ぎました…
(メキシコ麻薬戦争の引用はニヤニヤしてしまった)
タイトルにある「往復書簡」という文字どおり、
2作品とも手紙もしくはメールのやり取りのみが
書かれていて第三者による語りは無い。
他人の手紙、メールを盗み見しているような
感覚になるんだけど、そこに坂元節とも言うべき、
パンチラインの数々が炸裂していて、
それがたまらないんですよねー
セリフの畳み掛け方、言葉のチョイス、
目のつけどころのシャープさ。
笑わせるところもあれば、
人の心の奥の部分を鷲掴みにするところもある。
日常生活では想像しにくいタイプの会話なんだけど、
なぜかしっくりくる。言葉にできない感覚があります。
「不倫の初恋、海老名SA」では
登場人物同士がすれ違い続けるのがオモシロくて、
しかも、手紙とメールの扱いが巧み。
テキストによるコミュニケーションの
速度は飛躍的に加速している近年に読むと、
手紙だけではなくメールでさえ
レミニスな感情を引き起こされるんだから
世の流れは早いものよ…
本作を読んで感化されて
未見だった「それでも、生きてゆく」を
勢いでビンジ・ウォッチングしたんですが圧巻でした…
他の未見の作品も見たいところです。
最後に本作で僕が一番好きだったラインを引用しておきます。

きっと絶望って、ありえたかもしれない希望のことを
言うんだと思います。

インスタント・ジャーニー

インスタント・ジャーニー

前から気になっていた田丸雅智さんを
初めて読んでみました。
星新一に代表されるショートショート
という小説形式の若手作家で
東大工学部卒という異例の肩書きの持ち主。
(しかも同い年だった!)
本作はジャーニーというタイトルのとおり、
世界各国を舞台としたお話ばかりで
インスタントに旅行気分を味わえて楽しかったです。
とくにオモシロいなーと思ったのは
慣用表現をダイレクトに文字通り描いている点。
つまり「火の地」では火種という種子のある世界を、
「理屈をこねる」では理屈を物理的にこねる世界を。
日常のちょっとした表現に
少しのウィットを足すだけで想像の世界が広がり、
こんなにオモシロくなるんだなーと感じました。
中でも駄洒落的側面の強い「虚無缶」と「帰省瓶」が最高。
ショートショートはオチが割と肝だと思うんですが、
きっちり落とすものもあれば、
何とも言えない余韻を残したものまで。
僕は落ちがはっきりしているものよりも、
読み手にその先を想像させてくれる、
ショートショートが好きです。
この点では「東京」が特に素晴らしかったです。
通勤中に立て続けに読んでしまいましたが、
寝る前に1つ読んで世界を夢見ながら
眠りにつくのが良いのかもしれません。

2017年7月25日火曜日

すばらしい墜落

すばらしい墜落

先日、本をまとめ買いしたときに
丸くまとまってしまったので、
ジャケ買いしてみました。
アメリカ在住の中国人作家といえば、
イー・ユンリーがいますが、
彼女ほどではないにせよ、
異国の地で暮らす豊かさ、辛さが
伝わってくる作品でした。
本作は短編集で全エピソードが
NYのフラッシングという
チャイナタウンが舞台となっています。
一口にチャイナタウンといっても
短編それぞれの主人公には
色んな階層の人がいてゴリゴリのビジネスマンや
VISAが切れて不法滞在となっている人まで。
それぞれのNYでの生活における
悩みを描いています。
お金持ちだから悩みがないわけでもなく、
お金の周りにいる家族との関係にフォーカス。
一方でお金のない人はより差し迫った悩みで
苦しんでいる様子が生々しい。
1話目の「インターネットの呪縛」からして
いきなりオモシロくて、
NYで自立しようと懸命に働いているのに
中国に住む妹にお金をせびられるんですが、
昔ならこんなことはなかったと悔しがる。
つまり、インターネットの登場による
急激に加速したコミュニケーションの話。
日本だとLINEが主流になっていて、
僕はすっかり疲弊気味なんですが、
この話を読んで少しほっこりしました。
海外文学だと文化の背景知ってないと
分からない部分があったりしますが、
かなり普遍的な話ばかりだし、
日本語訳もかなり流暢で読みやすかったです。
また、作者が前向きなのか、
鬱屈した形で話が終わることはなく、
オチがきっちり用意されているので、
落語のようにも感じました。
僕が一番好きだったのは「英文科教授」
大学での終身在職権を得るための
レポートを大学に提出するんだけど、
そこに決定的な間違いがあって、
「もう終わった…」と絶望しながら、
それでも生きていくことを模索する話。
致命的なミスをして、それがバレる/バレないで、
ハラハラすることってあると思うんですが、
結果的に杞憂だったときの
異常なまでの安心感が鮮やかに書かれていて好きでした。
寝る前に1話ずつ読むのがいいかも。

2017年7月19日水曜日

監獄ラッパー

監獄ラッパー (新潮文庫)

ラッパーの書籍は出たらなるべく読むようにしていて、
なぜならどう転んでもオモシロいから。
(ANARCHYの痛みの作文も祝文庫化!)
そんな中で取りこぼしていたのが本作で、
やっと読むことができました。
ラッパー=悪いというイメージは
長い時間かけて醸成されたもので、
ここ日本においても例外ではなく、
悪そうなやつは大体友達な訳ですが、
本作の著者のB.I.G. JOEは別格なのです。
なぜならヘロイン密輸の罪で
オーストラリアの刑務所に6年間服役していたから。
本作では、その経緯と刑務所で体験したことが
赤裸々に語られていてめちゃくちゃ興味深かったです。
密輸、逮捕、裁判、刑務所での生活、
ここまで書いて大丈夫なのか?と思えるくらいで、
圧倒的孤独と絶望の中から這い上がっていく
彼の姿を読んでいると、
ダラダラ生きている自分に喝が入りました。
あとは人生に音楽があることの意味をひしひしと。
嫌なことや辛いことがあっても、
音楽が好きだと救われる瞬間がある。
単純にオーストラリアのジェイルの
内輪事情のルポとしてもオモシロくて、
心温まるようなエピソードもありつつ、
当然スリリングな瞬間も多くて、
このギャップにやられて読み終わるのがあっと言う間。
当事者である彼なりの犯罪学も
興味深くて現状の刑務所システムの
不完全さについてはなるほどなーと感じるところも。
(更生施設としての機能を果たしているのか?という意見)
彼が獄中にいるときにリリースした、
Come Cleanを読んだあとに改めて聞くと
歌では絶対表現できない世界観を
ラップという豊かな歌唱法が掬い取っている瞬間が
たくさんあってやっぱりラップが好きだなと思いました。