2017年3月30日木曜日

プリズン・ブック・クラブ

プリズン・ブック・クラブ--コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年

「彼らが夢中になっているのはもはや麻薬ではなく書物なのだ」
という文言が帯に添えられていて、
刑務所の読書会?!なんて聞いたら読まずにはいられない。
しばらく積読していましたがようやく読めました。
カナダの刑務所で実際に刑務所の読書会運営に
携わったジャーナリストのノンフィクション手記です。
人はなぜ本を読むのか?もしくは読まねばならぬのか?
この問いへの答えは、それぞれが持っていると思いますが、
「知らない世界へ最も濃密にダイブできるメディアだから」
と考えています。
他者への不寛容が顕在化する今の世界でこそ、
知らない世界を知り他者のことを想像することの
重要性は昔よりも高まっていると思います。
前置きが長くなりましたが、
本作は読めば本を読むことの豊かさ、意味について
理解できる素晴らしい作品でした。
著者はイギリスで強盗未遂の被害にあった経験もあり、
初めは受刑者に対して怯え、彼らにコミットすることに
躊躇しているんですが、読書会で交わされる
鋭い意見交換、受刑者の人柄にに心惹かれ
活動にのめり込んでいきます。
僕は音楽、映画が好きでたくさん聞いたり見たりして、
人と話すことがとても好きなんですが、
一番テンション上がるのは本の話です。
本作中でも語られていますが、
同じ本を読み、そこで感じたことを共有することは
めちゃめちゃオモシロいんですよねー
それは映画や音楽に比べて、
読み方が人によって大きく異なり、
それぞれの感受性がモロに出てくるからかなと思います。
紹介される本は知らないものばかりだけど、
受刑者たちが過酷な人生経験と照らし合わせて繰り出す
意見の数々を読むと読みたくなってくる。
作者、時代背景等を踏まえたファクトベースの批評と対照的に、
読んだことからダイレクトに出てくる
瑞々しい感想が読み手の心に響きました。
単純に読書会の事情説明したノンフィクションではなく、
カナダの刑務所事情を知ることができるし、
なにより著者の心情変化が興味深かったです。
(ハイソ側からの施しの要素が強い部分もありますが…)
最後に一番シビれたラインを引用しておきます。

どれが好きっていうのではなくて、
本を一冊読む度に、自分のなかの窓が開く感じなんだな。
どの物語にも、それぞれ厳しい状況が描かれてるから、
それを読むと自分の人生が細かいところまで
はっきり見えてくる。そんなふうに、
これまで読んだ本全部がいまの自分を作ってくれたし、
人生の見方も教えてくれたんだ。

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