2016年2月27日土曜日

スティーブ・ジョブズ




1984年のMacintosh、88年のNeXT Cube、98年のiMac

というジョブズの人生の中で最も波乱に満ちていた時期に
行なわれた3つの新作発表会にスポットを当て、
人々を魅了した伝説のプレゼンテーションの舞台裏を通し、
信念を貫き通そうとする姿や、
卓越したビジネスセンスを浮かび上がらせていく。
さらに娘リサとの確執と和解といったエピソードも盛り込み、
ジョブズの素顔を浮き彫りにする。映画.comより)

ダニー・ボイル監督の最新作で、
Appleの創始者スティーブ・ジョブズの映画
ということで見てきました。
よくある伝記もの、英雄伝を想定していたんですが、
それよりも「ジョブズ的」な人間の劇映画を
見ているような感じで新鮮な映画体験でした。
世界を決定的に変えてしまう人間は、
このぐらいクレイジーなんだろなーと思いつつも、
天才の孤高というよりか、
人間臭い部分がたくさん描かれていたので、
観客側が共感できる要素も多かったです。
ジョブズがいなければ、
iPodやiPhoneがない世界なのか、、
と物思いに耽ったりもしました。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

Macのヒラギノフォントで日本語タイトルが出て、
映画が始まっていきます。
見終わった後に気づきましたが、
劇中ではタイトルが出ないんですね。(1)
難しい話ではあるけれど、
タイトル有無で余韻は違うと思うので、
日本語タイトルも良し悪しかと思います。
本作は1984年、1988年、1998年の
3つのパートで構成されています。
これらはすべてジョブズが記者会見で
新製品を発表した年で、
その中身は1984年のMac、1988年のNEXT、
1998年のiMacとなっています。
iPod、iPhoneを生み出した、
僕たち世代がイメージする輝かしい頃は一切描かれず、
彼がくすぶっている時代だった点がオモシロかったです。
しかも、ジョブズといえば、
プレゼンテーションが魅力的にも関わらず、
その部分は一切取り上げずに、
すべてのパートが記者会見直前のドタバタを描く、
文字通りの舞台裏という
思い切った作りであることにも驚きました。
さらに!この3つのパートが技術の進歩に沿っていて、
1984年は16mm、1988年は35mm、
1998年はデジタルといったニクい作りなんですよね〜(2)
このように映画の構造だけ取っても
オモシロイ要素がふんだんにあります。
中身としては会話劇の要素が強い作品で、
すべてのパートにおいてジョブズは出ずっぱりです。
彼を中心に様々な人間との関係を、
前述した経年変化で描いていくわけですが、
とにかくジョブズのクレイジーな完璧主義っぷりが強烈。
一切の妥協を許さないし、
自分の主義を人にも同等のレベルで要求していく感じは
上司だったら嫌かも。。。と思ってしまいました。
しかし、そのこだわりこそがApple製品の持つ、
美しさの源でもあるから彼は偉大な存在となり得た訳です。
そんなジョブズを演じるのがマイケル・ファスベンダー
正直見るまでは何故ファスベンダーと思っていましたが、
それは杞憂でベシャリが立ってしょうがない感じが最高最高!
本人はクリスチャン・ベールがいいんじゃない?
と言っていたみたいですが …(3)
経営者、発明家としての物語と家族物語が
2軸で進んでいきます。
いずれの軸においても孤立を深めていく様が切なかったです。
彼は己の哲学に合わないことは決して認めないんですが、
これは自分を守る為の処世術の1つなのか、
本気で自分のことを信じきっているのか、
その辺りは考えさせられました。
経営者、発明家パートでは
Mac失敗→Apple追放→iMacで復活という流れなんですが、
ジョブズvsウォズニアック、スカリーにおける
Apple製品を巡るバトルがとても興味深かったです。
ウォズニアックをセス・ローゲンが演じているんですが、
こんな真面目な役は初めて見ました。
また彼とジョブズの違いの例えとして、
オーケストラの話があるんですが、
コントロール/ 被コントロール、企画/実行など、
仕事をする上で得意なことがそれぞれ異なるとはいえ、
技術者側はイラッとするような話でした。
スカリーは1988年のパートがたまんなかったですね。
徐々に怒りがたまっていき爆発する様子に迫力がありました。
そして、もう1つが家族の物語。
彼には認知していない娘がいたらしく、
その母親&娘とジョブズの関係を描いていきます。
とくに娘が重要な役目を担っていて、
本作の特徴であるジョブズの「人間らしさ」を
取り戻せる唯一の存在になっています。
文句、不平は言うけれど、
やっぱり大事に思っているんですよという展開は
ありきたりと思われるかもしれませんが、
それまでのジョブズの言動が
あまりにも酷すぎるがゆえに、
ちょっとの前進でも大きく見える作りになっていました。
ここまで色々書いてきましたが、
wikiIMDbを読む限り、エピソードのいくつかは
真偽のほどは分からないものや、
明らかにフィクションの部分もあるようです。
ただ人間のエゴであったり、
それに付随した他人との関係構築について、
これほど考えさせられる映画になっているのは、
ジョブズというキャラクターが持つ魅力ゆえだと思うので、
事実と異なっていようが、あまり問題ないと感じました。
これからもApple製品のお世話になりそうな気がするので、
伝記も読んでおきたいところです。

2016年2月24日水曜日

牡蠣工場



想田監督最新作ということで見てきました。
演劇以外はすべての作品を見ていて、
どの作品も毎回新鮮な驚きを持って楽しんでいます。
また著書も結構読んでいて、
特に「なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか」は
繰り返し読んでいる名著です。
本作は岡山の牛窓の牡蠣漁に密着した
ドキュメンタリーなんですが、
そうとは思えないリーチの距離に驚きました。
事前にテーマを設定しないで撮影した素材から
テーマを炙り出す、監督言うところの「観察映画」
とは思えない事態の連続でめちゃめちゃ興味深かったです。
しかし、それがTVやニュースで取り上げられる社会や政治の話は
生活に密着した身近なものですよという
逆説的なメッセージなのかなーと思ったりしました。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

映画冒頭、猫のアップから始まり、
前半はひたすら牡蠣漁がどういったものなのか?
じっくりと描写していきます。
当然のことながら余計なナレーション、テロップは一切なく、
ひたすら漁の様子を見守っているような視点が続きます。
牡蠣を大きな機械で引き上げて、それを漁港へ持ち帰り、
むき子と呼ばれる牡蠣剥きの人たちがひたすら牡蠣を剥き続け、
ガラはベルトコンベアでトラックの荷台まで運ばれていき処分する。
剥かれた牡蠣はトレーに入れられて出荷される。
そして牡蠣かご、剥き場所の掃除で1日が終わっていくという流れ。
ただひたすら仕事の様子を追っているだけなので、
退屈に映るかもしれませんが、このパートによって
多くの人にとって遠い存在である、
牡蠣漁師がグッと身近なものになりました。
また、後半同じ仕事でも登場人物や牛窓の背景を踏まえて、
再度同じ仕事を見たときの印象が
変わってくるという前フリの要素も兼ね備えています。
牡蠣漁で印象に残ったのは
アナログとオートメーションのバランスです。
多くの部分が機械化されていますが、
最初に牡蠣をピックアップするところ、
そして殻を剥く作業は手作業です。
とくに殻剥きの職人作業っぷりは見てて惚れ惚れしましたし、
オートメーション化が進む都会に住む僕の目には
漁の作業すべてが新鮮に映りました。
本作が内包する社会的問題の側面として、
①311以降の福島を中心とした原発問題と
② 地方過疎化の人手不足に伴う中国人出稼ぎ労働が
主に挙げられると思います。
①は本作の主人公と言ってもいい渡邊さんを通じて描かれています。
彼はもともと牡蠣漁師なんですが、
311で被災し福島から岡山へ越してきた人です。
はっきり言って分かりやすい物語と思われるかもしれませんが、
本作がオモシロいのは、どや顔で問題を強調せずに
あくまで人間の生活の延長線上にその問題が
存在するという描き方をしている点です。
中国からの労働者用のプレハブ設置するときに、
「福島のプレハブはこれ?」と言ったところから展開する、
渡辺さんの表情、発言はヒリヒリするものがありました。
また冒頭で漁をしているのは渡邊さんなんですが、
最初見たときには牛窓に長年住むベテラン漁師に見えました。
しかし、彼の背景を知ってからは
牡蠣漁をしている姿や娘さんの存在が異なって見えて、
その土地で生きるという覚悟を垣間見た気がします。
丁寧な説明が無いからこそ出てくる奥深さは
観察映画の特徴だと言えるでしょう。
メインとなるのは②の話。いわゆる「グローバル」化現象。
僕は「グローバル」というよりも
世界がより「フラット」な場所になっている印象を
本作から受けました。
それは冒頭および劇中でたびたび登場する
猫が象徴しているものであるということは
監督自身もインタビューで語っています。
福島からの避難も中国からの出稼ぎも、
自分の場所があったとしても、
そこを追われたり、居心地が悪いときには、
平衡に至る点を求めて世界を
自由に行き来できる点においては猫と変わらないと。
それが良いのか、悪いのかという安易な二元論に
落とし込むのではなく思考を促された点が好きでした。
中国の出稼ぎ労働者の2人の男性が
働き始めるシーンはかなり好きで、
初めて行く職場で空気読みまくって、
何とか早く役に立てるようになろうとする姿は
働いたことのある人なら誰でもグッとくると思います。
(彼らは英語も日本語も話せないんだから、
不安でしょうがないに決まっているのに。。)
さらに本作を魅力的にしているのは、
牛窓の牡蠣漁師やむき子の人たちです。
若いころはヤンチャしてそうな人たちの温かさ、
独特のヴァイブスがオモシロかったです。
(撮影のモノマネのくだりとかくだらなさ過ぎ!)
そんな中で、映画内でヤラセに言及するレベルの大事件は
映画に没入しているが故、まるで自分も彼らと一緒に
目撃した当事者のような気持ちになり興奮しました。
当事者意識という点でいえば、
映画の撮影が中止になるかもしれない展開も
とてもハラハラしましたねー
全体で140分と長めではあるものの、
後半のドライブ具合は凄まじく、
ラストあはもっと見せて!と思っていました。
今、観察する男という想田監督の著書が出ていて、
これは本作のメイキング本になります。
いろいろ答え合わせしたり、
撮影当時の裏話も知れて楽しいので、
本作を見た方は必読かと思います。

2016年2月23日火曜日

羅生門



今年の目標として古い日本映画をたくさん見る
ということを小さく掲げています。
名画座にも行きたいんですが、
新作チェックで時間もあまり無い中、
Huluで見進めております。
そしてついに黒澤明作品を初めてしっかり見ました。
芥川龍之介の羅生門ってこんな話だっけ。。
と思っていたら、
主なベースは「藪の中」という作品でした。
本当のことが分からない状態を指して、
真相は藪の中と言いますが、その語源らしいです。
本作はある夫婦と盗人が遭遇し、
夫を殺してしまうという話を
3人+目撃者の計4人それぞれの証言から
描いていくというものです。
上述したように藪の中という言葉が生まれた通り、
作品内でも何が本当のことかは分からない作り。
(これは原作の藪の中も同様です。)
この構造から人間の不安定さ、信じられなさを
描いていくのがオモシロかったです。
なにしろ三船敏郎の演じる盗人がとても印象に残っています。
彼の笑い声が耳について離れない…
1950年の映画なので当然白黒なんですが、
バキッとした陰影が今見るとカッコよく見えました。
黒澤明作品は今年中に半分くらいは見たいところです。

2016年2月20日土曜日

モ'・ベター・ブルース



KANDYTOWNのIOのアルバムがリリースされ、
複数の媒体で彼が好きな映画として、
ピックアップしていたのが本作ということで見ました。
IOのアルバムは本当に大好きな作品で、
KANDY TOWNの作品から続く、
マイケル・マンの作品群やタクシードライバーといった、
夜の街が美しい映画を彷彿させるサウンド、リリックが
映画好きにはたまらないといった感じです。
オモシロかったインタビューはこちらをどうぞ。

KoolBoyの美学
Amebreak

そして本作も彼が好きだというのがよく分かる作品でした。
音楽を生業にした男の破壊と再生の物語で、
"KOOL"な男とは?というのがよく分かりました。
ジャズカルテットがのお話ということもあり、
劇中の音楽がとてもカッコいい!
主人公のデンゼル・ワシントンのトランペットと
ウェズリー・スナイプスのサックスの
ハーモニーがとくに心地良かったです。
音楽にすべてを捧げたセルフィッシュな男が
人生におけるプライオリティを考え直すんですが、
その過程とラストの落とし方までグッときましたね。
本作の監督であるスパイク・リーの作品を
いろいろ見ていきたいな〜と思います。

2016年2月17日水曜日

映画 立川談志



最近落語が気になっています。
の・ようなもの、および今年公開された続編
TBSでドラマ放映された赤めだか、
東京ポッド許可局の芝浜論と立て続けに
落語関連のものに触れたことがきっかけです。
上述したすべてを貫く立川談志、
その人の映画ということで見た次第です。
僕は大阪で育ったこともあり、
お笑いの芸と言えば「漫才」「新喜劇」
で染まり切っており、落語はツマらないと感じていました。
それはお話の内容が江戸時代の古いものだし、
同じ落語を色んな人が話すとか落語前の枕とか、
オモシロさに辿り着くまでに時間がかかるからだと思います。
正直、いきなり本作だけ見ても、
立川談志の偉大さ、オモシロさ、引いては落語の魅力が
分かる訳ではないと感じました。
しかし、落語に対して少し興味を持った段階で見るには、
立川談志という「入口」は、
一番取っ付きやすいものであることが分かりました。
昔の話で難しくなりがちなところに
彼の毒っ気であったり、明朗な語り口が加わることで、
僕の落語像はアップデートされました。
単純に僕が年を取って落語のオモシロさを理解する、
頭のレベルに達しただけかもしれませんが、、、
本作はインタビューを中心に
やかん、芝浜という噺が2席丸々入っています。
談志の芝浜は特別なものとして、
落語好きの中で扱われているらしいんですが、
僕みたいな完全素人がDVDで見てもグッと引き込まれました。
なにしろ話すオーラというか、
立て板に水という表現がこれほどぴったりくるものを
人生で見たことがあるだろうか。。。と思うくらい凄まじい。
談志といえば落語論も有名で、
「落語とは人間の業の肯定である」とか、
「イリュージョン」といった話を
聞いたことがある方も多いと思います。
この理論の部分についても本作で言及されていて、
理論好きとしては、
これをきっかけに落語を始めるのもいいかな?
なんて思ったりもしました。
噺は古典から創作まで、噺家は若手からベテランまで、
色々ありますが今年中に一度生で見てみたいと思います。

2016年2月14日日曜日

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン (新潮文庫)

何を今更と思われる方も多いでしょうが、
1年前に購入し積読の闇の彼方にいたのを
先日発見しまして読んだ次第です。
今や俳優として大活躍しているリリーさんの私小説で、
リリーさんが生まれてから母親が亡くなるまでの、
2人の関係を描いたものです。
東京に来て丸4年を迎えようとしていますが、
この街で生活したからこそ分かる、
ある種の感覚の部分をビビッドに言葉で
浮き上がらせてくれていて、
「そうやねんなぁ」と頷きながら読んでました。
あとは何と言っても家族との関係ですよね。
空気のような当たり前の存在である両親が
実は有限なもので順当に行けば
自分よりも先に亡くなることは
誰だって考えれば分かることなんだけど、
いざそのときが来たときに後悔しないくらい、
親孝行できてるのか?と問われている気がしました。
終盤の「オカン」が最後を迎える場面、
また彼女の遺書には涙無しには読めず、
嗚咽レベルで号泣してしまいました…
上京論、家族論の最高峰なので、
人生の節目に読み返すかもしれません。

ウルトラミラクルラブストーリー



横浜聡子監督の最新作である、
「俳優亀岡拓次」を見る前に
前作を。ということで見ました。
タイトルから想像するに
濃厚な恋愛ものかなーと思っていたんですが、
いくつもの斜め上展開があり、とても楽しかったです。
田舎に住む主人公が都会からやってきた
女の子を好きになるという話。
主人公を演じるのが松山ケンイチなんですが、
彼は多動症で子どものように振る舞い、
落ち着きがありません。
麻生久美子演じる女の子に気に入られようと
落ち着きを取り戻すための行動が
農薬を浴びるという。。。
好きな人のために素直に努力する
彼の健気さが切ないんですよねー
あと物語全体に漂う死の匂いがたまりません。
その匂わせ方がダイレクトなのが本作の特徴だと思います。
最たる例が首チョンパの元彼!
出てきたときはギョッとするけど、
あまりにナチュラル過ぎて笑っちゃいました。
「俳優亀岡拓次」は劇場で見たいと思います。

キャロル



52年、冬。ジャーナリストを夢見て
マンハッタンにやって来たテレーズは、
クリスマスシーズンのデパートで
玩具販売員のアルバイトをしていた。
彼女にはリチャードという恋人がいたが、
なかなか結婚に踏み切れずにいる。
ある日テレーズは、デパートに娘へのプレゼントを
探しに来たエレガントでミステリアスな女性キャロルに
ひと目で心を奪われてしまう。
それ以来、2人は会うようになり、
テレーズはキャロルが夫と離婚訴訟中であることを知る。
生まれて初めて本当の恋をしていると実感するテレーズは、
キャロルから車での小旅行に誘われ、ともに旅立つが……。
映画.comより)

アカデミー賞最有力との声を聞きつけ見ました。
21世紀の作品とは思えないクラシカルな佇まいは、
「これぞアメリカの映画!」
という実感がある重厚な作品でした。
このタイプの映画って 画は素晴らしいけれど、
ストーリーが退屈だったり、
乗り切れなかったりすることが多いんですが、
恋愛要素とその当時の社会状況が結びついているため、
興味深く見ることができました。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

冒頭のショットが印象的な映画で、
下水道の排水溝を背景にタイトル、クレジットが
ゴシックなフォントで登場。
そこからワンショットの長回しで
男性を追いかける形でNYの街を映し出し、
そのまま主人公のキャロルとテレーズが
食事をしている場面へと移っていきます。
この時点では単に女性2人が
食事しているだけのように見えるんですが、
本作はここに至るまでの経緯を描いた作品なので、
関係性を知ったあとに見ると
切なさの込み上げ方が半端なかったです。
本作で何よりも印象に残っているのは、
そのショットの力強さです。
凛とした佇まいとでも言いましょうか。
セリフなしでずっと見ていたいと思うくらい。
このクラシカルなショットの数々は
「フィルムで撮っているから」という
単純な理由だけではないことは明らかです。
とにかく視線のやり取りの描き方が素晴らしいと思います。
冒頭然り、はじめて2人が出会うシーン然り、
関係性を互いの視線で感じさせる訳です。
さらに印象的に使われているのが「窓」だと思います。
お互いのことを窓越しに眺めているシーンが多いんですね。
1950年代の女性同士の恋愛のタブー性を
演出でも見せていくのが良いなーと感じました。
主演の2人の演技も本当に最高でしたねー
ケイト・ブランシェットは
ブルージャスミンで最高に情けない
アクトを見せてくれた訳ですが、
本作では一転凛とした強い女性を演じ切っていました。
その彼女に憧れを含めた恋心を抱く、
ルーニー・マーラが死ぬほど可愛くてねぇ。。
2人とも男性の恋人や配偶者がいる中での
許されざる恋に焦がれてる感じがたまらない訳です。
ラブシーンもあるんですが、
ここがまた美しいシーンでした。
アデル、ブルーは熱い色では
超激しいラブシーンがありましたが、
それとはまた異なるエロティックさと言いましょうか。
なんせルーニー・マーラが脱いじゃうんですから。
日本の俳優で言えば、大竹しのぶと石原さとみの
ラブシーンって感じかな?
愛の逃避行を続けていた2人ですが、
その仲を引き裂くのは世間の目と社会システム。
かけがえのない子ども or 自分の愛した人?
という究極の選択をキャロルは迫られてしまいます。
一旦は「世間的な常識」に迎合するんですが、
そこから自らのidentityを取り戻すくだりは
かなりグッときましたねー
大切なものを失ってしまえば、
自分が自分で無くなってしまうということは
身につまされる話でした。
一方、振り回されてしまったテレーズは
一旦はキャロルのことを忘れ仕事に没入するものの、
彼女のことを忘れられません。
その大切さに気づくのがパーティーでの
所在なさというのも好きな部分でした。
エンディングは冒頭のシーンの視点を
変更して描いていきます。
前述したとおり、同じ場面にも関わらず、
2人の立場を知っているがゆえに
あぁ、運命って残酷…と心底思う訳なんですねー
そして視線の交わりでラストを迎えるという
一貫したカッコよさが素晴らしかったです。

2016年2月13日土曜日

不屈の男 アンブロークン



アンジェリーナ・ジョリーの監督第2作。

ローラ・ヒレンブランド著のノンフィクションを原作に、
1936年のベルリンオリンピックに出場した陸上選手で、
第2次世界大戦中に日本軍の捕虜になった米軍パイロット、
ルイス・ザンペリーニの体験を描いた。
映画.comより)
2014年にアメリカで公開され、
日本でも1度公開されかかったものの、
「反日映画を公開するな!」という
抗議活動に配給側がビビッてしまい見送られた本作。
最終的にビターズエンドが配給を担い、(1)
渋谷のイメージフォーラムのみで上映されています。
これから順次全国公開されるものの、
アンジェリーナ・ジョリー監督×コーエン兄弟脚本で、
この規模での公開は異例と言って差し支えない状況だと思います。
(イメージフォーラムでユニバーサル、
レジェンダリーのロゴを見るとは思わなかった…)
見えない大衆の圧力に屈してしまう
気持ちの悪い今の日本の状況とは打って変わって、
本作は戦争を通じた至極真っ当な
ヒューマンドラマでオモシロかったです。
これを見て反日だ!と言っている方は
オツムが足りないのか?と言わざるを得ません。
多種多様な価値観がある中で、
それを許容することの必要性を改めて感じました。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

冒頭でtrue storyと銘打ちゼロ戦との空中戦から始まります。
このシークエンス自体も当然ですが、
撃って撃たれての繰り返しで
決して一方的な描写ではありませんでした。
さすがにハリウッド製ということで
アクションシーンはかなり迫力がありましたし、
主人公ルイスが所属するクルーの
チームワークの良さが分かります。
前半は主人公のルイスの子どもの頃〜戦争に行くまでと、
戦争が始まり、彼が乗っていた飛行機が
エンジン故障で太平洋を漂流するシーンで構成されていました。
ルイスはオリンピックに出場するレベルのランナー
ということが彼を特徴づける重要な要素になっています。
つまり、彼がいかにunbrokenでタフな男か、
マラソンのエピソードを中心に描かれていました。
僕はオリンピックのマラソンシーンが好きで、
レース終盤に猛烈な勢いで追い込むルイスの姿が
とてもかっこいい!と思いました。
そして漂流シークエンスが始まります。
原作でそれが事実であるということもあるのは分かるんですが、
正直このシーンが長くて退屈。。
分かりきった「漂流あるある」が長い時間かけて、
披露されるだけなんですよねー
(彼がタフであることを描きたいのは分かるんですが)
またサメがなぜか大きくフォーカスされていて、
ジョーズを彷彿させるような展開もありましたが、
本作でわざわざ描く必要があるのかと感じました。
唯一好きだったのはカモメを生食いするシーンで、
ここは完全にコーエン兄弟っぽい笑いで好きでした。
生きるか、死ぬかギリギリのところで、
日本の船に見つかってルイスは捕虜になります。
この捕虜となった後半が本作の最大の見所。
はじめに島に連れて行かれて、そこで軽めの拷問。
捕虜を全身裸にさせるシーンがハラハラさせる展開で、
とてもオモシロかったですねー
(斬首の文化があの時代に存在したのかは疑問だけど …)
そこから東京にある大森収容所へ送還。
ここにいるのがギタリストのMIYAVI演じる鬼軍曹渡辺。
間違いなく彼が本作のMVPでしょう!
最初の登場シーンにおける「Don't look at me」は
理不尽極まりなく彼のmadっぷりがよく分かります。
(顔からも漂うたっぷりなSっ気もナイス!)
過酷な収容所での生活から
一度抜け出せそうな機会がルイスに訪れます。
それはラジオ局で日本の優勢を伝えるという仕事。
unbrokenな彼は当然嘘なんてつけない!と断ります。
このかっこよい展開からの地獄がまた凄まじくて。
大森収容所の囚人全員にルイスの顔を殴らせるというね、、
当然囚人たちは躊躇するわけなんですが、
それを見た渡辺は別の弱っている囚人をボコボコにして、
「テメーらが殴らないとコイツボコボコにするで!」
と脅し、ルイスは殴られ続けるというねー
精神攻め立て系の日本のイジメ体質を感じますよね、
連帯責任という名の同調圧力。
悪魔のような渡辺も出世、大森収容所を出所して、
やっと彼からエスケープすることになります。
また東京空襲の場面があるんですが、
ここのショットの力強さは
撮影監督であるロジャー・ディーキンスの力かなと。
終盤ルイスは大森収容所→直江津収容所へ送還されます。
ここで渡辺が再び現れるというまさかの天丼展開。
ガキ使の「笑ってはいけないシリーズ」っぽくて、
少し笑ってしまいました。
白人の捕虜たちが炭鉱で真っ黒になって働く姿は
人種問題を意識しての演出なのかなーと思ったりしました。
ラストも渡辺vsルイスになる訳ですが、
ドヤ展開で乗り切れませんでした。。
アメリカ最強!なのは拭いきれないと言いましょうか。
けれど、これが決して反日という訳ではないことは明らかです。
本作は事実ということもあり、
終盤にテロップで戦後の人生が語られる訳ですが、
かなりビックリする内容でした。
こんだけの仕打ちを受けたら、
当然ボコボコにしたるわい!となりそうですが、
キリスト教に本格的に入信したこともあるのか、
「許し」の姿勢が凄まじいなと思いました。
(PTSDやアルコール依存症もあったみたいですが(2))
 戦争自体は互いが暴力を振るい合うものであり、
その勝敗に関わらず加害者/被害者の両面を必ず持つと思います。
大事なのは、その戦争の後をどう生きていくのか、
同じことを繰り返さないのか、ということです。
「こんなことはなかった」とか
「敵の方がもっとひどいことをしていた」なんて、
幼稚な発言、議論を大の大人がしていると悲しい気持ちになります。
(歴史を専門にしている人が史料に基づき
行うべきことだと僕は思っています。)
賛否両論あるかと思いますが、
とにかく見ないことには始まらないと思います。
アンジーのインタビュー が本作を分かりやすく、
位置付けていたので読んでみてください→(3)

2016年2月10日水曜日

Refugee Market @ IKB BED


昨年2ndアルバムを出したKid FresinoがNYから戻って、
Refugee Marketでライブということで見てきました@IKB BED
この日は彼に加えて大阪のillなMCsのPsycho PatchもRide onで、
多種多様なHIPHOPが見れて楽しかったです。
振り返るとこんな感じでした。

ISSUGI
何回かライブを見ていますが、
今までで見た中で一番カッコよかったです!
bedというホームがもたらす空気の中で、
風格を漂わせタイトにスピットする姿が目に焼きついて離れません。
昨年リリースされたScratch Nice とのUrban Bowl Mixcityが
相当好きだったんですが、
その収録曲中心のライブだったのも良かったです。
FeatもDNCメンバーをフルに活用していて、
とくに仙人掌とのsubway shit ⇒
Mr.Pug も加わってのBig Footはブチ上がり!
また、JJJ 、K-Flash、Mr.Pugによる
7 inch treeの第一弾であるRapRushもフルメンバーで披露。
さらにThievesでKid Fresinoも登場し、
名実ともにDNCの屋台骨であることを示す圧巻のステージでした。
今年はMONJUのアルバムをリリースしたいと言っていたので、
それも楽しみなところでございます。
最近リリースされたmixtapeも好きでした→リンク

Psycho Patch
大阪の3人組で今年の初めにアルバムリリースされています。
(Apple Musicで聞けます→リンク
Illnandess aka K-Flash, Shawn-D,Sick-BLの3人で
構成されたグループで、前2人が兄弟。
大阪では2人ともDJとして有名だったように思います。
(この日のback DJはENDRUN!!)
そんなクルーのライブはぶっといビートにillなリリックが交わった、
異世界のグルーブといった感じでしょうか。。。
もっとリリックを知っていれば楽しめたなーと思ったので、
アルバムをこれから聞いていきたいところです。
ちなみに当日のback DJを務めていたENDRUN謹製の
超かっこいいbeatはKid Fresinoもjackしていましたね。



あとillnandess a.k.a K-Flash はISSUGIの前にDJしてたんですが、
そのプレイが凄まじかったです!
僕が学生だった頃、大阪で彼のDJプレイをよく聞いていました。
その当時は90年代HIPHOPとそのサンプリングソースを
かっこよくガシガシ2枚使いも含めてかける
というスキルフルな印象を持っていました。
しかし、この日はスキルよりも何よりもヤバい昭和歌謡ミックス!
「リアルOG!」とシャウトしつつ、
志賀勝、菅原文太、安藤昇、川谷拓三といった
「仁義なき」渋めなshitを立て続けに
プレイしててオモシロかったです。

Kid Fresino
この日のオオトリ。
NYから帰ってきたYoung gunというレベルを大きく超え、
ISSUGIよろしくなタイトなステージで、
めちゃめちゃカッコよかったです!
Kid Fresino Arrived and “Conquer”ed the floor!!って感じ。
おおむね2nd Album中心の曲でFeatはjjjのみ。
ハイライトはやはり「Special radio」と「Turn」ですかね。
「Special radio」はIOが登場しなかったものの、
あの曲の持つ最強のポジティブなバイブスは
硬そうなイメージのあるRefugeeのフロアさえも跳ねさせてました。
昨年の鼎談でも少し話した「Turn」はライブで聴くと、
音源よりもemotionalな印象を持ちました。
MVもリリースされていて、そちらもかっこ良かったですねー
(見切れてるのはfebbなんでしょうか?)



月末のDiagonalではC.O.S.Aとのセッションということで、
そちらも見に行きたいなーと思っています。
チケットまだ買えていないけれど。。

オデッセイ



火星での有人探査の最中、嵐に巻き込まれてしまったワトニー。

仲間たちは緊急事態を脱するため、
死亡したと推測されるワトニーを置いて探査船を発進させ、
火星を去ってしまう。しかし、奇跡的に死を免れていたワトニーは、
酸素は少なく、水も通信手段もなく、
食料は31日分という絶望的環境で、
4年後に次の探査船が火星にやってくるまで生き延びようと、
あらゆる手段を尽くしていく。
映画.comより)

上半期一番の話題作といってもよい作品。
予告編は何度も見ていて、
スペース・サバイバル系かーと思っていたんですが、
物語のトーンがめちゃ明るくて驚きました。
最近でいえばゼロ・グラヴィティ
インターステラーといった割と重厚な作品が多い中で、
これはかなり異質な作品だと思います。
(言うなればMARVELにおける、
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーな立ち位置かな?)
ストーリーの面白さは勿論のこと、
僕は本作が伝えているメッセージに心底感動しました。
残酷な自然(現実)を孤独に生きるすべての人々に対して、
科学(頭脳)で生きていける、死ぬだなんてとんでもない!と。
監督のリドリースコットの弟である、
トニー・スコットが自殺で亡くなったことを考えると、
余計に響くような作りかなと思います。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

主人公のワトニーを演じるのはマット・デイモン。
あらすじにもあるように事故で、
彼が1人火星に取り残されたのち、
どうやって生き延びていくかを見守る映画です。
火星でのサンプル採取のシーンから始まり、
嵐が巻き起こり彼だけがはぐれてしまいます。
本作はNASAの全面バックアップで作られているんですが、(1)
唯一決定的に正確さに欠ける点がこの嵐のシーンとのこと。(2)
どういうことかといえば、
火星の気圧は地球の0.6%ほどであるために、
たとえ嵐が来ようとも体感としてはそよ風レベルでしかなく、
ロケットは倒されたりしません。ということみたいです。
正直SF見るときの科学考証はもはやオマケでしかなく、
明らかに嘘じゃん!ってことがなければ、
僕はALL OK!!だと思っています。
ちなみに本作の脚本がOrionという宇宙船に乗って、
2014年に宇宙空間へ放たれたそうです。。なんか夢がある!(3)





1人残されたワトニーは
うわぁー!!とバカな日本映画のように
叫び喚くわけでもなく淡々と生き残る計画を立てていきます。
前半は科学の力、人間の頭脳の力を描いていくんですが、
ここが理系人間にはたまらない作りになっていました。
人間が生きていくために絶対に必要な食料と水を
自ら生み出していく訳ですが、
何もない火星で一体どうやって?と思うんですが、
極めてリアリスティックなのが超良かったです。
食料は配給のジャガイモの一部を
火星の土×肥料としての人糞で室内栽培するし、
水は燃料に含まれるヒドラジンに対して、
インジウムを触媒として分解反応を起こし、
水素を取り出して酸素と反応させるというねー(4)
(ちなみに今日の朝食はジャガイモに
HEINTZのケチャップかけたやつ!)
科学を使って巧みにサバイブしていく姿が
逐一かっこ良いんです!
世界の1つ1つには原理原則が存在し、
それらに従えば火星でも生き残れちゃう、
そんな逞しすぎる姿に胸を打たれてしまいました。
そして、本作を語る上で欠かせないのが音楽。
SFものといえば重厚なオーケストラとか、
シンセを使ったサウンドなどの音楽を想起しますよね。
本作では上記に加えて80年代のディスコミュージックが
大きくフィーチャーされています。
設定としてはジェシカ・チャステイン演じる船長が
持ち込んだ私物となっているんですが、
歌詞と物語がリンクした内容になっているのが
興味深かったですし、本作でもDavid Bowieが使われていました。
(Life On Mars ではなくStar Manでしたが…)
使われた楽曲のプレイリストはこちら→リンク
どの曲も近年のブギー、ディスコ再評価とは
異なる流れというか、超ベタな曲しか流れないのも
逆にフレッシュでオモシロかったです。
後半はいかにして火星からワトニーを救うか、
そこにフォーカスしていきます。
手始めである通信手段のシークエンスも
温故知新とKUFU(16進法!)の組み合わせが絶妙で最高最高!
途中でワトニーをある悲劇が襲うんですが、
そこで放たれる渾身のFUCK!!も好きなシーンです。
科学で火星という自然をコントロールしてきたのに、
唯一の事故が致命傷っていうねー
すべてが思い通りにはいかないけれど、
知恵を振り絞り続けて前に進むしかないわけです。
彼がなんとか生きようとする姿勢に
はじめは死んだことにしていたNASA側も感化され、
彼らの英知を集結させて何とかワトニーを
助け出そうと皆で知恵を出し合います。
ここで重要な役目を担うのが、
ラッパーChildish Gambinoこと
ドナルド・グローバー演じるリッチ。
最高に無礼な天才を見事に演じていて、
第2のウィル・スミスの可能性もゼロじゃないかも。。
と思ったりしました。(アルバム早く出して欲しいけど)
中国が決定的な役目を率先して行う点は
確かに露骨すぎる点もありますが、
1人の男を火星から救うという
プロジェクトのもと協力するなんて、
どこかの国みたいに火に油そそぐより、
よっぽどイイ話やんと思います。
最後はクルーによる救出大作戦が行われます。
マイケル・ペーニャの安定感、
ジェシカ・チャステインの姉御感がオモシロかったし、
Like アイアンマンな助かり方もナイスでしたね〜
そして地上に戻ってきた彼が
講師として語る内容に映画の大切なエッセンスが
すべて詰まっているラストで大団円!
本作は人類が火星に行けるようになるまで、
エバーグリーンな名作として語り継がれることでしょう。

2016年2月9日火曜日

間宮兄弟



森田芳光監督作品。
今年中に見れるところまで見ようということで、
ジャンジャン見ております。
佐々木蔵之介×塚地武雅が
間宮兄弟を主役として演じています。
兄弟関係を物語の題材とした場合、
10作品中10作品において、
仲が悪い→良くなる、良い→悪くなる→良くなる
といった展開になっていると思います。
そうでなければドラマにならないからです。
しかし、本作では間宮兄弟の仲が良い様子を
ひたすら愛でるというのがオモシロかったです。
彼らが兄弟の仲という閉じた関係から、
沢尻エリカ、北川景子が演じる姉妹、
常盤貴子演じる小学校教師と関わりを持っていくことで、
世界が広がっていく様子が超楽しそうなんですよねー
(ボードゲームシーンとか最高最高!)
最終的にこの2人が具体的に成長したかどうか
と言われれば正直微妙なところです。
しかし、何かを経験する前後で
「世界が変わって見える」という、
繊細な部分が本作には詰まっていると思います。

2016年2月6日土曜日

青春と変態

青春と変態 (ちくま文庫)

Birthday Bunkoと呼ばれるものが流行っているらしく、
自分と同じ誕生日の著者が会田誠で、
本作がチョイスされていました。
名前は聞いたことありますし、
代表的な作品は見たことがあったので、
楽しみに読んだんですが、
まさしく青春と変態が混在する超オモシロい小説でした。
高校生の主人公が部活のサークル合宿に行き、
そこでの様子をリアルタイムで日記として
記録していたいという設定です。
前半は強烈な「変態」描写の連続で、主人公の性癖が覗き。
男女共用トイレに忍び込み、
女性が用を足すのを下から覗くっていうね。。。
おそらく本当に著者が行っていたのだろう、
と思わされるぐらい描写が妙にリアリスティック。
バレる/バレないのサスペンス要素が高くてオモシロかったです。
これを読んでいる時点で「覗きだなんて変態!」
と軽蔑している人もいると思います。
しかし、「覗く」ことに対する分析や、
思春期独特の自意識のあり方が描かれており、
自分ももしかしたら「変態」なのか?
と考えされたりする点は、
純文学とも通じる部分があって興味深かったです。
後半にかけては高校生ならではな甘酸っぱい青春が中心。
彼の内省的な性格もあいまって、
甘さと苦さが心地よく楽しめました。
大人になっても捨てきれない自意識と
向き合いたいときに読み返すことになりそうです。

2016年2月5日金曜日

犬神家の一族



市川崑監督作品。
言わずと知れたクラシックですが、
恥ずかしながら見たことがなく見てみました。
最近、市川崑記念館もできたりしてますし、
昨年の野火のこともあり俄然興味の沸いている監督です。
内容も当然オモシロかったんですが、
何よりも映像、ショットの力強さにヤラれちゃいましたね〜
カットをサブリミナルに挟んでくるとか、
白黒の極端な陰影、露骨な血の演出などなど。
それらすべてが謎に満ちた犬神家を象徴している
という作りになっているからオモシロいんだと思います。
得体が知れないといえば、
死に様が超有名な佐清(スケキヨ)が、
どういった人物なのかもついに理解できました。笑
遺産相続を物語内に設定することによって、
利害関係を巧妙に作り出し、
それがトリックとしても活用されていて、なるほど!と。
ただ僕が推理もの久々に見るからなのか、
終盤のネタばらしのくだりが野暮ったく長く感じました。
なんでも鑑定団はクビになってしまったけど、
石坂浩二の金田一耕助は好きですよ。

2016年2月3日水曜日

David Bowie



新しいアルバムのBlack Starを聞いていたところに
届いた突然の訃報でした。
1月10日に69歳で亡くなってしまったDavid Bowie。
最新アルバムは気鋭のジャズミュージシャンを集めた、
かなりexperimentalなロックでとても好きな作品です。
また、ここ数年で映画をたくさん見るようになったことで、
彼の音楽に触れる瞬間はとても多くなっていたので、
亡くなったことを知り悲しい気持ちになりました。
とくに印象に残っているのは、
ウォールフラワーフランシス・ハ
ウォールフラワーで使われている曲はHeroes
色んな映画やCM等で使われていますが、
本作のラストは人生ベスト級のエンディング。
曲の内容、主人公の感情、夜の街の美しさ、
すべてが完璧で見るたびに泣いてしまいます。
もう1つはフランシス・ハで、
使われている曲はMoonage Daydream
レオン・カラックスの汚れた血のサンプリングなんですが、
モノクロのサイドショットで
NYの街を全速力で走り抜ける姿と
曲の相性が良くてとても好きなシーンです。
(ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーでも使われてましたね)
彼の楽曲は青春映画との相性は抜群だと思いますので、
これからも多くの映画で鳴り続けるでしょう。
今年は彼自身が出演している映画も見たいと思います。
彼の死去により無数の記事、トリビュートが
インターネット上にアップされていますので、
ここにまとめておきます。

Article
The 10 Best Covers of David Bowie Classics
David Bowie in Film: Ethereal, Eccentric, Electric

Sound
1. Space Oddity(Lido's Salute) by Lido

最新のサウンドにアップデートされて、
聞きやすくなっていますし終盤の展開が好きでした。

2. Anderson .Paak Performs "Am I Wrong" On French TV
Am I Wrongも最高にかっこいいのですが、
Paak氏自らドラム叩きまくりで最後にLet's Dance!!

3. Space Oddity/waves by Miguel

1のLidoに比べるとMiguelのフェロモンを感じますね、
I'm not ゲイ

4. David Bowie Tribute Mix by Q-Tip
Q-Tipが2時間全曲David BowieでMix!!
Apple Musicに加入している人は聞けます。
(同じBeats1で番組を担当しているHAIMは
番組の最後にRebel Rebelをかけていました→リンク

様々なTributeを含めて、
これからもDavid Bowieの音楽を楽しみたいと思います。