2014年6月30日月曜日

フロム・ダスク・ティル・ドーン



何かの前フリってことで…
ロバート・ロドリゲスが監督で、タランティーノ脚本で、
主演がジョージ・クルーニーとタランティーノ!
こんなもんオモロいに決まってますやん!という組み合わせで、
期待を裏切らない仕上がりでした。
主演の2人が兄弟っていう設定は
顔面偏差値を考えると相当無理ありますが、
そういう細かいところにツッコミ入れる映画ではなく、
ゲラゲラ笑いながら楽しむタイプの映画です。
ジョージ・クルーニーは強盗殺人罪、
タランティーノは殺人と性犯罪で服役したことがある、
筋金入りの犯罪者兄弟。
この2人が銀行強盗を行ったあとに、
メキシコへ逃亡するところから物語が始まります。
ストーリーに関しては情報なしで見始めたので、
最初は逃走ものかな〜と思いきや…
メキシコ入国後の待ち合わせ場所である、
おっぱいバーで話が急展開して、爆笑しましたw
あまりに脈絡なさ過ぎて…
今年見たワールズ・エンドに近い感触。
吸血鬼やったんや〜みたいなね。
ポップコーン食いながら、コーラ飲んでヒャッハー!
といった感じで楽しむのがオススメです。


俺たちニュースキャスター



DVDスルーながらも「2」が出てるので先に1を見ました。
ジャド・アパトー製作ということしか認識してなかったですが、
少し調べたところ、アメリカコメディ界の匆々たるメンツで、
作られてることが分かりました。
ゆえに結構オモシロかったけど、アメリカンなギャグ多めなので、
下品なのとか、ブラックなのが苦手な人はアレかもしれません。
2004年の作品ですが、
女性蔑視自体が完全にギャグとなっている点で、
日本とは違うなーと、先日の都議会のことを思い出したり。
ニュースキャスターものだと、
「恋とニュースのつくり方」の方が好きです。

2014年6月29日日曜日

渇き。




「嫌われ松子の一生」「告白」等で有名な中島監督最新作。
予告編のゴッタ煮感からして、
相当キテるなーと思ってたら、その通りの感じでした。
メジャーな大バジェットの中で、
こんだけ攻めた映画作れるのは本当に尊敬するし、
誰も規制なんてしてなくて、
作り手の心意気次第ってことを改めて感じました。
ただ、圧倒的な映像のパワーに対して、
お話の作り、運び方が今イチかなとは思いました。
(原作ありきなので難しいところですが…)

お話としては、元刑事で落ちぶれた役所広司が、
失踪した娘の加奈子を探すうちに、
巨大な陰謀に巻き込まれていくというものです。
それに加えて、過去シークエンスとして、
加奈子に恋した男の子野話が並行して進んでいきます。
冒頭、クリスマスのシーンから始まるんですが、
リア充な描写とタクシードライバーのトラビスばりな、
役所広司のカットバックで見せていく。
からのタイトルまでの流れは好きでした。
とくにタイトルのくだりは、往年の刑事ドラマを下敷きに、
キッチュにアップデートした趣きで良かったです。
この映画の何がオモシロいかといえば、
前述したとおり映像だと思います。
過剰なまでにカットを割りまくり、
しかも、顔のアップが異様なまでに多い。
それに加えて攻めたスプラッター描写。
ときにはアニメーションを交えつつ。
映画全体に詰まっている情報量がハンパじゃなくて、
これを見れただけで結構お腹いっぱいで満足。
出てる俳優も実力派ぞろいで、
それゆえに顔のドアップ演出が成立していると思います。
特に主演2人、役所広司と小松菜奈は相当好きでした。
役所広司のギトギトさは終始素晴らしいし、
小松菜奈のファムファタールっぷりもナイス!
彼女は初めて見ましたが、妖婉さや人形みたいな顔立ちで、
表情から何考えてるか読み取れない様を見てると、
これから売れそう〜とも思いました。
役所広司が加奈子を捜索する現在のシークエンスが、
ハードボイルドなのに対して、過去のシークエンスは
全体に甘酸っぱいタッチ。
でも、その対照的な現在と過去が終盤に行くにしたがって、
シンクロしていく進め方は好きでした。
すべては加奈子に起因するあたりは、
「桐島、部活やめるってよ」の桐島のような存在にも見えます。
スプラッターや暴力描写は園子温の影響下かな?
と表面的には感じました。いかんせん相当攻めてます!
(奥さん役は黒沢あすかで、園作品常連組だし)
ここまで述べてきた通り、映像に関しては相当良かったんですが、
ストーリーの組み立て、エンディングまでの展開がイマイチ…
後だしじゃんけんなことが多くて乗り切れなかったです。
刺激的な映画体験であることは間違いないので、
劇場で見た方が楽しめると思います。

テレクラキャノンボール2013


今年の2月頃に上映されて話題になったものの、
時間が合わずに断念したんですが、
再上映ということで後輩と2人で見てきました。
周囲の人から評判は聞いてたんですが、
予想を遥かに超えた怪作で、とんでもなくオモシロかった!
声だして幾度も笑ってしまったし、
声にならない悲鳴もあげてしまったし、色んな感情を揺り動かされる。
そして劇場全体が目撃者と化す、
あのライド性は舞台やお笑いのライブのそれレベル。
映画としての出来はさておき、1つ1つのシーンのパンチ力、
しかも、それがフィクションではなく、
現実社会に立ち上がったときの迫力。こんな映画見たこと無いよ!

そもそもどういう映画と言えば、
本作の監督であるカンパニー松尾とその他のAV男優(監督)が、
東京⇒札幌へ移動しつつ、その道中で知り合った女性と
ハメ撮りさせてもらって、
そのポイントを稼ぐという大会の模様を収めたものです。
ポイントには細かい設定があって、
それをクリアすれば加算されていき、総合順位を争う。
この段階で引いてる人は引いてるのがよく分かります。
そんな方は、そっとウィンドウを閉じてください。

最初にルール説明、レース参加者の紹介があるんですが、
なかなかに手際が悪くて、大丈夫かなーと思ってたら、
その前半はホントに単なる序章でしかなくて、
中盤〜後半にかけてのドライブ具合は驚愕。
主に札幌での2日間のナンパ、ハメ撮りが描かれているんですが、
ナンパ法も進め方も人それぞれ。
タイトルにあるようにテレクラ使ってもいいし、
出会い系サイト、出会い喫茶もちろんストリートも。
それぞれ自由に行ったあとに、夜にホテルの1室に集まり、
皆でハメ撮りを見ながら追加ポイントを確認する。
このポイント確認シークエンスが本作最大の見所で、
出てくる女性のパンチ力がハンパじゃない。
単にSEXしてるシーンだけじゃなくて、
前後の会話も記録していて、これが無類にオモシロい!
最初はこれ笑っていいんだろうか…と逡巡するんですが、
一度リミッターが外れてしまうともうダメでしたw
(客体化うんぬんの話は承知しています。
その話をしたい人はドンジョンのレビューをどうぞ⇒リンク)
しかも単純に笑えるものだけじゃなくて、
日本社会に現実に存在する、
暗部のようなものが垣間見えたりもする。
それこそ、漫画のウシジマ君で描かれている世界が
虚構でも何でも無いことが分かる。
個々のdetailは述べませんが、
エログロと呼ばれる類いのものかもしれません。
でも、それ以上に人が覚悟を決めたときに
どこまでできるか?っていう点が際立っている気がしました。
終盤はこれまでのエログロを取り返すかの如く、
綺麗な展開になっていくのも全体のバランスを考えると良かった。
1つ言えるのは、この映画を見る人生と見ない人生があるとすれば、
見る人生の方がよっぽど楽しいってことです!全男子必見!

ホドロフスキーのDUNE



人間として大切な何を失った先輩から
「今年はホドロフスキーの年やで!」と言われ、
エルトポを見て結構な衝撃を受けた後に本作を見ました。
アレハンドロ・ホドロフスキー監督、御歳83歳。
彼がエル・トポ、ホーリー・マウンテンの次に手がける予定だった
未完の超大作SF「DUNE」という映画について、
画コンテを交えつつ、本人や関係者にインタビューするという
ドキュメンタリー映画です。
彼の狂気に満ちた過去作を見た後で本作を見ると、
そのギャップに驚かされました。
あんだけアーティスティックな作品だから、
難しいか、めんどくさい系の人かなと思いきや、
めちゃくちゃ饒舌で人懐っこくて、話がオモシロいおじいちゃん!
半分くらいは彼へのインタビューなんですが、
「DUNE」という映画がオモシロいだけじゃなくて、
このおじいちゃんのオモシロさが乗ってるな〜と思いました。
「DUNE」は元々小説が原作があって、
それを彼がアレンジし、当時の最高の才能を結集し、
これまでにないSF映画を作ろうとしていたことが分かります。
彼自身に才能があることは、
過去2作で明らかになっていたんですが、
それに加えて人の才能を見抜く審美眼、
何とか引っ張ってくる才覚、人徳が強調されていました。
ダリ、オーソン・ウェルズ、ミック・ジャガーetc..
実現しなかったものの、あの手この手を使い、
出演を了承させた彼の手腕は唯一無二。
しかも、そのエピソード1つ1つがめちゃくちゃ面白かった。
(彼の訛が強い英語もかわいらしい感じでしたね)

DUNEを作るにあたっては、
すべてのコマをフランスの漫画家に描かせています。
その人はもうすでに亡くなっているんだけど、
結果的にこの手法を取ったことが後世に大きな影響を与えることに。
準備万端でハリウッドに完成したコンテともに
売り込みをかけると、作品自体の評判はいいんだけど、
ホドロフスキーが監督で撮るなら出資しないという回答ばかり。
最終的に作品制作自体は頓挫してしまう。
その後、デビット・リンチが「DUNE」を撮ることになるんですが、
この一連のシーンは爆笑しましたね。
リンチ版の何とも言えないチープさ、
それが公開された当時の彼のエピソードがホントに最高!
あとなるほどな〜と思ったのは、
原作ベースで映画を作るときの心構え。
「オレはDUNEをレイプしたんだ!」っていう
言葉は悪いけど、言ってることは正論で色々考えさせられました。

結局ホドロフスキーは制作中止となってしまいましたが、
彼が作ったコンテは様々な映画のベースとなるし、
このときに彼が発掘した才能は80年代映画の礎を築いていく。
それが彼の考えた「DUNE」という映画のエンディングと
シンクロしてるっていうあたりがグッときましたね。
「DUNE」はなくても、様々な映画の中で生きている。
ホドロフスキーの世界観を理解する上でもオススメ!

※この作品を見る前に過去作のいずれか見ておいたほうがいいです。
(エル・トポはTSUTAYAの良品発掘にあります)

2014年6月24日火曜日

オールド・ボーイ



イノセントガーデン見て以来、幾月経ちましたでしょうか…
パク・チャヌク監督の復讐3部作と呼ばれるうちの1つ。
実は見てなかったんですよね〜
こないだ映画館で、これから公開される
スパイク・リーのリメイク版の予告編を見て、
ウワー結局見てねぇと思い立ち、しっかり見ました。
とんでもなくオモシロいやないかい!
僕の好きなエッセンスが凝縮されまくり。
オモシロい韓国映画は2014年段階で色々ありますが、
この物語の緻密さはなかなかお目にかかれないなぁと。
「目には目を、歯には歯を」という
復讐の原理原則をエゲツナイくらい煮詰めて
映像化したって言えばいいでしょうか。
1つ1つのショット、シーンに一切無駄がなく、
矢継ぎ早に展開されるので息つく暇も無いし。
たくさん映画見てると、
「あーこれはあのパターンかー」と思うときもあるんですが、
本作は設定が突飛というのを差し引いても、全く予測不可能な展開。
主人公と同じように敵役の手の平で転がされてるかの如し。
パク・チャヌク監督作は急いで全部見ようと思います。

2014年6月23日月曜日

KAMIKAZE TAXI



某先輩に薦められて、
ずーっと放置していたものをやっと見ました。
超社会派ハードボイルドな作品でした。
原田眞人監督作品は初めてでしたが、
タフも含めて色々見ていかなアカンな〜と思いました。
ヤクザ×政府の人×在日外国人という掛け合わせで
産まれたものがコレか!という。
ヤクザの人が政府の要人の家を襲い、
金を奪ったのちに、たまたま出会ったペルー人の
タクシードライバーと逃避行の旅をする話。
wiki見てたら、以下の逸話が…

------------------------------------------------------------------------
2002年に出演した『ラスト・サムライ』の撮影初日に
トム・クルーズに自らの監督作品のビデオを数本渡したと云う。
その中の1本『KAMIKAZE TAXI』と
数年後に観たトム・クルーズ主演の『コラテラル』の
設定・台詞が酷似していた事に憤りと絶望感に苛まれたと云う。
------------------------------------------------------------------------

真偽はさておき、確かに超似てるかも。
なんだけど、狂気の具合は段違い!
ペルー人を役所広司が演じてる時点で、
「えっ?」ってなるし、高橋和也のチンピラっぷりもたまらない。
中盤は少し退屈やなーと思いつつも。
後半にかけてのギアのかかり具合たるや。
最初はかわいかった役所広司の片言の日本語が、
笑えないくらい怖くなってくるのが良かったな〜
(パチンコ玉×ネクタイの武器化は衝撃…)
あと映画自体が政治性を帯びていると、
当時の空気が分かって、その点も興味深い。
約20年前くらいの話だけど、
日本人の対外的な姿勢は全然変わってないなーという
隔世の感があまり無いのもポイントかもしれません。
刺激強い邦画見たい人はオススメです。

2014年6月22日日曜日

ノア 約束の舟



予告編見る度に悪い意味で「これヤバいな〜」と思いつつ、

監督はブラック・スワンやレスラーの
ダーレン・アロノフスキーやから見とくかってことで見ました。
そもそもの「ノアの方舟」という旧約聖書の物語自体も
ボンヤリしか知らなかったからなのか、あんまり乗れなかったし、
中盤から一定のノイズがかかって楽しめなかったです…
キリスト教圏の人はまた違う見方になるんだろうけど、
たまたま神を真面目に信じていた男による、
独りよがりな蛮行にしか見えなかったんですよね〜
神がアダムとイブを作り、そこから人類が誕生した世界で、
ノアはその子孫。彼が夢の中で、あるお告げを受ける。
それは「洪水で人間は全員ぶっ殺すから、
お前さ、動物が逃げるようの舟作ってくんね?」というもの。
ガッテンでい!と言わんばかりに、
彼は自分の家族と神の使いである、
岩の巨神兵とともに舟の建設を始める。
大地の異変につぶさに気付いた動物たちは、
続々と舟へやってきては眠らされ、舟に格納されていく。
でも残された人類もおとなしく最期のときを迎える訳も無く、
アダム・イブの子どもであるカインの子孫、
トバル・カインを筆頭に舟を奪取すべく軍を形成していく。
この辺りから違和感があって、
ノアが家族以外の人類は汚れまくってて、
略奪や争いの中、どんなことをしても生き残ろうとする
唾棄すべき存在みたいに描かれているのが何とも…
テメエは舟に乗って生き延びるからいいけどさぁ!
そっから人類が舟を襲うシーンは
前述した思いをさらに強くするようなシーンで。
巨神兵が躊躇なく、人間をぶっ殺しまくる!
人形みたいに人間が飛びまくって、死にまくるという点では
おもしろいなーとは思うけど、欺瞞性が頭をもたげる。
それをさらに強調するのが息子であるハムの恋愛要素。
「動物はつがいなのに、僕にはいないの?」
という童貞コジラセ系エピソードなんですが、
それをローガン・ラーマンが熱演。
しかも、姉役はエマ・ワトソンという、
完全にウォール・フラワーの布陣なのは良かったかな。
そもそも神という実体の無いものが、
夢の中でお告げを与えてきたという二重に実体性の欠けたことで、
人間を皆殺しにする神経はなかなか理解しがたい。
いうても神話なので、突っ込んでもしょうがないんだけど、
宗教性を帯びているので、何かな〜と思っていました。
後半は、これまで述べてきた欺瞞をノアに突きつける展開。
それは本来病気で子どもを産めないはずの
エマ・ワトソンが妊娠するという想定外の事態が発生する。
人間がこれ以上産まれない完璧な編成だったのに、
ノアの計画が狂うことになる訳です。
「産まれた子どもが娘だったら、ぶっ殺す!」と言うものの
初めての孫だから、神からのお告げと現実で逡巡する。
これで前半とバランス取るかな〜と思いきや、
最期にあの決断だものね〜「ハンパやってんじゃねーよ!」
と見ながら声に出そうになりましたw
なかなか難しいな〜と思って見終わり、
秘宝を読んでたら、映画ライターの高橋ヨシキさんが
極めて分かりやすいことを書かれていました。
「聖書に出てくるノアさんは
マッドマックスみたいでかっこいいですよね!」
そういう見方をすれば、確かに楽しめる!

300 帝国の進撃



予告編を見たときに「キター!」と
アドレナリン全開で楽しみにしていた作品。
前作はDVDで見たんですが、
今回は映画館の大画面+IMAX 3Dで
メチャクチャ楽しんで見れました。
前作は構図が単純で、
300人のスパルタ兵士vs数万のペルシア軍。
しかし、本作はもう少し話が複雑化。
300の前日譚でもありつつ、その先の話でもある。
そもそもペルシア軍がなんでギリシャに攻め込んできたか?
それはギリシャ軍に父親を殺されたクセルクセス王の復讐。
その背後には凄腕の女軍曹アルテミシアがいて、
彼女はもともとギリシャ生まれなんだけど、
ギリシャ兵に虐げられた過去を持ち、
復讐の業火を燃やしている。
それに立ち向かうのがギリシャ軍のテミストクレス。
(今回はスパルタも出てくるけど、あくまでサブ的な役割)
アルテミシアvsテミストクレスの海上バトルの物語。
最初の因果となる戦いの時点で、
ザック・スナイダー印のストップ&スローなアクションが炸裂!
血は遠慮なく出るし、バッタバッタ死んでいくし、
この時点で心はグッと掴まれます。
(ちなみにザックは今回は製作で、監督は別の人になっています)
この戦いで父を亡くしたペルシアのクセルクセスは
神王としてギリシャへの報復を行うことに。
その情報をキャッチしたギリシャ側は団結して戦おうとする。
テミストクレスがスパルタの説得に行くんですけど、
そこでの兵士への「かわいがり」が余りに過剰で好きでした。
結局、スパルタは己のプライドのために戦うと連合入りを拒否。
これが前作の300の話となる訳です。

今回のすべての戦いが海上で行われるんですが、

ギリシャ側の兵力、舟の数はペルシアより圧倒的に少なく、
奇襲や作戦を練ることで何とか迎撃していきます。
ここで仰天シークエンスがあって、
女軍曹アルテミシアがテミストクレスを引き抜こうと、
陽動作戦として誘惑しまくった結果、
敵の大将同士によるセックスが始まるというね…
結果的には決裂するんですけど、
テミストクレスが自軍に帰って来てからのセリフが、
イイ感じにバカで最高だな〜と思いましたw
フラれた形となったアルテミシアは
恐ろしい作戦として海上に石油をばらまき、
それに火つけて、文字通りの火の海を産み出して、
ギリシャをフルボッコ。
一方で300人のスパルタも皆殺しになったことが判明。
そして、ラストの海上での最終決戦へ。
スパルタの300人同様、見た感じで絶対勝てへんやん!
それでも己や友人、家族のために戦うんや!
勝てる根拠なんて無くても戦うのは
国とか関係なく、戦時独特のメンタルだし、
それが見てて上がるな〜と思いました。
ラストにかけては戦いの中で躍動する姿は
素晴らしかったんだけど、
一騎打ちが今いちパッとしなかったのがもったいなかったかな?
物語が終わったあとのアヴァンタイトルは最&高でした。
頭からっぽにして、この祭りに参加すべし!

私の男



浅野忠信×二階堂ふみ×熊切和嘉で映画撮影開始!
という記事を秘宝で読んで以来、楽しみにしていた作品。
劇場で予告編を一回も見ないという、
相当フラットな状態で見れたこともあり、相当オモシロかったです。
熊切監督の前作「夏の終り」もかなり好きだったんですが、
本作は更にボクの好きな要素を足されている印象でした。
ホントに二階堂ふみ無双といいますか、
相変わらず映画ばえする女優さんだな〜と改めて。
彼女が出てれば、一定以上のクオリティが
保証されるといっても過言ではないくらい。
本作は近年の重め家族映画の系譜に名を連ねるだろうクラシック。

主人公は二階堂ふみ演じる花と、浅野忠信演じる淳吾。
花は幼い頃に家族全員が地震による津波で亡くなってしまう。
孤児となった花を、地震の避難所で出会った淳吾が引き取ることに。
これだけ聞くと美談のように思えるんだけど、
年月が経つと2人は親子であり、
なおかつ男女の関係という近親相姦の物語です。
冒頭いきなり流氷の中から、
二階堂ふみが現れるシーンでガツンとやられる!
そこからは幼い頃の花と淳吾の出会い、
時系列順に2人の関係が描かれていく。
舞台は北海道の田舎町(奥尻?)で、日本独特の村社会。
説明描写は少なくて、状況を行間から読み取るミニマルな作り。
はじめは何の変哲もない親子に見えるんだけど、
徐々に「なんか変だな〜」と思わせる描写が増えてくる。
その描写の数々が素晴らしくて最高でした。
花の淳吾の彼女に対するリアクションとして、
「美人薄命って言ってみて♡」とか。
あと宴会場の2階でのイチャツキね。
完全に指がアレにしか見えないw
(指舐めはその後も象徴的に使われています。)
淳吾の彼女が去ったあと、2人の関係性は加速していき、
ある朝のシーンで決定的瞬間を迎える。
つまり、2人がセックスをする。
これがまたエロいんだな〜
2人の色気に加え、血の演出も加わり、
本作における2人の関係性を最も象徴するシーンとなっていました。
ただね。一言いいたいのはビーチクですよね。
前半に淳吾と元カノのセックスシーンがあるんですが、
そこでは元カノのビーチクがモロ出しなのに、
なんで花のビーチクは映さない訳?!
プラトニックな関係ならまだしも、
ガンガンなんだから、勇気もってビーチク出そうよ!
と思いながら見ていましたw
このセックスを目撃していたお爺さんを
花が間接的に殺してしまうことで事態は急転。
逃げるように東京のボロアパートへ移住することに。
花は高校生になってるんだけど、
2人の関係は閉じてより強固なものになっていく。
そんな生活を送っている中で、
花の殺人事件の真実を掴んだ男を
今度は淳吾が殺してしまう。このシーンが相当攻めてて、
クリームシチューぶっかけてからのぉ〜ノド輪かっさばく!
殺人シーンがやたらリアルな上に、
それを直視させるのが最高でした。
これ以降関係性が逆転し、花が淳吾を養うようになる。
花には恋人ができるんだけど、それを高良健吾が熱演。
浅野忠信×高良健吾のシーンは5億点!
花に男を寄せ付けないための行動なんだろうけど、
マジ最高だな!と思いました。
からの銀座を闊歩する淳吾の、
文字通り水も滴るイイ男っぷりよ…
この2人は家族を持ちたい、愛したい
という点では合致してるんだけど、
それがボタンのかけ違いでズレていく。
でも、お互いが唯一無二の存在であることに変わりはない。
その辺のバランスが好きだったな〜
原作も読み始めたので、映画と比べながら楽しみます。

2014年6月18日水曜日

Book (May 2014)


5月は白石一文氏の小説を片っ端から読みました。
もともと興味あったんですけど、
なかなかタイミングなくて、GWで帰省しているときに
昼間ヒマで古本屋で買ったのをきっかけにアクセルかかり、
4冊一気に読み切ってしまいました。。。
「この世の全部を敵に回して」だけが少し異色で、
タイトル通りダークサイド強めでした。
残りの作品は共通するテーマとして、
喪失の先に見える大切なものっていう印象です。
はっきり言って上記作品の多くは
過去もしくは現在進行形でサラリーマンとして、
イケイケな人が主人公なので、嫌いな人は嫌いかもしれませんw
ただそんな人が様々な経験を通じて、
金、地位、名誉以外のなにかを求める姿が好きだなと。
気になる方は「一瞬の光」からどうぞ。


この世界の女たち アン・ビーティ短篇傑作選

山内マリコさんの帯コメ見て拝読。
確かにどこか寂しさや突き放した人生観を、
感じる作品が多かったと思います。
主人公は30〜40の女性(既婚者)が多かったので、
歳を取ってから読み直したいところです。



タイトルだけ見ると賢そうな本ですが、映画レビュー本です。
6作の映画作品(主にSF)を通じて、
現代の監視が強化されている状態や
個人データの取り扱い等に関する見解が説かれています。
監視とか個人情報は権力の手に渡り、
悪用された場合を念頭におくと悪しきものなんだけど、
一方でその利便性、安全性の側面もあって…
という微妙なトピックを近未来SFを通じて、
語られているのが興味深いです。(ちなみに筆者は否定派)
映画の内容がキッチリ説明されているので、
ネタバレにうるさい人は一通り見てから読むと良いと思います。
(最近のネタバレへの過度な反応にも釘刺してましたw)

2014年6月8日日曜日

プールサイド・デイズ



新宿のシネマカリテの映画祭での限定上映。
映画秘宝の町山さんのコラムで見かけて、
「コレは!」と甘酸センサーが作動し鑑賞した次第です。
その結果、新たな甘酸クラシックの誕生!最高でした!
「アドベンチャーランドへようこそ」に構造が近くて、
恋愛要素を抑えた分、本人の成長にフォーカスした青春物語。
夏×短期バイト×アミューズメントパーク×青春が
甘酸クラシックを生む黄金の方程式であることを
改めて証明したマスターピースだと思います。
監督を務めるのがNat FaxsonとJim Rash。
アレクサンダー・ペイン監督の、
ファミリツリーで脚本参加している2人です。
この時点で好事家の人達はビンビンきてますよね?

主人公はダンカンという14歳の少年。
両親が離婚してて、母に引き取られている。
母の新しい彼氏(スティーブ・カレル)、その連れ子(女子)と
夏休みのあいだ、海の近い別荘で過ごすことに。
超内気なダンカンはマッチョ思想なカレルとも
全く打ち解けれないし、彼からは映画の冒頭で
「お前は10点満点で3点だ」と言われる始末。
海に近くて楽しいはずなのに、
彼の居場所は無く、孤独な日々を送っていたところ、
たまたま近所のプールを訪れる。
そこで街で何回か遭遇したサム・ロックウェル演じる
オーウェンと再度出会う。彼はプールで働いてて、
彼に誘われ、ダンカンがプールでバイトを始めて…という話。
原題はThe Way Way Backなんですが、
この邦題はナイスだな〜と思いました。
前半ダンカンが徹底的にイケてない描写の連続。
連れ子の女の子にはウザがられるし、友人もできない。
そんな彼がプールで働き始めて、徐々に事態が変わってくる。
そのきっかけとなるプールサイドでのダンスシーンは
彼が自分の殻を破るシーンとして秀逸だし、
照れずに一生懸命やることの大切さがよく分かる。
このダンカンを雇ったオーウェンがめちゃくちゃオモシロくて、
彼の行動で何回も声だして笑ってしまいました。
(落ち込んでるダンカンを励ますダンスが超最高)
もちろん恋愛要素もあって、カレルの姉の娘であるスザンナと
徐々に仲良くなっていく。
2人とも片親で、母親に引き取られたものの、
父親のことを忘れられないという同じ境遇。
この2人の関係の甘酸さがたまらんな〜って感じ。
並んで花火見るところはベタで良いし、
ダンカンと2人でプールで過ごす1日も好き。
(ここでのオーウェンのチャカシもニクい!)
そもそもダンカンがなんで自分の母親含めて、
仲良くなれないかといえば、自分だけが疎外されているという
自意識に加えて、自分にあーだこーだ言ってくる
大人達の欺瞞にウンザリしているということ。
爆発するのがカレンの浮気が発覚するシーン。
このシーンの気まずさったらない。
しかも、スザンナにもrejectされてしまうというね…
行き場のなくなったダンカンはプールを訪れると、
従業員の送別会をやってるところ。
そこではありのままの自分をさらけ出し、
それを受け入れてくれる仲間がいる。多幸感満点。
ゆえにパーティー明けの朝方のシーンでの
これまでふざけてばっかりだったオーウェンの
セリフがまた泣かせるんだよね〜
彼の成長譚でもあるなぁと思って見てました。
またラストが沁みる構成でして。
家族内ではダメ扱いされていたダンカンが
プールではヒーローになっていて、
些細ではあるんだけど、それを見た母が取る行動。
ラストショットは「卒業」を思い出しました。
音楽も全編に渡って素晴らしく、
ソッコーでサントラ買いました。
公開予定立ってないみたいですけど、
チャンスあれば万難を排して劇場で見るべき映画!

グランド・ブタペスト・ホテル



ウェス・アンダーソン監督最新作。
前作のムーンライズキングダム見たタイミングで、
過去作をほとんど見た結論として、
「あんまり好きじゃないかも…」となったんですが、
見ない訳にはいかないということで見ました。
前作は子どもが主人公で、そこに乗り切れなかった
+ギャグセンスが今イチという印象。
本作はファンシーな世界観は変わらないものの、
ギャグが逐一最高で、その部分で乗れたので楽しめました。
あとラストもこれまでの作品よりも影があって好印象。

舞台は1930年代のヨーロッパにある
グランド・ブタペスト・ホテルというホテル。
そこでロビーボーイやってたオジさんが
作家のジュード・ロウに過去を語る形式で話が語られます。
今は閑散としたこのホテルも1930年代は繁盛していた。
それは支配人をしていたグスタフの力で、
彼が全体を取り仕切り、さらには寂しい晩年を過ごす
金持ちのババアたちの相手をしていた。(ときにはSEXも含めて!)
その親しかったババアの一人が亡くなり、
遺言に有名な絵画を彼に渡すことが書かれていた。
その遺産をめぐってのドタバタコメディです。
いつもどおり見てて惚れ惚れする世界観は健在。
前から横からFixでカッチリしたカットが多いのが特徴なんですけど、
やっぱ建物や電車など閉鎖系との相性が良い、
カット割りだなーと改めて思いました。
色使いもビビッドなところはトコトンいくし、
不吉な出来事なときは極端に無機質っていう対比も鮮やかでした。
あとメンドルという店のお菓子が彼の世界観を
もっとも象徴していたように思っていて。
それが顕著なのが刑務所での差し入れの検閲シーン。
食い物の差し入れは軒並みぶった切るのに、
看守がメンドルのお菓子だけは切らないっていう、
美しいものに対する彼の美学をそこに見ました。
前述した通り、今回はギャグがとても良くて、
特に唐突に訪れる暴力がツボでした。
冒頭の遺言確認でのグーパン、
弁護士ぶっ殺すシーン、脱獄途中で遭遇する看守とのバトルしかり。
しかも、わりと容赦ないエグめの描写なのがナイス!
物語の要素要素では好きな部分が多くて、
脱獄シークエンス、山頂で執事と会うシーン、
ホテルでの誰が誰を狙ってるかよく分からない銃撃シーンetc
ただ全体の構成がバランス悪いというか、
たたみかけるように物語が終結するんですよね〜
ビターな余韻が残るのはいいんだけど、そこが気になったかな?
物語の物語という構造については町山さんの解説を読むと
色々理解が深まったので、ご参考まで⇒リンク
彼のフィルモグラフィーの中では好きな方でした。

2014年6月7日土曜日

新幹線大爆破




東映クラシックスを見ていく一環で。
最高におもしろかったな〜!
タイトルどおり、新幹線を題材にしたパニック映画。
高倉健が主演でテロリストを演じています。
零細企業の元社長で、会社がうまくいかなくなり、
奥さん、子どもにも逃げられた彼が仲間とともに
新幹線に爆弾を仕掛けて…という話です。
この爆弾の設定がオモシロくて、
80kmより減速したら爆発してしまう。
だから、新幹線はノンストップで走り続けなければならない。
動き続けてるのにリミットがあるのが好きでしたね。
大半はテロリスト側が有利な立場で、
物語が進んでいくんですが、
警察がドジ踏みすぎてマヌケなのは笑えるレベルw
いかんせんですね〜高倉健のかっこよさを再認識しましたね。
色気というか、シズル感というか。
彼の持つストーリーは劇中で語られるんですが、
それが無くても伝わってくる。
背中で語る漢とはこういうことやと!
僕は高倉健の仲間役である山本圭が特に好きで、
彼の最後の壮絶さたるや…
宇津井健も出てるんですが、
もう亡くなってしまったのかと思うと悲しかった…
あとはラストっすよね〜
逃げる/逃げれないものとしてハラハラさせつつ、
あのラストショットがアッツイ!
マイケル・マンのヒートはモロにこの作品を意識してるでしょ!
70年代のイケイケ日本映画をガンガン見ていきたい!

ペイン&ゲイン



映画秘宝のDVDスルー特集で、
巻頭で取り上げられていた作品。
監督はマイケル・ベイ。
アルマゲドンやバッドボーイズ2バッドetc以降、
大味映画監督の代表格として評価されてきた訳で。
僕も半笑いで「マイケル・ベイ?」と思ってきたんですが、
本作はめちゃくちゃオモシロかったです。
考え方を改め、過去アーカイブdigりたいっす。

マーク・ウォールバーグが主人公で、
ジムでトレーナーとして働く筋トレマニア。
彼が訪れた自己啓発セミナーで、
「やる人間」か「やらない人間」か?
という問いに「オレはやる人間だ!」と覚醒。
こんなに筋肉モリモリなのに、金持ちになれないのは何故だ!
そこで努力して自分を高める訳でもなく、
短絡的に誘拐強盗を行うことで、金持ちになろうとする話。
「やったやつ」が勝ち上がるんだ!という
アメリカン的な価値観=アメリカンドリームを
ブラックジョーク交えつつ、シニカルに描いています。
ベイ作品の特徴といえば、
過剰なアクションが醍醐味と言われていますが、
そこは他の作品よりは抑えめでした。
強盗したあとは金を手に入れて、
すべて手に入れたように思うんだけど、欲望にキリは無くて。
さらなる強盗が始まってからは、負のスパイラルに突入。
恐ろしいのがこれが実話ベースの話ってこと。
特に最高だったのが、
ドウェイン・ジョンソン a.k.a ザ・ロック!
前科者で刑務所でキリスト教信者っていう設定が
あの肉体とのギャップでオモシロかった!
しかも後半はコカイン中毒がぶり返して…というね。
全体的にバカっぽいけど、じゃあ「やらない」でいいのか?
とか考えさせられたりもしました。
次はトランスフォーマーシリーズを見ようかな!

2014年6月3日火曜日

ニューヨーク、恋人たちの2日間


パリ、恋人たちの2日間という映画の続編。
Beforeシリーズ以来、
すっかりジェシー・デルピーを追いかけてますが、
なんか好きなんすよね~
絶妙のこましゃくれ感と経年変化感。
前作同様、彼女が監督してて舞台がNYへ移動。
NYで一度結婚し、子どもを1人もうけて離婚。
そして、バツ2のクリス・ロック演じるミンガス、
およびその連れ子の4人で生活している。
そこへパリからジェシーの家族がやってくるというお話。
前作に比べて全体の雰囲気が相当コメディよりというか。
恋愛ものとしての要素はかなり削ぎ落とされてて、
家族を絡めた普遍的な「誰かと一緒にいること」が
テーマになっています。
異文化コミュニケーションものではあるんだけど、
さらに家族のクセが凄い!(©千鳥 ノブさん)
フランス人って何となくエレガントなイメージを
抱いている人多いと思うんですけど、
そこを裏切りまくってくるのが痛快でした。
爆笑したのがお父さんとミンガスの台所でのくだり。
コレ説明しても全然伝わらないと思うんで、
是非見て欲しいです。ピーター・フォンダ!
あとジェシーの妹とその彼氏のどうしようもなさ。
人の家でなんの遠慮もなく、
不躾な奴はホンマ嫌いやわ〜とイライラMAXで見てました。
(電動歯ブラシのシーンは当然爆笑w)
その一方で主演のクリス・ロックが相当好きでしたね〜
今までは何となくのパブリックイメージで、
バカっぽい俳優と思ってましたが、
witも兼ね備えてて、最高やないかい!と。
ヴィンセント・ギャロが本人役で出演してるのもポイントで、
魂のくだりもウゼーと思いつつ楽しみましたw
ダラダラ見るのがオススメっす。

2014年6月1日日曜日

インサイド・ルーウィン・デイビス 名もなき男の歌



映画の日ということでコーエン兄弟監督の最新作を見てきました。
彼らの作品を網羅してる訳ではありませんが、
サスペンス系統のバーバーやノーカントリーは大好きです。
最近観たバーン・アフターリーディングも楽しんだので、
期待して見に行ったら、やっぱりおもしれぇ!って感じでした。
彼ら特有のシニカルさもふんだんに楽しめるし、
人生についても考えさせられる重厚さも兼ね備えた作品。
主人公はタイトル通り、ルーウィンという男。
彼はミュージシャンで、元々はデュオで活動してたんですが、
相方が自殺してしまい、やむなくソロで活動している。
とにかくお金がなくて、家も無く、
寝床はいつも人の家のカウチ。
そんな彼の周辺で起こる1週間近くの出来事を描いた物語です。
ちょっとした事件は起こるけど、
派手な何かが起こる訳でないので、退屈と思うかもしれません。
僕も寝そうになったりしたんですが、
そのタイミングでギョッとする描写が放り込まれる。
冒頭はルーウィンが歌うシーンから始まって、
グッドなフォークソングだなぁと思っていたら、
店の裏でボコボコにされてしまう。
コーエン兄弟の映画見てていつも思うけど、
殴った音がめちゃくちゃ痛そうなんよね〜
この映画でその要素が必要かどうかはさておきw
人物紹介とか背景の説明は特になく、
淡々と物語が進んでいくので、
前半は人物関係を追う感じで見てました。
この映画でオモシロいのが、ルーウィンの取る行動が、
ほとんどすべてと言っていいほど裏目に出るところ。
その徹底っぷりは凄まじく、ホントに一個も上手くいかない。
夢 a.k.a 呪いを追いかけるルーウィンは
様々な方向から退路を断たれていく。
ミュージシャンである自意識との折り合いを見てると
一体オレがどこの誰か?」という
2 FACEのNORIKIYOのラインを想起したりしました。
売れなかったころのエピソードとしては最高にオモシロいけど、
それは売れてから相対的に見てオモシロいのであって、
目の前にある現実はとてもシビアなもの。
それと対峙しながら、何とか世の中をサバイブしようとする
ルーウィンの姿は胸にグッとくるものがあります。
それと同時にシニカルに笑える要素もあるのが楽しくて、
僕が好きだったのは彼女の妊娠と、猫の一連の取り扱い。
彼女役をキャリーマリガンが演じていて、
それはもうとてもカワイイんですが、
彼をののしる言葉の汚さがハンパない!
「こんな悪口よく思いつくな!」という言葉が
マシンガンの如く飛び出す様は、
見た目とのギャップで相当オモシロかったです。
あと猫は物語全体で象徴的に使われてるんですが、
飼い主にルーウィンが猫を返しにいくシーンが最高。
特に教授の奥さんの悪気ないけどウザい感じや、
タマタマのくだりは劇場全体が沸いてました。
ラストは冒頭のシーンと同じ場面がカットが
微妙に変わってもう1回流れるんだけど、
その日のライブに至るまでの彼が生きてきた
「人生 a.k.a ストーリー」を見てるから何倍も沁みる。
どんだけ辛いことがあったとしても、
もしかしたら自分に才能が無かったとしても、
なにがあったとしても、歌うしかないんだよ!
それはもはや動物の帰巣本能の如く。
音楽好きな人は見て損無し!