2016年3月30日水曜日

夢のカケラ CHEMISTRY 完全ドキュメント



日本のR&Bをこよなく愛す後輩がいるんですが、

彼のために…と軽い気持ちでbook offにてSalvage。
長らく積んでいたんですが、
寝る前に少しずつ読もうと思い手に取ったところ、
これがめちゃくちゃオモシロくて、
1日で読み切ってしまいました。
本作はASAYANというTV番組で開催された
男性ボーカルオーディションについて、
当時審査員を務めていたKCこと松尾潔氏が
その舞台裏を綴ったドキュメントです。
僕も当時リアルタイムで番組を見ていて、
このオーデイションのことはよく覚えています。
音楽に興味を持ち始めていたとはいえ、
中学生だった僕は単純にTV上のリアリティショーとして、
この番組を見ていました。
一方、本作は審査員であり、
日本屈指のプロデューサーである松尾潔の視点から見た
音楽的見地からオーディションの状況が
つぶさに書かれています。
当時読むよりも今読むとより一層オモシロいのは、
このオーディションが生み出したのは、
Chemistryという歴史に残るボーカルデュオだけではなく、
ATUSHI、NETHMITHという
現状日本最高峰のエンターティメント集団である、
EXILEに所属する2人も登場しているからです。
2人での活動を休止しているChemistry、
かたや規模としてジャニーズを超えるかもしれない
男性グループ集団となりつつあるEXILE TRIBE。
それぞれの栄枯盛衰があまりにも香ばしすぎる訳です!
本作内でも言及されていますが、
Chemistryのデビューシングル「Pieces of A Dream 」は
ジャニーズ以外の男性ボーカルグループで
21年ぶりのオリコン1位という快挙を成し遂げ、
また、現状のEXILEの活躍っぷりを見れば、
本格派の男性ボーカル曲が世間に馴染むことになったのは、
すべてはこのオーディションから始まったと
言っていいのかもしれません。
(EXILEのレコード大賞受賞曲であるTi Amoは
松尾潔プロデュース!!)

本作でオモシロかったのは松尾潔氏の文章の巧みさと、

その巧みさで描く音楽をビジネスとすることの悲喜交々。
音楽業界を目指す若者5人の運命を、
いくつかのファクターで取捨選択していき、
1通りの歴史が紡がれていく。
結果は堂珍・川畑だと知っているんだけど、
その過程を今読むと興味深かったです。
とくに観客至上主義の良し悪しについては、
インターネットによる可視化が進む中、
色んなところで様々な意見がありますが、
少なくともエンターティメントは
観客に迎合しすぎると長期的に見れば
損をしてしまうように僕は考えています。
このオーディションは2000年初頭ですが、
ネット、リアルの両方でアンケートを取っていて、
その結果を細かく研究しているようでした。
つまり、単純に歌がうまいだけではなく、
マーケティングの観点からも
念密に検討されていたことが伺い知れました。
もし観客至上主義で選んでいれば、
堂珍・佐藤(ATSUSHI)で決定していた訳ですが、
実際にはATSUSHIが最初に落とされる酷い現実。
しかし、今となっては最良の選択だったように見えるんだから、
人生は何が起こるか分からないとシミジミ。
ちなみにATSUSHIに関しては、オモシロい記述があったので、
そのまま文章を引用します。さすがに笑いました。

佐藤だけは音楽の場に私情を持ち込まなかった。

80年代から90年代にかけて大活躍した
セクシーなラッパー<ビッグ・ダディ・ケイン>の
レパートリーに「スムーズ・オペレイター」という名曲がある。
〜中略〜
僕は佐藤の性格とそのヒップホップ的なファッションから、
ひそかにこの曲を彼のテーマソングと決め、
自分の頭の中で鳴らしていたものだ。



松尾潔氏は音楽ライターが出自であるため、

いわゆるソウルの定番ナンバーでTV用とは思えないチョイス。
Apple Musicでプレイリスト作ったので、
興味ある人は聞いてみてください→リンク
あと当時のオーディションのリッチさもポイント。
TVの企画として約1年にわたって、
選択の過程を見せる時間のリッチさが懐かしくて、
今の情報化社会でここまで時間かけて
見せてもらえるコンテンツは少なくなっているよなぁと。
最終決定前のアトランタへの旅では
アレステッド・デヴェロップメントのスピーチのお宅訪問、
歌を披露するなんていうリッチさにも驚きました。
Chemistry以外のユニット名の候補も記載があって、
今となっては、それらがあまりにダサすぎて
本当にChemistryで良かったなと思いました。
今年は結成15周年だそうなので、
何か動きがあるかもしれないので注目していきたいですし、
過去音源もこれからじっくり聞いていきたいと思います。





2016年3月27日日曜日

12モンキーズ



テリー・ギリアム監督作品。
未来世紀ブラジルゼロの未来と見てきましたが、
本作もディストピアものでした。
それにタイムリープの要素を加えた作品になっています。
主人公を演じるのブルース・ウィルスで、
彼は人間が地上で生きることのできなくなった世界の住人。
彼が権力者に命令されて、
人類を大量死させたウイルスの原因について、
タイムリープを駆使して見つけ出すという任務を担います。
しかし、彼がいくら皆に忠告しても
単なるクレイジー扱いされてしまうんですが、
過去、現実、未来、妄想のカオスっぷりというか、
何が正しくて、間違っているのか、
それが物語の推進力になっているのがオモシロかったです。
公開されたのが1996年ということもあり、
ノストラダムスの大予言を含め、
終末論が高まっている時期の作品らしく、
退廃的なムードもグッドでした。
あと本作のブラピのHighな感じは、
のちのファイトクラブに通じる部分かと思います。
ゼロの未来にも出てきたんですが、
彼の作品に出てくる理想郷というのが、
「サンセット・ビーチ」で共通しているのも興味深くて。
メディアによって埋め込まれたお前らの理想だ!
という皮肉のような気がします。
終盤、タイムリープとブロンドを
ヒッチコックから引用してくるところが好きでしたね。
誇大妄想は世界を救う!

2016年3月26日土曜日

Soundcloud

Soundcloudで気になる新曲見つけても、
「点」でしか聞かなくて困っていたんですが、
今年から月ごとにプレイリストを作りました。
アンダーグラウンドからメジャーまで、
色々と取り揃えているので、
興味あるアーティストをdigしてみてくださいませ。





バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生


前作のスーパーマンのリブートも見ていたので、
公開初日に見てきました。
アメリカンコミックの二大巨頭を担うMARVELとDC。
MARVELの破竹の勢いはご存知の通りですが、
DCも映画サーガを産み出していこうという
意思をはっきりと感じる作品でした。
前回のスーパーマンのリブートに続き、
ザック・スナイダーが監督なんですが、
正直もう彼の味付けは飽きたかな…?
(当然うぉ!と思う部分も多分にあるんですが。)
次の展開に期待ですし、DCはこの後に
スーサイド・スクアッドが待機しているので、
それが今から楽しみで仕方ありません。

※ここからはネタバレしまくりで書きます。

ザック・スナイダー監督といえば、
映画史に残るウォッチメンのオープニングがあります。
本作もそれを彷彿とさせるナイスなオープニングでした。
バットマンであるブルースの両親が殺されて、
彼がバットマンとなる部分を描いているんですが、
スローモーションの使い方、カットの割り方、
どれも素晴らしくてツカミは上々。
全体のバランスとして本作で再リブートとなる
バットマンの割合が高めになっています。
前半はなぜバットマンがスーパーマンを
敵として戦うことになるのか、その背景を描いていきます。
この背景が前作の内容を逆手に取ったもので、
スーパーマンは世界を救ってくれるけど、
その過剰なパワーゆえに同時に世界も破壊しているのでは?
という見立てから始まっています。
僕が前の作品を見たときに感じた違和感は、
まさにこの部分だったので、
かなり納得して楽しむことができました。
そして、本作でもっとも僕が好きだったのは、
ジェシー・アイゼンバーグ演じるレックス・ルガー
立て板に水の如く、屁理屈ばかりこねるところや、
自分の手を汚さず陰謀を企てるところなど、
彼の存在によってだれずに、
ギリギリ興味が持続できたと思います。
(ただ上映時間があまりに長過ぎ!)
スーパーマンを罠にハメて、
バットマンと戦わせるのが彼の役目なんですが、
ビルの屋上でポラロイドをバラまくシーンが
最悪にクズで最高最高!
バットマンとスーパーマンの違いとしては、
正義の定義が異なるという点だと思います
バットマンはヴィジランテイズムで、
悪人が居なくなることで平和がもたらされる思想。
一方のスーパーマンはあくまで人を救う点に
重きを置いていてその結果悪人を倒し、
平和をもたらすという思想。
その思想のぶつかり合いがここ十数年続いてきた
アメリカとテロとの戦いを彷彿とさせるものだと感じました。
ザック・スナイダーといえば、300から始まる、
独特のアクションが持ち味だと思いますが、
本作でも怒濤のアクションを炸裂させていました。
最初に述べた飽きたというのはこの点で、
早回しでカット割りまくりの映像は
ポイントポイントで見せてくれるならいいんですが、
ずっと同じだと味がしなくなるというか。
あと彼の持ち味とも言えるスローモーションは、
ブルースが両親の墓参りに行くシーンがかなり良くて、
そのショットで心を鷲掴みにされました。
肝心の2人のバトルについては、
パワーバランスどうすんねんと見る前から
疑問に思っていたんですが、
スーパーマンのパワーを落として見せる形で、
懸念していたドラゴンボールのような
パワーインフレ化はなくて安心しました。
この戦いの結末がお母さんの名前というのは、
笑わかしてくるな〜と思ってしまいました。
あとバットマンの見た目は賛否両論あるかと思いますが、
重戦車のようでかっこいいし、
演じているベン・アフレックの
トレーニングシーンはかなりアガりました!
ラストはゾッド将軍の文字通り焼き増しが、
ラスボスとして登場。
港だから大丈夫という謎の大義のもと、
あきらかに港で収まりきらないバトルが展開されます。
しらけそうになったところで、
ワンダーウーマンの登場で挽回!
ラストもオープニング同様、葬式締め。
監督変えて続編を見せて欲しいと思います!

リリーのすべて



<あらすじ>
1926年、デンマーク。風景画家のアイナー・ベルナーは、

肖像画家の妻ゲルダに頼まれて女性モデルの代役を
務めたことをきっかけに、
自身の内側に潜む女性の存在を意識する。
それ以来「リリー」という名の女性として
過ごす時間が増えていくアイナーは、
心と身体が一致しない現実に葛藤する。
ゲルダも当初はそんな夫の様子に戸惑うが、
次第にリリーに対する理解を深めていく。
(映画.comより)

トム・フーパー監督作品で、
渋谷駅の地下広告の艶やかさに惹かれて見てきました。
同監督作品では英国王のスピーチ、
レ・ミゼラブルをこれまでに見ています。
見た目のエレガンスさは
過去作に通ずるものがありますが、
内容はよりシビアでビターな内容でした。
ハリウッドのビッグバジェットで
本作が作られる状況から鑑みるに、
ジェンダーに関する理解は日本よりも
海外の方が進んでいるのだなーと改めて思いました。
ただ本作の難しいところは性の自己実現自体が
社会に迎合する形に見えなくもないというところ。。
1930年代ごろの実話がベースなので
当然といえば当然なんですが、
社会の同調圧力への抵抗よりも
自身の葛藤にフォーカスしている点を
どう考えるかで本作の好みは別れるような気がします。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

冒頭、雄大な自然のショットから始まるんですが、
これは主人公であるエイナーが描く題材になっています。
トム・フーパーはこれまで35mmで撮影してきていますが、
本作ではデジタル撮影を採用しています。(1)
ゆえに全体にバキッとした画になっているので、
自然描写はかなりカッコよく見えました。
ただ、主人公夫婦の職業が画家ということもあり、
絵画のようなキメのショットも多いんですが、
時代背景を考えると、このあたりはフィルムの方が
相性よかったのでは?と思います。
実際、同時代で近い題材のキャロルは
フィルムゆえの味わいがありましたし。
彼は風景画家として有名で、
一方の奥さんであるゲルダは肖像画家。
ゲルダはエイナーほど売れっ子ではありません。
ある日、モデルが不在の中、ゲルダがオモシロ半分で、
「ユー、モデルやっちゃいなよ!」と言って
ストッキング、シューズを履き、
ドレスを上から羽織ったことで
眠っていた、抑えていた女性の部分が覚醒します。
その後、本各的に女装し、自らをリリーと名乗り出して、
どんどん女性への憧れが強くなり、
実際に活動が活発になります。
とにかくエディ・レッドメインの演技が素晴らしくて、
エイナー/リリーのトランスジェンダーのボーダー具合を
一つ一つの細かい仕草で見せてくれます。
彼の中の女性の部分の覚醒具合も、
その演技から伝わってくるというね~
とくに最初の衝動の描き方の艶かしさが
相当グッときました。
トランスジェンダーはレズビアン、ゲイ、バイセクシャルと
まとめてLGBTとして議論されることが多いと思います。
それは見た目と中身の不一致という
非常に大きな括りであって、
実際に抱える問題はそれぞれ異なる
ということの理解が深まりました。
いわゆるLGBの方は自らの性を受け入れた中で、
好きになる対象が同姓(もしくは両性)です。
そこで同姓を好きになることへの社会からの
差別、圧力に対して戦うといった構造の映画が多い。
一方のトランスジェンダーは
自らの性を受け入れることができず、
「異性になりたい」という願望を持つんだと思います。
したがって、本作でも社会との軋轢というよりは
内面にフォーカスし、如何にして自らの性と向き合うのか?
という点が興味深かったです。
性の内面的なことは1人で抱えがちですが、
本作では1人の中で性がトランスするというより、
リリーという別の女性人格が存在する
二重人格として描いています。
これによって客観性を高めて、
リリーとどのように向き合っていくべきかを、
ゲルダも一緒に考えることができるようになっています。
もっとも観客の目線に近いのはゲルダですので、
観客の感情移入の導入も担っているわけです。
ゲルダとエイナーのある種の共犯関係も興味深かったです。
エイナーの苦悩を純粋に受け入れた
単なる無償の愛というわけではなく、
自身の画家としての成功もリリーがきっかけになっているからです。
ゲルダがエイナーの幼馴染に恋に落ちるくだりは
別になくてもよかったとは思います。
ヴィジュアル面でも結構強烈な場面が多く、
エディ様の「息子」がほぼ出ていて、
よく子どもの頃にしていた、
「息子」をまたに挟んで女子化するのは
万国共通の文化なんだと思ったり。
特にキツかったのは治療のシーン。
男性であることをキープするために、
股間に放射線を当てるのとか、
逆に女性になるための治療とか。
ここまでして得るものっていったい何なんだろうか…
と考えさせられました。
ラストは最初のショットが、
うまく活きる形になっていて好きでした。
キャロルと並べて見ると良いと思います。

2016年3月25日金曜日

野獣死すべし



昔の映画を見ようということで
松田優作主演の本作を見ました。
名前だけは聞いたことがあるけど、
中身の情報ゼロで見たのもあり、
超オモシロかったし衝撃を受けました。
伊達というサイコキラーを
主人公にしたサスペンスなんですが、
このキャラクターがとにもかくにも強烈!
冒頭にクライマックスレベルの
ガンアクションがあるんですが、
カジノでの立ち振る舞いからして狂気に満ち溢れていました。
また、ここのアクションは引きのワンショットで
撮っているのも特徴的で、松田優作の体全体を使った
アクションを楽しむことができます。
伊達の特徴としてはクラシック音楽をこよなく愛し、
東大卒のエリートで元通信社勤務。
この通信社勤務のころに世界の戦場をまたにかけて、
凄惨な写真を数々撮ったことで
精神に異常をきたしているという設定。
前半の落ち着いた冷静沈着に事を進める姿から、
後半の化けっぷりは驚愕するしかありません…
電車内で追ってきた刑事に諭すように語る、
リップヴァンウィンクルの話の怖さよ!
また、共犯者を演じるのが鹿賀丈史で、
料理の鉄人のイメージしか持ってなかったんですが、
本作では主演の松田優作に負けず劣らずの
狂気を感じさせてくれました。
Huluに昔の角川映画が色々入ってきているので、
他の作品も見進めたいところです。

追伸
あと、この映画に出てくる松田優作は
僕に似過ぎてて少し怖い気持ちになりました。




2016年3月19日土曜日

観察する男

観察する男 映画を一本撮るときに、 監督が考えること

想田監督の最新作である牡蠣工場
メイキング本ということで読みました。
映画自体も素晴らしかったんですが、
この本を読むとより作品の理解が一段と深まりました。
また、これまで多くは知らなかった監督自身の背景も
知ることができて良かったです。
映画制作の時系列でインタビューが構成されているので、
プロットを立てない観察映画を作ることの
スリリングさがダイレクトに伝わってきます。
一度映画を見ている身からすると、
こんなにアウトテイクがあるのかと驚きましたし、
一見意味のない映像の羅列から、
1つの筋を見い出して映画として成立させる、
これぞまさにクリエイティブ!と思う瞬間の連続でした。
また出版元が名著「善き書店員」等を生み出した
ミシマ社ということもあり、
インタビューの文字起こしのニュアンスが
極めて自然でとても読みやすいです。
本当にその場で話を聞いているような感覚。
映画を見た人は必読の1冊だと思います。

軽率の曖昧な軽さ

軽率の曖昧な軽さ

中原昌也最新作ということで読みました。
いつも通りというか、
中原昌也の小説を読んでるなぁと実感できる
楽しい時間を味わいました。
荒唐無稽にも程がある話は、
一体どこに向かうんだろう。。
というオモシロさと若干の不安を与え、
その磁場が歪んだ中でハッとさせられる文章が
紛れ込んでいるのが好きなんですよねー
中原さんは小説の中に自分の考えを
かなり入れ込むタイプの作家だと思います。
社会で嫌だなとか変だなと思うことに対して、
鮮やかにエグり取るパンチライン力が素晴らしく、
その考えに僕はかなり共感しているので、
毎回読んでいて、そうそう!と共感しています。
短編集なんですが、タイトルにもある、
「軽率」という話が一番ボリュームがあって、
結果的には一番好きな話でした。
ある作家が街を彷徨い歩き、
出会った人々との奇妙なやりとりを描いているんですが、
どれもキャラクターが強烈。
極端にデフォルメしているけど、
それぞれのキャラクターが持つ本質的な部分は
現実社会でも見ることがあるので他人事じゃないなー
と思ったりしました。
あと表現でかなりグッときたものがあって、
無表情であることをこんな風に描いています。

家の表札に本来書いてあるべき「石田」の文字すらなく、
代わりにただのカマボコの板が打ち据えてあるかのようだ。

なんなん、この感覚!と思わざるを得ません。
中原昌也作品を端的に示しているのが、
前作の知的生きかた教室の加瀬亮による
名帯文だと思いますので、
これを読んで気になった人はオススメです→リンク

北国の帝王


ロバート・アルドリッチ監督作品。
以前から気になっていたんですが、
やっと見ることができました。
これまで見たのは、ロンゲスト・ヤード
どれもめちゃくちゃオモシロかったんですが、
本作も最高最高でした!
舞台は世界恐慌時代のアメリカ。
ホーボーと呼ばれる貧困に苦しむ人たち、
今でいうところのホームレスがいて、
彼らは車がないために、
移動手段として列車にタダ乗りしようとします。
そのタダ乗りを決して許さない車掌。
タダ乗りを巡って命をかけた、
ホーボーvs車掌の戦いを描いた作品です。
本作は圧倒的に役者のパワーが大きくて、
車掌をアーネスト・ボーグマン、
ホーボーをリー・マービンが演じているんですが、
もう2人の顔の力が凄まじ過ぎて …
ボーグマンは鬼のような顔なんだけど、
後半に進むにしたがって嬉々とした表情を
見せるようになるのが良いんですよねぇ。
とくに縄を繋げたアンカーで、
ホーボーをいたぶるときの顔よ!サディスト!
一方のマービンはダンディズムを感じる存在で、
ホーボーの皆からもリスペクトされてるし、
メンターとしての役割もきっちり果たす、
お手本とすべき漢の中の漢。
持たざるものがKUFUする姿にもグッときました。
こんな2人が列車のタダ乗りをかけて戦う、、
今の時代じゃ考えにくいけど、
展開がとてもスリリングだし、
走ってる列車の上でのバトルなので
アクションも迫力満点!
他の作品もガンガン見ていきたい監督です。

2016年3月17日木曜日

エンド・オブ・ホワイトハウス



続けてアントワン・フークア監督作品。
同時期に似た様なタイトルの作品がありましたが、
原題はOlympus has fallen。
ホワイトハウスがテロリストに攻撃、占拠されるというもので、
この手のアメリカ本土内のテロを扱った作品としては、
ドラマの24がぶっちぎりだと個人的には思っています。
なぜなら、これらの作品の魅力の中心である、
テロリストとの駆け引き、裏切りものといったギミックは
時間をかけて見せられることで興奮度、緊張感が増すからです。
なので、あまり期待はしていなかったんですが、
比較的大きなバジェットで製作できる映画の強みを
生かした内容だったので楽しむことができました。
まず前半のホワイトハウス陥落までのアクションが凄まじい!
銃撃シーンは迫力たっぷりだし、遠慮なく人が死んでいくので、
「陥落」という言葉がぴったりなくらい、
アメリカがボコボコにされます。
(しかも、今回のテロリストが北朝鮮系というのがフレッシュ!)
そこから1人の元シークレット・サービスの男が
ジャック・バウアーさながらに孤軍奮闘しアメリカを
取り戻そうとするんですが、彼がなぜ大統領を救うのか、
という背景を冒頭にセッティングしているのが良くて、
感情移入しやすい作りになっていました。
ただアメリカ最高フゥー!ていう結論は、
本作内で起こった事態を考えると、
そんな簡単に収束するのかな…と感じました。
続編としてエンド・オブ・ロンドンの製作が
決まっているらしいので、
そちらは劇場で見ようと思います!

クロッシング



アントワン・フークア監督作品ということで見ました。
不滅のクラシック、トレーニング・デイをはじめ、
ザ・シューター、イコライザーなど
個人的にハズレなしの監督です。
主人公の3人が直接関係する訳ではないんですが、
3人の警官のストーリーを通じて、
警官が持たなければならない倫理と現実の境目を
浮き彫りにしていく作品でかなり好みでした。
警官は市民に信頼され模範となる
存在であるべきという前提を元に
各自が事情を抱え、善と悪の境目を漂う
心理描写がオモシロくて、警官もあくまで人間であり、
善→悪、悪→善、その狭間を3人のキャラクターで
描き分けていきます。それを体現するのが豪華役者陣。
主人公の3人を演じるのは
リチャード・ギア、イーサン・ホーク、ドン・チードル
僕が好きだったのはイーサン・ホークの話です。
彼は子だくさんの家庭を支える大黒柱で、
奥さんが自宅のカビで喘息を悪化していることから
引っ越したいんだけど家の頭金が足りません。
そこで悪人をぶっ殺したり、
ガサ入れした現場から金を盗もうとしたりする。
正論で見ればダメに決まっているんですが、
彼の家族の様子や果敢な仕事っぷりを見ていると、
誰が彼のことを否定できようか、
否!できぬ!と思ってしまいました。
(こういった人がサブプライム・ローンの餌食になったのかも…)
ドン・チードルの話は潜入捜査官ものとして、
よくある展開なんだけどボスが
ウェズリー・スナイプスで超アガる!
また、本作はブルックリンの黒人の方たちの状況に
大きくフォーカスした作品なので、
テーマが如実に現れているように感じました。
リチャード・ギアの話はタクシー・ドライバーと似ていて、
やる気のなかった警官が自らを奮い立たせ、
正義に身を捧げるという展開は燃えると思います。
(エンディングのリチャード・ギアの顔よ!)
邦題のクロッシングから想起する主役の目立った競演はありませんが、
ここでのcrossingは「一線を越える」という意味だと考えれば、
物語の本質を突いたナイス邦題といえるでしょう。
警官社会派ものとして、
トレーニング・デイと同じくらい好きな作品になりました。

2016年3月16日水曜日

Diagonal


昨年からSUMMIT主催で開催されている
Diagonalというイベントに行ってきました。
そもそも"diagonal"という言葉の意味は"対角線"
これまで見たことがなかった"対角線"、
つまり新たなセッションを目撃できる現場ということで
とても楽しみにしていました。
登場順にそれぞれどんな感じだったのか、
ざっと書いてみます。

1. C.O.S.A × Kid Fresino
今回最も楽しみにしていたセッション。
他の2組はビートメイカーとラッパーという展開が
ある程度見えていた中で、
2人のソロラッパーがどんな化学反応を起こすのか?
事前には想像つきませんでしたが、
個人的にはこの日のベストアクトでした!
冒頭、Kid FresinoのMixtapeに収録された、
Ramzaがプロデュースした"Import" のビートが鳴り響き、
最初に登場したのがCampanella!
主役の2人は自らのバースが始まるとともに登場。
(Back DJはjjjでした)
そしてKid Fresinoの最新アルバムに収録された
"Scarface Feat. C.O.S.A"と続けて披露してました。
そこから、それぞれの曲を順番にスピットしていく流れに。
まずC.O.S.Aなんですが、
以前に同じUnitでライブを見たことがありました。
そのときはアルバムリリースしたばっかりで
曲を知らないこともあって、あまり乗れなかったんですけど、
今回は格段のステージングで本当に圧巻でした。
Conanを呼び込んでの"The Man"、
jjj がProduceした"Wassup"、
そしてオリジナルの"知立Babylon Child"、
見た目はfatだけどラップはtightな感じでした。
知立Babylon Childの背景は以下のリンクを参考まで↓

wenod records
SEEDA's Tweet

対するKid Fresinoのステージは
Featuringの充実っぷりがたまりませんでした。
この日ステージ上にfebbがいて、
その状況で披露された"Turn up Feat. jjj"は
超エモーショナルな展開だったと思います。
さらに今もっともKoolな男であるIOも
"Special Radio"で登場!
しかもKANDY TOWNの面々を引き連れて!
たくさんの人がステージ上で好き勝手に
ワチャワチャやる感じ久々に見てアガりまくり!
最後は2人の最新作である"LOVE"で大団円。



ラッパー2人がステージに立つことで、
勢いが倍ではなく累乗で増していく感じは
初めての感覚でexcitingな体験でした。
7月にコラボアルバムがリリース予定とのことで、
超楽しみなところです。

2.OMSB×K-BOMB
SIMI LABのOMSBと
Black SmokerのK-BOMBのセッション。
インストアルバムである「OMBS」で
K-BOMBがFeatしていることもあり必然の組み合わせ。
2人の対談がBlack Smokerで読めるので、
興味ある方はどうぞ→リンク
K-BOMBが音を出して、
その上にOMSBがラップするというスタイルでした。
このセッションはぶっちぎりの衝撃度で、
HIPHOPは自由で野蛮な音楽だってことを
改めて思い出させてくれました。
K-BOMBがどんなマシンから音を
出しているかよく分かりませんでしたが、
OMSBの曲でもフィルター(?)とかダブ処理が
エゲツな過ぎて注意しないと、
どの曲か分からないくらいの迫力。
K-BOMBもマイクを握ってラップしていましたが、
呪詛のようなラップで、
ステージ上に何か降臨してたと思います、多分。

3.seiho×PUNPEE
今もっとも注目すべきアーティスト2人の
セッションということで最も期待値が高かったと思います。
個人的にハードルを上げ過ぎたために、
少し食い足りなかったかなーという印象です。
seihoくんの音楽はそれ自体がとても雄弁な上に、
パフォーマンスのエモーション性が魅力だと思っています。
つまり"seiho"というコスモで音楽とパフォーマンスが
完結してるんですよね。
ゆえに情報過多なラップとぶつかると、
どうしても魅力の部分が影を潜めてしまうなぁと。。。
(逆に歌との相性は抜群で三浦大知の曲は最高最高!)
PUNPEEはラップ、seihoくんは鍵盤という
フリースタイルシークエンスはオモシロかったですし、
牛乳いじりのくだりもショーとして楽しかったです。
最後に2人で共作した新曲、"Perfect Lineup"で占め。
まだまだ可能性を感じるステージだったので、
またどこかで見れることを期待しています。

時をかける少女



今や細田守監督のアニメがもっとも有名かと思いますが、
大林宣彦監督が手がけた最初の映画版を見ました。
アニメ版が青春要素高めであるのに対して本作は不穏の塊!
あくまで“タイムリープ”は恐ろしいもので、
アンコントロールな能力であるという扱いで、
それに主人公の原田知世が翻弄されるというお話になっています。
不穏と思える点は2つあって1つは演出面。
当時CGが導入されたばかりという状況もあり、
非常に安っぽいんですが、
今見るとそれが逆にトリップ映像のような味わいになっていました。
もう1つは原田知世と深町の関係性。
ダイレクトなセクシャル描写はないんだけど、
2人の距離感だったり、スキンシップの見せ方によって
強烈に性の匂いがするんですよねー
これがアイドル映画として成立した時代があったのかと思うと、
改めて当時の市場の懐の深さを感じた作品でした。
「土曜日の実験室」という言葉が印象的で、
久々にキエるマキュウ feat. 宇多丸の土曜日の実験室を聞いたら、
サビとアウトロで深町君のセリフをサンプリング。
MATRIXな現実 変える土曜日の実験室!




2016年3月13日日曜日

オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分



今もっとも注目している俳優、
トム・ハーディー主演作ということで見ました。
公開時に見に行けず後悔していたんですが、
今回見てさらに後悔しました。。。
というのも超素晴らしい作品だったからです。
しかも、映画館で見て没入度高めてたら、
もっと好きになってるだろうなと思います。
登場人物はトム・ハーディーが演じる主人公のみ。
(他の登場人物は車内の電話のみ。)
彼が不倫した結果、相手に子どもができてしまって、
その出産に立ち会うために
仕事場から病院まで車を飛ばします。
その移動中の車内での物語となっています。
ひたすら走っている車から1歩も出ない超ミニマルな作り。
このミニマルな構成を成立させる、
トム・ハーディーの演技が素晴らしすぎた!
始まったときには完璧な男として登場するんだけど、
物語が進むにつれて
自分の家族、仕事が崩壊していく過程を
演技のみで観客に共感させる力がハンパなかったなぁ。。
あとは夜の街の美しさが最高最高!
街ではなく高速道路というのがミソで、
僕は夜行バスの休憩で寄るSAが大好きなんですが、
その感じに限りなく近いもので良かったですね〜
最強の2人の冒頭のショットに近い印象)
さらに冒頭のウィンカー、彼の職業、エンディング等、
さりげない演出の数々が主人公の境遇を
表しているのもナイスでした。
ずっと同じシーンなので退屈に感じかもしれませんが、
集中して見れば見るほど、
この映画の魅力を楽しめるのでは?と思います。

トップ・ファイブ


アカデミー賞でのオープニングでの
モノローグが話題となったクリス・ロックが
主演・監督・脚本も担った作品ということで見ました。
(モノローグでの痛烈なジョークはこちらを参考に→リンク)
リチャード・リンクレイター監督の
Before〜シリーズを彷彿とさせる作りで、
とても好きな作品でした。
主演のクリス・ロックは有名俳優なんだけど、
コメディアンという自分に付きまとうイメージに嫌気がさし、
そこから脱するため社会派映画に出演します。
その取材としてNY TIMESの女性記者が
密着するという形のストーリーになっています。
冒頭から2人の丁々発止のやり取りが始まって、
このトークのジャムってる感じが最高にたまんない!
またこの2人は男女という関係に加えて、
1人は演者で1人は批評家という構造があるので、
オモシロさが増していました。
タイトルのトップ・ファイブは
ラッパーの中で好きな5人をピックするという
劇中内でのトピックの1つを指します。(グループを含む)
最後に僕の現時点のトップ5で締めたいと思います。

1. JAY-Z
2. KENDRICK LAMAR
3. KANYE WEST
4. Q-TIP
5. THE ROOTS

6TH MAN:COMMON

2016年3月11日金曜日

俺たちステップ・ブラザース -義兄弟-



マネー・ショートをきっかけに
監督であるアダム・マッケイの諸作品を見ていこう
ということで見てみました。
ウィル・フェレルが主役で
ジャド・アパトーが製作を務めているので、
オモシロくないわけがなかったです。
40歳になっても親にパラサイトしている
おっさん2人が親の結婚によって義兄弟になるんですが、
この2人がメチャクチャ過ぎてとにかく最高。
その片方をウィル・フェレル、
もう一方をジョン・C・ライリーが演じています。
はじめは超仲悪くて何かにつけて喧嘩するんだけど、
徐々にお互いが似た者同士であることに気づき、
友情を深めていきます。
展開の支離滅裂さ、速さはツッコミたくなるかもしれませんが、
圧倒的なボケの量であまり考える隙を
与えない作りになっているので、
ゲラゲラ楽しむことができました。
個人的にはゾンビを手作りするシーンが好きでしたね〜
また後半の両親の不和をきっかけに
大人になるシーンはグッとくる部分がありましたし、
エンディングに子どもをボコボコにする
リベンジのくだりでサムアップ!
他の作品もどんどん見たいと思います。

2016年3月9日水曜日

ザ・ロブスター



独身者は身柄を確保されてホテルに送り込まれ、

そこで45日以内にパートナーを見つけなければ、
動物に変えられて森に放たれるという近未来。
独り身のデビッドもホテルへと送られるが、
そこで狂気の日常を目の当たりにし、
ほどなくして独り者たちが隠れ住む森へと逃げ出す。
デビッドはそこで恋に落ちるが、
それは独り者たちのルールに違反する行為だった。
映画.comより)


映画館で予告編を見て気になっていた作品。
結婚相談所のような設定と予告の雰囲気から、 
ちょっとしたイイ恋のお話かと思いきや、 
Dark side of this world!!な展開の連続で最高最高! 
かなり突飛な設定の中でも伝えたいメッセージは 
しっかりとしていて、表現がバイオレンスだとしても、 
これこそ純愛!と言っていいのかもしれません。

 ※ここから盛大にネタバレして書きます。

本作のオモシロさの大部分を担っているのが、
パートナー斡旋所 a.k.a 収容所です。
あらすじにもあるように独身の人間は
45日以内にパートナーを見つけなければ、
動物になってしまうという奇怪極まりない設定。
このルールが大元にあり、物語が進むにつれて
収容所内のルールが徐々に明らかになっていきます。
この施設はパートナー探しを斡旋するためのルールが
たくさん設定されているんですが、
奇怪なことが多いんですよね。
とにかく1人でいることの不安を煽り、
2人でいることの大切さを押し売りしてきます。
それは笑えるものから笑えないものまで様々。
笑えるものだと入居1日目のしきたりで、
片手を手錠で縛られるというのがあります。
その理由が2つあることのありがたみを知るため。
またマスターベーションも禁じられていて、
もし見つかるとトースターで手を焼かれてしまいます。
マスターベーションは禁止されているん一方で、
家政婦が毎日素股行為を施してくれます。
しかし、素股を寸止めすることで、
男性機能を常にアクティブにしておくという設定が
あまりにもくだらなくて最高最高!
またパートナーのいる/いないで
危機的状況がこんなに違うんですよ!
という小芝居もシュールで好きでした。
ただ笑えない部分も多くあります。
パートナー探しの時間として
ダンスタイムが用意されているんですが、
男性、女性ともにそれぞれ同じ服装を着させることで、
入居者を没個性化させます。
その没個性化の結果、何が起こるとかというと、
身体的特徴の共通点で距離を埋めていくようになる。
その象徴として登場するのが片足の悪い男。
彼は足の悪い女性を探すんですが見つからない中、
鼻血がよく出る女性に恋をします。
そこで彼は無理やり鼻血を出し、彼女との共通点を生み出し、
仲良くなるという行動を取るんですね。
つまり、2人でいなければ人間でいれないという
強烈な圧力のもとで人間同士が無理やり仲良くなり、
2人で暮らしていくというねー
さらにもう1つ追加のルールがあって、
1日1回の狩りの時間です。
これは入居者同士が麻酔銃を使ってお互いを狩りあって
捕らえた人数分だけ入居日数を延長できるシステム。
これも悪質でカップルにならず、
1人で居続けようと思うと同じ場所にいる人間を
犠牲にし続けなければならないんですね。
ここまで長々と述べてきた設定自体は突飛ですが、
現実社会でも1人でいることに対する
批判的な同調圧力は確実に存在するので、
あながち笑ってられないというのが興味深い点だと思います。
見えにくい同調圧力をこんなオモシロい見せ方して時点で
理屈コネ太郎な僕はもう大満足でした。
主人公も足の悪い男と同じように
自分を残酷な人間と偽って、
残酷な女性とカップルになります。
ここからの展開がまた悪魔のような話で、
まず犬が無残に殺されるシーンがあって、
その見せ方が、足に付着した血→犬の死体という
いわゆる鬼畜の所業演出。
自分を偽ることの代償は自分の大切なものを
無残に失ってしまうことである
というメッセージだと思いました。
この地獄の施設からエスケープするのが後半で、
主人公は同じように施設をエスケープし、
1人でいることを選んだレジスタンス集団に仲間入り。
この集団は施設とはすべてが対照的になっています。
まずルールというか掟として、
友達は大丈夫だけど人に恋をしてはダメ。
また施設が管理の行き届いた
綺麗な場所であるのに対して山の中で野宿生活。
1人で生きていくことの過酷さはあるものの、
やっと手に入れた1人でいることの自由に
彼が喜ぶ気持ちも分かる自分がそこにいました。
施設では誰に惹かれることもなかった主人公が、
レジスタンス集団の1人(近視の女性)に惹かれ始め、
物語が展開していきます。
2人が恋仲になり体の暗号で会話するシーンが
小学生みたいで可愛らしく見えるなー
と思ったのもつかの間、
悪夢のような仕打ちが近視の女性を襲います。
その結果、前半で同調圧力の象徴のように見えた、
身体的特徴の合致を良しとする描写が
今度は一転して愛しさと切なさを携えるというねー
前後半の対比は人間が誰かと共生していくことを
とても考えさせる作りになっています。
この見え方の転換が本作を見る楽しみだと思います。
他人の気持ちを理解することの究極形として、
他人の「痛み」を共有するのであるという、
ラストのキレの良さもナイスでした。
監督は本作でカンヌ賞を受賞して、
これが2作目ということで前作も見たいし、
これからも楽しみです!

2016年3月8日火曜日

スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜



共和党のトランプ氏の登場により、
いつもより注目されているアメリカ大統領選。
語り口が豊富なので興味ある方は是非。
2016年アメリカ大統領選挙 解説記事まとめ
大統領が出てくる作品といえば、
個人的には24シリーズを思い浮かべますが、
本作は大統領選、しかも民主党の代表選挙に
フォーカスした作品となります。
主演がライアン・ゴズリングの演技が
本当に素晴らしかったです。
初めは志の高い男なんだけど、
選挙、政治のダークサイドに巻き込まれていく中、
徐々に心が死んでいく様子がたまりません。
とくにラストの魚の目っぷりたるや。。
また脇を固める選挙参謀として、
ポール・ジアマッティと、
フィリップ・シーモア・ホフマン
というシビれる配役も最高最高!
本作はアメリカの選挙システムの中での
人間の駆け引きを描いているんですが、
終盤の畳み掛けるかのようなシーンの連続がエゲつない。
とくに終盤のインターン生を使った一連の展開が
本当に素晴らしくてですね。
階段で密談するシーンにおける、
ゴズリングの2面性表現としての陰影の使い方や、
代わりのインターン生がさくっと入ってくるところなど、
お〜怖〜というシーンが多くて楽しかったです。
監督知らずに見て、
「こんなタッチの人いるんやなー」とか
思ってたら出演してた、
ジョージ・クルーニーが監督でした!オーマイガー!