2013年11月27日水曜日

もらとりあむタマ子



山下敦弘監督の最新作。
苦役列車、マイバックページ、天然コケッコーなど
好きな作品が多いので、楽しみにしていました。
主人公のニートを演じるのは前田敦子。
苦役列車でも好演していた彼女が山下監督と
ガップリ四つに組んだ作品です。
過去の作品に比べると、幾分オモシロさには欠けるけど、
新しいタイプのアイドルムービーとして楽しめました。
前田敦子はアイドルとしてはアレかもしれませんが、
女優としては好きだなぁと思いました。顔・面・力!

タイトルにもあるようにタマ子というのが前田敦子で、
大学卒業したてのニート。出戻りで山梨の実家に戻ってくる。
両親は離婚していて、父親と2人暮らし。
彼女は好きなときに食べて、寝て、漫画読んで。
家事も父親任せ。まさに絵に描いたようなニート。
そんな彼女が家族、地元の人との関係性から自立に向かうお話。
前田敦子は最近まで日本のトップアイドルだった訳ですが、
本作での体当たりっぷりはハンパない!
上述したとおり、実家でぬくぬくするシーンが
映画の大半を占めてて、その自然体の演技というか、実在感たるや。
自分のことを棚に上げて、人のことについて小言を述べたり、
その一方で自分は特別な「何者」かであると考えたり、
モラトリアム期独特の部分がコミカルに描かれてるのは楽しい。
周りのキャラクターもよくて、特に写真屋の息子は
前田敦子との奇妙なバディ感込みでナイス!
なんといっても父親ね。この親子関係が本作のキモ。
表面的にはウザイ態度を取っていても、
ホントは好きな気持ちを直接台詞で描くのではなく、
細かい描写の積み重ねで描いていくのは素晴らしいです。
特に父親が女性と食事したという話が展開されるシーン。
その話を親戚同士でしているんですが、
前田敦子のリアクションにフォーカスしている。
あくまで彼女を中心とした周りとの関係性。
あとはメタ的というか、タマ子がアイドル志望だったり、
その履歴書の台詞とか。
それが前田敦子の心の声のように思えてくる。
決定的なのが、ラストのラスト。
エンドロールが終わるまで、席は立たないほうがよいです。
星野源によるテーマソングも良かった。
敦子好きはマストでしょう。

2013年11月25日月曜日

仁義なき戦い 完結編



立て続けにぶっ込みました。完結編。
前作では頂上作戦により、多くの幹部が逮捕された訳ですが、
広能だけは仮釈放中であったがゆえに、7年強の刑に服している。
その一方で、山守はすぐに出所して引退。
その跡目をついだのが武田。前作で描かれていたとおり、
暴力団への締め付けが厳しくなっていた中で、
知性派の武田が取った手段が暴力団を政治結社と見立てるという作戦。
そこに広島の組を終結させて「天政会」を組織する。
この天政会も摘発されてしまうんですが、
武田の片腕である北大路欣也演じる松村がその穴を埋める訳です。
北大路欣也は広島死闘篇に引き続き2回目なんですけど、
今回は武田同様に知性あふれる役柄で、なおかつバイオレンス。
この2面性はかっこよかったし大好きでした。
かたや、敵の昔ながらのヤクザを演じるのが松方弘樹。
この人、仁義なきシリーズで何役やんねんっていうくらい、
出てくる訳ですが、野性味溢れる暴力性は最高でしたね。
本作では時代が若い者に移っていくという描写が多くて、
おじさんたちがせっかく根回ししても、
若さゆえの勢いで殺しちゃうし、しくじって死ぬ事もある。
この辺の無常観については、本作も広能と武田のやり取りが肝で、
ホテルでのサシの会話や松村の襲名式でのやり取りは
たまらんな〜って感じでした。
ブル−レイのBOX、ボーナスでイッたろかな思うちょりますけん。

仁義なき戦い 頂上作戦



代理戦争を見てから、だいぶ時間が経ってしまいました。
前作は代理戦争の下地作りだったので、こっちが本編とも言えるでしょう。
頂上作戦というタイトルの割には地味めというか、
ドンパチあるものの少なめでした。
大阪の明石組と神和会の代理戦争として、
菅原文太演じる広能の組、打本会 vs 山守組の抗争が
前作よりも具体化し、激化していく。
それと同時に暴力団の存在が世間から疎まれる時代に突入。
警察との戦いも表面化してくるのが、これまでの作品と違います。
そして、暴力団の存在意義も問われてくる。
自分たちがいるせいで、若い衆が命を落としていく現実。
これまでは、ある意味無邪気に殺し合い、
パワーゲームを行ってきた訳ですよ。
彼らが上の立場になり、その無常さに気づいていく。
シリーズを通じて、それらを楽しんできた自分に対しても、
問うてくるような作りなのがおもしろいし、好きでした。
それが一番露呈するのが、ラストシーン。
広能と武田の刑務所でのやり取りは最高だったな〜
なによりも小林旭演じる武田が好き過ぎる!
ここから完結編と続くのであった〜(オープニングのナレーション風)

2013年11月24日日曜日

ミッドナイト・ガイズ



映画秘宝で特集組まれてたのを読んで、見に行きました。
上映館、回数も限られていたからか、満席。
最近見た中では一番おもしろかったです。
主演はアル・パチーノ、クリストファー・ウォーケン、
アラン・アーキンの3人。
3人は親友で、かつてギャングだった。でも、もうおじいちゃん。
28年の刑期を終えたアル・パチーノが出所するんですが、
ウォーケンがケツ持ちから彼を殺せと命令されていて…という話。
その出所のところから始まるんですが、
そこでかかる曲がBaby HueyのHard Times!!
これに限らず、本作のBGMはほとんどすべてが
イナたいファンクで、この映画の渋みにマッチしていてナイス。
ウォーケンが出所したアルパチーノを迎えにいく訳ですが、
出所したての彼が「パーティーしようぜ!」と言う。
はじめはなんのこっちゃ分からないんですが、
それはSEXのことなんですねー
娼婦館に行くんですが、パイプ(彼曰く)が錆び付いてて勃たない。
そこでウォーケンがしょうがねーなーと言いつつ、
ドラッグストアへ空き巣に行く。
そこで勃起薬を盗むだけではなくて、
ウォーケンが自分用の薬(高血圧、緑内障など)も盗むのはカワイイ。
事を済ませたのちに、ホントのパーティーに行くんですが、
アルパチーノのダンスシーンは甘酸ポイント。
あとこのシーンでウォーケンの盗んだ薬を、
まるでコカインのようにキメルシーンはクソ笑った。
病院行くすったもんだがあり、アラン・アーキンが登場する。
彼は老人ホームにいる訳ですが、かつてはドライバー。
昔取った杵柄で、ドライブテクは抜群だし、
チ○コはデカいという男の憧れの存在。
なによりもこの3人が昔にもどり、
キャッキャしているのを見るのが萌えるし、燃える!
女の子を助けてから、報復するシーンは痛快。
アーキンは死んじゃうけど、老人ホームで
そのまましょぼくれて死ぬより良かったと思うよ!
(娘がすぐ納得するのはおかしいと思うけどw)
ウォーケンは朝までにアルパチーノを殺さないといけないんだけど、
彼と時間をともにすればするほど、
果たしてそれでいいのか?と逡巡する。
カフェであることをアルパチーノに指摘され、
ともに戦う事を決意する。
最後はアルパチーノと2人で黒スーツに身をつつみ、
銃両手にケツ持ちのところに殴り込みをかける。
(この手前の)
そして、本作のエンディングは間違いなく今年No.1レベル。
鳥肌がゾワーっと立ちました。
これまでのがギャング映画とは違うおもしろさ。
そしてエンドロールで流れるボンジョビの曲で泣きました。
むちゃくちゃオモシロいので、是非劇場で!

2013年11月22日金曜日

フィルス



予告編は数回見てて、これはマスト!と思い、仕事終わりにキメました。
小説の映画化で、その小説の原作者はトレインスポッティングと同じ。
トレインスポッティングにはそれほど思い入れはありませんが、
とても楽しめました!見終わったあとの、この「感じ」は久々でした。

予告編から受け取る印象は汚職警官のクライムコメディですが、
後半はかなりシリアス調で、突き詰めれば「孤独」に関する映画。
主役の汚職警官役はジェームズ・マカボイが演じてるんですが、
役作りの度が過ぎてる!こないだ見た「トランス」や
「X-MEN ファースト・ジェネレーション」では
しゅっとした感じだったのに、原型が全くない…w
「ブルーバレンタイン」のゴズリングばり。

彼は警部補への昇進レースのまっただ中にいる。
そこへ殺人事件が起こり、事件を解決すれば昇進は間違いない。
この事件の捜査と昇進レース、マカボイの孤独を交えながら描いていく。
前半はもうえげつないくらい暴力・SEX・ドラッグ!

同じ土俵のやつを蹴散らすために、様々な裏工作するし、
警官という立場を利用して、めちゃくちゃな捜査するし。
理性のリミッターが振り切れていて最高。
やっぱ映画はこれだよ!
前半はそのめちゃくちゃな言動の中で、
奥さんの映像が挟み込まれたり、
顔色の悪い子どもがいたり、鏡の中の自分が豚に、
他人の顔が他の動物に見えたり。
ドラッグガンギメなので、単にその後遺症なのかと思いきや、
それだけではないことが徐々に分かってくる。
前半で笑えてたことが、笑えなくなるんですなぁ。
彼は自分以外の誰も信用していないがゆえに、人生が破綻していく。
この映画では、十字架を2つ背負わされてるけど、
誰だって人に言えなくて抱え込んで苦しむことはあると思います。
そんなときに友人や家族、恋人がいれば、緩和されるけど、
彼の周りには誰もいない。
唯一の友人であるフリーメーソンの同志さえも裏切るのは、
とても辛かったです。。(落とし前はつけるものの)

終盤にドンデン返しが起こったあとの展開は蛇足だったかな?
その展開自体は鬼畜演出でオモシロかった。
地獄を見せつけられたあと、救いの手が差し伸べられるのに、
その手で自らを追い込んでしまうのです。
ただ、スマートさに欠けるなーと。
でも、エンディングのかわいいブラックアニメでAll OK!
下品だけど、色々考えさせられる映画でした。

2013年11月17日日曜日

夢と狂気の王国



「エンディングノート」の砂田麻美監督が
ジブリスタジオに密着したドキュメンタリーを撮ると聞き、
だいぶ前から楽しみにしていました。
エンディングノートは僕の生涯Best10レベルの作品です。
(DVDも持ってるけど、1人で見るのが怖くてまだ見れてないw)
本作はオモシロかったけど、そこまでは到らなかったかなー
エンディングノートで身を切りすぎたかも。。
とは言っても、風立ちぬが公開されたときに
しこたま放映されてたドキュメンタリーとは違う味わいで、
あらためて日本アニメを牽引してきたジブリのすごみを体感できました。
想田監督のドキュメンタリーにかなり近くて、
長期間カメラを回してて、
砂田監督がジブリスタジオを社会見学して、
見えてきたことを組み立てている作風。
(故に撮れている貴重なショットも数多くありました)

アニメ産業は日本の一大産業となっている訳で、ジブリはその大家。
派手な世界が想像されますが、日々の生活は非常に淡々としている。
ひたすら書く/描くの繰り返し。
そういった生活の中で、風立ちぬの製作への思いや
これまでのジブリのいきさつや、
その作品に対する宮崎監督の今の思いが吐露される。
半分以上が宮崎監督の話なんですが、その対照が高畑監督。
「蛍の墓」や「おもひでぽろぽろ」などClassicsを
数多く産んできた訳ですが、ここ10年近くは新作を公開してなくて
宮崎監督がスタジオを支えてきた。
でも宮崎監督をフックアップしたのは、高畑監督だった訳です。
この愛憎入り乱れる気持ちが、本人の言葉は当然ながら、
過去の映像や関係者の証言(おもに鈴木さん)で、浮き彫りに。
(それは宮崎監督だけじゃなくて、周りのスタッフも同様)

TVドキュメンタリーとなにが異なるかといえば、
宮崎監督の周りの人々が大きくフォーカスされてること。
彼らの声からあぶり出されるハヤオの一種の狂気性が興味深い。
アニメに対する異常な探究心はハンパない。
スタッフの一人が語っていたとおり、
その狂気についていけない人もいるだろうけど、
それを受け入れてでも叶えたい夢があるんだなぁと。
のんべんだらりと生きている自分に喝を入れられました…

TVドキュメンタリーでも見ましたが、
風立ちぬの次郎の声を庵野監督に決めるシーンはホントに最高。
しかも、TVドキュメンタリーでは見えなかった部分を
ちゃ〜んと映してて超痛快でした。
映画製作の手綱は金を出す人間じゃなくて、
映画をホントに作っている人なんだ!
という意味でも良いシーンでした。

この映画ではしきりにジブリスタジオの屋上のシーンが出てきますが、
それは彼のイマジネーションの源であるように思えました。
決定的だったのは引退会見直前に、砂田監督を呼んで、
会見場のホテルから見える風景を撮らせる。
そこで、「この風景を見てると、あの屋根の上から上へ移動したりさー、
電線を伝ったりして、どこまでも行けそうだよな」と言う。
ほとんどスタジオとアトリエしか行き来してない日常の中で、
あれだけイマジネーションにとんだ作品を産み出してきた
Creativity性は本気で恐れおののきました。
しかも引退会見直前ですよ…ホントのハイパーお爺さん。
そして、その屋上で鈴木さん、宮崎監督、高畑監督が
談笑しているシーンは愛おし過ぎた。
色々揉める事もあったけれど、同志なんだというチーム男子萌え。
ものづくりに携わっている人は、必見だと思います。

マラヴィータ



リュック・ベンソン率いるEurope Corp. meets スコセッシ。
監督はリュック・ベンソンで、製作総指揮がスコセッシ。
相乗効果というか、互いの良いところが出てて、
とてもオモシロかったです。

デニーロがマフィア役なんですが、もうロートルで、
アメリカを追われて、フランスに家族とやってきた。
証人保護プログラムの対象として、
トミー・リー・ジョーンズ率いるFBIに守られている。
この映画の特徴は、家族もマフィア気質というか、
やったらやり返す。今流行の倍返しだ!ぐらいの勢い。
家族構成は妻、娘、息子。
妻は近所のスーパーで悪口言われて、スーパー爆破するし、
娘はナンパしてきた同級生ボコったり、先生を誘惑したり。
息子はマフィアさながらの権力コントロールによって、学校でのし上がる。
なによりも親父が一番クレイジー!
少しでも馬鹿にされたら、もう半殺し or 殺す。
腐ったロブスターを売ったやつはぶっ殺すし、
馬鹿にした配管工はボコボコにする。
(「病院連れていったよ〜」のくだりは最高。)
これらの前フリがあるから、
後半でデニーロを馬鹿にする人が出てくるたびにドキドキする。
「いつヤル?」「殺ったー!」みたいな。
ここもバリエーションが色々あって楽しい。
終盤までリュック・ベンソンがメタ視線で描く
マフィアコメディの様相を呈しています。
なんといっても、近所の映画上映会でのシーンがハイライトでしょう。
そこで上映されるのが、スコセッシ×デニーロの
ウルトラクラシックであるグッドフェローズ!アッツい!
しかも、息子が学校での非行がばれて、
「オレ、家出て働くよ!」という、
まさにグッドフェローズ的な展開になってサムアップ!
ここが一番分かりやすいけど、他にもニヤリ展開ありました。
(デニーロの居場所がバレるところとか)
最後の最後でスコセッシ色がドーン!と出てくる。
一番好きなのは息子が駅で敵マフィアの集団を見かけるシーン。
オッサン一人一人の顔をアップで舐めるように撮る。
こういうの好きだわー
その後はCrazy家族 vs 敵マフィアの最終決戦。
銃撃シーンは一連のEurope Corp.っぽいデーハーなやつ。
少し短かったけど、やっぱアガリました!
殺されそうになることでさえ、
日常の一環でしかないっていう締め方も好きでした。
マフィアもの好きなら是非!

2013年11月16日土曜日

Like Someone In Love



某先輩の2012年1位と聞きまして、見てみました。
結果、ホントに素晴らしい作品でありました。
アッバス・キアロスタミというイラン人の監督なんですが、
日本が舞台となっています。
登場人物はデリヘル譲と、その彼氏、
デリヘル譲を話相手として呼ぶ大学教授。
この3人の微妙な人間関係が描かれています。
説明を一切排除した 超ミニマルな構造も特徴的ですが、
なんといっても本作の特異点は撮り方です。
映画見てるときにカット割りなど、
その撮り方までは気にして見れていませんが、
本作が明らかに普通じゃないことは誰が見ても分かると思います。
冒頭はバーのワンショットから始まって、電話の話声が聞こえる。
でも、その画の中に写っている人が喋っている訳ではなくて、
画面に映ってない人の声なんですね。
そこから、でんでんが出てきて、女性と喋り始める。
映画全体に共通するんですが、
2人の人間が話すときはカットバックさせたりして、
しゃべっているところを引きで撮っているショットは一切無い。
今度は逆に、デリヘル譲が大学教授のところへ、
出勤するシーンではしつこいぐらいの長回し。
デリヘル譲のおばあちゃんからの留守電をBGMに
東京のillな街中を走り抜ける。
(新宿のローターリーを回るところは、切なくて死にそうになった)
物語は地味だけど、撮り方のメリハリが効いてるから飽きない。

デリヘル譲は大学教授のもとへ行く訳なんですが、
この教授が良い案配のおじいちゃん。
家族はいてるけど、別々の場所で暮らしている。
話相手が欲しくて、デリヘルサービスを利用してるんですね。
園子温監督の「紀子の食卓」に近いニュアンス。
この2人は本当の家族よりも擬似的な関係性に重きを置いている。
(置き方は全然別ベクトルですが)
それが良い/悪いの話じゃなくて、
そういう関係性もありじゃね?っていうスタンスは好きだったなー
なんしか、教授が彼女を迎えるためにしてた準備や、車での送り迎えとか。
ものすごい幸せそうにやってる訳ですよ。愛おしい。
そんな中で彼氏がやってくる。加瀬亮が演じてます。
この彼は理論があるようでなくて、しかも、他人と対話する気がない。
彼と教授の結婚論は最高。理想vs理論。肝に銘じたい。
最後は怒濤の展開を見せる訳ですが、
実はこの映画にはBGMがないんです。
最後まで比較的落ち着いたトーンで進んでた物語が
近所のおばちゃんの独白あたりからエンジンかかってきて、
最後ドーン!で終わる。そこで流れるのが、この曲!
抑制しまくったあとに聞くElla Fitzgeraldの歌声の多幸感たるや…
変な映画だけど、愛さずにはいられない。

2013年11月12日火曜日

ロスト・イン・トランスレーション



ソフィア・コッポラ監督作品。
「ブリングリング」が12月に公開されるので、予習として見ました。
5年くらいずっと見ようと思っていた作品ですが、ずっとスルーしてました。
以前、「Somewhereを紹介しましたが、こっちのほうが好きでした。
なんとなくおっさんと女子が東京徘徊する話とは知っていたけど、
そのおっさんがビル・マーレイってのにビックリしましたw
(女子はスカーレット・ヨハンソン)

おっさんはハリウッド俳優で、
ウイスキーのCMを撮るために来日。
一方で、女子はMV監督(?)の奥さん。
奥さんといっても大学卒業したばっかりで、
モラトリアム継続中な感じ。
この2人がお互い退屈している滞在中に仲良くなって、
日本をエンジョイしようとする映画。

外国人から見た日本が一つのテーマではあります。
本来であれば、ビル・マーレイの感じる違和感に
「外国人から見たらそう見えるのか〜」
という視点になると思うんですけど、
むしろ彼に感情移入してる場面のほうが多かった。
日本を舞台にしてはいるけど、
あくまでコミュニケーションの話。
この映画タイトルがイイ!
Transrationの中で迷子になっている、
つまり、どっちつかずになっている状態を上手く表している言葉。
日本でも英語通じる場面は少ないし、
通じてもホントの意味でコミュニケートはできない。
一方で母国の家族との意思疎通もままならない。
単なる異文化コミュニケーションのオモシロみだけではなく、
人とのコミュニケーションという大きな話になっています。
(異文化とのふれあいという点では
マシュー南の番組としゃぶしゃぶのくだりは最高)
女子のほうは自分探しこじらせ系として、また興味深い。
寂しくて死んじゃうウサギタイプ。
この2人は最後には恋し焦がれしの仲になりますが、
終盤まではバディムービーとして楽しめる。
渋谷の街で夜遊びするシーンは極上の甘酸。

僕も東京住み始めて、かれこれ1年半ですが、
この街の特異性というか、ふとした瞬間に
自分がstrangerであることが頭をよぎる。

これも東京に住んでなかったら、
また感じ方は異なるものになっていたでしょう。
映画って素晴らしいですね!

2013年11月10日日曜日

グランド・イリュージョン



ジェシー・アイゼンバーグが出演していたので、見ました。

予告編見たところでは、The アメリカ映画って感じでしたが、
良い意味でも、悪い意味でも、その期待を裏切らない作品でした。

基本はケーパーものですが、それにマジックを絡めているのが特徴。

路上マジシャンとして活躍していた4人が力を合わせて、
ある目的を達成するためにマジックを使って強盗を行う話。
4人のマジシャンの敵は2ついて、
警察とマジックの種明かしの達人。
この達人をモーガン・フリーマンが演じてます。
警部をアヴェンジャーズのハルク役の人。
4人は路上マジシャンという共通点はあるんだけど、
マジックの特徴はそれぞれ異なる。
メンタリズム、カードマジック、体当たりマジック、
マジックを使ったスリ。
冒頭で上記の特徴が首尾よく、これが紹介されるのはナイス。
とくにホログラム発動するところはワクワクMAX!
ケーパーものは最初のシーンが大切だと思う!
ここから4人が組んで、マジックショー兼強盗ショーという、
とんでも展開がいきなりぶっ込まれる。
最初は「エッー!」と思うけど、マジック×強盗の相性がイイ。
(そもそも現実の強盗という行為がマジックのようにtakeすることを
理想としていることに起因する訳ですが…)
パリの銀行から金を盗み、ショーにきてた観客にバラまく。
しかも警察に悠々と捕まる。
ここでのジェシー・アイゼンバーグのカウンターが最高なんすよね〜
超早口台詞の有無を言わさないロジック。
2回目のマジックショーも趣向が違ってオモシロい。
最初はマジックのオモシロさを存分に見せつけてからの〜
パトロンへの大逆襲!このマジックは種明かしはされないけれど、
「フリーズ」のギミックは分かってても笑ってしまったw
このあとは一気にテンポが加速していく。
カーチェイスもあるし、ハラハラ展開の連続。
この間、モーガン・フリーマンがずっとドヤ顔してるw
オレは全部分かってるで〜って。
最後の強盗は金庫破りで、そこの奪った金をNYでばらまく。
このシーンも豪勢で、プロジェクションマッピングが使われてる。
映画で使われてるの初めて見ました。
最初の事件のフリが効いてて、ミスディレクションされる。
このミスディレクションっていう考え方って、
映画でも大事だと思うんですよねー
別のほう見せといて、ふとした瞬間に伏線が回収されると
オモシロいと感じる訳ですから。
なんですが、最後の最後にドンデン返しがあって、
それがあんまり上手くないというか…
えっ!とは思ったけど、ちょっとずるくない?と思いました。
恋愛要素も無理くり感が…
ゴージャスだし、楽しいから、楽な気持ちで見れる良い映画です。

2013年11月9日土曜日

セブン・サイコパス





水道橋博士が押していたので見ました。
なんたるオモシロさ!という感じでした。
メタ映画として完成度の高い脚本と理不尽な暴力!

主人公はコリン・ファース演じる脚本家。
彼は新しい脚本のアイデアが浮かばず、酒に溺れている。
そこでサイコパス(シリアスキラー)の記事を新聞で見て、
7人のサイコパスを主人公として脚本を書き始めて、
その「映画」ができるまでの映画。
冒頭はタランティーノっぽくて、
男2人の駄話から始まるんですけど、いきなりぶっとんだ展開になる。
この時点でサムアップ!
とにかく7人出てくるサイコパス1人1人の仕込みがオモシロ過ぎる。
一番好きだったのは主人公の友人と共に犬nappingで儲けてたおじいさん。
病院の待合室で、明らかになるんだけど、このシーンは超怖い。
あとは夫婦のサイコパスね。あのゾディアックまで出てくる訳ですが、
サイコパスを殺すサイコパス。
これの回収の仕方も最後の最後で、
メタ映画ということを強く意識させられました。
北野映画(その男、凶暴につき)を主人公2人が見ている
映画館のシーンがあることから分かるように
この映画には予定調和の暴力は存在しない。
そして、さらにオモシロいのが「映画」の映画という点。
このメタ視点があるから、一般的なサスペンス映画と違う。
車でギャングから逃げているシーンは声上げて笑ってしまったw
平和に解決するだなんて、クソつまんねーよ!って言ってた
主人公の友人がエンディングを変えていくのは超痛快。
前情報入れずに見て、このオモシロさを共有して欲しい!

2013年11月6日水曜日

ムード・インディゴ うたかたの日々



ミシェル・ゴンドリー監督のフランス製作品。
ディレクターズカット版を見ようと思ったんですが、
時間が無くて、インターナショナル版で見ました。
The We and The I は間違いなく
今年ベスト10に入る出来の素晴らしい作品でしたが、
彼の作品をほとんど見ているので劇場で見ました。
いわゆるミシェル・ゴンドリー的なDIYタッチが
存分にぶち込まれてて、久々に見るとアガルなーと思いました。
恋愛睡眠のススメがLookは一番近いですね。
(原作があるらしいんですが、未読。)
主人公はニートで、ある程度のお金持ち。
パーティーで出会った女の子と恋に落ちて結婚する。
でも、新婚旅行で寝てるときに
肺に蓮の花が入ってしまい、病気になる。
その病気を治す方法が彼女の周りに花を置くっていうね。
ファンシー過ぎるー!!キュンキュンするー!!

冒頭からミシェル・ゴンドリー感がフルスロットル。
タイプライターがベルトコンベアで流れてて、
たくさんの人が流れ作業でタイピングして、本を作っている。
その作っている本というのが原作です。アヴァンギャルド過ぎるw
彼が住んでる家も超Cute!
廊下が電車の車両だし、いちいちキッチュでポップ。
執事の料理場面や配膳、蛇口からのウナギなどなど。
あげたらキリがないくらいギミックの数々。
この表現に乗れなかったら、かなりキビしいですね…
女性は「かわうぃぃぃ!」と思えると思います。
数ある中でも一番好きなのはクレーンで吊られたUFOに乗って
パリの街を周遊する初デート。超甘酸。
前半は多幸感に包まれてるんですが、
彼女が病気になってからの後半が辛い。
金もなくなってしまったし、働いたことないけど、
愛する彼女を救うために、必死で働く。
なかでも前半あれだけ多幸感を産み出してきた
ミシェルゴンドリー演出が逆に恐いものになりさえするというね。
土の上に寝転がって、タマネギみたいな銃の素を裸で暖めて
曲がらない銃を作るという仕事はシュール過ぎてキツいw
(何言ってんねんと思うかもしれませんが、まぁ見てください。)
彼女の病気は周りを枯らしてしまうため、
家も浸食されてくる訳ですが、次第にスクリーンが暗くなり、
最後はモノクロになってしまう。
このトーンの変化で彼女の病気の進行が伝わる演出は
上手いなーと思いました。
冒頭のタイプライター工場に彼が乱入して、
「彼女は元気になった」と書き換えようとする。
原作を変えることで彼女を救おうとするっていう設定は
とてもオモシロいけど、切な過ぎる!
音楽もDuke Ellingtonを大きくフィーチャーしてるのも
映画全体を包み込む心地よさ。
おもちゃ箱をのぞいて楽しんでたら、思いのほか重い作品でした。
女性にオススメです。

2013年11月4日月曜日

ばしゃ馬さんとビッグマウス





「好きなタイプの芸能人は?」という質問に対して、
ここ5年くらい「麻生久美子」と答えている私なので、
当然見に行きました公開初日。
しかも監督が吉田恵輔氏。
「純喫茶磯辺」「さんかく」とオモシロい作品ばかりでしたが、
僕は本作が一番好きな作品でした。
宣伝から受けるイメージはホンワカしてますが、かなり厳しいです。
なぜなら、良い歳の大人が夢をあきらめる過程を
丁寧に見せつけられるからです。
それと同時に、その潔さみたいなのも
伝わってくる不思議なバランスの映画でした。

主人公は30代の脚本家志望の女性。
コンテストに出してるけど、万年一次審査落ち。
お洒落や恋愛にも興味は無く、夢へむかって邁進中。
でも、にっちもさっちももいかないから、
シナリオスクールに通い始める。
そこで出会うのがビッグマウスの男。
これまで1回も脚本は書いた事はないけど、
口だけはイッチョマエ。
これを関ジャニ8の安田君が演じてます。
最初、この映画の宣伝を見たときに
この要素だけが嫌だったんですが、見てみると
どんぴしゃのハマリ役でした。
(あるシーンのTシャツの横文字に要注目!)
僕の思う関ジャニ8像と役が合っていたと思います。
この2人の存在が対照的で、麻生久美子はまさにばしゃ馬。
要領が悪い分、質より量って感じで書きまくり。
一方、安田君は口だけで何にも書かない。
この2人の立ち位置が映画を通じて変化していくのが
とてもオモシロかったです。
何よりも麻生久美子の痛々しさ。
「モテキ」のときの比じゃなかった。
一番キツかったのは、結婚式の余興のところ。
(あぁぁー!!!って映画館で叫びそうになりましたw)
自分には才能がないのかもしれないと薄々気づいてるけど、
なりふりかまわず、がむしゃらに脚本作成に取り組む。
このカウンターとなるのが、元カレの岡田義徳。
過去に俳優を目指していたけど、
あきらめて介護施設で地道に働いている。
そこへ脚本の取材をかねて、
麻生久美子がボランティアで働き始める訳ですが、
要領悪いし、彼の仕事をなめた感じがある。
結果、目も当てられない事件を起こしてしまう。
このなめたところや定石にすがり正論を説く部分を
岡田義徳や安田君からびしばしと指摘されてしまうんですね。
一方で、安田君は書いていないんだから、
言う資格ねぇ!といわれて、一念発起して脚本を書く。
これまでビッグマウスだったんだけど、
コンテストに応募し、落選することで
「ものづくり」の大変さを痛感する。
このシーケンスは最高でした。

あと小ネタもオモシロいのがてんこ盛り。
とくに映画監督のくだりは
最近のTV主導の映画に対するカウンターとして抜群。
実際にあんなやついるんだろうな〜という実在感込みで最高。
脚本に関する映画なので、メタ構造をはらんでいるんですが、
それを利用した映画の作りもフレッシュ。
ト書きと実際のシーンがカットバックになってたり、
麻生久美子が最後に書く脚本が本作というところとか。
誰もが信じて努力すれば、夢が叶うという
フィクションの果実はとても魅力的だし、嫌いじゃないです。
でも、「本当にそうですか?」
そして、夢を追いかけているあなたは「そのままkeep onできますか?」
と、この映画は問うてきます。
コメディでもあるし、ラブストーリーでもありますが、
この自意識の突き詰め方、突き放し方は色んな人に見てほしいです。
見た目で敬遠しないで、是非!

アバター



何回かDVDで見ようと思ってたんですが、
2Dで見てもオモシロくないという話を
方々から聞いてて、ずっとそのままでした。
そして、信頼のユナイテッドとしまえんで IMAXリバイバルが
開催されていることを知り、見ました。
ジェームズ・キャメロンの作品で見たことあるのは
タイタニックくらいでしたが、本作は予想以上にオモシロかった!
紋切り型ではあるけど、色々考えさせられました。

ある惑星で資源を巡って、原住民と人間が対立する話。
原住民と人間のDNAをかけ合わせたものが「アバター」で、
それに神経を通じてシンクロすることで同化するシステム。
マトリックスの現実社会版とでも言いましょうか。
主人公は人間としては脊損で、下半身が動かない。
でも、アバターになれば、それとは関係なく動ける。
機械自体も閉鎖系だし、この主人公の境遇もあいまって、
冒頭のところでの解放感は素晴らしい。
彼の任務は先住民の中に入り込み、
彼らの特徴や欲しがっているものなどを偵察すること。
最初はスパイとして働いてるんですが、
徐々に彼らの生活になじんでいき、
人間のやり方に疑問を抱き始める。
そんな中で人間たちは強行突破で、
先住民の住んでいるところを攻撃してしまい、
彼らと人間のバトルが激化していくという話。

なによりも3Dで見ることを前提に作られた映像ということもあり、
映像に関してはエゲツナイ完成度。
自然があまりに美しすぎる…CGに見えない。。
前半で主人公が先住民の一員となるための
ギミックの数々は息を呑みました。
この前半の美しさに魅了されるから、
後半でそれが人間の手で無惨にも破壊されるのは
本当に心が痛んだ。
これは現実社会でも起こっていることと思うと、
さらに辛くなりました。
資源を争って、人間同士が争うことは歴史の中でも
繰り返されてきた話な訳ですが、
最終的に武力での争いに収束するのは分かっているけど、
嫌だなぁと思いました。(対話で解決を試みようとしてるだけに)
やられたらやり返すアメリカマインドは悲劇しか産まないことは、
大人になればなるほど、よく分かるんだけどな〜

あとアバターという設定ね。ぶっ飛んだ話とも言えるけど、
ネットと現実って置き換えると、身近な話とも言える。
どっちも自分なんだけど、そのidentityに苦しむのはオモシロいし、
彼の最後の選択はちょっと恐かったです。。
終盤の話の展開が雑になりますが、
IMAXで見てるから、そこまでに気にならなかったかな?
3Dで見るべき作品!