2015年2月24日火曜日

松ケ根乱射事件



山下敦弘監督作品。
今年中に彼のフィルモグラフィーを
全部見たいなーと思いつつ鑑賞しました。
順番でいうとリンダリンダリンダのあとになるんですが、
初期作品に近いオフビートなタッチが印象的でした。
地方都市閉塞ものとしてオモシロかったですね。
主人公は新井博文演じる警官で、
彼の周りでろくでもないことばかり起こるという話。
彼の双子の兄がひき逃げを起こしてしまい、
その轢き逃げしてしまった人にユスられたり。
父親が近所の理髪店の娘さんを妊娠させたり。
彼は家族の中で警官という職業もあいまって、
責任感が強く、家族を引き受ける存在な訳です。
でも物語が進むにつれて、少しずつおかしくなっていって、
それに耐えきれなくなる様が見所だと思います。
個人的には三浦友和のどうしようもない父親像が好きでした。
ロクデナシしか出てこないけれど、
人間ってこんなもんだよねという厭世観に浸るのも映画です。


ドリンキング・バディーズ 飲み友以上、恋人未満の甘い方程式


うるせ〜!!って言いたくなる邦題ですが、
各所で好評価なので見てみました。
邦題でご丁寧に説明していただいている通り、
超仲のいい男女関係の友達と恋人の違いについて、
男女4人の関係を通じて浮き彫りにしている作品。
恋人同士のダブルデートから始まるんですが、
客観的に見ると恋人同士を入れ替えた方が
うまくいくんじゃないかな〜と思える。
でも、男女関係は似た者同士だから
上手くいくとは限らないんですよという提示と、
それでもお互いをrespectできる関係がないと成立しない
という両方の考え方を同時に見せてくれるのが
オモシロいなーと思いました。
しかもIMDb読んでたら、基本設定は決まってるけど、
全部アドリブというのが衝撃でした…
でもそれゆえに自然な感じになってるのかなーとも。
好きなシーンがアナ・ケンドリックと
ロン・リヴィングストンが一線を越える瞬間。
引きのワンショットで男女の微妙な距離感を捉えています。
あとオリビア・ワイルドのワイルドさ。笑
寂しがりやのb*tch気質な訳ですが、
「私は悪くないんだから、罪悪感抱かせないで!」
というセリフにグッときました。
楽しそうにお酒飲んでるの見るだけでも超楽しいので、
ビール片手に飲むのがオススメです!

2015年2月22日日曜日

アメリカン・スナイパー



クリント・イーストウッド監督最新作。
前作のジャージーボーイズから、
このスパンでの最新作公開というそのエネルギーに
マキシマムリスペクトですよね、ホント。
イラクで指名手配されるぐらい大量に人を殺した、
実在の伝説のスナイパーが題材といことで
期待して公開初日に見てきました。
どちらが正しい/悪いの安易な二元論を提示しないのは
勿論のこと「やらなきゃやられる」状況に置かれた人間同士が、
戦争で殺し合う姿を見ていると、とても哀しくなりました。
でも「やらなきゃやられる」という無限ループ。
キャサリン・ビグローが近年描いてきた
ドラッグとしての「戦争」にもフォーカス。
折り合いをつけて生きていくことができればいいけど、
こんなことになるなら初めから戦争なんて無ければいいのに
と心の底から思いました。
冒頭は予告編でも使われていた1回目の派遣での戦闘シーン。
グレネードを持った子どもが出てきて、
撃つ/撃たないで異常なまでにテンションが張りつめて、
主人公の幼少期へシーンが変わる。
主人公のスナイパーを演じるのはブラッドリー・クーパー
(実際の人物と劇似!)
幼少期から彼が軍隊に入るまでの過程を描いていきます。
出身はテキサスで兄弟2人でカウボーイを稼業としていたけど、
アフリカ諸国での大使館テロのニュースを見て、
30歳でSEALSへ入隊する。
訓練シーンも描かれるんですがフルメタルジャケットばり。
白人、黒人の教官が人種差別発言しまくりなのが興味深かった。
訓練を耐え抜きSEALSへ入隊したところで911が勃発。
そしてイラクでの最初のシーンへと戻っていきます。
ここで子ども、女性を容赦なく殺すところで、
本作がヌルいものではないことがビシビシ伝わってくる。
この1回目の派遣のタイミングで奥さんは妊婦。
幸せかのように見えたけど、
次の派遣で宿敵となるスナイパーが登場。
シリア人のオリンピックメダリストの凄腕で、
2人の殺し合いが本作のメインといってもいいでしょう。
狙撃って単なる打ち合いじゃなくて、着弾自体が
「お前を見ているぞ」というメッセージとなるんですよねー
とくにアメリカ軍が襲撃されて、ミラーでスナイパーを見てたら、
それが狙撃されるシーンがオモシロかったです。
バイオレンス描写が相当攻めていて、
前述した子ども狙撃は序の口で、本作を見た誰もが忘れられない、
ドリルによる報復シーン。
近年見たバイオレンスシーンでも屈指の残酷さ。
戦争が起これば、子どもだって死んでいるに決まっているし、
頭で理解しているけれど、画で見せられると相当キツい。。。
後半は戦争中毒にまつわる話へシフトしていきます。
最後のイラク派遣前に奥さんから行くのを止められるんですが、
このシーンが戦争へ志願する人の思考回路なのか…
と納得しつつも、ヤダなーと思いました。
(アメリカが攻撃されたら家族が死ぬ。
ゆえに家族を守るためにイラクへ行く)
そんな彼が除隊することを決める戦闘シーンは
本作でも最大の見所だと思います。
ローンサバイバーばりの圧倒的不利な状況に加えて、
砂嵐で何も見えなくなる中での逃走。
生き地獄とはこのことかと…
帰って来てからはPTSD気味になりつつも、
何とか平穏な心を取り戻した彼に待つ悲劇。
なんて日だ!と冗談抜きで使いたくなりました。
戦争映画のマスターピースとして
語られていくことかと思いますので、
是非劇場で見ておくべきだと思います!

フォックスキャッチャー



スティーブ・カレル×チャニング・テイタム×マーク・ラファロ
というメンツでレスリングの映画と聞いて見てきました。
実は1度見た際に劇的に体調が悪くて、
ほとんど寝てしまうという最悪な事態となってしまったので、
2回目をキメてきた次第です…
結果として2回見て良かったと思えるくらい好きな作品でした。
監督はベネット・ミラーで前作のマネーボールを
見れていないので早く見ようと思います。
女性はほとんど出てこなくて、3人の男たちによる、
ラブストーリーさながらの関係性のバランス変化が
見ていてとても楽しかったです。
自分では何もできないくせに己のプライドを大切にし、
名誉だけを求めるクズ野郎がいかにクソかってことが、
丁寧に描かれていて、お飾り上司たちに煎じて
吐くまで飲ませてやりたい!と心の底から思いました。
実話ベースの話で、チャニング・テイタム演じるマークと、
マーク・ラファロ演じるデイブは兄弟2人して、
レスリングの五輪ゴールドメダリスト。
スティーブ・カレル演じるデュポンが
レスリングチームを発足し、そこへマークを招集する。
アメリカを代表するチームを作ろうとするものの…という話。
冒頭、白黒の昔のデュポン家の映像、タイトルから始まり、
マークが人形相手に黙々とスパーしているシーンへ。
彼の生活が上手くいっていないことを説明ではなく、
小学校での講演、食事、デイブとのスパーで
描いていくのは素晴らしいなーと思いました。
デュポンがTELしてきて、彼の豪邸を訪問し、
マークはデュポンに付いていくことにする。
このデュポンの異形感をスクリーンで見るだけでも、
本作の価値があるくらい。
笑い方、歩き方など、どれを見てても狂気を感じる。
Foxcatcher所属となったマークは世界大会で優勝。
この打ち上げシーンが最高で、
David BowieのFameがかかる中、祝杯を挙げていたら、
デュポンがレスリングに対する思いを述べて、
皆とレスリングでじゃれ合う。
ここでデュポンが裸の王様であることが示され、
なおかつマザーコンプレックスを抱え、
母親からの承認を強烈に求めていることが分かる。
裸の王様はうまくいっているときはいいんだけど、
これが徐々に崩壊していきます。
優勝したことで2人の距離は縮まり、
コカイン一緒にキメたりするような関係に。
練習もロクにしないで怠けているときに
デュポンが母親にレスリングをバカにされ激昂し、
さぼっているマークをどつき、Ape呼ばわり。
兄のデイブを何としてでも招集することにする。
ここで明らかになるのはマークが、
兄無しでは何もできないことを認めたくないということ。
(この点で考えるとマークとデュポンは似た者同士)
デイブがFoxcatcherに加入し、コーチ経験もある彼は、
チームにとってなくてはならない存在へ。
マークはその指導に逆らい、独力でなんとかしようとする。
そしてデュポンは、本当のコーチが登場したことにより、
お金だけ持っている裸の王様でしかないことが露になってくる。
この辺りの微妙なパワーバランスの変化を
丁寧な描写の連続で描いてくのが好きでしたねー
何気ない行動の一つ一つが崩壊への序章となる訳です。
それに説得力を持たせているのが、
各俳優それぞれの演技にあるのは言うまでもありません。
テイタムは自意識こじらせ系ゴリラという
新たな側面を見せてくれたのが素晴らしかった!
とくにオリンピック予選で負けてしまってからの
ホテルの部屋で暴れ倒し、食い倒すシーンは最高最高!
鏡を頭突きで割るんですが、
それまでの鏡を前にした彼の言動がフリになっていて、
最もエスカレートした瞬間に頭突き!っていうね〜
IMDbによると脚本に無かったっていうんだから凄い)
そしてラファロは2人のコンプレックス野郎を
受け止める寛容ゴリラをカラダ張って体現。
(最初にテイタムとスパーするシーンは最たる例)
勿論カレルはこれまでの3枚面のキャリアを
すべて覆すレベルの怪演!
僕が好きだったのは母親が練習を見にきた瞬間に
コーチづらして指導を始めるところ。
なんて滑稽でクソなんだ!と。
お飾りの裸の王様であることに最終的に気付いた彼が取る、
最悪のエンディング…
男同士のジェラスがときに
女性同士のジェラスを超越する瞬間が克明に刻まれています。
マネーボールも早々に見たいと思います!

2015年2月21日土曜日

きっと星のせいじゃない。



(500)日のサマーの脚本コンビが脚本を担当している
ということで見てきました。
(サマーも改めて見たけど最高最高やな!)
予告編を見たときには難病ものかーと眉をひそめていましたが、
過去の難病ものに対して批評的なスタンスを持ちつつ、
甘酸っぱい青春の1ページを切り取り、
なおかつ「死」の掘り下げ方も深いという
奇跡的なバランスの作品になっていて素晴らしかったです。
ティーンエイジャーが限られた時間を精一杯生きる姿を
見せつけられると、のんべんだらりと生きている
僕みたいなおじさんは考えさせられることが多々あり。
主人公はヘイゼルというガンにかかっている少女。
甲状腺ガンを発病し、肺に転移したことから、
酸素ボンベが欠かせない。
そんな退屈な日常を過ごしていた彼女が出会った
オーガスタスという男子と恋に落ちて…という話。
冒頭、彼女のナレーションから始まるんですが、
ここでfictionでありがちな美女が不治の病にかかり…
というのはあくまでfictionでしかなく、
実際は病院と退屈な家との往復でしかないということを
ガツーン!と決めてくるところで予告編での心配はすべて解消。
そして本作では恋に落ちる相手も
かつて深刻な病気だったという過去を持つのもポイント。
オーガスタスは骨肉腫で右足の膝下を切除しています。
ヘイゼルがある種悟りきった死生観を持っているのに対して、
彼はユーモアの人でポジティブさを持つ。
そんな彼にヘイゼルは徐々に惹かれていきます。
(最初に出会うシーンでのタバコのくだりは、
喫煙者には辛いヘイゼルの論説…)
前半は病気を持つ彼女と治った彼との関係が
構築されていく様子が描かれていきます。
この2人の距離を縮めるのが1冊の本っいうところが
本好きにとっては最高に愛おしい。
「大いなる痛み」という本なんですが、
唐突なそのエンディングを巡って2人で盛り上がる。
その本を読んでいるあいだ、オーガスタスは
ヘイゼルに返信しないものだから、
彼女は肌身離さず携帯を持って常にメールをチェックしてるが、
かわいらしかったですねー
さらにオーガスタスが気を利かせて本の筆者とコンタクト。
その筆者からオランダで会う旨の約束を取り付ける。
2人はこのまま上手くいくかと思いきや、
彼女の病気が再発し、入院してしまう。
ヘイゼルは彼を傷つけたくない一心で距離を置くようになる。
しかし、皆の尽力によりオランダ行きが実現。
2人は再度距離を縮めていきます。
初日に2人でドレスアップしてディナーに行くんですが、
そのシーンの多幸感たるや…
翌日はついに憧れの筆者との対面。
物語の続きを聞こうと楽しみにしていたら、
屁理屈コネ倒すアル中のオジさんで最悪の対応を受けてしまう。
この作家役をウィレム・デフォーが演じているんですが、
超最悪で最高なんですよねー
いきなるスウェーデンのいなたいヒップホップを爆音でかけたり、
「病気をダシに社会の恩恵を受けてのさばりやがって!」
とか身もふたもないことを言ってしまう。
最悪の思い出になりかけたところを救うのが、
アンネ・フランクの家。
他人のことを配慮して自らの思いを押し殺してはならない
というメッセージに勇気づけられ、
ヘイゼルとオーガスタスはここで初めてキスをする。
見ている間、全然キスしないなーと思っていたら、
このシーンに向けたタメだったのか!と納得。
2人の純粋な気持ちが結実するイイシーンだったと思います。
最高の旅行のまま終わるかと思いきや、
オーガスタスから衝撃の告白が。
ここから立場が一気に逆転してしまうのが
Freshだなと思いつつも、めっちゃ辛い気持ちになりました。
特にガソリンスタンドからオーガスタスがTELしてくるシーン。
ユーモアの人でいつも気丈に振る舞っていた彼が
死を目前にして恐れる姿が胸が締め付けられました。
(傑作エンディングノートでも提示されていた点)
僕が泣いたのは生前葬を
オーガスタスと彼の友人、へイゼルで行うシーン。
全盲の友人の弔辞で号泣メーン!
さらに死ぬ直前に2人でピクニックで交わされる、
誰かの記憶に残ることに関する話で、
多くの人の思い出に残るよりかは
1人に一生忘れないでいてもらうことが大切なのでは?
というねーその通りだなぁと納得。
そして実際の葬式でヘイゼルの取る選択も
葬式論として溜飲を下げました。
想定外に翻弄される斜め上の良さがあるので、
是非見て欲しいところでございます。

2015年2月18日水曜日

味園ユニバース



山下敦弘監督最新作ということで見てきました。
まだまだフィルモグラフィーは全部見切れていませんが、
少しずつ見進めています。
山下監督といえば現在放映している、
山田孝之主演のモキュメンタリー
「東京都北区赤羽」も抜群にオモシロいので
まだ見られていない方は是非に。
肝心の本作はというと、僕が大阪出身で
これを東京で見ると郷愁を覚えざるを得ない。
しかも、舞台が味園ユニバースで、
ユニバース自体は1回ぐらいしか行ったことがないけど、
味園ビルによく行っていた時期がありました。
その頃とかも思い出したりしちゃって、
少しおセンチな気持ちになったりね〜
関ジャニ∞の渋谷すばる演じる茂雄(a.k.a ポチ夫)が
刑務所から出所したところを何者かに襲われて記憶喪失に。
そんな彼をライブスタジオを経営しつつ、
赤犬のマネージャー兼PAのカスミが引き取ります。
(カスミを演じるのは二階堂ふみ)
共同生活が始まると同時に、
茂雄を赤犬のボーカルに据えようとするものの…っていう話。
冒頭、出所のシーンから始まるんですが、
背後からのワンショットでぐーっと見せてくれるし、
壁が異様に大きくてアメリカの刑務所みたいなのも
アガるなーと思いながら見ていました。
明らかにカタギではない人(天竺鼠!)に出迎えられ、
帰路につくものの襲われて記憶喪失。
公園で寝てたところ、赤犬のライブに引き寄せられて、
おもむろにマイクを取り歌い出す…
正直、関ジャニ∞の渋谷すばるが主演ってことで
なめてる人が多いと思うんですよ。
僕も果たしてどのレベルで歌の映画やるつもりやねんと。
そんな舐め腐ったクソ野郎どもに
冷水を浴びせかけるかの如く、
渋谷すばるの歌い出しの素晴らしさがハンパない!
歌うのは和田アキ子の「古い日記」
「あの頃はっ!」のソウルフルでブルージーなシャウトを
アカペラで披露するんですが、
僕はここで完全に心を鷲掴みにされると同時に、
舐めてて本当にすみません!と心の底から思いました。
そして歌だけに限らず、
大阪のガラの悪いゴロツキをきっちり演じているのが、
およそジャニーズとは思えなくて最高!
ガンガンどつかれるし、どつき倒す。
不器用な生き方しかできないブルースを
文字通り体現しているのが良かったなーと思います。
前半は記憶を喪失した人として、
割とファンシーな感じで演技しているので、
その対比で余計に後半のガラの悪さが際立つ作り。
二階堂ふみは大阪弁どうなんかな〜と思っていましたが、
違和感が一切なくて、どの作品見てもこの人が出ていると、
きっちり映画が成立するという意味で素晴らしいなと改めて。
彼女が劇中で何度も放つ「しょーもな」というセリフは
クライマックスで意味を持って結実するのが好きでした。
茂雄とカスミの掛け合いも面白くて、
恋愛関係にはならないパートナーということに好感を持ちました。
2人での共同生活の丁寧に暮らしている様子が印象的で、
とくに朝ご飯がめちゃくちゃ美味しそうなんですよね。
マイメンのMatsumaeとも以前話していたんですが、
ご飯をむしゃむしゃ食べるシーンって非常に重要で、
それだけで 映画が持つ説得力が増すんですよね。
あと家の縁側でスイカの種を飛ばすワンカットのシーンは、
めちゃくちゃ叙情的で最高最高でした!
後半にかけては茂雄の過去が明らかになりつつ、
彼自身の記憶も戻ってくる。
その過去についても説明を比較的省略していて、
あくまで文脈の中でしか語られない。
この辺もワビサビ効いてて好きでした。
茂雄の父親との関係を繋ぐのが歌であり、
それが和田アキ子の「古い日記」な訳です。
しかもテープで…っていうところもイイ!
でも、茂雄は自分の気持ちに正直になれず、
本当は歌いたいんだけど悪の道を再び歩み始めてしまう。
自分にとって意味のないことだとしても、
他者にとっては意味があることもある、
というテーマは良かったんだけど、
終盤の脚本の甘さは気になりました。
(茂雄がステージに立つと決心するロジック)
ラストに歌う曲は確かに多幸感があって悪くないんだけど、
関ジャニ∞の曲の延長でしかないというか…
せっかくソウルフルな歌声を持っているのに、
もったいないなーと思いました。
魅力的な瞬間が多いので、是非映画館で!

2015年2月15日日曜日

ラブストーリーズ エリナーの愛情(Her) / コナーの涙(Him)


予告編を見たときに1つのラブストーリーズを
男/女の視点の両方から描いた2本立てという宣伝に
惹かれて2作連続で見てきました。(100分+95分)
1本目を見終わった後に、
話の中身を全部知っている状態から
2本目を見る訳で果たしてどうなんかなーと思っていたら、
これがとんでもなくオモシロかった!
こんなに多層的なラブストーリーは見たことがありません。
1本目にどちらの作品を見るかによっても
全く印象が異なるような作りになっています。
2本目を見始めたときに、
「そのとき彼/彼女は実は…」とかすれ違いを描くのまでは
想像がついたけれど、2人で共有している思い出を
男視点と女視点で微妙に異なる内容になっているのが、
映画のテーマともバッチリ合っていて深いな〜と。
ゴーン・ガールでも描かれていましたが、
他者が何を考えているか、感じているかなんて分からない。
ゆえに他者を最大限尊重し、想像力を働かせなければならない。
夫婦という最小単位の社会ではより大切になってきますが、
最近のイヤな世間の空気を考えると、
普遍的に考えなければならない話だと思います。
これはOnce Againものでもあり、
如何に喪失から再生していくかが男女で異なるのも
グッとくるポイントでした。
あと苦難が訪れたときに2人で力を合わせて乗り越えよう!
みたいな方法ではなく、距離を取って、
問題を解決しようとする姿勢が極めてリアリスティックで
そこも好感を持ちました。(しかもラブストーリーで)

原題はThe Disappearance of Eleanor Rigby。
女性の主人公名がEleanor Rigbyで、
これはThe Beatlesの曲名です。
その曲中の
というリリックから本作を着想したとのこと。
男サイドの副題がHim、女サイドがHerとなります。
ちなみに僕はHer→Himの順番で見ました。
僕自身が男ということもあるのか、見た順番なのか、
Himサイドの方が好きでした。
お話としては単純で、ある夫婦には子どもがいたんだけど、
その子どもが亡くなってしまったことで2人は別居。
子どもの死から2人が再生していく過程を
男女の視点で分けて2本の映画で描いた作品。
それぞれの物語の始まり方からして、
2人の世界の捉え方の違いがよく分かる。
Herの方はジェシカ・サスティン演じるエリナーが、
ヤク中か!というレベルの顔色が悪い状態で、
橋の上を自転車で走るショットから始まり、
橋の上から身を投げて自殺未遂を起こしてしまう。
一方でHimの方は2人で食い逃げしーの、
公園でイチャイチャという極上甘酸シーンから始まります。
(コナーはジェームズ・マカヴォイが演じています)
過去を捨て、イチからやり直そうとするエリナーと
過去を受け止めながら何とかもう一度やり直そうとするコナー
この冒頭だけでも2人のスタンスの違いが
よく分かる作りになっているし、
上記シーンが互いの作品でどのような使われ方をしているか、
それ自体も意味を持ってくる。
エリナーは大学教授の父のコネもあり、大学で授業を受け始めます。
コナーは自らの経営するレストランの運営が上手くいかない中でも
エリナーの行方を探そうと画策する。
これらの通常のラブストーリーなら何気ないシーンにも関わらず、
追う/追われるの構造を持ち込むだけで、
そのシーンが持つ意味が多様化していくのは興味深かったです。
2人とも別居のため実家に帰るんだけど、
家族の力を借りようとはせず、自らの力でなんとかしようと、
日々の生活をStruggleしていきます。
それは自分たちが失ったものであるがゆえのことなんでしょう。
しかし、弱っている彼らにとって家族は唯一無二の存在で、
その触れ合いを通じて己を取り戻していく。
特にコナーと父親の関係性が好きでした。
愛憎入り乱れつつ、男2人で生きてきた
それは死線をくぐり抜けてきた戦友さながらの雰囲気。
金魚を弔うために向かった海での2ショットは大好きでした。
(男は背中で語れてなんぼとはまさにこれ!)
エリナーには家族に加えてキーとなるのが大学講師。
彼女自身は結婚して子どももいるけど何年も会っていない。
はじめ、家族が彼女のことをハレモノのように扱うのに対して、
何も知らない彼女は遠慮なく意見を述べてくることに、
はじめは不安を覚えつつも「子どもを亡くした人」
というレッテルから解放される彼女の
生き生きとした表情が印象的でしたね。
ドライブデートが本作の一つのキーで、
物語の中盤でエリナーがコナーの店を訪問し、
そこから2人で目的地の無いドライブを始めるんですが、
豪雨で立ち往生してしまう。そこでいい雰囲気になるものの…
っていうね〜このデートが始まるまでの流れがポイントで、
このドライブデートはエリナーにとって、
コナーと過ごしたかけがいのない思い出の一つな訳です。
「同じことをすれば、もしかしたらあの頃の気持ちが…」
というテンションで挑んでいる訳です。
一方のコナーはその思い出のことを特に気にしていない。
自らが大切だと思っていることは必ずしも他人が大切に
思っている訳ではないというテーマがどーんと押し寄せる。
しかも、この悲惨な結果に終わるドライブデートは、
HerとHimで微妙に異なっている。
単純に視点、カット割りが異なっている作品ではなく、
2人の思い出ベースで作られているがゆえの仕掛け。
こんなん見たことないよ!!
コナーが引っ越す直前からラストまでの流れも
2作間で異なる部分が多くて楽しかったなー
ラストこそどっちを先に見るかで全く印象が異なると思います。
見た目で敬遠している人にも大推薦の傑作!

2015年2月14日土曜日

フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ



映画館で予告編を見たときに
BeyonceのHauntedが爆音でかかって、
超テンション上がったので見てきました。
グラミー賞でBeckがベストアルバム賞を受賞した際に
カニエが茶々入れた気持ちがよく分かるくらい、
Beyonceの最新アルバムが大好きで、
昨年よく聞いた音楽の一つです。
肝心の映画はというとSMものとして見れば、
ハード面ではニンフォマニアックvo.1, vol.2には叶わないし、
主従構造という面では毛皮のヴィーナスの方がよくできてるので、
パンチは弱いかなと思います。
ただ、恋愛の延長線上にある主従関係を描いた作品
として見れば十分楽しかったです。
本作はアメリカと同日公開という珍しいパターン。
劇中で使われる音楽はThe Weeknd, Beyonceを筆頭に
Alternative R&Bともいうべき
官能的な音楽が随所に使われています。
その第一人者ともいうべきDrakeが突如、
Short movieとNew albumを発表。
彼の曲は劇中で使われていなくて、
タイトルが「If You're Reading This It's too late」
っていうんだから勘ぐっちゃうよね〜
ComplexにはFifty Shades of Drakeなる、
本作のteaserと彼のmovieをMashupしたものも
公開されていました→リンク
お話としてはアナという大学生が
友人の代わりに青年実業家のグレイにインタビューしたことを
きっかけに恋が始まるものの、
完璧に見える彼が嗜好するのはSMプレイで…という話。
オープニングでグレイのイコライザーばりの几帳面さが
ありありと分かるシーンでグッと心掴まれます。
グレイ、アナともに相思相愛の中で
グレイが積極的にアプローチし、彼女のバイトする金物屋へ。
ロープ、結束バンド等を購入して、
アナに作業着の購入を勧められたときに
「いらない、服は脱ぐから」って真顔で答える。
このシーンのくだらない感じが好きでしたねー
お互いを意識し始めてうまくいくかと思いきや、
グレイが距離を取るようになる。
本作の見所は2人の関係性の変化が最大の見所です。
まるでシーソーの如く、お互いがHit & Awayを繰り返し、
それさえもが「焦らしプレイ」のように見える。
さらに、その関係性を印象づけるのが契約書の存在。
グレイは恋愛はしない主義で、あくまで体の関係のみ。
だから契約書にサインしてや!というロジック。
その契約書内にはdominant/submissiveの
こと細かいプレイの内容が記載されていて、
それについてアナが会議室で交渉するのが、
アホな感じで好きです。
そもそも恋愛や結婚をメタファーとして
契約に例えるのは分かるけれど、
会社同士が結ぶような契約を好きな女の子と結ぶ
という狂った設定も見所だと思います。
(グレイが真顔なところもポイント)
プレイルームでLet's Playのときにかかるのは
いずれもBeyonceの曲。
前述したHauntedのBridge部分のリリックと
唇にフォーカスした描写が印象的でした。
(ナインハーフオマージュの氷プレイもありました)
あとは何といってもアナ役のダコタ・ジョンソン、
彼女の遠慮のない脱ぎっぷりにはマキシマムリスペクト!
あか抜けない感じから、グレイとの関係が深まるにつれて、
だんだん艶やかに色っぽくなる変化を
カラダはって見事に演じきっていました。
契約うんぬんの戯言を繰り返すグレイに、
耐えきれなくなったアナが要求するのが
罰としての一番ハードなプレイ!ってことで、
ベルトによる鞭打ちが始まるんだけど、
ニンフォマニアックばりにカウントさせるのがオモシロい。
けれど、「ぺちっ」みたいなヌルい罰なので、
ニンフォマニアックの馬用の鞭でのプレイを見てる
こちらとしては、「もっとハードにやらんかい!」
という下衆な気持ちが芽生えてしまいました。
愛のあるdominantには従えるけど、
愛が無いのはダメ!という形の終わり方なんですが、
エレベーターを使ったフリが効いてて、
なおかつキレのいいエンディングには好感大。
エンドロールのThe Weekndの曲の入り方も
映画の余韻にぴったりで最高最高でした!
景気がいいfuckを見たい方は是非劇場で。
(ボカシありまくりだけどね!)

2015年2月12日木曜日

俺たちに明日はないッス



タナダユキのフィルモグラフィーを埋める一環で。
俺たちに明日はないをもじったタイトルな訳ですが、
高校生の性の目覚めを中心に、
思春期の悩みやその刹那を描いた作品です。
彼女の作品の中だとそこまで好きな方ではないですが、
特定のシーンではグッとくる部分はありました。
僕が好きだったのは太った男の子と巨乳の女の子の恋。
物理的に大きいという点では同じだけれど、
世間における価値は全く異なる。
それを巨乳の女の子がデブ専というキャラを設定することで、
価値観を反転させるっていうねー
SEXがしたい!という願望が帰結する先を
ある種ファンシーな海のシーンと、
超現実味ある養魚場のシーンの対比がオモシロかったです。
次は赤い文化住宅の初子を見ようと思います。

2015年2月11日水曜日

ミュータント・タートルズ



カワバンガ!
意味は分からないけれど、言いたくなる言葉。
予告編で流れるJuicy J,Wiz Khalifa,Ty dolla $ignによる、
Shell Shockedというテーマソングでガン上がりしていたので、
期待してIMAX 3Dで見てきました。
オーソドックスなアメコミ映画という印象で、
IMAXで見たからまだ楽しめたけど、
これ2Dで見たら結構残念な仕上がりかも。
アメイジング・スパイダーマンを
見たときの気持ちに近かったです。
3Dを前提として話をシンプルにしたのかもしれないけど、
ノイズになるくらい話が破綻している部分が多いので、
なんだかなぁって感じでした。
話自体は超単純でFOOT CLANという悪党軍団から
NYをタートルズが守るという勧善懲悪物語。
アニメーションによる状況説明から始まるんですが、
Shell ShockedのPVみたいな感じで、
とてもカッコよくてアガる〜と思いながら、
ヒロインの女性アナウンサーを中心に
話が展開していきます。
酷い世界が始まった!みたいなアニメによる紹介なのに、
いざ現実へ移ると、ピーカンの青空なのが気になりました。
「えっ、全然平和ですやん」というね。
タートルズの登場まで結構時間をかけるから、
さぞかし派手な登場なんやろなーと思いきや、
屋上でわりとなし崩しに登場する。
ファニーキャラクターなので、オフビートなのもいいけど、
人数も多いんだし、歌舞伎の見栄ばりにドーン!
っていう登場シーンが見たかったです。
タートルズはNINJYAなので日本描写が多いし、
一部は日本語のまま。(HOGOSYAは笑った)
HASHIという修行のくだりがあるんだけど、
あれは一体何だったのか日本人の僕にも分からない。
さらに大ボスはシュレッダーという全身刀の敵なんですが、
日本人っていう設定で劇中で日本語を話していました。
キャラクター造形の点でいうと、
タートルズの強い亀感は見てるうちに慣れてくるけど、
Splinter Senseiのげっ歯類感がどうしても生理的に無理…
アニメ版だともっと狼系なのに、
なんでこんなにげっ歯類なんだよ!と悲しくなりました。
(IMDb読んでたら三船敏郎の顔をベースにしているって
書いていてひっくり返った→リンク
あとシュレッダーも色々キャラ入れすぎて、
結局何なのかよく分からないまま。
アクションについてはIMAXで見たので満足。
とくに雪山でのカーチェイス&ソリチェイスは
起こっていることの無茶苦茶さが最高でしたね〜
予告でも使われていたエレベーターでの
4人のビートボックスもナイスでした。
ただ、もっとアホっぽい音楽というか、
それこそEDMとか現行のHIPHOPを
劇中で流して欲しかったなーと思います。
(Gwen StefaniGeorge Michaelだけじゃ物足りない)
終盤にかけて少し雑な展開が増えていくというか、
ラストのアクションを含めた残念さは悔やまれます。
ご都合主義なのはいいとしても単純につまんない。
ラファエロのセリフ超エモくて最高なんだけど、
仲が良くない描写や皆で協力した描写が少なすぎて、
その仲間意識に対して乗りきれなかったです…
ラストはアホ全開だったので好きでした!
もっとバランスを整えれば良くなりそうな気もするので、
続編を見てみたい気もします。

2015年2月8日日曜日

バッド・チューニング



リチャード・リンクレイター監督作品。
レンタルがなかなか無くて勢いでDVDを購入。
70年代のアメリカ青春ものとして
アホだな〜っていうところと、
ラストにかけての「やりたいことをやる」
っていうテーマにグッときました。
主人公はアメフト部のジョックス。
彼女もいるし、悪い奴らとも仲良くて、
充実した学生生活を過ごしています。
ハウスパーティーを目論んだものの、
友達の親にばれてしまってオジャン。
そこからマコノヒー演じるおっさんが
主催のパーティーに流れて…っていう話。
なにか特別な事件が起こるわけではないけれど、
仲間同士でキャッキャしてる姿を
見ているだけで超楽しい。
アホだなーと思ったのが新入生への通過儀礼。
男はケツ叩き、女はケチャップとマスタードを
ぶっかけられるというね。笑
売れる前のベン・アフレックや
ミラジョボビッチが出てるのも見どころ。
(とくにベン・アフレックはケツ叩きの鬼として
良い意味でアホな活躍しています。)
あとナード側の理屈コネまくるあたりは、
ビフォアシリーズに近いなと思いました。
ラストシーンで主人公が選択するシーンが
めちゃくちゃグッときて、
友達を人から指図されて選ぶほど、
FUCKなことはないなーと自分の中学の頃を思い出しました。
リンクレイター監督の作品ではかなり好きな方です!

Once ダブリンの街角で



はじまりのうたの監督である
ジョン・カーニー監督のデビュー作品。
本作と「はじまりのうた」を通じて分かるのは、
この人は音楽が大好きで、
音楽が人生を豊かにすることを
信じて止まないんだろうなと思いました。
2作ともほとんどプロットが同じなんですが、
本作は完全にインディーというか、
カメラの画質も荒いし撮り方もラフ。
でも、それがもたらす躍動感、DIY感が
物語とマッチしていて素晴らしいです。
アメリカを舞台にしてリブートしたのが、
「はじまりのうた」って感じかなー
Falling Slowlyが本当に素晴らしくて、
サビの歌詞にある
Raise your hopeful voice
You have a choice
You've made it now
このフレーズが特に好きでした。
ラストの終わり方もくっつきそうで、
くっつかないけれど、多幸感に満ち溢れてる
というねーもっと作品作って欲しい、
大好きな監督になりました!

トパーズ


村上でいうと完全に龍派なんですが、
未読だったので読んでみました。
久々に村上龍スタイルのバイオレンス&SEX描写を体感すると、
「あーこれこれ、お約束のやーつ」って感じで楽しめました。
主にコールガールの女の子が主人公の短編が収録されている形で、
実際に起こっている非日常的な出来事と
女性のセンシティブな精神描写の対比させることで、
社会構造自体のヤダ味や彼女たちが抱える辛さを感じました。
性風俗情勢はこのときよりも複雑化しているというのを、
Session22の最貧困女子特集のときに聞いたので、
早くそちらも読みたいなと思っています。

はじまりのうた



予告編を劇場で見てNYを舞台にした音楽にまつわる物語、
ということで楽しみにしていた作品。
予想をはるかに超えてめちゃオモシロかったです!
アメリカでの公開は2013年なんですが、
今の時代の音楽、その業界の動向までもを
エモーショナルな音楽とともきっちり描きつつ、
昨今の音楽トレンドに対するカウンターのような作りに
仕上がっていています。
それでいて、ラブストーリーおよび女性の自立も
描いていてめちゃくちゃ間口が広い作品。
普段音楽を聞かない人でも音楽のことが好きになるし、
音楽を好きな人にとっては最高最高でしかない!

キーラ・ナイトレイ演じるグレタと
その恋人であるデイブは仕事のためNYに引っ越してきます。
ここから楽しいNY生活が始まるかと思いきや、
デイブが他の女の子のことが好きになり破局。
どん底にしたグレタが友人のライブに足を運び、
そこでたまたま歌を披露することに。
その歌を聞いたマークラファロ演じる
音楽プロデューサーのダンが彼女の歌に惚れ込み、
デビューさせようとするものの…というお話。
冒頭でキーラ・ナイトレイが歌を披露するところから
始まるんですが、その歌がまず超イイ!
アコースティックなのと歌詞のもの哀しい内容が
うまくマッチしていました。
このライブハウスにたどり着き、2人が出会うまでの流れを、
グレタ視点とダン視点で2回繰り返します。
正直くどいなーと思ったりしたんですが、歌がイイから無問題!
本作は実際のミュージシャンを起用しているのが見どころで、
彼氏のデイブを演じるのはMaroon 5のアダム。
(この人は歌が上手いなーと思って見てたら、
この声は!って感じで気づきました。)
ブラックミュージックサイドからは
Yasiin Bey(MosDef)とCee Lo Greenが出演しています。
とくにCee Lo Greenが最高で、
ダンのプロデュースで売れたラッパー役なんですが、
超ステレオタイプなラッパー像を見事に演じていました。
プールでのシーンは完全にRick Rossにしか見えない。
グレタはダンにフラれる一方で、
ダンは酒浸りの毎日で家族との関係が上手くいっていない。
ボロボロの2人が音楽製作を通じて再生していく姿を
見ていると音楽は素晴らしいなぁという気持ちになります。
(ボロボロ表現として、グレタが デイブとの思い出動画を
iPhoneで見る姿は胸が締め付けられる。。)
2人はデビューに向けたデモCDの製作を始めるんですが、
お金がないからスタジオを借りることができない。
そこでダンが取る方法がNYの街中で録音してしまおう!
というもの。これが凡百の街だと大したことないんですが、
NYだと絵になるんですよね〜
映画のテーマである音楽が彩る日常というテーマにもピッタリ。
僕が好きなのは酔っ払ってデイブの留守録に歌を送るところ。
その手前の友人とベロベロなってるところから、
急にしっとりした歌が展開されるギャップが好きでした。
あと最後の曲にダンの娘がギターで参加するんですが、
下手やと言われていた彼女が
グッサ素晴らしいギターリフを披露するシーンがあるんですが、
おじさんは意味もなく泣いてしまいましたYO!!
(娘を見つめるダンの顔にサムアップ!)
劇中のオリジナルソングが素晴らしいのもさることながら、
劇中で使われる挿入歌も本当に最高。
イヤホンを2つ挿せるスプリッターを使って、
ダンとグレタがお互いのプレイリストを聞かせ合いながら、
NYの街中を徘徊するという極上甘酸シーン。
クラブへ入り若者たちが踊っている中、
2人だけがStevie WonderのFor Once In My Lifeを聞きながら、
踊り倒すシーンはマジで最高最高!
そのあとFrank Sinatraでシッポリしながら、
音楽によって街の風景が異なって見える話も
「そうそう!」と頷きまくり。
さらにデモ完成記念でのハウスパーティーで、
どんな曲が流れても踊ったらダメというゲームで流れる
Skipworth And TurnerのThinking About Your Love
という曲もナイスブギーでテンションガン上がりでした!
並行して描かれるラブストーリーも結構あっさりしていて、
デイブが捨てられてグレタが取る行動や、
グレタとダンの関係性も微妙なところで寸止め。
ラストにグレタが自転車でNYの街を走る、
そのときに晴れやかな顔のアップはまさに映画。
エンドロールで流れる音楽業界に対する
皮肉なメッセージはいらなかった気がするけれど、
映画の冒頭から今アメリカで流行っている音楽
およびその業界はクソだというメッセージの回収だと思えば
まぁいいかな?って感じでした。
現時点では今年見た中で一番好きな映画です!

2015年2月6日金曜日

さよなら歌舞伎町



今もっとも注目すべき若手俳優の染谷将太と、
元AKB48の前田敦子の2人が主演ということで見てきました。
俳優陣、テーマとオモシロい要素が揃っているのに、
こんな残念な仕上がりになってしまうのが
とても悲しい…と思いました。
オムニバス形式に近い作りで、
主演の2人のエピソードはメインの軸になっているものの、
エピソードの1つでしかない側面も強く、
この2人でガッツリした物語を見たかったところです。
描かれる他のエピソードはオモシロいものと、
これはあかんで…という玉石混合スタイル。
ゆえにもう少し絞ったら好きになっていた気がするし、
同じ俳優陣、テーマで園子温監督にやって欲しかった!
というのを見終わった直後に感じましたね。
染谷くんは元一流ホテルの従業員で、
クビになってしまったことでラブホの店長として働いている。
その彼女が前田敦子で歌手デビューを目指す女の子。
彼が勤めるラブホを訪れるお客さんの悲喜こもごもを
コミカルに描いた作品です。
最初のシーンが一番好きで、あっちゃんのギター弾き語り、
染谷くんとのいちゃいちゃからの、
2人乗りで駅へ向かって走りーの、タイトルが出るところまで。
多幸感に溢れていて素晴らしかったです。
(忘れられない「ねぇ、しよ!」)
最初のシーン然りなんですが、
本作はワンカットで撮ってるのが多くて、
あんまりカットを割らない作り。
引きのワンショットだったり、ブレブレの手持ちだったり。
ブレブレなのは臨場感を出すための演出なのか、
でもあんまりうまくいってなくて、
単純に見にくいなと感じました。
引きのワンショットも
舞台となるラブホやデリヘルの待合室などが
箱庭のように見えてファンシーさを増すのはいいんですが、
セリフによる過剰な説明も増えてしまう。
とくに染谷くんの妹がホテルで自分の身の上話をするのは、
分かったからもういいよ!と言いたくなるレベル。
しかも、その内容が3.11が関係してるし、なんだかなーと。
彼の出身地は津波で流されていて、
思い出したくない過去のメタファーとして
あっちゃんが枕営業する部屋番号が311っていう演出や、
その過去の蓋をこじ開けて現実へと向かうラスト。
確かに言いたいことは分かるけれど、
そこに至るまでの心情が見えにくいなぁと思います。
ワンカットが多いのはいいけど、
それによって映画全体のテンポが悪くなる上に、
上映時間が132分なので体感時間が長く、
見てて疲れました。
いくつかのエピソードが描かれているんですが、
僕が好きだったのは韓国人カップルの話と
刑事不倫コンビと逃亡犯の話です。
前者は正直メインよりも興味ふかくて、
カップルだとしてもお互いのことなんて、
100%知っている訳ではなく、
それを踏まえた上でどうやって2人で生きていくのか?
というテーマが好きでした。
この韓国人のデリヘル嬢を演じている人が
ハンパないなーと思い、帰って調べてみると
イ・ウヌという人でキム・ギドクのtimpo映画である、
メビウスに出てる人とのこと。
メビウスは未見なので、そっちも楽しみになりました。
また同じテーマがメインの2人でも描かれるんですが、
もう韓国人カップルの話で十分やんと思ってしまいました。
後者は刑事という真面目な部分と
不倫という禁じられた行為のバランスがオモシロいです。
(とくにプレイ用の手錠に付いてるフワフワしたやつが
すげーアホっぽくて最高でした)
あと見ていて強く感じたのは、ゴールを予め設定しないと、
それ以上にも以下にもならないということです。
この辺りは自戒の意味を込めて自らに言い聞かせたい所存。
エンドロールにかけてのあっちゃんの泣きながらの
弾き語りは素晴らしくて、やっぱこの人は映画的!と改めて。
色々ともったいない作品でした。

2015年2月3日火曜日

タチャ 神の手



映画の日ということで何見よかなーと思いつつ、
スケジュールの都合上、本作を見ることにしました。
(謎の特別料金2000円でした…)
大人青春クラシックのサニーの監督が、
BIGBANGのT.O.Pを主演に据えてギャンブル映画!
ということで期待しながら鑑賞。
絶対に3時間の上映時間は必要なかったけど、
新しき世界を彷彿とさせるパワーゲームと
復讐の連鎖、容赦のない暴力で楽しかったです。
劇場は満席でほとんどT.O.Pファンとおぼしき、
女性ファンで埋め尽くされた中、
冒頭にご丁寧にT.O.Pのインタビューも付いてる親切設計。
そのインタビューはポップなのに、
映画で描かれるのはえげつない殺し合いと騙し合いなんだから、
韓国映画はmadで最高最高だぜ!

主人公はT.O.P演じるテシグという青年。
子どもの頃からギャンブルの才覚を持つ彼が、
一旗揚げようとソウルへ上京します。
そして兄貴分のチャーリーと共に花札の賭場で働き始めます。
はじめは持ち前のイカサマテクニックを生かして、
トントン拍子で成り上がっていくんだけど、
裏社会の悪事に乗り込まれていき…というお話。
(ちなみにタチャは韓国でイカサマ師という意味)
子どもの頃の描写から始まり、アヴァンタイトルどーん!
かっこいい!とテンション高めで見始めれました。
前半はテシグの成り上がりをコミカルに見せてくれます。
ファムファタールとなる社長夫人に惹かれていく描写で、
パンチラを使った演出が最強にしょーもなくて最高。
上手く立ち回っていると思っていたのに、
自分が実はハメられていて、泥沼地獄が始まっていきます。
このときに登場するのがドンシクという闇金社長。
このキャラクターを生み出しただけで、
本作はALL OKと言いたくなるぐらいのILLっぷり。
「なるべく残虐な形で死んで欲しい、お願い神様!」
と願いたくなるレベルの極悪クソ野郎。
しかも「不死身か!」とツッコミたくなるレベルの生命力で、
ゴミ山で屹立している姿は笑ってしまいました。
ドンシクに膨大な借金を作ってしまったテシグは
腎臓取られるのが最初のバイオレンスシーン。
それまでヌルめだった本作が一気にギアを入れてきます。
(バイオレンスでいうと「手」をかけた花札も好きでした)
ボロ雑巾と化したテシグを救うのが、
元タチャの片手のないオジさん。
手を怪我してしまい、イカサマができなくなったテシグに、
洞察力と駆け引きを教えるメンターの存在。
おじさんがまた良い顔してるんすよね〜
韓国映画全般に言える話ですが、
俳優たちの演じてる役の人にしか見えない、
顔の力も見どころだと思います。
終盤はパワーゲームというか題材となっている、
花札さながらの駆け引きが繰り広げられます。
裏切りにつぐ裏切りを描きたい気持ちはよく分かるんですが、
180分はあまりにも長過ぎる…途中でだれちゃう。
ラストへの展開もちょっと無理あるなーと思いつつも、
勝負におけるギミックが超楽しいので問題なし!
(弱い札が勝つとか全員服脱いで戦うとか)
120分くらいのタイトな仕上がりだと、
相当好きな作品になっていたと思います。
やっぱ韓国映画は素晴らしいな〜

2015年2月1日日曜日

ジョーカー・ゲーム



入江悠監督最新作。
前作の日々ロックから間髪入れずに
2作目のメジャー配給での公開ということで、
ノリにノッテる同監督。
正直前作の日々ロックが好きではなかったので、
不安を持ちつつ鑑賞しましたが、
好きな部分が多い作品でした。
正直終盤に進むにしたがって、ご都合主義な場面が増えてきて
萎える人も多いと思いますが、ルパン+Mission Impossible
のようなプログラムピクチャーとして見れば楽しめるはずだし、
十分な出来だと思っています。
そもそも安易に作りやすそうな原作をチョイスして、
このぐらいの挑戦がないと日本映画はお先真っ暗だし、
「でも、やるんだよ!」魂を感じました。
舞台は第二次大戦前の日本。上官への反逆罪で死刑判決を受けた
亀梨君が日本軍のスパイとしてBack Again!!
新型爆弾の設計図を奪取する任務を授かり、
東南アジアで大暴れするスパイアクション映画です。
冒頭、陸軍での訓練で仲間をかばう
「情」に厚い男として亀梨くんが登場。
スパイ養成所にぶち込まれてStruggleしていきます。
この養成所の設定がオモシロくて、
「陸軍のやつらはダサい」っていうトっぽいやつらの集まり。
そんな中で亀梨くんが実力を見せつけて
仲間に徐々に認められていく。
これを矢継ぎ早のスタイリッシュなアクションで
見せてくれるのが好きでしたねー
あとアヴァンタイトルも007もろに意識した系なんですが、
やっぱりスパイものにはこれ!って感じでアガる!
そこから具体的な任務が始まっていくわけですが、
前半はハラハラポイントが多く、整合性もありオモシロい。
あの時代にそんなメカあるんかな?という疑問は沸くけど、
足音を拾うやつとか良い感じのold style
ルパン的といったのは深田恭子の存在ですね。
主人公を惑わすファムファタールで、
平気で何度も裏切るし、身のこなしが峰不二子らしい姿。
(シーツを使ったラブシーンがナイス!)
アクションシーンもかなり激しくて、亀梨くんが映えます!
あと顔面力があって、狂気を感じる切れ長の目もいいです。
(やっぱりギリギリでいつも生きていたんでしょうね)
特に好きだったアクションは街中でのチェイスシーン。
逃げながら、敵を倒しながら、
七変化さながらの変装を繰り出していくのが好きでした。
敵に捕まってから後半にかけて、
徐々にご都合主義な側面が多くなり残念なことに。。
プログラムピクチャーだから!と思って
楽しく見ていたんですが、
それでは説明がつかないレベルのことが起きてくる。
とくにラストですよねー螺旋階段に火薬撒いてドーン!
っていう設定はオモシロいんだけど、
偶然の連続に頼りすぎじゃん!ってい思わざるを得ない。
もっとやりようがあったんじゃないかなーゆえに残念。
ラストも車で逃げるところで、終わりなき任務が続いていく
という形が潔くていいんじゃないかなーと個人的に思います。
さくっと見るのがオススメですね。

ビッグ・アイズ



ティム・バートン監督最新作。
めっちゃ好きという訳ではないんですが、
主演がクリストフ・ヴァルツ×エイミー・アダムス!
ということで見てきました。
なんとなくファンシーなイメージを持っていたんですが、
良いい意味で裏切られて実話ベースの
ゴーストライターものでオモシロかったです。
期待どおり主演の2人は素晴らしく、
特にクリストフ・ヴァルツは無双!
と言ってもいいレベルで最高最高でした!
エイミー・アダムス演じるマーガレットは
暴力的な夫から逃げてサンフランシスコへ向かうところから、
物語は始まり、そこで出会った
クリストフ・ヴァルツ演じるキーンという画家と
恋に落ちて結婚することになります。
彼女は大きな目(Big Eyes) が特徴的な子どもの絵を
描いていたんですが、全く売れない。
それがひょんなきっかけで爆発的な人気を獲得するんですが、
夫のキーンが自らの作品として売り込み始め…という話。
話が始まるまでのタイトル、クレジット紹介が長いな〜
と少しイライラしたけれど、キーンと出会ってから、
一気に物語に引き込まれていきます。
2人で画家として頑張っていこうと、
レストランに絵を飾らせてもらえるようになり、
そこで注目されるのがキーンの風景画ではなく、
マーガレットの大きな目の子どもの絵。
舞台が1950〜1960年代であり、
完全なる男社会ということで女性作家が評価されない土壌。
そういった状況と一瞬のスキから嘘が始まり、
取り返しがつかなくなるのがオモシロかったですねー
確かにキーンが悪い部分はあるんだけれど、
キーンがいなければ彼女の絵が
売れることも無かったじゃないかというねー
加速度的に絵は有名になるけれど、
なかなか金が稼げない中で思いつくのがコピー
ここが興味深いなーと思って、
今でこそコピーしか手に入らない世の中ですが、
当時はコピーを売るという発想がないのかと。
なんでもコピーしちゃって、
オリジナルへのリスペクトを欠いてる!
みたいな現代への皮肉でもあるのかなー
キーンという人物の信頼の置けなさを
彼の行動で徐々に分からせてくる。
まー何といっても本作はヴァルツに尽きる!
あの軽妙なトークと身のこなし、顔で、
上っ面だけの空っぽな人間を見事に体現。
そんな彼にマーガレットも騙くらかされて、
「こいつ信用したらあかん!」
と感じてるんだけど、家族のためなら…
と己を押し殺し絵を描き続けてしまう訳です。
しかも対社会では有名画家の夫人としてしか
認知されない中で、その切なさがひしひしと伝わってきました。
万博用に描いた絵がNY TIMESに酷評されたときの
キーンの言動も興味深くて、
「批評家なんて絵が描けないやつがやる仕事だ!」
と喝破していて、それを言っちゃあおしめえよと。
ここからはヴァルツ無双の始まり。
アルコールに溺れてマーガレットと娘に
暴力を振るおうとするんですが、
その方法が火をつけたマッチを投げるっていう
狂い方が最高だったな〜鍵穴を覗く姿よ!
キーンに怯えた2人はハワイに逃げて、
エホバにハマりーの、キーンと裁判で戦うことに。
この裁判でのヴァルツのキレが最高最高でした!
(証人と弁護人の1人2役ってなんやねん!)
マーガレットは娘と絵を書くことを大切にしたいだけで、
娘と肩越しに手を握り合う姿が、
幾度も使われていて印象的でした。
ラストに実話の裏付けとマーガレットが存命で、
まだ絵を描いているという美談で大団円!
このクリストフ・ヴァルツを劇場で拝むべき!