2014年9月30日火曜日

ノーボーイズ、ノークライ


レンタルビデオ屋でふらっとパッケージを見かけて、
渡辺あやが脚本で、主演がハ・ジョンウ、音楽が砂原良徳!
このコンビネーションは何事?!と思い、見てみました。
監督がキム・ヨンナムっていう人なんですが、
さっと調べた限りでは本作以外は撮ってないみたい。
話が結構立て込んでいるので、詳しく説明しませんが、
ハ・ジョンウは韓国から日本まで、
ボートでドラッグの運び屋やってて、
そのボートを迎えにきているのが妻夫木君。
ある事件をきっかけに、2人が行動を共にするようになるものの、
ヤクザとのゴタゴタがあり…という話。
今やハ・ジョンウは漢の中の漢な感じですが、
本作ではフラフラしたチャラめの若者を演じています。
日本のスナックでカラオケするシーンがあるんですが、
そこで歌うのが浜崎あゆみの「マリア」っていう…笑
本作では90年代から2000年前半のポップスが、
ポイントポイントで使われてて、
PUFFYの「アジアの純真」をデュエットで歌ったり、
チャットモンチーの「シャングリラ」が車中で流れたり。
全部、絶妙に良い意味でダサい感じが好きでしたねー
劇伴は砂原良徳の攻めた音楽で、
物語全体に通底する割り切れないニュアンスを上手く、
後押ししているなーと思いました。
(ウッドベースと映画は合うと勝手に思っています)
一方の妻夫木君はやってることはダーティーなんだけど、
本当は家族思いの良いお兄さん。
韓国語マスターっぷりも驚きました。
家族に捨てられた人間と、家族を捨てたい人間の、
それぞれの思いや葛藤をバディ映画として描かれていました。
自分勝手に生きてきたハ・ジョンウは
家族、ひいては誰かのために生きることについて、
妻夫木君の行動を目にして変わっていく。
渡辺あやさんの好きなところは、
何気ないシーンで本質グサーっと突いてくるところ。
2人で車乗っているときの
「もし捨てるなら誰?」のくだりは胸が締め付けられました。
終盤は少しご都合主義的に展開しますが、
ラストが好きでしたね〜「えっ?そういう話?!」
みたいなところから、ドーン!っていう。
興味ある方はどうぞ。

2014年9月29日月曜日

Book (2014 August)



古本屋で白石一文作品を見たら買う習慣ができ、
タイトルの仰々しさに惹かれ、読んでみました。
主人公は週刊誌の編集長でガンという人間。
彼の会社内でのパワーゲームと、
家族との関係性などにまつわるお話。
白石さんの小説はサラリーマンの話が多く、
そのパワーゲームの部分がいつも通りオモシロいんだけど、
異様なまでの引用の多さが本作の特徴。
主人公の価値観、思想をここまで詳細に提示してるの
初めて読んだなーと思いました。
かなりボリューミーですが、意外にサクッと読めました。
初めて読む人は一瞬の光がオススメです。



いとうせいこう氏の過去作、レトロスペクティブシリーズの一環。
今年は個人的にいとうせいこう祭り!って感じで、
作品を読むごとに尊敬の念を高めるばかり。
2014年夏、とくに夏っぽいことをしなかった僕にとっての
夏の思い出は本作です。
(南国を舞台にした2作の作品が収められているからね)
とくに波の上の甲虫という作品がとんでもない!
先月も言いましたが、いとうせいこう氏の作品は、
小説という構造に対する挑戦が多く見られ、
この作品もまさにそれ。
メタ構造を多層に設けることで、
現実と虚構の境目が曖昧になる感じは、
電車で「うおー!」と言いそうになりました。笑
夏に読むのがオススメです。




映画版は愛憎入り乱れながらも結局好きなんですが、
装丁もかわいくなったし、読んでみるかということで。
これは短編集で、その中の一つがジョゼ虎となります。
いずれの短編も女性が主人公で、
恋愛や結婚に対する様々なスタンスが見れるんですが、
それがコテコテの京都弁で表現されてるのが好きでした。
ジョゼ虎は原作が幸せなまま終わるのを知りビックリ。
映画独自の味付けだと考えると、
映画版に対する愛情が芽生えたり…
他の田辺聖子作品も読んでみたいところです。



複製された男

映画版を先に見て、あまりの衝撃だったので原作も読んでみました。
モロに海外文学で、意訳もほとんどされてないような感じなので、
読み進めるのに、めちゃめちゃ時間かかって、
8月はずーっとこれ読んでた感じ。
結論としては、映画の方がより抽象度は高いし、
エンディングも原作はストレート。
あと、この作品が書かれたのはネット以前なので、
色々捜査を進める過程がモタモタしてて、
そこに懐かしさと苛立ちを感じました。
これ読んで、あの映画を作ったドゥニ・ヴィルヌーブ恐るべし。

2014年9月28日日曜日

箱入り息子の恋



劇場で上映してた頃から、ずーっと見ようと思っていたけど、
なかなかタイミング合わず、やっとの思いで。
星野源という人の才能の豊かさを
最近知ったところなんですが、本作も例に漏れず、
素晴らしい作品でございました。
甘酸、ほろ苦ー!キュン死系。
監督は市井昌秀氏という方で、wikiったら、
お笑いコンビの髭男爵の元メンバーで、
その前は笑い飯の哲夫とコンビ組んでたっていう…
人生何があるか分からないものですなー

クソが付くほどマジメな星野源と盲目の夏帆の恋愛物語。
人を好きになる原理の部分を抽出しているような作品だなぁと。
人は肩書きや見た目で値踏みしがちな訳ですが、
その人がどういった人で、何が好きで、
どういう気持ちで生きているのかみたいなところで、
感情が動かされることの尊さとでも言いましょうか。
その象徴が吉野家の牛丼な訳ですが、
他人と過ごすことは、面倒かもしれないけれど、
日常に豊かさをもたらしてくれる。
それを押し付けがましくない形で提示してくれる、
そのバランスが絶妙だなと思いました。
目が見えないことに対して、
星野源が父役の大杉蓮に会食で諭すシーンは確かになーと納得。
あと盲目であることを生かした演出がオモシロくて、
カエルの鳴き声のところはヤラレターと思いました。笑
あと夏帆の目が見えない演技が凄まじかったです。
あの焦点が合ってない感じは、
どうやったらできるんだろうと、俳優魂をヒシヒシと感じました。
ただ、中盤にかけて2人の仲が引き裂かれていく流れの中で、
交通事故っていう設定はどうなんかなーと。
目が見えない人を他の人と区別しないことは、
重要な話だとは思うけど、
日常で困るシーンは確実にあるんだから、
それを生かした仲違いっていう方法もあったのでは?と思います。
まーそんなことは些細な話で、
素晴らしい映画でしたので、未見の方は是非!

ジャージーボーイズ



クリント・イーストウッド監督最新作で、
題材がThe Four Seasonsってことで初日に見てきました。
レイトショーで見たんですが、かなり人が居て、
映画終了後には拍手がそこかしこから。
初めての体験でテンション上がりました。
内容は当然素晴らしくて、多幸感と悲哀の両方に満ちあふれた、
本当に大好きな映画でございました。
元々はミュージカルで上演されていた内容を映画化。
歌の素晴らしさは然ることながら、
それにイーストウッドのストーリーテリング力が合わさり、
これ以上ないという仕上がり。
彼の近年の作品で言うと、伝記物ということで、
J・エドガーが近いんですが、描く対象がエンタメになり、
受け入れやすく、楽しい映画となっています。
The Four Seasonsというソウルグループの栄枯盛衰物語で、
音楽の話をすると、ソウルの中でもDoo-Wopと呼ばれるものです。
僕はHIPOHOP入りで、サンプリングソースとしてのソウルに惹かれ、
そこからソウルをたくさん聞くようになったんですが、
Doo-Wopは他のソウルとリズムやテンポが異なるため、
そこまで聞いてこなかったです。
今年にリリースされたされたJINTANA & EMERALDSが、
2014年型Doo-Wopを提示してくれたので、
前よりは抵抗感は無くなったところでの本作。
前置きが長くなりましたが、Doo-Wopの良さが
スクリーンで全面に展開されたことで、
めちゃくちゃ勉強になったし、もっとdigしようと思わされました。

タイトル通り、The Four Seasonsのメンバーは
1人を除いて、ニュージャージー出身。
劇中でも語られていますが、当時街から出ようとすれば、
「①軍隊に入る、②ギャングになる、③有名になる」
このいずれかしか無かった時代。
若い頃のメンバーは②の選択肢を選びつつあったところで、
音楽と出会い、リードボーカルのフランキーのファルセット
という天の恵みのもと、音楽で有名になるという選択肢を取る。
ここまでの話はUSのHIPHOPの構造に近くて、
先日紹介したNasの生い立ちと変わらない部分。
この事実さえ全然知らなかったし、勉強になりました。
日本で言うところの昭和芸能史にあたる内容が、
丁寧に描かれているところがオモシロくて、
今やマフィアや暴力団と関係あるだけで叩かれてしまう世の中。
エンタメと反社会勢力が蜜月関係にあったことを
何のてらいもなく、2014年に正面切ってやる度胸たるや。
(その象徴となるのが、フランキーとウォーケン演じる、
マフィアのボスとの関係性ですよね、泣ける!)
あと、トミーを中心に主人公に狂言回しさせるところも、
彼らの人物像を掴むのに一役買っています。
ボブ・ゴーディオと出会ってから、4人での活動が始まる訳ですが、
この出会いのシーンがメチャクチャ好きでした。
リーダーのトミーが「あいつ、あんま好きじゃねーなー」
とダダをこねるところをフランキーとニックで説得し、
ゴーディオの曲を聞いてみることに。
その曲が良くて、最初はゴーディオしか歌ってないんだけど、
そこへフランキーがコーラスを入れ、ニックがベースを入れ、
トミーが渋々ギターを入れ、音楽が形成されていく。
このグルーブの萌芽とでも言うべき瞬間を見せてくれて、
その上、曲が素晴らしいんだから最高!
(ちなみにボブ・ゴーディオは
タモリ倶楽部でおなじみのアノ曲を作った人で、
フランキーらに彼を紹介したのがジョー・ペシ(!)
というのも劇中で分かります。)
The Four Seasonsとして活動するまでの
泥水すすり期間を経て、「シェリー」という曲で黄金時代へ。
この映画の素晴らしいところは、当時の音源を使う訳じゃなくて、
主演のJohn Lloyd Young を筆頭にしっかり焼き直しているところ。
当時の音源が録音環境の影響もあり、古くさい音像なんですが、
2014年の音像になっているのがスゲー良いです。
ノイズが無くなって、音楽の良さが全面に出てくる感じ。
彼はもともとミュージカル版でも主演を務めていたので、
歌うことに何の問題も無く、劇中の歌もアテレコではなく、
その場で録音したものを使用しているとのこと。
売れに売れてからの衰退期はトミーの借金が発端。
ここのジャージー流のくだりは胸が熱くなる気持ちと、
こんなどうしようもないヤツを…という
非常にアンビバレントな気持ちになります。
フランキーは身を粉にして働きまくる訳ですが、
追い打ちをかけるように家族に悲劇が訪れる。
その前のダイナーのシーンが効いてきて切なさ倍増。
絶望を彷徨うフランキーを救ったのは、やっぱり音楽な訳で、
その曲がCan't take my eyes off of you
っていうんだからさーもはや神懸かっているよね。
日本ではBOYS TOWN GANGのカバーが一番有名ですが、
国内外問わず、無数のミュージシャンにカバーされている、
クラシック中のクラシック曲。
なんですが、劇中で披露される曲の多幸感たるや…
初めは抑制されて始まるんですが、そこから幕が開き、
ホーンセクション、ストリングスセクションが加わり、
それに合わせたフランキーのファルセット。これぞ極上体験。
ロックの殿堂入りのくだりをはさみ、
Oh,What a nightのミュージカルエンディングでサムアップ!!
音楽好きな人に限らず、皆にお勧めしたい快作!

汚れた血



フランシス・ハのあるシーンが本作のオマージュだというのを
聞きつけて、見てみました。
上の動画は予告編ではなく、その該当シーンです。
横からのショットで、David BowieのModern Loveが鳴り響く中、
街を走り抜けるところ。
作品自体は結構ケイオスな感じで近未来SF+青春映画。
カメラワークもかなり特殊で、独自の世界観が強いです。
監督はレオン・カラックスで、アレックス3部作と呼ばれる
彼の作品群の2番目にあたるらしい。
主人公の行動が結構突飛で動機が見えない部分が多く、
物語に乗りにくいなと思いました。
(それが若き衝動と言われてしまえば、それまでだけど)
盲目な恋と生きるために必要なこと。みたいな話で、
文学的なことも多く、万人には薦め辛いかなー
若き日のジュリー・デルピーがとてもかわいいので、
その点は非常にオススメでございます。

NY心霊捜査官



全然ノーマークだったんですが、当ブログでおなじみの
人の心を失った先輩が楽しそうに見ていたし、
参考にしてる映画reviewerの人が軒並み見ていたので、
その波に乗って鑑賞いたしました。
ホラーサスペンスなんですが、邦題とはおよそ似つかない、
エクソシスト系の取り憑きもの映画でした。
1人で家で見てたら怖くて全部見れなかったかも…
バイオレンス系は平気でよく見るんですが、
ホラー系が苦手で、映画を見るときに「怖い」という感情を
求めてないっていうのもあるんですが、1人で処理できないし、
日常生活に支障をきたしますしね。笑
言い訳が長くなりましたが、
久々に見たら、これはこれで楽しいかもと思えました。
冒頭、イラクでの戦闘シーンから始まり、
えっ?となるので掴みはOK.
主人公は刑事で、勘が働く=霊感が強い男。
警察に通報があって、その勘が働いた事件に対して、
自ら進んで捜査に取り組む。
そんな中で母親が赤ん坊を側溝に投げるという事件、
DV事件、地下室での殺人事件の中に接点を見つけ、
それが悪魔の仕業であるように思え…というお話。
怖がらせ方として、「ワッ!」という演出しか無いんですけど、
実はそれが動物でした〜みたいなことが多かった印象。
(猫の磔のやつ、夢に出てきそう…)
主人公は神を信じてないんだけど、悪魔の声に敏感。
自分1人にしか聞こえない音や声、見えない映像に苦しむ。
こういうホラー映画見る度に、
ホント嫌なこと考えるの上手いよなぁと思います。
しかも、近年のVFXおよび特殊メイク技術の発展に伴い、
リアリティは増すばかりなので、とても怖い。
あと音楽が大きくfeatureされていて、それがDOORSの曲。
この辺りの詳しいことはコチラを参照ください→リンク
DOORS=現世と別の世界への扉みたいなことなんですが、
FRESHだなーと思いました。
悪魔要素に加えて、刑事サスペンスとして楽しむ余地もあって、
MADな警官が家庭を顧みないくだりは好きでした。
娘にも悪魔の手がかかるんだけど、
前半で登場した何の変哲もないファニーなおもちゃが、
反転して、めっちゃ怖い演出に使われるのも良かった。
牧師が登場してからはエクソシスト的な展開が加速。
正直、この悪魔系の話はキリスト教の概念、価値観を
勉強しないと100%楽しめないと、いつも思う訳です。
怖いものは幽霊という価値観で育ってきてるしね。
ただ、悪魔ばらいのくだりは無駄に迫力満点でナイス!
オチが平和過ぎて、少し食い足りなかったけど、
ホラーはたまに見ると楽しめるなぁと思いました。

ケープタウン



仕事でMADな気分だったので、映画を見て帰ろうくらいの
軽い気持ちで見に行きました。
オーランド・ブルーム主演くらいの前情報しか知らず、
見てみたら、とんでもないやないか!と度肝を抜かれました。
見終わった後の感触では、プリズナーズに近くて、
見てはいけないものを見たような気持ち。
多少設定に無理がある部分はあるものの、
その設定を生かしたドラマ、バイオレンスがオモシロいから無問題。
原題はZULUなんですが、邦題にあるように、
舞台は南アフリカのケープタウン。
オーランド・ブルームは私生活がだらしないけど、
やるときはやる敏腕刑事。
その上司をフォレスト・ウィテカーを演じています。
大統領の執事の涙で主演を務めていました)
ある日、植物園で女の子の死体が見つかり、
その遺体からドラッグが検出されるところから物語が始まります。
目撃証言や物的証拠を含め、ドラッグの売人が怪しいとなり、
捜査を進めていく中で、ドラッグシンジケートの存在まで
辿り着くものの…というお話です。
最初の事件捜査のところでは、何の変哲も無い刑事サスペンスかー
と思っていたところから、海岸での事情聴取で一変。
南アフリカの凶悪なバイオレンスと、
人が死ぬときはドラマティックなことなんて一切無いんですよ、
という本作内での死を定義するシーン。
あまりに痛烈で、心がグッと掴まれました。
南アフリカの治安の悪さは知っていたけれど、
ここまでとは思わなかったし、格差もえげつなくて、
さらに人種差別の歴史を背負っている国でもある。
これらの要素をふんだんに生かしていて、
舞台を南アフリカにしたところは、
目の付けどころがシャープだなぁと思いました。
ある種、無秩序な世界の中で、
2人が懸命に捜査していくのが中盤から後半で、
バディムービーとして気持ちいい。
それぞれ家族にまつわる背景を抱えていて、
物語全体の不穏な空気にマッチしていると思います。
ブルームのヨレヨレ刑事も意外にはまっているし、
ウィテカーの優しい側面がありつつ、
謎の深い闇が垣間見える感じが怖い。
前述した無理な設定というのはドラッグの部分。
このドラッグは摂取量によって、
取る行動や凶暴さが異なる訳なんですが、
これが鬱への特効薬に…みたいな流れ。
その治験で子どもが街から消えたって
いくらなんでも無理ない?大人で試せよとか思ったんですが、
終盤、復讐物語への流れで、
復讐する気持ち=ドラッグという構造が提示されていく。
前半で白人女性がウィテカーに人種差別の話をする前フリが効いて、
あんなに冷静で物わかりのよいウィテカーが、
復讐は犠牲者がただただ増えていくことが分かっているのに、
それが自分の目の前に差し出されてしまうと、
歯止めがきかない。まさにドラッグ。
その復讐を果たす砂漠をひたすら追いかけるシーンは、
しつこいぐらいに長くて、地獄を体感させられる。
サスペンスとしても十分楽しいし、多層的な構造、
強烈なバイオレンスに満ちた素晴らしい映画でした。

2014年9月25日木曜日

リアリティ・バイツ



「若者たち」というドラマを心折れそうになりながらも、
なんとか見続けてきた中で、本作がfeatureされてました。
若者たちは過去のリメイクなのでしょうがないんですが、
2014年の若者像を一切提示してなくて、
オジさんたちの若者像、つまり過去の自分を投影している感じがして、
全然好きじゃありません。
とくに主人公が言う「理屈じゃねえんだよ!」という台詞に
逐一イライラするんですが、
あのメンツは二度と見れない気がしているので、惰性で見続けています。
それはさておき、
リサ・ローブが歌う本作のエンディング曲を
長澤まさみがカバーしてて、それが素晴らしい。



っていうキッカケで見てみました。
ベン・スティラー初監督作品で、本人も出演。
ウィノナ・ライダー、イーサン・ホークが主演の青春映画。
これは大学4年か社会人1年目に見るべきだったなぁと。
学生までは勉強もろくにせず、親に保護されてきた人が、
いざ社会に出たときに「働く」ことと否が応でも対峙させられ、
苦労し、社会に適合できなかったときに、
果たしてどうすべきか。みたいな話です。
冒頭、大学の卒業式の答辞のシーンで、
自分たちの親世代の価値観の否定から始まるんですが、
その後に否定したものの有り難みを痛感させられる皮肉な作り。
若い頃は理想に燃えるのは当然で、
年を取るにつれて、良い意味でも悪い意味でも老成していく、
ということを見ていてヒシヒシと感じました。
いかんせん、ウィノナ・ライダーが超可愛いんだけど、
どうしようもなく子どもで超イライラする。笑
イーサンの台詞がかっこよくて、原文ママ引用。

This is all we need. 
A couple of smokes, a cup of coffee, 
and a little bit of conversation.
You and me and five bucks. 


足るを知るってことなんですが、
こんなこと、さらっと言える人がモテるんですなー
あとベン・スティラーがウィノナの映像を、
勝手にいじったあとの弁明が社会人になると刺さってきますね。
ラストにかけて、ラブストーリーに帰結していくところが、
現実逃避にしか見えなかったのが残念だった。
好きなことを好きなタイミングでするってことなんだろうけど。
若者たちとシンクロする部分も多いので、
ドラマを見てる人は見た方が楽しくなると思います。

2014年9月24日水曜日

ラブ・アクチュアリー



来週からリチャード・カーティス監督の最新作、
About time が公開されるので、その予習として鑑賞。
それに加え、僕のボンクラ友人の1人であるMatsumaeと
飲んでるときに、「女の子と家で見るDVD論」というのを
2時間近く繰り広げたのちに、
最終的にたどり着いたのが本作ということもあり、
果たしてどんなもんなんだい?という確認込みで見ました。
確かに、これが好きな女の子は至極真っ当だと思うし、
ピースな空間に満ちあふれてるのは間違いないんだけど、
大絶賛する気にはなれない感じでした。
色んな家庭や恋人同士、夫婦の関係性を通して、
愛とは何ぞやっていうのをあぶり出していく作品。
オムニバス構造の映画は色々とありますが、
それぞれが有機的に絡み合うポール・ハギス監督の
クラッシュやサードパーソンの方が好き。
本作は単品で詰め込んだ形なので、
ニアミスみたいなシーンは多いけれど、
交錯してストーリーが進展するようなことはない。
そこが物足りない気がしましたが、音楽の使い方が最高。
公開当時、母親が珍しくサントラ買ってたのを思い出しました。
映画の冒頭でも示されるように、Love actually is all aroundな訳で、
様々な話を盛り込んだことによって
「LOVE」の多様性を包含した作品になっているところが好きです。
クリスマスに向けてすべてが収束していくので、
クリスマス前もしくは当日に男女で見ると良いかもね!

2014年9月23日火曜日

陽だまりの彼女



本当はホットロードを見る前に決めときたかった作品。
2作とも三木孝浩という人が監督です。
あらためて監督の略歴などを見ていると、
もともとはMV作って人なんですね。
公開当時、結構話題になってたんですが、
偏見で「どうせ邦画の恋愛ものなんて…」と敬遠してました。
見た結果、ホットロードよりも断然本作が好きです!
本作はMVのような演出の甘酸指数が高過ぎて、悶絶死。
ただの甘酸ならまだしも、
終盤にかけてのあるトンデモ展開に驚愕。
ヒロインの上野樹里が体調を崩し始めたあたりで、
もしや難病ものか…と危惧したんですが、
そんなものは杞憂に過ぎなかった!
全体のテンポが悪いのは気にかかりましたが、
映画から満ちあふれる多幸感に身をひたす気持ちよさが勝る。
テーマソングとなる、この曲は本当に素晴らしい。



ラストに歌詞の字幕も入って、
それまでの2人の生活を反芻し、思いが込み上げる。
エンディングがヤマタツの書き下ろしなのもナイスなんですね〜



偏見ダメ絶対!と思わされた作品でございました。

舞妓はレディ



周防正行監督最新作、前作の終の信託が、
かなりハードな内容だったのに対して、
本作はかなりPOPでカワイイ作品になっていました。
ミュージカルとして楽しめるポイントがたくさんあるし、
少女の成長物語としてオモシロい。
ただ、ミュージカルという構造を取ったがゆえに、
話運びに難ありな部分も散見されたのは事実。
しかし、もう僕もすっかりオジさんでして、
若い女の子が自分のやりたいことに対して、
純粋にガムシャラに取り組んでいる姿、
それだけでグッときて、「ウル」が発動しちゃう訳。
(あまちゃん以降、そのモードは加速しています。笑)
大人になるとどうしても、無駄を排除し、
合理化されたものを追求しがちだし、
一億総ツッコミ社会の中で、
愛のない正論だらけな今の社会の雰囲気において、
こういった様式美、伝統のオモシロさを見せてくれた!
という意味では良いなぁと思いました。
主人公は春子という女の子で、津軽から舞妓になるため、
単身で京都へやってくる。誰の紹介でもない彼女は、
当然ながら、女将に断られるんだけれど、
そこに居合わせた長谷川博己演じる言語学者が後見人となり、
彼と2人3脚で京ことばをマスターしつつ、
舞妓の修行にも励み、舞妓になろうとするお話。
春子は幼い頃に両親を亡くしていて、ジジババっ子。
津軽で育ち、鹿児島出身の婆の影響で、
方言がとんでもないことになっていて、
ほとんど何言ってるか分からない。笑
そんな登場の仕方なんだけど、
最初のミュージカルシーンが彼女が歌うところで、
声の迫力、歌の上手さで心がグッと掴まれる。
これ以降のミュージカルシーンがもう逐一最高で、
それだけでかなり満足。
竹中直人、草刈民代、高嶋政宏、長谷川博己という、
蒼々たるメンツが「大ボケ」のスタンスで、
全力でミュージカルシーンを見せてくれます。
「くだらねぇ〜」と言いながらもヤミツキになる感じ。
修行の様子を通じて、舞妓がどういったものか、
というのが分かる作りなのも良かったです。
修行で追い込まれて声が出なくなったり、
ひたすた「おおきに」「すんまへん」「おたのもうします」を
繰り返して、奮闘する春子の姿はとにかく愛おしい。
けれど、彼女がどうして舞妓になりたいかの、
描き込みが足りないように感じました。
母親が舞妓だったからというのは1つの理由なんでしょうが、
過去の描写や母との思い出など、
いくらでもやりようはあったように思うんだけれど…
とくに女将さんが春子に母が舞妓時代の話をするところがあるんですが、
あのシーンが全部セリフで説明しちゃうのもったいないなぁと。
それこそ、女将さんの初恋の話は端折って、
ミュージカルで見せちゃえば良かったのに。
舞妓という未完成なものを愛でる=アイドルを愛でるという形で、
春子の背景をなるべく排除して、人形化させてるのかもしれないけれど、
ドラマとしては、背景欲しいなーと思いました。
あと濱田岳演じる大学院生が言う、
「舞妓は伝統を隠れ蓑にした水商売だ」という発言も回収されない。
彼の母が芸子で、彼自身が妾の子という設定ゆえのことなんだけど、
風呂敷を広げるわりに放ったらかしというか。
最後の京ことばを話すくだりも「えっ?」って感じだったし。
と文句をつらつら述べてまいりましたが、
彼女が舞妓になって舞う姿や、そこで明らかにされる大人の優しさは、
ホロリと泣いてしまいました。
そしてラストに岸部一徳が言う「若さ」の定義に膝を打ち、
単純な年齢だけじゃないと思ったりしました。
幸せな気持ちで劇場を出れるんだから、
それだけでいいじゃないと思えば楽しい映画だと思います。

猿の惑星:新世紀(ライジング)



しっかり前作も予習したのちに見てきました。
かなり好きだなぁと印象で、
同じSFだとGOGの方がもてはやされていますが、
こっちも相当良いよ!と声を大にして言いたい!
本作は猿の惑星と化す発火点の部分で、
共存/戦争のギリギリのせめぎ合いを丁寧に描いていて、
見終わったあとに「何て不毛なんだ…」と思わされる。
プライベートライアンは迫力のある映像によって、
それを見せつけてくれた作品ですが、
本作は戦争の仕組みの部分を人間と猿という形で
表現しているのがオモシロかったです。
シーソーのようなバランスで、共存の光が見えた瞬間に、
戦争への足音がすぐに聞こえてくる。
話は前作の続きからスタート。
アルツハイマーの治療薬として開発されたAZ-113が、
人を殺すウイルスとなり世界中へと拡散し、人類はほぼ壊滅。
生き残った人間たちは何とか生き延びようと、
集落を形成しているんだけど、電力が不足してしまう。
そこで猿たちが暮らす森の中の発電所を再稼働させようとする。
森へ潜入し、猿と遭遇し、お互いの利害が一致するように
それぞれが行動しようとするものの…という話。
タイトルが出てから、最初のショットが
猿の長であるシーザーの顔のドアップ!
そっから狩りのシーンとなるんですが、迫力満点で、
この時点で大きくサムアップ!
猿たちの暮らしぶりも丁寧に描かれてて、
前作よりは猿の惑星化が進んでおり、
話せるし、類人猿レベルに文明も発展しています。
人間と猿の交流が始まっていくと、
それぞれの狙いが垣間見えてきて前述した
共存/戦争の危ういバランスを橋渡りするところを
色んなトピックで描いていきます。
見てて思ったのは、個々人が良くないと思っていても、
声のデカいヤツのせいで、
物事はいくらでも悪い方向に転がっていくということ。
そして、戦争というのはPrimitiveな憎悪から始まることも
よく分かる作りになっていました。
それを1人で体現するのがコバという猿。
彼は人間にしこたま実験台とさせられたがゆえに、
人間のことを根底から恨んでいて、
ある時期までは人間に大切に育てられた
シーザーとは対照的な存在。
彼の気持ちも分かるがゆえに、戦争が始まり、
死ぬ必要のない猿がたくさん死んでいくのが切ない。
それを映像でまざまざと見せつけられる。
映画秘宝の言い方を借りるのならば、コバ無双!
両手にマシンガン持って乱射し、
戦車を乗っ取り、人間のアジトへと突入していく姿は、
戦争前に見せるチャーミングな一面とは正反対。
両方見てる分、切なさが倍増しました。
個人間では調和可能なのに、
集団になると全体の利益を優先するがゆえに、
いがみ合いが起こるのは各地で起こっている紛争や、
今の日本、中国、韓国の関係のように思ったり。
ラストはコバvsシーザーの一騎打ちになるんですが、
タワーを落ちながら戦うのがオモシロかったです。
しかも、猿たちはその戦いを囲み、一切手を出さない。
強いやつに従うという弱肉強食の社会。
シーザーが終盤に取る行動のどれもがあまりに哀しい。
彼は利口ですべてを理解しつつも、
回り始めた歯車を止めることができないという地獄…
そして、オープニング同様、再び彼の顔へと集約していく。
SFアクションとしてのルックは抜群なのは当然ながら、
テーマも奥深くて、素晴らしい映画だと思いました。
迷ってる人は前作を予習してから是非!

2014年9月22日月曜日

Nas/タイム・イズ・イルマティック



レイトショーしかやってなくて、
なかなか都合がつかなかったんですが、連休中に何とか鑑賞。
はじめはパスしよかなーぐらいだったんですが、
見て大正解!と思えるくらい良かったです。
NasのIllmaticという1stアルバムに関する映画なんですが、
洋邦問わずHIPHOPが好きな人は、
必ず聞いているアルバムといってもいい名盤中の名盤。
僕は高3から大学1年の頃、HIPHOPへ異常に傾倒してて、
ちょうど聞き始めの頃に聞いたのを覚えています。
90'sのNYサウンドの中でも比較的メロウではあったので、
好んでよく聞いていました。
(そっからDITC周りやブーキャン周りへと、
よりdopeなものを求めていったなぁとreminice)
USのHIPHOP聞くときって、
どうしてもサウンド重視になってしまって、
歌詞やそのラッパーがどういった人なのかってことを
あまり注目してないことが多くて。
本作ではIllmaticというアルバムができるまでの過程と、
Nasの出自に迫ったドキュメンタリー。
彼はアメリカのプロジェクト出身のラッパー。
デビューアルバムである多大なる評価を得て、
華々しくデビューした人。
ぐらいの知識しか持っていなかったので、
本作はめちゃくちゃ勉強になって楽しかったです。
USのHIPHOPはラッパーの「物語」のまとい方が、
めちゃくちゃオモシロい!と改めて思いました。
冒頭、運転手付きの車で移動するNasの映像から始まり、
Illmaticがどうやって製作されたのかを、
彼のインタビューや関係者の証言から浮き彫りにしていく。
クイーンズ出身の彼ですが、
その中では比較的恵まれた人だったという話は結構衝撃。
父親はオルダラというサックスプレイヤーっていうのは
知ってたんですが、彼が持っていた多くの蔵書や、
海外をよく訪れていたオルダラの話を聞いて育ったことが、
彼のラッパーとしてのスタンスに大きく影響を与えていたことも、
映画を見ているとよく分かりました。
Illmaticはデビューアルバムなので、
Nasがどういった人物なのかにフォーカスするのは当然ながら、
クイーンズにおけるヒップホップの歴史も紐解かれるので、
そこもオモシロかったです。
とくにBDPとのThe Bridge Warsのくだりは、
ボンヤリ知ってたけど、こういう流れなのねーと
体系的に勉強になりました。
タマフルの特集でも言及されていましたが、
ポイントポイントでは哀しいところもあるものの、
全体にポジティブな印象なのも良いなぁと。
トライブの映画で終盤に仲違いの話が出てくるのと対照的)
あいまあいまに出てくるライブ映像も
とてもかっこよくて、つい首を振っちゃうヤーツ。
各収録曲のエピソードも興味深いし、
リリックも日本語訳が字幕で出るから、
この曲はこんな内容やったんやーっていうのも楽しい。
中学も卒業できてないオレがハーバードだぜ!
という最高のSWAGで終わるのアツい!
Nasというラッパーを通じたアメリカの歴史、
みたいな見方もできるので、門外漢のあなたも是非。

ある優しき殺人者の記録



映画秘宝の記事を流し読みしてて、オモシロそーと思いつつ、
連日の公開ラッシュで後回しになっていたところ、
橋本愛のinstgramに登場してビックリ。
と色々話題ですが、アップリンクにて見てきました。
いやー想像を超えたオモシロさで満足でした。
久々にシリアルキラーもの見たけど、
やっぱこういうヒリヒリするやつは好きやなと改めて。
POV形式のサスペンススリラーなんですが、
全編ワンカット、ワンシーンで撮影しているため、
臨場感が凄まじく、その場にいるかのような感覚に陥る。
ストーリー全体にツッコミどころがないかといえば、
嘘になるけれど、目の前で展開される事態を飲み込むことで、
精一杯なので、あまり気にならなかったです。
同じ日活でシリアルキラーものといえば、
KILLERSがありましたが、段違いに良かったです。
舞台は韓国で、18人殺した指名手配犯人がいて、
幼なじみの女性ジャーナリストのところに彼から連絡が。
彼の要求は、警察に知らせずに、
その女性と日本人カメラ人の2人でオレのところへ来いというもの。
汚いボロマンションへ行くと、そこに犯人が居て、
彼へのインタビューが始まる。
彼が殺人を繰り返したのは、神のお告げによるもので、
「27歳のときに27人殺したら、お前の幼なじみを生き返らせたる」
というもの。(この2人には、もう1人幼なじみがいて、
幼少期に交通事故で亡くなった女の子がいる)
呪術のようなものを成し遂げるまでを描いた、
密室サスペンススリラーでございます。
このシリアルキラーは話すと普通なんだけど、
発火点があって、そこに触れちゃうと気が狂ったように暴れる。
(精神病院に17年間いて脱走し、これまでの凶行に及んできた)
ジャーナリストとカメラマンは、何とか殺しを思い留まらせようと、
誘導しようとするんだけど、お告げを信じてやまない。
初めはこの3人で物語は進んでいくんですが、
途中で日本人旅行者が2人、fuckするために、
マンションの一室へやってくるんですが、
ここから物語が一気に加速していく。
計5人のパワーバランス、この均衡が変動しまくるのが、
とてもオモシロくて、手に汗を握りまくり。
日本人旅行者の2人はカップルなんだけど、
彼氏がチーマーみたいな男とで、こいつもCrazy.
人を殺すことに一切の躊躇が無い感じ。
本当なら狂っているのはシリアルキラーだけのはずが、
それぞれが己の利益を満たすために行動していくにつれて、
殺すこと自体が当たり前の空間が成立していく。
このあたりが怖くて、単純に精神を病んでるから、
人を殺したんだっていう論法じゃなく、
人それぞれが持つハードルや必然性が異なるだけなんですよ
っていうことかーと考えたりしました。
POV手法では想像もつかない、ラストの裏切りに
完全に意表をつかれて、口ポカーンでした。
あの前フリがこんな形で…っていう。
甘酸要素さえ感じさせる終わり方。
ただねーあんだけ人殺しといて…って思ったし、
それは「優しき」なのかというね。
オモシロいことに間違いないので、
シリアルキラー好きの人は是非!

2014年9月21日日曜日

ムービー43



色んな監督のオムニバス作品。
ガーディアン・オブ・ギャラクシーの監督である、
ジェームズ・ガンも参加しているし、
別の作品ながら、クリス・プラットも参加しているので、
ガーディアン・オブ・ギャラクシー見た人は
要チェックな作品だと思います。
ショートストーリーが16本くらい入っているんですが、
どれもかなり豪華なキャスト。
Wikipediaでかなり事細かに解説されていますので、
興味ある方はそちらをご参照まで→リンク
全部は説明しきれないんですが、
豪華キャストが中学生の考えたような下ネタを全力でやってるのは、
貴重やと思うし、最高だなぁと思いました。
しかも、割とエグめの下ネタをガンガン放り込んでくるんすよねー
ゲラゲラ笑えるので、コーラとポップコーンと共にどうぞ。

2014年9月20日土曜日

ポール・ヴァーホーヴェン/トリック



大阪に帰るたびに、諸先輩方と映画駄話飲みをするんですが、
そのたびに出てくる監督の1人であるポール・ヴァーホーヴェン。
ロボコップや氷の微笑などなど、
映画史に残る作品が数々ある訳ですが、
インビジブルをロードショーで見たことあるくらいで。
とりあえず最新作から見てみるかってことで見ました。
と言いつつも本作はかなり変則的な作りで、
最初の4分だけをプロの脚本家が脚本を書いているんだけど、
続きは応募して集めたアマチュアの脚本の寄せ集め。
それをトータルでヴァーホーヴェンが監督するというもの。
映画の前半は、その経緯や撮影風景など、
DVDの特典でついてきそうな内容。
その後に本編が始まるという構成になっています。
ヴァーホーヴェンのインタビューが中心なので、
彼の映画へのスタンスが知れて、入門編として優れているなぁと。
そして、後半の映画本体も超オモシロかった!
複雑な男女関係を描いた作品なんですが、
バラバラの脚本をまとめたとは思えない完成度。
人をハラハラさせるスキルがハンパねーと思いました。
明確に言葉で説明できないんだけど、
ちょっとした間や撮り方なんだろうなと。
次は諸先輩方が激賞のブラックブック見るで〜

アウェイ・フロム・ハー 君を想う


サラ・ポーリーの監督デビュー作品。
Take This Waltz、物語る私たちと大好きな作品ばかりで、
これだけ見れてなかったんですが、やっと見ました。
これがデビュー作品とは思えないくらい、
むちゃくちゃオモシロかったし、好きやったなー
老夫婦の恋愛ものなんだけど、人の記憶というテーマを絡め、
愛おしいような、哀しいような何とも言えない気持ちになる。
見終わったあと、タイトルがすべてを表しているなぁと。
ある夫婦がいて、奥さんがアルツハイマーとなってしまい、
旦那が彼女を介護施設に入れることにする。
施設の規則で、入居後30日間は電話も面会もできない。
そして、30日後に彼女を訪ねたら、
旦那が誰なのか分からなくなっていて…という話。
しかも、奥さんが施設内の別の男性に恋してるっていう地獄。
本来なら怒ったり、施設から連れ帰ったりするんだろうけど、
まさにAway from herで遠くから彼女を見守っている。
彼女の記憶を呼び起こそうとするけど、
なかなかうまくいかない訳です。
毎日のように施設を訪れるけど、
他人行儀な態度取られるし、奥さんは別の男性とずっと一緒にいる。
地獄のような状況なんだけど、
若いころに自分が浮気をしていた罪悪感が頭をもたげ、
ある種の懺悔のような気持ちに陥る。
そんな中で奥さんが恋した男性が施設から退去し、
奥さんがもぬけの殻となってしまう。
ここで旦那が取る行動がす切なくて、
自分でその穴を埋める訳ではなく、
施設で恋した男性をなんとか奥さんに会わせようとする訳です。
自分の感情ではなく、あくまで奥さんが幸せにしようとする姿勢は
素晴らしいなぁと思ったんだけど、
今度は旦那が男性の奥さんと懇ろになったり。
そしてラストでBack againするところもまた切ない…
サラ・ポーリー監督の作品はこれからも要チェック!

2014年9月18日木曜日

猿の惑星:創世記(ジェネシス)



続編に備えて1作目をDVDにて鑑賞しました。
猿の惑星シリーズは子どもの頃に結構好きで、
古いのはロードショーで見てたし、
2001年のティム・バートン版は劇場で見ました。
本作も映画館で予告見たときに、またかよーな感じで、
当時はスルーしてたんですが、とてもオモシロかったです。
これまでの作品はすでに猿人として完成した状態から
始まっていたので、ディストピアSFだったんですが、
本作は創世記ということで、
ただのチンパンジーから知恵をつけた猿人となる過程を
見せてくれるのがオモシロかったです。
科学の発達と共に、本作が描く世界が、
まるっきりありえないと言い切れない案配なので、
過去の猿の惑星に乗れなかった人も、
1つのパニック映画として楽しめると思います。
はじめは家族のようにかわいがられてるんだけど、
事件を起こし、牢屋に閉じ込められてから
反逆するまでの流れが好きで。
とくにゴリラ使って、
ボスチンパンジーを自分の手下にするのは痛快。
ゴールデンゲートブリッジが最後の決戦場になる訳ですが、
橋の特徴いかしたアクションも良かったと思います。
新世紀も楽しみやで〜

驟雨/乱れる


久々に名画座シリーズ。
最近読んだ、塩田明彦監督著、
「映画術、その演出はなぜ心をつかむのか」っていう本の中で、
「乱れる」の動線に関する解説があって。
これが無類にオモシロくて、タイミングが合ったので、
フィルムで是非とも見ておきたい!と思い、池袋の新文芸坐にて。
成瀬巳喜男監督特集の一環で、名画座は2本立てが基本なので、
同時上映の「驟雨」もついでに鑑賞。
どっちも1950年〜60年代の映画なんですが、
こんなにオモシロいのか…と衝撃を受けました。
話自体はかなりミニマムなんだけど、
会話のテンポや細かい設定、演出が逐一効果的で全然飽きない!
日本人同士にある微妙な距離感や、
時代性をしっかり取り入れてるのが素晴らしいです。
驚いたのが、その時代性というのが、
最近問題になっていることと大差ないってこと。
半世紀経っても、根っこの部分では何も変わらない。
哀しいような、安らぐような…不思議な気持ちになりました。

「驟雨」はある夫婦が主人公で、
旦那はサラリーマン、奥さんは専業主婦。
近所や職場の人との関係を描きつつ、
2人の夫婦としての距離感を描いている映画です。
ホント何でもない話なんだけど、全体にファニーなんですよねー
最初若い奥さんに「結婚とは何たるか」を説くんだけど、
物語が進むにしたがって、その関係性のモロさが露呈する。
思っていることをダイレクトに言わない
日本人の気質を見事に映像で表現してると思います。
町内の会合のシーンとか最高だし、
ラストの紙風船の演出はかわいいなぁと思いました。

「乱れる」はメロドロマ。
若かりし加山雄三と高峰秀子が主演。
高峰秀子は嫁ぎ先の酒屋を切り盛りしていて、
旦那は戦争で亡くなっていて、
その弟である加山雄三と母親と同居している。
雄三は俗に言うパラサイトシングルで、
一度は就職したものの、すぐヤメてニートしてる。
この2人の結ばれてはいけない恋愛関係を描いています。
ベタといえばベタなんですが、塩田監督が本で書かれていた通り、
人の無意識に働きかける細かい演出の積み重ねで、
物語に没入してしまいました。
近所にスーパーができて、酒屋が繁盛しなくなるっていうのは、
イオンのようなモールとスーパーに置き換えれば、
現在にも十分通じるような話。
高峰秀子の演技が惚れ惚れする一方で、
加山雄三の演技の朴訥さもキャラに合ってて良い。
メロドラマかーと油断してたら、
最後にギョッとするような展開があって、
そっからの秀子の顔ドーン!までの流れが好きだったなぁ。

いずれも白黒映画で、色で表現できない分、
光の使い方がかなりsensitiveだなーという印象でした。
あと古いフィルムの独特の質感も楽しめて良かったです。

体調悪くて上映中に咳してたら、
合間の休憩中に後ろから何回も「ゴホゴホうるせーなー」と言われ、
東京怖いわー思ってたら、
同じ空間で橋本愛も見てたことが後で分かりました。
なんて街なんだ!TOKYO!

るろうに剣心 伝説の最期編



京都大火編を見たので、当然見てきました。
前作は前フリだったので、こっちが本番!
ってな具合に楽しみにしていました。
今年見た邦画の仲では、画面のルックからアクションまで、
トップクラスなのは間違いなくて楽しかったです。
メジャーな邦画が全部ダメな訳はなくて、
志のある人が作れば良い作品はきっちり作れる!
という1つの回答になる作品だと思います。
ただ!ただ!3作続いてきたるろ剣のラスト手前の、
あるシーンがあまりにダサ過ぎて…泣
蛇足だし、話の展開から考えても違和感ありまくり。
本当は猛烈プッシュしたかったけど、
そうもいかなくなってしまいました。笑
僕は原作にそこまで思い入れなくて、
当時ジャンプの連載で読んでたくらいのレベル。
原作ファンは多分いろいろと言いたいことは出そうな作り。
最近は原作ありきの映画が基本と化していて、
僕も映画された本や漫画を読みますが、
映画と原作は切り分けないとダメだと思います。
限られた時間の中で、どれだけ物語の要素を抽出し、
3次元の映像として立ち上がったときに、
オモシロさがあるかどうかが大事で、
「ここが違う!」とか言って、挙げ足を取ってる人を見ると、
一生原作だけ読んどけやと思ったりします。
以下のレビューは京都大火編の続きみたいな感じなので、
そちらを読んでから読むのを推奨します→リンク

京都への攻撃がfakeで東京へ攻勢をかける志々雄。
剣心はある海岸に漂着したところを、
かつての師匠である比古清十郎に助けられる。
比古を演じるのが福山雅治です。
前作の終盤に顔だけ出てて、どうなんかなーと思ってたんですが、
とんでもなく、かっこよかったですね〜笑
立ち姿なんて、もはや美しいと言える領域。
剣心の師匠ってことで、常規を逸した強さで、
フィジカルに強いのが良かったなーと思います。荒々しい。
雨の中、泥まみれで剣心とじゃれ合うのと、
光で満たされた竹林の美しい風景の中で戦う対比がナイス!
ここで奥義を体得するんだけど、戦うときに大事なこと、
みたいなくだりは戦う意味を模索するアメコミっぽいなーと。
いざ東京へ向かうで!ところで、最初の見せ場である、
伊勢谷友介演じる四乃森蒼紫との戦いが始まる。
蒼紫がフィジカル系なので、2人の長所見せつつの
アクションは本当に凄まじいの一言に尽きる。
そして、前作に引き続き、蒼紫の過剰な暴力も健在で満足。
(土屋太鳳のお腹を蹴り飛ばすところね)
東京に着いて、どうでもいい小芝居のあと、全面戦争が開始。
次の見せ場が剣心 vs 瀬田宗次郎。
前作もこの2人の戦いが一番好きだったんですが、
本作でもNo.1 Favorite Actionでした!
2人ともスピードが売りなので、その目まぐるしい戦いは壮絶。
瀬田の武器である縮地がダメになるくだりとか好きだったなー
瀬田宗次郎を演じた神木隆之介君は、
これから日本を代表する役者になると思います。
そして、志々雄 vs 剣心のクライマックスへと流れていく。
ここは溜めに溜めた志々雄の無双っぷりが炸裂!
ウルトラマンカラータイマーばりに
15分しか戦えない志々雄が所狭しと躍動しまくりで、
野性味溢れる戦い方が良かったです。
そんな志々雄に対して、4人がかりで倒そうとするのは、
なんか大人げないなとか思いましたが。笑
壮絶な最期を含め、ここまでは大満足。
そして問題のラスト前の戦った後のシーン。
ボロボロで戻った剣心一行に対して、
伊藤博文含む政府軍が一斉に敬礼するんだけど、
音楽のドヤ感込みで信じられないくらいダサイ。
アップで撮ってれば、まだ良かったと思うんだけど、
引きで撮っててスケールが小さく見えて、
これまでの戦いがなんだったんだ…と
膝から崩れ落ちそうになりました。
失われた侍の誇りに敬意を表するとか、
そんなことなんだけど、物語の流れとしても、
ここでの敬礼は飲み込み辛いんですよね。
と最期にケチつけましたが、
それを補って余りある素晴らしい剣アクションを見れるので、
邦画を見るなら、これはオススメですよ!

2014年9月17日水曜日

フランシス・ハ



物語る私たちの上映前に予告編を見て、
気になったので、連日ユーロスペースへ。
監督はノア・バームバックという人で、
イカとクジラが代表作で、
他にもウェス・アンダーソン監督作品で脚本を務めたり。
特に期待もなく見たら、めっちゃオモシロい!というパターンでした。
夢 a.k.a 呪いにまつわる話で、「信じて努力すれば夢は叶う!」
という半ば思考停止の文言がはびこる昨今ですが、
本作では、そうもうまくいかない現実にぶつかったときに、
人はどういった行動を取るのだろうか。ということを描いています。
主人公はフランシスという27歳の女の子。
NY在住でダンサーとして売れることを夢見て日々struggleしてる。
ソフィーという雑誌ライター志望の子と、
ルームシェアしてるところから物語は始まります。
2人はとても仲が良くて、いつも一緒、
フランシスは彼氏から同棲を提案されるものの、
ソフィーとのルームシェアを理由に断った結果、
彼氏と別れてしまいます。
その後、「別のエリアに住むから、ルームシェアは解消しよ!」
と逆にソフィーから言われてしまう。
住むところが急になくなるし、仕事も実習生から出世できないし、
予定してクリスマスのショーにも出演できなくなったり、
仲の良かったソフィーにも彼氏ができて疎遠になるし、
まさに踏んだり蹴ったり。
この底辺状態から自分を見つめ直し、新たなSTEPに進むという話。
前半はソフィーのイケイケドンドンのNY生活が中心。
彼氏とは別れてしまうけれど、ソフィーといれれば楽しいし、
ショーの出演も決まるし、順風満帆。
横からのショットが印象的で、NYの街中を走り回る姿が
躍動感に満ち溢れてて愛おしい。
(David BowieのModern Loveが鳴り響く!)
元気なのは前半だけで、後半にかけては辛いことばかり起こる。
フランシスは27歳なんだけど、ここが個人的にも刺さるポイントで、
僕も今年27歳で、仕事どうしよかなーとか、
私生活どうしよかなーとか色々考える年頃。
本作を見ると自分も「考えないと…」っていう気になる。
基本的にフランシスは無計画のいきあたりばったりに、
生きているんだけれど、それじゃ人生はうまくいかないのかも…
と物語が進むにつれ気付き始める。
主体的に生きてきたんだけど、周りと比べたりすると、
果たしてこのままでいいのかと思う訳です。
一番仲がよくて、似た者同士と思っていたソフィーが
コンサバな選択を始めるのと対比になっているのが上手いなーと。
自分が何者でもないときに、人が幸せそうにしているのを聞き、
「あなたはどうなの?」と言われ、強がって嘘付くのとか辛い。
(同僚の家での食事のシーンが最たる例)
フランシスが大人になりきれてないだけって、
切り捨てるのは簡単だけど、
誰しも彼女と同じような気持ちになった瞬間はあるはず。
パリに行けば何か変わるかもと、すがる気持ちで行くんだけど、
何が起こる訳ではない。前半のNYと同様、
街中を歩く彼女の姿を横から撮ってるんだけど、
彼女の心の内を表すかの如く落ち着いていて、
NYとのショットとの対比をなしていると思います。
結局は自分で決断しなきゃ何も変わらない訳です。
終盤は現実に対して、自分をうまくfitさせていくのが、
ある種「リアル」な人生だなぁと。
ラストにタイトルの意味が分かるんですが、
あまりにくだらなくて声だして笑ってしまいました。
パンフレットもクソかわいいのでオススメです。