2014年1月27日月曜日

オンリー・ゴッド



「ドライブ」コンビ、レフン×ゴズリングということで公開初日に。
かなり前から情報を耳にしていて、プッシャーシリーズも見たりして、
超楽しみにしつつ、鑑賞いたしました。
想像していたものと全く違う作風でしたが、楽しめた!
というか、こんなに息詰まることないわ…って感じ。
人によって反応は全然違うと思います。
ドライブ的なものを求めると間違いなく事故ります。
物語自体が相当研ぎ澄まされていて、台詞の少なさも特徴。
さらに、ドライブのときに見せた赤/青の色彩使いを見せてくれる。
僕は物語のプロットを追って、映画を楽しむことが多いので、
この芸術性全開なのは…という場面もあったのは事実。

舞台はタイで、ゴズリングがボクシングのコーチしながら、
コカイン、ヘロインをさばいて生活している。
ゴズリングには兄貴もいて、同じような仕事している。
その兄貴が売春宿で女の子をレイプしたあげく、
殺したしまったことで、報復されて殺される。
そこへ母親がアメリカからやってきて、
復讐を企てるものの…という話。
本作のなによりもオモシロいのは、
警察側にいる師範代みたいなおっさん。
W主演といっても過言ではないくらいのインパクト。
警察側の人間なんだけど、超法規的な存在で、
残虐行為や殺人行為など、蛮行の限りを尽くす。
この無双っぷりが見てて楽しかった。
しかも、残虐行為のあとはラウンジみたいなところで、
必ずカラオケする。それを警官が見守る。シュール過ぎる!
いかんせん全体的に抽象的です。
プッシャーのドキュメンタリーでも言ってましたが、
彼の本当にやりたいことはこういった芸術性の高い作品で、
ドライブやプッシャーのような、いわゆる娯楽作品は、
あくまでステップでしかないのかも…
にしても、本作におけるゴズリングのナヨナヨっぷりはな〜
去勢されっぷりよ…マザコンでもあるし。
ビッチ全開の母親に
「兄が殺されたのに、復讐したいとかない訳?!
チンコも兄に比べて小っちゃいしね!」と言われる始末。
そこからカラオケオジさんに素手で仇討ちを挑む。
結果、ボコボコにされちゃうっていう。。
本人には勝てないから、家族皆殺しや!ってなるけど、
直前でチキっちゃう。復讐は復讐を生まないってのは分かるけどさー
と色々言ってきましたが、本作の生む異様な緊張感は
他の映画で見たことが無いかも。
徹底的に設計されたショット、カラオケおじさんの暴力性。
息するのも辛いくらい。
因果応報という誰でも知っている、
世の中の心理を突きつけられるのも辛い。
しかも、それがドラマ性を一切排除された、
ミニマルな形で見せつけられる。
好き嫌いはあるかと思うけど、そこも含めて観て楽しめる映画。

2014年1月26日日曜日

MUD ーマッドー



ヒューマントラストシネマ渋谷が主催する未公開映画特集の一環。
今年はハンパじゃない本数ある中で、どれ見ようかなと思いつつ、
MUDが良さそうということで見てみました。
映画秘宝のマコノヒー特集組まれるくらい、
ノリに乗ってるマシュー・マコノヒーが主演。
僕が見た中だと、「キラースナイパー」「ペーパーボーイ
がありますが、いずれの作品も怪演を披露していました。
ダラス・バイヤーズクラブも非常に楽しみな訳ですが、
本作も例に漏れず好きでした!
主人公は14歳の子ども、エリス。
ボートハウスに住んでて、父の仕事を手伝っている。
ある島の木の上にボートが引っかかっている噂を聞きつけて、
友人と見に行ったら、マコノヒーが住んでた!
格好は汚いし、銃を持ってる。
こんな危ないおじさんと少年の奇妙な関係の物語。
エリスたちはマコノヒーを警戒しているんだけど、
徐々に打ち解けていく。
マコノヒーは昔からの友人である女の子に、
ひどい仕打ちした男を撃ち殺した結果、島で逃亡生活中。
街は警戒されているから、
木の上のボートを修理して逃げようと目論む。
それを2人の少年が部品や道具を持ってきて助けるのが前半。
なぜ見ず知らずのおじさんを助けるかといえば、
おじさんが島にいる理由で、彼女と逃げたいという、
純愛的な側面に惹かれてのこと。
エリスの両親は離婚寸前だし、
恋した高校生とはじめはうまくいくけど、
年齢の差もあってフラれちゃう。
要するに自分の周りに存在する「愛」は不確かなもので、
信用できないものと思っている。
そんな中で信じられるのがマコノヒーの愛。
しかし、その愛さえも裏切られた結果、エリスの怒りが爆発する。
この映画は、ここからが見所!
前半と打って変わって、「愛」に満ちあふれた描写となる。
とくにエリスが蛇に噛まれたあとの、
マコノヒーの取る行動は伏線もあって、泣いてしまった…
エリスが両親の愛を感じるシーンも、
良いなーと思っていたら、マジとんでもない展開が!
(向かいのおじいさんにサムアップ!)
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」な中でも、
それぞれに待つ明るい未来を見せてくれたのは単純に嬉しかった。
劇場で見れて良かった作品。

2014年1月23日木曜日

ビフォア・ミッドナイト



一昨年、過去2作を見まして、ガンはまり。
この機会にDVDも購入し、バッチリ予習して映画に臨みました。
いやーおそらく皆が期待してたものではないかもしれないけど、
過去2作をふまえた、新しい形のおもしろさ!
ミッドナイトがあって、
初めて完結するシリーズと言えると思います。

以前も書きましたが、
このシリーズは凡百のシリーズものとは異なります。
もともと3部作の予定でもなかったし、
1作目のサンライズは当時劇場でヒットしてない。
そんな中で9年後に作られたサンセット
映画内でも同じ9年が経過していました。
そして、本作は更にそこから同様に9年後を描いた作品です。
2人の男女が主人公で、
イーサン・ホークとジュリー・デルピーが演じています。
サンセットのラストでもしや…と想わせていたとおり、
2人は一緒になっていて、双子の子どもがいる。
バケーションで訪れたギリシャの街が舞台です。
映画はイーサンと男の子が空港にいる場面から始まる。
そこから具体的な説明はないけれど、
色々な状況が明らかになってくる。
そもそも、この映画全体が相当ミニマル。
(過去作見てないと、楽しみは8割ぐらい減るので、
もし見ようと思っている方はマスト)
空港から別荘に戻るまでの車中から、
イーサン×ジュリーの会話セッションが始まります。
昔となにが変わったかといえば、
理想ははぎ取られ、一緒に暮らし、
子どもを育てている現実が常に横たわっていること。
離れて暮らす息子のこと、離婚のこと、彼女の仕事のこと。
話す内容に甘酸成分がほとんど皆無なのが新鮮!
もちろんここは得意のカットなしの長回し。
この1カット内でのやり取りの自然さは本当に凄まじい…
アドリブなんかなーと思ってたけど、
しっかり台本どおりらしい。ハンパね〜
あと過去2作との違いといえば、対社会の2人の人間性。
前半の別荘での会食シーンは、
考えさせられるトピックが山のごとし。
特におばあさんの話は劇中の人たちも感銘してたけど、
やっぱりグッときた。(ジュリーのアホ女の演技は爆笑!)
その後、ギリシャのリゾート地を2人で徘徊。
このシーンが一番うっとりできるシーンだと思います。
大人のwitに富んだ駄話が延々聞ける。
からの〜大人の本気の喧嘩!
おとなのけんか」を彷彿とさせる壮絶さ。
まさか、あの2人が…
witに富んだ楽しい会話は見てても楽しいけど、
その反動でwitに富んだ喧嘩は地獄!
長い時間かけたカウンターだから、
刺さり具合が通常の作品とは雲泥の差。
ここでテーマになるのが、
人生におけるPriorityっていう話で、
僕もよく考えていることだったので、フンフンと聞いていました。
やっぱ男だから、限りなくイーサンの話に共感してたかも。
いかんせん、喧嘩してようが、仲睦まじく話していようが、
この2人の話は他の映画を寄せ付けないレベルだと思いました。
(過去の作品を通じて、思い出を共有しているのもあるし)
人と出会うことの素晴らしさを教えてくれたのが過去2作だとすれば、
本作は出会ったあとにある現実と、未来の一つの形を提示してくれた。
間違いないマスターピース!

2014年1月20日月曜日

ほとりの朔子



年末に自由と壁とヒップホップを見たときの予告編で見て、
ずっと気になっていた本作品。
なぜかといえば、二階堂ふみが主演だからです。
はじめは、ヒミズで知った彼女ですが、
「地獄でなぜ悪い」「四十九日のレシピ」
TVドラマ「Woman」など、
彼女の出てる作品で嫌いなものは一つもない!
ということで本作も期待して見に行きました。
結果、超好きだわ…
最近見たのが男同士のぶつかり合いばっかりだったので、
一層考えさせられた映画となりました。

二階堂ふみ演じる朔子は浪人生。
夏のあいだ、伯母さんの家に滞在する約1週間の話。
いわゆるモラトリアムものです。
モラトリアムといえば、
前田敦子が演じたタマ子がいましたが、それとは真逆。
タマ子が動なら、朔子は静。
本作は甘酸成分、苦み成分が半々くらいっていう印象です。
タイトルに朔子って入ってるけど、
この映画で主に語られるのは彼女の話より、周りの人の話が多い。
この周りの人々のキャラの描き込みがホント素晴らしい。
みんな、何か抱えながら生きていて、
大人として割り切っているのが多分に見えてくるんですねー
それが不倫だったり、一夜のことだったり、過去の出来事だったり。
これらが最も具現化されるのが、ある女の子の誕生日会のシーン。
ホンマに息詰まって、辛かったな〜最後にバシッとなったけど。
平坦なように見える世の中でも、
実際には超デコボコなのを、
皆キレイに見せて生きてるってことがよく分かりました。
(それが良いとか悪いとか安易な二元論ではない)

そして、この映画の最大のテーマとなっているのが、
主観性/客観性の話。これが相当好きな部分でした。
そもそも朔子が周りの大人や友人を客観の視点で見てる。
この視点でいいのかと朔子が葛藤してる。
そこで出てくるのが、太賀演じる孝史。
彼は福島の両親のもとを離れて、
学校に行かず、叔父の経営するホテルでバイトしてる。
つまり、間接的にせよ原発の話があります。
安易な使い方じゃなくて、ちゃんと必然性がある。
この孝史における主観/客観の話は、
「善意からだけに、なお厄介」を具現化したような話。
客観のヤダみといいますか、
あなたから見たその人と、その人自身は違うってことを
認識する必要があるよねってことが骨身に沁みた。
(想田監督のキャメオ出演はアガッた。)
また、終盤に伯母と朔子の話も同様。
伯母はインドネシア研究や翻訳を仕事にしてるんですが、
朔子はそんなのインドネシアの人たちがやったほうがいいじゃんと。
つまり、より主観で見れる人のほうがいいじゃんと。
そこで返す伯母の回答も溜飲を下げましたが、
(主観の強みは大前提の上での客観の意味)
回答を聞いた後の二階堂ふみの仕草がね…5億点ね!
この映画の二階堂ふみのPhotogenicっぷりたるや…
ホントにハンパじゃないよ!
大きな起承転結がある訳じゃないから地味めに見えるけど、
彼女が画面に映る一つ一つのシーンが魅力的で退屈しない。
ポスターで使われてる画も、
実際の映画で見れるんだけど、もはや絵画レベル。
とにもかくにも、めちゃくちゃ好きな映画でした。

2014年1月19日日曜日

ドラッグ・ウォー 毒戦



ジョニー・トー最新作ということで!
東京では香港ノワールものがかなり公開されてますが、
あんまり見れていない…
初めてジョニー・トー作品を劇場で見ましたが、
やっぱヒリヒリすんなー!と思いました。

タイトル通り、ドラッグにまつわる争いを題材にした映画です。
冒頭から大した説明もなく、色んな人が出てきて、
色んな話が同時並行で進んでいきます。
ある交通事故をきっかけに、それぞれの話が収束していき、
あるドラッグ・ウォーに帰結する。
交通事故を起こしたやつはヤクの製造者で、
売り手と買い手を仲介する仕事もしている。
こいつが警察に捕まってしまい、捜査に協力することに。
(中国ではドラッグ50g所持で極刑になるから)
ここから始まるのが彼をスパイとして、
また1人の刑事をドラッグの売り手/買い手になりきる。
このシークエンスにおける腹のキリキリ具合よ!
刑事の二人三役の演じっぷりが特に強烈。
売り手にコカインきめろ言われて、
キメタあとの刑事のリアクションは
ドラッグのダークサイドを見せつけるのに十分。
このdealをうまく乗り切ったあとは、ドラッグ工場へ。
ここで働いているのが聾唖の人。
はじめは亡くなった人の弔いで、
紙銭の代わりに現金燃やしたりする義理固い人たち。
そこへガサ入れるんすけど、
この聾唖の人々が笑っちゃうくらい強い。
優しい眼をしていたのに、全く笑っていない眼になる。
トイレから二刀流で撃ちまくるシーンが好きだったな〜
一方で、刑事は売り手を摘発しようと動く。
捜査を続けると、あることが判明するんですなー
そして、終盤はジョニートー節全開の大銃撃戦!
撃って〜撃たれて〜また撃って〜の繰り返し。
そんな中でも笑わせるシーン入れてくんのが最高でした。
タイトル通りの内容で満足できる映画。

大脱出



スタローン×シュワちゃん!という、
20年前ではおおよそ想像のつかない組み合わせのW主演映画。
両者はすでにエクスペンダブルズで共演済みですが、
そのときの絡みは1シーンのみ。
エクスペンダブルズはスターが大量に出てて、
話がおもしろくないという、質より量な映画でしたが、
今作は質も量も申し分なし!
この両者がガップリ四つに組んだ時の破壊力たるや…
直撃世代ではないものの、完全にヤラれました。

主人公はスタローンで、彼は覆面受刑者。
ホントはセキュリティ会社の社員で、
刑務所に潜り込んでは、
そこのセキュリティチェックとして脱獄を繰り返してきた。
スタローンがある刑務所にいるところから話はスタート。
この刑務所を脱獄する訳ですが、
ここのシークエンスで脱獄のhow toを鮮やかに見せてくれます。
そんな彼がCIAの弁護士から
極秘の刑務所のセキュリティチェックを頼まれ、
いざ侵入してみたら、これが罠!
本気で脱獄しないと、二度と娑婆に戻れないことに。
しかも、この刑務所はスタローンが書いた
刑務所の欠点を指摘した本に基づいて、
作られているため、難攻不落なもの。
はじめ見たときは絶対無理やん!って思わせる。
(ぐーっとカメラが引いていくところの絶望感たるや)
そこで現れるのが、シュワちゃん。
彼はムショ暮らしが長く、刑務所の番長的なポジション。
はじめはスタローンと馬が合わないけど、
脱獄という目的を共有することで、親密になっていきます。
役割としては、スタローンが脱獄参謀で、
シュワちゃんが必要なブツの調達。
このバディがもうたまらん!
それに加えて、刑務所のギミックの数々が超おもしろい!
覆面の刑務官、房、食堂、懲罰房etc...
とくに懲罰房がフレッシュでしたねー逆転の発想。
正直、そんな上手くいくかね?っていうところもあります。
じゃあ何でノレるねんと考えると、
主役2人の圧倒的な存在感に尽きると思います。
60歳を超えて、あんなに筋肉モリモリで、
アクションあんだけやれる。そして、あの顔面力ね。
ポイント、ポイントで2人の顔がドアップになると、
もうなんかすべてを支配されるような感覚に陥るw
前半〜中盤までは参謀であるスタローンが
メインで活躍するので、
シュワちゃん脇役に徹することにしたんやーと思ってたら…
そんな訳ねーよ!シュワちゃんが一気に活躍し始めるからね!
きっかけになるシーンが笑っちゃいけないけど、笑ってしまったw
このシーンだけ見るために映画行ってもいいと思うぐらい。
ネタバレしたら、オモシロさ90%減なので、
あとは自分の目で、スクリーンにて目撃せよ!

2014年1月16日木曜日

プッシャー3



1,2ときて、最後の3を見ました。
1,2ではヤクの元締めとして、
活躍していたミロが主人公!
この時点でうぉー!と思って見てましたが、
最後まで気を抜けない最高の映画でした。
2よりもまたレベルがグンと上がっている印象。
映画のルックもそうだし、
主役、脇役関係なく、キャラ立ち具合が
作品を重ねるごとによくなっていると思います。
こういったシリーズものって、中だるみしがちだけど、
主人公が全部違うからか、どの作品も飽きないし、
2以降は少し知ってるやつの物語で、
そこを深く描いていくっていうのは、シリーズの醍醐味!
結果的には3が一番好きかも。

ミロは仕事としてヤクの売買を続けているけど、
自分自身はヤクを断とうとセラピーに通っているところから、
映画が始まります。その断つ理由が娘。
映画はある1日の話なんだけど、その日は娘の誕生日。
お祝いパーティーをミロは取り仕切っている。
それと同時にヤクの売買でトラブルが起こり、
パーティーとトラブルが並行して進む。
このトラブルっていうのが、
ヤクの売り手がエクスタシーとヘロインを
間違えたことに起因してて、
年を食ったミロはエクスタシーの取り扱いが分からない。
ここであたふたするのが、
PC使えないおじさんみたいな感じで、チャーミングw
(結局、人に任せたことでトラブルとなる。)
あとミロは娘のパーティーの料理も自分で全部作るくらい、
料理が大好きなんだけど、彼の料理を食った部下たちが
お腹を壊して、一切役に立たないっていうのは笑った。
そして、これも大事な前フリなんですなー
後半、自分で禁じていたヤクに
手を出してしまったところから、物語も一気に加速!
周りに頼れる人いないから、
昔の仲間に助けを求めるんだけど、こいつが超怖い。
はじめ見てたときは優しそうな目やなーとか思ってたけど、
だんだん狂気を秘めた目に変貌していく。
しかも、冷静に確実に惨いことをするっていうね…
今年公開のOnly God Forgivesがますます楽しみになりました。

2014年1月15日水曜日

プッシャー2



前作に続いて、2を見ました。
ドキュメントのGamblerを見て、
どんな2を作ったんだろうと期待していましたが、
僕は断然2が好きでした。
1はリメイク版見てたから、
おおまかなストーリーを知ってた
っていうのもあるかもしれませんが…
いかんせん映画の見た目がかっこよくなってるし、
ストーリーも前作より深くなってる。
プッシャーとしての側面は少なくなってて、
人間性にフォーカスしてる印象でした。

トニーっていう前作の相棒役のやつが主人公で、
刑務所から出てきたところから物語は始まります。
更正しようと父の会社で働こうとするんだけど、
うまくいかなくて、ドラッグやりまくるし、
プッシャーの片棒を担ったり。
その一方で、ある女との間に自分の子どもができてる。
このあいだで葛藤するんですなー
しかも、父からも認められないし、
まともな友人も一人もいない。
友人の結婚式で酒飲みまくって、
トイレで何度もドラッグキメるシーンが、
とても切なかったです。
本作は前作に比べて、女の人がいっぱい出てるのもポイントかな。
おぱーいも見れますし、皆コカインをガン決め。
子どもいるのも関係ない。
最後はドラッグ絡みでいざこざに巻き込まれたら、
ビックリする展開が!
そして、露骨な通過儀礼を経たあとにトニーが取る行動は、
最後の最後で希望を感じました。
3も楽しみだな〜

2014年1月14日火曜日

プッシャー



ハリウッドリメイク版を先に見ていた訳ですが、
TSUTAYAでもとの3部作が出ていたので、
ソッコーで借りて見ました。
リメイク版、結構好きだったけど、
諸先輩方にあの演出はダサいと言われて…
んで、本作どんなもんじゃい!と思ってみたら、
やっぱとんでもねー!って感じでした。
ドライブで一躍有名になった、
ニコラス・ウィンディング・レフンのデビュー作。
麻薬売人が胴元に追われて、いろいろと奔走する話。
低予算映画で、1996年の作品なので、画質荒いし、
画はあんまり綺麗じゃありません。
しかも、リハ無しでガンガン撮ってたということもあり、
あんまりカット割りが無いっていうのも特徴かな。
その結果、全体的にsolidでminimalな印象を受けました。
ギャングがギリギリのせめぎ合いで生きてる世界は
もはや問答無用で上がらざるを得ない。
あとラストシーンの何とも言えない
顔アップのオチも怖かったなー

DVDに収録されているレフン監督を追ったドキュメンタリー、
その名も「Gambler」というのが超オモシロかった。
プッシャーが記録的ヒットになったんだけど、
Fear Xという映画で大コケしてしまい、借金地獄に。
そこで起死回生の一手として、プッシャーの続編を作ろうとする。
でも、金もないし、どうやって作るねん…と、
ひたすらレフン監督と制作会社が苦しむ。
普段、何の気なしに映画ボンボン見てるけど、
映画を作って公開するまで、こんな苦労するとは思ってなかった。
この監督自体がプッシャーに出てくる主人公みたいに、
根拠の無い金の出所にすがるのは見てて震えた。
(そうしないと映画が撮れない時代でもあった訳ですが)
まさに「ライフはべガスよりもギャンブル©AKLO
その他にも、いろいろと刺激を受けました。
2、3ももちろん見るぜ!

2014年1月13日月曜日

蛇イチゴ



西川美和監督作品。
これだけ見逃していたので、やっと見れました。
もの悲しい家族の話で大好物なやつでした。
ある一家があって、そこは5人家族。
父、母、娘、父方の祖父で暮らしてて、
(息子がいるんだけど、出て行ってしまっている)
この何の変哲もない家族に降り掛かる不幸を
シニカルに描いていく。
まず祖父は完全にボケてて、ご飯の食べ方が無茶苦茶汚い…
見てるだけで相当不快に思うレベルで。
父は会社をリストラされているけど、
プライドが高くて、言い出せなくて、借金を大量にこさえている。
母は上述の祖父の介護で疲れ果てている。
んで、娘が観客が入り込みやすいキャラで、
とても真面目で、学校の先生をしている。
こんな歪な家族なんだけど、
冒頭のショットではそういったところが見えなくて、
色んなシーンを経ていくことで、観客に分からせていくというのは
是枝スタイルといいましょうか。とても好きでした。
娘が同僚である彼氏を連れてくるシーンは胸がつまるし、
結局それは見せかけの家族像でしかなくて、
終盤にかけて、それが脆くも崩れ去るのは辛かった。
それぞれ皆が問題を抱えているんだけど、
それをシェアできないことが原因なのも
日本の家族独特なのかなーと思ったりしました。
結局、祖父は死んじゃうんだけど、
そのときの母役の大谷直子の風呂場での顔は
最近見た映画の中で一番震えあがった。
祖父の葬式に借金取りが殴り込んでくるんですが、
その場を助けるのが、音信不通だった息子。
香典泥棒として潜り込んでた現場で
たまたま家族と出会ってしまった訳です。
その後、借金対策をその息子に両親は任せようとするけど、
真面目な娘は兄のことを信じきれなくて、反対する。
そっから娘の取る行動がまた辛いし、
ラストシーンで出てくる蛇イチゴのショットの切なさよ…
これがデビュー作とは思えない傑作!

HO 欲望の爪痕



メーン!でおなじみのラッパーD.Oが原案を担当した映画!
ということで、見てきました。
公開2日目で、まさかの舞台挨拶つきでビックリ。
劇場入ると、GOGO DANCERが踊ってて、雰囲気はさながらクラブ。
挨拶には出演者がほぼ勢揃いしてましたが、
一番ビックリしたのがD.O.が挨拶してるときに
現ナマを客席から渡している人がいたことw
客席全体もB-BOYというか…
なんか怖いなーとソワソワしつつ鑑賞。
うーん、おもしろいとは決して言えないような…
残酷描写(暴力、SEX、ドラッグ)は相当攻めてたけど、
それだけでしかないというか…

ウリをしている女の子2人が主人公で、1人が横山美雪。
この2人はウリするフリして、ホテルまで行った後に、
財布をかっぱらって逃げるというのを繰り返してるんですね。
前半、この2人の仲良くなる過程と上記の犯罪行為の繰り返し。
ストリートのリアルを伝えたいD.O.の気持ち分かるけど、
ちょっと長かったと思います。
そもそも、肝心の話が全然おもしろくないし、
役者の演技が余りにひどい…
これは役者の人が悪いっていうよりも、
監督・脚本がダメなんだと思う。
D.O.原案だから、やってることはリアルなんだろうけど、
その手前の演技自体に実存感がないから、
上辺をなぞってるだけにしか見えない。
冒頭からビックリしたんだけど、
ウリを捕まえる警官が取り逃がしたときのリアクションとして、
指ならしながら、「チッ!」って…昭和か!
こういう嘘くさい演技ばっかりだから見てて疲れた。
後半はドンドン2人がトラブルに巻き込まれていく訳ですが、
この映画の唯一良いところが、
もう1人のウリを演じている桃宮もも。
超カラダ張ってるし、あの手のギャルの
常に誰かに承認されてたい感じとかモロに出てたし。
演技が上手い訳じゃないけど、実在感が一番あったと思います。
そして、前半で時間を散々無駄使いしてるから、
後半でおもしろくなりそうなところを
結構端折っちゃってるのは、本当にもったいない。
あとね、3.11のあの使い方は無しだと思います。
余りに配慮が欠けていると思う。
このシーンを見たときに、
作り手は見世物小屋精神なんだと感じたし、
最後の落とし方もモロにそれ。
「冷たい熱帯魚」とか「凶悪」の上澄みをすくって、
薄ーく伸ばしたような映画。

ソウルガールズ



バックコーラスの歌姫たちを見たときの予告編と、
町山さんもpushしていたので、見てみました。
とてもオモシロかったし、楽しめました。
アボリジニの女性シンガーたちが、
ベトナム戦争中の米兵のところへ
慰問として、ライブへ行くという話。
歌の力というか、歌がこの世から無くなったところで、
誰も死なない。でも、歌で救われる瞬間が間違いなくある。
そんなことを改めて考えさせられる映画でした。

ストーリーとしては、
1970年代のオーストラリアが舞台で、実話ベース。
当時はまだまだ黒人差別もあるし、
オーストラリアにおいては、
アボリジニは動植物と同類扱いされていたというね…
ある4人姉妹がいて、彼女たちは皆アボリジニ。
街のコンテストで出会ったフーテンの白人とタッグを組み、
ベトナムへの慰問ツアーに向けた部分と実際の慰問時の話。
4人なんだけど、1人は見た目が白人で、
離ればなれに暮らしている。
というのも、当時アボリジニのエリアにいる
白人の子どもを拉致って、白人家庭で育てるってことを
政府主導で行っていたというね。。盗まれた世代と呼ばれるらしい。
この辺の知らなかったアボリジニの話を知れて、為になりました。
4人組は、はじめカントリーソングを主に歌っていたんだけど、
慰問にあたって、サファイアズとしてソウルを歌うようになる。
いざ、ベトナムへ行くと初めての海外旅行だから、
超はしゃいでいるし、歌も好評で慰問を楽しんでる。
けれど、徐々に戦争の足音が彼女たちにも忍び寄る。
野戦病院の惨状、移動時に聞こえる爆音、銃撃音など、
この徐々に分からせていく感じが上手いなーと。
それがピークになるのが、一番大きな会場でのコンサート。
大勢の米兵たちがコンサートに魅了されているところに、
ベトナム軍による急襲が!
このシーンが思ったより、ガチだったのでビックリしました。
日常にいきなり訪れる暴力の怖さ全開。
そこで、フーテンのマネージャーが
逃げ遅れて撃たれちゃうんですねー
その撃たれた彼と恋仲のメンバーはひどく傷ついてるけど、
翌日にはライブをしなきゃいけない。
はじめはリード担当だった彼女が声量の無さから
ずっとバックコーラスになっていたんだけど、
この日に限っては、彼女がリードとして歌う!
つまり、なにが言いたいかというと、
歌は上手い下手も勿論関係あるけど、
それ以前に「ソウル」がこもってないとダメだぜ!ってこと。
しかも、ここで歌われる歌詞が沁みて、泣いてしまいました…
ソウル好きはもちろん、歌のパワーを全身で浴びるために
是非劇場で見て欲しい作品です。

2014年1月12日日曜日

21ジャンプストリート



去年のうちに見ときたかった本作。
年末、大阪の兄さんたちとの映画会でも
話題にあがっていて、軒並み絶賛。
当然、おもしろかったです!
間違いなくホット・ファズの系譜にあるし、
しっかりアップデートされたオモシロ警官バディコメディ!

全く仲良くなかった高校生の同級生が警官学校で再会し、
バディを組み、高校に潜入捜査を行い、麻薬の元締めを逮捕する話。
高校時代の2人は対照的で、
1人はナードで、演じているのが、ジョナ・ヒル
もう1人はジョックスで、演じているのが、チャニング・テイタム
このアンバランスなコンビが力を合わせる姿が見てて、
めちゃくちゃオモシロい!
ギャグが冴えてるし、映画で笑わせる極意に長けてんなーと。
小ネタのおもしろさも然ることながら、ストーリーも抜群。
潜入捜査を行うと、彼の高校時代と状況が変わっていて、
ジョックスはださくて、よりスマートな人間が
ヒエラルキーのトップに立っている。
それに加えて、ちょっとした勘違いにより、
彼らの立場が逆転してしまう。
つまり、ジョナ・ヒルが学校で人気者になるんですね。
そして、チャニング・テイタムがナード側になってしまう。
高校内でドタバタしつつ、どんどん元締めに近づいていく。
しかし、それと同時に、
2人の仲が徐々に仲が悪くなってしまう。
そっから力を合わせるのが最高。
とくに悪者を撃退するギミックがナイス!
化学専攻としてはアガラざるを得ないし、
2人の関係性を共有結合と呼んでるのも好きでした。
あとラッパーのアイス・キューブ(警官役)がイカしてたなー
この設定、結構飲み込みづらいんだけど、
潜入捜査が始まるところで、
アイス・キューブが怒鳴りつけて、
考えてんちゃうぞ!マザファカ!って言われることで、
すっとストーリーに入れ込めるようになってました。
(冒頭のエミネムあこがれもHIPHOP的にアガる)
難しいこと考えずに見れて、超楽しくなれる映画なので是非に。

2014年1月7日火曜日

SAVE THE CLUB NOON



渋谷で上映しているのを知ってたんですが、
遅い時間の1回上映で足が遠のいていました。
しかし、大阪に帰ったときに十三で見れると知り、駆けつけました。
一昨年の7月に行われたSAVE THE NOONというイベントの模様と
NOONの関係者、イベントに出演したアーティストへの
インタビュー形式で風営法の話を聞くというドキュメンタリーです。
そもそもNOONって何やねんという話ですが、
大阪の老舗のクラブです。
僕は20歳ぐらいから遊びにいってましたし、
何回もDJさせてもらった思い出のクラブです。
そして、仲の良い友人、先輩の多くはここで出会った人ばかりです。
ゆえに、このクラブが風営法で摘発されたとき、
とても悲しかったし、怒りも沸きました。
風営法は戦後すぐに制定された法律で、
客が踊れるような設備を持っていた場合などに
事前に申請する必要がある法律です。
(詳しいことはwikipediaを見てみよう!)
この時代にマッチしていない法律を変えるため、
Let's Dance署名活動が展開されて、
それを促進するのがSAVE THE NOONというイベント。
このイベントはNOONにゆかりのあるアーティストが
山ほど出ていて、超豪華。
そんな彼らのライブはもちろんのこと、
風営法を含むクラブに対する色んなスタンスを
見れるのが本作最大の魅力だと思います。
クラブには皆でわいわい楽しめる楽しさもあるし、
知らない音楽、人と出会える楽しみもある。
その土台が実はグラグラしてたんだってことを痛感しました。
風営法に対するスタンスとしては
ファックバビロン!的なスタンスもあるし、
もっと建設的な意見もある。
一番うわーとなったのは、いとうせいこう氏の話。
最近、せいこうさんの小説を読み進めているんですが、
この人の先を見通す力って本当にハンパない。
人間の本能的な行為でもある「踊る」ことを禁じられて、
それを許容していれば、どんどん色んなことが制限されていく。
秘密保護法とか最たる例やなーと。
それを世界史レベルの国家観から語られたときに
はっ!としました。
自分の持っている権利に対して、
もっと能動的にならなければならないなと。

当然なんですが、オーナーの金光さんの話が一番説得力があります。
NOONが摘発されたときに
「なんで風営法申請してなかったのかな〜」と思っていたけど、
その辺もこの映画でクリアになりました。
当事者の証言は時代考証としても貴重。

ただ、この映画が2012年当時の記録映画でしかないっていうのが、
もったいないといいますか。。。
風営法の話は現在進行形なのに、リアルタイム性が少ない。
その夜の出来事を描いた作品としては素晴らしいと思いますが、
やっぱり「今」の話を聞きたかったというのが本音です。
あまりクラブに行ってないけど、
色々ときっかけになる映画だったし、
大阪で見たことは忘れられない映画体験となりました。

2014年1月5日日曜日

タワーリング・インフェルノ



連休の締めとして、正月録画映画で見ました。
これが1974年の映画とは思えないくらい、
ハラハラしてパニック映画として楽しんだ!
130階建ての高層ビルが火災に見舞われて、
そこから逃げれるか/逃げれないかっていう単純明快な話。
主演がポール・ニューマンとスティーブ・マックイーン。
この2人のかっこよさたるや…
あんまガチャガチャしない、
落ち着いた漢とでもいいましょうか。
こんな男性になりたいものです。
高所恐怖症でもないんですが、
この映画内の高いの怖い描写はホントに怖い!
今やったら、合成かーと思って終わりやと思うんですけど、
古い映画だから、これどうやってんの?!って
考えちゃうし、怖いのよねー
最後の解決策の豪快さはちょっと笑ったけどw
火災は手抜工事が原因の人為的な事故な訳ですが、
その面では色々と考えさせられました。
間違いなくパニック映画のマスターピース。

2014年1月2日木曜日

キューティー&ボクサー



これも去年の見逃していた分。
予告も見ていたし、主人公であるギュウチャン
ライブペインティングをNHKのあさイチで見ていたので、
興味を持っていました。(番組内での異物感が凄まじかったけどw)
さらに想田監督のpushもあったので、当然のごとく見に行きました。
前衛芸術家であるギュウチャンこと篠田有司男と、
その妻である乃り子のNYでの日常生活に密着したドキュメンタリーです。
2人のアーティストとしての側面はもちろんなんですが、
一夫婦としての側面がとんでもなくオモシロい作品でした。

ギュウチャンは齢80にして、現役バリバリのアーティスト。
ボクシングのグローブに絵の具つけて、壁を殴って描いたり、
ダンボールで作ったオートバイというのが代表作品。
40歳のころに渡米して、ずっと一線で活動しています。
妻の乃り子も絵を描くアーティストなんだけど、
彼女は妻であり、一児の母でもある。
そこでの葛藤も踏まえつつ、NYでの生活および
これまでの2人の歴史を振り返りながら、話は進みます。
NY在住のアーティストという言葉の響きだけだと、
優雅な生活を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、
実状は全く異なっていて、家賃や光熱費の支払いも
ままならないくらいの生活をしている。
ギュウチャンはその現状を認識していないけど、
家計を担っている奥さんは必死な訳です。
それが一番顕著なのが、グルノーブル美術館のバイヤーがやってくるシーン。
一番、現実問題が露呈するから見てて辛かった。

ギュウチャンは自分勝手に生きてきた一方で、
奥さんは妻としての役割や、母としての役割を果たしながら生きてきた。
アーティストにとって、「妻」や「母」の役割をこなすことの
辛さや重みを彼女の語りと当時の映像を交えながら描いています。
重要な役割を果たすのが、乃り子が劇中で描いている作品。
彼女とGYUZOのこれまでを日本絵巻っぽいタッチで描いている。
これをアニメーションにすることで、
単なる過去の回顧になっていないのがオモシロいところです。

ある種の萌えというか、おじいさん、おばあさんを
愛でる気持ちが初めて僕の中で芽生えましたw
とにかくphotogenicでかわぅいいい!
冒頭の誕生日のくだりしかり、
何気ない夫婦の日常なんだけど、どこか愛おしく感じる。
この作品の最大の特徴が2人の話す言葉で、
NY在住歴が長いので、日常会話で日本語と英語がないまぜ。
高等なルー大柴みたいになっていますw
終盤で放たれる「I need you」で、僕は泣きました。
一番好きだったのは、
ギュウチャンがキャシー塚本ばりに、ご飯を作るシーン。
作り方から食べた後の奥さんのリアクション含めて笑ってしまいました。
こういった日常描写の細かい積み重ねによって、いつのまにか2人の虜に。
そっからのラストショットの神々しさは唯一無二。

色々と述べてきましたが、この2人の生活は豊かに見えるんですね。
人生におけるプライオリティ論になったときに、
お金だったり、時間だったり、人それぞれ回答があると思いますが、
少なくとも僕はこの映画を見た限り、
一番はお金じゃないなーと感じています。
(彼らはもちろんアートでしょう。)
そして、結婚した赤の他人が2人で生きていくことの
楽しさや大変さがよく分かりました。
もちろん、クリエイターにもオススメですが、
誰にでもある普遍的な日常の話でもあるので、
見た目で敬遠せず、是非見てくださいませ。

2014年1月1日水曜日

バックコーラスの歌姫たち




2014年の映画初めとして、見てきました。
去年もそうでしたが、昨年分の取りこぼしを
この時期に見ておくというのが習わしです。
予告編は見てなかったですが、
タイトルが気になって見てみました。
ドキュメンタリーで、バックコーラスの女性と、
著名人のインタビューで構成されており、
そこからバックコーラスの歴史を紐解く映画でした。
著名人が豪華メンツで、
スティービー・ワンダー、ミック・ジャガー、
スティング、パティ・オースティンなど。
彼らのコーラスを担当していた女性が主な語り部です。
冒頭、ルー・リードの「Walk In The Wildside」が流れます。
その歌詞の中に「And the colored girls say」
というフレーズがあって、それキッカケで映画が始まります。
この曲大好きで、なんべんも聞いてますが、
あるコーラスの方が語る視点がFRESHで一気に心を掴まれました。
原題は20 Feet from Stardom。
バックコーラスと主役の歌手との距離は物理的には近いけれど、
そこには愕然とした差があることを痛感させられます。
つまり、単純に歌が上手いだけではなく、
自分がなにをしたいのかという目的意識、
そして時代の流れ、運を味方につけなければスターになれない。
おばさんから若い人まで、色んな時代の歌い手が出てきて、
それぞれのヒストリーを語る訳ですが、無類に面白い!
とくにローリングストーンズにコーラスで参加したことのある、
リサ・フィッシャーとメリー・クレイトンの2人は
エピソード、語り口も含めて最高。
イギリスのロックバンドとコーラスの関係性について、
初めて知ることが余りにも多過ぎて、目から鱗でした。
(David BowieとLuther Vandrosの関係は
心底ビックリしました)
今、バンドライブでコーラス隊がいる場合は
大抵黒人女性が多いかと思いますが、初めは白人女性のほうが
時代の趨勢的にも多かった。
そこへ黒人女性が教会で身に付けたゴスペルの力で参入してから、
今の流れがあるんですね。
白人のコーラスと何が違うかったかといえば、
楽譜通りにただこなすだけではなく、自分のソウルを込めるんだと。
その彼女達の気高さは超かっこいい!
教会のゴスペル出身の人達が、
コーラスにフィットできたことへの考察も興味深くて。
単純に歌が上手いだけではなく、
教会で歌うという行為は多くの人と空間を共有し、
音楽を楽しむことに長けていたのが最大の理由な訳です。

そして当然のことながら、
劇中では色んなコーラスの人の歌声を存分に味わうことができます。
テクノロジーが発展する最近ですが、
素晴らしい歌声を聞いて鳥肌が立つ感覚は
何物にも代え難いことだなーとも思いました。
原題からも分かるとおり、
コーラスやってる人独自の悩みが本作で一番面白いポイントです。
大勢の観客がいるステージでうたうことはできるけど、
あくまで脇役というアンビバレントさ。
その点で常に葛藤しながら、みんな仕事をしている。
そして、本作に出演している多くのコーラスの方は
有名なミュージシャンの作品やライブに参加したのちに
デビューしているんですが、ほとんどが鳴かず飛ばず。
単に歌が上手いだけではスターにはなれないってことが
著名人や本人へのインタビューで明らかになっていきます。
つまり、夢をあきらめた後の話。
リアルな「ばしゃ馬さんとビッグマウス」の話とも言えるでしょう。
そして、コーラスからスターになる難しさは
現在でも存在していることが、
ジュディス・ヒルというシンガーの話から分かる。
(彼女はマイケルのTHIS IS ITツアーのコーラス担当)
中盤から後半にかけてはこれらの葛藤について、
描かれていますが、最後はそういったものを経てからの
雑味成分ゼロの最高のセッションが聞けます!
そっから、ダーレン・ラブというシンガーに起こる出来事で
終わるエンディングは救われる形でした。
ソウル好きはもちろん、音楽好きにはたまらない作品ですので、
興味ある方は是非に!