2021年3月29日月曜日

大阪

大阪/岸政彦、柴崎友香

 岸政彦と柴崎友香による大阪にまつわるエッセイの共著。このメンツで大阪のエッセイだなんて期待しかない訳だけど「リアル」な大阪がそこには立ち上がっていて興味深く読んだ。テレビを筆頭にステレオタイプな大阪像の形成と強化は日々加速しており十把一絡げで語られることが多い。やれ話がオモシロいだの、ガサツなところがあるだの。そういったステレオタイプの被膜で覆い隠されている部分を2人が剥いで生身の大阪がボロンと出ていた。それは明確なゴールがないエッセイゆえの魅力だと思う。このもやっと感、まとまりの無さこそが、1人1人の持つ土地の記憶やその思いをダイレクトに表現している証左だろう。
 岸さんは他で育ち大阪へやってきた人、柴崎さんは大阪で育ち他へ移動した人。大人の視点の大阪、子供の視点の大阪が網羅されていて大阪で育った身からするとめちゃくちゃ刺激が強い。彼らは個人的な思い出を語っているだけなんだけど、それは確実に呼び水となり自分の記憶の蓋がばっかん、ばっかん開いてしまう。もう東京に来て8年になり帰る頻度も低くなった今、大阪のどこを歩いていても自分がストレンジャーのように思える一方で角を曲がったところで誰かにばったり会うかもしれない。このアンビバレントな感情はこの先どうなっていくのか見当もつかない。けれど大阪はずっとそこにあって、いつまでもこちらを見ているし、こちらも大阪をいつまでも見ている。

2021年3月22日月曜日

2021年3月 第3週

 今週は仕事が忙しいかったのと会社で受けなきゃいけないテストの勉強で全然日記書けず…日記は日付の数字に意味があると思っているタイプなんだけども今週はトピック別にざっくり所感。あとポッドキャスト更新したのでそちらもどうぞ。Shownotes/Apple podcast/Spotify

FORTNITE Season6
 Apex LegendがNintendo Switchにくるのに合わせたようにFORTNITEの新シーズンがスタート。プライマルと題して時代が逆行した設定で武器をクラフトしないと通常の銃を入手できないという大幅なルール変更が導入されててもはや新しいゲーム。新しくなるのか、しかも退化って面倒〜と思っていたら、ネフライトさんは全力で楽しんでいてやっぱり好奇心が大切。



歯の治療

 親知らず抜いた後の初めての通院。親知らずを抜いたのはその隣の歯の虫歯治療のためだった。これが人生初めての虫歯。親知らず抜くのは全然痛くなかったので虫歯治療とか余裕やろ思っていたら、それが大間違い。神経まで侵食してて神経をグリグリいかれて痛くて死ぬかと思った。こんなの子どもに耐えられるわけない。しかも治療中に医師が「うーん…」「ふぅ…」とか言いつつ、虫歯がどういう状態でどんな治療しているかについての説明が全くなかった。(帰ってから気づいた)痛いなーと思いながら一晩経ったらマシになったので治療はうまくいっていると信じている。

cure/SIRUP
 韓国のヒップホップやR&Bがめちゃくちゃレベル高いことを毎日痛感する中、日本も全然負けてない!と胸を張って言えるアルバムが出て本当に感動した。(slomという韓国のトップどころのプロデューサーが参加しているのもあるけど)何よりも彼のメロディと歌が最&高。個人的にはラップがとても好きだった。ラッパーが歌うならシンガーがラップするのも当たり前な時代。声のトーンとフロウとやや歌い気味くらいの塩梅がちょうどいい。



Overgrown/Joyce Wrice

 2016年にEPを聞いてからずっとファンで着実にステップアップしてついにフルアルバムがドロップ。90年代、00年代のR&Bへのオマージュはありつつ2021年の音にアップデートされている。またインタールードの多い構成でアルバムとして聞く意味を持っているのも好きなところ。(ジャネットオマージュ?)レコードもいいけど、このアルバムはジャケットも含めて一番適したフォーマットはCDなんだよなぁ。



Drive to survive Season3

 今週からF1の2021シーズンが始まるのだけど、その前に去年のレースを題材にしたNetflixのドキュメンタリーがリリース。もともとF1が好きになったのはこのドキュメンタリーがきっかけだった。前シーズンが皮肉要素てんこ盛りだったのに対して今回はコロナのこともありかなり熱量高めでオモシロい。レースは見ているのだけど追いきれてないビハインド ・ザ・シーンがたくさんあって今シーズン見るときの勉強材料にもなりそう。まだ全部見てないけど、じっくり楽しみたい。

2021年3月17日水曜日

BAD BLOOD シリコンバレー最大の捏造スキャンダル 全真相

BAD BLOOD シリコンバレー最大の捏造スキャンダル 全真相/ジョン・キャリールー

 2018年、会社を退職する際の有給休暇消化として友人のいるサンフランシスコへ遊びに行った。そのとき友人とLAにも足を延ばして観光を中心に楽しんだ。ある夜、食事を終えてからバーに入ったところ隣にいた女性が1人で黙々と本を読んでいて、バーで本を読むなんて珍しいなと思ってタイトルをメモした。それがこの1冊。ついに翻訳されたとその友人から聞いて読んでみたら信じられないくらいオモシロかった。シリコンバレーでユニコーン企業として莫大な資金を調達したヘルス系のテクノロジーが実は全部嘘だったという衝撃の実話。それをまるで小説のようなタッチでスリリングに書いてくれているので単純な事実、ニュースよりも何倍もオモシロい。ウォール・ストリート・ジャーナルで勤務していた筆者の筆力が存分に発揮されている。また相当綿密な取材に基づいており、確認した重要な事実についてはほとんど脚注がついていて付け入る隙を与えない著者の気概を感じる。
 主人公はセラノスという血液検査のテック企業を立ち上げたエリザベスという女性。この会社の売りは血液検査を静脈注射ではなく指に針を指して極少量の血液で可能としたこと。これにより血液検査のハードルが下がりさまざまな疾病を早期発見できるようになったり身体への負担も減らすことができる。志や良しだし実現すれば素晴らしい世界になるのは間違いない。生化学の分野でこれだけの技術進歩を進めるのは並大抵のことではなく中々うまくいかない。しかし彼女は類稀なるカリスマ性と詭弁で群雄割拠のシリコンバレーをサバイブしてアメリカ有数の投資家/VCから資金調達を達成し続ける。この過程がスリリング!セラノスのテクノロジーの実情が明らかになり、すべてがご破産になるかもしれない瞬間が何度も訪れるものの、その度に情報開示を極端に制限することで、むしろ勢いが増していく過程は想像以上だった。シリコンバレーといえばテクノロジーのメッカであり厳格な査定のもとで投資しているのだろうと思っていったけど、投資家はなんとなくのムードで投資していることが衝撃。さらにリテイル系の会社は競合に出し抜かれないために盲目的に進めていたことにも驚いた。
 初めは詭弁でギリギリ嘘じゃないラインを守りながら会社の価値を高めていったものの、限界を迎えてある臨界点を超えた瞬間に躊躇なく嘘をつき始める。そこからは何でもありになった結果、さらに勢いが高まり共和党、民主党問わず政治家や軍人まで巻きこみ、さらにその様子を見て「大丈夫だ」と安心して皆がわんさか投資する。これだけ膨れ上がった企業を相手に1人のジャーナリストが戦う。この様子を描いた後半が本作の最大の読みどころ。前半は三人称視点で話が進むのだけど、著者が問題に関わり始めたところから一人称になって事態が一気に加速する。ここを読んでいるあいだはアドレナリンが出まくってページをめくる手が止まらなかった。法律規制と企業のあり方という話は今の自分の仕事に直結していて、コンプライアンスと企業利益のバランスを考えるのは難しいなと感じた。ジャケットがとても残念だけど、ヒリヒリする系のノンフィクション好きの人にはおすすめ。 

2021年3月16日火曜日

2021年3月 第2週

3月8日
 久しぶりに本格的な雨。週初めから雨だと憂鬱な気持ちになる。Ahn Byeong WoongがOwenにビーフを仕掛けたというニュースが流れてきた。最新EPは歌フロウも含めたメロウな構成の中で「Sinner」という曲は確かに違和感あるなーと思ったいたら、その曲らしい。言語聞き取れないとこういうことあるのが難しい。K-HIPHOPはだいたいgenius上がっているので chromeの拡張機能で翻訳できるのだけどイマイチ意味取れず。。。 BLOOMINT MUSICによる翻訳が待たれる。

3月9日
 Feelings / Brijeanを聞きながら仕事。前回のEPが完全に夏の一枚で去年聞きまくったのだけど、満を次してのアルバムリリース。ボーカルの女性はToro Y Moiの曲のパーカッションを担当している。彼女のパーカッションからうみ出るグルーブは最&高。これはバイナルでしょ!となってAlffo Recordsで即オーダー。到着が楽しみ。

3月10日
 ゲームで時間を溶かしている感じが日々強まっていてこのままでいいのか?となりつつも、ついついやってしまう。それがゲーム。好調に進んでいたゼルダだったけど、ついに戦闘シーンでつまづいてしまう。。。これを乗り越えられるかどうか、それがRPGあきらめ人生を克服する第一歩だという気持ち。

3月11日
 震災から10年。当時は関西にいたので完全に他人事になっていて目の前の日常とテレビから流れる情報のギャップに戸惑った覚えがある。当時何となくそのときの気持ちをブログに書いたら何年も連絡取っていなかった友人から連絡が来たのを思い出した。今でも元気にしているだろうか。自分自身が阪神大震災で人生180度変わったタイプで今となってはあの転機があって良かったなと思えている。
 今日は一日中ウェブ会議で新しいシステムの使い方を教えてもらう。まったくユーザーフレンドリーではないUIのシステムを採用していて、これぞ官僚システムが生み出した弊害!みたいな事案。みんなが文句たらたら言っていたけど完全にあきらめの境地で笑いながら聞いてた。
 荷物整理してて久しぶりに田我流のツアーDVDを見てみた。この頃の田我流の油のノリ具合はやはりすごくて今見てもかっこいい。当時の思い出補正もあると思うけど。今やMV作らせたら右に出るものはいないスタジオ石が作ったビデオなので一筋縄でいかないカット、編集の妙があってめちゃくちゃオモシロい。その流れで「B級映画のように2」を聞いてみたけど、やはり超弩級クラシック。これだけ怒りや悲しみの感情が日本のヒップホップで昇華されたケースはほとんどないと思う。

3月12日
 1日中会議聞きながら内職。昨日聞いた説明を体に叩き込む作業をしていた。最近仕事マンネリだなーと思ってたけど新しいことに挑戦していると気分が新鮮になり、かなりやる気も出てきた。
 夕方にレコード到着。 BrijeanとAlfred/Freddie Gibssを買った。両方とも間違いない内容。ストリーミングで無限試聴して本当に欲しいのはレコードで、というのがここ数年定着している。LP買う代わりにDJで使ってたようなシングル系を軒並み手放すことにした。
 韓国の新譜が怒涛のリリースであまり追いついてないのだけど各ラッパーが皆SNSに投稿していたCIRCLE/Mind Combinedを聞いた。これは2020年代に残るマスターピース。韓国のいわゆるR&Bひいてはネオソウルの異常なレベルの高さが全部詰まったような作品だった。Louis Coleのような抜けの良さもありつつ、でもノリは粘っこいみたいな感じで全曲最&高。PeejayというproducerとJinboというシンガーのユニットでリリースは10年ぶりらしい。韓国の歌ものの底が知れないし、まだ見ぬ強豪はまだまだいるのだろう。。。あとUntellのEPもかっこよかった。ジャケットのとおりトラックに派手さはないけど無機質なビートとの相性が意外にも良い。(SMTM9では派手トラック多かったので)そんな中でも比較的い温かいビートの「WON」という曲は完全にLAバイブス満点でめっちゃ好きだった。オーディション踏まえて自分でどんなキャリアを歩んでいくのかはアーティストにかかってるから期待している。

3月13日
 久しぶりの雨。色々買い出しに街にでると信じられないほど強い雨と風。駅で聞いたことないような轟音を聞いた。お昼は新しく開店した回転寿司。コロナ禍以降の店作りという感じで店員と触れ合うことはないし寿司は回ってないしでIT技術がこれだけふんだんに導入されている飲食業は他にないのでは?と思った。コロナがデファクトスタンダードをぶち壊した訳だけど、この壊れた後は柔軟な姿勢こそが重要だと思うのでなるべく柔らかい脳でいたい。
 そんな雨の日に聞いたDon Millsが超かっこよくて感動…特に後半がめちゃくちゃ好き。色々聞きまくっているけどやはりレーベルとしてVMCが一番好きかもしれない。世代もあると思うけど、どのアーティストも個人的には毎度ツボつかれまくり。

3月14日
 韓国の音楽情報を友人と交換。知らんラッパーはまだまだいるし、過去の音源で村何あるんやという発見もあって楽しい。それもこれもストリーミングで無限に聞けるから。むかしCDを山ほど買っていた時代の自分に言ったら、どういうリアクションするだろう。それはともかくPeejayのWalkin'のpt1,2を無限リピートしていた。家で流すのにちょうどいい感じ。


 ホワイトデーなので奥さんにチョコレートのお返しとピアスをあげた。そのピアスを買ったお店で一緒に買った初期Macを彷彿とさせるこのフィギュアが死ぬほどかわいくて愛でている。無限テレワーク生活なので、こういうのでテンション上げて仕事頑張りたい所存。 


2021年3月12日金曜日

死ぬまでに行きたい海

死ぬまでに行きたい海/岸本 佐知子

 翻訳家の岸本佐知子氏のエッセイ集。土地や場所にまつわるエッセイが収められている。訪れたことのない場所へ訪れて感じたことを書くタイプと思い出の土地にまつわるタイプの大きく分けて2つのタイプがある。前者はエッセイとして王道ながらも着眼点が全然人と違う。多くの人が気にも止めず覚えてもないし、ゆえに忘れられることもないだろう世界についての話をしているのがオモシロかった。世界をどれだけ微分できるかでエッセイの魅力は決まると思っていて、著者の世界の捉え方はとてもオモシロかった。そしてまさにそれを象徴するかのような文章があったので引用しておく。厨二病!と笑うのは誰でもできるが、この考え方はインターネットの大元の思想だと思うし僕がブログで日記を書いているのもこの思想に由来している。

この世に生きたすべての人の、言語化も記録もされない、本人すら忘れてしまっているような些細な記憶。そういうものが、その人の退場とともに失われてしまうということが、私には苦しくて仕方がない。どこかの誰かがさっき食べたフライドポテトのことが美味しかったことも、道端で見た花をきれいだと思ったことも、ぜんぶ宇宙のどこかに保存されていてほしい。

 後者の思い出に関しては旅行の話(上海、バリ)がオモシロかった。その土地に対するイメージが著者が旅行した当時と今で全く異なっていて、ちょっとしたタイムスリップ気分を味わえる。その一方で時代は進んでいくし、今この瞬間も日々刻々と過ぎ去って2021年の空気が作られていくのだなというセンチメンタルな気持ちにもなった。それは合間合間に挟まれる著者自身がスマホで撮影した無機質で最高な写真も影響しているのかもしれない。

2021年3月8日月曜日

2021年3月 第1週

3月1日
 昨日収録したポッドキャストをリリース。「花束みたいな恋をした」について話しているので聞いてみてください。Apple podcast/Spotify/Show notes
 FLIP SIDE PLANETのゲストが満島ひかりというサプライズで驚いた。ゲストのリアクションもオモシロかったけど、それよりも選曲が超素晴らしかった。旧譜から新譜まで横断的なのにこんなにまとまっているのはプロとしかいいようがない。1曲目のPortrait of Tracy/Jaco PastoriusのベースラインがSWVのRainのネタだったのか!とか井上陽水のマリンバ使いの曲とか。新譜のLava La Rueも好きだった。

3月2日
 Jack Daniel'sのプロモ案件としてAOMGのチャンネルにDJ Sprayのミックスが上がっているのだけど、当時僕が友達とイベントでDJしてた頃みたいな選曲で超上がる。韓国の曲は抑え気味でソウル、ディスコ、ヒップホップをクロスオーバーするスタイル。こういうの久しく聞いていなかったのでめちゃくちゃ新鮮だった。

  

 宇宙には、だれかいますか?を読了。古本屋で見かけてたまたま買ったけど、NASAのローバーが火星に着陸したタイミングで読めて良かった。

3月3日
 人事異動の季節であり仕事の分担が変わる都合で最近は忙しい。これまで関わらなかった人と全然違う仕事をするので、それはそれで新鮮なんだけど漏れなく対応できるかどうか今まで以上にシステマティックに仕事しないと厳しそうだなーという感じがひしひしとしている。

3月4日
 毎日30分-1時間ずつくらいゼルダをプレイしているのだけど、それが癒しの時間になっている。そもそもRPGをプレイするの20年ぶりくらいなのもあるけど自由度がとても高くて驚いている。行けない場所がほとんどない。その自由度に合わせて体力の限界が用意されていてダッシュや泳ぐのは時間が制限されてたり高い山だと寒さで体力削られたり。しかもステージのスケールが想像以上に大きくて広がるたびに興奮する。FORTNITEだと画面の向こうにいる人間の殺意と直面するのに比べて時間がゆったり流れている。だらだらプレイしてエンジョイしたい。

3月5日
 毎週金曜日は新譜デー。今日はDrakeのシングルがでたのが一番のトピックかな。出る前から期待されてる中でこんなにカマせるラッパーはDrakeとKendrickだけなのでは?「What's next」のフックの歌詞がダサカッコよくて好き。

Well, summer, all I did was rest, okay?And New Year's, all I did was stretch, okay?And Valentine's Day, I had sex, okay?We'll see what's 'bout to happen next

あともう1つはUNLOCKED 1.5/Denzel Curry & Kenny Beatsも最高。 去年出たEPのREMIX verでRobert Glasper, Georgia Anne Muldrow, Alchemstという渋いアプローチからのDenzel Curryというのが好きだった。前のアルバムのZUUも好きだったし、このあと出るソロのアルバムがどうなるのかは楽しみなところ。



 韓国のリリースだとASH ISLANDの新しいアルバムも聞いた。いわゆるミクスチャー系のアプローチ。これ系ってあんまり好みじゃないこと多いけど、むちゃくちゃかっこよくい。彼自身がシンギンラップなので超豪華なfeatのラッパーたちがいいアクセントになっている。Post Malone、Lil Peep以降のサウンドで単純なパクリじゃなくてしっかりオリジナリティあるのがすごいという話を友人として盛り上がったりした。

3月6日
 奥さんは結婚式出席で終日1人。ワンダヴィジョンS1を見終えた。斜め上の展開の連発で飽きずに楽しむことができた。何にも話せないくらいに物語の構造自体にオモシロさがあるのだけど、個人的には魔女展開になってからがイマイチ乗り切れず…ただ最終話で気付かされる映画=スタジオの存在意義のアナロジーとなる展開が興味深かった。  夕方、親知らずを抜くために近所の歯医者へ。親知らず抜き師が定期的に歯医者にくるらしいのだけど予約一杯で2ヶ月待ちの結果やっと。いざ行ってみると抜き師が妙に軽いノリで不安になった。抜き師にとっては今日もう5本目くらいだからだと思うけど、こちらは初めてなんです!と言いたくなる。麻酔して滞りなく抜歯完了。全然痛くなかった。抜いた歯を見せてくれて「持って帰りますぅ??」と言われたけど丁重に処分してもらうよう伝えた。生命式を読んだばかりで歯を見ると妙にドキドキした。

3月7日
 現在、我が家では空前のGAG福井さんブームでYoutube見たりしていたのだけど今日はGAGの幕張でのトークライブをオンライン課金して見た。めちゃくちゃオモシロいというよりも落ち着くというか関係性の妙があってワイワイする感じが楽しい。  FlammableがPaloalto & JUSTHISのアルバムに参加してたのに驚いて友人に話したら、2012年時点でDJ BEERTとFlammableのアルバムに Okasianが参加していて、そこからIt G Maに繋がるというこの日本のヒップホップと韓国のヒップホップの一連の流れがあまりにも語られてなさすぎてビビる。It G Maは超エポックメイキングな出来事なのに!当事者たちはあんまりに気にしてないだろうけど、こういうのはインタビューとかでアーカイブしておいてほしい。(digりきれてないだけかもしれないけど。)

2021年3月7日日曜日

生命式

生命式/村田 沙耶香

 友人から一昨年にレコメンドされていた1冊。著者の作品を読むのは「コンビニ人間」以来だけど今回もギア全開でめちゃくちゃオモシロかった。上田岳弘しかり、SFと純文学の狭間を描いている作家はどれ読んでもオモシロい。本作は人体をテーマにした短編集でタイトルにもなっている「生命式」が本著の初めを飾る短編。いきなりカニバリズムをメインテーマに据えた話で度肝抜かれた。カニバリズムの話だとグロなイメージを持つと思うけど、あくまで一素材としての「人間」という扱いになっているのが興味深い。おどろおどろしさなど皆無で人肉を食べることが「当たり前」の社会を描いている。「コンビニ人間」もそうだったけど、世界の常識や当たり前に対する違和感をひたすらに追求していく姿勢がとても好き。カニバリズムという突飛なテーマだけども、それはエンタメとして強調するための要素であって、これを身近なテーマに置き換えると自分が寄りかかっている常識や当たり前がぐらついていく。このゲシュタルト崩壊に近い感覚を味わえるのが楽しい。
 本作に収められてる短編には完全なSFテイストの作品と日常を妄想で拡張していく2つのパターンがある。後者でコロナ禍の今読むと味わい深かったのは「パズル」だった。生き物としての人間に愛をもち、満員電車に乗ることが好きで人の吐瀉物にさえ愛情をもつ女性が主人公。彼女がオフィス街全体を人間として捉えてそこで働く人間は臓器なんだという考えはコロナ禍の今だとオフィス街は死んでいることになり、それは言い得て妙だなと思えた。さらにエンディングが一種のサスペンスみたいになっているのも斬新。
 多様性も1つのテーマになっているのだけど、分かり合えなくてもそれぞれを尊重しようよ!というスタンスは1つの解決策として妥当だなと思える。(夫婦別姓制度なんてまさにそれ)一番濃厚に出ているのは「素晴らしい食卓」という短編。それぞれが食いたいもの食えばええやん!という話なんだけど、虫食い、サプリ飯、お菓子ばかりの偏食という三者の並びがオモシロすぎるし何かもかも分かった風に浅いユニティを強調することの虚無さが最後にぶち込まれてて震えた。僕らは何もかも分かり合えると思い過ぎているのか、というペシミスティックな気持ちにもなった。そして最後の「孵化」という短編では人の持つ多面性を無機質に描いていて人それぞれの多様性×一個人の多面性=世界は無限ということを突きつけられた気がする。凝り固まった固定概念をときほぐす小説としてはベスト。

2021年3月3日水曜日

科学者18人にお尋ねします。宇宙には誰かいますか?

科学者18人にお尋ねします。宇宙には誰かいますか? 

 地球外生命体の可能性について18人の学者に話を聞いたアンソロジー。NASAが火星にPerseverance Roverを着陸させたことで話題になっている中で読めて良かった。(この動画、超テンション上がるので何か辛いこと、嫌なことがあった人はぜひ見てみて欲しい)
 

 この手の本は難しいことも多いけど質疑応答形式なので比較的話し言葉で説明してくれておりとっつきやすい。冒頭のウィスット・ポンニミットの漫画や2017年時点での「地球外生命の探しの今」と題して概況をざっくり説明してくれているのも助かった。
 学者と一口に言っても天文学者、生物学者、物理学者、化学者といった様々なバックグラウンドを持った人たちが登場していて、彼らが横断的に話していくことが地球における学問の進歩なのだという大きな話になっていて、MARVELのアベンジャーズのようなロマンがある。その中でも宇宙生物学(アストロバイオロジー)なる学問が近年構築されている。そこでは宇宙における生命の在り方について日々研究が進められているらしい。
 各学者が考えていることをそれぞれ述べるのではなく同じ質問に対して回答している点がミソだと思う。なぜなら各自の研究対象と地球外生命体の距離感が良くわかるから。まず生命の定義自体が十人十色なところからして興味深い。当然教科書的な正解はあるのだけど、宇宙に生命がいるとなるときにはどういう定義が適当なのかはまた別問題らしい。回答スタンスからSF好きなんだろな〜と思えたり逆に超リアリスティックな回答をしている人もいたり。分かっていないことが最も多いと言っても過言ではない分野だからこそたくさんの見解があってオモシロい。とはいえ様々な分野の人がこの研究にコミットできるようになったのは系外惑星の発見が大きな影響を及ぼしているらしい。もしその発見がなければ学会で「とんでも」扱いされていたという話もあり技術が発展することは大切なことだと改めて。
 地球外生命体との遭遇を考えるとき宇宙のことばかり考えがちだけど、人類が文明を長く維持して地球外生命体と遭遇する確率をあげることも重要だという話が印象的だった。(ドレイクの方程式の係数(L)になっている。)タイムスケールのめちゃくちゃ大きい話を軽々とこなしている学者の方々へのリスペクトとそういった思考をトレースすることで日々の煩わしいことが些細に思える副次効果もあった。これが本当の自己啓発なのかもしれない。 

2021年3月1日月曜日

2021年2月 第5週

2月22日
 有給休暇。朝から川崎で映画を見る。「すばらしき世界」西川美和監督最新作。メイキングエッセイを読んで準備万端で見たのだけど、めちゃくちゃオモシロかった。コロナの影響で映画館へ行くの超久しぶりだったけど、久しぶりに見る映画がこの作品で本当に良かったと心底思えた。元ヤクザで殺人罪で服役していた男が十数年ぶりにシャバに出てきたとき世界とどう対峙して生きていくか?という話。普段ニュース、ネット、人との会話などで何となく認識ししている今の日本社会の残酷さをデフォルメして描いているところがとても興味深い。人と違うことが足枷になってしまう場面を何度も見せられて正直ウッとなってしまうのだけど、そこを乗り越えていく主人公の三上の真っ直ぐすぎる姿に心打たれる。特に夕焼けのグラウンドでまるで祈るようなシーンは泣いてしまった。日本社会で「上手く生きること」が何なのか?を目の前に突きつけられている。じぶんが不幸なときに弱者に対してそのストレスを発散するのはどう考えてもおかしい。そんな光景のつるべ打ちに辛い気持ちになると同時にやっぱりおかしいことをおかしいと言う人生でありたいと思う。そこ我慢して生きる人生に価値があるのか?と問われている気がした。あとは寛容さ。どこまで許せるのか?


 スタバ寄って映画の余韻に浸りつつ最寄駅から歩いて帰る。道中、WREPを再生したらZEEBRAの番組にweek dudusが出演してた。何度も出自(家族のこと)を質問するジブさんにちょっと抵抗あったし聞くこともっとあるやろ…と思ってしまった。このインタビューもアーカイブされていかないから、その場で流れて終わりなのは勿体ない。(week dudusが姫路にきたジブさんにフリースタイル仕掛けたとか)と小言ばかりになってしまったけど気軽にヒップホップ中心の生番組聞けるようになったWREPの功績は超偉大だと思います。
 一旦家に帰ってから本を返却するため図書館へ。帰り道のパン屋でお昼ご飯買って家で食べた。チキンタツタサンドといちごクリームパン。血糖値が一気に上がりすぎて強烈に眠くなるけど何とか堪えてSMTM8準決勝が英訳されたので見た。EKとBig Naughtyが圧巻のステージングだった。featの力もあるかもしれないけど残りのラッパーとは別格だった。それだけにEKの結果が納得できず…一方でTakuwaが勝ったのは韓国におけるHIPHOPリテラシーの高さを感じる。日本なら絶対JJANGYOUが勝っていたと思う。決勝の翻訳を気長に待ちたい。
 夜ご飯はあんかけ焼きそば。野菜たくさん取れるし固い麺があんで柔らかくなる感じがとても好き。今週分の日記からNotionで書いている。横にあるカラム分けでかなり視認性が良くなってるし入力もツルツルで良い。Paperの場合、長時間入力していると「オフラインになりました」と出ることがあり、すぐにオンライン復帰ボタンを押していたけど知らずのうちにストレスになっていたことに気づいた。

2月23日
 朝起きたらDaft Punk解散のニュース。One more timeが一番有名だと思うけど、ディスコ/ブギーの復権を高らかに打ち立てたRandom Access Memoriesが一番好き。久しぶりにCDで聞くと懐かしくて新しい当時の感覚が蘇った。彼らは1つのジャンルに閉じているというより、彼らが今どんな音楽に興味を持っているか?が1つの好きなポイントだったので解散は本当に残念。でも再結成しそう。
 奥さんの買い物に同行して外出。久しぶりの店でカツカレーを食べた。その店でテレビが流れていて菅首相の息子と総務省官僚の接待の話が延々と。クソニュースだなと思うけど、息子が元キマグレンのメンバーとバンドを組んでいたという香ばしい情報が好きだった。
 Takeoneのアルバムが出るらしいという話を友人から聞いて楽しみやなーと言っていたら夜にdingo freestyleに登場。かっこいいとは思っていたけど、今回のでまた印象が変わったというか、めちゃくちゃかっこいいな!言語化しにくいのだけど一緒にレーベルやってるLil boiに近くて何でもできて安定感抜群って感じかな?この流れでGreen Idiologyという昔のアルバムを聞いたのだけど、それまた素晴らしく、色んなタイプのビートを余裕で乗りこなしている。2016年リリースだけど全く古びていない。

2月24日
 4連休明け。まったく仕事に対してモチベーションがない。以前に友人とポッドキャストで話したけど仕事に何を求めるのか?を真剣に考えないといけないなーと思う。来年度は組織も変わるようなので、そこで心機一転できればいいのだけど。
 All The Light/GRAPEVINEのアナログが届く。奥さんが好きで教えてもらったGRAPEVINEをすっかり自分も好きになっていて特にこの最新アルバムは好きな一枚なのでアナログを買った。アナログは音の迫力が違うな~という知ったか顔で聞きながら仕事していた。
 寝る前に幸福な監視国家・中国を読了。中国のITレベルと監視の関係性、さらに思想に至るまで網羅的にしれて勉強になった。

2月25日
 久しぶりに天下一品でお昼。半年に1回くらいでちょうどいい。その後シェアオフィスで初めて仕事してみた。椅子とか机とかモニターとかしょうもなさ過ぎて、あんまり良くなかった。でも立地がいいので数時間単位で集中するのであれば使えそう。
 仕事終わりに「花束みたいな恋をした」を鑑賞。お話自体はなんてことない恋愛物語だけど、日本/海外問わずにカルチャーの固有名詞がつるべ打ちされていい意味でも悪い意味でも死ぬかと思った。2015年から2020年にかけては自分自身も積極的にカルチャーを摂取していたこともあり出てくる固有名詞の多くに見覚えがあったから。多くの映画では登場人物の接するものは背景でしかないゆえに架空のものが作られるわけだけど本作はすべてが実在している。それはカルチャーに限らず地名もスーパードライもLINEも。映画における嘘の要素を限りなく排除して固有名詞を配置するだけでこんなに生々しい話になるのは1つの発明だと思う。あとは坂元裕二の言い回しが連発しまくりなので、それだけで楽しい。「オリンピックは広告代理店じゃなくて選手がやるんだよ」とか。冒頭のイヤホンの話はアナロジーとしてもオモシロいし恋愛映画の定石をいきなり崩す宣言になっているようにも感じた。あとはカルチャーを愛すること、社会で生きていくことを二項対立にしているのが怖かった。この2つが成立しないような見え方がするし、パズドラとショーシャンクの使い方は悪意に満ちていて、有村架純と菅田将暉目当てでこれを見に来た人たちはどう思うのだろうか。帰り道、奥さんと合流して寿司を買ってビール飲んで巨人芸人を見てから就寝。

2月26日
 基本的にメールでしかやりとりしてないので少しでも手を抜くと仏頂面なメールになってしまう難しさを最近感じている。かといって年齢は一番下なので変に馴れ馴れしいとナメてる感でるし未だにちょうどいい塩梅が分からない。
 昨日から聞いているBig Naughtyの新譜がめちゃくちゃかっこいい。シンギンラップは世に跋扈しているけど独特のメロディとフロウがクセになる。(Achoo REMIXのときも「そのアプローチなに?!」って感じだった)先行シングルのWonsteinとの曲はファンキー系だったけど、やはりメロウ路線に弱いので「Frank Ocean」が好き。GrayがProduceした「Bravo」もよかったけどFeatのCoogieとGrayのコンビネーションが無敵すぎて…Dingo Freestyleも鬼な仕上がりでライブとは思えない安定感。いわゆる今っぽいラップのフロウも披露しているけど、あくまでそれは「こういうのもできますけどね」みたいなかましで、アートとしていい曲作りたいのだなと今回のEPを聞いて感じた。


2月27日
 今日は埼玉まで内見。ペット飼えて綺麗目な感じ。写真で見るよりも広くて最近見た中では一番よかった。周辺は何もないけど少し歩くとターミナル駅あるし不便はしなそう。しばらく悩むことになりそう。引っ越しするとなると、その手間/コストを乗り越えるような物件が必要なんだけど今住んでるところにある程度満足しているので難しいと感じている。とはいえほとんど会社行かないし都会いる意味とは?となっているのも事実なので真面目に考えたい。
 Lil BoiのSMTM9優勝で得た新レーベルが始動して、Lil Boi×Wonsteinでシングルをリリース。Produceはslom。MVは映画オマージュてんこ盛りって非の打ち所がない!と友人と盛り上がっていた。Bruno MarsとAnderson Paak.のコラボが話題になっていたけど、彼らもそういう価値観でヒップホップやっていて本当にかっこいいなと思う。

 Toro y MoiのUnderneath the Pineがリリースされてから10年経ったらしく記念にインスト版がリリースされていた。彼のボーカルが入っていないと全く別の音楽に聞こえるのが新鮮。そして10年前とはとても思えない。これは普遍性を持っているということなのか、時代が一回りしているのか。インストだから作業BGMとしてもおすすめ。

2月28日
 前からプレイしたかったSwitchのゼルダを購入してついに始めた。(花束の影響大)FORTNITEと多少操作が違うけどその辺はすぐ慣れそう。自由度の高さは冒頭から感じていて、広大なフィールドに放り出されて何でもできるのは驚き。ロールプレイングゲームを最後までクリアしたの記憶にないくらいの素人なのでゆっくり楽しみたい。あっという間に時間溶けていく系なので気をつけたい。(どこでもセーブできるのが救い)
 夜ポッドキャストの収録。2週に1回が無理ないペースなのかも。今回は映画の話中心だけど見た人は楽しめるかと。寝付けなかったので軽く日記書いてから寝た。