最新アルバム『LIT』のタイトル曲で登場したJUSTHIS。口から音源そのままのラップが飛び出してくることに心底驚いた。これまで色んなラッパーのライブを見てきたが、段違いのレベルだ。そのラップマスターっぷりを、ステージングからヒシヒシと感じた。ライブは『LIT』、『2
MANY HOMES 4 1
KID』、ヒットソング&客演パートという3つのパートで構成されいた。
音像的には、最新の彼のスタイルを思う存分堪能できる『LIT』の曲たちがかっこよかった。特に「Gimmie」は彼のオーセンティックなラップのスタイルと、シンギングスタイルの両方を堪能できるアルバム内でもお気に入りの曲。生で聞くことができて嬉しかった。欲をいえば、Hit-Boy作の「Wrap
It Up」が聞けなかったことが残念ではあった。
今回の公演の見所としては『2 MANY HOMES 4 1
KID』パートだろう。リリースから10周年を迎え、韓国では生バンドによる記念ライブも予定されているらしい。そんなタイミングもあいまって、「Motherfucker」のイントロが流れた瞬間にぶち上がり。Edie
Kendricks「Intimate
friends」使いの極メロウなビートの上で歌い、スピットするJUSTHISを見ていると「本当に来て良かった…!」という思いが去来した。他にも同作からは「Motherfucker
2」「Nowon」なども披露された。
最後は盛り上げパートとして自身のアルバム外からヒット曲やクラシックを投下。YUMDDAとの「John
Cena」、直近のSMTM12でのゲスト参加したZene the
zillla「Mr.ROCKLEE」で盛り上げにかかり、ラストは「Indigo」「Gone」で大団円。両方とも大好きな曲だが、特に「Indigo」は韓国ヒップホップを好きになってから繰り返し聞いてきた曲だったので感無量だった。これが最後になることなく、もっとカジュアルに来日して定期的にライブを見せて欲しい。
続いてはBenjazzy。解散後、アクティブにリリースを重ねる彼ならではのラップ圧力満タンのステージングはかっこよかった。「NOFFSEASON」でド派手にかましたあと、まさかの「Cyberpunk」でぶち上がり。2年前に同じZepp
HanedaでJJJのみの「Cyberpunk」を聞いたので、個人的には感慨深いものがあった。さらにBAD
HOP時代の曲である「Shoot My
Shot」も投下されて驚いた。最近若干ドリルは下火になりつつあるが、Benjazyyのドリル曲のライブでの破壊力は並外れたものがある。どこかでまたドリルがリバイバルするはずなので、そのタイミングでドリルに特化した作品は是非聞かせて欲しい。
JUSTHISを挟んでのTiji
Jojoはとにかくその人気に驚いた。キャッチーなメロディと一言一句聞き取れるラップ巧者っぷりはステージでも健在。ハイプマンとしてサイドMCをつけていたのは意外で、メロウなTiji
Jojoだけだと不足しがちなラウドさをフォローしていて理にはかなっていた。少し涼しくなってきたものの、サマーソングパートのメロウネスはたまらないものがあった。特にSTUTS
& ZOT on the WAVEによる「Perfect Blue」が聞けてアガった。
個人的には今年リリースされた『LONG LIVE LOUD』が好きで「Do It Right
Now」「Talk To
Me」あたりのアンセム曲は大きな会場に映えしていたし、ロングセットだからこそしっとりめの「Misfit」「Nightmare」も披露されて、ライブで見ることができてよかった。
その後はD-RyoogaによるDJタイム。Andersenの旧名義RUPRECXNTAのクラシック「I feel like I'm Zlatan in 2012」がかかってぶち上がる。「基本Boujee、たまにムリ」「レベチ」など自身が手がけたバンガーを投下しつつ、MIKADO「Time Is Money」なども織り交ぜてフロアを沸かしていた。最後はグンソーウォークで締めたのち、金沢勢のライブがスタート。
トップバッターはYÖSY。「高見栄え」でフロアを完全にロックしていてかっこよかった。新曲は「Cho Wavy De Gomenne」オマージュのD-Ryooga謹製のビートでもかましていた。先日のソングウォーズでSieroが同様のアプローチをしており、JP THE WAVYがリバイバルする時代に突入しているのかと思うと、時代の移り変わりの速さに少し怖くなった。
続いてはAndersen。RUPRECXNTAの頃から好きなラッパーだが、名義変更後はソングライティングのレベルが一段上がったと感じるアップカミングなラッパーである。(RAPSTAR2026の応募動画で知った人も多いだろう。)繰り返し聞いていた曲が目の前で歌われると、感動もひとしお。それはバチカという小箱だからこその魅力で、まるで自分のために歌われているかのように錯覚すら覚える。最新EP『Spring Tape』で一番好きな「Guala」を聞けたことが嬉しかった。他にも『Sen』からは「田んぼ」「Don’t You Be Fuck The Way」も披露され、後者のNoDoubleMane生の厳かなストリングスをでかい音で聴くのは格別の体験だった。正直いえば「雪山」が聞きたかったところではあるが、それはまたの機会に。新曲の披露の仕方がうまくて「I don’t know how you feel, You don’t know how I feel」というフックを一度歌ってから一旦ホードン。自分の気持ちは音楽でしか伝えられないことをMCで伝えてから再度歌い始める。新曲ながら観客が乗りやすい細かいライブにおける工夫が印象的だった。
インタビューもそれぞれ興味深かった。つやちゃんによるReichiのインタビューは、『LIFE
HISTORY
MIXTAPE』以降を感じさせる社会学的なアプローチが垣間見えた。Reichiの「RAPSTAR
CYPHER
2025」のバースは何回聞いても涙ぐんでしまうのだが、その背景を知ることができてよかった。また、目下最注目のプロデューサーであるYamieZimmerのインタビューは、自身もビートメイキングを手掛ける吉田雅史氏ならではの解像度で、彼のサウンドの奥深さの一端を知ることができた。あのサウンドの背景にDr.Dreがいることは、聞かないとわからないことだろう。(表紙のスペル、mが1つ多いので、もし二刷があれば修正して欲しい。)
物語のギミックが豊富で、500ページを超える長さにもかかわらず最後まで飽きさせない。掲示板形式の書き込みが随所に挟まれる構成が効果的だし、終盤にはどんでん返しが何度も繰り広げられ、読んでいてハラハラした。複雑な人間関係のなかで、それぞれの思惑が絡み合いながら社会が変化していく様子は読み応え十分だった。その展開は計算されているというよりも、未来の予見不可能性を物語に組み込んでいるようだ。さまざまな出来事や個人の選択が少しずつかみ合って社会は変化していく。つまり「一人一人の行動変容こそが未来を変えていくのである」というメッセージだと受け取った。まさにONE PERSON ONE POWER。
単なる広島の記憶を振り返る作品ではなく、現在、そして未来に対する視線があるからこそ、このドキュメンタリーは今見る意味がある。今年の衆議院選挙の結果を見て以来、個人的には政治に対する無力感ばかりが募っていた。それでも、「嫌なことは嫌だ」と言い続けることをやめてしまえば、本当に何かが起きるところまで社会は進んでしまうかもしれない。ECDのツイートを基にした「ONE PERSON. ONE POWER.」のパッチムーブメントを思い返しながら、この無力感に抗い続けなければならないと、あらためて感じた。
続いて、Daichi Yamamotoが登場し2日連続で「YAMAMOTO」。昨日の彼のライブも圧倒的だったが、WWWXのスケールで見る彼のライブは迫力が倍増。昨日とまったく同じ流れでSTUTS「Expressions」へ。しかし、この日は鎮座DOPENESS、仙人掌まで追加された超豪華バージョン。「Let's get ready to rumble!」と言いたくなるようなマイクリレーの口火を切ったのは、まさかのSTUTS!彼の弾ける笑顔と高いバイブスに呼応するような、各ラッパーのテンションも一気に上がっていた。これだけBPMの速いマイクリレーは最近なかなかないし、このメンツで見れたのはアツかった。最後は最新アルバムから「Bollard」をSTUTSとしっとりと披露していた。
冒頭でもJJJにフォーカスしていたが、再びのJJJパートは「Eye Splice」のRemixが投下されてフロアは大爆発。このテイストのドリルの曲がこんなに神格化されるなんてリリース当時は思ってもみなかった。さらに「Something」、「Filter」も聞くことができた。この日披露されたJJJ関連曲を最後に聞いたのは、JJJ JULY TOURだったので、やり切れない思いが去来しつつも、こうやって曲は歌い継がれることで、JJJは曲の中で生き続けるのだろう。
そして、個人的に一番感動したのはラストで、まさかの『PEASTA』パート。聞き慣れた「Indigo」のサンプリングネタが流れ、そこから「Indigo」へ。事前インタビューで「ワンマンだからこそできる構成を」と語っていたので、少し期待はしていたものの、まさかやってくれるとは。さらに「YUME no NAKA」、「PEASTA」まで披露されて感無量…Tシャツが震えるような低音にもグッときた。帰り道に久しぶりに聞き直したが、このアルバムのマスターピースとしての佇まいは唯一無二。今年でリリースからちょうど10年のようで、それを記念して披露してくれたのかもしれない。客電がついてライブは終了したものの、あまりにもしっとりしたエンディングだったからか、観客からアンコールの拍手が鳴り止まず、最後にもう1曲だけ「ウワッツラ」を披露していた。
まずは、Kzyboost。トークボックスによる絶妙なアレンジが既存曲に新たな表情を与えていた。特にSTUTS & ZOT on the WAVE「Perfect Blue」はメロウネスが際立っていたし、この日のハイライトの一つである「Wanna Ride」ではトークボクサーとしての力量を存分に発揮していた。オートチューン全盛の時代に、ここまでトークボックスをライブの核として機能させるラッパーは世界的にも珍しい。
それが最も顕著だったのは「Brown Paper Bag」である。1stアルバムの曲で、すっかり記憶から抜け落ちてたいのだが、D’Angelo「Brown Sugar」を下敷きにした楽曲の魅力をコーラスが最大限に引き出し、鳥肌が立つほどのグルーヴを生み出していた。
原曲でもMika Arisakaが参加している「なんとかなるさ」では、音源では抑えめだったコーラスがが全開。ダイナミックな歌声が会場に鳴り響き、この曲の持つエモーショナルなバイブスを一層高めていた。他にもgroovemanspot「Power」、STUTS & Julia Wu「With U 」といった曲でも存在感は抜群で、このライブの裏MVPと言っても過言ではないだろう。
客演陣も豪華だった。前半では最近の多岐にわたるコネクションの中で、Kianna、Benjazzyが登場。特にKiannaをこのタイミングで見ることができたことは嬉しかった。後半にかけてはCampanella、STUTS、KID FRESINOといったお馴染みのメンツが登場。Campanellaも含めたSTUTS「Expression」やKID FRESINOとの「Let It Be」など、この日ならではの共演を楽しめた。KID FRESINOとは新曲も披露されており、今後の展開が楽しみである。
DJ Scratch Niceといえば、彼の最新アルバムに収録された「Phase」も披露。JJJの2バース目は彼の死後、より意義深いものになったことを踏まえるかのように、ラップをかぶせることなく、JJJの声が会場に鳴り響いていた。一方で「Taxi」ではJJJのバースまでしっかり蹴っていて、こういった細かな押し引きが、彼のJJJへのリスペクトと、ライブに対する意識の高さが伝わってきた。