2014年11月30日日曜日

日々ロック



サイタマノラッパーでおなじみ入江悠監督最新作。
初メジャー作品で、2015年はじめには、
次作のジョーカーゲームの公開も控えていて絶好調。
本作はライブシーンがとんでもなく素晴らしかった!
でも物語全体の出来を考えると…って感じでした。
何かとすべてがtoo much!!という良さは十分理解した上で、
本作が設けたリアリティラインに乗りきれなかった印象。
(それはサイタマノラッパーとかの比では無い)
主人公は日々沼というロック青年。
彼が中学で組んだスリーピースバンド、
The Rock'n Roll Brothersとして売れるため上京。
ライブハウスに住み込みながら、
なんとか売れるために頑張るものの…というお話。
冒頭、高校時代の駅前での路上ライブシーンで、
良い意味でヘタクソでガムシャラにライブしてるところへ、
ヤンキー達がそれをぶち壊し、大乱闘が起こる。
ここで日々沼がギターで頭を殴り、血がビシャー!
このシーンが映画全体の踏絵になっていて、
僕はここで一歩引いてしまったことによって、
見てる間ずっと悪い意味で客観視してしまい、
物語に乗り切れなかったというのが正直なところです。
(血が出たのがどうこうではなく、その使い方ね)
主人公たちの状況を一変させるのが、
二階堂ふみ演じる宇田川咲という、
エレクトロポップアイドルの存在。
超有名なアイドルの彼女が実は無類のロック好きで、
昔はバンドも組んでいたバンド女子って言う設定。
彼らが働くライブハウスのオーナーが叔父ということもあり、
たまたまThe Rock'n Roll Brothersを目撃する。
そこで突如彼らを蹴飛ばしてライブに乱入し、
歌い始めるのが忌野清志郎の「雨上がりの夜空に」
これがとても好きだったんですよね〜
別に上手いとかそういうことではなくて、
二階堂ふみがギター片手に歌っているのがとてもキュート。
しかも、原曲とテンポも変わってるし、
良い意味で大味な曲調がドンピシャでハマってました。
すげーイイ!と思ったのも束の間、
「おめーらもっとロックしろよ!」というセリフで、
一気に熱が冷めてしまったのが本当に残念。
今回、桐島、部活やめるってよの「おっまた〜」で
おなじみの前野朋哉がバンドメンバー役で出てるんですが、
彼は童貞こじらせ系やらせたら、右に出るものはいない!
ってことを本作でまざまざと見せつけてくれて最高でした。
(蛭子さんキャスティングの悪意もナイス!)
一方で日々沼役の野村周平は終始「えっ…」って感じ。
というのも彼が悪い訳ではなく演出の問題で、
まず何を言っているのか聞き取りにくいし、
常に中腰なのも一体何なんだ!って思いました。
それに加えてステレオタイプで成立させた世界観に、
不快感さえ持ち始めたところで放り込まれるライブシーン。
これがもうすべての不満をチャラにするくらい素晴らしい!
ロックの良さはこれか!!と映像で突きつけられた感じ。
細かいカット割りと手持ちカメラのライブ感の合わせ技で、
グイグイ引き込まれました。正直これだけでも見て欲しい。
終盤は難病もの+サイタマノラッパー的な展開。
これもサイタマノラッパー3部作に比べると、
物足りないんですよねー似たような題材なだけに比べてしまう。
セリフ全体が嘘臭い上に、仰々しいからイライラする。
あぁ…と思っているところで、再度のライブシーン。
前述したシーンに比べるとアレでしたが、
ロックと雨は相性良しということで。
ラストの菜の花畑シーンはアメリカのインディロックっぽくて、
車の感じも含めて好きでした。
中高生が休みの日に本作を見て音楽に目覚めれば、
それでいいかな?と思います。

デビルズ・ノット



有楽町のシャンテで予告編を見て、
これはオモシロそーと思い、見てみました。
前知識ないままで見たんですが、
予告編で描かれた部分のオモシロさはあまり感じなかったです。
実際に起こった未解決事件であり、
アメリカでも大きな問題となっている冤罪事件が題材。
ゆえにドキュメンタリー要素が高く、
全体としての物語は淡白で、明確なカタルシスはありません。
ただ、恣意的に産み出される冤罪の恐ろしさを、
目撃することになるので、その点は興味深かったです。
アメリカのアーカンソー州という片田舎で、
小学生3人が殺されてしまう事件が起こり、
明確な証拠のないまま、悪魔信仰っぽい青年3人が、
容疑者となり裁判が進んでいくものの…というお話。
コリン・ファースは主人公の調査員役で、
明確な状況証拠がないことを理由に青年たちを
何とか無罪にしようと弁護団と画策するのが前半。
まず、子どもの殺され方がエゲツナイんですよね。。
まさにタイトル通りの devil's knotを見せつけてくる。
はじめは死体が見つからなくて、
警察を筆頭に街の人達による捜索が続けられたところで、
結局見つかるんですが、その見つかり方も、
うわぁ…と声が出てしまうくらいの陰惨さ。
殺人事件としての捜査が始まっていくんですが、
矛盾だらけの証拠をかき集めるところが描かれます。
裁判で1個1個確からしいものとして、
紹介されていき、陪審員たちも「コイツら黒だな」
と思うような裁判となっていくのが怖いなーと。
陪審員制度は市民感覚に近づくだけ諸刃の剣で、
感情で人を裁いてしまい、裁判の大原則である
「疑わしきは罰せず」というものが揺らいでしまう。
それがじわじわと描かれていきます。
とくにこのエリアは敬虔なキリスト教徒が多く、
デスメタルを愛し、黒魔術に興味があるというだけで、
脊髄反射的に嫌悪感を露にする一種の拝外主義。
と理性では思うんだけど、3人の青年のうち、
主犯と思われる男の子の佇まいが限りなく黒に見えるという…
ジェームズ・ウィリアム・ハムリックという人が
演じてるんですが、これから期待の俳優だと思います。
俳優という点でいえば、デイン・デハーンが出ています。
彼の出てる映画にハズレ無しの法則がありますが、
本作は脇役で過去作に比べたらキレ無かったかな。。。
個人的には最近よく見るアメリカの夏木マリこと、
ミレイユ・イーノスが最悪なバカ母を演じていて、
ニヤニヤしながら見ていました。
実際の事件が起こってから時間が経っていることから、
現時点で疑わしいとされている容疑者候補の人たちが、
劇中でも怪しい様子で描かれていました。
そこまでは良かったんだけど、
ラストのあの締め方はちょっと無くない?
と思ってしまいました。
もう少し裁判を圧縮するか、全体の尺を延ばすなり、
如何様にもできたと思うんですが、
本作の目的とすることはこの事件の存在を、
周知することにあるのであれば、
あの形も止む無しなのかな〜難しいところです。
息詰まりそうになりたい方にオススメ。

人の心を失った先輩の記事が非常に為になると思います
リンク

2014年11月29日土曜日

6才のボクが、大人になるまで



リチャード・リンクレイター最新作。
ビフォア・ミッドナイトも素晴らしくて、
ウェイキング・ライフとかも見て、
この監督ハンパねーなと思ってたら、
とんでもない傑作キタで!といった印象でした。
(原題はBoyhoodで、邦題は最悪だと思います)
映画の主人公の実年齢に合わせて、
6才から18才になるまでの12年間、
毎年夏に集まって撮影が行われ完成したらしい…
ドキュメンタリーなら全然ありそうな話ですが、
フィクションで1人の青年の成長を、
実際の時間軸で切り取ったfreshさには感服するしかない。
こういった作り方なので、
どうしたって「時間」がテーマになり、
己の過ごしてきた時間、これから過ごす時間に対して、
考えさせられること山の如し。
お話自体は非常にシンプルで、
アメリカのヒューストン育ちの子どもが成長し、
大学に入り、自分の進むべき道にたどり着くという話。
多くの人が歩んできた道であり、
取り立てて大きな事件は起こらない日常が3時間近く続く。
これだけ聞くと、「面白いの?」となるかもしれませんが、
そこがリンクレイター監督の素晴らしいところで、
何気ない日常に潜むちょっとした出来事や会話を
丁寧に積み立てていくことで、ずっと見たくなるほど、
主人公メイソンに感情移入できる作りになっています。
あと12年の時間を描くのに、何歳とかキャプションはなく、
サブカルチャー要素である、
映画、本、音楽の変遷で演出するのが最高でした。
彼は母、姉との3人暮らしで、シングルマザーの家庭で育ちます。
前半は大人の都合に振り回されながらも、
たくましく生きていくメイソンの姿が愛おしい。
父役をイーサン・ホークが演じているんですが、
彼がいい感じの父でバランサーを担っている。
たまの週末しか会わないっていうのもあるんですが、
子ども目線と大人目線の使い分けが絶妙。
こんな大人になりたいものです。
一方の母親は一時の感情で動きがちで不安定。
女手1人で子ども2人を育てるのが難しい中で、
再婚したり、修士号を取って大学の先生になったりする。
子育ての素晴らしさとそのカルマ、
自分自身の人生を生きることを体現してる。
ある意味、自分に正直で誠実な人。
特にメイソンが大学の入学のため、
家を出る日に「ズルい!」とキレるシーンが好きでした。
若さとその可能性へのジェラス!
メイソンは転校が多く、人間関係をゼロベースで作らねばならず、
母を反面教師にするかのごとく、内向的な性格になっていきます。
義父の存在もそれを加速させた要因で、
理髪店で髪の毛を切られるシーンは本人にとっては地獄だろうけど、
愛おしいなーと思いましたし、そのリカバー演出もキュン死。
そんな彼も成長するにしたがって、自分の好きなことを見つけて、
それに向かって生きていく姿が本当にかっこよくて眩しい。
後半には恋愛の様子も描かれ、極上の甘酸も見れます。
(彼女の可愛さたるや…)
ビフォアシリーズで見せた十八番の会話演出が炸裂し、
あー最高だなーと思いながら、ずっと見てました。
高校を卒業し、父とライブに行くシーンがとても好きで、
夢をあきらめ保険会社のサラリーマンとなった父と、
夢を追い続けた父の友人。
この2人の大人によって、人生は如何様にもなるってことを、
映像でバシッと見せるのが素晴らしいなぁと思いました。
結果、どういう形になるかは分からないけれど、
その時々で選択を行い、自分の人生を形成するしかない!
という話は身に滲みまくり。
ラストはエゲツない多幸感に溢れた美しい映像で締め。
長いけれど、ずっと見ていたいと思う素晴らしい作品でした。

2014年11月26日水曜日

ザ・レイド GOKUDO



ザ・レイドの続編ということで見てきました。
前作はストーリーがやや難があったものの、
アクションが本当に凄まじくて、
それだけで惚れ惚れしたものです。
本作は格闘アクションがbrush upされ、
物語の舞台が、前作のような閉塞された空間ではなく、
屋外にも出るし、移動も多いしで、
映画としての見た目はかなり豪華。
ポイントポイントでは見所が多いと思います。
一方でストーリーについては、
行動原理はある程度明確になったものの、
前作と同様ちょっとなぁ…って感じ。
いわゆる二重スパイもの+ヤクザものなんですが、
それらの面白みはほとんど無かったです。
(全裸確認シーンくらいかな。。。)
あとガンアクションが相当減ってしまっているのも、
残念だなーと思いました。
主人公は前作と同じ警察官で、
汚職警察官を無くそうと努力している中で、
潜入捜査を行うことになり、
インドネシアのマフィアに仲間入りするものの…という話。
冒頭、超引きのロングショットで画面の左隅に、
ゴニョゴニョしてるのが見えて、
そこから現場のショットに切り替わり、
話が矢継ぎ早に展開されてからの〜銃でドン!
タイトルばーん!面白い臭いがプンプンしてる。
前半はかなりテンポが早いのに加えて、
時間軸、場面が結構シャッフルしていくので、
物語の全体像を掴むのに苦労しました。
ただ、何が起こってるか分からないことが、
不穏な怖いことに巻き込まれているという、
観客側にライド性を生み出す効果があります。
見ている間に決定的な最初のアクション、
トイレでの乱取りシーンがあれよあれよと始まる。
この物語の火蓋を切る決定的な場面で、
スロモーションを用いた効果的な抑制から、
鬼狭い場所でのとんでもないアクションが始まった時、
その興奮は増幅されまくりでした。
本当にどうやって撮ってるんだろうと何度も感じました。
最初のミッションは刑務所に潜入し、
マフィアの息子と仲良くなること。
ここでのアクションが一番好きで、
受刑者たちが泥の中での殺し合い!
屈強な男たちが刑務官も受刑者も関係なく、
キャッキャといちゃついて殺し合うのだから最高。
ここもトイレと同じでスローモーション使ってのフリがあり、
ベタな手法かもしれないけれど、アガらざるを得ない。
そこからの格闘アクションの速度がエゲツないので、
ギャップが素晴らしいなぁと思います。
なかなか汚職警官の決定的証拠を掴めず、
マフィア間での抗争が水面下で激化していきます。
インドネシアの地元マフィアの敵対組織が、
日本のヤクザであるゴトウ組。
組長が遠藤憲一、若頭が松田龍平、北村一輝といった布陣。
顔面力が高い人ばかりなので、画面上の説得力はあるんですが、
あんまり効果的な使い方でもなかったかな…
一方でマフィアの息子をたぶらかす第3勢力のマフィアは、
皆がキャラ立ちしていて素晴らしかったですね〜
かまきり二刀流使いや、ボール&バット使い、
ハンマー使いの盲目・全聾女子などなど
それぞれの見せ場がきっちり用意されてるし、
どれもが楽しかったです。(野球のボールはマジ危険)
カーアクションもあって、その迫力は凄まじい。
カーアクション+カー内アクションという、
FRESHな演出も好きでした。
ラストは前作と似てて、死亡遊戯スタイルで全員ぶっ殺す!
ある種の無双モードなので、
ちょっとどうなのかなーと思いましたが、
スカッとするので無問題かと思います。
オチのあの演出はどういった意図なのか分からなかったですが、
変に落とし込むよりかはマシだったかなと思います。
映画館で圧倒的なアクションシーンを是非浴びてほしいです。

2014年11月22日土曜日

裏窓



ヒッチコック映画を少しずつ見進める一環で。
先日嗤う分身を見たときに、裏窓っぽいシーンがあり、
ちゃんと見たことないなぁと思い、見てみました。
終盤キューっと緊張するんですが、
それまでの物語が前振り以上でも以下でもなくて、
なんか食い足りなかったんだよなぁ…
抑制してからの〜っていう演出は理解できるんですが。
中身自体は示唆に富んでて、
映画自体が覗き見そのものであることや、
過度な干渉は結果的に何も産まないことがよく分かります。
ヒッチコックの映画とか古い映画を見るようになって、
人間の進化してなさ加減に驚くことが多いです。
半世紀が経ち、時代は変わっても、
悩みや困っていること、考えは変わらないのか…と。
主人公が裏窓から見ている隣人の風景が、
今はSNSのタイムラインだったりする訳です。
人間の本質を映画内であぶり出すヒッチコックは、
やっぱり偉大だ!と思います。
ラストの 身の毛がよだつ演出は素晴らしいし、
割とアホなオチは嫌いじゃないです。
気張らずに軽く見るのがオススメ。

2014年11月20日木曜日

天才スピヴェット



ジャン・ピエール・ジュネ監督最新作。
同監督の最新作を見たことがなかったので、
見るなら最新作から!ということで見てきました。
(アメリも未見です…)
まぁなんと可愛い作品なんだ!と思いました。
おもちゃ箱をひっくり返したかのような映像を、
3Dを見事に活用しながら表現し、
現実のお話とも有機的にリンクさせる、
絶妙なバランスが素晴らしいなぁと。
スピヴェット君はアメリカの山中に住む10歳の男の子。
彼は非常に頭がよくて、磁力を利用した永久機関を、
発明することに成功する。(実際には400年らしい)
その成果がスミソニアン博物館に評価され、
ワシントンDCで表彰式が行われることになり、
スピヴェット君が単身向かうものの…
というファンタジックロードムービー
彼の家族は5人家族で、父はカウボーイみたいな人、
母は昆虫博士、姉は都会を夢見るティーン、双子の弟
という構成になっていて、弟と一番仲がよかったんだけど、
2人で遊んでいたときに銃が暴発し、弟が亡くなってしまう。
カウボーイ父さんは頭のよい スピヴェット君よりも、
野性味に溢れた自分に近い弟を溺愛していた訳です。
彼は頭がよいからすべての事態を理解していて、
自分の居場所はここではないのかも?と疑い始める。
そこへ表彰式の話が舞い込み、旅が始まります。
冒頭、立体絵本(?)がポップアップし、
この時点で可愛さ5億点を叩き出す!
それに加えて雄大な自然の美しさも強調されていて、
基本原色使いであり、3Dとの相性も抜群。
あと3Dという点でいうと、飛び出す位置が特徴的。
IMAXであれば、視界一杯に映像が多いですが、
本作では物語の情報の補足的な役割を担っているため、
視界の左上に絵を登場させたり、
登場人物の顔に絵をかぶせたり、
ユニークで意味のある3Dだったように思います。
人の動きや物事を分析した図版が、
理系的にはアガるポイントでした。
本作は何と言っても主演を務めた、
カイル・キャレットの無垢さ、純粋さに支えられている。
ホーム・アローンのマコーレー・カルキンを彷彿とさせ、
そのギャグの盛り込み方も最高で、
聡明でありながら、心は10歳の子どもという役を、
見事に演じきっていました。
貨物列車を使った大陸横断、警察の追いかけっこ、
ヒッチハイク、スミソニアンでのスピーチ、
どのシーンも超可愛くて、愛おしい。
一番好きなのはスピーチを含めたスミソニアンのシークエンス。
博物館の女の人の大人のヤダ味全開なのは最高だし、
TV司会者の空気読みまくりの司会芸もたまらない。
(拍手を煽るシーンの間は爆笑した)
ここではなく、もっと自分を受け入れてくれて、
自分にふさわしい場所を探す映画でもあるんですが、
そこにたどり着いたと思っても、
結局また何かが足りないと感じてしまう。
人生とはかくありなん…としみじみ。
心が荒んでいるそこのあなたにオススメです。

2014年11月18日火曜日

紙の月



桐島、部活やめるってよの吉田大八監督最新作。
結構前に公開を知ったので、
それまでに予習しようと思ってたけど、
結局過去作を見ることも無く鑑賞いたしました。
そんなことはどうでもいいんですが、
本当に本当に恐い映画で見終わった後味の悪さは、
今年イチかもしれません。(disじゃないです)
これはもうホラー映画だよ!
金という生々しさと人間の一瞬の隙をかけ合わせた結果、
胸が張りつめ続けて、軽くエズくレベルの仕上がりでした。
宮沢りえが演じるリカは銀行で働く契約社員。
個人の資産運用の営業を担当しています。
結婚していて、子どもはおらず、旦那と2人暮らしの、
どこにでもいそうな、ごく普通の主婦。
彼女が営業で訪れたおじいさんの孫と、
ひょんなことから不倫関係に陥り、
会社のお金を横領してしまい…というお話。
主人公は宮沢りえ演じるリカ。
真面目でどこにでもいそうな人でも、
一旦悪の道に手を染めてしまうと、
取り返しのつかない事態になってしまうのが痛々しい。
すげー悪そうな人が悪いことするのは、
咀嚼できるんだけど、そんな風に見えない人が、
自分の欲望の赴くがままに横領を進めていくんだから、
見ている自分に起こるのでは?と思わさせる、
ライド性の高さも本作の魅力だと思います。
うわ〜と思ったのが、最初に会社のお金に手を付けるシーン。
買い物の際に手持ちが足りなくて、
営業で回収したお金を一時的に借りて、
後で銀行でおろして元に戻すという作業。
お金には目印が付いている訳じゃないから、
戻せば本人以外は誰も気付かない。
けれど、得体の知れない背徳感に襲われる。
こんな経験は皆にあるのではないでしょうか?
何が彼女を狂わせたかといえば、愛なんですな〜
不倫相手は池松壮亮が演じているんですが、
あのテディベア感というか年上女性キラーっぷりを
いかんなく発揮していました。
この2人の不倫関係が始まるシーンは、
明確な動機が見えない作りになっているんですが、
監督のインタビューを聞くと、
それはわざとそうしているみたいで、
男女の愛に明確な理屈が存在しなくても、
結果的にそうなった勢いというものが描かれています。
それに至までの映像の積み重ねがあることで、
観客が自然に入り込むことができる。
とくに一連の地下鉄のショットは素晴らしくて、
階段で足見えたとき、来るんだろうなと分かっていながらも、
「キター!」と思わず言いたくなりました。
(電車内でお互いを見つめ合うショットも印象的)
一旦始まってしまうとノンストップ。
安そうなラブホテルで始まった2人の不倫の舞台が、
ラブホ→シティホテル→スイートルームと発展していったり、
着るものが少しずつ変わっていくんんですが、
これは消費が行動を表すという、伊藤聡さんの、
「ボヴァリー夫人」紹介でまさに説明されていたところ。
スイートでのキャッキャシーンは甘酸っぱいんですが、
帰る朝のショットが一気に青を基調にした色味になる、
光の使い方も「夢は終わり!」って感じで、
オモシロいなぁと思いました。
当然ずっとうまくいく訳もなく、
小林聡美演じる仕事場の先輩の詮索が始まる。
彼女がまた40〜50代特有の縄張りババアを
イイ感じにイヤなバイブス全開で素晴らしかったなぁ。
リカは預金をだまくらかす所から始まり、
証書の偽装まで始めてしまう。
夫の中国転勤も伴い、自宅で偽装作業を行い始めるんですが、
そのDIY感が最高で、ドラッグ工場みたいに見えるのがオモシロい。
音楽もかなりフレッシュで、打ち込み系のPOPめなサウンドや、
英語詞の歌ものを使ったりしていました。
後半にかけてはバレる/バレないサスペンスと化し、
徐々に自転車操業も限界を迎える。開き直りと絶望の狭間。
子どもの頃のエピソードとシンクロさせつつ、
金の出所と行き先を描き、広い意味での「施し」というテーマへ。
これは僕ら友人界隈でいつも揉める、
「チャリティーサークルの募金活動」という話に似ていて、
こんな描き方もあるんだなーと。
そして、ずーっと緊張感を煽ってきたところで、
物理的なカタルシスを迎えるところで完全にノックアウト。
本当に素晴らしい映画でございましたが、NORIKIYO曰く、
「いつも大抵は金金金、
ジョジョに言わせてみ?やれやれだぜ!」

2014年11月16日日曜日

ザ・ゲスト



アダム・ウィンガード監督最新作。
前作のサプライズが個人的にスマッシュヒットだったので、
最新作も見ておこうということで見ました。
終盤の設定の無理くり具合は少し残念でしたが、
全体的に見ればオモシロかったと思います。
少しバカバカしい設定もタイトルの出し方とかを踏まえると、
メタ視点でのジャンク感の演出なのかなーと。
本作も「ナメてた相手が実は殺し屋でした」シリーズに
分類されるような内容で、一体今年は何本見たのか…
冒頭、主人公のデビッドが荒野を走るシーンから始まり、
いきなりチャチなタイトルどーん!と出て、

あぁ嫌いじゃないよ、この感じ!と思いつつスタート。
彼が訪れるのは4人家族のところで、長男が戦死しているんですが、
その長男とデビッドは友人関係で、弔問として訪れます。
彼は長男から家族のことを頼むといわれ、
それを実行しにきた義理堅い男。
しかも、言葉使いは丁寧で、筋骨隆々、顔は男前という、
非の打ち所がないナイスガイ。
はじめは1泊だけのつもりが、彼のことを家族は歓迎し、
何日か泊ることになり、家族を救おうとして…という話。
家族はそれぞれ悩みを抱えていて、
それを聞いたデビッドは長男の遺言に従い、
自分の力を行使し、その悩みを1つ1つクリアにしていく。
次男は学校でいじめの被害にあっているんだけど、
気が小さく反撃できない。
手始めにデビッドがそいつらを血祭りにあげるところから、
彼がただ者ではないことが判明します。
このシーンが「ナメてた〜」映画として、
模範解答のような展開で最高でした。
学生相手なのに一切容赦ないところが笑えました。
お父さんは部長が入社4年目のやつになって、
途方に暮れてたんですが、さっくりそれも殺しちゃう。
娘は特に悩んでいる訳ではないけれど、
彼氏がドラッグディーラー
デビッド判断で「これはあかん!」となり、
周到な作戦で彼氏と娘の仲を引き裂く。
パーティーから採石場までの作戦の流れは、
バイオレンス、エロス含め好きでした。
とくに採石場での銃撃シーンは
心の中で「ダメー!」と叫んでいました。笑
娘がデビッドの素性を疑い始めてからは、
家族へデビッドの暴力の魔の手が忍び寄る。
ミリタリーポリスが到着してからの銃撃戦は、
もろにサプライズを想起しました。
室内アクションはカットの割り方を含め、
やっぱり上手いなーと思いました。
容赦ない銃弾の雨あられも好きでした。
この辺から設定がグズグズになるものの、
「皆殺しや〜」の勢いで突っ走る。
(ダイナーの爆破とかもろにそれ)
ラストは次男の学校で、娘、次男vsデビッドという構図に。
ハロウィンパーティーの会場が決戦の舞台となるんですが、
このシーンがとても良かったんですよねー
光の使い方、多面鏡、スモーク、音楽 etc...
ファンタジックな世界の中で、
遠慮のない暴力がガンガン見れて楽しい。
ラストのアノ展開はいかにもB級っぽい感じで、
もう1回タイトルどーん!で鮮やかな締め!
ジャンクな映画好きな人にオススメです。

0.5ミリ



映画館で予告編を見て、これは!と思い、
仕事を早退し、有楽町のスバル座にて見てきました。
初めてスバル座を訪れたんですが、
古き良き映画館!って感じでマジ最高なので、
映画好きな人はマストだと思います。
話が逸れましたが、肝心の中身といいますと、
超素晴らしかったし、超好きな映画でした!
3時間強という長過ぎる尺は少し気になりましたが、
描いている内容から考えると致し方なし。
見てるときにグサーっ!見終わった後にジワ〜
いつまでもこの作品の世界に身を浸していたい!
となる作品を見れて大満足。
主演は安藤サクラで、監督が姉の安藤桃子。
(原作は監督自身が書いた小説です。)
安藤サクラ演じるサワはヘルパーで、
ある日出入りしている家の奥さんに
「おじいちゃんと添い寝してやってよ」
と頼まれて、一晩をおじいちゃんと過ごすことに。
いざ夜になったら、おじいちゃんの滾る性欲が炸裂し、
揉み合いになり、火事は起こるわ、
おじいちゃんは死ぬわ、奥さんは自殺してるわ。
家、仕事、金のすべてを無くしたサワが、
色んな訳ありおじいさんを恫喝し、
勝手に身の回りの世話を行うことで、
日々の生活を営みながら、おじいさんの生態に迫る話。
大きく分けて3つのチャプターに別れてて、
1つ目は新喜劇コンビである、
井上竜夫、坂田利夫のシークエンス。
2つ目は津川雅彦シークエンス、3つ目は柄本明シークエンス。
尺が長いと書きましたが、どのシークエンスも
1本の映画を作れるくらいの内容。
まず、豪華俳優陣と安藤サクラのケミストリーが超オモシロい!
最初のカモとなるおじいさんが竜じいこと井上竜夫。
新喜劇以外のフィクションで見たこと無いし、
もろに竜じいなんだけど、妙にハマッてるんだよな〜
そっからの坂田利夫なんですが、これがさらなる衝撃で。
アホの坂田というステレオタイプなキャラ設定を逆手に取り、
かわいいおじいちゃんとして落とし込んできたのが最高。
さながら街を漂う妖精。お笑い芸人を使う必然性という点では、
奇跡の"まえだまえだ"使いに匹敵すると思います。
介護を始めとした社会問題をfeatureしてる映画なので、
後半にかけてはハードなトーンが増していくんだけど、
このシークエンスの多幸感たるや。。。
映画全体に漂う多幸感の演出の一つとして、
料理が異常に旨そうに見えるというのもポイント。
フードスタイリストとして参加しているのが、
監督の母親である安藤和津。
(父の奥田瑛二はExecutive Producer)
サワが作る料理がおじいさんとの距離を近づける、
ツールとして機能しているんですなー
このシークエンスで好きなのは酒のシーンと、
老人ホームまで行くシーンの風景。
物語の舞台は高知県なんですが、
街並み、山、海、どれを取っても美しい。
真っ白なスポーツカーで街を巡るんですが、
街の美しさが高濃度で抽出されていました。
老人ホームに入るところで別れるんですが、
明らかに別世界(天国?)のような描き方しているのは
アイロニーを込めているのかな〜と思いました。
スポーツカーを形見にもらったあとは、
津川雅彦シークエンス。彼は教師なんだけど、
エロ本を万引きしそうになったところを、
サワに目撃され、それをネタに脅されてしまい、
彼を家に受け入れてしまう。
この2人の丁々発止のやり取りがたまらない。
津川雅彦のむっつりスケベをイジるスタイル。
はじめはサワを嫌がるんだけど、
料理を始めとして、家事を華麗にこなしつつ、
寝たきりの奥さんの介護も担う彼女と徐々に打ち解ける。
不思議な距離感の関係性がたまらないのよねー
あと、このシークエンスはサワがめちゃくちゃ魅力的。
台所での立ち姿や一つ一つの所作が美しい。
料理をする姿を台所の窓から
津川雅彦が覗いているシーンが超好きです。
(風呂場覗きシーンは言わずもがな)
ここは老人介護をもっともフォーカスしてて、
色々考えさせられました。
要介護になった人は面倒な存在であるんだけど、
その人は瞬間瞬間を懸命に生きてるんですよと。
しかも、自分の親だったりすれば、
さんざん世話になっといて、施設に入れたり、
ないがしろにしていいのか…とかね。
そんなこと考えてたところにぶっ込まれるのが、
津川雅彦が語る戦争体験のシーン。
完全にボケた老人なんですが、
ワンカットの凄まじい迫力で語り倒す。
僕ら世代(20代)が口頭で戦争の酷さを聞いた
最後の世代になるのかも…という思いに馳せてました。
最後は柄本明シークエンス。
冒頭ヘルパーに行っていた家の子どもと出会い、
その父を柄本明が演じています。
そして、父の家に転がり込むことになります。
これまでと打って変わってハードな描写。
「そこのみて光り輝く」に近い世界観で、
安藤サクラ出演の過去作で見られた、
彼女のバイオレンス性を垣間見ました。
ずーっと彼女の背景が見えなかった中、
このシークエンスで彼女の口から
人との距離感に関するセリフがいくつか放たれる。
うどん屋のショットで見せる演出が素晴らしかったし、
セリフ自体にも共感しまくり。
結局べったりでもなく、よそよそしくでもなく、
お互いが少しだけ歩み寄れば、
世界はもっとbetterになるのでは?と思わされました。
あくまでサワは媒介であり、
多種多様なおじいさん達の人生から見えてくることを学び、
若い世代へ繋いでいくような形で物語は帰結していく。
かなり衝撃の展開が待ち受けているんですが、
セリフを極力排除し、カットの連続で事態を描くスタイルは、
かなり好感を持ちました。説明の押し引きが素晴らしいと思います。
ラストに高知の美しい風景と、
エンディング曲の残照の組み合わせで完全にサムアップ!
長いけれど、敬遠せずに見て欲しい素晴らしい映画。

2014年11月11日火曜日

サボタージュ



エンド・オブ・ウォッチのデヴィッド・エアー監督が、
シュワちゃん主演ということで見てきました。
トレーニング・デイの脚本の人で、
イコライザーを含め、今年はトレーニング・デイにまつわる、
男の星座が輝く年なのか!と夢想。
お話の構成が正直「えっ?」と思う部分はありましたが、
シュワちゃんがこれまで見たことの無い側面を見せていて、
憂いのある男を演じています。それ見るだけでも相当楽しい。
いわゆる麻薬捜査もので、警察vsギャングもしくは、
ギャングの内輪揉めが題材となることが多い中、
本作は警察内部の抗争をサスペンス仕立てで描いています。
エンド・オブ・ウォッチで見られた、
また、GoProを活用したアクションも見られました。
ここまで述べてきた要素の組み合わせが、
異常にFreshで楽しかったです。

シュワちゃんはDEAと呼ばれる麻薬捜査部隊のボス。
これまでの輝かしい実績から「神」と呼ばれる存在。
冒頭、ある女性が拷問されている映像を、
シュワちゃんが眺めているところから始まり、
タイトルがくり抜きで、
その背景に血で汚れた手を洗っている様子が映っている。
どう考えても陰惨な出来事が起こるんだろうなと
期待を煽るオープニングで掴みはOK
そっからテンポ良く最初の殴り込みシーンへ。
あきらかにカタギに見えない捜査官たちが、
麻薬密売組織の拠点へ突入。
手際良くぶっ殺しながら、マフィアの金を押収するんだけど、
その一部を下水道に隠してしまう。
捜査終了後、意気揚々と隠した金を回収しようとするものの、
誰かに奪われてしまっていて…という話。
金が無くなったことから当局から疑われるんだけど、
約半年の活動休止を経て、一線に復帰することに。
ブランクがあったチームはお互いを信頼できず、
うまくミッションをこなせない。
そこでシュワちゃんが訓練施設に忍び込み、
「オレだけは撃たないようにしろ」と指示。
からのシュワちゃん葉巻でどーん!が最高でした。
当局の次はマフィアということで、
報復と思われる事態が続き、チームのメンバーが殺されていく。
殺され方の陰惨さがハンパじゃなくて、
メキシカンスタイルだし、死体をしっかり見せてきます。
(肉片とか血とか臓物とかね)
特に2人目の「天井貼付け臓物垂らし」は、
捜索の過程およびエグ味込みで一番好きなシーン。
ここまできて、いつものシュワちゃん映画なら、
シュワちゃん無双で敵をぶっ殺して、めでたし!
となるところですが、そんなeasyな展開にならないのがミソ。
もちろん凄まじいガンアクションはあるんですが、
中盤はサスペンス要素が強くなり、
マフィアと捜査官と地元警察の駆け引きが描かれる。
冷静沈着にシュワちゃんが事態を掌握し、
自分の思い通りに進めていくのが本当に新鮮!
やればできるんやん!的な。
アクションは言わずもがなの仕上がりで、
手持ちカメラやGopro使いのアクションは
躍動感満載で、ハンパじゃない!
ってことがスクリーンからビシバシ伝わってきます。
後半にかけては仲間同士の信頼の話へシフト。
リンジーという唯一女性のキャラがいるんですが、
完全に夏木マリにしか見えなくて、
そんな彼女のクレイジーっぷりは素晴らしかったなぁ。
セダンの後ろに乗ってのカーチェイス銃撃シーンは大好きです。
ポイントポイントでは好きな部分がたくさんある映画なんですが、
シュワちゃんを筆頭に動機の見えない行動があり、
それが割とストーリーの根幹の部分なので、
「分からんでもないけど…」って感じで今イチでした。
しかし!それを補うだけのバイオレンスを堪能できるのでオススメ!

2014年11月10日月曜日

嗤う分身



ジェシー・アイゼンバーグ主演で、
ドフトエスキー原作がベースということで見てきました。
ダークな世界観が強い中でidentityがどういった形で、
定義されているのか?という哲学的な問いおよび、
自分で行動を起こすことの必要性や大切さを描いた、
素晴らしい映画でございました。
監督はリチャード・アイオアディという人で、
もとはロックバンドのMVを多数手がけており、
映画は2作目とのこと。(前作サブマリンが超見たい)
美術、衣装が無機質でダークなものに統一されていて、
テリー・ギリアムの未来世紀ブラジルを思い出したりしました。
identityの定義を揺さぶるディストピア物語。

ジェシー・アイゼンバーグ演じる、
主人公のサイモン・ジェームスは封建的な会社で働く、
どこにでもいそうなボヤーッとしたサラリーマン。
ある日、会社に行くと誰も自分のことを知らなくて、
赤の他人として扱われてしまう。
会社の同僚に恋しているんですが、
その同僚の向いに住み、ヒッチコックの裏窓ばりに、
彼女の生活を覗き見するだけで、
具体的なモーションをかける訳でもない。
なんとか自分の存在を取り戻そうと画策する中で、
ジェームス・サイモンという顔がそっくりの男が、
新入社員としてやってきて…というお話。
ドッペルゲンガーものといえば、
今年公開の複製された男という素晴らしい作品がありましたが、
寓話的なオモシロさでは近いかもしれません。
ドッペルものは最初の設定でオモシロさが決まるなーと
2作見て思いました。
ドフトエスキーの分身が原作で、
すでにベルナルド・ベルトルッチ監督の手で映画化済み。
それが1968年のことなんですが、
2014年現在のVFX技術を駆使した分身演出は、
日常ではあり得ない瞬間を見せてくれる意味で素晴らしい。
ジェシー・アイゼンバーグは当然1人2役なんですが、
目つきや物腰の違いで演じ分けているのはさすがだなぁ。
サイモンという男はボンクラ感満載で、
何やってもうまくいかない感じが笑えるし、少しイライラもする。
ドッペルゲンガーであるジェームスが、
「なりたい自分」として出現するのが辛い設定。
ジェームスに成果を横取りされてサイモンはカス扱い。
仕事はまだマシで女性関係が辛くて、
顔は同じだから見た目が原因という逃げが通用しない。
見た目の要素を排除してダメだということは、
中身がダメだという尊厳を踏みにじられること。
当然好きな女の子もジェームスに横取りされてしまう。
escapeできない閉塞したuncontrolな世界で
もがく姿は共感しました。原作未読なので、
どこまでベースにしているか分からないけど、
ドフトエスキーの先を見通す力が凄まじいのか、
人間は本質的に何ら変わっていないのか。
そもそも自分であることを証明するのって、
非常に難しくて、あくまで他者や社会があって初めて、
自分の存在が定義付けされるという、
日々生きていて絶対考えないことを考えさせられました。
閉塞さを感じさせる方法として、
前述したとおり、舞台設定が特殊でとにかく陰鬱。
常に室内か、夜しか描かれなくて、
光の使い方が意図的なんだろうなーという印象を受けました。
会社も大佐という人を中心とした封建社会で、
時代設定や舞台設定が一切分からない。
どこか分からない=どこにでもある、
という二面性ってことなかなーと思ったり。
音楽も特徴的で坂本九、ブルーコメッツの昭和歌謡が
劇中で象徴的に使用されてたり、エンディングは韓国の曲。
すげーイビツなんだけど、超かっこいい。という絶妙なバランス。
ずっとドッペルのジェームスに舐められてきたサイモンが、
能動的に逆襲の行動を取る訳ですが、kill myself steeloで、
見ながら「あぁ…」と言いたくなるぐらい哀しい。
映画の冒頭と繋がる円環構造なんですが、
本来の自分をget backしたと言えるのか…
ラストにかけては人によって解釈は分かれるかも。
ドフトエスキーの原作を読んでみたいと思います。

2014年11月8日土曜日

エクスペンダブルズ3



2を念のため予習して鑑賞しました。
最高っ!に楽しかったです。
もはやプログラムピクチャーの部類に入るもので、
最終的にエクスペンダブルズが勝って打ちアガるという
フォーマットの中で監督それぞれの色があってオモシロい!
今回はホモソーシャルな関係性を打ち出しつつ、
若者とオジさんの世代間ギャップも描きつつ、
エクスペンダブルズシリーズの本質に迫る
「なめんなよ!オジさんを!」スタイルで楽しめました。
冒頭、前作と同様に脱獄援助から始まるんですが、
これが一般的な映画ならラストでもおかしくない形の、
超ド派手アクションシーン!
しかも、それが本シリーズ初登場となる、
ウェズリー・スナイプスの独壇場なんだから大興奮。
ひげボーボーで暴れ回る姿が本当に凄まじくて、
刑務所ボカーン!タイトルどーん!でツカミは抜群。
スナイプスは1作目で出る予定だったけど、
脱税で捕まったことから、やっと出演できた訳ですが、
そのいじりも劇中に盛り込まれていました。
(機内でのひげ剃りも最高っした)
脱獄したその足で、いつも通りCIAの下請け仕事へ。
今回はCIAの窓口がブルース・ウィルスではなく、
リチャード・ギアになっているところもオモシロくて、
「もうアイツはいらへんのや」と言うところとかニクいね〜
年取り過ぎやろ…とか思っていたら、後半で炸裂してました。
武器商人をぶっ殺そうとしたら、
それがex-エクスペンダブルズのメルギブソンやないか!
となって、彼にエクスペンダブルズがボコボコにされる。
メルギブがあまりに強過ぎたために、
「オレとおっても、こいつらは幸せになられへんわ」
とスタローンは思いやり、エクスペンダブルズの解散を告げる。
このシーンが完全に別れるカップルにしか見えないんですよね。
とくにステイサムの食い下がる感じとか、完全に女子。
そして、解散したスタローンが取る行動が、
「命知らずの若者をヘッドハントや!」
完全にラブストーリーで、長い付き合いの彼女をふって、
若くてカワイイ女の子を紹介してもらう。
若者たちとメルギブ退治に行くところで、
エクスペンダブルズのメンバーが、
先輩風ビュンビュン吹かすシーンは、
若者vsオジさん、元カノvs今カノの二重構造になっていて、
もうニヤニヤが止まらない。
一旦メルギブを生け捕りにするシーンは、
最近のスパイものさながらで、
スタローンがついていけないくだりもオモシロかったなー
メルギブの逆襲にあい、今カノ達が拉致られてしまう。
スタローンが1人で彼らを救出しようとするところへ、
アントニオ・バンデラスが登場。
超おしゃべり糞野郎でイイ感じにUZAI
そして、エクスペンダブルズの面々も
「しゃーないなー」と言いながら助太刀してくれる。
この面々が登場するシーンは、来るのは分かっているけど、
ウオー!ってなること間違いなし!
今カノ達を無事に救出したあとは、
元カノと今カノが協力しながら、メルギブ軍隊とバトル
さらにリチャードギアがヘリで参戦し、
そこにはスタローンとジェット・リーが乗っているという、
もうお腹いっぱいだよ…という展開。
それぞれ、しっかり見せ場があるので、息つく暇無し。
ヘリに豪華俳優がすし詰めになってるのは笑えたなー
ただメルギブとスタローンの一騎打ちが、
意外にあっさりし過ぎてて、なんだかなぁって感じでした。
あと、俳優のギャラでお金がなかったのか、
CGが素人目に見ても安っぽくて残念…
そんなことは些細な話で、最後は皆で打ち上げ!
今回はかなり長めで見所が多い。
とくにビビったのは、
シュワちゃんとジェット・リーの関係性。
確信犯やないか!と心の中で叫びました。
ラストは若者たちはNeil Young のOld manを、
カラオケで歌って見事に締める。
こんなもん家でDVDで見てもしょうがないから、
絶対劇場でオジさんパワーを体感した方がいいよ!

2014年11月5日水曜日

ニンフォマニアック vol.2



vol.1を見たので、当然の如くvol.2も見てきました。
前作はバージンキラーのジェロームと再会し、
愛に近づくものの、不感症に陥るところで終わり、
どういった落とし方なのかなーと思ってましたが、
ラース・フォントリアー監督らしく、
きっちり救いのない形なのは当然のことながら、
斜め上から鋭角に殴られたような気持ちになりました。笑
ただニンフォマニアックはこれまでの作品に比べ、
精神的に追い込まれるヤダ味成分は少ないと思います。
スクリーン上で展開される描写が、
あまりに衝撃だからっていうのもあるんだろうけど。

主人公のジョーは不感症になるものの、
ジェロームの子どもを授かり、その出産から物語はスタート。
不感症、出産、この2つがこれまでの奔放なSEXライフと、
決別するキッカケとなります。
はじめは真面目に子どもを育てようとするものの、
生粋の色情狂である彼女の性欲はuncontrol.
なんとか性感を取り戻す生還活動として、
手始めに英語も通じない黒人とのSEXに挑む。
このシーンがかなりコミカルで好きでした。
通訳の人がSEXするための交渉させられる不憫さ、
2人の黒人がtimpoをelectしながら、
どっちがどっちの穴に入れるか議論してるんだっていう、
ジョーの見立て含め、くだらね〜っていう。笑
結果的に性感帯をget backできなかったので、
次や!ということでSMの道へ。
本作はこのシークエンスが一番長く感じました。
また狂ったNEWキャラ、生粋のサディストKというのが登場。
一切目が笑ってなくて、何かの儀式かのように、
ジョーに鞭をふるいまくる。
縛り上げるだけ縛り上げて、
「尻の高さがなんかちゃうな〜やっぱ今夜はやめや」
という焦らしプレイを見せつけてきます。
いざ鞭を打つんですが、その淡々さ、生々しさは、
筆舌に尽くしがたいので、自分の目で確かめてください。
SMは基本的に深夜営業なので、
必然的に子どもを置いていくことになるんですが、
セルフオマージュでアンチクライストと同じ形で、
悲劇が起こりそうになって…というくだりもありました。
すべてを失い、カタギとしても働けないことに気付いたジョーは、
借金取りという裏稼業の道へ。
覚悟を決めたジョー役のシャルロット・ゲンズブルーの、
虚ろな表情が何とも言えない案配。
完全にダークサイドに落ちいった彼女は、
仕事で着々と成果を挙げていくんですが、
ここでも名ギャグが飛び出し、timpo嘘発見機で、
債権者の隠れた性癖を見つけるというね。
張りつめた空気の中でアホなことやるのって、
本当におもしろいよなーと改めて思いました。
名タッグであるウィレム・デフォーがマフィアのボス役で、
「自分もう歳やから、後継者を用意したほうがええで」
といわれ、親が犯罪者の孤児を引き取ることになる。
はじめは懐いてくるんだけど、ジョーが引き取った真相を明かし、
借金取りの仕事を手伝うようになり、徐々に歯車が狂いだす。
債権者でジェロームが再び登場したところから、
冒頭のシーンへの帰結は口ぽかーんでした。
逃れられないカルマとでもいうべき関係性は圧巻だったなー
カウントスタイルを見せつけるというギャグもしっかりと。
今回聞き手のオジさんは前半で衝撃の告白をぶちかまし、
前作同様、ジョーの話を意味があるのか、無いのかが
よく分からない例えで話しを肉付ける役割を担う。
なんだけど、最後の最後でボムが炸裂!
「にーんげんってやーだーなー」と歌いたくなる仕上がり。
食いごたえばっちりの映画でございました。

劇中歌の解説は人の心を失った人のブログを参考に→リンク

2014年11月4日火曜日

エクセペンダブルズ2


3作目公開に合わせて、未見だったので見ておきました。
正直、1は全然乗れなかったなぁという印象だったんですが、
本作はかなり楽しめました。
なにが前作と変わったのか、理解しきれてないですが、
大脱走、リベンジマッチといずれもスタローン主演の、
エクスペンダブルズ系ロートル大活躍作品について、
僕自身が楽しみ方を覚えたのかもしれません。笑

何が一番好きだったかと言えば、
前作はキャメオ出演に終わったシュワちゃんとブルース・ウィルスが、
2人揃って銃撃戦をするシーン。
最初はスタローンと3人で登場し、空港を血の海に変える訳ですが、
途中でスタローンは今回の敵ボスであるバンダムをぶっ殺しにいく。
そこから2人で共闘する訳ですが、
シュワちゃんの武器がターミネーターさながらのショットガンなのにアガるし、
Ill be back」いじりも最高。
2人で小型の車に乗り込み、ドアをひっぺがして、
ミナゴロシにするシーンは快・感!と思わずいいたくなる仕上がり。
そこに無敵のチャック・ノリスも助太刀するんだから言うことなし!
物語の辻褄とかどうでもよい作品と割り切っちゃえば、
他の要素が最高に魅力的なので楽しめると思います。
3作目が楽しみになりました。

2014年11月2日日曜日

トム・アット・ザ・ファーム



わたしはロランスを撮ったグサヴィエ・ドラン監督最新作。
ロランスは劇場で見逃したので、今回は劇場で!
と、気合いを入れて見てきました。
ロランスとは全く異なるサイコスリラーでしたが、
めちゃくちゃオモシロかったです。
まだ25歳というんだから、末恐ろしい話です。
見ているときに近いなぁと思ったのは、
ヒッチコックの作品群。とくにサイコですね。
そのぐらいの衝撃を受けることは間違いないです。
主人公は監督のドラン自身が演じるトムという青年。
舞台はカナダで、トムはモントリオールで広告の仕事をしている。
ギョームという同僚が亡くなってしまい、
その葬儀でケベック州の田舎を訪ねる。
この2人の関係はただの同僚ではなくゲイカップルなんだけど、
実家ではその事実は隠されていて、
サラという女の子が彼女という設定で…という話。
冒頭、青の絵筆で抽象的なことが白い布に書きつけられた後、
田舎町の空撮の映像とともに荘厳な音楽が流れ、
壮大な形で物語は始まっていきます。
壮大なのは初めだけで、中身は極めてミニマル。
主な登場人物はトム、ギョームの母、兄とサラの4人だけ。
葬儀で訪れたトムはギョームの実家に泊まり、
寝ていたところを兄のフランシスにいきなり襲われて、
「母にギョームとの本当の関係を話したらブチのめすからな」
と言われ、結婚式で優等生な弔辞をしろと脅される。
しかし、葬儀のときに感極まってしまい、
結局弔辞を述べないまま、葬儀は終了。
フランスシスは怒りまくりで、
トイレの個室で執拗なまでにビンタしたり、
トウモロコシ畑でトムをボコボコにしてしまう。
いわゆる閉鎖系村社会にトムは放り込まれてしまった訳です。
しかも、村社会の中でもさらに孤立した家族であることが
物語が進むにつれて分かってくる。
とにかく見ている間、ずっとハラハラさせられます。
出てくる人物の皆が良い意味で狂気を秘めていて、
明らかに異常なんだけど、魅力的なんだよなー
とくにフランシスはキャラが「マヂ強烈」で、
母親のコントロール下の暴力性ということから、
どうしたってサイコのアイツを思い出さずにいられない。
マチズモの象徴だなぁと思っていたら、
ラストにこれでもか!という形で回収されていました。
トムとフランシスの関係性が非常に官能的で、
2人が話す距離が異常に近い。
タンゴのシーンや夜の街でのシーンは、
うわぁ…って思わず言いたくなる。
そこに潜む艶かしさは何とも言えない味わい。
それぞれの欠損している部分を埋め合うかの如く、
トムはストックホルム症候群となり、
フランシスを支えるんだという気持ちに変化していく姿は、
こうやって取り込まれていくのか…と。
物語自体もサイコスリラーでヒッチコックぽいんですが、
あのバーナード・ハーマン臭漂う音楽でも、
その要素が補完されています。
あと撮り方もオモシロくて、
前半は引きのショットが多いんですが、
後半にかけてはクローズアップを多用して、
感情の高ぶりを煽ってきます。
とくに4人がギョームの思い出の品を取り囲むシーンは、
母親の怪演ぶりも含め、とても好きでした。
家の外でのトムとフランシスのシーンでは、
ワイドで撮っていて、躍動感に満ちあふれている。
最後のescapeとなるきっかけが、
たまたま入ったバーで聞くエピソード。
恐えーよ!と思わず言いたくなる。
その後、ガソスタで「あいつもしかして…」の
焦らし演出も素晴らしかったなぁ。
こいつは相当いい」と5lackばりに言いたくなる、
本当に素晴らしい作品なので是非!