2014年11月16日日曜日

0.5ミリ



映画館で予告編を見て、これは!と思い、
仕事を早退し、有楽町のスバル座にて見てきました。
初めてスバル座を訪れたんですが、
古き良き映画館!って感じでマジ最高なので、
映画好きな人はマストだと思います。
話が逸れましたが、肝心の中身といいますと、
超素晴らしかったし、超好きな映画でした!
3時間強という長過ぎる尺は少し気になりましたが、
描いている内容から考えると致し方なし。
見てるときにグサーっ!見終わった後にジワ〜
いつまでもこの作品の世界に身を浸していたい!
となる作品を見れて大満足。
主演は安藤サクラで、監督が姉の安藤桃子。
(原作は監督自身が書いた小説です。)
安藤サクラ演じるサワはヘルパーで、
ある日出入りしている家の奥さんに
「おじいちゃんと添い寝してやってよ」
と頼まれて、一晩をおじいちゃんと過ごすことに。
いざ夜になったら、おじいちゃんの滾る性欲が炸裂し、
揉み合いになり、火事は起こるわ、
おじいちゃんは死ぬわ、奥さんは自殺してるわ。
家、仕事、金のすべてを無くしたサワが、
色んな訳ありおじいさんを恫喝し、
勝手に身の回りの世話を行うことで、
日々の生活を営みながら、おじいさんの生態に迫る話。
大きく分けて3つのチャプターに別れてて、
1つ目は新喜劇コンビである、
井上竜夫、坂田利夫のシークエンス。
2つ目は津川雅彦シークエンス、3つ目は柄本明シークエンス。
尺が長いと書きましたが、どのシークエンスも
1本の映画を作れるくらいの内容。
まず、豪華俳優陣と安藤サクラのケミストリーが超オモシロい!
最初のカモとなるおじいさんが竜じいこと井上竜夫。
新喜劇以外のフィクションで見たこと無いし、
もろに竜じいなんだけど、妙にハマッてるんだよな〜
そっからの坂田利夫なんですが、これがさらなる衝撃で。
アホの坂田というステレオタイプなキャラ設定を逆手に取り、
かわいいおじいちゃんとして落とし込んできたのが最高。
さながら街を漂う妖精。お笑い芸人を使う必然性という点では、
奇跡の"まえだまえだ"使いに匹敵すると思います。
介護を始めとした社会問題をfeatureしてる映画なので、
後半にかけてはハードなトーンが増していくんだけど、
このシークエンスの多幸感たるや。。。
映画全体に漂う多幸感の演出の一つとして、
料理が異常に旨そうに見えるというのもポイント。
フードスタイリストとして参加しているのが、
監督の母親である安藤和津。
(父の奥田瑛二はExecutive Producer)
サワが作る料理がおじいさんとの距離を近づける、
ツールとして機能しているんですなー
このシークエンスで好きなのは酒のシーンと、
老人ホームまで行くシーンの風景。
物語の舞台は高知県なんですが、
街並み、山、海、どれを取っても美しい。
真っ白なスポーツカーで街を巡るんですが、
街の美しさが高濃度で抽出されていました。
老人ホームに入るところで別れるんですが、
明らかに別世界(天国?)のような描き方しているのは
アイロニーを込めているのかな〜と思いました。
スポーツカーを形見にもらったあとは、
津川雅彦シークエンス。彼は教師なんだけど、
エロ本を万引きしそうになったところを、
サワに目撃され、それをネタに脅されてしまい、
彼を家に受け入れてしまう。
この2人の丁々発止のやり取りがたまらない。
津川雅彦のむっつりスケベをイジるスタイル。
はじめはサワを嫌がるんだけど、
料理を始めとして、家事を華麗にこなしつつ、
寝たきりの奥さんの介護も担う彼女と徐々に打ち解ける。
不思議な距離感の関係性がたまらないのよねー
あと、このシークエンスはサワがめちゃくちゃ魅力的。
台所での立ち姿や一つ一つの所作が美しい。
料理をする姿を台所の窓から
津川雅彦が覗いているシーンが超好きです。
(風呂場覗きシーンは言わずもがな)
ここは老人介護をもっともフォーカスしてて、
色々考えさせられました。
要介護になった人は面倒な存在であるんだけど、
その人は瞬間瞬間を懸命に生きてるんですよと。
しかも、自分の親だったりすれば、
さんざん世話になっといて、施設に入れたり、
ないがしろにしていいのか…とかね。
そんなこと考えてたところにぶっ込まれるのが、
津川雅彦が語る戦争体験のシーン。
完全にボケた老人なんですが、
ワンカットの凄まじい迫力で語り倒す。
僕ら世代(20代)が口頭で戦争の酷さを聞いた
最後の世代になるのかも…という思いに馳せてました。
最後は柄本明シークエンス。
冒頭ヘルパーに行っていた家の子どもと出会い、
その父を柄本明が演じています。
そして、父の家に転がり込むことになります。
これまでと打って変わってハードな描写。
「そこのみて光り輝く」に近い世界観で、
安藤サクラ出演の過去作で見られた、
彼女のバイオレンス性を垣間見ました。
ずーっと彼女の背景が見えなかった中、
このシークエンスで彼女の口から
人との距離感に関するセリフがいくつか放たれる。
うどん屋のショットで見せる演出が素晴らしかったし、
セリフ自体にも共感しまくり。
結局べったりでもなく、よそよそしくでもなく、
お互いが少しだけ歩み寄れば、
世界はもっとbetterになるのでは?と思わされました。
あくまでサワは媒介であり、
多種多様なおじいさん達の人生から見えてくることを学び、
若い世代へ繋いでいくような形で物語は帰結していく。
かなり衝撃の展開が待ち受けているんですが、
セリフを極力排除し、カットの連続で事態を描くスタイルは、
かなり好感を持ちました。説明の押し引きが素晴らしいと思います。
ラストに高知の美しい風景と、
エンディング曲の残照の組み合わせで完全にサムアップ!
長いけれど、敬遠せずに見て欲しい素晴らしい映画。

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