2023年4月30日日曜日

くもをさがす

 

くもをさがす/西加奈子

 西加奈子新刊出たんや〜と本屋で気づいたものの、また今度でいいかとスルーしてアメトーークの読書芸人見てたら乳がんの闘病をつづったノンフィクションと聞いて即買った。まさか彼女が乳がんになっていたなんて…と読む前から結構ショックだったけど、読んだらもう圧巻の内容であり彼女にしか書けない話のオンパレードで心に沁みた。

 カナダに移住した彼女が乳がんになってから回復するまでが克明に記録されている。がん患者の方の話はテレビなどで見かけることはあるが積極的に聞く機会がないので、こうやって本で読むと知らないことだらけで驚いた。特に治療が終了し転移がないことが確認できたとしても不安が常につきまとう、という話は言われないと分からない話だった。登場人物もちゃんと名前があって変にボヤかしてないのでリアルだし、抗がん剤治療の薬の名前などもしっかり書かれておりサバイバーとしてこの経験を伝えなければならないという気持ちがビシバシ伝わってきた。

 異国の地でがん治療を行うことの無理ゲーっぷりが想像以上であり日本がどうして長寿大国なのかと言えば医療環境、保険が充実しているからなんだと思い知った。そんな過酷な環境の中、何度もくじけそうになりながらも一歩一歩階段を登るように治療に励む姿は読んでいるこちらも疲弊してくるレベル…そんな中で家族、友人、医療関係者などの存在、そして優れた本と音楽が彼女の支えになっていて、お金で簡単に買えない資産が人生でいざというときに大切なのかもしれないとも感じた。

 小説のときと同じく文章のうまさは本当に素晴らしくて読む側がページをめくるたびにドライブさせられる。カナダの現地の方のセリフが全部関西弁になっている点がオモシロかった。カナダの割と自由なノリがいわゆる適当な大阪的ノリに近いのもあると思うが、それよりも英語を方言で解釈していくと重たくならず、カジュアルなニュアンスが出て気を楽にする効果もあるように感じた。それは著者および読者の双方にとって。

 最新作の夜が明けるでも書かれていた、日本を客観視した場合の論考は本著にも記載されている。狭い国の中でせかせか働いて皆の余裕がない、という話なんだけども、その余裕のなさが結果的に生む十分なサービスは医療関係にも同様のことが言える。カナダであれだけ辛い医療状況を経験したにも関わらず、「余裕がないことは良くない」と言える胆力は自分にはないので恥ずかしくなった。読み終わってから、命がかかってでも理想は理想で持ち続けることができるのか?と自問自答している。いつも芯をくいまくった体重全部乗せなラインがあるが今回はこれ。この経験は小説にもフィードバックされるだろうから次にどんな作品を書くかとても楽しみになった。

乳房を失った私の体が、今の私の全てであるように、欠けたもののある私の文章は、でも未完成ではない。欠けたもののある全てとして、私の意志のもと、あなたに読まれるのを待っている。そこにいるあなた、今、間違いなく息をしている、生きているあなたに。それは、それだけで、目を見張るようなことだと、私は思う。

2023年4月28日金曜日

SNSの哲学

SNSの哲学/戸谷洋志

 久しぶりに本屋をぶらぶらしたときに見かけて買った。SNSとの付き合い方や有効活用については具体的なハウツー本がほとんどの中、本著はその手前の話。つまりSNSとは何か?を著者の領域である哲学を踏まえつつ実直に考えることで付き合い方を再考させてくれる。最近Twitterのおすすめタイムラインに脳を持っていかれる傾向があったの精神衛生上役立った。

 哲学との絡め方、口語調で子どもなどにも分かりやすい文体が相まって腹落ちしやすいのが優れており、特にどうして夢中になってしまうのか因数分解されている点が素晴らしいと思う。普段SNSを使うときって何も考えずにとりあえず見ていることがほとんど。そこで一呼吸置いてそもそもなぜ見たいのか?何の情報を得たいのか?を考えるようになった。

 SNS自体があまりにも生活の中の当たり前のツールになってしまったため客観的に考えることが難しい中、学問としての哲学が機能することをまざまざと見せつけられた。やはり先人の知恵は偉大である。一方的に「使うのは良くない!」と言うよりも本著は100倍効果的だと思うので学校で課題図書になればいい。

2023年4月26日水曜日

2023年4月 第3週

Reaching Out by Spray

 いつもAOMG mixや自身のYoutubeチャンネルで公開しているミックスが最高な漢、Sprayのアルバムがリリース。めちゃくちゃ完成度が高いし音楽のインプットがアウトプットにきっちり反映されているんだなと感じる作品。先行シングルは2曲ともバラードだったものの、アルバムには正統派ブームバップも入っていて、なおかつそれがDON MALIK & Kid MilliとLeellamarzというのがアツい。が、本作のハイライトはMVにもなった”Mans Like” 超絶ブチ上がり系ヒップハウスで曲レベルだと今年1、2を争うくらいに好きだった。なんでMVがこんな回転数低いのかマジで意味不明。

FLEEKY SEASON by Lil Moshpit & Fleeky Bang

 SMTM11で一番ブレイクしたFleeky Bangが初めてまとまった作品をリリース。彼はUNEDUCATED KIDが作ったDIRTY PLAY RECORDSに所属することが発表されている。しかも本作はGroovyroomのHwi-minのソロ名義であるLil MoshpitとのコラボEP。ということで完璧なお膳立ての元、とてもかっこいい作品となっていた。ドリルのラッパーで短命に終わるのを避けるためかトラップのビートもあり作品として考えられているし、H1ghr人脈での客演もありバラエティ豊かな仕上がり。Lil Moshpitのビートは前作のアルバムでも超ヤバかったけど、今回もdopeなビートだらけで最高。それに呼応するようにFleeky Bangのフロウも変化しているし、フックで歌っていたりして引き出しが増えていた。一番好きな曲はSMTM11で同じチームだったGONEISBACKもビートに参加している”The Sun” 言ってしまえばトラビスなんだけど、この完成度の高さは上がらざるを得ない…

¥OUNG MIGUEL by ¥OUNG ARM¥ & KUYA MIGUEL

 先日出たアルバムも最高だったKUYA MIGUELと¥OUNG ARM¥によるジョイントEP。西海岸のGなスタイルがやっぱり最高。4th coast がウェッサイなのか。アルバム内の1曲でこういうテイストの曲をやっているケースあるけど、EPとかアルバム全体でスタイルを突き通しているケースをあんまり聞いたことがなく新鮮だった。好きな曲は大ネタを新たに調理した”Shake It”

No Idols by Domo Genesis & The Alchemist

 ハードワーカーすぎるAlchemistが次にタッグを組んだのはOdd future系列のDomo Genesis。『Genesis』以来聞いていないなと思ったけど、コンスタントにリリースはあり去年はアルバムも出している。あとTylerの新しいアルバムにも参加していたのが記憶に新しい。ゴリゴリのアルケミビートでスピットする系でとてもかっこよかった。ゲストがとにかく豪華で同じアルバム内にTylerとEarlがいるって何年振りよ!という話だし、残りのメンバーも渋いメンツでザ・ラップアルバムとなっている。Larry Juneのも最初聞いたときはまたこのパターンかと思ったけど結局聞きまくっており、やっぱアルケミのビートはマジックがある。好きな曲は”Me and My Bitch”

Hot Shot: Gangsta Grillz by G Perico & DJ Drama

 またDJ Dramaかよ感がハンパないが、これが2023年のG FUNKって感じでめちゃくちゃ好きだった。どの曲もビートがとにかく好きで808のドラムの上にサックス、トランペットの上ネタが最高に心地よい。こういうインスタントなムードの上ではDramaのシャウトが映えて、あの頃のミックステープを思い出させてくれるので良かった。好きな曲は”German Engineering”

A New Thing by Madison Ryann Ward

 LIDOが1曲目をProduceしているらしく、それで知った。王道といえば王道のポップスなんだけど後半のブレイクビーツ主体の曲の多さにアガった。しかも22曲67分という構成もCDかよ!的なボリュームで良い。あんまり詳細がネット上にないのだけども、朝の準備するときに大変お世話になった。好きな曲は”Unknown”

2023年4月25日火曜日

星に仄めかされて

星に仄めかされて/多和田葉子
 

 以前に読んだ地球にちりばめられての続編があると聞いて読んだ。SFと純文学の狭間な雰囲気が独特で、前作同様演劇を見ているような感じで楽しめた。

 各登場人物の視点で順番に物語が進んでいく構成になっており、今回の舞台となる病院のメンバーが新たに登場人物として追加された。恋心を含めた人間関係が複雑に入り組みながら、よく分からない話が転がっていくところが興味深い。コペンハーゲンにある病院へとりあえず全員集合していくのだけど、その過程で各人の感情が著者の比喩を駆使して語られていき、そこには現状の社会問題を含めた話もあったりで興味深かった。どうしても皮肉めいたラインに惹かれる。以下引用。

大きな自然災害があって、県庁や市役所の書類が大量に燃えたり流されたりして、戸籍の代わりに生存者ナンバーのようなものができたらしい。「生存者ナンバー」ではあまりに悲惨なのでこのナンバーは「家がなくなっても気にするな、大丈夫だ、元気を出せ」というメッセージを込めて「ドンマイ・ナンバー」という名前になった。

大きいビールを注文し、速い車に乗り、美味しい肉を食べ、美しい歌手をテレビで観る。それだけで満足してしまう人間は、自分の人生に欠けている形容詞のことなど考えてもみないだろう。

言葉を口にすれば、必ず誰かを傷つける。絶対に傷つけないように細心の注意を払って遠回しな言い方をすれば、誰を傷つけないために何を口にしないようにしているのが逆にはっきり輪郭をあらわす。

 最後に全員集まってしっちゃかめっちゃかなるのは前作を踏襲しているのだが、Susanooの露悪性が意外だった。さらぶそこで険悪になるわけではなくノアの箱舟的なエンディングになるのは予想外。「多様性」のくくりは安易なのではないか?という意図があると思うのだけど、それをロジカルというより感覚的にどっちらけにしてしまう大胆さがかっこいいと思えた。

2023年4月21日金曜日

三人の日記 集合、解散!

三人の日記 集合、解散!/植本一子 金川晋吾 滝口悠生

 著者の3人が同じ日に日記をつけて、それらがまとまった日記本。下北沢のBONUSTRACKの即売会で買って読んだ。同じ日の別の人の日記という観点でいえばブログを並行読みしているので毎日体験している。しかし互いに近い関係の3人の同じ日というだけで、これだけ体験が違うというのは驚きだった。遠いようで近い、なんとも言えない絶妙な距離感。

 三者三様に生活の機微が克明に描写されておりとてもオモシロかった。日記はどこまで書くのかが一つのキーポイントだと思うけど、本作ではその逡巡含めてかなり踏み込んで書かれている。ゆえに読んでいるときに眼前に「生活」が立ち上がってくるのが他の本では得られにくい体験なのかもしれない。SNSを中心にギスギスしているか、盛りまくりか?でリアルが見えにくい時代の中で各自が生活を営んでいることを知れる日記は一種のセラピーだと思う。

 個人的にはやはり男性目線の育児日記という稀有な視点がある滝口さんの日記が一番刺さった。今絶賛慣らし保育中で慣れるまでの過程が想像以上に辛い…そんな中で保育園、子どもを育てることをめぐる具体的なアレコレが書かれていて、こういうフェーズがいずれくると思えば頑張れるかと勇気をもらえた。

 植本さんの日記は過去の作品に比べると比較的穏やかな時間が流れているように感じた。日々の生活の中での思考過程がこれまでよりも表現されていて別の読み応えがあった。来月の新刊がかなり攻め込んだ内容のようなのでそちらも楽しみ。今回初めて読んだ金川さんの日記からは服装に関する自意識が刺激された。歳を取るにつれて心地よさや機能性を追求することで加速度的におじさん的な服装になりつつあるのだけど、服が持つ社会性に改めて気付かされた。

 特典で3人の書き下ろし日記のおまけ冊子がついていたのだけど、これがまた本編に負けず劣らずなスペシャルな内容が書かれているので絶対に冊子付きで入手できるところで買った方がいいと思う。

2023年4月18日火曜日

2023年4月 第2週 音楽日記

 With A Hammer by Yaeji

 Yaejiがついにフルアルバムをリリース。 しばらく聞いてなくてハウスのプロデューサーだと勘違いしていたけど、実際には広義のダンスミュージックをProduceする人であり本作ではそのスペクトラムの広さがよく分かる。Soundcloud発でXL Recordingsからフルアルバムを出せるアジアンがいるなんて本当にかっこいいと思う。好きな曲は”Happy”

Skinemaxxx(Side A) by Fly Anakin & Foisey

 Pink Siifu,Zelooperzと続いてFly Anakinも新作をリリース。ビートメイカーのFoiseyとのコラボアルバムとなっている。80sっぽいサウンドのサンプリングが多くて全体にシルキーなビートが多くて好みだった。好きな曲は”Blizzies With GoQuan”

Enigmatic Society by Dinner Party

 今週はCoachellaウィークエンドでちょこちょこ見ていたのだが、Dinner Partyも見た。そして、このアルバムが本当に素晴らしかった。現在のアメリカにおけるジャズミュージシャンのドリームチームといっても言いと思うのだが、ここに9th Wonderがメンバーにいることで単なるセッションバンドではなくヒップホップのビートへの深い愛、リスペクトを感じる作品になっている。前作に続きPhoelix、今回からArin Rayというシンガーをフィーチャーしており基本歌もの。首を振りまくってしまうこのビートの数々に上音で乗っかってくる凄腕ミュージシャンの演奏。一生聞いてられるなーという感じで無限リピートしてた。好きな曲は”For Granted”

Glorious Game by El Michels Affair & BLACK THOUGHT

 去年の Danger Mouseとのアルバムから短いスパンでアルバムをリリースしたBLACK THOUGHT。El Michels Affairというバンドとのコラボ作品となっている。El Michels AffairはWu-tanのバックバンドとかやっていて、そこからWu-tanのカバーアルバムを2012年にリリース。その中から”C.R.E.A.M”が『Chef』という映画で採用されており、今回調べて初めて知ったバンドだった。BLACK THOUGHTはThe Rootsというバンドでラップしているのに、何故別バンドと思うかもしれないが、バンドサウンドのテイストがかなり異なる。Wu-tanのカバーする感じなので、かなりベタなソウルフルさを押しにしており、今のThe Rootsでは絶対やらない音像なので必然性がある。 Danger Mouseとのアルバムはそこまで好きではなかったのだけど、本作は良質なソウルフルなヒップホップなので自分のストライクゾーンど真ん中でとても好き。好きな曲は”Protocol”

Monkey Off My Back by YUKSTA-ILL

 新たに自身のレーベルを立ち上げて、その再スタートにあたってのアルバム。めちゃくちゃかっこよかった。YUKSTA-ILLは華の1982年世代の中ではかなり燻銀だけど、今どきここまでストレートなヒップホップアルバムもなかなかない。巧みで長いライミングと独特のフロウがDOPEなビートとあいまって何倍にもなってカッコよく聞こえる。相乗効果スティーロ。Featも適材適所でWell-Done のプロレタリアートなリリックも最高だし、Bupponとのローカルレペゼンチューンもアツいし、なんといってもCampanellaとの再度の邂逅。曲名の”Experimental Laboratory”という名のとおり攻め攻めのスキルの応酬がたまらなかった。好きな曲はKojoeのビートでモーターシティをレップする”Motor Yuk”

Made in Japan by Tee

 ¥Ellow Bucks率いるTo The Top GangのProducerによるEP。タイトルどおり三味線っぽい音色で作られたビート中心でめちゃくちゃシンプルなビートが多いのでラップが映えている。猫も杓子もWatsonの最近だけども彼を迎えて”Japan”というテーマで曲をやるのはテーマを感じられたので良かった。とはいえやはり¥Bとの相性が素晴らしく”Asian Flow”がお気に入り。

Inside Me by AZU

 昨年のDADAとのアルバムも素晴らしかったAZUのEP。彼のラップ、歌を聞くと、昔ならバンドしていた人がHIPHOPを表現方法として選んでいるのだなと思う。シンギンスタイルは有象無象いる中で比較的ハイトーンの声色とリリックの率直さ、良い意味でのJっぽさがあるところが好き。RADWIMPS経由HIPHOP的な。今回のEPはドリルを取り入れており、日本でもドリルビートの上でシンギンスタイルかましていくのが流行りそう。好きな曲はノリに乗っているJin Doggを迎えた”Bill”

Chapter 1 by Taiyoh

MAISONDEのメンバーの1人。同じクルーのShurkn Papの目当てで聞いたらかなり良かった。サンプリングスタイルのドリルはなんでもアガるのだけど、BEPの”I Gotta Feeling”は目の付け所がシャープ!と思った。ドリルビートで聞くとなんでも新鮮になる。Gottzとの”5benz”は歌詞がオモシロくて好きだった。(「俺らJailより入るPlaylist」とかシンプルだけど聞いたことなくて良い)好きな曲はもちろん”I Gotta Feeeling”

ConverSession by 黒衣

 友人である黒衣のブランニューEPがリリース。完全にニューフェーズとなっていて、どの曲も素晴らしかった。なかでもエムラスタさんを招いた”脳内放浪記”はこれほどまでのRomancrewオマージュはなかなかないだろうという出来。ビート、ファルセットのフック、トピックどれを取ってもRomancrewが見えた。こうやってエッセンスが伝承されていくのがヒップホップだなと思う。他にもKenny Doesプロデュースの2曲は四つ打ち、トラップと黒衣の相性を見せていくスタイルでそれも良かった。こうやって友人たちがかましまくっていると勇気をもらえるので自分も年齢を言い訳にしないで色々頑張りたい。好きな曲はピアノが最高な”Session”

FRR by george

 今週一番聞いていた。georgeの初のフルアルバム。本当にハンパじゃない仕上がりで韓国のR&B、とくにネオソウル系の底力を改めて思い知った次第…ひとつひとつの音色をこだわっていてとにかく心地よく、例えばこれからの季節、これ聞きながらサイクリングするのとかめちゃくちゃ最高だと思う。MOONCHILDを彷彿とさせる。好きな曲は”ain’t no big deal”

Heaven by LEEBADA

 韓国HIPHOP、R&Bのポータルサイトで知ったLEEBADA。これもgeorge同じくChill系で良かった。PenomecoをfeatにGroovy roomがproduceというストレートど真ん中みたいな座組みの”High”が彼女の一番のヒットらしい。本作はバラード中心だけど、POPにいきすぎずR&Bのテイストがあるところが好き。一番好きな曲は”Sleep”

DIRTY PLAY by UNEDUCATED KID & Polodared

 UNEDUCARED KIDが新たに自らのレーベルを設立し、ファーストサイナーとして選ばれたのはPolodaredでその2人によるEP。(そしてセカンドサイナーはFleey Bang!!)Young and Rich Recordsはメンバーが増え規模が大きくなった中でフットワーク軽く自分の音楽をやるためなのかな?と思ったりした。内容としては当然滾る系のトラップやドリルなんだが、なんとPolodaredが歌っている曲もあって驚いた。SMTMで見た目以上に繊細だと露呈していたが、それも納得の優しい声だった。とは言え好きな曲は2人の魅力である叩きつけるようなラップが聞ける”Catch The Hands”

DIFF by COOGIE

 AOMGに移籍して初めてのまとまった作品。Coogieは韓国のラッパーで一二を争うくらいに好きで、ラップのフロウもシンギンスタイルも超ハイレベルなので、どんな曲でも最高になるのだが今回はダンスチューンに寄せた新基軸でこれまためっちゃよかった…レゲトン、アフロビーツ、レゲエドリルなど。ほとんどの曲のProduceにCordecという人がかかわっており、Blase、 Roh Yun Haまわりのビートを結構担当しているみたいで納得。フルアルバム超楽しみ。。。好きな曲はやはりレゲエドリルでFleeky Bang & Blaseの両人を呼んだバンガー”D.O.D”

2023年4月16日日曜日

公園へ行かないか、火曜日に

公園へ行かないか、火曜日に/柴崎友香


 最近小説読んでいないのでリハビリ的に読んだ。アイオワ大学のライティングプログラムに参加した話をつづった小説であり、虚実の境が曖昧で日記、エッセイ的な小説でオモシロかった。基本は世界中から集まった作家たちのある種のモラトリアム期間の記録というストレートなオモシロさが一番にくる。アメリカでの生活、参加者間のカルチャーギャップ、誰と何を話したかなど。著者は英語が話せないことを悔いている場面も多いが、それも含めてコミュニケーションの記録であり体験記として興味深かった。例えばこんな風。

目の前に確かにあるものと、人の意思や関係ややりとりで成り立っていることと、今自分と話している人が思っていること知っていること、私が理解していることが、常に少しずつずれていて、それがときどき重なったりつながったりして、いくつもの層のあいだを漂っているみたいに、暮らしていた。

 以前に滝口悠生さんによるやがて忘れる過程の途中という同じくアイオワ大学のライティングプログラムを題材とした小説を読んでいたので大まかな全体の流れは理解していたが、やはり作家が違えばこれだけ書き口、パースペクティブが異なることが興味深かった。一人称で書かれているのだけども、会話描写が少ないからなのか全体に距離を感じた。観察日記的とでも言えばいいのか。起こっていることと自分の考えの擦り合わせについてたくさん書かれている。特にトランプが大統領選で当選したタイミングで当時の現地の空気を日本の小説家の視点で読むのが新鮮だった。もしかすると距離を感じたのはトランプが生んだ分断の空気の影響もあるかもしれない。実際旅行者とはいえその風に晒されているような描写がいくつかあり、あの頃から世界は少しはマシになったのだろうかと考えたりもした。

 日本にいるだけでは、相対的な日本および日本語の価値や意味などが掴みにくい。アメリカで英語で周りの人たちとコミュニケーションを取る中で著者による日本語の論考は興味深かった。端的にはこういうこと。いつかいってみたいアイオワ大学。

ここから見るそこと、そこから見るここ。 ここにいるから見えるそこと、そこにいるから見えるここ。ここにいるから見えないそこ。ここにいるから見えないここ。


2023年4月12日水曜日

2023年4月 第1週

Mental Trillness by Juicy J

 Juicy Jの新作はメンタルヘルスをテーマにしていた。Gangsta Booがoverdoseで亡くなったことの影響しているのは明らかだろう、とokayplayerの記事にあった。この人のラップは独特のノリがあって、なんてことないトラップのビートでもラップ力でかっこいい曲にしてしまう。このアルバムだと”Work Out”とか”I’m stressin’”とかにそれを感じた。好きな曲は唯一のメロウチューン”Deadbeat”

I’M REALLY LIKE THAT by DJ Drama

 Tylerとの『Call Me If you get lost』, Dreamvilleのコンピ『D-Day』でシーンにカムバックを果たしたDJ Dramaによるソロアルバム。DJのアルバムだとビート作ってないからとバカにする風潮にたまに遭遇する。しかし組み合わせの妙を出せるのがDJによるアルバムの楽しいところで、このアルバムも普段なら実現しなさそうな組み合わせも多い。Rick Ross, Westside GunnとかMoneybagg Yo, Offsetとか。聞いていて思わず声出たのはやはり”Raised Different” Nipseyのロストバースを使っており、それだけで「ありがとうございます…」という感謝の気持ち。ドラムの音がデカいのが最高だし上音のエモさに滾りまくった。

In Pieces by Chloe

 Beyonceの愛弟子的なChloe&HallyのChloeのソロデビューアルバム。クオリティー高すぎて本当にビックリした。歌い方やコーラスの感じは本当にビヨンセそのもので声質も結構似ているのでビヨンセのアルバムと思ってしまう人がいてもおかしくない。2023年にR&Bのアルバムをリリースする場合の模範解答のようなツボを押さえたビートの数々が最高。音もめちゃくちゃ良くてスピーカーで聞くとより良く感じた。好きな曲はMissy Elliotを呼んでラップもかましているバチバチのボースティング曲の”Told Ya”

Sundown by Eddie Chacon

 今週一番再生したアルバムはこれだった。毎朝このアルバムを再生してた。John Carrol KirbyがプロデュースでStones Throwからのリリースということもあり本当にChill&Dopeを両立する、針の穴を通すような素晴らしいバランスのアルバムだと思う。1曲目がDopeすぎるのでそこで心折れずに突き抜けると開けた世界が待っていた。極上メロウなんだけど、どこか不穏な雰囲気を纏っている、なんとも言えない塩梅。好きな曲はミッドディスコチューンの”Holy Hell”

NEVER ENOUGH by Daniel Caesar

 今年はR&Bの当たり年なのか、6LACKのアルバムも最高だったけど、これもめちゃくちゃ好き。Frank Ocean『Blonde』から始まり、去年のSteve Lacyの『Gemini Rights』の流れで見ると色々しっくりくる感じがする。哀愁のあるギターの多用はインディーロックっぽいトーンを持ち、そこに乗るメロディはR&Bのそれ、なおかつ歌い上げない。このスタイルが自分の好きな今のR&Bと言えると思う。好きな曲は、加齢に恐れを抱きつつ新しいことしようぜと美メロで歌う”Disilluisoned”

For Motivational Use Only Vol.1 by Curren$y & Jeramine Dupri

 Jermaine DupriとCurren$yというオモシロい組み合わせのEP。Jermaine Dupriのシャウト 「Y’all know what this is!」が聞こえてくるだけでブチ上がってしまうし、ストーナーノリではないアグレッシブなビートでCurren$yがラップするのが新鮮だった。サンプリング中心のビートで”Never Fall Off” とか渋いしT.I.がカマしまくりで最高。あと”Off the Lot”はISSUGIの”Real”と同ネタだった。好きな曲はドラムだけで飯三杯食える系の”Screens Fallin”

Microphone Fiend by Zelooperz

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 Earl Sweatshirtの『SICK!』 のFeatでかましていた”Vision”がかなり好きだったZelooperz。サンプリング系、ジャージークラブ、トラップなどなどごった煮のビートの数々。飽きずにアルバム聞けるので結構繰り返し聞いていた。現行のUSメインストリームにはあんまハマれてないけど、こういう風に音楽的な解釈がちゃんとあるだけで作品は輝くよなーと改めて思う。日本からまさかのYoung Cocoがタイトル曲に参加しているのにはビックリした。好きな曲はサックス と上音のシルキーさが印象的な”4 Inju”

DAYDATE by Leelamarx, NSW yoon & Street Baby

 Leellamarz, NSW yoon, Street Babyによるコラボアルバム。ソロMC3人のコレクティブ的なスタイルって珍しいと思うけど、韓国ヒップホップのアルバムでAOTY候補になる作品がついにきた!というくらいに好きだった。ジャケットがPUSHA-TのDAYTONAオマージュな時点で渋い。ビートはドリルを封印してトラップを採用し、Feat含めてスキルフルなラップが延々と流れまくるヒップホップカロリーがめちゃくちゃ高かった。各曲で魅力があるが、笛トラップでスキル合戦している”Money Dance”が一番好きだった。

THE CORE TAPE Vol.2 by DOK2 & Holly

 ライトなノリでリリースを続けているDOK2のmixtapeシリーズ。今回はHollyというポルトガルのビートメイカーとのコラボ。もともと交流があったようで韓国だと他にもJay ParkやLee Hiにもビート提供しているみたい。いつ聞いてもラップうま〜と思うけど、今回はビートもかなりクオリティ高いのが多いので聞き応えがあった。好きな曲はハングルでかましている”Timeless”

FUTURE CORE by Futuristic Swaver

 定期的なリリースを続けているFuturistic Swaver。日本だと”Goku Vibes”に参加している韓国のラッパーというのが一番分かりやすいか。Laptopboyboy名義でビートメイクもする最近少ない二刀流でもある。いつもシンセバキバキのサウンドを鳴らしまくっていて本作も同じ感じ。日本人アーティストの Awasetsu Monaとの”Wannabe”が外から見た日本のイメージと思うようなエモロックテイストで良かった。しかしこの手の曲はもはや食傷気味であり、個人的にはPi'erre Bourne感満載のビートでバチバチにラップしている”everyday, everywhere, everynight” が一番好き

At The Friday Club by WACK WACK RHYTHM BAND

 いつも読んでいる古本屋のブログで知った。我々世代のWACK WACK RHYTHM BANDといえばRhymesterとのコラボで情報が止まっているのだけど、カバーアルバムなのでとても聞きやすかった。カバーアルバムはDJみたいなもので、何をカバーするかで文脈が生まれる。この作品はその点では個人的なツボを押されまくりでとても好きだった。ど定番の”What’s going on”は当然として”Valdez in the country”, “Bad Weather”, “Hit & Run”, “Hit & Run”, “Soulful Strut”などフリーソウル系B-BOYのような自分にとっては至極の選曲。これ店でかかっていたら絶対にいい店!一番好きなのは”Valdez in the country”

2023年4月7日金曜日

家事は大変って気づきましたか?

家事は大変って気づきましたか?/ 阿古真理

 小説家の滝口悠生さんにポッドキャストでおすすめいただいて読んだ。家事について改めて議題設定して、一つ一つ丁寧に議論している1冊でとても勉強になった。女性が家事を担っているケースが大半なので男性が家事をしない問題についてクリティカルなワードでビシバシとエグられるので自分としては一生懸命取り組んでいるつもりでもまだまだ甘いところもあると気付かされた。

 家事に関する書籍では、時短などのHow toやエッセイなどが主流だと思うが、本著は定性的そして定量的に家事を考察している点が一番興味深かった。料理本、片付け本などの歴史や具体的な統計の数値を駆使しながら、家事が大変にも関わらず現在まで軽視され女性に一方的に押し付けられてきたか語られている。性別による役割分担で成長を遂げた時代を忘れられない人が多いし、その姿を見て育った人も刷り込みで当然だと思ってしまう部分もあり抜本的に何かを変えるのは難しく感じた。各当事者が当たり前を更新していくことで社会が変わっていくことを期待したい。(遠い目)

 特に「名前のない家事」という概念が衝撃だった。「風呂掃除」「昼食作り」のように決まったフレームの中で取り進めて完了する家事ではなく、「買ってきた野菜を冷蔵庫に入れる」「肉や米を小分けにして冷凍保存する」「洗剤を詰め替える」といった生活する中でフローのように存在する家事の多くを女性が担当しているケースが多い。結果、分担がイーブンに見えたとしても女性の負担が多いというのはぐうの音も出なかった。気づいたら対応しているけど、気づくかどうかはシステム化されてなくて自分次第なので、これからは意識していきたい。

 また個人的に気になっていた一汁一菜についても取り上げられていた。食事を作るハードルを下げる意味で機能はしているが、土井善晴本人の意図としては手作りかつ母の愛情といった旧来然とした家的な価値観のアプローチらしく、そこでギャップが出た話はオモシロかった。著者も食事の重要性については主張しており、食べたいものを料理をすることで自分の家事に対する主体性を取り戻す話が興味深かった。自分も一汁一菜というより食事を楽しみたい勢なので、そう考える自分が積極的に菜を作らねば…とも思った。

 近年話題のケアについても家事の観点から1章丸ごと使って語られている。フェミニズム、資本主義、家父長制などの社会的背景と家事を踏まえながらケアの必要性を説いており、中でも以下のラインが刺さった。

無駄な時間や労力を使わないことは、一般的なビジネスの場では生産性が高いと評価されるが、ケアで時間を惜しめば十分な目的を果たせない。なぜなら、ケアの最大の目的は、相手に関心を払い大切にすることだから。それはつまり、愛である。「生産性の高い愛」なんて要求したら、恋人は怒って去ってしまいそうだ。

 一事が万事、家事に対する主体性を持つことが何よりも重要だという主張で至極真っ当だと思う。終盤にかけては著者から見た問題点がつるべ打ちされ強い言葉で現状について疑問を呈していた。各人の努力も必要だけど、それには限界がありシステムの変化こそが最大の解決策なのは間違いない。今の政権のままでは社会構造は何も変わらないので選挙に行って自分の意思を示す必要がある。現状維持していても明るい未来は絶対来ないから。


2023年4月5日水曜日

2023年3月 第5週

Hotel San Claudio by Mark De Clive Low, Shigeto, Melanie Charles

 マルチインストプレイヤーMark De Clive Lowとドラマー兼ProducerのShigeto、そこにシンガーのMelanie Charlesが加わったプロジェクト。元は2019年にイタリアで製作したらしくリリースまでかなり時間がかかっている。これには本作でTributeしているPharaoh Sandersの死去も影響してるのかもしれない。男性2人が日系ということもあり曲名に”Bushido”, “Kanazawa”などの日本語が使われており親近感が湧く。セッション系でいろんなタイプの曲が入っているのだけども、やはりPharaoh Sandersの”Love Is Everywhere”のカバー?再構築?した曲が好きだった。朝方のクラブのフロアで聞いたら最高最高だと思うよ。

The Infamous Live by Benny Reid & Havoc

 Mobb Deepの大傑作”The Infamous”のインストカバー集。Havocのお墨付きでYoutubeでインタビューも出てた。Benny Reidはマルチインストプレイヤーで全楽器を1人で演奏している。Shook Ones Pt.IIのカバーはこんな感じ。

 本作はFat Beatsの企画でBennyはそれに呼ばれる形で参加したらしい。この手のカバーのとき、いつも気になるのはドラムでそこが甘いとガッカリするが、そこはさすがFat beats & Havocでしっかりヘビーに鳴っていた。90sのアルバムの中でそこまで思い入れはある方ではないけど、やっぱ”Give Up the Goods”, “Shook Ones pt. II”はいつ聞いても首が振れるやーつで最高。

Leather Blvd. by B. Cool-Aid

 今週一番聞いていた。Pink Siifu & AhwleeによるユニットB. Cool-Aidの最新アルバム。okayplayerのインタビューで「ネオソウルのレーンはガラ空きでオレらがもらった!」的な発言をしており、その言葉のとおり彼らのスタイルでネオソウルオマージュなヒップホップサウンドを作り上げていてめちゃくちゃかっこいい。ファンキーな生音のサウンドが心地いいしループに閉じずアレンジで開かれている、なおかつリズムパターンも色々あって飽きない。とりあえず流しておくには打ってつけのアルバムだった。好きな曲は選ぶの難しいけど、やっぱビート太めが好みなので”Cnt Fk Around”

The Great Escape by Larry June and The Alchemist

 Larry JuneとAlchemistのコラボアルバム。双方とも勢いに乗っている中でのリリースなので相当期待値が高い中でそれに見合う素晴らしいヒップホップアルバムだった。レイドバックしたLarry JuneのスタイルとAlchemistの最近のビートレスなスタイルの相性が抜群でゆるっと聞ける。客演陣も1mmも隙がないというか人気取りではなく良い曲を作るためのメンバーという構成で最高。ただAlchemistのこのスタイルは正直飽きつつあり、Larry Juneの一つ前のアルバム『Spaceships on the Blade』が個人的には大傑作だと思っているので…好きな曲はどストレートなソウルサンプリング風な”What Happened To The World?”

LITRON by Showy

 現在RAPSTAR誕生で勝ち上がっていることも話題のShowy Victorと前回出場で勢いに乗っているShowy RenzoによるユニットShowyの新しいEP。2人になるとそれぞれの良さが引き立って各自のソロを聞くより全然好きだった。Renzoは手癖のメロディがあるように感じるもののVictorは結構引き出しが多くさらに2人が組み合わさることフレッシュになるみたいな。シンプルで享楽的な歌詞なんだけど視点とか言い回しのオモシロさもあるので聞いていて楽しい。好きな曲は”Double” オレの前じゃ全部がMeaning!!

RAPNAVIO by 梅田サイファー

 梅田サイファーの新しいアルバム。これまでの作品で一番好きだった。大人数のグループなので色んなことが起こってきただろうけど、結果的には各自の色がくっきり見えるようになり、まとまっていて聞きやすかった。1曲目がまさかのメロウドリル!でもうここで持ってかれた…Leella Marzの”Selfish” オマージュだと思うけど、このノリが日本でも流行ってほしい。  いろんな音楽のインプットがあってのアウトプットだと感じる曲が多くてそこも好きなポイントだった。ほぼ全曲をテークエムがHookを担当しており、ポップギリギリのラインを突いている感じがして良かった。R-指定はJっぽさの強いHookよりとにかくラップを聞きたいという個人的願望も達成されており彼のスキルを味わえて言うことなし。色眼鏡なしに村に受け入れられる日が来ることを祈ります。もう村はないと思っているけど…

Make U Dirty 2 by MUD

 KANDYTOWNが終結し一番最初にリリースされたのはMUDのソロアルバム。骨太サウンドといつもどおりなMUDのラップが心地よかった。リリックに関して「何にも言っていない」とか「同じことばかり言っている」といった批判を見透かすように進化が見れたのも嬉しい点。日本でかますのが大前提とした上で英詞リリックもあったりで挑戦していることも多い。彼のジャパニーズイングリッシュについて発音やスラングを飛び越えた音楽としての魅力があるように本作では特に感じた。好きな曲はback in the daysな “Yellow Monkey”

Forward March by Tade Dust

 RAPSTAR誕生でも勝ち上がっているTade DustのEP。王道UKドリルな内容で今の気分に完全にフィットしているのでとても好きだった。先行で出ていたBonberoとのUKガラージな”Life goes on”のポップさも最高でバランスがよい。リリックも変に英語寄せの無意味なリリックというわけでもなく、日本語でビートにきっちりはまっているし言いたいことがちゃんと伝わってくるリリックなのがかっこいい。好きな曲はascii & Taxonによる共作ビートがたまんない”Chapete 1” UKアクセントの件は ”We higher”Blaseオマージュ?(それともUKに大元のネタがある?)

P.O.E.M. IV : Tyler Durden by Owen

 ハンパないリリースペースでアルバムを出し続けているOwenの新作。P.O.E.M.シリーズの4作目となる。去年のアルバムもかなり好きだったのだが今回は特にぶち抜かれた。タイトルにあるTyler DurdenはFight Clubの登場人物の名称であり、Interudeを境に陰陽が転じるコンセプチュアルな仕上がり。サウンドとしてはピアノの多用が目立ち、そこが個人的にはツボだった。特に後半が好きでその中でもブレイクビーツ、ピアノ、ベースのシンプルな構成でセルフラブを歌う”Love yourself”が一番好き。