2016年4月30日土曜日

レヴェナント:蘇えりし者



ディカプリオがアカデミー主演男優賞、
監督のイニャリトゥがバードマンに引き続き、
監督賞を受賞したことで注目度が高い作品
ということで見てきました。
IMAXで見たこともあって、
映像と音の圧倒的迫力にヤラれました。
撮影監督もバードマンに引き続き、
エマニュエル・ルベツキということもあり、
「なんじゃこりゃ!」という見たことがない
ショットの連続で興奮しまくりでした。
お話自体はシンプルなんだけど、
復讐がテーマになっているので重厚。
映画館で見て良かったなーと思いました。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

鳩(?)の鳴き声らしき音が聞こえ始めて、
ある村が襲われた様子が描かれて、
静かなトーンで物語が始まります。
ディカプリオ演じるグラスと息子が
猟をしているとベースキャンプから銃声が聞こえ、
戻ってみると原住民がハンターチームの仲間を
襲っている場面に遭遇。
ここでのアクションから相当キテて、
最初に襲われるところで、
いきなり矢が飛んできて喉元を貫くんですよねー
そのあとは地獄絵図の戦闘状態。
ワンカットとまでは言いませんが、
ほとんどカットを割らないことで、
まるで自分もその場所にいるかのように錯覚する、
アドレナリンギンギンで高まりまくり!
命からがら逃げられたものの、
敵から逃げつつ今度は砦まで戻らなければなりません。
この行軍において、トム・ハーディー演じる
フィッツジェラルドが嫌なやつだなー
というのがよく分かります。
マッドマックスで一躍有名になった彼ですが、
ジェイク・ギレンホールに引き続き、
トム・ハーディー出演作にハズレなし!
というぐらい、どれも面白くて、
とくにウォーリアーとハイウェイは超オススメ!
そんな彼が小言ばかり言うんですね。
生きるか死ぬかのラインで必死なのに、
毛皮取られたらどうすんねんとか、
船捨てるのどうかと思うわーとか。
サバイバル環境でこういうやつがいると、
大抵良からぬことが起こるのは必然。
そして、予告編でも散々見せられた、
グラスvs母熊の戦いへ。
これがもう想像以上の激しさで、
予告編で見た部分はホントにさわりの部分で、
ベアクローでザクザクいかれるという、
スプラッターっぷり。
母熊は銃口を向けられた子熊を守るために、
当然のことをしたまでなんですが、
彼の身に起こる出来事を暗示しているかのよう。
本作では人間と動物が等価であることが、
様々な描写で見受けられるんですが、
それは同じように野蛮な部分もあるし、
同じように思いやりを持ってもいるという
両論併記な点が興味深く感じました。
ボコボコにされたグラスは完全に荷物で、
行軍の足手まといになってしまい、
フィッツジェラルドが身元を預かることになり、
そこで悲劇の息子殺しが起こってしまいます。
この身元を預かるところで、皆が薄々感じていることを
部下に金払ってやらせるリーダーのあざとさが
たまらなく嫌でした。この偽善者が!
フィッツジェラルドの同意を求める方法が
「お前もう殺していいよな?良かったらまばたきして!」
っていう、、それなら言わなくていいよもう!
死んだと思ったグラスは生きていて、
ここから「蘇りし者」として壮大な復讐の旅が始まります。
復讐の相手であるフィッツジェラルドを探すんですが、
この旅がめちゃくちゃ長いんですよね〜
色んな事件が起こりはするものの、
少し間延びしたかなーというのが個人的な印象です。
(馬寝袋のシーンが一番好きです)
この旅が長ければ長いほど、
フィッツジェラルドにたどり着いたときの
「ようやく、このときが来た!」感がマックスで高まるので、
それはそれで効果があるとは思います。
こんな僕の戯言よりもスクリーンに広がる圧倒的な映像は
ただ自然に敬服するしかないと思いましたし、
地球上にこんな場所が存在するのかと驚きの連続でした。
(ほとんど自然光での撮影っていうのが影響してるのかな?(1)
グラスが助かったのは、フランス部隊に遭遇した際に取った、
ある行動がすべてという描き方もオモシロくて、
因果応報というべきか。亡くなった奥さんの力なのか。
ラストシーンの2人の最終決戦もたまらなかったなー
坂本龍一の音楽も最高だったし、
復讐では誰も救われないってことを、
フィッツジェラルドが言うという、
こいつどこまで腐ってんねんというね。
グラスはあそこまで半殺しにしといて、
復讐は神に任せるっていうのはどうかと思うけど。笑
人の心を失った先輩も書いていますが、
最後まで席は立たないほうが余韻倍増だと思います→リンク
とにかく映画館で見ないと意味ない系の映画。

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ



<あらすじ>
人類の平和を守るアベンジャーズは戦いは全世界へと広がるが、
その人的・物的被害大きさから、アベンジャーズは
国際的な政府組織の管理下に置かれ、無許可での活動を禁じられる。
一般市民を危機にさらしてしまったことへの自責の念から、
アイアンマンはその指示に従うが、
「自らの行動は自らの責任で持つべき」という
持論のキャプテン・アメリカは反発。
2人の意見はすれ違い、一色触発の緊張感が高まっていく。
(映画.comより)

MARVEL最新作ということで、
GW突入初日に見てきました。
キャプテン・アメリカシリーズではあるものの、
MARVELシリーズ揃い踏みなので、
実質はほぼアベンジャーズシリーズに近いもので、
最高にオモシロかったです!
先日公開されたバットマンvsスーパーマンと
同じテーマを描いているんですが、ここまで違うかと。
これまでの貯金があるのは当然なんですが、
ストーリー、アクションともに申し分なし!
監督を務めたルッソ兄弟は、
次のアベンジャーズシリーズである、
インフィニティ・ウォーの監督を務めるそうで、
そちらも今から楽しみです。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

物語は1991年のバッキーの話から始まります。
彼は ヒドラに洗脳されて暗殺者として、
暗躍していた過去を持つ。
それが提示されたのち、アベンジャーズお約束の
冒頭の派手なアクションが繰り広げられます。
アフリカでのバイオテロ阻止ミッション。
キャプテン・アメリカを中心に、
ファルコン、ワンダ、ブラック・ウィドウが
街中で暴れまくってテロは阻止するものの、
一般市民が犠牲になってしまいます、
これを受けてアベンジャーズを国連の承認なしには
活動できない協定が発行され、
それに賛成のキャプテン・アメリカ陣営と、
反対するアイアンマン陣営に割れて、
争いが始まっていきます。
MARVELもDCも自らが掲げてきた正義に対して、
疑念を持つ作りになっている点が興味深くて。
2001年以降にアメリカが繰り広げてきた戦争は、
彼らが世界の自警団と化し、
多くの人のために!という乱暴な民主主義の結果、
数多くの混乱を生み出してきたわけです。
そこに対して、現状エンターテイメントど真ん中である、
MARVEL(ディズニー含む)が映画で正面切って描いてく、
キャプテン・アメリカは目の前で起こることに対して、
自分に何ができるのかを実直に考えるスタンス。
彼を駆り立てているのは友人のバッキーが
テロの嫌疑をかけられているからっていう、
極めて人間臭くて良いんですよね〜
一方のアイアンマンは社会全体を考慮して、
自重しようよという政治家のようなスタンス。
少なくともヒーローとは言い難いもの。
2人のイデオロギーはぶつかり合い、
それぞれがチームを結成し戦うことになるんですが、
本作の見所の1つであるスパイダーマンの
登場シーンがとても好きでした!
ここまで述べてきた面倒な「正義」の議論に対して、
ピーター・パーカーのシンプルな回答が、
ずばーっと心に刺さるんですよね。
しかも、このスパイダーマン役のトム・ホランドが
イイ感じに垢抜けて無くて良かった〜
次のシリーズはトビー・マグワイア版を超えるかも…
と期待せずにはいられないです。
そのスパイダーマンも参戦した空港のバトルも見所で、
それぞれのキャラクターが発揮して大乱闘を
繰り広げる様はまさにドリームマッチで
いつまでも見てられるな〜と思っていました。
張り詰めた空気の中でのひと時のブレイク。
戦う前のバッキーとファルコンの顔芸が最高だし、
戦いでのMVPは間違いなくアントマン!
その戦いの後は敵の敵は皆の敵という理論で、
ヒドラの暗殺部隊復活を狙う男をしばき倒す
という展開かと思いきや!
悪夢のような復讐の業火が燃えたぎる!!
その方法、ちょっと偶然に頼りすぎてやしません?
とは当然思うんですが、そんな疑念をすべて吹き飛ばす、
アイアンマンとキャプテンアメリカ(バッキー含む) の戦い。
「憎しみ」をアクションで表現したら、こうなります。
っていうぐらい迫力のあるド突き合い。
とくにマウント取ってからの殴り方が
互いにちょっともう、、っていうぐらいのレベルでした。
ラストのアイアンマンのボロボロで孤独なショットは
とても物悲しい気持ちになりました。。
復讐構造を作品内に複数入れ込むことで、
復讐というテーマが強烈に前に出てきているし、
ケジメのつけ方も人それぞれという結論も良かったですし、
ラストのキャプテン・アメリカの手紙が、
究極はそういうことですよね〜と思いました。
MCUの勢いはこれからも止まりそうにない!

2016年4月29日金曜日

Suchmos Tour Love&Vice



今もっとも注目すべきバンドの1つ、
Suchmosのワンマンライブに行ってきました。
昨年後輩に教えてもらった、
1stアルバムの「The Bay」が本当に素晴らしくて、
ジャズ、ファンク、ソウルといった、
ブラックミュージックの要素が満載で、
繰り返し聞いていました。
そして昨年末にリリースされたLove &Viceに
収録されたStay Tuneという曲で
一気にブレイクした2010年代を代表するバンド。



セットリストは以下の通り(via http://dailysetlist.net/archives/28555)



いやーぶっちぎりでカッコよかった!
会場が渋谷Quatroだったんですが、
なかなか、この規模で見れなくなると思うので、
ホントに忘れがたいライブとなりました。
PacificというChillチューンから始まり、
意外な展開でビックリ。
とにかくボーカルのYonceの魅力が炸裂しまくりで、
ファルセットも華麗に放つソウルフルかつ、
matureなボーカルが最高最高でした。
ステージングも心底音楽が好きな様子が
伝わってくるビートへの乗り方や、
謎のワイニーな動きや
オモシロいな〜と思ったのはターンテーブルの使い方。
声ネタのスクラッチもあったんですが、
それよりもコーラスをターンテーブルで
差し込むというのがフレッシュだなーと思いました。
コーラス入れなくても曲が豊かになるし。
当然のことながらバンドのグルーブはたまらなくて、
Yonceのボーカルとの相性は抜群。
ボーカルとサウンドが互いにリスペクトして、
Suchmosの音楽が形成されていることが、
ステージングからビシバシ伝わってきました。
ライブのハイライトはMireeからのStay Tune!



照明のバキバキ具合を含めて最高にキマってました!
また、彼らのルーツであるJamiroquaiの
Blow Your Mindも披露。



AlrightはもろにJamiroquaiをサンプリングした曲なんですが、
メッセージ性の強さをライブで見て改めて感じましたし、
メロウな曲で政治的なメッセージを込める方法は
モータウンの魂を受け継いでいるのかもしれません。



7月6日に新しいEPがリリースされるそうで、
何曲か新曲も披露されて、
鬼ストレートなロックな曲も興味深かったんですが、
MINTという曲が良かったです。
家に帰ってからライブ終了後に渡されるフライヤーの束を
なんとなく見ていると、こんなものが!



歌詞を見ると込み上げてくるものが、、
新作EP「MINT CONDITON」がとても楽しみです。

2016/11/4
ロッド・テンパートンというアメリカの作曲家が亡くなり、
僕が好きなアメリカの70〜80年代の曲の多くが、
彼のサウンドであることを知り愕然としました。
没後に知ることは本当に悲しい話なんですが、
DJ SpinnaのTribute mix聞いてたら、
SuchmosのGet Readyという曲の元ネタが!




彼らの登場後、雨後のタケノコのように
Good Music系バンドが出てきていますが、
こういった先人へのリスペクトが
エッセンスとして仕込まれているがゆえに、
彼らが一つ抜けているように感じるんだなと思いました。

太陽



<あらすじ>
21世紀初頭、ウイルスによる人口激減から、
なんとか生き残った人類は、
心身ともに進化しながらも太陽の光に弱くなり
夜しか生きられなくなった新人類「ノクス」と、
ノクスに管理されながら貧しく生きる旧人類「キュリオ」
という2つの階層に分かれて生活していた。
ある日、村でノクスの駐在員をキュリオの男が
惨殺する事件が起こった。この事件により、
ノクスから経済制裁を受け、
キュリオはますます貧しくなっていった。

サイタマノラッパーシリーズで
おなじみの入江悠監督最新作。
去年の映画秘宝のベスト10企画で、
宇多丸師匠がベスト10に入れていた時に知り、
そのときから楽しみにしていました。
しかし、入江悠監督については
前作のジョーカーゲームが
はっきり言ってウルトラ駄作だったいうこともあり、
不安なところもありました。
しかし!本作は入江監督の新たな代表作となる!
と言い切ってしまえるぐらい、とてもオモシロかったです。
ディストピアSFなんですが、
それぞれの要素を様々なメタファーとして捉えることができて、
都市論、文明論、家族論、世代論とリーチしている領域が非常に広範。
見終わったあとの諸行無常感が最高最高でした。

※ここから完全にネタバレして書きます。

物語は暗い街に夜明けが訪れる遠景のショットから始まります。
テロップでざっくりあらすじの説明があるんですが、
この時点では全体像は見えません。
主人公たちの村が困窮に陥る原因となる
キュリオの村上淳によるノクスへの拷問が描かれます。
ここでノクスが太陽の光に弱い存在であり、
太陽に当たるとどうなるかということが分かる。
さらに主人公の1人である結の父は教師で、
彼が子どもたちにノクスとキュリオを教える形で、
物語の背景を説明するなど、
手際がとても良いなーと思いました。
本作はノクスとキュリオという非常に対照的な存在を配置し、
観客の価値観を揺さぶってくるのがとにかくオモシロいです。
太陽を浴びることなく完全に管理、合理化され、
テクノロジーの発達した社会に生きるノクス、
太陽を浴び自由に生活できるけれど、
テクノロジーの恩恵は全く受けることができないキュリオ。
もろに都市と田舎ですよね。
都市で働く人間が太陽の光を浴びることがないっていうのは、
とても見事な戯画化だと思っていて、
営業で外出が頻繁にある方は別にして、
PCでの業務がほとんどの今の世の中では、
日の光を直接浴びる時間って少ないよなぁと。
また、自分の育った街で太陽のもとに生きれば、
感染(被曝)するリスクが常にあるキュリオは、
放射能を意識してるとも思います。
(原作が2011年の震災以降の作品ですし)
社会の頂点と底辺で交わることがないと思われる、
ノクスとキュリオの境界線を巡って、
主人公2人が翻弄される作りになっています。
その2人というのが、
神木隆之介演じる鉄朗と、門脇麦演じる結。
鉄朗はバカなんだけど向上心が強く、ノクスに転換し、
ものづくりを学びたい男の子。
転換前にノクスの友達を作ろうと、
ノクス側の門番の青年と交流を図っていきます。
このシークエンスでは、差別の話として、
とても興味深かったです。
僕らがn*ggaと言うことは憚るべきである、
その理由がここにあると思います。
あくまで同胞内での呼称であり、
外部の人間が単純に区別するために存在してるんじゃねえ!と。
ただお互いが理解を深め、リスペクトの姿勢が見れれば、
それは単純な性質を表す言葉になる。
というところまで描いているのが、
かなり踏み込んでいると感じました。
鉄朗と青年の関係は前半微笑ましく思えるんですが、
終盤にかけての究極の選択、
奇しくも、おじと同じ道を歩みかねない状況、母親の 死など、
彼が物語内でもっとも追い込まれるキャラクターです。
故になのか、とにかく叫んでいるシーンが多くて、
やり過ぎ感は否めなかったかな、、、
一方、 結はノクスに憧れるのではなく、
同じキュリオの独立して豊かに生活しているとされる、
四国の人々に憧れている女の子。
父親と2人暮らしで、
母親は彼女が小さいころにノクスに転換済み。
その母との十数年ぶりの再会や、
村の状況変化から彼女はノクスに転換することになるんですが、
そこからの地獄っぷりが強烈、、、
とくにレイプのワンカットは覗き見としての
映画の構造を生かしたショットで凄まじかったです。
また父親の古舘寛治が素晴らしくて、
頑固というか一途というか自分の信念を持ち、
生きることを真剣に考えている人で、
物語内で一番正気を保っているように見えました。
それと対比されるノクスの母親とその旦那、義弟は、
「すべてを理解した高次元な存在」という自己認識で、
見てると反吐が出るような気持ちになる。
(とくに高橋和也の無味感が凄まじすぎる!)
でも、自分を含めて手元のスマートフォンで
世の中の現象の大半を検索することができて、
自分が万物の理解者であると錯覚してしまう瞬間は、
間違いなくあるわけです。
その彼らが手に入れることのできないものが、
太陽の光と子どもという設定から、
この2つが人間を人間たらしめているものであり、
とても大切と考えていることが伝わってきました。
ただ、一方的にノクスが悪の存在というわけではなく、
キュリオ内は旧態然として日本社会が
濃縮されているのが嫌な感じなんだよなー村社会。
ノクスになりたい鉄朗、なりたくない結、
この2人をあざ笑うかのように、
運命の歯車が残酷に動いていった結果の、
終盤のワンショットは本当に強烈!
サイタマノラッパーシリーズでも
印象的なワンショットはたびたび披露されてましたが、
原作が舞台ということもあり、相性バッチリ!
阿鼻叫喚がむき出しで迫ってくる!
本作は全体に映像の説得力が強くて、
キュリオ側ではワンショットを多用し、
人と生活の全体像が分かるようになっていて、
土地に根を下ろして生きていることが伝わってきます。
逆にキュリオは最先端の技術を持ち、
優雅な生活なんだけど、その全体像は見えず、
実体が伴わない印象が強くなっていました。
あと、本作で僕がもっとも辛かったのは、
結がノクス転換の手術を受けたあとに父と再会するシーン。
生きることに真剣に向き合い苦悩していた結が、
くだらないことで悩みすぎてたと言い放ち、
父のことを気遣うんですが、その思考停止感というか。
自分が当事者でなくなった瞬間に、
一気に他人事となってしまう人間の残酷さが
あまりにも強烈でした 。
(そうでもしないと生きていけないくらい、
世界が残酷とも言えるかもしれませんが…)
ラストは橋で出逢った2人が、
ノクスとキュリオの架け橋になるかもしれない、
という希望的な終わり方だった点は救われました。
GWで超大作目白押しですが、
世界に誇れる最高の国産映画だと思います。

2016年4月24日日曜日

スポットライト 世紀のスクープ



アカデミーで作品賞と脚本賞を
受賞したということで見てきました。
多分重たい話だろうなぁとは思っていましたが、
内容がショッキングで終始釘付けでした。
アメリカはファジーな状態をあまり好まない文化で、
基本的にYES/NOで物事が決まっていくんだ、
と勝手に思っていました。
しかし、本作を見ると日本人がよくやりそうな、
事なかれ主義な場面が多く見られ、
一概に物事は判断できないよな〜と
改めて考えさせられました。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

神父が留置所にいるところから物語が始まって、
弁護士らしき人がやってきて、
すべてが良からぬ形で片付いているように見えて、
警察官もあきらめの表情。
そして、悠々と神父と司教が出てきて、
タイトルが静かに現れて映画がスタート。
前半はタイトルにもなっている、
ボストン・グローブ社のスポットライトチームと、
彼らが神父の児童虐待にフォーカスを当てる
経緯が描かれていきます。
スポットライトはタイムリーなニュースではなく、
腰を据えた長い取材をベースにした新聞内の記事のこと。
マイケル・キートンをボスとして、
マーク・ラファロ、レイチェル・マクアダムスらが
部下としているチーム編成。
時代が2001年から2002年で、
インターネットを含めIT革命前夜ということもあり、
彼らの仕事の進め方にアガりました。
とにかく足で稼いで自分の目と耳で
1つ1つの事実を丁寧に確認し積み上げていく。
その気の遠くなる作業を徹底して進める姿、
図書館や自社で調べ物をしたり、
インタビューで手書きのメモを取ったり。
アナログな作業によって核心に迫っていく印象が
より強くなっているように感じました。
神父の児童虐待を特集するきっかけとなるのは
転勤でやってきた新しい編集長です。
ボストンを初めて訪れる彼から客観的に見て、
「ツッコミ足りなくね?」と言って、
スポットライトチームが取材することになります。
この一言がなければ、すべてが始まっていないことが、
本作を見終わったあとに痛感させられる作りになっています。
つまり、外部からの視点の欠如によって、
目の前で起こっていることの重大性、危険性、
または起こっていること自体が認識できなくなるということ。
マイケル・キートンがそれを体現していて、
記者として当然果敢に取材するんだけど、
終盤にある展開がキツイんですよねー
弁護士や被害者の人たちのセリフが
ボディブローのように効きました。
「お前はそのとき何してたんだ?」
スポットライトチームが取材し始めて、
徐々に実態が明らかになってくるのが後半。
過去にグローブで取り上げた
2人の神父を中心に取材を続けていると、
どうやら実態はそれ以上なのかも…
ということが分かってきます。
この取材のスリリングさがたまんない。
教会はもちろんのこと、教会に通う街の人も
知っていたけれど、神の名の下に伏せてしまう。
多数の利益のために少数の被害者は
黙って然るべきという論理の気持ち悪さよ!
さらに神の存在をチラつかせるだなんて、、
そのあまりの悪態ぶりに一部を摘発しただけでは
何も現状が変わらないと判断し、
教会が持つシステムを打倒するべきだと。
そして驚くべきはそのシステムが
ワールドワイドであるという恐ろしい現実を
突きつけるラストですよね。
何もなかったことにして、
なぁなぁにしてることって、
日本でもたくさんあると思うと、
全く他人事ではないよなぁと
SALUの新しいアルバムを聞きながら思いました。

アイアムアヒーロー



原作漫画を以前に友人から勧められたけれど、
スルーしてしまっていて、映画化ということで、
先に映画から見ることにしました。
予告編やネット上での前評判から
相当期待はしていたんですが、
マジで?!と何回も言いたくなるくらい
最高最高なゾンビ映画でした!
VFX全盛の時代において、
アクション、SFでは予算が桁違いの
海外の映画には勝てない。
だから邦画は日常系に特化していくことが
世界と戦える唯一の方法である、という論に
頷いていた自分が恥ずかしくなりました。
これなら全然イケるよ!世界!と思います。
インディーではなくメジャーでも、
やろうと思えば何でもできることが
本作が証明しているし、
これがヒットすれば蔓延する自主規制のムードを
もしかしたら打破してしまうかもしれません。
そのぐらいエネルギッシュで素晴らしかったです。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

主人公は大泉洋演じる英雄という漫画家。
若い頃に賞を取っているけれど、
今は鳴かず飛ばずでアシスタントをこなしつつ、
漫画家として大成することを夢見ています。
前半は彼の背景とゾンビ(ZQN)登場→逃亡を
描いていくんですが、
ゾンビのファーストインパクトの強烈さ、
これでもう勝負あり!
本作がどのレベルでバイオレンスを描いていくか、
高らかに宣言してくれます。
英雄の彼女である片瀬那奈がゾンビ化する
というまさか過ぎる展開に加えて、
目の寄り方や顔の変形具合と、
見た目のグロさがハンパじゃない!
さらにアパートの郵便受けから覗くという、
見せ方がとても良かったです。ハラハラしまくり!
彼は仕事場へと移動すると、
そこには塚地武雅演じる血まみれのアシスタントの姿が。
彼のバット殴打も本当に一切遠慮がなくて、
胸がすく思いで見ていました。血の量よ!
そこからパンデミック化が一気に進み、
街が阿鼻叫喚の絵図と化していくんですが、
大量のゾンビと逃げ惑う人々、
カーアクションの激しさ等、迫力満点!
ここで一緒に逃亡することになるのが、
有村架純演じる女子高生。
彼女の存在は賛否両論分かれるかもしれません。
僕は彼女を守るということが
彼にとって久々に担った社会的役割、責任感だからこそ
見ず知らずの人間だとしても助けたんだと思います。
誰かに頼られるということの大切さがそこにある。
彼女はすでに噛まれていたんですが、
ゾンビと人間のハーフとして覚醒し、
強力なパワーを発揮することになります。
有村架純がゾンビの首ちぎって投げるんですよ?
これだけで見る価値あると思います。
覚醒後、彼女はほとんど睡眠状態で、
英雄がモールのカートに乗せて運ぶ姿は
さながら子連れ狼状態でオモシロかったです。
後半は長澤まさみが登場しての
モールでのゾンビとの戦いが描かれます。
(長澤まさみの武器は斧!!)
本作は全体にウォーキング・デッド感が強いんですが、
このシークエンスは確実に参考にしてると思われます。
ゾンビ映画ひいてはサバイバル系映画の醍醐味として、
既存の価値観の転覆が挙げられます。
人間関係しかり金銭関係しかり。
ゾンビだけが敵だと思っていたら、
そんな甘い世界ではございませんよという、
人間同士の浅ましい見栄と争い。
それを象徴するかのようなロレックスの使い方が最高最高!
僕がウルっときたのはロッカーから飛び出るシーン。
自分の助けを確実に必要としている人たちがいるけれど、
何度頭の中でシミュレーションしてもうまくいかない、
そのもどかしさを一気に打破し、
ショットガンをぶっ放す姿にヤラレちゃいました。
これこそが「でも、やるんだよ!」の精神。
ゾンビの話でいうと見た目のインパクトは前述したとおり、
強烈なんですが過去の思い出にすがって生きている設定が
とてもオモシロかったです。残留思念を喋っちゃうゾンビ。
思考に加えて身体的な特徴も引き継がれるのもオモシロくて、
その点でいうと走り高跳びのゾンビは間違いないくMVPでしょう。
拍手あおり →背面跳び→皆殺し!の三段論法。
クライマックスのゾンビ100人斬りは圧巻の一言に尽きる、、
ひたすらショットガンで両側から迫ってくるゾンビを
打ちまくって殺しまくる!
積み上がる死体!そこら中に飛び散る血液!
守るべきものができた漢は強いのだと言わんばかり。
ショットガンっていうのも良くて
装弾が2発までだからリミット性があるし、
頭に当たって弾けるのが最高ですよね。
(マシンガンだと味気ないですよね)
ラストシーンもぐっとくる展開で、
本名を長澤まさみに改めて伝えるんですが、
前半で有村架純に伝えたときと違ってるんですね。
前半では自ら「英雄(エイユウ)と書いてヒデオ」
と言っているんですが、
ラストには「ただの英雄(ヒデオ)」に変わっています。
つまり「ヒーロー」と認めるのはあくまで他人、
そのことに気づいて初めて
「アイアムアヒーロー」と言えるのである。
と言わんばかりにここでタイトルが出るんですね〜完璧!
ウォーキングデッドの二番煎じとか言う輩も
もしかしたらいるかもしれませんが、
明らかにネクストレベルのゾンビ映画だと思います!

2016年4月23日土曜日

鬼畜



数年前に人の心を失った先輩に勧められた作品。
もうタイトルからして幸せなことは起こらないだろうと
想像は付くかもしれませんが、
あまりにとんでも無さ過ぎて、
本作を見た夜に悪夢まで見る始末でした…
緒形拳演じる主人公は、
愛人との子どもを3人もうけたものの、
仕事がうまくいかず養うことができなくなり、
愛人がその子どもを彼の家に放置していく、、という話。
子どもは他人の子どもでもかわいくて、
「かけがいのない存在」という社会認識を
根底から覆すかのごとく、子どもへの仕打ちがエゲツない!!
それを体現するのが緒形拳の奥さんを演じる岩井志麻子。
確かに愛人の子どもなんて、
憎むしかない存在とは思うんですけど、
そのメーター振り切れたかわいがりに度肝を抜かれました。
臭いから近寄るな!といって洗剤を頭からかけたり、
ご飯で遊んでる赤子に腹を立て、
赤子の口一杯に米粒をブチ込んだり。
子どもたちの演技が上手いとは言えず、
セリフがほぼ棒読みなんだけど、
それが逆に切なさを煽ってくるんですなー
とくにラストに長男が見せる最大限の親孝行が泣ける…
つくづく大人というのは勝手な生き物だなと思いつつ、
「この鬼畜生がぁぁ!」は今一番言いたい日本語です。

2016年4月20日水曜日

コップ・カー



ケビン・ベーコン主演映画は見るに決まってる!
ということで見てきました。
彼はコメディからシリアスまで、
何でも器用にこなす役者というイメージを僕は持っています。
主演作品であればミスティック・リバー、
狼の死刑宣告は大好きな作品です。
本作も勿論、とてもオモシロかったです。
作品内の時代設定が曖昧なこともあり、
70年代アメリカ映画のような雰囲気がありました。
しかし、単なる懐古主義にはなっておらず、
豊かな色彩で表現された世界観と、
絶妙な余韻を残す後味の良さが特に好きでした。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

バキバキなタイトルから少年2人が
だだっ広い草原のようなところを歩いている場面から
映画は始まっていきます。
作品内で丁寧な説明があるわけではないんですが、
2人して家出をしている様子で、
たまたま通りかかったところに
パトカーが置いてあって、それを乗り回し、
楽しむ様子を前半で描いていました。
この前半の部分で少年たちが
どういった性格の持ち主で、どういった関係なのか、
何気ない描写の積み重ねで表現していくんですが、
見ていて牧歌的な気持ちになりました。
子どもの頃、意味もなく歩いたり、
パトカーではないけれど、たまたま拾ったもので
くだらない遊びしたりしたなーと。
パトカーで草原を爆走する姿は
どこだった行けるんだぜ!という
少年たちの無限の可能性を感じさせてくれます。
しかし、そんな牧歌的な気持ちを
すべて打ち消してくれるのが真打ち、ケビン・ベーコン。
彼は少年たちが盗んだパトカーの持ち主で警察官。
ただし、普通の警察官ではなくて、
トランクに半殺しの人間を2人も詰めているんですね。
後半にかけてケビン・ベーコンがなんとかして、
パトカーを取り戻そうと画策していきます。
本作のベーコンは完全に狂気の人で、
その独特のillnessを見ているだけでもオモシロい!
草原に取り残されて走る姿もそうだし、
なんとか家に帰ってきたところで、
怒りにまかせて鉢植を割ったり。
コカインを乱暴にキメる姿がたまらない。
確かにillな人間ではあるんだけど、
目的に向かって一直線なその姿が
逆にファニーに見える瞬間も多くて、
それはケビン・ベーコンだからこそ
為し得たバランスの良さだと思います。
悲劇と喜劇は紙一重というのを 地でいく俳優。
またファニーな部分といえば、
少年2人の演技も映画で笑える
絶妙な間を持っていて素晴らしかったです。
パトカーのトランクを開けたことで
事態は大きく展開していきます。
事の全貌を作品中で明示していないので、
どっちの大人を信じればいいの?という、
少年たちに感情移入しやすい作りになっていました。
ちなみに僕はこのシーンで放たれるおばさんの
 "Oh my god!!"で、映画見て今年一番笑いました。
また、大人たちの争いが想像を超える展開で
終結したのも結構ビックリしました。
これで終わりかと思いきや、再び少年たちの物語になり、
前半のフリが効いてアクセルを踏み込むたびに
僕の目には涙が。。。と思っていたら、
不死身のケビン・ベーコンの鬼の追撃が!
最後の街の明かりが示す希望にグッときましたし、
引き際の鮮やかさにサムアップ!
本作の監督が新スパイダーマンを撮るとのことですので、
俄然期待して待ちたいと思います。

2016年4月19日火曜日

王国

王国 (河出文庫 な)


中村文則作品。
今年中に全部読みたいなーと思っていて、
文庫化した本作を読みました。
本作は掏摸という作品の続編というか、
掏摸と同じ登場人物が登場します。
そこで掏摸を改めて読み返したんですけど、
サスペンス性と純文学性のバランスが抜群で、
超オモシロかったです。
掏摸も本作も作品内で一応完結してるんですけど、
続けて読むと多層的に味わえるので、
ぜひ両方とも読んで欲しいです。
話の筋立てとしては似ていて、
ある強力で全知全能レベルの悪に対して、
主人公が逃れようとするお話です。
掏摸が幾分受動的というか、
運命に翻弄されていく要素が高い一方で、
本作はもっと悪に立ち向かっていく姿勢が強かったです。
主人公が女性でファムファタールな
仕事をしていることもあって、
駆け引きのオモシロさが際立っています。
とくに中盤に悪の権化、木崎と初めて対峙するシーンは
ハラハラするし濃厚な死の香りがたまらない!
中村さんの本は毎回文庫に彼自身の解説が載っていて、
それを読むとさらに小説の構造の理解が深まって、
二度美味しい作りになっているので、
文庫になっている作品は、
文庫で読むことをオススメします。

2016年4月18日月曜日

恐喝こそわが人生


深作欣二監督作品。
若き松方弘樹が主演を務めています。
コンプラ全盛のこの時代にはあり得ない
「恐喝屋さん」の仕事の映画です。
タイトルは仰々しいし、深作監督と聞けば、
さぞハードな世界なのかな〜と思っていましたが、
軽いノリの部分も結構あったことに驚きました。
キャバレーの便所掃除だった主人公が
恐喝で成り上がり、
最後は日本の大きな暗部にまで挑んでいきます。
4人編成でミッションをこなしていく姿は、
スパイ大作戦のようにも見えましたね。
人間誰しも弱みを持っていて、そこにつけ込み、
チンピラと蔑まれる存在が、
むき出しの暴力で打破していくのが、
最高にカッコよかったです。
深作監督はやっぱアクションが良くて、
仇討ちの火炎瓶投げまくりシーンは最高最高!
欲をかいたというべきか、
仁義を通すためというべきか、
彼の選択の結果が切なかったです。
冒頭、松方弘樹が風呂上がりに放つ、
「言うことねえや!ご機嫌な天気だ!」
というのは使っていきたい日本語。

2016年4月16日土曜日

アダルト♂スクール



ハング・オーバーの監督である
トッド・フィリップスと
最強のコメディ俳優ウィル・フェレルの
コンビネーションということで見ました。
ゆるーいアメリカンコメディで、
大人になった主人公が大学敷地内の住居に
住むことになり、そこでフラタニティを結成し、、
というお話でした。
ファイトクラブを下敷きにしているところが
オモシロいんですけど、
ファイトクラブ原理主義者からすると、
コメディとはいえヌルいなぁと思ったり。。
ウィル・フェレルの弾け具合も
アダム・マッケイ作品のときに比べると
物足りない感じもありました。
ダメな男3人がハチャメチャやるという意味では
ハングオーバーのプロトタイプかも。。
一番好きだったのはエンディングで、
悪いやつをまとめて成敗するその姿勢にサムアップ!

2016年4月14日木曜日

リップヴァンウィンクルの花嫁



<あらすじ>
SNSで知り合った鉄也と結婚することになった

派遣教員の皆川七海は、親族が少ないため
「なんでも屋」の安室に結婚式の代理出席を
依頼して式を挙げる。
しかし、新婚早々に鉄也が浮気し、
義母から逆に浮気の罪をかぶせられた七海は
家を追い出されてしまう。
そんな七海に、安室が月給100万円という好条件の
住み込みのメイドの仕事を紹介する。
そこで知り合った破天荒なメイド仲間の里中真白と
意気投合した七海だったが、真白は体調がすぐれず
日に日に痩せていく。そんなある日、
真白はウェディングドレスを買いたいと言い出す。


3時間という上映時間の長さに気後れしていましたが、
色んなところで話題になっていたので見ました。
監督は岩井俊二なんですが、
僕は偏見全開でほとんど見たことがありませんでした。
言い方が悪いですが、
「どうせ女子受けしそうなタマナシ映画作ってるんでしょ〜」
と思っていました。
しかし、四月物語という作品が最高の甘酸映画で、
底の浅いことを思っていた自分が心底恥ずかしくなりました。
そして、本作はその印象をさらに更新するぐらい、
素晴らしい作品でございました。
今の日本なるものが切り取られているというか、
日常の話なんだけれど、どこか浮世離れしていて、
でもそんな現実に私たちは生きているのである、
みたいな話で不思議な気持ちになりました。
3時間の長さも物理的にお尻は痛くなったけど、
体感としてはそこまで長く感じなかったです。


※ここから盛大にネタバレして書きます。

はじめに述べておきたいのは、
本作の驚異的とも言えるショットの美しさです。
ドキッとするレベルのものがたくさんあって、
それと黒木華の天然記念物ばりの魅力のカップリングだけで、
スクリーンで見る価値が十分にあると思います。
前半は七海が結婚に至るまでの流れと、
その後の破滅までを描いていきます。
冒頭、池袋の街中で黒木華がSNSで出会った彼と
待ち合わせするシーンから始まるんですが、
この時点で七海の手を挙げる健気さが
彼女がどういったキャラなのかを示すシーンだと
見終わった後に強く感じました。
とにかく素直で人のことを疑うことはなく、
中身はさながら妖精のような存在。
しかし、現実は甘くなくて非常勤講師に加え、
コンビニのアルバイトを掛け持ちするくらい、
生活はギリギリの状態にあった中、
彼女は結婚を選択します。
この結婚が彼女の不幸を招く最大の原因となります。
こんなこと言うと敵を増やすだけなので、
あまり言いたくないんですけど、
僕は結婚式が得意ではないというか。。。
海外の結婚式のように、
ほぼ自由時間のパーティーならいいんですけど、
決まりごとの多さと見せかけの祝福に耐えられなくて、
「お前の結婚式での態度はいかがなものか?」
と言われること山の如しなんですよねー
そして、本作はかなりデフォルメしてるとはいえ、
僕が感じる欺瞞の本質を明確に突いていて、
とても胸がすく思いでした。
人に対する見栄とか世間体を意識する姿勢って、
時代がいくら進んでも永遠に無くならないのかなー
と少し虚しい思いにさえなりました。
僕が見ていて発狂しそうになったのは、
結婚式の両親への挨拶での子役を使った演出。
こういったサービスが現実に存在しそうな、
世の中の今の空気を感じさせてくれるのが、
本作の魅力じゃないかなと思います。
それを体現するのが綾野剛演じる安室ですよね。
顧客のニーズに対して、
その善悪については思考停止し、
100%でアジャストしていく商売の姿勢。
その最たる例がホテルでの浮気証拠作りのシーンで、
初めに見たときは「コイツ味方じゃないの?!」
と思いましたが、物語が進むにつれて、
彼は頼まれた仕事をただただこなすだけなのが、
徐々に分かってくる作りになっていました。
(安室行きまーすは爆笑!)
サービスを提供する側としては
顧客のニーズに応えないと当然食っていけないんだけど、
そこに新しいものは生まれないというのは、
エンターテイメントで特に強く感じます。
同じく仕事でもバランスが大切だなと最近は思ったり。
2人の結婚が破滅していく過程がなかなかの地獄絵図で、
タマナシどころか、タマあり過ぎるぐらいの勢いでした。
感情が一切介在せずしたたかに生きる安室と
感情豊かだけど流れに身を任せて生きる七海。
2人は正反対で安室が七海を搾取するかと思いきや、
凸凹がぴったり合うかのように物語は後半へ。
後半はCocco演じる真白が出てきて、
巨大な屋敷で2人で暮らし始めて、
七海はメイドとして働き始めます。
とにかくCoccoの魅力がスクリーンから
零れ落ちんばかりに炸裂してるんですよね〜
本人が実際に幸せかどうかは分からないけれど、
場を確実にポジティブに変換してみせる力、
その偉大さを強く感じました。(自分にはないから)
本作最大の見所である、
ウェデイング ドレス着用デートからの
自宅でのパーティーまで、
女性同士の恋愛を彷彿とさせる百合っぽい甘酸。
その中でCoccoが放つ本作の核心を突く、
非常にオモシロい見立てがあり溜飲を下げた次第です。
(幸せの最大値とお金による優しさの形骸化)
死に方のお洒落さには失笑してしまいましたが、
人が亡くなったときのあっけなさという点では
共感できるところはあったかな。。
正直ここで終わってもおかしくなかったけど、
さらにその死後を描いていきます。
一見するとラディカルに見えるシーンがあるんだけど、
裸の付き合いという最も"リアル"なところへ
帰結していくという意味では説得力がありました。
ラストの終わらない日常、
それでも生きていくのであるというオチも好きでした。