2017年9月27日水曜日

塔と重力

塔と重力



上田岳弘最新作。
新刊出たら必ず購入している作家の1人で、
本作も楽しみにしていました。
結果的に2回読んだんだけど、
今回も上田節健在!といった内容でオモシロかったです。
上田さんの小説の何が好きかといえば、
SFと文学のバランスの良さです。
完全にSFという訳ではなく、
SFのモチーフを使った純文学とでも言えばいいのかな?
SFの設定が近年のトレンドを汲んでいるので、
突拍子がない様に見える中にも
「もしかして近い将来あるのかも…?」
と思わせられてしまう。
表題作がメインに据えられていて、
スピンオフ的な短編が2作収められています。
以前から集合知の考え方を作品で提示していて、
それを「肉の海」という言葉で表現していましたが、
本作でも大筋としてズレはない。
ただし、本作は過去の作品に比べて
かなり卑近な物語になっていました。
僕がオモシロいと思ったのは、
人間の個性をパターンの組み合わせと考えるところ。
これだけ演算技術が高まった世界で、
なおかつAIが本格的に活用される時代において、
自分という存在は本当に唯一無二?
もうすでに存在しているパターンの
組み合わせの1つにしか過ぎないのでは?という問い。
また、自分は下界で生きる器でしかなく、
本当の自我は別のところにあるっていう、
マトリックスに代表される設定も、
「小窓」から世界を覗くという表現になっているのが
「肉の海」と同様の感覚でオモシロい。
ハイテクな話って横文字使って
かっこ良く言いたい願望ってあると思うんですけど、
それに冷や水ぶっかけてるみたい。
あとFacebookを使った展開がフレッシュかつ、
確かに!と思うところ山の如し。
全体に厭世観が漂っているものの、
ラストは性→生へとランディングしていくので
読後は比較的穏やかな気持ちになりました。
次作も必ず買います。

2017年9月23日土曜日

ビフォア・アイ・フォール



NETFILXオリジナル作品。
基本ドラマがメインにあって、
素晴らしい作品が山ほどあるんですが、
映画も負けず劣らず良い作品が多いことは
ここで繰り返しお伝えしている通りです。
本作は2017年版 時をかける少女 US VER.
といった感じでオモシロかったです。
主人公の女の子はイケてる女子グループに所属していて、
楽しい学園生活を送っている。
ある日、夜にパーティーへ行った帰りに
交通事故に遭ってしまう。
しかし、目を覚ますと時間は前日の朝。
いわゆるタイムループもので、
僕はこの系統の作品が好きです。
(オール・ユー・ニード・イズ・キル、
ミッション8ミニッツとか)
タイムループ ミーツ アメリカ青春ものという
好きなもののかけ算だから好きに決まっているだろう!
タイムループものは何回もこすられ倒している
SFの古典的設定なので、
こうなるかな?と想像しながら見ていたんですが、
斜め上の着地でかなり驚きましたし、
作品自体が訴えるメッセージの前向きさが 刺さりました。
つまり、YOU LIVE ONLY ONCEという話で、
自分に残された時間は不透明な訳で
明日死ぬかもしれないし、1万日後に死ぬかもしれない。
そんな状況下で毎日を大切に、
そして前向きに生きた方がいいかもよ
というメッセージを同じ日を繰り返し生きた彼女が
文字通り身をもって伝えてくれるんだから
たまらないものがありました。
個人的には本作のエンディングで
Janet JacksonのAfter you fallを流して欲しかった!

愛について語るときに我々の語ること

愛について語るときに我々の語ること (村上春樹翻訳ライブラリー)

バードマンで本作の存在を知って、
ずっと読みたいと思っていて遂に読みました。
短編集でタイトル作も当然オモシロかったのですが、
他の短編も何ともいえない余韻を残す作品が多く
新しい読書体験でした。
とにかく物語の切れ味の鋭さが
他の作家にない部分だと思います。
これは結局…?という気持ちになることも多々。
あとはお話自体が全体に物悲しさに包まれていて、
なおかつシュールさが漂うというね~
なんとなく全体をぼんやりと読了したあとに
付いているのが村上春樹による解説。
カーヴァーのキャリアを振り返りながら、
本作が彼にとってどういう位置づけにあるのかを
説明しつつ、収録された全ストーリーについて
解題と称して解説してくれています。親切設計。
この解題が物語の理解の促進にめちゃめちゃ役立ちました。
もしこれから読む人がいるなら、
1話読む→解説読むという形で
読むのが良いかもしれません。
僕が好きだった話は「ダンスしないか?」「ファインダー」
「私の父が死んだ三番めの原因」「深刻な話」
「出かけるって女たちに言ってくるよ」
「足もとに流れる深い川」
「何もかもが彼にくっついていた」
表題作はバードマンの中の
舞台原作として扱われていたんですが、
想像以上に映画とこの作品の結びつきが
大きいことを知りました。
改めてバードマンを見なければ。。。

2017年9月22日金曜日

アメリカから来たモーリス



先月ユーロライブでKICKSというえ映画と
2本だてで上映されたものの予定合わず
見れなかったんですがNETFLIXにあったので
見ることができました。
HIPHOPミーツ甘酸な内容でとてもオモシロかったです。
主人公のモーリスはアメリカで育ったんだけど、
父の仕事の都合でドイツで暮している。
言葉を流暢に話せないこともあり、
なかなか馴染めない生活の中で、
ワークショップで出会った女の子と
仲良くなっていって…という話。
モーリスと父の好きな音楽がHIPHOPで、
映画の冒頭で流れるのはCome Clean!



「このビートに乗れないやつは趣味が悪い!
外出禁止だ!」という父のスタンスが最高だし、
モーリスがイヤホンでHIPHOPを聞きながら、
街に出かけるときの演出が素晴らしかったです。
美術館でのフラッシュモブのようなところや、
街の風景が音楽で彩られる瞬間が刻まれていました。
さらに父親の子どもの頃の
フリースタイルを録音したテープというニクい設定と
それを好きな女の子の家で聞くっていう
カオスな演出も良かったです。
(父のフリースタイルはビギーのリリック!)
モーリスは友人と打ち解けられない中で、
リリックをしたためているんだけど、
性とバイオレンスにまつわるステレオタイプなもの。
それが原因でさらに人と疎遠になってしまう。
父はモーリスと何とか打ち解けようとするんですが、
母親を亡くしているため男やもめで、
モロ思春期な息子との対峙方法について葛藤する姿と
子どもの目線に立つスタンスが好きでした。
あとはモーリスと女の子の
くっつきそうでくっつかない絶妙な甘酸。
かなり苦み成分多めではあるものの、
彼が大人になる第一歩なのです。
(自家製ダッチワイフはヤバ過ぎたけど。笑)
それはともかくラストのモーリスのフリースタイルは
ラップを自分のものにした姿がかっこ良かったです。

2017年9月20日水曜日

ベテラン


相も変わらずNETFLIX漬けで、
家で常に見ている危険な状態です。危険ドラッグです。
本作は劇場公開時に見逃していたので見ました。
超もったいなかった!と後悔せざるを得ないくらい、
痛快アクション作品で最高最高!
リュ・スンワンと知り納得。
アクションシーンのキレがとにかく素晴らしく、
どつき合いシーンはどれも見応えあって全然飽きない。
(チャカがほとんど出てこないのがナイスだと思う)
さらに本作はコメディ要素もあって、
笑かしてくれつつもハラハラする。
ノリとしてはジャッキー映画に近いものがあるかも。
勧善懲悪ものなので、いかに敵が悪いやつらか?
ここをどれだけフレッシュかつマシマシにできるかで、
映画への感情移入度合いが決まってくると思っています。
脚本もリュ・スンワンが担当しているので、
彼のアイデアだと思いますが、
こんなに極悪なキャラクターをよく思いつくなぁと。
久々に鬼畜の所業という言葉が脳裏をよぎりました。
前半だけで腹わた煮えくり返って、
「こいつだけではできるだけ苦しんで死んでくれ」
と嫌が応にも思わざるを得ないぐらい。
そして主人公が悪を許せない不器用な刑事となれば、
オモシロいに決まっている!
しかも、労働問題を起因とした財閥企業の不祥事隠し
という骨太な社会問題までインクルードしている、
韓国映画の懐の深さを感じました。
これが爆発的ヒットする社会が羨ましい限り。
アクションコメディ見たい方に大推薦!

2017年9月17日日曜日

コンプレックス文化論

コンプレックス文化論

武田砂鉄さんの新刊はマスト!なので読みました。
普段皆が気にはしているものの、
何となくスルーしていることや人に対して、
必要以上に真剣に向き合って矛盾点を
あぶり出していくその論法は10年代を代表する、
本当の意味での社会批評だと僕は勝手に思っています。
本作も例に漏れず最高にオモシロかったです。
本作はコンプレックスを抱える人が
産み出すエネルギーはカルチャーの充実に
繋がっているはずだ!という見立てのもと、
天然パーマ、下戸、一重、実家が金持ち、
ハゲ、背が低いなどの様々なコンプレックスへの
武田さんの論考+そのコンプレックスを抱えた
アーティストへのインタビューという構成になっています。
ご存知のとおり、僕は天然パーマという
不治の病と長年格闘している立場なので、
我が意を得たり!と思える話の連続で救われる気持ちでした。
一方で自分が持っていないコンプレックスについては、
普段考えることがほとんどないこともあって、
「あぁ、こういう苦しみがあるのか…」
という新たな視点を得ることができました。
とにもかくにも本作でも武田さんの切れ味が
あまりにも鋭過ぎてニヤニヤが止まりませんでした。
ジャンルレスな引用から見える圧倒的な読書量と、
単純なディスではなくwitに満ちた意見が超オモシロい。
コンプレックスの最近の話題といえば、
豊田議員の「このハゲ〜」がありましたね。
東京ポッド許可局で話されていたときに、
他にも色んな暴力的なこと言っているのに、
「このハゲ〜」だけが免罪符を得たかの様に
マスコミで喧伝されるのはおかしいのでは?
という議論がされていてなるほどなーと。
ハゲは傷つかないからOKでしょ?
という暗黙の了解が社会で形成されてしまっている。
確かに彼女の暴言の中で一番キャッチーだったけど、
お前の娘が強姦されて云々のほうがよっぽど危ないでしょ。
話が逸れてしまいましたが、
コンプレックスとの向き合い方については、
クソな自己啓発本を読むより断然本作を薦めたい!

精神病とモザイク タブーの世界にカメラを向ける

精神病とモザイク タブーの世界にカメラを向ける (シリーズCura)

映画監督の想田さんの精神という
素晴らしいドキュメンタリーがあるんですが、
それについて深掘りした著書です。
結構前に見たんですけど、
記憶が蘇ってもう1回見たくなった。。。
想田監督の作品は観察映画というスタイルで、
ナレーション、テロップ、音楽がない中で、
見る側が主体的に映画を観察することで、
能動的な映画体験が得られるもの。
こちら側が読み取ったものと
実際どうだったのか?を確認するのも楽しいし、
こんな裏側が…という話も興味深かったです。
精神という映画では岡山にある精神診療科での日常を
撮影したドキュメンタリーなんですが、
何が画期的なのかといえば
被写体となる患者にモザイクをかけていない点。
本来は患者のプライバシーを守るはずのモザイクが
作り手側のセーフティーになってしまい、
精神病が「危ない」というイメージの
一方的な押しつけになってしまっている。
あとは精神病と非精神病の境目についての
論考もとても興味深かったです。
自分とは全く異なる人と見切ってしまうのではなく、
自分がいつ罹患するか分からないし、
正しく思考できないというレッテルを
一方的に貼ってしまうのは違うんじゃないか?
社会から排除することで見えなくするのではなく、
何がどの程度問題なのかを可視化していく作業が
必要だなーと感じました。
いきなり何かが劇的に変わることはないのかもしれないけど、
こういった映画が広まることで
社会が変わっていけばいいなぁという
うすぼんやりした希望を持ったりしました。

2017年9月16日土曜日

ダンケルク



<あらすじ>
ポーランドを侵攻し、そこから北フランスまで
勢力を広げたドイツ軍は、
戦車や航空機といった新兵器を用いた電撃的な戦いで
英仏連合軍をフランス北部のダンケルクへと追い詰めていく。
この事態に危機感を抱いたイギリス首相のチャーチルは、
ダンケルクに取り残された兵士40万人の救出を命じ、
1940年5月26日、軍艦はもとより、
民間の船舶も総動員したダイナモ作戦が発動。
戦局は奇跡的な展開を迎えることとなる。
映画.comより)

クリストファー・ノーラン最新作。
あのノーランが実話に挑戦!というふれこみで、
10回くらい予告を劇場で見ていて、
どうなんだろうと思いながら
金曜日のIMAXという
孤独なおじさんだらけの環境で見ました。
お話がどやねん!問題もあるけれど、
IMAXカメラで取られていることもあって、
息を呑むショット、音の数々に魅了されました。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

初め10分くらいほとんどセリフがない中、
戦場の緊迫感を伝えるショットの数々が展開されます。
あらすじにあるような詳細な戦況は
物語内で語られることはないんだけど、
陸づての退路はありえないことが分かるような
オープニングの戦闘シーンの迫力が抜群。
さらに浜辺にいる大量の兵士に対して、
ドイツ軍が空爆してくるシーンも圧巻。
何にも遮るものがない中で、
皆がひれ伏し頭を隠す姿の虚無感と、
それを打ち砕く迫ってくる爆弾の爆音。
このまま油断できない瞬間が
映画終わるまでひたすら続いていく。
お話の構造としては3つの話で語られる形式になっています。
単に3つがバラバラにという訳ではなく、
それぞれの話の時間軸が異なり、
1時間、1週間、1日となっていました。
ここはノーランっぽいというか、
映画は時間をコントロールする芸術なのである、
という過剰な自意識が見え隠れするので、
うるせーなと思う人も多いかもしれないですけど、
僕は楽しければそれでいいかなと思います。
今回この時間軸設定があることで、
何か効果的なことがあったのか?と言われると
それは疑問なんだけど、1つの謎解きとして
物語を推進する力はあると思います。
(結局、時間感覚おかしくね?という問題は
ここで議論されていたので参考まで→リンク
あと時間という点でいえば、
ずーっとチクタクという時計の音が映画内で
鳴り続けているんですよね。
最後の列車のシーンで時計の音がなくなった瞬間の
あの全部終わった感は最高に素晴らしかったです。
(しかも時計はノーランの私物らしい→リンク
前半はそれぞれがバラバラに進行する中で、
少年兵がなんとか船に乗って
エスケープしようとするシーンが一番オモシロい。
とにかく乗る船、乗る船が破壊されていくし、
その混乱の描写が圧巻。。。
とくに水攻めは映画全体でずっと続くんだけど、
見てるこっちが溺れているような感覚にさえなりました。
あとは音がとにかく最高で低音ブンブン効きまくり!
ハンズ・ジマーのスコアも素晴らしかったです。
この少年のエスケープシーンの数々の迫力が
ぶっちぎりで凄過ぎて、
残り2つの話が退屈に思えてしまうですよねぇ前半は。
後半にかけて、この3つの話が繋がっていくので、
楽しめるようになっているんですけど。
とくにトム・ハーディーがパイロットを演じている、
空中戦のシーンが見にくい印象を持ちました。
コックピットでのシーンが多く、
臨場感は十分にあるんだけど、
引きで飛行機を撮っているシーンが少ないため、
実際にどんな状況なのかを想像しにくかったです。
ただ、トムハーディーは安定のかっこ良さであり、
終盤にかけての燃料少ない中、
行くのか、行かないのか?で見せる漢気は燃える!
あと燃料ない状態での飛行シーンと
着陸ショットの圧倒的な美しさ…
ここに限らず、海岸のシーンの抜けのよさが
僕は本作のかなり好きな部分です。IMAXとの相性抜群。
残り1つのダンケルク撤退からのキーとなる
海軍ではない一般人による救出の一連のシークエンス。
ここが何とも乗り切れなかった。。。
前半から丁寧に描く意味をあまり感じなくて、
交錯していくところを描きたい気持ちは分かるけど、
お話は停滞してるし、途中1人が頭打って
亡くなってしまうシーンとラストの回収も、
あまり納得できませんでした。
当然ダンケルクの特別なところは、
この一般人による救出という点が大きいのは
見終わったあとに十分理解できたんですけど、
もうちょっとバランス考えても良かったかも。
あとフランスの扱いも納得し辛く、
実話ベースなのでイギリス兵だけ逃げれました〜
という話なのである。と言われれば
そうなんですね、としか言いようがない。
最後に言い訳のような回収も一応用意されてたんだけど、
それが取って付けた様にしか見えなくもない、、
(結局何が言いたいねん!って話ですけど。笑)
色々うだうだ言ってきましたが、
VFX当たり前のこの時代にリアルにこだわって
戦争映画を作ろうとするその心意気や良しな訳で、
しかも、その迫力は間違いなく唯一無二なので、
絶対IMAXで見て欲しい作品です。

2017年9月14日木曜日

動物農場

動物農場〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)

ジョージ・オーウェル作の
クラシックということで読みました。
動物が主人公の寓話で
独裁国家の誕生とその過程を描いています。
あとがきによると第二次大戦時に
スターリンを中心としたソ連の腐敗した
社会主義体制を批判するため、
本作を書いたとのことでしたが、
寓話になっているので、
かなり普遍的な内容となっており
悲しいかな今の時代でも
十分当てはまることがあるなーと思いました。
ざっくりのストーリーとしては、
ある人間の農場で豚を中心としてクーデターが起こり、
動物の動物による動物のための農場を取り戻し、
そこで動物たちの自治が始まるものの、
知能を持った豚たちが横暴な政治を繰り広げていく。
今の時代でも特に通用するのは、
プロバガンダでコントロールしていく過程。
権力者は自分たちの都合しか
考えていないことを突きつけられました。
また本作がオモシロいのは横暴な権力者だけではなく、
その支配下におかれた人たちの無知が
悲劇を生むことも描いているところ。
ニコニコしながら
「何も悪いことはしてないんだ!」
「君たちのためなんだ!」ということを鵜呑みにしていると、
どんな結末が待っているのか?
「あのとき抗議・反対していれば、、、」
と後悔しても遅いのかと近年の政権運営のことを思い出して
頭が痛くなりました…
他人事と思っていたら、いつの間にか自分が追い込まれて
生きにくい世の中が形成されているってホントやだなぁ。
1984年も早く読みたい!

三度目の殺人



<あらすじ>
勝つことにこだわる弁護士・重盛は、
殺人の前科がある男・三隅の弁護を仕方なく担当することに。
解雇された工場の社長を殺害して
死体に火をつけた容疑で起訴されている三隅は
犯行を自供しており、このままだと死刑は免れない。
しかし三隅の動機はいまいち釈然とせず、
重盛は面会を重ねるたびに、
本当に彼が殺したのか確信が持てなくなっていく。
映画.comより)

是枝監督最新作。
黒沢監督と是枝監督の最新作が
同時期にかかっているという、
フィルシネにとって最高の秋が訪れている訳ですが、
本作も超弩級の作品でした。。
真実とは?ということが
21世紀になってこれだけファジーになることを
一体誰が予見したでしょうか?ということを
最近考えたりします。
(テクノロジーがこれだけ発展したにも関わらず)
その問いについて日本の法廷を使って、
是枝監督がそのまま映画にしたような作品でした。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

物語の基点となる役所広司演じる三隅が
クビにされた勤め先の社長を殺すシーンから
映画は始まります。
誰が殺したのか、そしてその動機を巡って
物語が展開される法廷サスペンス。
そして、父になる以来のましゃが演じるのは
非常にドライな弁護士。
依頼人である被告の刑が少しでも軽くなることを
仕事にしている弁護士にとっては、
真実なんてどうでもいいという割り切った考えで、
何とか三隅の自白を覆すような戦術を考えていきます。
ましゃは本当にドライで高飛車な男を演じさせたら、
右に出るものはいない気がします。
作りとしては、そして、父になるに似ていて、
ニヒリスティックな男があることをキッカケに
心が動かされてエモーショナルを取り戻すというもの。
この揺り戻しのエモさとドライのギャップを
どこまで出せるかが映画のオモシロさに直結する訳で、
今回もましゃはその点が抜群でした。
さらに今回はそこへ役所広司をかけ算しているので、
観客の心の深いところへグッと迫ってくる。
役者の力だけではなく閉塞感のある画作りも特徴的で、
顔のクローズショットがめちゃめちゃ多くて、
スクリーンから感じる顔圧に圧倒されました。
抜けの良さがあるのはましゃが夢見た、
主役3人が雪山で遊んでいるシーンくらい。
争点になるのは強盗殺人か、単なる殺人か、
ここで死刑かどうかが決まる。
劇中でも言及されていましたが、
量刑の件は確かになーと思いました。
人が1人亡くなったという結果は同じだとしても、
動機の部分(金 or 怨恨)で被告が死ぬ/死なないが決まる。
論理的な考えに対して人間の主観が介在している
なんとも言えなさを見ている間に感じました。
とくに途中で三隅が無罪を訴え始めたときの
検事、弁護士、裁判官の談合シーンは見るに堪えない。
本作では何が真実なのかが明確に語られません。
ここが僕は好きな部分で、その象徴が役所広司演じる三隅。
毎回、会う度に異なる証言をする彼の姿は、
虚言癖という一言では語りきれない
底知れない闇の深さと理知的な部分のバランスが
とても恐ろしく思えました。
新しいサイコパス像とでも言うべきか。
命の取り扱いへの言及も興味深くて、
平等なんてものはなく取捨選択されているのが実情。
という意見で三隅とましゃが近い考えを
持っていることが分かってからは怒濤の顔対決!
とくに年の重ね方というべきか
役所広司の顔から滲み出る深み迫力は
絶対映画館で見た方がいいと思います。
(家のテレビじゃあの迫力が伝わらない)
とにかく2人の顔の魅力を生かすカメラの力が尋常じゃない。
面会室での撮影で僕が好きなのは凶悪なんですが、
それがアップデートされた感覚を持ちました。
面会室で被告と弁護人を挟む一枚のガラス板の意味が
スクリーン上でヒシヒシと炸裂。
ガラス板を使った顔重ねは
セリフだけではなく映像で2人の立ち場を見せる
素晴らしい演出でした。
刑務所の内側と外側の違いは
人が決めた単なる境界でしかないのであるというねー
ラストは十字路に佇むましゃの姿が
また何とも言えない余韻を残してくれる。
結局真実は何だったのか?が重要なのではなく、
それぞれの持つ事実にどう向き合うかが大切なのかもな
と帰り道にぼんやり考えたりしました。

2017年9月13日水曜日

散歩する侵略者



<あらすじ>
数日にわたって行方がわからなくなっていた
夫・真治がまるで別人のように優しくなって
帰ってきたことに戸惑う妻・鳴海。
それ以来、真治は毎日どこかへ散歩に出かけるようになる。
同じ頃、町で一家惨殺事件が発生し、不可解な現象が続発。
取材を進めるジャーナリストの桜井はある事実に気づく。
不穏な空気が町中を覆う中、
鳴海は真治から「地球を侵略しに来た」
という衝撃的な告白を受ける。
映画.comより)

黒沢清監督最新作。
クリーピーきっかけで過去作を結構見ましたし、
本も読んでますます監督の世界観が好きになりました。
ただメジャー系作品でいえば、
リアルという作品が僕はあんまり好きではなかったので、
少し不安も抱えていましたが杞憂でした。
他の人にも薦めやすい分かりやすさと
いわゆる黒沢節のバランスがちょうど良かったです。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

バランスが…とか言いましたが、
映画のイントロはとてもイビツで、
物語の世界観をここで決める!
という意気込みさえ感じました。
クリーピーに引き続き門扉ごしのショットの先で
起こる陰惨な出来事はとてもショッキング。
「このぐらいは当たり前に起こるのでよろしく」
と言わんばかりの勢いでした。
タイトルからも分かる通り本作はSFの宇宙人ものです。
宇宙人といえばポールのような
皆が共通でイメージする形がありますが、
本作では人間を乗っ取るという設定になっていて、
見た目は完全に人間のまま。
宇宙人は侵略する世界に適合するために、
人間の「概念」を奪い取る。
そして奪い取られた人間は、
その「概念」を持たない人間になってしまう。
「概念」を巡るやり取りが本作の肝で
めちゃくちゃオモシロいんですよねぇ。
「家族」、所有の「の」、「仕事」という概念を
奪い取って主人公の真治が理解していく過程も
然ることながら奪い取られた側の人間の変化が
最大の見所になっています。
僕が一番好きだったのは「仕事」を取られた鳴海の上司。
初めこの上司はザ・仕事人といった感じなんですが、
真治に仕事の概念を奪い取られた後の、
オフィスでの立ち振る舞いが最高過ぎ!
童心というレベルではない、
イイ意味でのふざけっぷりを光石研が
文字通り体現していてめっちゃ笑いました。
真治と鳴海は、真治が宇宙人になる前、
夫婦関係があまりうまくいってなかったことが
見ていて分かるんですが、安易に回想入れないところも
黒沢節というか思いっきりのよさを感じました。
黒沢監督の特徴である光の使い方と
ワンカットへのこだわりを注目して見てたんですが、
それらは本作でも冴えていたと思います。
前者については光石研のシーンがもっとも特徴的でしたが、
全体にずーっと曇天というのも世紀末な感じで好きでした。
後者については引きのワンショットは少なかったですが、
移動しつつ実はワンカットみたいなのが多かったです。
(ぐるぐる回転させるやつがフレッシュで好きでした)
俳優陣がとにかく豪華なのも本作の見所の1つ。
主演の2人は然ることながら、
脇を固める近年の黒沢組の役者陣もすばらしかったです。
松田龍平と黒沢清の相性はかなり良い!
朴訥で何考えているか分からない系と黒沢監督作品の
相性は抜群なので、松田龍平は今後も出演あると思います。
(今回の東出君のように。
宇宙人じゃないのにヤバいヤツに見えるっていう…)
宇宙人は感情が平坦なので映画内のエモーショナルを
メインで担うのは長澤まさみと長谷川博己。
長谷川博己は超エクストリーム系の役は
今一番ぴったりくるなーと終盤にかけて思いました。
終末思想の慣れの果てはバッドエンドなんだ、いつだって。
長澤まさみは瞬間瞬間の魅力が凄い…
「もう、やんなっちゃう!」っていうセリフに
違和感がまったくないところとか。
宇宙人に乗っ取られ別人になっているはずの
真治に自然と惹かれていくところとか。
ラストの「愛」の概念を巡るシークエンスは
どんな恋愛映画よりも純度が高い形で、
愛の必要性が分かる仕掛けになっていて素晴らしかったです。
All we need is love.
ダゲレオタイプの女を見ていないので、
それを早く見ねばと思っております。

2017年9月6日水曜日

裸足で逃げる

裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち (at叢書)

以前にSession22で特集されていて、
それで興味を持って読んでみました。
帯コメントの岸政彦さんの言葉がとても印象的で、
読み終わったあと確かに暗いなぁと思いました。
(全然関係ないけど、OMSBのTwitterで見た
田我流のパンチラインが素晴らし過ぎて、、
ラッパーかくあるべし→リンク
上間さんは沖縄出身の社会学者で、
東京で勉強したのちに沖縄へ戻り調査しています。
本作は沖縄で生きる10代の女の子たちの
インタビューをまとめたものです。
登場する女の子たちはDVに苦しんでいたり、
若いうちに出産して貧困に苦しんでいたり。
それぞれが複雑な事情を抱えながら
何とか生きていく方法を模索している様子が
本人たちへのインタビューを筆頭に
痛いほど伝わってきました。
沖縄と聞くとリゾートのイメージしか
沸かない方も多くいると思いますが、
その裏側を知ることも重要だと僕は思います。
それは本作で描かれるような貧困然り、
第二次大戦中、および戦後の米軍基地の扱いも含めて。
楽しけりゃそれで良いじゃんでは終わらない。
僕が一番強く感じたことは
本作で登場するような立場の女の子を
国や自治体でもっと包括的に助けられないのか?ということ。
キャバクラや性風俗で働くしか、
シングルマザーが生きていけないというのは
あまりにも選択肢が少な過ぎるように思います。
(上記の職業を卑下してる訳ではないです)
自己責任論の空気が醸成されている
今の世の中においては彼女たちも
その餌食になってしまうかもしれないんだけど、
子どもに罪はないと思うんですよね。。
あまりに辛い経験の羅列にも関わらず、
この本から伝わってくるのは
たとえ抜け出せそうにない暗闇にいても
光は必ず射すということ。
むしろ懸命に生きていく彼女たち自身が輝くことで、
自らがいる暗闇を光で満たしていく、
という表現の方がしっくりくるかな?
そんな素敵で無敵なLadyの話に耳を傾けてみて欲しいです。

2017年9月3日日曜日

新感染 ファイナル・エクスプレス



<あらすじ>
ソウルでファンドマネージャーとして働くソグは
妻と別居中で、まだ幼いひとり娘のスアンと暮らしている。
スアンは誕生日にプサンにいる
母親にひとりで会いにいくと言い出し、
ソグは仕方なく娘をプサンまで送り届けることに。
ソウルを出発してプサンに向かう
高速鉄道KTXに乗車したソグとスアンだったが、
直前にソウル駅周辺で不審な騒ぎが起こっていた。
そして2人の乗ったKTX101号にも、
謎のウィルスに感染したひとりの女が転がり込んでいた。
主人公のソグ親子のほか、妊婦と夫、野球部の高校生たち、
身勝手な中年サラリーマンなど、さまざまな乗客たちが、
感染者に捕らわれれば死が待ち受けるという極限状態の中で、
生き残りをかけて決死の戦いに挑み、
それぞれの人間ドラマが描かれる。
映画.comより)


エル ELLEを見たあと、
頭がクラクラしながら新宿でカレー食べて
TOHO→ピカデリーの梯子で見ました。
どストレートのエンターティメントで
めちゃくちゃオモシロかったー!
ベタな部分も大いにありますがベタ万歳!だし、
ゾンビなんかより利己主義な大人の方がクソ!
という展開にぶち上がりました。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

本作は韓国産のゾンビ映画。
あらすじにあるように高速鉄道の中へ
ゾンビが転がり込んできて、
どんどん感染が広がっていき、
果たして生き残れるのか?というものです。
主人公のソグを演じるのはコン・ユ。
トガニという映画にも出ていて、
それがとても好きだったので登場した段階で期待大。
ソグはファンドマネージャーで、
血も涙もない仕事人間であることが
映画序盤で描かれます。
マンションのシーンが好きで、
めちゃくちゃハイソなところに住んでいるだけど、
ソグの母親がリビングでゴリゴリの生活感ある感じで
暮しているのが笑えた。(発泡スチロールで育てる植物!)
娘のことも完全に二の次で発表会にも行かないし、
誕生日プレゼントを職場の後輩に聞いて、
Wii買ってあげるけど、それはすでに家にあるっていう。
ここで彼が以下に利己主義な人間なのかを描くことで、
今後起こっていく事態の大事な伏線になっていました。
今回のゾンビは噛まれると感染するタイプで、
動きはかなり早い系でした。
最近は遅い系がトレンドですし、個人的には遅い系の方が
切ない気持ちになるので好きなんですが、
早い系も早い系でいいものですね。
電車内という限定空間×ゾンビの組み合わせが
かなりフレッシュでオモシロかった!
どんどんゾンビが増えて追い込まれていく中で、
ソグは自分だけが生き残れればいいという考えのもと、
サバイブしようとします。
しかし、おばあさんを気遣う利他的行動を取る娘や、
車内で出会った夫婦の夫に影響されて、
なんとか皆で生き残ろうという方向へじょじょに変化していく。
それが決定的になるのは一度駅で下車するシーン。
このシーンでのゾンビの量が圧巻でした。
本作を見た誰もが妊婦の妻を持つサンファが
大好きになると思います。演じているのはマン・ドンソク。
クマさんみたいな見た目で、
コメディもシリアスもいける素晴らしい役者だと思いました。
序盤は腕力とコメディセンスを発揮し、
後半は激烈エモい展開へと繋がっていく。
自分の身を挺して人を守る漢気のかっこ良さ!
涙でスクリーンが濁ってしまったよ!
ベタと言われてしまえば、それまでだけど
フリが丁寧なので心の琴線に触れまくりでした。
ゾンビ映画ではゾンビの怖さも然りですが、
残された人間側の問題も大きくフォーカスされる。
今回は特に利己主義と利他主義の話でした。
大人になればなるほど、
自分のことしか考えなくなるという設定になっていて、
その悪夢的状況を子どもが苦しむっていう。。。
もうすでにそこそこ大人になったので、
自分ならどうするだろう?と突きつけられている感じ。
電車の車両の構造を使って、
主人公たちがゾンビと利己主義の大人たちと挟まれる。
単純に仲間割れを描くのではなく、
演出で「どっちが怖いですか?」と見せるのが好きでした。
主人公たちはどんどん追い込まれていくんだけど、
「大人なめんな!」という逆の利他的行動が
次々と展開されていき、こちらはその度に涙腺が刺激される。
自分のために生きるのは楽ですが、
誰かのために生きることも必要だよなと
ダラダラ生きているコチラ側にグサグサ刺さる内容でした。
お話の中身もオモシロいのだけれど、
ゾンビ表現としてもオモシロいところ多数。
一番最高だったのは電車の乗り換えシーン。
走っている電車を追いかけるゾンビを
空撮で抑えたシーンが最高だったし、
さらに大量のゾンビが橋を作るとか超フレッシュ!
最後は究極に最悪で自分勝手な
利己主義の塊のバス会社常務とのバトル。
まさかの展開で驚いたし、ゾンビ化するところを
あんなにロマンティックに演出しているのも
起こることは悲劇だけどオモシロかったです。
ラストのトンネルでの歌→娘の顔オチという
エンディングがとても力強かったです。
アイアムアヒーローもかなり好きでしたが、
僕は本作の方が好きかも。
これからホットになるといいなアジア系ゾンビ映画。

2017年9月2日土曜日

エル ELLE



<あらすじ>
ゲーム会社のCEOを務める女性ミシェルは、
ある日突然、自宅に侵入してきた
覆面男に襲われてしまう。
何事もなかったかのように
今まで通りの生活を送ろうとする
ミシェルだったが、襲われた時の記憶が
フラッシュバックするようになっていく。
犯人が身近にいることに気づいたミシェルは
その正体を突き止めようとするが、
自分自身に潜んでいた欲望や衝動に
突き動かされて思わぬ行動に出る。
映画.comより)


ポール・ヴァーホーベン監督最新作。
彼の作品はまだまだ未見のものが多いけど、
とりあえず最新作を劇場で!というノリで見ました。
久々に忘れていた感覚というか、
映画は他人の創造の世界を覗き見るもの
ということを思い出させてくれました。
Fuck共感!な攻めの姿勢がとてもかっこ良かったです。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

もう冒頭からどうかしているんですけど、
あらすじにあるミシェルというおばさんが
目出し帽をかぶった男に
レイプされるっていう…なんなんだ!
これはきっかけにしか過ぎないんだろうな
と思っていたら、
逆にこのレイプを中心として話が展開される。
犯人が誰なのか?という謎解きの側面も
もちろんあるんだけれど、
それよりも性に対する欲望を巡って
登場人物たちが交錯していくところが
とてもフレッシュでオモシロかったです。
社会で「普通」と定義されていることに対して、
そこを飛び越えて、
どんな人間でも持っている人と違う部分に
フォーカスすることで、
物語の世界を豊かにしているんですよね。
以前に見た同監督のトリックという映画と
地続きであるように感じました。
クセもの揃いで脇役と呼べる人物が
ほとんどいなくて、どのキャラクターにも
「えっ?」と一度は思ってしまう。
要するに登場人物が全員ボケで
ツッコミの要素が全くない中で物語が進んでいく。
初めは混乱するんだけど、
途中から没入してしまっている自分がいて、
130分と比較的長めにも関わらず、
体感時間はかなり短く感じました。
混乱の中、物語に没入してしまうことは
主人公のミシェルが隠された自分の快楽を
見い出すのと似ていることに
途中で気付いてゾワゾワしました。
ただ、ホントにレイプされたことのある
女性にとっては最悪の映画だろうし、
嫌がっているけど喜んでいるんだ
という考えを流布するようなもので、
それはレイプを助長するようなものなのでは?
と思ったりもしました。(真面目に考え過ぎ?)
いわゆる「正しくないこと」しか描かれないので、
見る人によっては辛いものかもしれないですが、
逆に映画だからこそ表現できるものなんだとも思います。
フィクションと理解した上で楽しむ大人のたしなみ。
全体にコメディタッチでもあるので、
そこで多少緩和されているところもあるかな?
(最高に笑える箇所多数!)
あとラストショットが凄い好きで、
両親の墓碑のところで長年の付き合いの親友と、
男ってホントアホだよね〜みたいな感じで
歩いて去っていくんですね。
これだけ壮絶な話があったのに軽やか〜みたいな。
人間は複雑な生き物だと体験できる映画でした。