2017年9月2日土曜日

エル ELLE



<あらすじ>
ゲーム会社のCEOを務める女性ミシェルは、
ある日突然、自宅に侵入してきた
覆面男に襲われてしまう。
何事もなかったかのように
今まで通りの生活を送ろうとする
ミシェルだったが、襲われた時の記憶が
フラッシュバックするようになっていく。
犯人が身近にいることに気づいたミシェルは
その正体を突き止めようとするが、
自分自身に潜んでいた欲望や衝動に
突き動かされて思わぬ行動に出る。
映画.comより)


ポール・ヴァーホーベン監督最新作。
彼の作品はまだまだ未見のものが多いけど、
とりあえず最新作を劇場で!というノリで見ました。
久々に忘れていた感覚というか、
映画は他人の創造の世界を覗き見るもの
ということを思い出させてくれました。
Fuck共感!な攻めの姿勢がとてもかっこ良かったです。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

もう冒頭からどうかしているんですけど、
あらすじにあるミシェルというおばさんが
目出し帽をかぶった男に
レイプされるっていう…なんなんだ!
これはきっかけにしか過ぎないんだろうな
と思っていたら、
逆にこのレイプを中心として話が展開される。
犯人が誰なのか?という謎解きの側面も
もちろんあるんだけれど、
それよりも性に対する欲望を巡って
登場人物たちが交錯していくところが
とてもフレッシュでオモシロかったです。
社会で「普通」と定義されていることに対して、
そこを飛び越えて、
どんな人間でも持っている人と違う部分に
フォーカスすることで、
物語の世界を豊かにしているんですよね。
以前に見た同監督のトリックという映画と
地続きであるように感じました。
クセもの揃いで脇役と呼べる人物が
ほとんどいなくて、どのキャラクターにも
「えっ?」と一度は思ってしまう。
要するに登場人物が全員ボケで
ツッコミの要素が全くない中で物語が進んでいく。
初めは混乱するんだけど、
途中から没入してしまっている自分がいて、
130分と比較的長めにも関わらず、
体感時間はかなり短く感じました。
混乱の中、物語に没入してしまうことは
主人公のミシェルが隠された自分の快楽を
見い出すのと似ていることに
途中で気付いてゾワゾワしました。
ただ、ホントにレイプされたことのある
女性にとっては最悪の映画だろうし、
嫌がっているけど喜んでいるんだ
という考えを流布するようなもので、
それはレイプを助長するようなものなのでは?
と思ったりもしました。(真面目に考え過ぎ?)
いわゆる「正しくないこと」しか描かれないので、
見る人によっては辛いものかもしれないですが、
逆に映画だからこそ表現できるものなんだとも思います。
フィクションと理解した上で楽しむ大人のたしなみ。
全体にコメディタッチでもあるので、
そこで多少緩和されているところもあるかな?
(最高に笑える箇所多数!)
あとラストショットが凄い好きで、
両親の墓碑のところで長年の付き合いの親友と、
男ってホントアホだよね〜みたいな感じで
歩いて去っていくんですね。
これだけ壮絶な話があったのに軽やか〜みたいな。
人間は複雑な生き物だと体験できる映画でした。

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