2015年5月24日日曜日

教団X


教団X

中村文則氏の作品は文庫でずっと買っていたんですが、
どうにもこうにもこれは読まなきゃ!
と思い初めてハードカバーで購入し読みました。
辞書か!とツッコミたくなるボリュームなんですが、
無類にオモシロくてあっと言う間に読了できました。
タイトルにもあるように、
新興宗教の教団を描いているんですが、
信仰すること、生きること、死ぬことを
突き詰めて考えさせられました。
中村さん作品の特徴である詳細な論考が
圧倒的なボリュームで入っていて、
その部分が好物な僕にとってはたまらなかったです。
なおかつ、サスペンスとしての展開も、
最近読んだ中村さんの作品の中で、
トップクラスにオモシロかったです。

とか書いてたら新刊が出てたので、
それも早く読みたいなーと思います。

駆込み女と駆出し男



予告編を見て楽しそうな時代劇だなーと思い見ました。
その予想を遥かに上回る仕上がりで満足でした!
監督は原田眞人氏で彼の作品で強烈に印象に残っているのは、
なんといってもKAMIKAZE TAXI。
最近の作品は全然見れてないんですが、
色々見てみたいなーと思わされる作品でした。
原作は井上ひさしの小説なんですが、
相当味付けされていることが用意に想像できて、
コメディの味付けが本当に抜群!
満員のピカデリー新宿という鑑賞環境も伴って、
良き映画体験でございました。

舞台は江戸時代の東慶寺というお寺。
この頃は女性側からの離縁はできないんだけど、
東慶寺に駆け込めば、そこで女性が保護されて、
2年間のお務め後に離縁できる制度があったと。
そこへ駆け込んできた女性の悲喜こもごもと、
女性たちを支える人々にまつわる物語。
冒頭、駆け込む女性たちの背景を描きつつ、
いざ駆け込むというシーンから始まります。
最初はスマートにまとまっていて分かりやすいんですが、
全編にわたって言語の問題が気にかかりました。
当時の言葉とその使い方&現代で使われる話言葉が
ミックス状態なのに加えて、
セリフでの状況説明が結構多くて、
映像による補完がないから、
ストーリーが追いきれない部分があると思います。
ただストーリーが進んでいくにつれて、
本作が単なる真面目な男女の離縁物語ではなく、
コメディな部分が出てきたところで、
前述した言葉のギャップが心地よく思えてくる。
あと全体に画面がパキッとしていて、
日本の美しい自然、文化の四季折々の姿を
嫌みなくパッケージされているのも素晴らしいと思います。
離縁にまつわる話ですが、
メインとなるのは東慶寺での女性の共同生活と
主演の大泉洋を中心とする、
それを引き受ける御用宿の人々の生活。
何と言っても本作の最大の見所は
大泉洋のコメディアクターとしての豊かさ。
彼は医者見習いとして東慶寺で修行する女性たちを
診療する役目を担うんですが、
この診療シーンの悪ふざけっぷりがとにかく最高最高!
とくにハチミツ浣腸のくだりとかめっちゃ笑いました。
あと御用宿側でいうと樹木希林が凄かったなー
まんま「樹木希林」なんだけどピタッとハマってる感じ。
一方の駆け込み女ですが、メインとなるのは、
満島ひかり、戸田恵梨香、内山理名の3人。
当たり前のことなんですが、一口に離縁と言っても
それぞれに事情がある訳で、
色が異なる三者三様の離縁事情は現代にも当てはまるもの。
僕が好きだったのは満島ひかりと堤真一の離縁かなー
病気絡めて、あの展開だとベタだと思われるかもだけど、
江戸時代ならではの粋を感じました。
東慶寺の女性のみの集団生活の様子も凄く好きで、
日々掃除したり、ご飯作ったり、
マテリアル社会に生きる身分としては、
その慎ましさが身にしみました。
一番好きだったのは衣替えのシーンで夏用の浴衣?が
冬服とは異なり、様々な柄があって美しく見えました。
曲亭馬琴が物語の縦軸として描かれていて、
彼と戯曲家見習いでもある大泉洋を描くことで、
クリエイティブ論を展開するところも興味深い。
書かなきゃ何にも始まらないし、
死ぬまでその戦いは続いていくっていうねー
映画監督としての信念のように思いました。
ラストの大立ち回りはマチズモの権化を
去勢するという鮮やかな展開にサムアップ!
劇的な展開はないので地味に見えるけど、
「渋み」と「強み」を携えた素晴らしい作品だと思います。
たくさん人がいる劇場で見ることをオススメ!

マーゴット・ウェディング



昨年見たフランシス・ハが大好きだったので、
過去のノア・バームバック監督作品を見るということで。
結婚式のときにまつわる家族関係ということで、
レイチェルの結婚に近いなーと思いました。
主人公のマーゴットの自分のことは脇において、
他人にガミガミ言ってくる。
それをニコール・キッドマンが
抜群にイヤな感じ出してて最高だったなぁ。
彼の監督作品は家族とか友人の関係性における、
日常で忘れてしまいそうになる細かい事象を、
丁寧に拾ってリアリスティックに描く。
この点が僕が好きな部分だなーと思いました。
他のも色々見てみたいと思っています。

カルフォルニア・ドールズ



ロバート・アルドリッチ監督作品。
ソフト化されなくて見れない状況があったんですが、
最近ついにソフト化されてやっと拝見。
プロレスを題材にしたドラマとして最高の仕上がり!
2人の女子プロレスラータッグとマネージャーが、
苦しみながらも何とか栄光へ向かう姿に胸を打たれます。
「でも、やるんだよ!」ってこういうことだよなーと。
あんだけ溜めてからのDouble Sunset flip!!に
涙してしまいました…最高最高!

2015年5月19日火曜日

シグナル



セッションを見たときに予告編をみて、
これは好きなヤツ!と思い見てきました。
予告編ではクロニクルっぽいなーと思ってましたが、
似て非なるもので、予想以上に重厚で驚きました。
内容はB級と言っても差し支えないSFなんだけど、
貫禄のあるショットのつるべ打ちで、
今までに見たことのないタイプの作品でした。
近年のアメコミの重厚さとはまた異なるものというか…
クロニクル meets インタステラーって感じかな?
ネタバレするとツマンナイ映画ので、
これから見る人は読むのやめて下さいね。

主人公は足の病気を抱える大学生。
彼女がカルフォルニアへ引っ越すのを手伝うため、
車でカルフォルニアへ向かってる途中に
自分たちのPCをハッキングしてきた、
ハッカーを訪問することに。
そこはただの廃屋で何もないと思っていたら、
突如意識を失ってしまい…という話。
前半はロードムービーの様相を呈していて、
アメリカの雄大な自然のショットが
かなり使われています。濃厚に漂うアメリカの香り。
主人公は足が悪いことがコンプレックスで、
それを象徴する冒頭のマラソン大会のシーンは
劇中で何度も印象的に使われていました。
内容はB級SFなのにモチーフ描写が多いのも、
本作の特徴と言えるかもしれません。
山小屋で事態が一気に転換するんですが、
ここは死霊のはらわた+ファウンドフッテージ形式で、
お約束通りでよかったと思います。
謎の組織に拉致られてからは
精神病院に入院したような感じで、
静かに狂っていく様子を
精緻な画面で丁寧に描いていきます。
そして謎の組織のボスが
ローレンス・フィッシュバーンなんだから、
必然的にグッときちゃう訳です。何かあるなと。
(マトリックスのモーフィアスね)
あとビックリしたのが、
ファウンドフッテージを当人に見せて、
「ほらここにいるだろ…?」という演出。
急に安くなるなーと思ってたら、
それもフリなんですな〜
後半は施設からの逃走になるんですが、
ここからが本作の見所といっていいでしょう。
はじめヒッチハイクで逃亡するんですが、
乗せてもらうおばさんのキ○ガイさが怖い。
そしてガソスタからトラックで逃亡するあたりは、
フレッシュだなーと思いました。
そして足が悪かった主人公が、
宇宙人にカスタムされた義足で、
めっちゃ早く走れる展開になるんですが、
この義足のガジェット性に萌えましたねー
なんとか逃げ出して、この組織のことを皆に伝えなくちゃ!
と街をescapeしようとしても、
道は断崖絶壁で閉ざされてるし、
ひたすら一本道やしで万事休す。
途中、別で逃走した主人公の友人に遭遇したところで、
物語の全貌が明らかになるんですが、
この時点では「あーありがち〜」と思ってました。
しかし、ラストにかけてのスローモーションを
多用しまくったバトルシーンを見ていると、
なんか思てたんと違う!とワクワクが高まります。
いかんせんフォトジェニックな瞬間が多い。
そして圧巻なのがエンディング。
時空を超えた先にある世界の提示にぶったまげたよ!
何かとフレッシュなのでSF好きな人はぜひ。

2015年5月18日月曜日

最後まで行く



タマフルで以前に紹介されていて、
シネマカリテが開催しているフィルムフェスで見れる!
ということで鼻息荒く初日に見てきました。
タイトルから勝手に韓国得意のノワール系かと思いきや、
ジェットコースター型サスペンスで最高でした!
起こる事件は大したことじゃないのに、
見せ方や間が抜群で終始ハラハラしっぱなし。
そして時折はさまれるユーモアがオモシロい上に、
それも観客の緊張感を煽るツールにもなっている…
見終わったあと、ただただ大きな声で
「オモシロかった!」と言いたくなりました。
主人公は刑事で母親の葬式の日に、
自らの汚職がばれそうになり、
慌てて仕事場に戻るところで車で
轢き逃げによって人を殺してしまう。
なんとか隠蔽しようとするものの…という話。
冒頭、土(?)の中に光が差し込んだような
スタイリッシュなショットから始まり、
刑事が轢き逃げを起こしてしまう。
ここから中盤まで轢き逃げがバレる/バレないで
ハラハラさせっぱなしの作りになっています。
最初の見所は検問と死体隠蔽。
前述したとおり起こっていることはシンプルなのに、
カット割り、音楽の使い方で緊張を煽ってくる。
その中に挟まれるユーモア。
まさに緊張と緩和を見事に使いこなしていると思います。
無計画でいきあたりばったりだから、
「そうなりますよね〜」と観客も感情移入しやすい作り。
とくに最高だったのは匍匐前進するオモチャ。
心底くだらないんだけど、超楽しい&ハラハラ!
何気なく登場させたのちに、
絶対それ使わないとどうにもならん!
という演出が本当に上手いと思います。
全部片付いたと思ったら、
今度は轢き逃げの隠蔽を知る謎の人物から
刑事が脅されてしまう。
この敵キャラがまた最高で超強いんですよねー
トイレでの邂逅シーンとかもう…
オモシロい韓国映画は敵のキャラ立ちがイイ!
っていう法則がありますよね。
本作も例に漏れず、その法則にバッチリはまってる。
刑事もやられっ放しではなく、
謎の人物の正体や彼が何をしている悪人なのか、
1人で捜査を行っていきます。
敵グループの1人を問い詰めるシーンがあるんですが、
ここが最高で屋上で縛り上げて、
「えっ、言わないと落としちゃうよ」
っていうフレッシュさ!
轢き逃げの隠蔽から韓国警察の汚職まで
話が大きく展開していくわけですが、
身の丈を決して越えないといいましょうか。
起こり得そうなラインでとどめ、
細かい演出でオモシロくしていくスタンスに
とても好感を持ちました。
終盤のC4爆弾のくだりとか、
溜めて溜めてからのドーン!が最高だし、
そっからラストの刑事宅でのどつき合いは
ギミック込みで本当に最高だったなー
こんだけ振り回して、そんなオチかい!と
突っ込みそうになったところで、
キレのイイ終わり方で終わってサムアップ!
なんでこれが限定公開なのかよく分かんないけど、
見るチャンスがあれば絶対見た方がいい傑作!

ゼロの未来



テリー・ギリアム監督最新作ということで見てきました。
彼の作品は全然追いきれてないんですが、
未来世紀ブラジルの衝撃が忘れられず、
最新作からとりあえず見てみました。
抽象的な内容で多層に描いているので、
かなり難解な印象でした…
一回見ただけで全て把握するのが難しかったかな?
The Oneであるに違いないと考える気持ちや、
他者とのコミュニケーションの話が興味深かったです。
あと主演のクリストフ・ヴァルツの怪演は
とんでもなく素晴らしく、
それだけでも見て良かったなーと思いました。
これまでの作品と同様、近未来ディストピアSFで、
主人公のレスはある社会で働いていて、
モニターのような仕事をしている。
他人とのコミュニケーションが苦手で、
家で仕事をしたいと会社に申し出ます。
そんな彼に在宅ワークとして与えられるのが、
ゼロの法則を解くという仕事。
なんとか解にたどり着こうとするものの…という話。
冒頭、ブラックホールのシーンから始まり、
カメラが引いていき全裸でディスプレイを見つめる
クリストフ・ヴァルツが映し出される。
この時点で「あー狂気感じる〜」と。
とにかくヴァルツ無双!
最大の特徴として一人称が「We」
普通ならAlter egoとか絡めそうなものの、
自分に自信がなく、己のことを語りたくがないゆえに、
常に他人のことを巻き込もうとするスタンスを人称で描く。
ここがフレッシュだし盲点!と思いました。
テリー・ギリアム最新作を2015年に見れる良さとして、
彼が抱く近未来像の提示という点があると思います。
街のデザイン然り、仕事で使うPC然り、
彼の頭の中を覗いているかのような世界観。
変な部分がアナログになっているところや
デジタルになっているのでvividな色使いが印象的でした。
逆にレスの家は教会を改造した暗い家で対照的。
そんな家で引きこもって、
解けない法則をひたすら解き続ける作業をしている。
生産性も上がるし、家から出なくて最高!
と思っていたレスですが、
自分から望んだことだったにも関わらず、
ノイローゼのような状態に陥る。
そんな状態で以前にパーティーで出会った
女の子と恋仲になるんだけど、
彼女はコールガールでっていうところも、
未来のコールガールスタイルが超アホで最高だったなぁ。
全身タイツ着てPCとコネクトして気持ち良くなろう!
っていうねーアホだなぁと。
家引きこもりタイプの人間なので、
レスの気持ちが痛いほどによく伝わってきました。
あとThe Oneの話でいうと、
レスはひたすら神の啓示 a.k.a 電話を待っていて、
実はそんな電話は存在せず、
「テメーはただの働き蜂だよ!」
The One of The Worldではなく、
The Part of The Worldであるという現実は、
この年になって気づいてるけど 、
まだ可能性が!というボンクラ男子への
痛烈なメッセージと言えるでしょう。
そして、彼を変えていくのは1人の女性と、
会社の社長の息子。
彼自身が変わりうるチャンスを
ふいにしちゃう瞬間が切なかったなぁ。
ゼロの法則を解読するシーンが、
思った以上にあっさりしてるのも、
人生においてもっと大切なことがあるんじゃね?
ということなのかなと思いました。
そんな彼が行き着くラストもまた切なくて、
すべてが0に収束していってからの、
夕焼けとエンディングソング(Radioheadカバー)にグッときました。
ボンクラ男子にオススメの作品でございます。

2015年5月17日日曜日

群盗



帰省した際の映画飲みで話題に出たので見てきました。
韓国の時代劇もの見るのは初めてで少し不安でしたが、
超明快な勧善懲悪ものでめちゃ楽しかったです!
監督はユン・ジュンビンという人で、
悪いやつらの脚本を担当した人。
本作も悪いやつら同様、主演がハ・ジョンウなので、
このタッグは最強と言えるでしょう。
韓国版ジャンゴといっても差し支えなくて、
韓国映画は一体どこまでいくんだ!と興奮してました。
舞台は1800年代の朝鮮で官僚や一部の富豪が、
富を独占し民衆が苦しんでいる。
そんな状況を打破し民に富を取り戻すため、
義賊が富の再配分の機能を担っている。
ハ・ジョンウは屠畜人として働いているんですが、
ある金持ちに殺人をもちかけられる。
しかし、彼は実行できず、その失敗が原因で家族が皆殺しに。
自身も殺されそうになったところに、
義賊がやってきて彼も義賊の一員となり…という話。
冒頭からタイトルが出るまでに、
盗賊が官僚をボコボコにして、
食料を強奪するんですが、
メインキャラの立ち位置、特性や
時代背景の説明としてうまく機能しつつ、
それがかっこいいんだから言うことなし。
特に荒野の中を義賊が馬で走り抜けるシーンからの、
タイトルどーん!この時点で最高最高!
前半はハ・ジョンウが盗賊への仲間入りするまでと、
敵となる富豪の後継問題を描いていきます。
敵の中でも宿敵となるのがカン・ドンウォン。
鬼神のごとき強さを持ち容姿も淡麗。
しかし彼は妾子で弟が生まれたことにより、
父親の後を継げないというコンプレックスを抱えている。
ハ・ジョンウの家族が殺されたことから
2人の因縁がスタートしていきます。
とにかく、どのシーンもアクションのキレがハンパじゃなく、
これだけで映画館で見て良かったなと思います。
戦闘シーンに入る前のフリが好きで、
特に雪山で死んだフリしてからの襲撃は、
ハ・ジョンウのスキンヘッドおよび
横並びのショットがもうたまらん…!
悪いやつらのときも使ってたショットで、
分かってんな〜と興奮しまくりでした。
襲撃自体のギミックの部分もオモシロくて、
これなら勝てそう〜というリアリティが良かったです。
私怨を持ち込むなよ!のフリが、
二段仕掛けなのが上手いし、
カン・ドンウォンの殺陣が美しかったなぁ。
襲撃された官僚&富豪タッグは、
報復として盗賊の村へ攻撃を仕掛けます。
ここがねー本当に胸が痛くなるくらいの陰惨さ。。
久々に地獄絵図見たなーと思いました。
このシーンが辛いがゆえに、
ラストのカタルシスへと繋がっていく訳ですが…
あと全体的に音楽がエモーショナルで、
西部劇を思わせる感じが好きでしたね。
ラストのハ・ジョンウvsカン・ドンウォンは、
ハ・ジョンウの殴り込みでフォー!!となり、
竹やぶのバトルで息を呑み…
動と静のバランスが素晴らしかったと思います!
ハ・ジョンウを戦闘に馬を走らせ、
あらたな群盗が産まれて改めてタイトルどーん!
完全にサムアップ!
ここに書いたことはどうでもいいので、
とにかく見て欲しい!

2015年5月9日土曜日

ブラックハット



マイケル・マン監督最新作。
劇場で見るのは初めてで、とても楽しみにしていたので、
公開初日に見てきました。
完全なるMan's Movieって感じで最高でした!
それは良い意味でも悪い意味でもなんですが…
直前にマイアミ・バイスを見ていたこともあって、
画の作りとかにおい立つバイオレンスは似てるなーと。
おそらくこれが作家性と呼ぶべきものなんでしょう。
あとハッカーという題材は2015年らしいと言えるし、
そこからいつものMan's Styleへ落とし込んでいき、
映画館で見るべき必然性がそこにありました。

お話としては香港の原発がハッキングによって爆発、
それに引き続き株式の不正取引も起こる。
中国警察が捜査に動くんですが、
アメリカの原発も同時攻撃されたことから、
米中合同捜査チームが発足します。
ハッキングに使われたコードの生みの親である、
クリス・ヘムズワース演じるハサウェイが
刑務所から出てきて司法取引で捜査に加わるものの…というものです。
冒頭ハッキングのシーンから始まるんですが、
ここがあんまりマンっぽくなくて、
ハッキングの様子を回路、電気の流れを可視化した映像が流れる。
単純なハッキングだと地味に映るから、
この演出を採用したのかなーと思いますが、ちょっとダサかったな。。
前半はサイバー戦がメインで、
警察チームとハサウェイの非警察チームの
それぞれが犯人の手掛かりを追っていく。
サイバー戦から肉弾戦へと移行していくんですが、
スムーズというか理屈があるのがいいなーと思いました。
マイケル・マンといえば夜の美しさと銃撃戦が
最大の見所な訳ですが、今回もしっかりと顕在。
香港が舞台で高層ビル群と雑多な街の夜の
両方の旨みをしっかり抽出してるなーと興奮しました!
銃撃戦の方はそんなに多くないんですが、
敵のカサールってやつがめちゃ強くて最高!!
港での銃撃戦で、あーこいつら負けるなーと思ってたら、
的確に皆殺しにしていくんだもの。
あとコンテナをぶち抜く銃弾っていう演出がフレッシュでした。
さらに車が爆発してからの銃撃戦もド迫力!
銃弾の雨あられで遠慮なく人が死んでいくんですが、
ここでは想定外の展開があって、
「えっ、そのバディでこれから戦うわけ?!」と
良い意味で予想を裏切られました。
ただ、ここからのバディ展開は少しご都合主義のように
見える部分が少し目立つなぁという印象です。
予行演習が原発なん?とか、
サーバーってそんな雑な管理なの?とか。
ただテンポよく進んでいくので、そこまで気にならないとは思います。
そして恒例のラストの銃撃戦。
ハサウェイは銃を簡単に手に入れられる人間ではないという点が、
これまでの映画と異なっているところです。
そんな彼がDIYで準備する姿を見てると
「お前大丈夫かよ?!」と思っちゃう。
あと戦う場所も工夫されていて、
大体だだっ広いところで撃ち合いが始まるんですが、
今回は群衆の中での近距離戦。
インドネシアの異様な雰囲気込みで好きでした!
映画全体から伝わるMan's Vibesを
体感するには映画館で見なきゃ!

2015年5月8日金曜日

ラスト5イヤーズ



大阪帰省中で時間があったのでサクッと見てきました。
監督はリチャード・ラグラヴェネーズ。
代表作はPS I Love Youになるのかな?
(僕はフリーダム・ライターズが大好きです)
作品自体に興味はなく、アナ・ケンドリックが見たかっただけです。
元はミュージカルで、それを映画化した作品になるんですが、
ミュージカルが得意ではない僕にとっては結構辛い作品でした。
カップルの結婚から破局までを描いているという点では、
ブルーバレンタインに近いんですが食い足りなかったです。
ただ男女のすれ違い方という点では2015年の状況を反映していて、
意義深い作品だなーとは思いました。
主人子はアナ・ケンドリック演じるキャシーという女優の卵と、
ジェレミー・ジョーダン演じるジェイミーという小説家の卵となります。
2人はカップルでNYで勝ち上がることを目標とし努力している。
ジェイミーの小説が売れて、彼は売れっ子作家になる一方で、
キャシーは全然芽が出ないという状況で、
2人は結婚するものの…という話。
冒頭、彩度の低い映像が映り、
キャシーが絶望しているところから始まります。
結論を先に提示してから、その過程を見せていくスタイル。
そして時間軸もかなりシャッフルして2人の関係を描いていきます。
これが上手く機能しているかと言われると微妙で、
少し話が分かりにくくなっている印象です。
同じ場所を訪れても2人の関係性の変化によって、
全然違う印象になるっていう見せ方がもっと欲しかったです。
冒頭からセリフがミュージカル調で、
これは初めのカマシかなーと思いきや、
ほとんどすべてのセリフがメロディ、節ありという作り。
これがキツくてメリハリがないから物語に入りにくかったです。
日常とミュージカルシーンがあって初めて、
そのミュージカルが際立つと思うんですよねー
ジェレミーはどんどん有名になり一方で、
キャシーはオーディションに落ちてばかりで、
彼女が演じられるのはオハイオの田舎の劇場のみ。
緑が印象的でとても美しく見えるんだけど、
彼女にとっては屈辱の場所であると。
ジェレミーとキャシーは結婚し、
キャシーは「有名作家の妻」として彼を支えようとする。
従来であれば典型的なシンデレラストーリーとして、
ハッピーエンドのようにも思えます。
しかし、ここが前述した2015年らしさの部分で、
キャシーは「有名作家の妻」というポジションに満足しない、
むしろその立場を嫌がります。
なぜならキャシーはambitiousな女性であり、
彼の成功を素直に喜べず、
先に有名となった彼へのジェラスの気持ちが勝ってしまう。
この辺りは近年のディズニー作品も顕著に描かれている、
女性の自立にまつわる話として興味深く思いました。
キャシーの気持ちに気づいているジェイミーは、
得意の物語を聞かせたり、対話で解決しようとするものの、
キャシーはそれに応じず、2人の関係は崩壊していきます。
ラストの2人のすれ違い演出は好きでした。
ミュージカル好き、アナ・ケンドリック好きにはオススメ!

Mommy



グサヴィエ・ドランの最新作を見ない訳には行かない!
ということで見てきました。
昨年のトム・アット・ザ・ファームも素晴らしかったんですが、
本作もまたやってくれた!と感動しきりでした。
私はロランスで見せたMVのような画面の魅力、
トム〜で見せたヒリヒリしたストーリーテリング、
この2つの合わせ技といったところでしょうか。
センスがイイという表現は本作のような作品にこそあてはまる。
これでまだ20代だから末恐ろしくもあり、
一体これからどんな作品を見せてくれるんだろうと。
リアルタイムで追えることの喜びをひたすら噛み締める次第です。
主人公はある母子家庭で、
息子のスティーブはADHDを患っています。
(ADHD:注意欠陥・多動性障害)
入院先の施設で放火を行ってしまい、
そこから追い出されて母のもとへ帰ってくる。
母親のことを大切に思っているんだけど、
それが上手くいかず2人の生活は困窮を極める。
向いに住む吃音症を抱えた元教師の女性と
交流が始まって事態は好転するものの…という話。
まず度肝抜かれるのは1:1という画面のアスペクト比。
大きなスクリーンの真ん中に画面がポツーン。
この抑圧されたとも言える画面構成が、
2人の立ちゆかない生活を象徴していると言えます。
さらに冒頭スティーブが施設で起こした問題が
放火で人に大やけどを追わせるという
超ハードなエピソードを置くことで、
スティーブの潜在的な危険性を匂わせる冒頭が印象的。
タイトル通り母親との関係がメインテーマになるんですが、
スティーブの人懐っこさと暴力の2面性に
グイグイ引きつけられます。
(ババア、ノックしろ!のくだり入ってて笑った。)
良かれと思ってスティーブが行うことが、
母にとって重荷になってしまう。
2人オンリーの関係だと破綻してしまうから、
第三者の視点が必要になることが
よく分かる描き方になっています。
DVやネグレクト等の家庭内問題における、
家族以外のバッファーの必要性は
Session22で荻上チキさんがいつも言っている部分と
重なるなーと思いました。
前述した通り、その役目を吃音症を抱える女性が担う。
大人しそうに見えた彼女の最初のカマシの迫力たるや!
彼女がスティーブを子守しつつ、勉強を教えることで、
母親が仕事に専念できるようになり、生活がうまく回り始めます。
ここでoasisのwonderlandがかかって、
3人の買い物帰りのシーンがあるんですが、
恐ろしいほどにかっこ良くて美しい!
しかも、ここでスクリーンが展開する演出の解放感たるや!
意味もなくボロボロと泣いてしまいました…
このシーンが最大の見どころだと思いますが、
他にもスティーブがカートを振り回すシーンや、
1人でロングボードで街を徘徊するシーン等、
何気ない日常を美しく切り取るセンスに脱帽しっぱなし。
後半はスティーブが起こした事件に対する訴訟が問題となります。
母に好意を持つ弁護士が助けてくれそうになるんですが、
彼に対するスティーブの態度と、
カラオケでの爆キレシーンが好きでしたねー
母親を取られるかもしれないというジェラスの気持ちと、
自分のことをバカにするやつらがムカつく気持ちが
綯交ぜとなり炸裂するのを見事に描いています。
(自意識が煮詰まっていく感じ)
そしてスクリーンが再度展開するシーンがあるんですが、
「えっ、マジ最高のエンディングやん」と期待させといて、
再び戻る現実のエゲつなさ。
臭いものには蓋しちゃえという考えで嫌だなーと思うけど、
一体誰が母のことを攻められようか、
というアンビバレントな気持ちになりました。
そしてラスト手前での母と先生の対峙シーンが
またヒリヒリもので「希望」という言葉が
あんなに重いトーンで響いたことはなかったです。
さらに圧巻なのはラスト。
拘束衣を着たスティーブの母へのTELからの~
Lana Del RayのBorn To Dieが流れて疾走するスティーブ。
母への愛、自由への渇望という彼のすべての気持ちが
凝縮されていると思いました。
DVDリリース済みですが、映像のカッコよさ、美しさを
体験するためにも劇場で見ることをオススメします!

2015年5月4日月曜日

アゲインスト・リテラシー  グラフィティ文化論


ヒップホップの四大要素として
アフリカ・バンバータが唱えたのは、
ラップ、DJ、ブレイクダンス、グラフィティでした。
前半の2つは音楽要素であり、
常に接しているものなんですが、
後半の2つはなかなか入り口が難しく、
ヒップホップ好きと言いつつ、
大して興味を持っていませんでした。
そんな中での本作は、本屋で見かけて、
装丁のカッコよさと、いとうせいこうさんの帯コメで購入。
読み始めたら、これが無類にオモシロい!
グラフィティを超本格的な論評であり、
都市の背景を絡めて社会学的に分析していく。
しかも脚注がめちゃめちゃ充実しているので、
門外漢でも楽しめる作りになっているのポイント。
そして著者自身もプレイヤーで、
分析した結果を作品に落とし込んでる話も興味深い。
本作を読むまで街中でタギングを見ても、
そこに芸術性はないし、汚いなーぐらいに思ってました。
でも本作を読んでから考え方が180度変わって、
同じタギングを別の場所で見かけると、
テンションめちゃ上がるくらいになっています。笑
渋谷とか池袋へ出かけたときのささやかな楽しみです。
体系的にグラフィティを理解するのには抜群の入門書!

火花


火花

芸人である又吉直樹の初小説。
以前に東京百景というエッセイを読んで、
本当に素晴らしかったので期待していましたが、
想像を超えるオモシロさでした!
ある駆け出しの芸人と先輩芸人の関係を描き、
それぞれの葛藤や考え、そこから導き出される
「笑い」への又吉さんのスタンスを感じました。
お笑い芸人が片手間に書いたという
偏見があるかもしれませんが、
それは読んでない人間の戯言で、
純度100%の文学であることが読めば分かります。
2人は似た者同士でもあるけれど、
圧倒的な「大ボケ」つまり自意識で苦しむことのない、
先輩を配置することで又吉さん自身の投影であろう、
主人公の姿を鮮やかに描き出しています。
終盤の展開は電車で号泣してしまいました…
万人に薦めたい作品でございます。

桜の下で待っている


桜の下で待っている

「あの人は蜘蛛を潰せない」以来、
単行本を買い続けている作家の1人です。
なんといっても2作目の「骨を編む」を読んで、
文学でしか表現しえない美しさを体感して以来、
すっかり贔屓にしております。
今回もそれは健在でテーマは家族、故郷。
短編が5作入っていて、それらが東北新幹線で
ゆるやかに繋がっている作り。
社会人になり、東京に住んで3年経ったこともあり、
本作で描かれる家族との距離感や、
故郷に帰るたびに感じる郷愁(違和感を含む)について、
めちゃめちゃ共感してグイグイ読めました。
あと全ての話に花が関係していて、
その花の有り/無しによる感情の機微といいますか。
そこにあったものがないときの切なさが好きでした。
帰省時にオススメの本でございます。

ステイ・コネクテッド つながりたい僕らの世界



ジェイソン・ライトマン監督最新作。
レンタル店で見かけて見落としてたかなー
と思ってたらDVDスルーでした…
もうアメリカのコメディ作品は
本当に劇場で見れないのかもね。。

前作のとらわれて夏が文芸チックだったのに対して、
本作はいつも通りな感じでとても好きでした。
SNS含めインターネットをテーマにした内容で、
そのダークサイドにフォーカスしています。
近年、国内外でTwitterやFacebookが
映画内でも頻繁に出てくるようになっていますが、
あくまでツールの一つであることが多い中、
本作はその社会性や存在意義を捉えている点が
とても興味深いと思います。
原題のMen,Women,Childrenのとおり、
劇中で登場するのは中高生とその家族。
彼らは皆インターネット登場以降可能になった
サービスを利用し、己の欲を満たす一方、
可視化されていく社会の生き辛さを感じている。
オープンなSNSとクローズなLINEやTEXTの
使い分けが絶妙で素晴らしいし、
それをビジュアルでも見せてくれる。
一方の大人たちは子どもの悪用を食い止めようとしたり、
逆に積極的に自らも加担してしまったり。
一番ブチ刺さった例を書くと、
ある家族が離婚し、母親が出て行ってしまう。
その母親の再婚をFacebook経由で息子が知る。
そして、母からFB上でブロックされる…
エゲツなさ過ぎて少し泣きました。。
日本版で作ってもオモシロイものできそうだなーと思います。

2015年5月3日日曜日

マイアミ・バイス


マイケル・マン監督作品。
来週から新作が公開されるタイミングで
過去作を少しでもと思い見てみました。
元はドラマシリーズだったものを、
マン氏の手によって映画化されています。
勝手なイメージでイケイケドンドンな感じ
と勝手に思っていたんですが、
ど迫力の潜入捜査モノでオモシロかったです!
ジェイミー・フォックス×コリン・ファレルの
バディものなんですが、静かに互いを支え合う姿が、
漢らしくてかっこいい!
銃撃シーンは安定の迫力で、
僕は誘拐からの奪還シーンが好きでした。
ラストはだだっ広いところでの打ち合いで、
マンらしさをヒシヒシと感じました。
なるべく早く他のも見ようと思います!

龍三と七人の子分たち



北野武監督最新作ということで見てきました。

まだまだフィルモグラフィーを全て見れている訳ではないですが、
劇場で見れるものは見ておくスタイル。
予告の時点でかなり高まっていたんだけど、
悪ふざけがこちらの想像を超えていて最高過ぎた!
ツッコミたくなる部分は多いけど、
それこそ野暮ってもんだよ!
アウトレイジは2010年代のヒリヒリした
ヤクザ像を提示した作品でしたが、
それと陰陽の陽をなすのが本作といっても
過言ではないように思います。
つまり、古びた昔ながらのヤクザが陥る
身もふたもない状況を笑うか/笑わないか。
本作はそういったジェネレーション/カルチャーのギャップを
ことごとく笑いに昇華させているのが好きでした。
主人公は藤竜也演じる龍三というヤクザ。
とうの昔に現役を引退し、息子家族との2世帯で暮らしている。
息子家族が旅行に行っているあいだに、
昔の仲間を招集し組を新たに作る。
一方で暴走族上がりの半グレ集団が
年寄りを騙くらかす商売をしていて…という話。
とにかくヤクザギャグ飛ばしまくりで、
それだけ見るのでも超楽しい!
映画の初め、家の前で龍三が木刀の素振りしてるところへ、
勝村政信演じる息子がやってきて、
その問答からして最高で指が2本ない理由でめちゃ笑いました。
タイトルにあるよう7人の子分なので、
7人のヤクザが登場するんですが、
どれもキャラ立ち抜群!
特に好きだったのが品川徹が唯一ハジキを持っていて、
Steve Mcqueenアコガレっていう設定の狂い具合。
中尾彬のしょーもない詐欺もしつこく繰り返してくるので、
反復の美学で笑えてくるからたまんない。
昔ながらのヤクザたちが現在のシノギである、
オレオレ詐欺や羽毛布団、浄水器の高額販売と対時し、
勢いでそれらを突破していきます。
まさしくジジイなめんなよのスタンス。
劇場が一番沸いたのはそば屋でのシーン。
龍三と近藤正臣演じるマサが
客の注文内容を巡って丁半を始めます。
何気なく始まるし、客がそば/うどんのどっち頼むという、
心底どうでも良い話なのにドンドン惹かれていく。
「天ざるでヤレルと思ってんじゃねーぞ!」
「年寄りのくせにカツ丼なんて食ってんじゃねー!」
という至極のパンチラインが最高最高!
あとオモシロかったのは藤竜也が
キャバクラのママのところに転がり込むシーン。
(ママが萬田久子という抜群の配役)
まさかのオカマ展開に笑わずにいられようか!
龍三率いる一龍会vs半グレ集団が激化するのは、
ある人物の死によるものなんですが、
その死人の使い方の悪ふざけが死ぬほどくだらなくて最高!
ここまでバカできる監督が他に日本にいるだろうか!
そしてテンションマックスのまま、
ラストのカーチェイスシーンへ流れ込む。
もうビックリするくらい車の速度が遅いのが衝撃で…笑
けれど狭い日本の街ならではの演出があって、
そこは見ていて楽しかったです。
とにかく笑えること必至なので、
なるべくたくさんの人がいる劇場で見ることをオススメ!

フォーカス



予告編でMark RonsonのFeel Right
Frank OceanのBad Religionがかかってて、
オモシロそーと思って調べたら監督が
ラブ・アゲインを産み出した
グレン・フィカーラ&ジョン・レクアということで
ソッコーで見てきました。
クライムものとしてFreshさがある訳ではないけれど、
僕は大好きな作品でございました。
後出しジャンケンスタイルやトリックとしてどやねん!
と思う人がいるかもですが、
映画全体から滲み出る圧倒的な多幸感といいますか。
見終わった後ニヤニヤしちゃうのは間違いない!
ウィル・スミス演じるニッキーは詐欺、スリのプロ。
そんな彼を騙そうとして現れるのが、
マーゴット・ロビー演じるジェス。
余裕で見抜いたニッキーとジェスが
彼の主催する犯罪集団で働き始め、
2人は惹かれ合うものの…という話。
前作のラブ・アゲインと同様に
本作もとにかく音楽がマジで最高最高!!
オリジナル曲としてははじまりのうたが抜群ですが、
DJ的な選曲の妙で考えると本作は今年ぶっちぎりNo.1
大ネタ使いじゃないというのがシビれるし、
前述した多幸感は音楽による影響が一番大きいと思います。
音楽を生かした演出もオモシロくて、
Rolling StonesのSympathy For The Devil使いの
アホな展開は笑っちゃいました。
前半は騙すことの手口やシステムが披露されていく。
注意(focus)を逸らすことが大事だと。
ニッキーはチームで詐欺、スリをしていて、
チーム感の演出がどれも素晴らしい。
街中での集団スリのシーンは、
やってることは悪いことなんだけど、
音楽と編集のキレがよいことで、
スリ自体が踊っているかのように見えるのが好きでした。
あと、そのチームでの打ち上げシーンがあるんですが、
皆がめっちゃ楽しそうで良かったです。
そして、ここでニッキーのギャンブル癖が匂わされます。
次の日、ニッキーとジェスはフットボール観戦に行くんですが、
ふとしたきっかけで富豪とのギャンブルが始まる。
はじめは10ドルとかだったのに、どんどんインフレしていき、
チームで稼いだお金に手を付けてしまう。
前半のチーム描写が効いていて、胸が締め付けられるし、
ジェスまで巻き込まれることで観客も巻き込まれていく作り。
「はぁ?」というバカっぽいオチも好きでした。
一旦袂を分かつ2人ですが3年後に再会。
ニッキーはレーシングチームのオーナーからの依頼で
エンジンにまつわるイカサマの手伝いを、
一方のジェスはオーナーの恋人となっていたという展開。
ニッキーはジェスを捨てたことを後悔していて、
何とか彼女の気持ちを取り戻そうと画策し、
騙したお金とともに逃避行しようとするんですが、
オーナーにバレて捕まってしまいます。
この捕まるくだりがめちゃFlesh!
用心棒が監禁用の道具をファーマシーで
買うところから始まり、カッコいい音楽とともに、
美しい夜の街をドライブしてるかと思いきや、
ドーン!!っていうね〜
なんで買うところからやねん!
ってツッコミ入れたくなる最高のシーン。
捕まってからは騙し騙されが明らかになっていくんですが、
ドンデン返しからのドンデン返しなので、
見ててウォ!って思わず言ってしまいました。
ラストはBarbara Lewisの
Love Makes The World Go Around
という素晴らしいノーザンソウルがかかってサムアップ!
GWに映画行きたいと思っている方に超オススメ!

2015年5月2日土曜日

私の少女



映画の日ということで会社をFlexで切り上げ、
韓国期待の若手女優キム・セロン×ペ・ドゥナのW主演の
気になっていた作品を見ました。
監督はチョン・ジュリという人で本作が長編デビューとのこと。
そして製作を担当したのが、
oasis、シークレットサンシャインのイ・チャンドン。
この組み合わせでオモシロくない訳がない!
主演2人は抜群に素晴らしいことは言わずもがな、
話も深くオモシロいんだから言うことなし!
ジェンダー論、フェミニズム論というべきか、
少女(girl)→女性(woman)の狭間にあるものは何か?
ということ描きつつ、ヒリヒリした
いつもの韓国映画スタイルもキープしている。
優しさと厳しさが同居してる珍しいバランスだと思いました。

ペ・ドゥナ演じるヨンナムは警察官
キャリア組の彼女は左遷され、とある田舎町へ所長として赴任する。
この町で出会うのがキム・セロン演じるドゥヒ。
彼女は継父と祖母から日常的に暴力を振るわれているし、
学校でもいじめられている。
ドゥヒが夜中に暴力から逃げ出したところで、
ヨンナムと遭遇し彼女を助けることになり…という話。
冒頭ヨンナムが車で町へやってくるシーンから始まるんですが、
これがラストと非常に対照的で見終わった後に、
あの2人が…という形でグッとくる。
まー何にせよ、本作のペ・ドゥナのかわいさは最高最高!
「ぺどぅな〜」と思わずニヤリとしちゃう。
(個人的には早朝ランニングのシーンが好き)
その一方で影を抱える女性でもあり、
ミネラルボトルに入った水をグビグビ飲んでいるんだけど、
その中身は焼酎で自らミネラルボトルへと詰め替えてるっていう…
お酒も重要なキーワードで継父は酔っぱらうと、
ドゥヒに対して暴力をふるう。
アルコール中毒という点では同じなんだけど、
ロクでもないかどうかはあくまで属人的であるという
描き方はフレッシュでオモシロかったです。
ドゥヒがどつかれる度にヨンナムの家を訪れるので、
彼女はドゥヒを夏休みのあいだ預かることに決め、
2人の共同生活が始まります。
ドゥヒにとっては初めて自分を
受け入れてくれる存在に心躍らせ、どんどん明るくなる。
この辺の機微の変化をキム・セロンが
素晴らしい演技で体現しています。
お風呂のシーンは母性に甘える表情がかわいらしいし、
その一方で、留守番中の自傷行為のくだりは逆に
ドゥナの狂気が十分に伝わってきました。
中盤〜後半にかけてはヨンナムが
左遷された理由が明らかになっていく。
それは彼女が同性愛者だからというもの。
警察、継父というマチズモの権化に
直面してきた2人は似た者同士とも言える。
また最悪なのがペドフィリアと同性愛者を
一緒くたに議論するところ。
怒りも沸いたけど、
ここまでの2人の関係性の描き方が
艶かしい瞬間も多くて、「もしかして…」
と思ってしまうバランスになっているんですよねー
でも、こうやってろくに調べもしないで、
十把一絡げにして議論を矮小化してくことは
最近よく見かけることなので気を付けたいなと思いました。
後半にかけてはドゥナが「少女」ではなく、
「女性」であることが物理的にも精神的にも描かれていく。
ドゥナのヨンナムへの気持ちが非常に複雑で、
家族のようでもあり、友達のようでもあり、
同性愛のようでもあり…
それらをセリフではなく2人の生活の様子から
浮き彫りにしていくのが素晴らしいなーと思いますし、
この辺りのアンビバレントさについて考えるのも楽しい。
英題はA Girl At My Doorなんですが、
このタイトルの秀逸さは映画が見終わった後に響く。
(韓国語の原題は「ドヒや」)
一方の邦題はこのタイトルでいいのか?と思わざるを得ない。
ドゥナがどこにいるか、つまり冠詞が重要な意味を持つ。
あくまで「a girl」な訳で「my girl」ではない。
終盤にドゥナが女性の側面を全開にすることで、
事態が大きく展開していく。
これが良い/悪いの議論は難しいところだけど、
僕はいくら親でも暴力ふるう人間はダメだと思います。
不法移民の話なんかも入っていて、
社会的なマイノリティやセーフティネットから漏れてしまう人達が
どうやって生きていくかという論点も見ることができます。
ラストは冒頭と繋がっていて、「行って、帰る」という作り。
このシーンが本当に素晴らしくて、エンディング曲も最高最高!
全然情報なかったけど、Google翻訳駆使して探して見つけました。
※ラストシーンそのままなので要注意


公開規模は小さいですが、是非とも見て欲しい1本です。

2015年5月1日金曜日

リダクテッド 真実の価値



最近、冬の兵士というイラク戦争に派遣された
兵士たちにまつわる本を読んでいます。
その映像情報補強の意味合いで見たんですが、
本の内容とシンクロしまくりで、こういうことなのか…と。
冒頭に「事実からインスパイアされたフィクションです」
という説明があり、映画監督志望の兵士が
イラク戦争のドキュメントを撮るっていう形になっています。
いわゆるPOV形式なんだけど、これがまー辛くて…
暴力の連鎖は何も生まないことがよく分かる。
自分たち以外の人間はいくら死のうが関係ないけど、
仲間が死ぬとそれこそ「倍返しだ!」の勢い。
戦争映画もっと見ないとなーと思った次第です。
(あとデ・パルマ作品も)