2012年12月27日木曜日

ミッドナイト・イン・パリ



初めてのウディ・アレン。
正直作品数が多過ぎて、他は何から見ていいか分からず、食わず嫌いでした。
でも、この作品に対する周りの評価の高さが異常だったので見ました。
結果なるほどなーという感じで楽しみました。
タイトルにもあるようパリが舞台で主人公はアメリカ人。
このアメリカ人は脚本家→小説家志望で、パリに憧れまくっている。
そんな彼があることをきっかけに、彼の考えるGolden Ageである
1920年代のパリへトリップする。
そこにはヘミングウェイ、ピカソ、フィッツジェラルド、ダリなどなど
彼のあこがれの人物が次々と現れる。
そんな中で、ある女性に恋をし、過去への思いはドンドン強くなる。

ドンズバで映画のテーマを台詞で言うシーンがあるけど

これは最近読み進めている古市憲寿氏の主張と近いものがありました。
(単なる懐古主義は今の利便性を前提としてないとかね)
いつの時代だって過去は美化されて語られるものだし
その時代を生きることに対して不足感を常に感じ、過去を美化するのが人間。
直前に見た「サニー」に対するカウンターだと感じた。
これがウディ・アレン節なのか…

これに加えて、今年の3月にパリへ行ったことも
この映画を楽しめた要因の一つかも。
確かにパリの街は超魅力的なんですよねー
だから主人公のパリへの気持ち、
つまり異邦人が無意味に持つパリ幻想への共感が半端じゃなかった。

偉人の取り扱いが何とも言えない塩梅。。。ダリのくだりは笑った。
最後は500日のサマーみたいな終わり方だったので、好きでした。

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。

サニー 永遠の仲間たち



2012年見れなかったものをDVDで今年のうちに。
とんでもない作品見逃してたで…
何から話そうか迷うぐらい、最高でした。

高校時代仲の良かったメンバーが、
そのうちの1人の死期が近づいていることをきっかけに集まる。
その高校時代と現在がクロスフェードしながら、物語は進行していく。
まずねーこのメンバーが全員いとおしすぎる!
サニーっていうのは、このクルーの呼称なんすけど
このへんのHIPHOP感にやられたし、クルー萌えといえば
今年のボクのNo.1であるアタック・ザ・ブロックと近い感覚。
彼女たちのエピソードなら、いくらだって見れる。
現在は、それぞれ何とでもない日常を過ごす
彼女たちが再会することで、自分たちの人生を取り戻す。
つまり、自分が人生の主役だという感覚を取り戻し
「生きる」ことに対して受動→能動になる瞬間を目撃できる。
これを高校時代のエピソードをトレースしながら
それが徐々に現実にフィードする手法はいいなぁと思いました。
さらに最近体得した「甘酸」eyeで見ると、悶絶シーンのつるべ打ち。
例えばヘッドホンを耳にあてるくだりで、酸いも甘いも見せる鬼畜演出。
この映画の主人公は女性だし、もっとも深く突き刺さるのは
25〜40歳の女性かもしれないですね。
でも、多くの人が持つ過去の良き思い出をくすぐる作品なので
万人に受けると思います。
過去に囚われず、今を生きる!という人が結構いるけど
うっせーバカと。思い出の中に生きることもあるし
それがきっかけで今が変わることだってあるんだよ!
という誰に向けたか分かんない気持ちになった。笑
今年の音楽演出では「最強のふたり」のEWF使いが1位でしたが
本作は同率1位くらいで終盤の「Sunny」→「Time After Time」は刺さった。





ただラストが少しねぇ、ご都合主義かなと。金かと。
そこじゃなくね。とは思いました。
でも、アイツらには皆幸せになって欲しいからよいけどね!
(現実と虚実の混同)
いかんせん超好き!

プッシャー


ドライブで一躍時の人となったニコラス・ウィンディング・レフン監督。
デンマーク出身の彼が監督を務めたプッシャーシリーズ(1〜3)の
アメリカ版リメイク。監督じゃないけど、製作総指揮を担当。
そして本作品も最高!でした。
とにもかくにも映像美が凄まじい…
ドライブのときも徹底した色使いが話題になっていたけど
この作品もめちゃくちゃ綺麗。
ボクがとくに好きなのは暖色系。夜の街中のライトが秀逸。
ストーリー自体はドライブ同様きわめてシンプル。
プッシャー(麻薬密売人)があることをきっかけにトラブルに巻き込まれて…
ホントこれだけ。でも映像が死ぬほどスタイリッシュだから全然飽きない。
音楽もオービタルのテクノ音楽が中心だし、
オープニング含めた曜日のフォントもイケてる。
話の中身も十分面白いけど、
そこはドライブのほうが洗練されてるなーという印象。
でも、一度転げ落ちたレールへどうにかして
何度も戻ろうとするけど、どーにもならない袋小路。人間不信。
最近読んだウシジマ君に近いなと思いました。
(トーンが全く異なるけどw)
あとエンディングね。プッシャーものは世の中にたくさんあるけど
この終わり方はかなり斬新でした。納得しない人もいるかもしれない。
プッシャーものは主人公が破滅するか、敵を駆逐するタイプしか見たことなかった。
個人的には相当好きでした。
ドライブでヤラれた人は必見ですYO!

2012年12月23日日曜日

SUSHI GIRL


ホントは明日見に行って「打ち」にいこうかと思ったけど
時間見つけて今日見ました。
銀座シネパトスっていう映画館にて。
名前聞いたときは銀座の小洒落た映画館かなーとか思って
Violence Christmas 全開の銀座をすり抜け、到着してびっくり。
い、い、いなたい!大阪ハードコアエリアの映画館みたいでした。
映画の内容がある種「Grind house」な感じだったので
あとから考えればピッタリかも。
と見終わったあとの喫煙所で感慨に耽った。

水道橋博士の番組でも取り上げられてたし
予告でタランティーノ臭がビンビンだったので
見たんですが、案の定それでした。
ストーリーとしては、過去にダイアモンド強盗を行った面々が
唯一その在処を知る仲間の出所を機に集まり、すったもんだ。
といった感じです。
舞台となる場面が、過去の強盗シーンと現在の会食シーンだけなので
セリフのシーンが相当多い。
ここを楽しめないと結構キツいかもしれませんが
タイトルから想起されるように偏った日本のイメージだけで
ボクは相当オモシロく見れました。
それに加えて、ホステルよろしくな拷問シーンですよねー
拷問シーン好きとしては、ある縛りが相当キテマシタ。
これがあることで恐怖が倍増する。
しかも、その縛りに関するエピソードもイイ意味でくだらなくて最高。
個人的には箸と瓶+靴下がやばかった。
この2つの掛け合わせで、中盤ぐらいまで
ひゃふー!最高!と思っていました 。
さぁ、ここまで読んで気付きましたでしょうか。
肝心の「SUSHI GIRL」の話が出ていないということに。笑
物語の冒頭で、千葉真一演じる料理人に女体盛りされてから、
物語の終盤までほとんどなにも絡まない。。。
最後の最後に、この映画がSUSHI GIRLのものであると分かるつくり。
ここの部分が結構淡白だから、物語が結構あっさりしてるように思いました。

タランティーノ好きなら見といて損無し。

2012年12月13日木曜日

映画ランキング 2012年編

こんなことしながら、暫定的に決めました。
どーん!

    1.    アタック・ザ・ブロック
    2.    おとなのけんか
    3.    トガニ
    4.    おおかみこどもの雨と雪
    5.    哀しき獣
    6.    ドライブ
    7.    ふがいない僕は空を見た
    8.    終の信託
    9.    希望の国
    10.    桐島、部活やめるってよ
    11.    最強のふたり
    12.    Documentary of AKB48 Show must go on
    13.    ヘルプ
    14.    ファミリーツリー
    15.    Take This Waltz
    16.    サウダーヂ
    17.    人生の特等席
    18.    ヤングアダルト
    19.    SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者
    20.    アウトレイジ ビヨンド
    21.    その夜の侍
    22.    夢売る2人
    23.    ヒミズ
    24.    BAD FILM
    25.    ザ・レイド
    26.    SUSHI GIRL
    27.    悪の教典
    28.    ドラゴンタトゥーの女
    29.    宇宙人ポール
    30.    アルゴ
    31.    Hick ルリ13歳の旅
    32.    ダークナイトライジング
    33.    黄金を抱いて翔べ
    34.    ディクテーター 身元不明でNY
    35.    ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン
    36.    アメイジング・スパイダーマン(IMAX)
    37.    僕達急行 ーA列車で行こうー
    38.    J.エドガー
    39.    裏切りのサーカス
    40.    アヴェンジャーズ
    41.    TIME
    42.    東京プレイボーイクラブ
    43.    ヘルタースケルター



今年中はちょこちょこいじりますが、とりあえず。

2012年12月9日日曜日

水道橋博士「藝人春秋」サイン会


新宿のBOOK1stにて。この顔の引きつり方から色々察してください。
あとDJの志水貴志さんがいて、ビックリした。
今読んでる古市氏の本が終われば、読みはじめる予定。

ドッグヴィル



peko君にオススメされたもの、第2弾。
ずっと「ドッグウィル」と勘違いしてて
レンタルで検索かけても出てこないなーと思っていたら
タイトルを聞き間違いしてたというねw
以前は韓国映画のoasisで、なかなかの作品でしたが
こちらの作品も鬼ぶっとんでました。

監督はラース・フォン・トリアー。
ダンサー・イン・ザ・ダークで有名ですね。
最近だとアンチクライストも。(未見です)
この人の映画は、
世の中は救いのないものという映画が多いから
好き嫌い激しいけど
この世界、人間というもののある種の残酷さを
いつも見せてくれるので結構好きです。

この作品の何がぶっ飛んでるって、まずは物語が展開される場所ですよね。
どういうことかと言えば、ある広い空間(倉庫みたいな)があって、
そこが一つの街なんですよね。
んで、白線で街の作りが描かれていて、セットも最低限しかない。
舞台みたいな感じで、そこに映画カメラが入って
映画的な手法で見せてくれるという作り。
最初はなかなか入っていきづらいんだけど
徐々に自分の脳内で補填するようになって
いつのまにか物語に没頭してました。

ストーリーとしては、ある小さな村にニコール・キッドマンが逃げてきて
そこで彼女が果たす役割を巡ってのお話。
彼女はギャング、警察に終われている身で、これまで働いたことがない。
村の人々の日々の生活を助けることで身をかくまってもらうが
徐々に軋轢が生まれ…
という非常に抽象的な表現になったけど、まーキツいんですよ。
彼女が街に来るまでは、このドッグヴィルという村は
外の世界からは完全に孤立している。
そこへ彼女が来たことで、人の欲望が露になる。
最初は異物として取り扱うんだけど、
人が持つほんの少しの欲望を満たす存在として彼女を利用する。
彼女は働いたこともないから、労働の喜びを初めて知るし
街の人からすれば、これまで行き届いてなかったことが満たされるようになる。
まさにWin-Winの関係だから、非常にうまくいく。
でも、人間の欲望というのは際限がない。
あることが満たされると、次は…って感じでドンドン出てくる。
しかも、それを満たしてくれる人間の弱みをこちらが握っている。
こうなると、もうunstoppable.
ここまでの流れをジワーっと長い時間かけて、
人間の嫌なところを含めながら物語が進むと。
善悪の区別がグラグラさせられる映画で、
エンディングをどうとるかっていうのは議論の余地があると思います。
僕は彼女が最後の最後に取る行動に対して、
「き、き、鬼畜!」と思いましたが、見終わって
しばらく考えると鬼畜なのはお互い様で
どちらかと言えば、ドッグヴィルの住人のほうがたちが悪いのかも。
なぜなら、その鬼畜さに対して無意識だから。
ニコール・キッドマンは一旦acceptした訳だし。
あと村人の中ではトムって男が一番嫌いでした。
自分はこの街を相対化して見ていると思い込んでいるけど
結局は自分の欲望に負けてしまう。
あげく、それを彼女に指摘されて、彼女を排除しようとする。
性根腐っているで!こんなやつ世の中にいっぱいおるけど。

暗いけど、映画見て色々考えたい人にはオススメ。

2012年12月8日土曜日

Hick ルリ13歳の旅


キック・アスで一躍有名となり
BRUTUSの女優神7に選ばれ、しかもセンターを射止めた
クロエ・グレース・モレッツ初の単独主演作。
予告のときは楽しそうなロードムービーかなーって思ってたら
思いのほか、物語全体のトーンは暗めでした。
わりかし好きでした。

タイトルのHickは田舎者という意味でクロエ扮するルリは
文字通りアメリカの田舎に住んでいる。
両親ともに飲んだくれでアメリカ映画に出てくる典型的なダメな家で
育った彼女は、その運命に逆らうこと無く惰性的に生きていたところ
誕生日の翌日に父は出て行き、母は恋人とどこかへ行ってしまう。
そのタイミングで、TVで見かけた夢に溢れるラスベガスに行こう!
と決心し、ヒッチハイクで向かう道中で、様々なことに巻き込まれて…
といったストーリーです。

序盤はストーリーは伏線を張るための流れなんだけど
クロエのかわいさがスクリーン全開に展開されることで
映画としてのルックは抜群。
特に誕生日にもらった拳銃を持って、
鏡の前でポーズをとるシーンはMurderer感ビンビン。
家を出たときには、夢を持ち、
1人でなんでもできると思っていた彼女が
数々の出来事を経て、人に助けてもらうことは単純ではない。
つまり、「give & take」が伴うことを学ぶ姿は
見ていてオモシロかった。 (結果的は悲劇を生むけど…)

あと、この映画はラストシーンがかなり好き。
ここからはネタばれを含むボクなりの解釈なので
これから見る人はスルーしてね。
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最後、これまで行動をともにしてきた男に
監禁されてしまうんだけど、そこへ監禁先である別荘の管理人が訪ねてくる。
ここで、助けを求めればいいのに、ルリは助けを求めない。
その代わり、別荘においてあるパンフレットの中身について尋ねる。
そのパンフレットには「How to kill your own chicken」の文字が。
中身は鶏のさばき方なんだけど、ここはダブルミーニングだと考えました。
己のチキンハートをkillする方法。ではないかと。
最初は何でもできると思っていた自分が
結局自分では何も打開できないチキン野郎と
旅を通じて痛感しているように思えました。
だから、女性が助けに来たときも最初は拒む。
その後、銃を巡って一悶着あり、ルリは男を銃で殺してしまう。
ある種チキン野郎を卒業したとも言える。

別荘の管理人に助けられ、家に帰ろうとするけど
父はいないままで、母は家を売り払い、再婚することを知る。
帰ったところで何も変わらないことを分かりながら
帰りのバスに乗る。その道中である画を見たことで
バスを降りて、靴を脱ぎ、来た道を自分の足で逆走する。
(このシーンが綺麗でスゴい好き) 
そして、LA行きのバスへ乗り、希望に満ちたエンディングで終わる。
人に頼っているという点では
何も成長してないって言う人がいるかもしれないけど
今度こそ、彼女はあらゆることを踏まえて自分で選んだのである。
あきらかに最初のラスベガス行きとは表情も異なる。
ここまで説明したことは死ぬほどベタかもしんないけど
そのベタ感込みで好きだなぁと思いました。
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クロエタソが死ぬほど見れるから劇場で見た方がいいよ。

2012年12月4日火曜日

ふがいない僕は空を見た


山内マリコさんの「ここは退屈 迎えに来て」を読んで最高!となり
女による女のためのR-18文学賞の存在を知り
そこから窪美澄さんの存在を知りました。
映画化かーとか思いながら文庫読んで
ついでに映画も見ちゃいました。

映画もおもしろかったです。ちょっと長いけど…
基本的に原作と同じ内容で、セリフも一緒。
ところどころ抜粋したり、ちょっと見せ方変えたり。
原作は短編集で、それぞれ繋がっている形なんですけど
映画はその短編の順番をところどころ入れ替えてます。

じゃあ、肝心のあらすじはというと
高校生が主人公で、あることをきっかけに
コスプレセックスに興じるようになる。
しかも、その相手は人妻で…
この話に加えて
団地住まいの友人、主人公の母親のストーリーがあるという作りです。

この映画はR-18でこれでもか!っていうくらいSEX描写がある。
そんな巷の映画やドラマのレベルではない。
しっかりと、しつこく。
そして、主人公のお母さんの仕事が助産婦。
簡単に言えば、この映画は「性」と「生」についての映画なんですね。
普段生活している中で「性」の話ってあんまり直接しないですよね。
とくに人前で、その話をしようものなら
「下品」と言われることだってあるでしょう。
でも今、生きている人全員、SEXの産物です。
あの日、あのときのSEXがなければ、ここにいません。
という日常では、ある種タブーとされているようなことに
よりツッコんで話が展開しているところが好きでした。
映画になって、ストーリー構成を入れ替えたことで
それが一層際立っている。究極的に象徴しているのがラスト。
ここでの画は今年見た中で一番美しかったかも。
セリフは原作のままなんですが、文庫についている
重松清さんの解説が秀逸なので、興味のあるかたは要チェック。

「性」と「生」の結びつきの話もおもしろかったけど
ボクは団地暮らしの友人のストーリーがかなり好きでした。
Anarchyっていう京都のラッパーがいて、彼を何度も連想しました。
誰が日本にゲトーはないと言った?っていう感じで
生活が物凄く厳しくて、食べることさえままならないような状況で
サバイブする状況が淡々と描かれていく。
原作よりも嫌な奴っていう描写が多い分、
そのカウンターの強度が上がってて良かったです。
この彼が「生きる」ということに対して能動的になり、自分で人生を選ぶ。 
これ見れただけで、ホントよかった。

映画としての作りが桐島に似てる分、比較されることも多いと思います。
映画の出来で言えば負けてるかもしれませんが
桐島とは別ベクトルのリアルが盛り込まれている点では
もっと評価されていいと思います。

タイトルで辟易している人もいると思いますが
それはもったいない。
田畑智子のおっぱいも見れるし、是非。