2017年5月31日水曜日

フォーリング・ダウン



メルマ旬報という水道橋博士のメルマガを購読していて、
その中の映画ライター高橋ヨシキさんの連載で
取り上げられていたので見てみました。
1993年の映画なんですが、
今の社会情勢と無縁ではない内容に驚きました。
予見的とも言えるし、15年近く経っても問題が
解決、改善されていないことの現れなのかなと思いました。
いまやインターネットの普及で、
誰がも意見を当事者に直接意見を表明できる時代に突入する中、
自らの行いが正しいと信じて疑わない、
正論をとにかく吐き続けるSocial Justice Warriorが
大量発生しているのは世界中で起こっている現象だと思います。
その先駆けとでも言いたくなるのが主人公のD-Fens。
彼の存在、言動を通じて90年代初頭の
アメリカの空気、問題点を描いている作品です。
高橋ヨシキさんの解説を読んでから見たので、
作品内のディテールに込められた意味が
ある程度分かった状態で見たこともあって、
その巧みさに舌を巻きながら楽しみました。
とくに人種問題の扱いについては
ロス暴動直後とは思えない攻め具合で、
公開当時どんなリアクションだったのか気になりました。
D-FensはSocial Justice Warriorかもしれないのですが、
相手が誰であろうと自分のスタンスを崩さないところが、
少し違うのかなーと思います。
有名なハンバーガー屋のシーンは本当に最高だし、
年度末の予算消化の道路工事への爆撃も最高!
(アメリカでもあるのか!と知って驚いた)
ムシャクシャするなーと思ったときに見るといいかもしれません。

2017年5月30日火曜日

ディストラクション・ベイビーズ



去年の怒涛の邦画傑作ラッシュの中で
見逃していた本作をやっとレンタルして見ました。
2016見逃し系をフォローした中で、
もっとも劇場で見たいと思った作品でした。
日本の映画だから…っていう言い訳は
本作以降には通用しない、ぐらいのインパクト。
人間を含めて、動物ならば必ず持っている、
純度の高いイノセントな暴力性が
映画の中で可視化されていて、
思春期に見たらモロに影響されちゃうのでは?
と危惧してしまう。否定しているではなく、
そのぐらいのパワー、感染力があるということ。
本作は物語の進め方が上手くて
オモシロいタイプの映画ではないと思います。
むしろ下手に見せている気さえしました。
つまり、物語の不完全さが暴力の理不尽を
さらに加速させる1つの装置として機能している。
ということなのではないと。
(歪みまくったギターの劇伴も象徴的)
日本の若手有望株がこぞって、
本作に出ていることはとても喜ばしいことであり、
なかでも柳楽優弥の演技、アクションはぶっちぎり。
前述した暴力の空気をセリフではなく、
たたずまい、アクションで映画を支配している。
人を殴ったときの音って映画では増幅されるのが
当たり前だと思います。
しかし、本作では一切脚色せずに「ぺしっ」という
僕達が現実の世界で聞いている、
人を殴ったときの音が聞こえてくる。
音は小さいし迫力はないのに、
こっちの方が痛く感じる。
生半可な「リアル」ではない訳で、
作り手の覚悟を音処理に見ました。
今年はこのレベルの邦画に出会えるのでしょうか!?

2017年5月28日日曜日

NAS イルマティック

NAS イルマティック

長い間、積読していましたがやっと読了。
ヒップホップ好き、ひいてはブラックミュージック好きで、
一度もこのアルバムを聞いたことがない人は
おそらくいないでしょう。
それがラッパーのNASのデビューアルバムであるIllmatic。
2年半ほど前に同様のテーマの映画が公開されて、
それも見ていたこともあり、Illmaticへの理解が
一層深まって勉強になる1冊でした。
本作は当時の時代背景、トラックを提供したプロデューサー、
レコードレーベルの関係者等の証言といったファクトで
Illmaticが生まれた背景を研究しています。
書籍という形だと何が一番助かるかと言えば歌詞の解説。
USのHIPHOPはGeniusというサイトがあって、
歌詞に込められた意味が事細かに
説明されていて僕もよく見ているんですが、
そのさらに上のレベルの解説は超オモシロかったです。
Illmaticで一番有名なラインとして
NY State Of Mindの以下の歌詞がよく挙げられるかと思います。

I never sleep, 'cause sleep is the cousin of death

だけど、本作を読んでさらにかっこいいなと思ったのは、
上のラインの続きの以下のライン。座右の銘にしたい!

Beyond the walls of intelligence, life is defined

ラップを聞いて即座にすべての意味を理解できるわけではないので、
USのヒップホップを聞くときは、
サウンド、フロウ、声質で好き嫌いが決まりがちですが、
Kendrick Lamar、Joey Bada$$がリリースした
今年のアルバムなどはやはり歌詞が大事な訳なので、
その辺も丁寧に拾っていきたいなーと思います。
(時間がねえよ!©ヨシピィ・ダ・ガマ)

2017年5月27日土曜日

ネイバーズ 2



日本公開されていたのですが見逃していた作品。
1作目を劇場で見てゲラゲラ楽しんだんですが、
今回もくだらない部分が多くて楽しかったです。
1作目では隣にザック・エフロン率いる
男子サークルたちが迷惑ネイバーとして
立ちふさがったんですが、
本作はクロエ・モレッツが率いる女子サークルがネイバーに。
セス・ローゲンとローズ・バーンの夫妻は
家を売ることにして販売相手が見つかって安心するものの、
30日の預託期間があることを知ります。
その間にクロエたちが引っ越して来て、
仁義なきご近所戦争が勃発という話です。
下ネタ、weedネタが盛り沢山で心底くだらなくて最高なんだけど、
1作目よりもテーマ性がくっきりしている印象でした。
クロエたちが男性抜きでより主体的に生きる!
という目標を掲げ、アイデアと行動力で
何とか自分たちの世界を作り守ろうとする姿はかっこいい。
(そのアイデアに問題はあると思うけど。。)
僕が一番好きだったのはザック・エフロンのポジションですね。
前作のラストでアバクロの店頭で上裸モデルやってて、
それを笑って見てたんですが、
本作では周りがしっかりとした仕事についているのに、
自分だけが大人になりきれないこと気付きます。
やってることはバカなんだけど、
自分の価値を何度も繰り返し自問するところが
切ない気持ちになりました。。
少し真面目なこと書きましたが、
れっきとしたパーティー映画!

2017年5月23日火曜日

ボーイズインザフッド



ストレイト・アウト・ザ・コンプトン見た後に、
とても見たかったのだけれど、
なかなかレンタル在庫に巡り会えず苦労してました。
しかし!NETFLIXに入っていたので見ました。
ICE CUBEが出てるくらいしか知らずに見たんですが、
思った以上にヘビーな話で驚きました。
黒人同士が殺し合って、お互いにいがみ合い、
足を引っ張りあっていいのだろうか?というメッセージが
終盤の最悪の悲劇によってビシバシ伝わってくる。
冒頭に主人公たちの幼少期が描かれるんですが、
同じ場所でも育った環境が違うと、
モロにその後の人生に影響するよなー
なんて当たり前のことを考えさせられました。
(好き嫌いは否めない〜♪なんて呑気なことは
ストリートでは通用しないのです。)
このタイトルはN.W.Aのメンバーであった、
EAZY-Eがソロ初めて出したシングルと同じタイトル。
しかし、出演しているラッパーは
EAZY-EではなくICE CUBE。
この時点でICE CUBEはN.W.Aを脱退しているという
歪なバランスになっています。
劇中ではWE WANT EAZYという
Tシャツを着たドロボーをICE CUBEが
ボコるなんてシーンもありました。
IMDBによるとICE CUBEの取り巻きは
N.W.Aの面々をキャスティングしようとしていたそうで、
そうなっていたら…なんていう、
たられば話もしたくなりますね→リンク
次はフライデーが見たい!

2017年5月21日日曜日

カフェ・ソサエティ



<あらすじ>
映画業界で働くことを夢見る
ニューヨーク生まれの青年ボビーは、
業界の有力者である叔父フィルを頼って
ハリウッドにやってくる。
フィルの秘書を務める美女ヴォニーに
心を奪われたボビーは、
映画スターやセレブリティを相手に、
フィルの下で働きながらヴォニーと親密になっていくが、
彼女には思いがけない恋人の存在があった。
映画.comより)

ウディ・アレン監督最新作。
過去作は全然追いきれていませんが、
新作が公開されれば必ず見るようにしてます。
特に今回はジェシー・アイゼンバーグと
クリステン・スチュワートという最高の組み合わせが
ウディ・アレン監督とどんなケミストリーが
起こるのか楽しみにしていました。
結果として皮肉さは薄まりつつも、
遠い目をしたくなるラブストーリーとして
オモシロかったです。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

1930年代のハリウッドとNYが舞台になっていて、
前半ハリウッド、後半NYという構成になっています。
主人公のボビーは有名になりたくて
ハリウッドでエージェントを務める叔父の元で
下働きを始めることになります。
1人も知り合いがいない彼にとって、
ヴォニーは友人であり、愛する女性となっていく。
その手前でデリヘル呼ぶところが最高にオモシロくて、
呼ばれた女性とボビーの双方が自己嫌悪に陥って、
まったく話が噛み合わない。
アイゼンバーグの早口とウディ・アレンの会話劇は
すこぶる相性が良いことを序盤から見せつけてくれます。
ジェシー×クリステンの組み合わせが最高だと
前述したのは僕の人生トップ10に入る、
「アドベンチャーランドへようこそ」という映画で
主役を担ったのも、この2人だからです。
(以前にエージェント・ウルトラという映画でも、
このコンビが主役だったんですが、
そちらは残念な仕上がりでした…)
今回も2人のタッグの眩しさは健在で、
デートしている姿の甘酸指数が相当高かったです。
お互い好きな気持ちはあるのだけれど、
自分たちの周りの環境に押し流されて、
それぞれが別の道を歩み始める。
何が切ないってヴォニーが選ぶ相手が
自分より金も地位も持っている叔父さんというところ。
血も涙もないですね、世間というのは。
Cash Rules Everything Around Me!!
(ヴォニーはお金じゃなくて、
叔父さんのことが好きだったんだよ!
という反論は受け付けていません。)
失意の青年ボビーは地元NYへ戻り、
兄が経営するナイトクラブの手伝いを始めることに。
ハリウッドで身につけた社交力のおかげか、
彼は繁盛店を仕切るオーナーとなり、
そこで奥さんを見つけて幸せな生活を手にします。
この間にお兄さんを巡るトラブルのエピソードも
投げ込まれているんですが、特に必要なかったかな…
ボビーはNYで成功し街の有力者たちが集う
ナイトクラブを作り上げ、そこへヴォニーが叔父さんとやってくる。
ここでのボビーのリアクションと、
ヴォニーのリアクションのギャップがオモシロかったなー
たとえヴォニーがかつて嫌悪していた
ハリウッドにいた噂好きのセレブとなっていたとしても、
美化されたあの思い出を忘れることはできず、
儚い夢を見続ける、これが男の性。
それに呼応するヴォニー。
2人が違う場所で年越しを迎えながら、
お互いを思い合うシーンは余計なセリフなく、
2人の顔で描いていくラストは素晴らしかったです。
ストーリーの骨格はラ・ラ・ランドと同じなんだけど、
味わいが全く異なることに映画のオモシロさも感じました。

メッセージ



<あらすじ>
ある日、突如として地球上に降り立った巨大な球体型宇宙船。
言語学者のルイーズは、謎の知的生命体との
意思疎通をはかる役目を担うこととなり、
“彼ら”が人類に何を伝えようとしているのかを探っていくのだが…
映画.comより)

ドゥニ・ヴィルヌーブ監督最新作。
今、一番信用できる監督の1人な訳ですが、
これまでの作品と打って変わってSFということで、
どうなんだろうと期待と不安が入り交じった気持ちで見ました。
だがしかし!不安は完全に杞憂でとんでもない映画でした。
ほとばしる作家性を失うことなく、
作品の完成度が異様に高いという奇跡。
今年ナンバーワンクラスの傑作!

※ここから盛大にネタバレして書きます。
(今回は特にネタバレしたまま見ると
全然ツマらなくなる可能性大なので取り扱い要注意)

日本語タイトルが出ないことに安心しつつ、
天井なめの意味深な部屋のショットからスタート。
(この画角は繰り返し劇中で用いられることに)
そして、そこで言及される時間の不可逆性。
このオープニングシーンに
実はすべてが詰まっていることが見終わった後に分かる。
こういった作りは映画ではよくある話ですが、
とにかく余韻の重みがハンパないんですよね。
エンディングでも同じカット割りなんだけど、
その奥には…っていうね〜。
ポスタービジュアルでも使われていた、
500m超えの巨石が世界各地に出現し、
彼らエイリアンが何の目的で地球に来たのか、
世界各国がリサーチしていく過程が前半で描かれます。
このシーンが言語学、暗号解読の観点で見て、
抜群にオモシロ過ぎて鳥肌ものでした。。
(サイモン・シンの暗号解読読んでて良かった)
そもそも予告編で巨石でやってきた
エイリアンの実態は明らかになっていなくて、
ドゥ二先輩のことだから、
概念としてのエイリアン像かと思いきや、
がっつりとしたB級感溢れるモンスター像でビックリ。
複製された男に登場した蜘蛛を彷彿とさせる姿でした。
(カットの切り替えでドーン!という見せ方が最高)
人間側が名付けた名前はヘプタポッドで、
2体出てくる彼らの個別名称はアボットとコステロ
(アメリカの昔のお笑い芸人なんですね→リンク
見た目はタコみたいなんだけど、
そこから放たれる謎の象形文字の
謎めいたセンスが抜群にカッコ良くてGAPにやられました。
全く謎な文字を使ってコミュニケーションが
始まっていく過程に学問の重みを感じました。
ドゥニ先輩作品といえば特徴的なのは音なのですが、
それは本作でも健在。どこで誰が何を聞いているのか、
TPOを踏まえた音の使い方は
映画への没入感が高まって良かったです。
また、ボリュームのデカいおなじみの重低音も
あの巨石内空間とマッチして素晴らしかったなー
後半にかけては、アメリカが一生懸命対話しようとする中、
危険だと判断した中国、ロシアは攻撃に踏み切ろうとするし、
アメリカ内部でも造反が起こったり、
混沌が深まっていきます。
とくに爆弾仕掛けられてたシーンの緊迫感が凄まじかった…
(あの大量の文字が壁に張り付いたときの迫力よ!)
終盤にかけては時間の不可逆性の謎が明らかになってくる。
作品を通じて終始ルイーズと娘のやり取りが
インサートされているんですが、
そのすべての謎がラスト15分で繋がってくるんですなぁ。
伏線の置き方と時間の不可逆性というテーマが
有機的に絡まり合って、あー!あー!あーそういうこと!
と心の中で言いまくりでした。
(上から読んでも下から読んでも”HANNAH”…泣)
先の分かっている人生だとしても
「生きねば」ということであり、
最終的に愛の話へと着地するという
想像もしていなかったエンディングにサムアップ!
ドゥニ先輩はブレードランナーの続編の監督な訳ですが、
俄然楽しみになってきました。

2017年5月20日土曜日

スプリット



シャマラン最新作ということで見ました。
前作のヴィジットが相当好きだったので、
期待していましたがスリラーとしてのエンタメ性と
シャマラン独特のニュアンスがあいまって楽しかったです。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

モールのレストランらしきところで、
女の子たちで誕生日会を開いているシーンから始まるんですが、
そこで1人ものうげな表情を浮かべる女の子がいて非常に意味深。
最後まで見ると彼女の表情の理由が分かる作りになってました。
誕生日会の主役の女の子の父親に
皆で家に送ってもらうことになり駐車場へ行くんですが、
そこで車を乗っ取られ女子高生3人が誘拐されてしまいます。
この犯人が今回の主役で、ジェームス・マカボイ演じるケビン。
マカボイは好きな俳優の1人で、
フィルス、トランスといった近年の出演作はなるべく見てますし、
なんといっても個人的恋愛映画クラシック、
ラブストーリーズは大好きでDVDまで買いました。
本作で彼が演じるのは多重人格者。
冒頭でシャツをズボンにイン、ボタンを1番上まで止めて、
几帳面のヤバいヤツとして登場。
猟奇犯vs女子高生かーという浅はかな見通しを
ぶち壊すのがシャマランスタイル。
ケビンが先ほどと服装も変わり、
明らかに別の人格として登場する。
彼の担当医であるフレッチャーとのエピソードから
彼が多重人格者であることが明らかになり、
計23の人格を有していて、その中での争いも描かれます。
とにかくマカボイの演技力に度肝抜かれました。。
(会社の先輩と話していたときに、
ガキ使の七変化という例えが出て笑ってしまったけど)
本当に同じ人と思えないというか、
役者って凄いなぁと単純に思いました。
性別、年齢を超えた様々な人間が矢継ぎ早に出てきて、
それぞれが女子高生3人と対峙。
彼女たちは何とか隙のある人格を見つけ出して、
軟禁状態からエスケープしようとします。
バレる/バレないサスペンスに加えて、
ケビンの人格がどの状態なのか?という要素もあるので、
スリリングさが増す作りになっていました。
あと本当かどうかは分からないんですが、
多重人格者のフィジカルの変化も興味深くて、
人格だけではなく体質も変化するのであるという話が展開
それが最後に登場する
ビーストという24番目の人格に繋がっていく流れ。
基本マカボイの話ではあるものの、
冒頭でものうげな表情をしていた少女の話でもある。
少女の抱えるショッキングなトラウマが、
物語が進むにつれて明らかになっていきます。
(おじさんとの動物ごっこ…)
24番目の人格であるビーストが終盤についに登場!
上裸のマカボイが夜の街を走り抜けるシーンが最高だし、
我が家へ辿り着くやいなや生け贄の女子高生たちに
むさぼりつくという悪夢的光景。
そしてラストの主人公との戦いは
前述したトラウマのくだりが効いてきて、
痛みを巡る話へと帰結していく。
人と違うことが生きにくさと直結してしまうことに対する、
シャマランが物語を通じて風穴を空けたい気持ちなのかなー
と見終わってから考えたりしました。
エンディングで、シャマランの過去作の
アンブレイカブルとの繋がりが示唆され、
次の作品はアンブレイカブルと本作が絡み合うっぽいので、
早急にアンブレイカブル復習したいです。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス



MARVELシリーズの中でぶっちぎりに
大好きなGOGの最新作ということで
IMAX3Dにて見てきました。
最近はNETFLIX依存症が深刻化していて、
映画館へ行くのが食傷気味だったんですが、
そんな気持ちを吹き飛ばす快作でした。
いつだって最高最高なスペースオペラ!

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

1作目でGOGが他のMARVELと大きな違いを
見せたところとして音楽の使い方があると思います。
本作も前作と同じ流れにあることを
宣言するかのような素晴らしいオープニング。
引きのショットから車にクローズしていき、
そこで車でかかっている曲がこれ!



歌詞の内容を含めて本作で重要なポジションを担う曲。
IMAXの最高の音響で、この曲が鳴り響くだけで
異常な多幸感がありました。
からのクレジット紹介をふまえた最初の戦闘シーン。
そこでAwesome Mix Vol.2のテープからかかるのはこの曲!



最近だとラッパーのCommonがBlue Skyという曲で
サンプリングしていましたね。
ド派手な戦闘シーンであるにも関わらず、
それはあくまで背景でベイビーグルートが
ちょこちょこ動き回る鬼カワイイ姿をひたすら映し出す
というツッコミ要素満載の演出も最高最高!
前半は1作目のラストで少し明かされた、
スターロードの父親との関係性と、
最初のバトルの発端となったバッテリー盗難を巡るいざこざで
物語が進んでいきます。
父親が神で分子レベルでコントロールして
様々なものをゼロから作れるという、
そこそこぶっ飛んだ話なんですが、
ヒューマンスケールの家族の話に帰結していくところが
DC系アメコミの駄作と異なるところ。
父親が「惑星」であるという、
後半にかけてスケールはさらに大きくなるんだけど、
全知全能の力と仲間、どちらが欲しいのか?
ここでのスターロードの決断が
血縁主義/権威主義からの決別といった内容で好きでした。
もともと根無し草でハグレ組な5人がGOG。
衝突はするけれど大事にしなきゃいけないものを
本作の中で確認していくかのように
話を展開させていくので飲み込みやすくなっていると思います。
終盤のエモーショナルの高まり方は尋常ではなく、
本作はなんといってもヨンドゥですよねぇ。
前半で描かれるスタローン演じる頭領との確執がフリで効いてるし、
スターロードを救ったのは彼であり、
父親はヨンドゥなのであるという持っていき方に涙腺決壊。
(オープニングでMr.Blue Skyがなぜかかるのか知ってさらに泣く)
1作目は最高だった訳ですが、その更に上、
つまり最高の上の上へと到達した作品。
サントラはテープを予約したので今から到着が待ち遠しいです。

ビビビ・ビ・バップ

ビビビ・ビ・バップ

しばらく本の更新が滞っていましたが、
それはNETFLIXオフライン再生で、
海外ドラマ見まくりということに加えて、
本作を読んでいたことがあります。
中村文則の教団Xを超える全661ページの長編SF!
とても読みやすいんだけど分量が多いので、
読み終わるまでに時間がかかってしまいました。
人間と超高度化したテクノロジーを巡る話で、
機械側が人間を支配しようとしたら…
というSFではおなじみの展開ではあります。
しかし、そこにジャズ、落語、将棋といったインプロ系の
エンターテイメントをからめてくるところがオモシロかったです。
なにしろSFなのに表紙に配置されているのは、
ジャズミュージシャンのエリック・ドルフィーの姿。
(アルバム「Last Date」のジャケを反転?)
作品内にはドルフィーを含めて
往年のジャズミュージシャンや、
落語家が登場するんですが、すべてがアンドロイド。
最近ノンフィクションばかり読んでいたので、
小説って自由なんだよなーなんてことを改めて思いました。
ジャズサイドでいえばドルフィーと
ピアニストの主人公が共演したり、
マイルス・デイビス、ジョン・コルトレーンといった、
ジャズジャイアンツとビッグバンドな共演を果たしたり。
一方、落語家では古今亭志ん生、立川談志のアンドロイドが
人間を滅ぼすウイルスを作っているという
シュールな設定もオモシロかったです。
生体ウイルスとコンピューターウイルスを並行して描き、
人間と機械、どっちが先にウイルスでヤラれるか?
言葉にすると重そうな内容なんですが、
語り口が軽やかだし、主人公が事態を正確に把握しないまま、
のらりくらりとなんとなーく事態を乗りこなしていく。
小説の語り手が猫という「吾輩は猫である」オマージュと、
猫という第三者が主人公を見守る形の文体も、
本作の風通しのよさに貢献しているでしょう。
発展したテクノロジーが行きつく先が、
人間臭さやノスタルジーというのは逆説的なんだけど、
すでにその時代は到来している気もします。
(フィルムカメラ、アナログレコード、カセットなど)
奥泉さんは今回初めて読んだので、
他の作品も読んでみようと思います。

2017年5月19日金曜日

メイク・アップ 狂気の3P



人の心を失った先輩が大阪でレコード屋をやっていて、
先日遊びに行ったときに貸してもらいました。
(新譜が充実しているレコード屋さん→リンク
1年前にイーライ・ロス監督の
ノックノックという作品がありましたが、その元ネタです。
モロにB級感丸出しの映画を久々に見たので、
とても楽しかった!
本作を見るとノックノックは限りなく、
元ネタである本作に忠実であることが分かります。
21世紀版としてアップデートされており、
イーライ・ロス監督の手腕と本作への愛を感じるので、
ノックノックを見た人は是非見たほうが良いです。
日本でも最近、浮気・不倫が大きく注目されている中、
教則DVDとして機能する内容で、たった1回の過ちが
本当に取り返しのつかないことがよく分かる。
「人を好きになる気持ちは止められないのっ」
という安いドラマみたいなセリフを吐く人にオススメ!
(上に貼ったYoutubeは予告じゃなくてフル尺です)

2017年5月14日日曜日

13の理由



あなたは死にたいと思ったことがありますか?
なーんてショッキングなイントロで語りたくもなる、
素晴らしいドラマでした。
原作はヤングアダルト小説で、
セレーナ・ゴメスがプロデューサーとして尽力→リンク
SNS、メールを含めスマートフォンが
社会のインフラ化して久しいですが、
僕が常日頃思うのは中高生のときになくて良かったということ。
あの頃、僕達を支配していたのは恋の話や噂話であり、
それらをいかに知っているかという情報の争奪戦
といった側面があったことは否めないと思います。
動画、写真が瞬時に拡散することは、
情報争奪戦との親和性が非常に高い訳です。
この部分を巧みな構成、迫真の演技とともに
徹底的に突いていくところがめちゃオモシロかったです。
あらすじとしては主人公である女子高生のハンナが自殺し、
彼女が自殺直前にその決断に至るまでの経緯を
7本のテープに録音して残します。
(片面1話で合計13のエピソードです)
そのテープをハンナのことが好きだったクレイという
もう1人の主人公が聞いて、
彼女が自殺に追い込まれるまでをトレースしていく。
ドラマにおいて自殺が描かれる場合、
1つの要因(たとえばイジメ)によって
死に至ったと描かれることが多いと思います。
確かに自殺への決定打は存在するものの、
その手前の段階で他人からの拒絶が積み重なっている。
本作は連続ドラマであるという利点を生かして、
この点をとても丁寧に描いていました。
ジョックス(体育会系)が支配する、
アメリカのスクールカーストの中で
サバイブすることの大変さが伝わってくるし、
日本の学校/会社でも当てはまることは多い。
しかも、クレイは完全ナードともいえない
中間層なので見る側も世界観に入りやすくなっていました。
周りのキャラ立ちも素晴らしくて、
ハンナの自殺に対して己がどういうポジションを取るのか、
それぞれの葛藤が見てて辛い、ゆえにオモシロいわけです。
先日見たスウィート17モンスターも
似た題材だったわけですが、
誰か1人でも寄り添う人がいれば、
この世界も捨てたもんじゃないと気づくことができる。
道徳が教科となるような悪夢的社会が訪れていますが、
そんなことする暇あったら本作を見て、
大人たちがティーンエイジャー達の気持ちに
少しでも寄り添ってあげたらいいのにね。

2017年5月3日水曜日

Imperial Dreams



最近HULUからNETFLIXへと切り替えたんですが、
NETFLIXで取り揃えられているドラマの
レベルがあまりに高すぎて、
毎日海外TVドラマを見る生活を送っています。
NETFLIXの強みはオリジナルコンテンツの
クオリティの異常な高さな訳ですが、
ドラマだけではなくて映画もあります。
本作はジョン・ボイエガ主演で、
アメリカのゲトーの話というのに惹かれて見ました。
ある程度想像はしていましたが結構重めでした…
主人公はプロジェクト育ちで、
おじのイリーガルな仕事を小さいころから手伝っていて、
そのお務めから帰ってきて、
何とか足を洗ってまともな生活をしようとストラグルする話。
貧困のループから抜け出せない
行政のシステムを正面切って描いているし、
抜け出せないストリートのしがらみもヒリヒリする内容。
こういった環境から生まれるのが
ヒップホップだと思うんですが、
本作の主人公は小説家を目指しているところがオモシロい。
自分の体験したことをストーリーにして落とし込む、
これはまさしくラップな訳ですが、
あえて小説にすることで物語全体の
叙情性が増しているように思いました。
(音楽をフライングロータスが
担当している点もアツいところでした。)
主人公を取り巻く環境は本当に厳しくて、
行政も頼れないし、おじは助けてくれるけれど、
見返りとして悪事に手を染めろと要求して八方塞り。
それでも生きていかねばならない残酷さが辛かったです。
こんなレベルの映画がオリジナルコンテンツなのかよ!
と思うと、より一層依存してしまって廃人まっしぐら。

スウィート17モンスター



<あらすじ>
キスさえ未経験というイケてない毎日を送る
17歳の高校生ネイディーンは妄想だけが空まわりし、
教師のブルーナーや情緒不安定な母親を困らせてばかりいた。
唯一の親友であるクリスタが人気者の兄ダリアンと恋に落ち、
世界にたった1人だけ取り残されたような疎外感を感じた
ネイディーンはとんでもない行動に出てしまう。
(映画.comより)

アメリカの青春系映画はなかなか劇場で見れない状況ですが、
公開されたときはなるべく劇場で…という気持ちで見ました。
「こじらせ系女子」というキーワードで括られていて、
確かに!と共感する場面も多かったんですが、
それよりも何よりも自分を肯定することの尊さが
強く伝わってくる作品でした。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

まず、ネイディーンの背景/育ちが最初に紹介されるんですが、
ここの手際が素晴らしかったです。
彼女が人見知りで、社交的な兄に劣等感を抱き、
そこへ父の死がトドメとなりふさぎ込んでしまう。
上記の内容はドラマ性が高いので、
長々やってしまいそうなものですが、
あくまで人物紹介と割り切って大胆に進めているので
物語に入りやすかったです。
僕が好きだったのはお父さんと死別する直前のドライブのシーン。
ドライブスルーで食べるチーズバーガー、
ラジオからかかる父親の好きな音楽(ビリー・ジョエル)、
断片的な思い出が突き刺さってきました。
ネイディーンにはクリスタしか友達がいなくて、
小さなころから2人はずっと一緒だったにも関わらず、
ネイディーンが忌み嫌う自分の兄と
クリスタが恋愛関係になることで彼女は孤立していきます。
自分の大好きな親友と自分が大嫌いな兄。
ここがくっつくということは自分の価値観が否定されることになる訳だし、
挙句ベッドを共にしている姿を目撃してしまうんだから、
その心中察するに余りあるものがあります。
なんとかしてクリスタが自分のもとに戻ってくることを願い、
何度もアプローチしていくんですが、
クリスタの兄への愛は深く親友とも断絶してしまう。
このきっかけとなるハウスパーティーのシーンがキツかったなぁ。
周りにたくさん人がいるのに、どの輪にも打ち解けることができない。
一方でクリスタは兄を含めた自分以外の人と楽しげにしている。
兄のような社交的な人からは「何が辛いんだい?」
と言われてしまうかもしれないけど、
初対面の人と上滑りの会話をすることは
地獄だと思っているネイディーン側なので
「分かるわー」と共感していました。
しかも、この兄を演じるのが
エブリバディ・ウォンツ・サムの
主人公を演じたブレイク・ジェナー。単細胞感が絶妙。
前半で大きく閉塞してしまう彼女の人間関係が
良い意味でも悪い意味でも開けていくのが後半。
ウディ・ハレルソンの演じる教師は僕からすると理想に見えて、
品行方正な先生もいいけど、
このぐらいグレーな先生がいたほうがガス抜きになるというか。。
絶対的に正しいことなんてないんだぜということが分かる。
彼女の思いつめた話に対して取り合わないように見えて、
ウィットに富んだレスポンスを返す様が好きでしたし、
終盤で家出する彼女にそっと寄り添うだけで、
教師として「こうすべきだ!」と言わない辺りもぐっときました。
また、ネイディーンに好意を寄せる
アーウィンとのエピソードは甘酸成分が高め。
ネイディーンはちょっといいかもぐらいに思っていて、
恥ずかしさもあいまって彼に対して軽口を叩いてしまう。
自分の気持ちに正直になれず、ごまかしてしまうと
信用を失ってしまうことが伝わってきて、
いつもヘラヘラしているので刺さりました。。
そして、ラストでの兄との正面衝突が核心を突きまくりで、
単細胞に見えた兄も悩み傷ついていることもあるんだと。
当たり前のことなんだけど、
序盤の単細胞っぷりとのギャップが大きくて
よりグッとくる仕掛けになっていました。
自分だけが不幸だ、恵まれていないと思ってしまい、
人の気持ちを考えられなくなることは、
可視化社会でより強くなる感情だと思います。
表に見えていることと、実態が違うことは往々にしてあるわけで、
ちゃんと対話しないと見えてこないよなーと改めて感じました。
あと本作のメッセージとして一番響いたのは
自分のことを肯定することの大切さです。
自己否定ばかりしているとなかなか前に進めない。
かと言っていきなり自分のことを
肯定的に捉えることができるかといえば、
それまた難しい話でありまして…
打開するときに1人では難しいけれど、
理解者がいれば世界は広がるのかなと
ラストシーンを見て感じました。
悩める思春期を送る中高生に見て欲しい映画。