2017年5月20日土曜日

ビビビ・ビ・バップ

ビビビ・ビ・バップ

しばらく本の更新が滞っていましたが、
それはNETFLIXオフライン再生で、
海外ドラマ見まくりということに加えて、
本作を読んでいたことがあります。
中村文則の教団Xを超える全661ページの長編SF!
とても読みやすいんだけど分量が多いので、
読み終わるまでに時間がかかってしまいました。
人間と超高度化したテクノロジーを巡る話で、
機械側が人間を支配しようとしたら…
というSFではおなじみの展開ではあります。
しかし、そこにジャズ、落語、将棋といったインプロ系の
エンターテイメントをからめてくるところがオモシロかったです。
なにしろSFなのに表紙に配置されているのは、
ジャズミュージシャンのエリック・ドルフィーの姿。
(アルバム「Last Date」のジャケを反転?)
作品内にはドルフィーを含めて
往年のジャズミュージシャンや、
落語家が登場するんですが、すべてがアンドロイド。
最近ノンフィクションばかり読んでいたので、
小説って自由なんだよなーなんてことを改めて思いました。
ジャズサイドでいえばドルフィーと
ピアニストの主人公が共演したり、
マイルス・デイビス、ジョン・コルトレーンといった、
ジャズジャイアンツとビッグバンドな共演を果たしたり。
一方、落語家では古今亭志ん生、立川談志のアンドロイドが
人間を滅ぼすウイルスを作っているという
シュールな設定もオモシロかったです。
生体ウイルスとコンピューターウイルスを並行して描き、
人間と機械、どっちが先にウイルスでヤラれるか?
言葉にすると重そうな内容なんですが、
語り口が軽やかだし、主人公が事態を正確に把握しないまま、
のらりくらりとなんとなーく事態を乗りこなしていく。
小説の語り手が猫という「吾輩は猫である」オマージュと、
猫という第三者が主人公を見守る形の文体も、
本作の風通しのよさに貢献しているでしょう。
発展したテクノロジーが行きつく先が、
人間臭さやノスタルジーというのは逆説的なんだけど、
すでにその時代は到来している気もします。
(フィルムカメラ、アナログレコード、カセットなど)
奥泉さんは今回初めて読んだので、
他の作品も読んでみようと思います。

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