2017年5月21日日曜日

メッセージ



<あらすじ>
ある日、突如として地球上に降り立った巨大な球体型宇宙船。
言語学者のルイーズは、謎の知的生命体との
意思疎通をはかる役目を担うこととなり、
“彼ら”が人類に何を伝えようとしているのかを探っていくのだが…
映画.comより)

ドゥニ・ヴィルヌーブ監督最新作。
今、一番信用できる監督の1人な訳ですが、
これまでの作品と打って変わってSFということで、
どうなんだろうと期待と不安が入り交じった気持ちで見ました。
だがしかし!不安は完全に杞憂でとんでもない映画でした。
ほとばしる作家性を失うことなく、
作品の完成度が異様に高いという奇跡。
今年ナンバーワンクラスの傑作!

※ここから盛大にネタバレして書きます。
(今回は特にネタバレしたまま見ると
全然ツマらなくなる可能性大なので取り扱い要注意)

日本語タイトルが出ないことに安心しつつ、
天井なめの意味深な部屋のショットからスタート。
(この画角は繰り返し劇中で用いられることに)
そして、そこで言及される時間の不可逆性。
このオープニングシーンに
実はすべてが詰まっていることが見終わった後に分かる。
こういった作りは映画ではよくある話ですが、
とにかく余韻の重みがハンパないんですよね。
エンディングでも同じカット割りなんだけど、
その奥には…っていうね〜。
ポスタービジュアルでも使われていた、
500m超えの巨石が世界各地に出現し、
彼らエイリアンが何の目的で地球に来たのか、
世界各国がリサーチしていく過程が前半で描かれます。
このシーンが言語学、暗号解読の観点で見て、
抜群にオモシロ過ぎて鳥肌ものでした。。
(サイモン・シンの暗号解読読んでて良かった)
そもそも予告編で巨石でやってきた
エイリアンの実態は明らかになっていなくて、
ドゥ二先輩のことだから、
概念としてのエイリアン像かと思いきや、
がっつりとしたB級感溢れるモンスター像でビックリ。
複製された男に登場した蜘蛛を彷彿とさせる姿でした。
(カットの切り替えでドーン!という見せ方が最高)
人間側が名付けた名前はヘプタポッドで、
2体出てくる彼らの個別名称はアボットとコステロ
(アメリカの昔のお笑い芸人なんですね→リンク
見た目はタコみたいなんだけど、
そこから放たれる謎の象形文字の
謎めいたセンスが抜群にカッコ良くてGAPにやられました。
全く謎な文字を使ってコミュニケーションが
始まっていく過程に学問の重みを感じました。
ドゥニ先輩作品といえば特徴的なのは音なのですが、
それは本作でも健在。どこで誰が何を聞いているのか、
TPOを踏まえた音の使い方は
映画への没入感が高まって良かったです。
また、ボリュームのデカいおなじみの重低音も
あの巨石内空間とマッチして素晴らしかったなー
後半にかけては、アメリカが一生懸命対話しようとする中、
危険だと判断した中国、ロシアは攻撃に踏み切ろうとするし、
アメリカ内部でも造反が起こったり、
混沌が深まっていきます。
とくに爆弾仕掛けられてたシーンの緊迫感が凄まじかった…
(あの大量の文字が壁に張り付いたときの迫力よ!)
終盤にかけては時間の不可逆性の謎が明らかになってくる。
作品を通じて終始ルイーズと娘のやり取りが
インサートされているんですが、
そのすべての謎がラスト15分で繋がってくるんですなぁ。
伏線の置き方と時間の不可逆性というテーマが
有機的に絡まり合って、あー!あー!あーそういうこと!
と心の中で言いまくりでした。
(上から読んでも下から読んでも”HANNAH”…泣)
先の分かっている人生だとしても
「生きねば」ということであり、
最終的に愛の話へと着地するという
想像もしていなかったエンディングにサムアップ!
ドゥニ先輩はブレードランナーの続編の監督な訳ですが、
俄然楽しみになってきました。

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