2017年5月3日水曜日

スウィート17モンスター



<あらすじ>
キスさえ未経験というイケてない毎日を送る
17歳の高校生ネイディーンは妄想だけが空まわりし、
教師のブルーナーや情緒不安定な母親を困らせてばかりいた。
唯一の親友であるクリスタが人気者の兄ダリアンと恋に落ち、
世界にたった1人だけ取り残されたような疎外感を感じた
ネイディーンはとんでもない行動に出てしまう。
(映画.comより)

アメリカの青春系映画はなかなか劇場で見れない状況ですが、
公開されたときはなるべく劇場で…という気持ちで見ました。
「こじらせ系女子」というキーワードで括られていて、
確かに!と共感する場面も多かったんですが、
それよりも何よりも自分を肯定することの尊さが
強く伝わってくる作品でした。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

まず、ネイディーンの背景/育ちが最初に紹介されるんですが、
ここの手際が素晴らしかったです。
彼女が人見知りで、社交的な兄に劣等感を抱き、
そこへ父の死がトドメとなりふさぎ込んでしまう。
上記の内容はドラマ性が高いので、
長々やってしまいそうなものですが、
あくまで人物紹介と割り切って大胆に進めているので
物語に入りやすかったです。
僕が好きだったのはお父さんと死別する直前のドライブのシーン。
ドライブスルーで食べるチーズバーガー、
ラジオからかかる父親の好きな音楽(ビリー・ジョエル)、
断片的な思い出が突き刺さってきました。
ネイディーンにはクリスタしか友達がいなくて、
小さなころから2人はずっと一緒だったにも関わらず、
ネイディーンが忌み嫌う自分の兄と
クリスタが恋愛関係になることで彼女は孤立していきます。
自分の大好きな親友と自分が大嫌いな兄。
ここがくっつくということは自分の価値観が否定されることになる訳だし、
挙句ベッドを共にしている姿を目撃してしまうんだから、
その心中察するに余りあるものがあります。
なんとかしてクリスタが自分のもとに戻ってくることを願い、
何度もアプローチしていくんですが、
クリスタの兄への愛は深く親友とも断絶してしまう。
このきっかけとなるハウスパーティーのシーンがキツかったなぁ。
周りにたくさん人がいるのに、どの輪にも打ち解けることができない。
一方でクリスタは兄を含めた自分以外の人と楽しげにしている。
兄のような社交的な人からは「何が辛いんだい?」
と言われてしまうかもしれないけど、
初対面の人と上滑りの会話をすることは
地獄だと思っているネイディーン側なので
「分かるわー」と共感していました。
しかも、この兄を演じるのが
エブリバディ・ウォンツ・サムの
主人公を演じたブレイク・ジェナー。単細胞感が絶妙。
前半で大きく閉塞してしまう彼女の人間関係が
良い意味でも悪い意味でも開けていくのが後半。
ウディ・ハレルソンの演じる教師は僕からすると理想に見えて、
品行方正な先生もいいけど、
このぐらいグレーな先生がいたほうがガス抜きになるというか。。
絶対的に正しいことなんてないんだぜということが分かる。
彼女の思いつめた話に対して取り合わないように見えて、
ウィットに富んだレスポンスを返す様が好きでしたし、
終盤で家出する彼女にそっと寄り添うだけで、
教師として「こうすべきだ!」と言わない辺りもぐっときました。
また、ネイディーンに好意を寄せる
アーウィンとのエピソードは甘酸成分が高め。
ネイディーンはちょっといいかもぐらいに思っていて、
恥ずかしさもあいまって彼に対して軽口を叩いてしまう。
自分の気持ちに正直になれず、ごまかしてしまうと
信用を失ってしまうことが伝わってきて、
いつもヘラヘラしているので刺さりました。。
そして、ラストでの兄との正面衝突が核心を突きまくりで、
単細胞に見えた兄も悩み傷ついていることもあるんだと。
当たり前のことなんだけど、
序盤の単細胞っぷりとのギャップが大きくて
よりグッとくる仕掛けになっていました。
自分だけが不幸だ、恵まれていないと思ってしまい、
人の気持ちを考えられなくなることは、
可視化社会でより強くなる感情だと思います。
表に見えていることと、実態が違うことは往々にしてあるわけで、
ちゃんと対話しないと見えてこないよなーと改めて感じました。
あと本作のメッセージとして一番響いたのは
自分のことを肯定することの大切さです。
自己否定ばかりしているとなかなか前に進めない。
かと言っていきなり自分のことを
肯定的に捉えることができるかといえば、
それまた難しい話でありまして…
打開するときに1人では難しいけれど、
理解者がいれば世界は広がるのかなと
ラストシーンを見て感じました。
悩める思春期を送る中高生に見て欲しい映画。

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