2014年5月31日土曜日

MONSTERZ モンスターズ



予告編でオモシロそうやなーと思い、見に行きました。

元は韓国映画で、リング等でおなじみの
中田秀夫監督によってリメイクされた作品でした。
主演が藤原竜也×山田孝之という
日本を代表する役者同士ってことで、
その点のみ期待して見てみたら、
想像以上の打点をたたき出してました!
お話自体は突っ込みどころありまくりだし、
スーパーナチュラルものとしても面白みに欠けるのは事実。
ただ主演2人のパワーとホモソーシャル性は最高でした。

藤原竜也は子どもの頃から、

目を合わせた人間を物理的にコントロールできる
という能力を持っていて、孤独な人生を送ってきた。
ある日、公園でいつものように人をロックしてたら、
山田孝之だけがコントロールできない!
人生で初めて自分の思い通りにならない存在が現れ、
孝之に固執し、なんとか殺そうとする。
一方の孝之も特殊能力の持ち主で、異常な回復力を持っている。
竜也にとっては食い合わせが最悪で、
コントロールできない上に全然死なない。
この2人の戦い a.k.a イチャイチャをひたすら見る映画です。
最初、竜也の子どもの頃から始まるんですが、
ここで彼がどういった能力を持ってるのかと、
その背景みたいなのがコンパクトに分かります。
AKIRAをバイブルとしているのもオモシロいし、
なんといっても親父を殺すシーンね。
方法自体がFRESHだし、あとのビルでのシーンが
皆で体操してるかのように見えるシュールさ。
孝之の過去としては、
子どものころに一家で交通事故に遭い、
自分以外が全員亡くなってしまう。
それぞれが「死ぬまで生きる」という
孤独な人生を歩んでるんだけど、
竜也は中2病で、自分と対峙できていないのに対して、
孝之は能力を受け入れた上での人生を生きてる。
竜也が孝之の働くギター屋の店長を殺したことで、
2人の戦いにゴングが鳴る。
追う/追われるの関係が逆転したり、
終始じゃれ合ってるから、
そこにフォーカスして見れば十分楽しめました。
特に竜也の2回目の襲撃の際に、
マッチョ男子×2連れてきたところは爆笑!
孝之はフィジカル性押しで、ずーっと動いてる。
映画始まる前に猿の惑星の予告編見たから、
完全にゴリラにしか見えなかったw
さんざんイチャついてからの、
劇場でのシークエンスが本作最大の見せ場。
人が無意味にたくさん死んでいくのとか、
孝之vs人の群れとか、迫力たっぷり!
そっからの螺旋階段のくだりも最高で、
特殊能力を持つもの同士という関係性を超えてんじゃね?
と思わせる孝之と竜也の心が通じ合い。
抱き合いながら落ちていくところで監督が
確信犯的にBL意識してるのがよく分かりました。
そして、タイトルの「Z」で大団円。
真面目に見るとつまんないけど、
少し斜めに見るとオモシロいと思える映画。

2014年5月27日火曜日

ぼくたちの家族



石井裕也監督最新作ということで。
前作の「舟を編む」が素晴らしいマスターピースで、
日本アカデミー賞6部門受賞という結果も伴い、
一気にスターダムをかけのぼった若手監督の1人。
楽しみにして見に行った結果、忘れられない映画となりました。
正直、言いたいことが無い訳じゃなくて、
演出でダサい部分もあるし、物語としてもツッコミどころはある。
なんだけど!ハンパじゃなく個人的に刺さった!
物語に登場する家族構成が自分の家族とまんま一緒ってことと、
年齢層も近いってことが大きな要因で。
そして、この年齢になって考える「家族」との距離感が
あまりにドンズバで、見終わったあと茫然自失。
監督が30歳ということもあって、
似たようなこと考えてるのかな〜と想像したりしました。

主人公は妻夫木君演じる浩介は、ごく普通のリーマン。
結婚してて、初めての子どもを授かったばかり。
彼の母親に脳腫瘍が発見され、余命1週間と宣告される。
そこで父、浩介、弟である池松壮亮演じる俊平が
なんとか母を救おうとstruggleするという話。
難病ものなんだけど、追い込まれ方が凄まじい。
母の治らない病気という大きなハードルに加えて、
両親2人がこれまで作ってきた借金もある。
どこにでもいる家族像を初めに色々と見せられるがゆえに、
前半の八方塞がり具合は息が詰まりました。
俊平が劇中でも言っていますが、
浩介が学生時代に引きこもりとなった時点から、
この家族はギリギリの綱渡りを続けてきて
母親が病気になったことで、問題が浮き彫りになった訳です。
病気、金という2つの大きな問題に対する
父、長男、次男というそれぞれのスタンス、
行動の取り方が中盤から後半に描かれます。
このくだりが心に刺さりまくりました。
ちょっとデフォルメし過ぎている部分はあるものの、
この立ち位置の違いが絶対あるな〜と強く思ったし、
僕は長男なので浩介の立場で見てたんですが、
彼の片の荷があまりに重過ぎて、吐き気しました…
そこに逃げずに立ち向かう漢としての生き様は
尊敬を超えた畏怖の念さえ抱いたなぁ。
ある一定の年齢までは父親が
家族を支えるモデルが成立するけど、
父も歳を取るんだから、そのモデルはいつまでも続かない。
それがまさに瓦解する瞬間を見る訳だから辛かった…
対比となるのが次男の俊介。
はじめはヘラヘラしてるんだけど、
徐々に事態の大きさに気付き、兄をサポートするようになる。
前半のダメな最近の大学生像がフリとなり、
後半にかけては家族を誰よりも愛している優しく逞しい男へ。
(計2回、涙腺が決壊しましたが、
いずれも池松君きっかけでした。)
親がいずれ死ぬことは当然の事実として
厳然と日々の生活の中に存在するとしても、
元気なうちにそこまでの想像は追いつかないことも痛感。
と非常に素晴らしい内容なのは間違いないんだけど、
細かい演出の部分がな〜
占いのくだりは絶対必要なかった。
あのシーンはそんなんなくてもグッとくるところやのに、
アレのせいで台無感が…
あとはラスト手前のセリフで全部説明しちゃうところ。
そこのセリフの内容もちょっと…って感じでした。
ラストで死に行く命と生まれ来る命が
温かい光の中一同に介するのは素晴らしいショットで、
そっからの〜ある人の顔エンディング!
異論反論あるでしょうが、好きな映画でした。

2014年5月24日土曜日

建築学概論



甘酸界隈では以前から話題となっていた本作。
やっとDVDにて鑑賞しました。
タイトル見たら、「ナニコレ?」
と思う方多いかもしれませんが、
甘酸クラシックでありながら、
映画としての出来も素晴らしい作品でした。
タイトルは大学の授業の名前で、
そこで出会った男女の恋愛模様と、
大学卒業から10年ほど経った現在の恋愛模様が
クロスオーバーしながら描かれる。
端的に言ってしまえば、すれ違いってことなんだけど、
見てて切ないシーンが多かった。
前半から中盤にかけての、
恋愛未満ギリギリの甘酸のつるべ打ちに
もんどり打ちまくっていましたw
(レールの上歩くゲームのシーン最高!)
この思春期特有の男女関係とは対照的に、
現実のシークエンスは大人になった彼らが
様々なものを抱えながら生きているのが描かれます。
こっちは逆にビターなんすよね…
単純な恋愛という訳ではなく、
結婚もしかり、親のこともしかり、
「家族」というテーマが根本にあります。
甘酸とビターの調和、そしてそれが反転する瞬間。
どれもが愛おしく、忘れがたい映画でございました。

2014年5月20日火曜日

ブルージャスミン



ウディ・アレン監督作品。
ミッドナイト・イン・パリ以来。
彼の作品は見たいと思うんだけど、
あまりに多作過ぎて、どこから手を付けるべきか分からず、
放置しています…最新作を追っかけるところから
始めようと思い立ち、見てみました。
予告編を何回か見ていて、その段階で結構パンチ効いてそう〜
と思ってたら、予想以上に鋭角に殴られた感じw
マジで一切の容赦がない、突き放したストーリー展開は
胸が詰まると同時に、逆に清々しさを覚えるくらい。
一方で主人公のジャスミンのような
生き方をしている人にとっては地獄の2時間だと思います。

主人公はタイトルにもあるジャスミンという女性で、
演じるのはケイト・ブランシェット。
本名はジャネットなんだけど、平凡過ぎて自ら改名したとか、
自分がいかにセレブリティかを偶然飛行機で
隣だったおばあさんに一方的に話す冒頭のシーンで
彼女がどんな人間か分かるようになっています。
見た目はオシャレでハイソなんだけど、
「コイツちょっとおかしいな」と思わせる行動を取る。
大学を中退し、お金持ちの男性と結婚。
NYで悠々自適なセレブライフを送ってきたのに、
旦那が金銭問題で逮捕され、自分も一文無し。
頼れるのがサンフランシスコに住む妹のジンジャー
ジャスミンとは正反対の貧乏な生活を送る
子持ちのバツイチ。彼氏はDQN系。
ジンジャーのもとで過ごす彼女が惨めと感じる現在と、
セレブ時代の栄枯盛衰を交互に見せていく鬼畜演出で
物語は進んでいきます。
そもそも僕はジャスミンみたいな、
自分では何もしてないくせに、それを自分のものみたいに
誇示してくるパラサイトクソ野郎が大嫌いなんですが、
それを大前提にしても、ジャスミンがあまりに不憫!
ラッパーであるDABO氏が著書で書いていた
「10代で見た目でモテてて油断して、
自分磨くの忘れた20代迎えた男は悲惨」
というパンチラインを想起しました。
ジャスミンは表面的に着飾る能力に長けているんだけど、
それはあくまでも上っ面で本質的にはemptyであることが
様々なシーンを通じて描かれていました。
PC→インテリア・コーディネーターというのは最たるもの。
自分で何もできないくせに、
人のことは金、地位、名誉で値踏みするんですよね〜
その彼女が現実に目を向けず、
夢 a.k.a 呪いの中でもがく姿を見ていると、
ざまあ!と思うんだけど、どこかファニーでもある。
(世間知らずという言葉で説明できるギリギリの逃げという
ウディ・アレンの最低限の優しさは用意されている)
一方で妹のジャスミンとは対照的な性格。
人間臭くて、照れがないし、他人がどう思うとか関係なく、
絶対的な価値観で生きている生粋のボケ視点。
これを配置することでジャスミンの哀れさが引き立っていました。
ジャスミンのような人が嫌いと言いましたが、
相対的に自分の立ち位置を確認し、
他人をやっかんだりする部分は人間誰しも持っている。
それをMAXまで増幅したキャラがジャスミンな訳ですが、
誰にでもそういう瞬間はあるよね〜と
物語が進むにつれて思い直してました。
特にパーティーで出会った国務省の人とのシークエンス。
この辺りから相当キツかったな…
全く過去から学んでなくて、
実体のない過去の自分を他人の力を借りて実現しようとする。
彼女には血はつながっていないものの、
息子が1人いて、彼は父親が逮捕された後、家を出て行ってしまった。
その彼とジャスミンが再会するシーンで、
息子がずばっー!と100点の回答をする。
そっからの終盤は現実も地獄だし、
過去のセレブ生活の破綻原因もあきらかになるしで、
あぁ辛い…と思うことやまの如し。
特にフラれて家に帰ってきたときのジャスミンの顔、姿よ。。
「ボロ雑巾を人間で表現したら、こんな感じです」
と思わさせられましたw
人のことを客体化して、
なおかつそれが自分の価値であるかのごとく、
振る舞う人間が見る地獄の決定版!

2014年5月19日月曜日

パラノーマン ブライス・ホローの謎



評判高くて、劇場で見たかったんだけど、
公開期間が割と短くて見逃してたのでDVDにて。
これがストップモーション・アニメだなんて
到底信じられないくらいの滑らかさと質。
普通に3Dアニメだと思ってしまうくらい。
撮影期間2年っていうのは想像を絶しますが、
下の動画見れば、そのくらい時間かかるのも納得。
(さらに見たい人は⇒リンク)



それに加えてストーリーも良かった!
主人公のノーマンは幽霊が見える小学生。
親からも学校でも変人扱いされて辛い思いをしている。
(本人自身はゾンビとかが好き)
彼の住んでいるブライス・ホラーは
魔女の呪いにまつわる伝説がある。
これまではその呪いからノーマンの大叔父が
街を守ってきたんだけど、彼が亡くなってしまい、
魔女の呪いが発動し、魔女とゾンビに街が襲われてしまう。
それをノーマンが救うという話。
まず、ノーマンがキャラクターとして
すごいかわいらしいっていうねw
ホラー好きで、街中の幽霊と挨拶しながら通学してる。
でも学校に行くと完全にFREAK扱い。
友達もいないし、家でも完全に変人扱い。
そんな彼が街を救うっていう話でアガらない訳がない!
7人のゾンビが街を襲うんだけど、
当然住人たちは彼らを排除しようと銃撃したり、
どついたり、逃げ込んだ先を焼き討ちにして、
徹底的に排除しようとする。
ゾンビっていう極端に異形のものだから
排除して当然と思うかもしれませんが、
論法だけで考えると排他主義ってこと。
自分と違うからって安易に排除してんじゃねーよ
ということが見てると伝わってくる。
また、魔女の呪いもその背景には、
排他した結果の悲しいストーリーがあって。
その魔女とノーマンは同じ境遇であったこともあり、
暴力ではなく対話で事態を鎮静化する。
このあたりをギャグも交えながら、
ときに真剣にっていうバランスが好きでしたね。
90分くらいでタイトな仕上がりなも良し。
新たな形のゾンビ、ホラー映画としてオススメです。

2014年5月18日日曜日

蒲田行進曲


東映クラシックを見ていこうということで。
監督は深作欣二。厳密には東映の映画ではなく、
題材が東映のスタジオでの話。
角川の協力のもと松竹映画として製作されています。

風間杜夫が東映のスター銀四郎で、その彼女が松坂慶子。
彼はスター街道を歩むため、
身辺整理をしなければならなくて、彼女と別れることに。
しかし、松坂慶子は妊娠中。
そこで舎弟の平田満演じるヤスが
子ども含めて彼女を引き受け、
結婚することになるものの…っていう話。
圧倒的に身分の差がある中で、
なんとかstrugleする姿はかっこいいなーと思いました。
守らなければいけない誰かがいることで、
むちゃくちゃな仕事量をこなし、
汚い部屋をむりくりキレイにするといった
ヤスの健気な行動にグッとくる。
その無茶苦茶な仕事の最たる例として、
5m以上の階段から転げ落ちるという大役を担う。
それもこれもスターである銀次、松坂慶子のため。
自分に才能がないことは自覚し、
できることをマックスでやるっていうのは心打たれます。
最後の最後、メタ構造であることを全力で生かしたラストは
1本取られた!ってなりました。
昔の映画現場を知れる、とてもオモシロい作品。

野のなななのか



前作の「この空の花 長岡花火」があまりに素晴らしかったので、
公開初日の舞台挨拶付きで見てきました。
前作との姉妹作品という位置付けらしく、
映画文法的には同じような作りでした。
圧倒的な情報量にひれ伏し、
映画という濁流の中に身を浸すような感覚。
話の語り口としては決して上手いとは言えないけれど、
この感覚を味わうだけでも是非映画館で見て欲しいと思います。

舞台は北海道の芦別で1人の元町医者であるおじいさんが
亡くなったことにより、葬式、通夜、
初七日、なななのか(四十九日)を行うという話。
それに加えて、おじいさんの過去を通じた、
北海道における第二次大戦の話が加わっている形。
文字にしちゃうと簡単な話なんだけど、
そこは大林メソッドでとんでもない形で表現されてる。
冒頭、おじいさんが亡くなるところから始まるんだけど、
病院のシーンで登場人物が概ね紹介されるシーンの
詰め込み具合から「うわぁー!」ってなるw
カット割りもそうだし、音と画が合ってないというか
微妙なズレがあって、頭がクラクラする。
そっから現在と過去をクロスオーバーしまくり、
誰が生きてるのか、死んでるのかも曖昧な世界。
前作も同様に戦争を題材としてるものの、
本作はジトーっとした
wetな世界観なのが対照的だなーと思いました。
「生」「死」という概念について、
しこたま突き詰めてくるし、
カタルシスが用意されてる訳じゃないから、
色々と考えさせられるような作り。
ひ孫のかさねという女の子が芦別の街を回るところでは、
芦別という街の紹介になりつつ、生の伊吹を感じさせてくれる。
一方のおじいさんの樺太での出来事のシークエンスでは
濃厚すぎる死の臭いをトリッピーな映像で
延々と見せつけられます。
輪廻転生にまつわることであって、
僕自身は懐疑的なんだけど、
圧倒的な映像でそれを見せつけられると
ぐうの音も出ませんでした…
最近読んだ白石一文の「この世の全部を敵に回して」
の論考とも共通点あったので、興味深かったです。
パスカルズの使い方もおもしろくて、
「セデックバレ」の天国シーンを想起。
優しい音楽を奏でてるんだけど、静かな狂気を感じましたw
あとは中原中也の詩も象徴的に使われています。
彼に託される反戦の意図っていう話が
舞台挨拶で監督が言っていて、それもなるほどな〜と。
あとは3.11および原発に関する言及もあります。
おじいさんが亡くなった時間が
3月11日の2時46分っていうところから
劇中にでてくる時計が示す時間はすべて2時46分となっている。
あのときに止まってしまった何か。
それは何だろうと見ながらずっと考えてました。
(孫の1人が原発で働いているというくだりはいらなかったかも)
戦争を実際に体験した世代がどんどん亡くなっていく中で、
こういったアートな形で、戦争の爪痕を残していく意味を考えると
1人1人が考えて生きていかなきゃなーと思いました。
意味を考えつつ、圧倒的な映像を体験すべし!

2014年5月14日水曜日

Book (April 2014 )




暗黒映画入門 悪魔が憐れむ歌

高橋ヨシキ氏という映画ライターの仕事をまとめたもの。
自身を悪魔主義者と呼んでいますが、
それよりも帯に書かれている「知のウォーリアー」
という言葉がピッタリだと思います。
今の時代、ある程度のことはネットで調べれば
分かる時代の中で、知識が身体化しているのがかっこいい。
それは毎週やってる水道橋博士との番組からも
ビシビシ伝わってきます。
本著はタイトルどおり残酷、暴力系映画が体系的に
まとめられていて、かなり勉強になりましたし、
まだまだ見れてないのたくさんあるなーと思いました。
こういう本読んでると、綺麗なものばっか見てたら、
頭がアホになっていくんだなと。
残酷なものや暴力的なものを見ないと、
他人の痛みに鈍感になっていくと思うので、
これをガイド本にして映画を見れば良いと思います。



悪と仮面のルール

小説は1人の作家が好きになったら、
とことん読み倒すようになったんですが、
そのきっかけになったのが中村文則氏。
本作もその一環なんですが、小説というより
中村さんのエッセイのような印象も受けました。
勿論フィクションなんですが、
これまでの作品で登場してきた
悪、死に関する考察が何回も出てくる。
ある種、集大成のような論考なので、
興味のある人は「何もかも憂鬱な夜に」から読んでみてください。



モノを売らずに気分を売る―映画宣伝手法を分析

映画のマーケティングに関する本。
仕事でマーケティング的なことをやり始めたので、
取り急ぎ、自分の興味あるものから読んでみました。
読み終わったあとは複雑な気持ちになりました…
主に日本で映画を上映する際に行う、
意味不明な邦題、映画に出てないタレントによる記者会見、
一般人のコメントによるCMなどのカラクリを教えてくれます。
それ目から鱗な内容だったんですが、
なんかねぇ…って感じでした。
映画産業が斜陽の中、劇場に人を呼ぶための方法がこれかと。
そんな上辺のことじゃなくて、
こんだけ情報が溢れている中では本質を捕らえたものや
本格的なものが大切なんじゃないかなと思ってたんですが、
大きなパイはそれではgetできないってことは理解しました。
2時間くらいでサクッと読めるので、
前述の疑問を解消したい方にはオススメです。



ラップのことば2

日本語ラップは昔ほど熱を入れて聞いてないんですが、
1も読んでて、むちゃくちゃオモシロかったので読みました。
そしたら案の定むちゃくちゃオモシロかったです。
1はどちらかというとベテランが多かったんですが、
本作は比較的若手が多め。
それぞれのラッパーでリリックの書き方や書きたい内容が
全然異なるのは改めて興味深いなと思いました。
書き方、内容の話もそうなんですが、
それぞれのラッパーの背景や考え方まで知れるので、
読み終わったあとに曲を聴くと、
また違った聞こえ方するのは新鮮でした。
AKLOのインターネット論、泉まくらのオリジナリティ論、
VERBALのKANYE WESTすべらない話が個人的なハイライト。
ラップ好きな人じゃなくて、
これきっかけでラップ好きになるくらいの傑作だと思います。

2014年5月12日月曜日

エル・トポ



人間の心を失った某先輩と飲んでるときに
物語における道徳観のような話になり、
本作を勧められたので、見てみました。
基本的に知らんぷりということはしないで、
限りある人生の中で様々なものを
自分の目、耳で見たり、聞いたり、読んだりしたい。
ということを考えながら、
映画、本、音楽に触れて毎日生活しています。
にしても!この映画は見たくなかったというか。
エル・トポを見る人生と見ない人生を
これから選択できるのなら、
見ない人生を歩みほうがいいんじゃないかと
思わさせられる、あまりに強烈な映画体験でした。
人より映画見てるし、カルト映画と呼ばれるものも
そこそこ見ている中でも、これは群を抜いていると思います。
スプラッター嫌いっていう人が
スプラッター見る度にこういう気持ちになってるのであれば、
これまで安易にオススメしてゴメン!と思いました。

監督はアレハンドロ・ホドロフスキーという人。
カルト映画の教祖と呼ばれているチリ人の監督。
ホーリーマウンテンと本作が代表作で、
今年は新作が公開されるらしい⇒予告編

いかんせん物語の文脈はほとんど無くて、
芸術的なシーンやエグ味全開のシーンのつるべ打ち。
それはまるで最悪な夢を見ているかの如く。
その1つ1つが
「こんなにイヤな気分になること、よく考えるな!」
と思うシーンばかりで見ててヘトヘト。
単純にグロいとかじゃなくて、
人間の心の奥底にある差別感情みたいなのを
揺り動かしてくるのがホント嫌。(褒め言葉)
変なドラッグなんかよりもキクぜ!
あぁ、ホーリーマウンテンが猛烈に見たい。

2014年5月11日日曜日

LOOK



ある本を読むための予習として見ました。
存在自体も全く知らなかったんですが、
とてもおもしろかったです。
クロニクルの終盤で監視カメラによる
映像を使った演出があり、FRESHやなーと思っていたら、
本作が先駆けですでに実施していました。
しかも、この映画は全編監視カメラの映像を使った映画。
ただし実際の監視カメラではなく、
それっぽい映像を使ったフィクションです。
冒頭でアメリカ人が一日あたり、
監視カメラに写る回数がテロップで出ます。
そっからは色んな人物の監視カメラの映像を使いながら、
5つくらいのストーリーが同時並行で進み、
終盤にそれらがリンクしていく。
これらのストーリーは監視カメラの存在が生む、
良い側面と悪い側面の両方が描かれています。
犯罪が起こったときには、大体の場合は良い方向に働くんだけど、
一概にそうも言えないよねという絶妙なバランス。
本作はアメリカが舞台ですが、
日本も相当な数の監視カメラが、
街中に存在するようになっていると思います。
客観的な証拠として有効なものであるのは間違いないけど、
悪い使われ方したり、権力者の手に落ちたりしたときの
リスクとか考えた方がいいよな〜と思った映画でした。

WOOD JOB 〜神去なあなあ日常〜



ウォーターボーイズやスイングガールなど、
青春映画クラシックを産み出してきた矢口監督最新作。
アカデミーナイトっていう宇多丸師匠の番組でも
ずっと特集されていたので見てみました。
結果、むちゃくちゃオモシロかった!
映画館で声だして笑った回数は今年ダントツ。
三浦しをんの小説が原作ですが、
昨年の「舟を編む」に引き続き相性良い感じ。
本作はテレビ資本の映画ではあるんだけど、
それが一概にダメって訳ではないことも改めて。
銀の匙に構造としては近いんだけど、
本作のほうがワビサビ効いてて好きです。
染谷翔太が主人公で、大学受験に失敗した18歳。
彼女にもフラれた彼は街で見かけた長澤まさみが
表紙のパンフレットに惹かれて林業の道へ。
はじめは若者っぽい態度で、
完全に林業を舐め腐ってるんだけど、
村の人々と打ち解けていく中で、
林業の奥深さ、かっこよさに目覚めていく。
物語全体の骨子が若者のイニシエーション物語なんだけど、
そこかしこに強烈なブラックジョークが
ぶち込まれてるのが特徴です。
sexualなものやババアネタ、動物ネタまで。
映画で見てオモシロいのと、
TVのバラエティでオモシロいことの違いは言われて久しいですが、
きっちりボケ倒してきたのはホント最高だったなぁ。
(逆にこのボケに乗れないとしんどいかもしれません…)
林業という仕事の描写も興味深くて。
特に親方である光石研が車で語るシーンは、
考えれば当たり前の話なんだけど、
すべてが加速化している今の社会だと
考えられない時間スケールの仕事なんだなぁと思いました。
あとスローライフっていうサークルの
大学生が村にやってくるシーンも好きです。
上辺だけこそげて気持ちよくなるゴミみたいなやつらは
地獄に堕ちて死んでしまえといつも思うんですが、
染谷君がきっちり落とし前つけてくれてて最高っした。
木を切るシーンは幾度となく出てきますが、
スタント無しで役者の人達がガンガン切ってるから、
ワンショットで押さえた画の迫力がありました。
配役もホントに素晴らしくて、出ているどの人も愛おしい。
特に伊藤英明は10億点!っていうくらい良かった!
(マジックマッシュルームとか言ってバカにしてゴメン…)
不器用なんだけど、仕事熱心で昔ながらのアツい男。
その姿は完全に山猿でしかない。
走ってる車に乗り込んでくるシーンが大好き。
長澤まさみは可愛いんだけど、関西弁が今イチな感じが悔やまれた…
あと山の神の描写もオモシロくて、
日本人は明確な宗教を持ってる人は少ないものの、
実体の無い神に対する敬意はある。
これは日本特有のことだと思うし、
海外の人が見たらどう思うのかな〜と思ったり。
何といっても終盤の祭りシーンですよね、本作は。
よくOK出たよな〜と。完全にモロ出しで挿入ってことですからw
もしかしたら、それは単調で閉鎖されたものだとしても、
本人が好きになれるかどうかが一番大事なんだな〜と思いました。
偏見持ってる人でも是非見てみてください!

プリズナーズ



先輩からの鬼pushもあり、鑑賞してきました。
fucking crazy!と言いたくなるような映画で、
久々にサスペンスのオモシロいやつ見た!って感じ。
予告編を見たときには「狼の死刑宣告」よろしくな
ビジランテものかと思いきや、超サイコな仕上がり。
監督はカナダ人のドゥニ・ビルヌーブという人で、
過去作もそんなにたくさんないから、
これからグイグイきそうな予感がします。
アメリカの田舎町が舞台で、
2つの家族が感謝祭を祝っていたときに、
それぞれの家族の娘が失踪する事件が発生。
直前にキャンピングカーで遊んでいたのを見かけていたため、
その車に乗っていたポール・ダノ演じる容疑者を逮捕。
しかし、彼には10歳程度の知能しかなく、
物証も見つからず釈放されます。
しかし、それに納得しない
ヒュージャックマン演じる父親がある行動を起こし…という話。
いかんせん、事件が起こったあとから、
全体に不穏な空気が流れていて怖い。
子を失った親の狂気っていうのは理解できるんだけど、
ヒュー・ジャックマンのTortureがハンパねぇ。
はじめはひたすら殴ってるだけやけど、
後半は小さい部屋みたいなところに閉じ込めて、
熱湯or冷水を浴びせまくるというね…
一方でジェイク・ギレンホール演じる刑事は
ポール・ダノに見切りをつけて、別路線で捜査していた中で、
いかにも怪しいやつが容疑者として浮上。
コイツをなんとか逮捕するところまで漕ぎ着ける。
この逮捕シーンが一番気持ち悪かった…
ホントこんな嫌なことよく考えるよな!と思いました。
逮捕したはいいものの、
こいつも頭がおかしくて、一切自供しない。
しびれを切らした刑事が詰めよったところで最悪の結果に。
捜査が振り出しに戻るものの、
片方の家族の娘が見つかり保護される。
そこでヒュー・ジャックマンが真相に辿り着くんだけど、
容赦ない展開となる。本当にビックリした。
コイツか〜と思いましたw
細かいギミックが好きで、謎のジュースや監禁場所とか。
あと彼を撃つときの堂に入った感じも良かった。
刑事の目が見えない運転シークエンスも好きでしたね。
特筆すべきなのはエンディング。
あのかすれた笛の音が忘れられないし、
えっっていう形で終わるのも込みでサイコものとして最高でした。

2014年5月9日金曜日

未来世紀ブラジル



ある本を読むための予習として。
本読むだけで何本映画見んねんという、
あなたのその気持ちは胸にそっと仕舞ってください。
1985年公開のSF映画でモンティパイソンの
テリー・ギリアムが監督。
有名な俳優だとデニーロがちょい役で出てるくらい。
カルト映画やな〜と思いながら、結構楽しめました。
見てるあいだ、なんなんこれ?と思うシーン多いし、
どこに向かってるかもよく分からないw
でも、なんか楽しいなっていうのが、
カルトと感じる理由なんでしょうね。

20世紀中に起こりうる近い未来が舞台となっていて、
主人公は情報局に務めるサムという男性。
完全に管理された社会において、
管理する側で働く彼ですが、抑圧されている。
(ヒーローとして女性を助ける夢を見ていることから分かる)
その夢に出てくる女性そっくりのジルに恋に落ち、
彼女を捜すことでどんどんトラブルに巻き込まれていきます。
そして、管理する側⇒管理される側となり、
当局に追い込まれていき…という話。
とにかくモンティ・パイソン節のブラックジョークが
大量にぶち込まれているので、
それ見てるだけで楽しいし笑える。
メールやインターネットの発達を予期していなかったのか、
あえての外しなのか分かりませんが、
パイプがそこら中にはり巡らされている設定が
個人的には一番好きでした。便利なようで超アナログみたいなw
ただブラック濃度が高めで、単純に笑えない側面も多い。
情報剥奪局の仕事とか、
具体的にどんなことやってるかは説明されないものの、
部分的に見せられるから余計に怖い。
コントロールされた社会は一見居心地がいいけど、
そこから少しでもはみ出たときの怖さが
よく伝わってきたし、そんな社会では生きたくないなーと。
あとエンディングね。
今回見たのは監督の意向を反映したverでした。
調べると、手前で終わる別のエンディングで、
当初は上映、放送されていたらしい…
自分で見て、その酷さを確かめてみるといいさ!

2014年5月7日水曜日

くもりときどきミートボール



フィル・ロード&クリス・ミラーの映画初仕事。
21ジャンプストリート、レゴムービーと
オモシロい作品を立て続けにリリースしている彼らですが、
見逃していたのを後悔する力作!
ブルーレイで見たけど、映画館で3Dで見たら
もっとオモシロかったんだろうな〜
レゴのときも思ったんだけど、
理系の思考回路が垣間見えるのが好きですね。

主人公のフリットは大西洋の小さな島の発明家。
幼い頃から色んな発明をしてきたんだけど、
どこか抜けていて皆から変人扱いされている。
大人になっても働かず、
ひたすら発明に取り組んでいるんだけど、一向に成果が出ない。
見かねた親父さんに自分の店で働けよと言われるんだけど、
彼の発明した水分から食べ物を生み出す機械が発動。
雲からどんどん食べ物が降ってくることに。
それまでイワシばっかり食ってた島の住人たちは、
彼の発明で色んな食べ物が食べれるようになる。
最初は喜んでいるものの…という話。

フリットは「夢別名呪い」に取り憑かれている人間。
でも、その可能性に賭け続けた結果、街の英雄となる。
食べ物が降ってくるというのは良いことのように見えるけど、
徐々にそのネガティブな部分が出てくる。
それはまさに先進国の飽食文化に対する痛烈な皮肉。
(「足るを知る」という価値観になることが、
成熟した社会の証拠じゃないかなと思う)
食べ物が徐々に巨大化していくんだけど、
それぞれの形状を生かしたdisasterが
展開されるのも面白かったな〜
あとフリットの研究所のギミック感と、
フリットが発明するときに一個一個区切るギャグが好き。
「休憩」のくだりとかw
いかんせん、ブラックユーモアが色んなところで冴えてて、
そして、ときにエモいというのは、
僕の好きなものしか入ってないというね。
ものづくりに携わっている人にオススメです。

2014年5月6日火曜日

ガタカ



ある本を読むための予習として見ました。
イーサン・ホーク、ユア・サーマン、
ジュード・ロウ、アラン・アーキン等の
有名俳優が出ている近未来SFです。
97年公開なので、いかんせん先の見通し方が
微妙だったりしますが、近い未来の話かも。
と思わされました。
CGが発展する直前なので、アナログ感が否めないのも
CG全盛期の今の時代に見ると乙な雰囲気。

この物語は遺伝子ですべてが決まる時代の話で、
子どもを産むときも人工授精。
遺伝子工学が発展した社会なので、
受精段階で遺伝子をいじくって、
運動能力や疾患性などをある程度コントロールできる。
イーサン・ホーク演じるビンセントは
そんな時代に珍しく、自然出産で産まれた人間。
産まれた時点で心臓に疾患を持つことが明らかになる。
今の世界だと差別というのは、
宗教、言葉や肌の色など、表面的なことだけど、
本作の時代では遺伝子を調べて優れてるかどうか判明する。
そして、優れた人間は高等な扱いを受け、
能力の劣る人間は下等な扱いを受ける。
つまり、いくら努力しても細胞レベルで
超えられない壁が存在する訳です。
ビンセントはどうしても宇宙飛行士になりたくて、
宇宙開発機関のGattacaで働けるように画策。
見つけた方法が、
ジュード・ロウ演じるジェロームという
優れた遺伝子を持ちながらも、
交通事故で下半身不随となった男になりすますこと。
ここのギミックがいかにもアナログで結構おもしろかった。
(体めっちゃ洗う、毛めっちゃ剃るとかw)
ツッコミどころ多いけど、バレる/バレないのハラハラ感はあります。
努力で何ともならない世界の厳しさは、見てて心が痛みました。
映画全体が抑制された演出で、
システマティックにすべてがコントロールされている印象。
それが世界観とマッチしていて美しくも見えるけど、
無菌化されつつある今の社会が、
この方向に進んでいるのかも…と思うと頭が痛くなりました。
でも、ラストシーンで唯一、人類の反抗というか、
この物語における価値観へのカウンターとなっていたのは、
せめてもの救いかなと思いました。
2014年に見て現実味が増しているのも含めて、
このタイミングで是非見てみてください。

さよなら渓谷



ずっと気になっていたものの、
後回しになっていたんですが、やっとDVDで見ました。
「まほろ駅前便利軒」と同じ大森立嗣。
(大森南朋のお兄さんです。)
やっぱりオモシロかった!
公開当時は吉田修一原作か〜と思い、
偏見全開でパスしたんですが、
やっぱそういうのダメやな〜とあらためて思いました。
渓谷が舞台で、複雑な人間関係ってことを考えると、
「ゆれる」とか思い出しました。
真木ようこ主演で、ある内縁の夫婦が居る。
その家の横で、子どもが母親に殺される事件が発生。
事件自体は母親が犯人で解決するんだけど、
母親のある証言により、内縁の夫婦まで調査が及ぶ。
その夫婦について、週刊誌の記者である
大森南朋が取材を始めたところ、驚愕の事実が…という話。
ネタバレしちゃうとオモシロさ壊滅なので、
詳しいことは見て確認して欲しいと思います。
なんせ本作は真木よう子に尽きます。
エロいし、キレイし、繊細やし、最高なところしかないで…
歪な関係性が徐々に露呈していくにつれて、
本人のスタンスは特に変わらなくても、
憂いとか悲しみが沁みだしてくる感じが
何とも言えない味わいがあると思います。
それは旦那役の大西信満も同じ。
この人のこと全然知らなかったんですが、
これからグッとくるんじゃないでしょうか?
あと大森南朋の野暮ったい感じも好きで、
ラストの抱き合うところはベタながらグッときました。

幸せになるということは、
人それぞれでプロセスは異なるし、
過去に戻って、そのときの選択を変えることはできない。
ときに冷酷な現実と向き合いながら、
人生と対峙していく必要がある。
っていうことを教えてくれる素晴らしい映画だと思います。
あとエンディング曲が
椎名林檎作詞・作曲で歌ってるのが真木よう子という
特大オマケ付きなので、見た方がいいよ思いますYO!!



2014年5月4日日曜日

ある過去の行方



イラン人監督の作品。
前作の「別離」という映画がイラン映画として
初めてアカデミー外国語映画賞を獲得しています。
別離はまだ見れてないけど、
先にこっちから見ちゃおうといことで。
噂には聞いてましたが、
特濃作品でグイグイ引き込まれました。
登場人物は皆どこか欠けた部分があり、
それを映画を通じて、ジワジワあぶり出していく感じ。
しかも、それらが観客に突きつけられてくる。
是枝監督の作品を見た後に近い感触。
主人公はフランスに住むマリーという女性。
この人自身は、2人の子どもを持つシングルマザー
マリーとイラン人のアーマドが空港で待ち合わせるところから物語が始まります。
この2人は元夫婦なんだけど、離婚手続きが完了してない。
マリーはサミールという子持ちの男性と再婚するため、
アーマドと正式に離婚するものの、
大人3人とそれぞれの子どもを中心に結婚とか離婚に関する、
泥沼の物語が展開されるという話です。
ここまでざっくりと説明しましたが、
映画の作りとしては非常にミニマルで、
人物関係やその背景の説明的なシークエンスはなく、
劇中で交わされる会話の中で、
それらをさりげなく分からせてくるのが特徴かと思います。
だから、前半はそういう人物理解で興味が持続していく。
最初は少し退屈なんだけど、
1つ1つの事実を把握していくにしたがって、
物語にグイグイ引き込まれていきます。
(とくにサミールには奥さんがいて、
その奥さんが自殺未遂で植物状態という
事実が明らかになったところから)
アーマドと観客は様々な事情を知らないという点では、
1番感情移入しやすいと思います。
再婚する2人が自分達の関係を棚に上げて、
「それは違う!」とか言っているのを聞くと、
「正気か?!」と言いたくなる場面もしばしば。
何よりも辛かったのが、子どもの立場。
大人たちの勝手な都合で振り回される姿は見てて辛い。
それが一事が万事その調子といいますか。
(子どもが寝る場所を決めるところからも分かる。)
不倫自体が良い/悪いの議論は
100歩譲ったところで、子どもを蔑ろにするのは
ダメだよなーと強く思いました。
また、長女のとった行動が痛々しくて、
やっちゃいけないことだし、
それが産んだ結果があまりに惨いんだけど、
簡単には怒れないというか。
物語全体に漂うアンビバレントな雰囲気は
常に観客にかんがえさせるような作りとなっていて、
是枝監督の映画を見ている感覚に近いと思いました。
サミールが顕著なんだけど、
他者に対する想像力の欠如というか。
自分の考えや見方がすべてだという閉じた思考回路は
良くないよなーと身につまされました…
ラストにかけては、過去に起こったことは
もういいから「今」どうすべきなのか?
ということにシフトしていく。
それは一見前向きで建設的なんだけど、
やっぱり過去があって今がある訳で、
そこを蓋して先には進めない。
それがラストシーンで示されていると思います。
ワンショットで一旦あきらめかけるところ、
印象的なラストショット含めて良かったです。
結構重い話ではありますが、僕は大好きでした。

2014年5月2日金曜日

とらわれて夏



ジュノ、マイレージ・マイライフ、ヤングアダルトなど、
好きな作品が多いジェイソン・ライトマン監督最新作
ということで公開初日に見てきました。
マジでWhat's happening to Jason Reiteman?!
っていうくらい、過去作と色合いが異なりました。
これまでは全体的にコメディタッチな中で、
ときにシリアスさが垣間見えるような作りだったのに、
本作は重厚な文芸作品になっていました。
実話ベースの原作ありきってことなのかもしれません。
面白かったけど、期待してものと違うかったので、
多少のガッカリ感は否めないよね…
時代は1987年、アメリカの田舎町に住む家族と
1人の脱獄犯が主な登場人物。
この家族は母1人子1人の母子家庭で、
彼らがスーパーで買物をしていたところ、
脱獄してきた受刑者に絡まれて、
犯人を一日だけ自分たちの家に匿うことに。
はじめは脱獄犯ということで、
2人とも怯えていたんだけど、
危害を加えてくることはなく、むしろ優しい。
女手1人では難しいであろう家や車の修理、
あげく料理まで作ってくれる。
それらを1人でこなすのではなく、
子どもに教えながら、やってくれる。
一方の母親の方もバツイチで、こんな田舎町に住んでたら、
一生一人やと思っていたところに、脱獄犯といえども自分のことを
大切にしてくれる人が現れたことで彼に心酔していく。
つまり、これまで失われていた夫、父の機能を
脱獄犯が果たしていきます。
物語の合間には脱獄犯の過去が挟まれて、
彼が極悪な犯罪者というわけではなく、
ある種事故のような形で殺人を犯してしまったことが
分かるような作りになっています。
物語全体が子供の回顧形式で語られるんですが、
中学1年直前ということで、
性への興味がビンビンで男の萌芽を迎えている。
それに脱獄犯との出会いが加わったことで、
徐々に一人前の男として成長していく過程が興味深い。
ボニー&クライドのくだりは最高でしたね。
後半になると母親の過去も明らかになってくる。
母役をケイト・ウィンスレットが演じてるんですが、
レボリューショナリー・ロードばりの
不幸女性演出で、やっぱハマるな〜と思いました。
その描写に一切の手加減がないのも、
彼女があの役をやってるからこそ。
脱獄犯と母親の2人共が子どもという存在に、
ある種振り回されてきた人生がゆえに、
脱獄犯と子どもの話をしたときの、
彼のすべてを包み込む優しさは素晴らしかったなぁ。
終盤の謎のトビー・マグワイアの無駄使いと、
そこはかとないHAPPYエンディングはフーンって感じでした。
メロドラマが好きな人にはオススメです。

そこのみにて光輝く



テアトル系の映画館で鬼プッシュされまくってて、
10回以上予告編見たので、さすがに見ない訳いかないなー
と勝手に思い、見てきましたよ。
佐藤泰志原作ということで、ある程度は覚悟してたんですが、
なかなかにheavyで見終わったとも引きずるような作品で、
久々にこの感覚きたな〜って感じでした。
(この前に見たのがアメコミ2連発っていうのもありますがw)
僕は実際に田舎に住んだこと無いけど、
あの村社会な雰囲気、抜け出せないガンジ絡めな様子は
見てて辛かった。逃れられないカルマ。
しかも、場所だけではなく「家族」という切っても切れない
最小単位の「社会」との関わり方まで
深く考えさせられる作品でした。
綾野剛演じる達夫が主人公で、仕事は岩の掘削業。
ただ、ある事故をきっかけに仕事を休業している。
その事故で同僚を1人なくしている。
直接、自分が原因となった訳ではないんだけど、
自暴自棄となり、パチンコ、酒に溺れる毎日。
そんな中で菅田将輝演じる拓児と出会い、
家を訪ねたところ、姉である池脇千鶴演じる千夏とも出会う。
ここの家族は父、母を加えての4人暮らし。
父は脳梗塞で寝たきり。母は介護で父に付きっきり。
拓児は仮釈放で、保護観察下にある。
この状況下で千夏が家族の稼ぎを
すべて担っていて、売春もしちゃってる。
しかも街の有力者とも不倫関係でズブズブ。
それぞれが人生に希望を見出せない中で、
お互いを愛することで人生に何とか向き合っていく姿に
胸を打たれたし、色々と考えさせられました。
何と言っても前述した3人の俳優を含め、
本作の役者陣の演技は凄まじいものがあると思います。
すぐそこにある実在感も去ることながら、
物語全体の閉塞感がビシバシ伝わってきました。
主演の2人が本当に素晴らしいんだけど、
なんと言っても菅田君が本作のMVPだと思っています。
人懐っこくて、遠慮がないんだけど、
それがいい方にも悪い方にも転がっていく姿は
思春期独特のニュアンスも含め、
あぁ…と劇場で声をもらすくらい痛々しい。

全体を通じて思ったことは
最初に書きましたが、家族とは?っていうことです。
結婚するということは当人同士だけではなく、
その背後でもあるそれぞれの家族を
受け入れることでもあるよなーと
改めて考えさせられました。
終盤のナレーションと現実のギャップは
まさにそれのことでしょう。
いや、たとえ救い難いものがあったとしても
「そこのみにて光輝く」んだから、
人は誰か共に生き、家族を持つんだなと。
神々しきラストショットは是非劇場で!

寝取られ男のラブバカンス



DVDレンタルが近所のTSUTAYAにないので、
iTunesで借りて新幹線で鑑賞。
先輩から教えてもらった本作ですが、
めちゃくちゃ面白かったです。
ラブコメディはDVDのタイトル(邦題)で
なかなか判断できないことが多いので、
少しずつ冒険しながら探すしかない。
だからレコメンあれば教えていただきたいものです。

主人公は失恋したばかりのピーターという男で、
傷心旅行でハワイに来たら、
元カノが男連れで来てて、しかも同じホテルに滞在。
ピーターの方はホテルの受付の子と
いい感じになりつつも…というラブコメ。
ピーターは一方的にフラれたので、
メソメソと元カノをストーキングしたり。
しかも、ハワイは傷心旅行で来るような街ではなく、
周りは幸せバイブスに溢れている。
(打ちにいくという観点だと100点)
この映画が面白いのは徐々に立場が変わっていくところ。
恋愛関係は、人によって観点が異なるし、
ちょっとしたことで関係が変わっていく。
この辺を何回も笑わさせてもらいながら楽しみました。
(まさかのTimpo始まり、Timpo終わり)
フラれたすべての男性へオススメです。