2015年9月28日月曜日

GONIN サーガ



あのGONINの続編が2015年に石井隆監督で?!
という情報を映画秘宝で以前に読んで以来、
そのときから楽しみにしていた作品。
元のGONIBという作品は先輩から
猛pushされて見たんですが、バイオレンス然り、
その鮮やかさと艶やかさに魅了されていたので、
とても楽しみにしていました!
けれど結果的にあの興奮を得ることができず、
何なら残念な感じでもありました。。
思い出したのはキッズリターンの続編
それよりはマシなのは間違いないけど、
これが過去のGONINシリーズと肩を並べるとは
到底言い難いと思います。
メインキャストは東出昌大、桐谷健太、柄本佑、土屋アンナの4人。
東出&桐谷は当時、モックンと根津仁八が殺したヤクザの息子。
柄本は同じくその現場で殺された警官の息子。
土屋は秘められた過去を持つヤクザに囲われた女。
彼は五誠会というヤクザにそれぞれ恨みを抱き、
彼らの資金源である闇金を強盗することになり…というお話。
映画の冒頭、過去のGONINの映像を使って、
これから始まる物語がどういった経緯なのかを
説明するところから始まります。
大きいスクリーンで当時のシーンを見れて、
それだけでテンションはアガる!
ただ、彼らがどういった背景なのかの説明は
とても分かりづらくて中盤でやっと全部分かるレベルで、
初見の人は相当キツい作りになっています。
(前作を直前に見てから行くのを超オススメ!)
父親を殺された彼らはそれぞれ静かな人生を送っているんだけど、
マッポの柄本が事件の真相をDIGし続けていたことで、
物語は急展開していき皆で強盗することになります。
と大まかに端折りましたが、まーここまで長いんですよね。
ショットがかなり独特なので、飽きることはないんですが、
もういいから早く〜という気持ちにはなりました。
しかも強盗に至る経緯は納得しづらいし、
演技が芝居がかった叫び系なのが辛さに拍車をかけてくる。
進撃の巨人といい、邦画のお家芸と化しているのか…
足し引きで抑揚がないと、どこが強調したいのかも
よく分からず映画全体がボンヤリしてくるし良いこと無し。
あと過去作の最大の象徴として、
根津仁八が実はまだ生きてました!という設定があって、
それ自体は悪いとは思わないんですが、
じゃあスナイパー役に竹中直人はダメだろ!と。
ただ、竹中直人のスナイパー役は好きで、
常に酸素ボンベをスーハー吸いながら、
ヨボヨボの足取りなんだけど怖いときは怖い!
(とくにダンパのメールのくだり、めっちゃ好きでした)
強盗したメンバーはそんな彼に追い込まれていく訳ですが、
話の進め方がスマートじゃないんだよなぁ。
それぞれの背景があるのが楽しかった過去作に比べ、
全部が中途半端で僕はどれにも乗り切れないままでした。
後半にかけてよく分からないシーンが増えてきて、
土屋アンナが歌いだしたときには頭を抱えました。。
床下シークエンスも設定自体はオモシロいけど、
それに至る経緯や筋道があまりに納得し辛くて。
このシークエンス含め、
終盤にかけての怒濤の銃撃アクションや
スプリンクラーを使った演出等、
撮影が全編に渡って過酷だったろうことは容易に想像がつきます。
しかし、プロット上の問題点が
すべての苦労を無駄にしてしまっていると思います。
またバイオレンスが凄いといっても、ストーリーを蔑ろにされると、
飾りにしか見えないから、これまたもったいない。
しかも、過去作よりもエグさという点でいうと、
後退してしまっているんだから悲しいですよね。
(これは時代の趨勢なのでどうしようもんないんですけど…)
GONINの続編という素材は極上だったのに、
なんだかなぁな仕上がりだったことに
ただただガッカリして劇場を後にしました。

2015年9月26日土曜日

保育園義務教育化



最近メディアでよく見る古市さんの著書。
歯に衣着せぬストレートな意見が目立ちますが、
著書の中では論理的でwitもあり僕はとても好きです。
本書は独身30歳の彼にとって縁遠いと思われる、
子供の保育、教育に関する内容になっています。
正直読むまで他人事かなーと思っていましたが、
多くの人間が当事者になりうる、
「子どもを育てる」ことは社会全体で考えないと
何も解決しないってことがよく分かりました。
「女性が輝く社会」を目指している最近ですが、
保育園不足、少子化など社会保障にまつわる問題は
山積みのまま抜本的な解決策は未だない状況です。
(高齢化社会の話も考えなきゃいけないですよね)
その辺りの現状分析と過去との比較や、
僕たちがボンヤリと認識していることに対して、
データを使いつつ的確に解説してくれています。
今回は得意の脚註はありませんでしたが…
とくになるほどなーと思ったのは、
母乳で 育てたほうが良い、
小さい時は母親といないと育ちが悪くなるといった
「神話」に対するカウンターの部分。
そこに根拠はないにも関わらず、
多くの人が盲目的に信じている現状や社会の同調圧力が
生きにくい雰囲気を醸成してしまっていると思いました。
笑ったのはタイトルにもなっている義務教育化にまつわる話。
義務教育にすれば預ける人の後ろめたさが軽減される
という真っ当な主張のあとにクールビズを例にあげています。

少し前まで日本のサラリーマンたちは
灼熱の夏でもスーツにネクタイをするのが当たり前だった。
それが「クールビズ」という「お上」からの号令によって、
夏の日本には高校生の制服を着たみたいなおじさんが
溢れることになった。

決められる政治というならば、
この辺りを真剣に取り組んでほしいものですが、
多くの議員にとっては票田である高齢者向けの社会保障を
先に拡充していきたいと考えてしまう点も
本著で触れられており、なんだかな〜と思います。
子どもをもつ人にはもちろんオススメですが、
むしろ子どもと縁遠い人に読んでもらって、
親の立場を客観的に把握するという意味でオススメです。

わたしに会うまでの1600キロ



ダラス・バイヤーズ・クラブ
ジャン=マルク・バレ監督最新作ということで見てきました。
原題はWildで自叙伝をベースにした映画となります。
邦題が丁寧に説明してくれている通り、
女性の自分探しな内容なんですが、
そこはジャン=マルク・バレってことで
一筋縄ではいかない感じで映画の後味が最高!
見てる間よりも見終わったあとに、
考えさせられること山の如しでした。
主人公はリース・ウェザースプーンが演じるシェリル。
彼女は結婚し旦那と幸せな生活を送っていたが、
母の死をきっかけにドラッグ(ヘロイン)、
男に溺れていき、人生をダメにしてしまう。
そこで裸一貫でスタートし更生するため、
PTCと呼ばれるトレッキングコースに挑み、
母が誇りに思っていたシェリルを取り戻そうという話。
崖の上で靴擦れを起こし、挙句靴をなくすという、
クライマックス感溢れるシーンから始まります。
トレッキングと聞くとハイキングを
イメージする方もいるかもしれませんが、
距離1600キロで基本砂漠という過酷さ。
見てて思ったのは四国のお遍路が
めっちゃハードになったら、こんな感じかなと。笑
装備を準備して歩き始めるところから描いていて
アウトドア素人全開なまま旅が始まるのがオモシロい!
(リュックに持っていかれるシェリルの姿は超cute!!)
そんな素人の彼女が旅を通じて
タフネスを獲得していく姿はカッコよくもあります。
ここまで読むと「女性なのに凄い!」と言いたくなるんですが、
そのありそうな意見に対するカウンターも
映画内に組み込んでいるのも興味深かったですね。
もろにフェミニスト!と言っちゃうシーンもあるし、
3人組との遭遇シーンは 画で分からせてくれる。
旅の合間に過去の彼女の回想が差し込まれ、
旅に至った経緯が断片的に分かっていく構造になっています。
この構造は非常に共感できて、
日々生活していて全然関係ないときに、
ふと嫌だったことや恥ずかしかったことを思い出し、
死にたくなる瞬間ありますよね?まさにあれ。
僕は「自分探し」とか「本当の自分」って
恥ずかしげもなく言っているのを聞くとむず痒くなります。
(探している人と探している対象が同じなんだから、
一生見つかるわけないというのはジェーン・スー氏の金言)
しかし、本作で突き詰めているのは
環境の変化や他人との関係変化に伴う
「相対的」な自分探しも去ることながら、
「絶対的」な自分探し、つまり己との対話に
フォーカスしているのが本当に好きな部分でした!
道中で様々な人に出会うけれど基本は1人だし、
旅後の自分がどうあるべきかを考え続ける姿は、
陳腐な言い方になってしまいますが、
人生そのものだな〜と思いました。
また彼女がたどり着いた先で、
「本当の自分」を見つけたかどうかは人によって、
意見が分かれるとは思いますが、
Changeしたのは間違いないかと思います。
自分探しの旅をする前に本作を見るのも良いかも!

2015年9月25日金曜日

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド



前篇を見たので当然後篇も見るでしょう!
ってことで見てきました。
前篇は色々言いたくなる部分も多かったですが、
巨人のバトルシーンで、
ある程度救われた気持ちになりました→リンク
少しは期待していたんですが、
結果としてはそこそこキツい内容で、
何も良くなることなく終わってしまいました…
前篇からの続きでエレンの巨人化問題と
壁の穴を埋める作業を目指すというお話。
前篇のおさらいVTRから始まるんですが、
これを見たときに話の中身の無さを、
改めて痛感しつつ後篇が始まっていきます。
公開裁判という形でエレンをブッ殺そうと
國村隼人中心に画策していくんですが、
かなり急速に話が展開していきます。
原作において巨人になる/ならないのくだりは、
相当タメがあって周到に準備されているのを
読んでしまっているので、
なんだかなぁと思ってしまいました。
(KREVAの起用はノイズな気がする)
エレンは知性のある謎の巨人に救出され、
目が覚めると真っ白な部屋にいる。
ここが死ぬほどダサいんですよね…
The End of the WorldがJuke Boxから流れつつ、
そこに現れるのが長谷川博己演じるシキシマ。
前篇でもダサいと言われていましたが、
僕はボケとして楽しんでいました。
しかし、今回のスカシはハリウッド風の
陰謀チックなシステムがぁ〜!みたいな感じで、
見てられなかったです。。
この後、エレンvsシキシマの巨人バトルが始まるんだけど、
フリが弱くてシキシマの口上に対する
明確な反論、対抗する意思が良く分からず、
いつもみたいに叫んでるだけ。
ただ前篇と同様バトルはやっぱりアガる!
飛び膝蹴りのくだりも見せ方はどうかと思うけど、
躍動感はスクリーンで見てこその良さがありました。
あと人が虫けらのように死んでいくのも好感大。
終盤は壁埋め大作戦が行われるんですが、
不発弾を使うのまでは納得したけど、
ラスト30分くらいの因果関係が
よく分からない展開で一気に冷めました。
また当然といえば当然なんですが、
わざとらしい舞台がかった演出は健在。
振り切っている石原さとみが
もはや一番正解に見えてくるレベルでした。
謎の恋愛っぽい雰囲気(アルミンね)とか、
三浦貴大の昭和か!っていう大仰なセリフ回しなど、
どうなってんだよマジで!っていう…
一番酷かったのは國村隼人で、
しかも映画の終盤でブッ込んでくるからキツい。
終盤のバトルあたりは見せたい絵が先行していて、
それに合わせてストーリーが構成されているのでは?
と思わざるを得ないほど取ってつけたような話。
前篇であれほど出てきた他の巨人が
まったく現れないのも味気なかったです。
さらに、そのバトル自体もこれまでに見たものより
つまらなくなってるから
映画の後味がとても悪くなってしまうんですよね〜
メタ的な楽しみ方もできないような、
残念な邦画が量産されている現状があるなら、
もっと色んな人が脚本や監督を担った方が、
みんなが幸せになれるんじゃないのか。
そんなことを思ったりした映画でした。

2015年9月18日金曜日

エウロペアナ


第1回翻訳大賞受賞作ということで、
ラジオで紹介されていたのを聞き読んでみました。
想像ラジオを読んだときに、
小説という超古典フォーマットのアップデートを感じたんですが、
読後はそのときに近い感覚を味わいました。
小説と史実の境界線を揺蕩うアンビバレントさ、
主語がなく淡々と語っていくだけかと思いきや、
たまに顔を覗かせる強烈なブラックジョーク。
どんな話かといえば、
2つの世界大戦と冷戦後の史実を
並べ連ねて淡々と語っていく。
しかも、時系列に並んでるわけではなく、
シャッフルして語られるので、
論点が見えずらく若干読みにくいところもあります。
この中に読者がえっ?そんなことあったけ?
ということがサクッと挟まれているので、
楽しく読み進めることができました。
また、文章の上にチャプターごとに、
一言で要約してるんですが、
それもwitに富んでてオモシロかったです。
笑かすなーと思っていると、
なるほど!と思わせる考察もあって良かったです。
海外文学は積読しがち〜©RGですが、
積んでるものから色々読んでみようと思います。

冬の兵士―イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実


キャプテンアメリカの2作目の、
サブタイトルにもなった冬の兵士(Winter Soldier)
これはイラク帰還兵の公聴会の名前で、
本書はその公聴会でのスピーチをまとめたものです。
一部匿名のものもありますが、
9割以上が実名で所属した部隊まで明らかにし、
イラク戦争でどういった経験をしたのか語られています。
同年代から年下までと、
若い世代の話が多いことが特徴的で、
そのどれもがあまりに凄惨過ぎて辛くなるし、
「マジかよ!」と思わざるを得ないことも
ナマナマしく語られています。
それは現地での話も当然のことながら、
戦争から帰還してからもPTSDや、
十分な医療が提供されないという、
何重にも渡って地獄が続いていく現実。
この辺りはアメリカン・スナイパーでも描かれていたこと。
特に1章目の交戦規則のくだりは、
昨今の安保法案においても共通する点があります。
各隊員の武力行使は上官の管理下のもとに行われる
という政府見解がありますが、果たしてどうなるのでしょう。
集団的自衛権だけが問題なのではなく、
関連法案に含まれる様々な要件が「ヤバめ」ってことを、
こちらのpodcastで知りましたので、
興味ある方はどうぞ→リンク
脱線しましたが近々の戦争体験として、
興味深い1冊でございました。

2015年9月17日木曜日

ひめゆりの塔をめぐる人々の手記


8月初めに沖縄へ旅行に行ってきました。

ノープランの旅で、天気も悪かったため、
僕が行きたかったひめゆりの塔へ行くことに。
なぜ行きたかったかというと、本当に恥ずかしながら、
ひめゆりの塔が何のために存在しているのか、
歴史的背景について、僕はほとんど知りませんでした。
今年は戦後70年という節目であり、
それに伴って戦争の記憶をどう伝えていくか、
また、その記憶をどう活用するか、
という話を様々なメディアで見聞きしていたこともあり、
資料館を含め足を運んでみました。
想像を遥かに超えてくる内容で、
どんな無念の気持ちで死んでいったのだろうかと
胸が痛くなったし、
自害した人たちの死の無駄さというか…
こういったことが手記や遺品を通じて、
つぶさに知ることができました。
ただ時間の関係上、手記は全然読めなかったので、
帰りの那覇空港で買って帰りに読んだ本です。
映像ではなく文章なので、
戦争のバイオレンス描写に一切容赦がありません。
人の命は簡単に失われていくし、
怪我で済んだとしてもロクな治療ができず、
ウジが湧いたり、ご飯もまともに食べれない。
まさに生き地獄というべき事態が、
アメリカが沖縄に上陸してから、
制圧されるまで時系列に沿って語られていくため、
臨場感もあって飲み込まれていきました。
記憶はどうしたって風化していくものなので、
それについて何を考えるか、
どうアウトプットしていくかが
これから大事になってくるんだろうなと思います。
歴史を踏まえた上で、旅する沖縄も楽しかったので、
これから行かれる方で興味ある人は是非読んでみてください。

2015年9月16日水曜日

ぼくらの民主主義なんだぜ


ここ数日の報道ですっかり憔悴しているんですが、
本の紹介で気持ちを落ち着かせたいと思い、
筆を取った次第です。
本書は作家の高橋源一郎氏が朝日新聞で書いていた、
論壇時評をまとめた新書。
期間としては2011年4月〜2015年3月の時評で、
この期間に起こった日本の様々な問題について、
それらにまつわる言論を取り上げながら、
高橋氏が独自の視点で論じています。
ここ数年の出来事をまとめて読むと、
「こんなこともあんなこともあったなぁ」と
絶望に陥ったりしたんですが、
そこで諦める訳ではなく、
見える論点や考えるべきことを提示しています。
論壇と聞くと小難しいイメージがあるかもしれませんが、
Rhymester、アナ雪、コムデギャルソンなど、
分かりやすい入口を用意してくれているので、
政治の内容ですが、かなり読みやすくなっています。
人生でこんなに「民主主義」って何なんだ?
と考える瞬間はないんじゃないかと思う今日この頃ですが、
なるほどな〜と響くパンチラインがたくさんありました。
高橋ヨシキ氏も言っていることですが、
僕も気持ちが悪いと思っていることは
Political correctnessを内在化して権力におもねり、
それに抗うものを嘲笑、罵倒する文化です。
議論する余地もなく、頭ごなしに否定してしまう、
その感覚を大人になっても未だに持っている人の多さ。
本書の言葉を借りるならこんな風。

自分と異なった考えを持つ者は「知性」を欠いた愚か者に過ぎず、
それ故、いくら攻撃してもかまわないという空気が広がる中で、
日々「怪物」は成長し続けている。

「正論」でいえば安保法案も、選挙で私たちが選んだ自民党が
過半数を占めているんだから、
デモをしたところで結果は変わらないと言えるでしょう。
けれど、そんな当たり前の「正論」を
ドヤ顔で言ってること自体が恥ずかしいと思うんですよね。
わずかな可能性にかける意味やその過程について、
熟考してこそ大人じゃないのかなーと。
水俣病を巡って国と戦ってきた人たちの意義について、
高橋氏はこのように書いています。

彼らは、ひとりひとり、それぞれの場所で、
目の前で起こっていることを「記録」しようとしたんだ。
なぜ?いつか、未来の誰かが、それを読むことが希望だったからだ。

今回の安保法案が通ったからといって、
すぐさま戦争が始まったりする可能性は低いと思います。
(というか可決しても起こってほしくないという願望込み)
ただ、こんなに舐めた進め方で可決されて
冷笑できるほど穏やかな人間ではないので、
「今に見とけよ」like SHINGO★西成
という気持ちで生きています。

政治と関係ない人はこの国に存在しないので、
関係ないと思っている人が改めて考えるキッカケとして、
とてもオススメの本ですので、このタイミングで是非。

2015年9月15日火曜日

キングスマン



キック・アスのマシュー・ボーン監督が、
スパイコミックを映画化ということで見てきました。
過去のスパイ作品(主に007シリーズ)への
リスペクトが込められたメタ作品でありながら、
スパイエンタメとして抜群にオモシロいという、
良きバランスの作品でした。
主人公はエグジーという青年で
彼の父はスパイだったけど、
仲間の命を救ったために戦死してしまっている。
幼くして父を亡くしたエグジーが
ならず者となってしまったところで、
父の同僚だったコリン・ファース演じるハリーに出会い、
スパイ修行を始めるものの…というお話。
007お約束のアヴァンタイトルがあるかと思いきや、
そういったことは特になく、
スノードームにフォーカスしていき
タイトルどーんで映画が始まります。
エグジーは働きもせずフラフラしていて、
母はゴロツキの彼氏と共にボロボロの生活。
そんな中で非行により警察に捕まったあと、
ハリーと出会い運命の歯車が動き出す。
一番始めのバトルがハリーがパブで
不良どもをボコボコにするシーンなんだけど、
ここで心をグッと掴まれました!
イコライザーを彷彿とさせる、
落ち着き払ってからのフルボッコ!
本作のバトルシーンはStop and Go(?)のような、
各瞬間の中に緩急があるような見せ方で
時間が伸縮するようなイメージが好きでした。
そして本作の敵ボスを演じるのは、
サミュエル・L・ジャクソンでIT長者の役。
彼は世界中にタダでSIMカードを配り、
それを使った人口減少大作戦を取り進めようとします。
言わずもがな過度な情報化社会への皮肉でもありつつ、
選民思想全開な敵設定のヤダ味。
そこを打破していくのが労働者階級のエグジー。
つまり、持たざるものが訓練により力を手に入れ、
悪を倒すという好きなタイプの構造でしたね〜
訓練の様子がしっかり入っていて、
水浸しの刑やダイビングの刑、犬育て&殺しの刑など、
どのシーンも見所満載で楽しかったです。
僕が好きなキャラクターはハリーで、
スーツびしっと決めた状態で、
めっちゃ強いのがとにかくかっこ良い!
何よりも教会皆殺しシーンは見たら忘れられないレベルだし、
その皆殺しの対象が南部のキリスト教信者っていう、
笑えっていいのかという強烈なブラックネス。
また、小道具の数々は往年の007を思い出せてくれるし、
「これが映画だったら…」というメタ展開もナイス!
個人的には敵ボスの助手の女の子の
義足カッターがアホっぽくて一番好きだったし、
全体にゴア描写がかなり激しいのも好印象でした。
仇討ち形式でエグジーが敵と戦うんですが、
チップを爆発させるシーンで、
ブルジョワジーの頭がキレイに破裂していくのは
今年一番のカ・イ・カ・ン!
ツッコミ入れようと思えば色々ありそうですが、
それは野暮ってもんだ!と思わされるくらい、
オモシロさが勝っていると思います。
ラストは美女とのランデブーという
007スタイルのエンディングで大団円。
笑えてハラハラできるザ・映画な作品なので
是非たくさんのお客さんと劇場で見て欲しい!

2015年9月13日日曜日

カリフォルニア・ダウン



先日東京で地震があったのですが、
全く気付かないまま寝ていました。
そんな日にふさわしい1本だ!と思い見てきました。
主演がドウェイン・ジョンソンの
地震・津波系ディザスター映画という情報は
知ってたんですが、イイ意味でも悪い意味でも
それを裏切らない作品でございました。
ドウェイン・ジョンソン演じるレイは、
LAの消防隊に務めており、奥さんと離婚協議中。
1人娘がいて、その彼女の大学への引っ越しの日に
マグニチュード9レベルの大地震がサンフランシスコを襲い、
レイが家族を救出するというお話。
最初、ある女の子が危なっかしい調子で
ドライブしてるシーンから始まり、
いきなり崖崩れが起こって、
「え、しょっぱなから地震?!」
と思いきや、ここはレイの救出スキルの高さを示す
お膳立てシーンでした。
しかし、お膳立てとはいえ、
このシーンも相当ハラハラする仕上がりになっていて、
ツカミばっちりで物語に引き込まれる。
そこからレイ周りの家族と
カルフォルニア大学の地震学の教授の
主に2つの視点で物語は進んでいきます。
(教授役はポール・ジアマッティ!)
地震が起こる前に教授の本作の地震に関する
諸々が紹介されて、地震が実際に起こってしまう。
ファーストインパクトがダムの決壊なんですが、
ここの迫力は凄まじかった!
女の子の救出は胸が痛くなるばかり。。
ここから更にサンフランシスコを中心とした、
LAへのセカンドインパクト、サードインパクトが発生。
もともとアメリカでは地震が少なく、
備えが少ないという前提があるのか、
とにかくビルというビルがガンガン倒壊していきます。
3.11から4年経ちましたが、やっぱりあのときに見た、
ニュース等での映像がフラッシュバックしました。
とくに津波のシーンはモロにそれなので
キツい部分があるかもしれません、、
実際、横のカップルの女の子は泣いてました。
ディザスターものはどこにフォーカスするかが見所で、
近年見た地震ものだとヒア・アフターやインポッシブルがあります。
これらは地震・津波が発生したあとの
人間関係にフォーカスしていますが、
一方の本作はあくまで地震・津波自体の恐ろしさにフォーカスした
パニック映画の要素が強かったです。
VFX技術の進化に伴って、とにかくリアリティが凄まじく、
なおかつ息つく暇もなく次から次へと災厄が襲ってくる。
ゆえに見ててずーっとハラハラしてました。
父・娘物語でもあるんですが、
この娘が相当なタフネスを持っていることから、
96時間シリーズを想起したりしましたね。
しかも娘の決断の一つ一つが、
彼女および同行した兄弟の命を救っていく。
主人公のドウェイン・ジョンソン兄さんは
案の定というべきか圧倒的無敵感を発揮。
津波を回避するシーンとかマジか!となりました。笑
ただ彼には娘を水難事故で亡くしているという、
バックグラウンドがあり、それを十字架として背負い、
誰も死なせない!という決意が随所で見れます。
自責の念を奥さんに吐露したあと、
奥さんが言うセリフがオモシロくて、
「あなたが助けられなかったた、誰も助けられないわ」
そりゃそうだわ!無理に決まってる!と納得した次第。
ラストの締め方もThe USAな展開で悪くなかったです。
気軽に見れそうで意外にショックは大きいかもなので、
これから見る人は心して見てください!

2015年9月12日土曜日

映画みんなエスパーだよ!



TVドラマシリーズを見ていましたし、
監督は引き続き園子温ということで見てきました。
今年の園監督のリリース量はハンパなく本作で4作目。
しかも、そのう3作はいわゆる商業映画で、
これまでの園監督作品とは毛色の異なるものばかりです。
冷たい熱帯魚前後の作品が好きな人にとっては、
ハードさも足りないしヤワイ印象をも持っているかもしれません。
けれど、やっぱり園監督らしさはどの作品にもあって、
新宿スワンのときにも書きましたが、
同じ題材で他の監督に任せたら、
もっと平ぺったい薄い作品になるかもしれないところを
何か引っ掛かり、つまりillnessをぶつけてくる。
そこを楽しむのが今の園監督作品の醍醐味な気がしてます。
(事実、リアル鬼ごっこは見た友人と話してる中で、
超盛り上がったりしましたしね…)
本作もその系譜にある1本で、
瞬間的なくだらなさは日本のテッドと言っても過言ではなく、
お話の整合性を飛び越えた先にある、
ホドロフスキー作品のようだと感じました。(もっとPopだけど)
メインの登場キャラクターはTVドラマシリーズとほぼ同じで、
ヒロインが夏帆から池田イライザになっています。
またお話としてはドラマから独立していて、
改めてエスパーになる経緯や敵キャラが設定されていました。
映画の始めエスパーになるまでのところが
染谷君のオナニーシーンを交えて描かれていくんですが、
このシーンが結構好きでした。
運命の人に出会う妊婦大集合のくだりや、
物語を貫く運命の人の手、足、手の重なり、キスの
一連のPoeticな流れがしっかりしてて良かった!
とくに園監督自作(?)の詩に心を打たれ、
「あれ?もしかして本作は結構骨組みしっかりしてる感じ?」
と期待しましたが、イイ意味でも悪い意味でも
180度裏切った形で話が進んでいきます。
繰り広げられるのは、ひたすらのエロ。
それも中学生、高校生が喜びそうな真っ正面のエロ。
超能力とエロの親和性は言わずもがなですが、
そこはもう関係なくね?ってとこまでエロを展開していきます。
ホントにボンクラ魂が炸裂していて、
パンチラ、胸の谷間、オナニーetc..のショットのつるべ打ち。
園監督は女性をエロく見せるヤバスギルスキルの持ち主なので、
露骨にモロ出しするよりもエロを感じさせてくれる。
宇宙からの光線を浴びたときにエクスタシーを
感じていたものがエスパーになれるという設定なため、
オナニーにまつわる話がたくさん出てくるのも見所。
TENGA描写とか攻めるな〜って感じだったし、
とくに夏帆からヒロインが変わったことで、
女の子の性にまつわる描写も攻めてました。
一番好きだったのは、岡村ちゃんの曲と
高橋優の曲を使ったシーン。
後者はTVドラマのオープニングでも使われていた曲ですが、
このシーンは園監督の自転車吐息でも似たようなシーンがあり、
セルフオマージュになっていました。
(TVドラマでも同じシーンありましたし)
細かいネタを挙げていくとキリがないんですが、
サヘル・ローズ演じるエスパーが
心を純化する!といって超能力を発揮すると、
女の子がダッチワイフになるくだりは
何回見ても笑ってしまいました。
あと高橋メアリージュンのサイボーグ感も見所で、
終盤の舞台上の疑似子宮とか
一体オレは何を見ているんだ…という気持ちになりました。
一つ一つの小ネタはオモシロいんだけど、
お話構成としては正直厳しかったです…
皆のエスパーの能力生かした展開も、
あまりなかったしオチにいたるまでの流れも
分かりにくいし、納得しにくいものでした。
中高生が見てゲラゲラするには100点の映画だと思います。

2015年9月9日水曜日

ロマンス



タナダユキ監督最新作ということで見てきました。
過去3作の四十九日のレシピふがいない僕は空を見た
百万円と苦虫女が好きで、
今回は久々のオリジナル脚本ということに加え、
主演が元AKB48の大島優子で、
どんなケミストリーが起こるのか?!
と非常に楽しみにしておりました。
同じく元AKB48の前田敦子とは異なる魅力を放つ、
大島優子という女優を楽しめる作品になっていたと思います。
大島優子演じる鉢子は小田急のロマンスカーの添乗員で、
コーヒーなどの車内販売をこなすOL。
ヒモのような彼氏が居る中で先行き不安定の中、
絶縁状態の母親から手紙があり、
母が鉢子と昔に旅行した箱根を訪れることが書かれていた。
ひょんなキッカケで箱根で出会った大倉孝之演じる桜庭と
鉢子の母親を探すため箱根を徘徊するものの…という話。
華麗に販売をこなす鉢子のショットから映画は始まり、
「電車はいい、なぜなら往く先、帰る先が決まっているから」
とモノローグで語る。
そこから彼女の安定とは言いがたいけど、
不安定とも言いがたい微妙な様子が描かれていく。
鉢子が添乗員としては素晴らしい仕事する一方で、
仕事の相棒の久保さんはてんでダメ。
この久保さんのコメディリリーフっぷりが最高で、
彼女は真剣なんだけど笑けてくる。
あとキャメオ出演で杉作J太郎が出てきて、
イイ感じのしょーもないオジさんを好演してました。
箱根の駅で桜庭と万引きを巡って出会い、
そこから母親を箱根の街から探す旅が始まる。
この旅の始まりの部分なんですが、
ちょっと動機として弱過ぎやしませんか?
と始めは思ってたんですが、
物語が進むにつれて納得できる作りになっていました。
以前に未婚のプロ、ジェーン・スー氏のラジオで、
「しんどいことや辛いことを言わないとキツい」
っていう話があったんですが、それを思い出しました。
誰かに聞いて欲しい!という気持ちはあっても、
身近な友人や家族には話しにくいこともあると思います。
けれど、後腐れがない赤の他人に聞いてもらうと、
心が休まる、そんな瞬間があるのでは?というねー
(これがラジオでのメール相談とかの良さだと思うんですが)
鉢子も桜庭も言いにくい人生の苦難をお互い抱えているからこそ、
反発がありながらも2人で箱根を旅行するんだなぁと思いました。
さらに赤の他人同士が腹を割って話をしてしまう、
非日常的な箱根という空間の魅力も味わえる。
その非日常の行き着く先で、2人の思いが炸裂するのが、
ヨーロピアンなラブホっていう、
日本の地方都市のどこにでもありそうな場所なのが
タナダユキ監督らしいな〜と思いました。
(ラブホでの大島優子の顔芸が最高最高!)
シリアスだけど笑っちゃうという2面性を
主演2人が見事に演じて切っているからこそ、
シンプルな話だけど楽しめるようになっていましたね。
役柄上と同様、大倉孝之が大島優子の良さを
引き出しているように思います。ツンデレいい!
あと個人的には後悔の話がグッときて、
「する後悔」と「しない後悔」の両方の側面が
描かれているのがいいなーと思いました。
(桜庭を通じて描かれる映画を作ることの話もオモシロかったです)
非日常の箱根から帰還した先に待つ新宿の街並み。
それぞれが別の人生を再び歩み始める、
さっぱり感も好みでしたし、
2人のスタンスが微妙に異なるのも興味深かったです。
優子好きの人には大推薦の作品!