2015年9月16日水曜日

ぼくらの民主主義なんだぜ


ここ数日の報道ですっかり憔悴しているんですが、
本の紹介で気持ちを落ち着かせたいと思い、
筆を取った次第です。
本書は作家の高橋源一郎氏が朝日新聞で書いていた、
論壇時評をまとめた新書。
期間としては2011年4月〜2015年3月の時評で、
この期間に起こった日本の様々な問題について、
それらにまつわる言論を取り上げながら、
高橋氏が独自の視点で論じています。
ここ数年の出来事をまとめて読むと、
「こんなこともあんなこともあったなぁ」と
絶望に陥ったりしたんですが、
そこで諦める訳ではなく、
見える論点や考えるべきことを提示しています。
論壇と聞くと小難しいイメージがあるかもしれませんが、
Rhymester、アナ雪、コムデギャルソンなど、
分かりやすい入口を用意してくれているので、
政治の内容ですが、かなり読みやすくなっています。
人生でこんなに「民主主義」って何なんだ?
と考える瞬間はないんじゃないかと思う今日この頃ですが、
なるほどな〜と響くパンチラインがたくさんありました。
高橋ヨシキ氏も言っていることですが、
僕も気持ちが悪いと思っていることは
Political correctnessを内在化して権力におもねり、
それに抗うものを嘲笑、罵倒する文化です。
議論する余地もなく、頭ごなしに否定してしまう、
その感覚を大人になっても未だに持っている人の多さ。
本書の言葉を借りるならこんな風。

自分と異なった考えを持つ者は「知性」を欠いた愚か者に過ぎず、
それ故、いくら攻撃してもかまわないという空気が広がる中で、
日々「怪物」は成長し続けている。

「正論」でいえば安保法案も、選挙で私たちが選んだ自民党が
過半数を占めているんだから、
デモをしたところで結果は変わらないと言えるでしょう。
けれど、そんな当たり前の「正論」を
ドヤ顔で言ってること自体が恥ずかしいと思うんですよね。
わずかな可能性にかける意味やその過程について、
熟考してこそ大人じゃないのかなーと。
水俣病を巡って国と戦ってきた人たちの意義について、
高橋氏はこのように書いています。

彼らは、ひとりひとり、それぞれの場所で、
目の前で起こっていることを「記録」しようとしたんだ。
なぜ?いつか、未来の誰かが、それを読むことが希望だったからだ。

今回の安保法案が通ったからといって、
すぐさま戦争が始まったりする可能性は低いと思います。
(というか可決しても起こってほしくないという願望込み)
ただ、こんなに舐めた進め方で可決されて
冷笑できるほど穏やかな人間ではないので、
「今に見とけよ」like SHINGO★西成
という気持ちで生きています。

政治と関係ない人はこの国に存在しないので、
関係ないと思っている人が改めて考えるキッカケとして、
とてもオススメの本ですので、このタイミングで是非。

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