2015年7月31日金曜日

フレンチアルプスで起きたこと



各方面で話題になっていたので見てきました。
(平日の夜の回で満席でした…!)
非日常で起こる出来事の中で取った行動から
大きな事態が巻き起こるという好きなタイプの映画でした。
死が目前に迫ったときに何を大事にするかとか、
どういった行動を取るかというのは
映画見る醍醐味の1つだと思っているんですが、
本作はまさにそこを捉えていると思います。
主人公は夫、妻、娘、息子の4人家族。
スキーリゾートで楽しくバカンスを過ごしている。
眺望の良いレストレランで食事をしていると、
遠くで雪崩が起こり、それがレストランへ迫ってくる。
妻は子どもたちを守るものの、
夫は家族を置いて逃げてしまう。
結局雪崩はレストランの直前で止まり、
家族全員無事だったんですが、
夫、父としての威厳を失ってしまい…というお話。
家族が仲睦まじく4人で写真撮影し、
スキーを楽しむところから始まり、前述の雪崩シーンへ。
基本ワンショットの長回しが多くて、
人物の配置やフォーカスの合わせ方で、
関係性を見せていく手腕は確か。
あとは音楽を含めた音の使い方が秀逸。
ヴィヴァルディの四季の夏という曲が印象的に使われていて、
物語全体の不穏な空気の演出に効果抜群。
(ベタ過ぎて逆に滑稽さも醸し出したりね)
さらに山を爆破する音やリフトの音も
不協和音を奏でまくりで物語の空気が
じんわりと醸成されていく。
夫は雪崩の件を「認識の違い」という、
どこかの国の総理が使いそうな言い訳で
何とか無かったことにしようとする。
妻もせっかくのバカンスを台無しにしたくない気持ちが強く、
大人の対応 a.k.a なし崩しで終わらせようとします。
しかし、妻の怒りは収まらず、スキー場で知り合ったカップルと
部屋飲みしているときに怒りが爆発。
カップルを承認とした裁判が始まる。
カップルの男の方は夫をフォローし、
それに乗っかる夫を見た妻はブチ切れて、
iPhoneで撮影した雪崩の動画を繰り出し、
カップルの前で夫を公開処刑!
このあと夫が1人でソファー座って泣きはらしてるの
悲しいシーンなんだけど、笑ってしまった。
このシーンに限らず、本作では喜劇と悲劇の
ギリギリの境目の演出が多くて、そこも好きでしたね。
(カップルの寝る前のしつこいやり取り)
傷心した夫はカップルの男と2人で
楽しくスキーして楽しんで帰るんだけど、
部屋の鍵がなくて家族に連絡も取れない。
ひたすら部屋の前で待ってたら、
家族がすでに部屋にいたっていう地獄の展開。
耐え切れなくなった夫が取る行動は、
男のもっとも情けない部分なんだけど、どこか愛らしい。
それゆえに敵だったはずの子どもたちも
夫側につき、妻が孤立するという逆転展開も笑えたなぁ。
子ども使いはどのシーンも素晴らしくて、
劇中での大人の欺瞞をクリアにする存在だったり、
大人の不和を嫌がるゆえの行動は切ない。
(ドローン攻撃が最たる例)
そしてラストシーンもまた印象的で、
邪推しちゃえば夫と同様に
子どもを置いて我先に…という見方もできるかな?
横並びのショットがかっこよかったです。
人間のなんとも言えない部分を抽出してるので、
そういうのが好きな人にはオススメ!

リアル鬼ごっこ


園子温監督がリアル鬼ごっこをReboot!!
という情報のみを頼りに見てきました。
元の小説や映画のリアル鬼ごっこは
全国の佐藤が狙われるという設定に対して、
園さんオリジナル脚本の本作はターゲットがJK
園子温節は最近リリースされた作品の中で最も濃厚で、
超自由に作っているんですが、その自由が行きすぎた結果、
お話としての出来は散らかりすぎでちょっと…
ビジュアル的に好きな部分は多いので、
映画館で見て良かったとは思います。
主人公はトリンドル玲奈演じるJKのミツ子
彼女が修学旅行でバス移動中に周りの女の子が皆殺しとなり、
そこから得体のしれないものから逃げ続けるものの…という話。
冒頭キャッキャしてる様子から、
すでに何かが起こる予感はするんだけど、
それを遥かに超えた事態が発生し、
フォ~!と叫びたくなる出だし。
全編に渡ってバイオレンス描写炸裂しまくりで
安定の園印と言えると思います。
(あとはパンチラ&そのパンツが全部白とか)
ただ、本作で園監督らしいなと思ったのは、
ひたすらJKが走っているということ。
物語の半分以上は走っている。
鬼ごっこという設定は最後まで明らかにされない、
それゆえの演出だとは思うんですが、
得体のしれない恐怖からの脱出表現として
「走り続ける」というのは面白い。
女の子を走らせる描写は園監督が得意なところ。
本作ではドローン撮影が多用されていて、
俯瞰ショットや森の中での躍動感あるショット等、
効果的だったと思います。
また前半にあるJK4人による森の池でのシーンも印象的。
物語のテーマやメッセージを登場人物に言わせる
演出は基本的にダサいと思います。
しかし、そのメッセージ自体が抽象的で、
「シュールに負けるな!」というもの。
すぐに分かるようなものではないがゆえに、
くどくないし、映画見終わっあとに意味がよく分かる。
つまり、かっこつけてないでバカなことをやろうぜ!
っていう大ボケのスタンス。
トリンドル玲奈が主人公なんだけど、物語が進むにつれて、
中身は同じだけど見た目が変わるという展開があり、
そこで出てくるのが篠田麻里子と真野恵里奈。
中身は同じ人間という設定に無理が出てしまうくらいに
素人目に見ても演技レベルに差が…
とくに麻里子様はキツくてアクションで映えるのは分かるけど、
残る2人と比べてしまうと厳しかったです。。
逆にトリンドルは本当に素晴らしかった!
ハーフの見た目も伴ってアメリカのB級映画みたいに、
かわいい女の子が理不尽な目に合うっていうのは好きだし、
なにより怖がり方と走り方が良かったな~
本作には徹底して女性しか出てこないんですが、
ラストにマチズモの象徴として斎藤工が出てくるのは笑いました。
けれど物語の収束のさせ方がスムーズじゃないんだよなぁ。
風呂敷を広げまくった挙句グチャグチャに畳まれると、
今まで見たものはなんだったんだ!というガッカリ感が否めない。
現在自主映画を製作中らしいので、そちらに期待!

2015年7月27日月曜日

インサイド・ヘッド


ピクサー20周年記念ということで
見ないわけにはいかない本作。
最近、積極的にディズニー作品を見るようにしてますが、
そのクオリティの高さに毎度驚き楽しんでいます。
そんな中での本作はまさに集大成!
と言っていい仕上がりで最高最高!
設定は恐ろしいほどミニマルなんだけど、
その発想の切れ味のよさと、
それ具現化した隅から隅まで計算され尽くした
世界観に畏怖の念を抱きました。
ルックとしては子ども向けなんだけど、
そこに託されたメッセージは大人の心を激しく揺さぶるもので、
思い出、ノスタルジーとか色々考えさせられました。
内容が素晴らしすぎるだけに
冒頭のドリカムのPVはいただけない。
曲は悪くないし、もちろんドリカムも悪くないけど、
PVがダサいということ、拒否することのできない上映前に
映像を持ってきたことは本当に良くなかったと思います。
まー映画が素晴らしかったから水に流すけどね!
主人公はライリーという女の子の中に存在する、
ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリという5つの感情。
ライリーに素晴らしい思い出を作ってもらおうと、
ヨロコビを中心に5人で働いている。
しかし、その中でカナシミだけが自らの役割を見つけられず、
ネガティブな存在として他の4人から疎まれてる。
ライリーが慣れ親しんだミネソタからサンフランシスコへ
引っ越したタイミングで、ヨロコビ、カナシミの2人が
司令塔から事故で弾かれてしまい…というお話。
前半に感情のシステム紹介がされるんですが、
その世界観の完成度に驚きました。
しかも、徐々に映画が進むにつれ、
システムの全体像が分かるんですが、
本当にこんなことよく思いついたなーと脱帽。
思い出がボールになっていて、大切な思い出は光り輝く。
それらをベースにライリーの世界観が構築されるっていうねー
ヨロコビは超ポジティブでライリーの幸せを何よりも願っている。
ゆえにライリーを悲しい気持ちにさせるものは
極力排除するするように物語序盤では行動します。
僕はネガティブなのでカナシミに感情移入して見てたので、
ヨロコビの一方的な価値観の押し付けが居心地悪かったんです。
けれど物語が進むにつれて、カナシミという感情が果たす役割と、
安易な一元的な感情で片付かないことが示されていきます。
それはライリーが大人になる過程とも一致している。
この部分が本作の肝であり、今この時代に響くものだと思います。
さらに物語で重要な役割を果たすのが、
ビンボンというライリーが子どもの頃に
思いついた空想のキャラクター
大人になったライリーが最近思い出さなくなってるから、
彼女の脳内の中で次の出番を待っている。
彼が体現する思い出の切なさはグッとくるし、
利他的行動は号泣メーンに決まってる!
ライリーだけじゃなくて、両親の感情も擬似化されいて、
パーソナリティーの反映として、
それぞれ司令塔が違うのもオモシロい。
これを発展させたエンドロールも秀逸すぎる構成でした。
近くの映画館で字幕がなかったので吹き替えで見ましたが、
それも全然苦にならなかったです。
とくに大竹しのぶのカナシミの声は
ナヨナヨ感全開で最高だったなー
とにかく現時点のピクサー最高到達点とも思える本作は
絶対劇場で見た方がいいですYO!!

2015年7月26日日曜日

ルック・オブ・サイレンス


昨年強烈なインパクトを残した
アクト・オブ・キリングの続編と言うべき作品。
アクト~はお上の指導を逆手にとり、
国の英雄として扱われている虐殺者たちに
当時どのように殺しをしていたか演じさせて、
その残虐性をあぶり出す作品でした。
一方の本作は正攻法で被害者を主体として、
加害者にインタビューする姿を押さえたドキュメンタリーとなります。
人間の底深い闇というか、やった側/やられた側の構図が
くっきりと浮かび、そこにはおそらく一生埋まらないだろう溝がある。
そして、人を動かすのが感情ではなく、
システムだったときの怖さがよく分かる映画でした。

主人公はアディという眼鏡職人、
お客さんを訪問、視力を想定し、眼鏡を作るという仕事をしている。
彼の兄は1965年の大虐殺の歳に殺されています。
監督のジョシュアが兄を殺した加害者のVTRを彼に見せて、
その加害者を実際に訪問し、インタビューしていく。
アディの母、父は健在なんですが、
父は目、耳が不自由で母が介護している状態。
基本的に張り詰めた空気に満ちた映画なんだけど、
それを緩和するのが母、父の日常生活と、
アディの家族、主に子どもとの生活となります。
ボケた父が歌う謎の歌謡曲が印象的だったし、
個人的にはベビーパウダーを乱暴にふりかけるくだりは笑ってしまった。
あとアディの子どもの天使っぷりは凄まじい。
この緩和要素があるからこそ、
本筋の緊張感が際立っていると思います。
メインとなるのは加害者vs被害者の構図。
いろいろな立場の人間が出てくるんですが、
共通しているのは無かったことにしようとする点。
被害者が不在の状況で当時のことを聞かれると、
殺しのことを自慢して己の正当性を精神的に担保するのに対して、
いざ被害者を目の前にすると自慢はせずに、
「もうええやん、過去のことやねんから」とか、
「蒸し返したら、もう1回同じことが起こるで」とか言う。
被害者と加害者が同じエリアに住み、
なおかつ加害者が圧倒的多数を占める社会で、
アディが身を呈して質問する姿は賞賛したくなるものの、
自分の命を大事にしてくれ!と心底思いました。
彼は決して謝罪を求めるわけではなく、
「本音」で話したいと言い、
加害者がどういった心境なのかを確認しようとする。
つまりは自発的な謝罪の気持ちの有無を見ているわけです。
しかし、インタビューされている側からすると、
詰問されているように感じて、決して謝ることはない。
言い訳したり、ブチ切れたり、恫喝したり。
自分たちはあくまで悪者(共産主義者)を退治しただけ、
システムが自分たちを動かしたと主張する。
ここが本当に怖い点で所在なき悪とでも言うべきか、
そこに怨恨等の感情はなく、大多数が支持しているものは正義!
という民主主義のバイオレンス性を垣間見ました。
この原理であれば、どの国、どの時代に起こっても不思議じゃない。
そこまで考えさせるパワーに溢れている映画だと思います。
アクト~とセットで見ることをオススメいたします。

2015年7月22日水曜日

バケモノの子



夏の日本映画の風物詩となりそうな、
細田守監督最新作ということで見てきました。
(初めてTCX+DOLBY ATMOSで見ました)
おおかみこどもの雨と雪も相当好きでしたが、
本作は不器用な男同士の親子関係の話かつ、
青年期のidentiyにまつわる話なんだから、
個人的にドンズバで最高最高!
見るタイミングで感想が変わりそうだし、
かなりのvolumeなので繰り返し見ることで
その味わいは変化しそう。。。

主人公は九太という男の子。
9歳の頃に母親を亡くし、
渋谷でストリートチルドレン状態だった時に、
人間界とは別にあるバケモノの世界へ迷い込む。
そこで熊 徹というバケモノ界随一の強者に
弟子入りすることになり…というお話。
冒頭、大泉洋のナレーションで
バケモノ界の状況が説明されつつ、
炎の男達がスクリーンを躍動する。
この時点でいつもと違う空気を感じました。
そこから九太の背景がざっと説明されバケモノ界へ。
孤独で誰も頼ることのできない九太にとって、
必要なのは「強さ」であり、それを体現する熊徹。
熊徹から弟子入りの打診を受けるものの、
ガサツな彼をどうしても受け入れられない。
一方の熊徹も1匹狼気質であるがゆえに、
うまく九太に接することができない。
正直この前半部分の弟子シークエンスは
終始ウルル状態というか…
不器用な2人が徐々に距離を詰めていく姿が
あまりに愛おしすぎて。
擬似的ながらも親子関係を構築し、
一方的に上から押し付けるのではなく、
子どもも1人の人間であり、
互いに足りない点を補い合うリスペクトの関係。
ここに細田監督の親子関係に対する、
まなざし、見解を見て取れると思います。
その打ち解ける瞬間が卵かけご飯。
完全にフード理論に基づいた演出で5億点!
九太が17歳になったあとは、
青年期特有のidentityの話。
バケモノ界で育った彼は元々いた人間世界への憧れを抱き、
女子高生の楓と出会い勉強を始める。
ここではないどこかが人間界=現実世界であり、
そこで知らないことを学ぶことの楽しさ、豊かさを
伝えていく姿勢は夏休みに子どもに見せるべき
真の意味で道徳的な内容だなぁと思いました。
闇雲に勉強しろって言うくらいなら本作見た方が良いし、
楓との甘酸な関係は最高に決まってる!図書館萌え!
声を担当するのは広瀬すず!何て日だ!
identityの点でいうと一郎彦というキャラがポイント。
「理想の自分」が否定された時に、
どこへ向かうか?というね〜
あと人間が抱える闇を否定しきらない部分も好感大!
なんでもキレイキレイにしてしまいがちな社会の中で、
闇の先に光があるってことを
ポジティブに伝えてくれるんだから言うことない!
圧巻は熊徹の宗師をかけた闘技場での戦い。
ビジュアルの点でいうと躍動感と大量の群衆で迫力抜群。
さらに冒頭のバトルシーンとの構図の一致、
熊徹が親としての自覚を持ち、
誰かのために生きて戦うことが強いことを示す。
もうガッツポーズするしかない!
終盤の戦いは渋谷の恐ろしいほど解像度の高い再現性に
舌を巻きまくったし、スクランブル交差点での、
クジラを影で見せる演出はかっこよかったなー
そこからのバトルも終始幻想的な佇まい。
闇を受け止めて、それごと消し去るのではなく、
圧倒的なポジティブ、胸の中の刀で戦う姿に
おじさんは勇気をいただきましたよ…
世界は混沌としているかもしれないけれど、
ここまでストレートな映画は2015年に鳴り響く
素晴らしい人間賛歌だと思います。
絶対劇場で見て欲しい作品です!

2015年7月18日土曜日

アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン



見ない訳にはいかないということで見てきました。
予告編での「愛」押しや世界各国からの遅れての公開と、
公開前から諸々言われていた本作。
アベンジャーズシリーズは、
アイアンマン3作、キャプテンアメリカ2作で、
マイティ・ソーは全くの未見という偏りっぷりですが、
十分楽しむことができました。
前作は最悪の3D環境で見たこともあり、
今回はIMAX 3Dで鑑賞したことも功を奏したかな?
本作では前作で個人的に気になっていた矛盾点を
逆手にとって魅力に変えてきたので、
僕は断然本作の方が好きでした!
今回はロキの杖が事の始まりで、
それを基に全自動防御ロボを使ったウルトロン計画を
トニー・スタークが目論むものの、
人工知能が暴走し、人類を滅亡しようとする。
それをアベンジャーズで阻止しましょうという話。
冒頭、ヒドラのアジトにロキの杖を
get backしにいくシーンから始まるんですが、
いきなりアクションガンガンでテンション上がる!
予告編でも使われていた、横並びのショットも
IMAXで見ると奥行きがあって最高にカッコイイ!
ソーの杖を無事に手に入れて、
それを使った人工知能を作成しようとしたところで、
最狂の敵となるウルトロンが誕生。
この誕生直前のパーティーシーンがくだらなくて好き。
ドン・チードルのすべらない話や、
ソーのハンマーのくだりは大きなフリになっている。
ウルトロン+ヒドラの改造人間2人と戦うんですが、
改造人間2人が素晴らしくて、それを演じるのは
アーロン・ジョンソンとエリザベス・オルセン
アーロンはキックアスからついにここまで
来たかって感じですよね!
エリザベスは単純にかわいいし、
終わらない戦争の復讐原理を体現していて好きでした。
今回最大のポイントはジェレミー・レナー演じる
ホークアーイに大きくフォーカスしている点。
武器が弓で明らかに他のキャラクターとの格差があって、
パワーバランスがおかしいじゃん!
っていうのが前作で感じた矛盾点でした。
しかい、本作ではそういった彼の「人間」であることを、
生かした展開が多く好感大!
牧歌的な家の雰囲気を含めた極めてアメリカ的な家族観と
人工知能等のテクノロジーの対比もオモシロいし、
何よりも己の弱さを理解した上で、
それでもアベンジャーズの一員として戦う。
「でもやるんだよ!」の精神全開で胸が熱くなる。
エリザベスに力強く語りかけるシーンが最高最高!
もう1人の人間サイドといえば、
スカーレット・ヨハンソン演じる
ブラックウィドウなんですが、
こちらは多様性の許容といえばいいのかな?
モンスターとして暴走してしまうハルクが
人と異なっていることにナイーブなのに対して、
私だってモンスターなんだよと語りかける。
テーマとしては素晴らしいんですが、
なんか微妙な距離感なのでウーンって感じでしたね。
また、あることをキッカケに新キャラが登場するんですが、
これがまたビミョー…っていうのが、
見終わったあとの何とも言えない余韻に
影響していると思います。
だから何やねんっていう大仰な話をするし、
パワーバランスのインフレが始まる予感ビンビン。
ただラストのバトルシークエンスで、
彼はそこまで重用されることはなく、
既存メンバー+改造人間2人で戦います。
特にコンビネーションプレーがオモシロくて、
一番好きだったのがソーのハンマーで
キャプテンアメリカの盾叩くやーつ。
それぞれの持ち味を生かし、
それぞれの持ち場で戦うのはまさにアベンジャーズ!で、
設定として?な部分もそこまで気にせず見れました。
ラストの卒業展開+新機軸、
GOGとのコラボも予感させる締め方は
MCUの広がり方に否が応でも期待してしまう。
なんだかんだ言いつつ結局楽しめるので是非!

2015年7月15日水曜日

コングレス未来会議



映画館で予告編を見てオモシロそーと思い見ました。
ぼんやりSFものかーぐらいの感じだったんですが、
結構ヘビーな内容のディストピアもので刺さりました…
相当ぶっとんだ内容で先の展開が一切見えないまま、
グイグイ引き込まれた先に見える景色の
甘美とも残酷とも取れる重さがズーンとくる。
「映画の見過ぎで仮想現実に生きてる時間の方が長いんですよ〜」
って冗談でたまに言ってますが、それでいいのか?!
とか広い意味で考えちゃうような映画でした。
ネタバレしちゃうとアレな映画なので、
これから見る人はここで読むのをやめてね!

主人公はハリウッド女優のロビン・ライト本人。
(フォレスト・ガンプで有名になった人→Wiki
彼女はピークを過ぎたお荷物俳優として
ミラマウントという映画会社から扱われている。
そんな中でミラマウントから彼女をスキャンし、
CGキャラとして契約させてくれと打診がある。
息子が難病に侵されていて、そのケアに専念したい気持ちもあり、
彼女は契約を結び、俳優ロビンライトを売ることにする。
その20年後にThe future congressという会議が開かれ、
スクリーン内で加工された俳優として
会議に呼ばれるものの…というお話。
冒頭、ロビン・ライトのアップから始まり、
彼女の俳優としてのキャリアをマネージャー、
ミラマウント、家族と話合うのが前半。
このシークエンスは一つの演技論になっていて、
監督に言われたとおりやるだけなんだから、
あんたじゃなくて、スキャンしたデータでもいいじゃん!
という論が興味深かったです。
それこそ平田オリザの計算され尽くした演出法の話とかも
関連してくるような話だと思います。
彼女は説得され、自らの俳優としてのキャリアを売り、
難病の息子と共に生きることを決意する。
この辺りは近未来SFとして、
近い将来に実現してもおかしくないような話なんですが、
時制が一気に20年後まで進み、
Congressに参加するくだりになると状況が一変。
まさかのアニメーションが始まるんです!
しかも、それはあるケミカルをキメたことで
トリップ状態にいるという設定で、
そのキメた人たちの集まりがCongress.
最初のアニメ部分のドラッギー描写は凄まじくて、
LSDキメたときに近いのかなと妄想。(私はno drugです)
今の時代もドラッグは現実逃避のツールの一種だと思いますが、
それによって実人生を失ったとしても楽しいから良くね?
というのがケミカルをキメた側の意見。
だって現実があまりに残酷な世界になってしまったから…
これは非常に考えさせられることで、
辛いからってそれでいいのか?とも思うし、
たまには逃避したくなるよねとも思うし。。
アンビバレントな感情を引き起こし、
観客に考えさせる描写がたくさんあります。
他者への同一化願望の表現として、
過去の偉人がたくさん出てくるのが面白くて、
マイケル・ジャクソンがロブスターを
レストランでサーブするシーンは笑ってしまった。
アニメーションはお世辞にも上手いとは言えないけど、
味があって海外アニメに見られる独特のギクシャク感が、
ディストピアとマッチしていて好きでした。
トリップ体験と並行して描かれるのが、
ロビン・ライトと息子の親子物語。
彼女はトリップした世界からescapeしようとするんだけど、
それは現実にいる息子に会いたい気持ちがあるから。
この快楽の世界に身を納めるか、
辛い現実社会に戻り、息子に会いに行くかで
逡巡する姿を見ていると、こちらも考えまくり。
人間って快楽に弱いから、
どこまで強くいれるんだろうと思ったりしてました。
結局、終盤にアニメから実写に戻っていくんだけど、
そこでのコントロールする側/される側の
圧倒的な格差描写がエグかったなぁ。
とくに切り替わりの瞬間が残酷で、
色調を含めた見た目の変化にヤラレました。。
息子がいない世界で生きていけない辛さゆえの
行動を彼女は取るわけなんですが、
これがまた切なくてねぇ。
せっかく夢想の世界なのに
現実社会をトレースしていくだなんて、、、
その先に待っている結末は甘美と言いたい。
レムの原作も読んでみようと思います!

2015年7月14日火曜日

Music is In My Life

映画のことばかり書いていますが、
たまには音楽の話でもしようかと思います。
というのも、記録として書いておけば、
5年後ぐらいに、この判断がどういった意味があったのか、
検証できるかなーと思った訳です。
なお、あくまで個人的な体験の話なので、
その点はご承知おきくださいませ。

サブスクリプション音楽サービスが最近話題ですが、
Appleから大本命のApple Musicがついにロンチ。
海外ではSptoifyやJay-ZのTidalなどなど、
様々なサービスがここ数年の間に提供されてきました。
日本では権利関係の複雑さから、なかなか難しかったのですが、
ここにきてAWALINE MUSICApple Music
立て続けにサービスがロンチ。
先陣をきったAWAを使ったものの、
なんだかなぁって感じで、すぐ飽きて使わなくなりました。
所有欲からは一生抜け出せないのか…
と思っていたところに現れたApple Music
これは僕みたいにアホの一つ覚えで
CDやレコードを買ってきた人間にとって
めちゃめちゃ助かるサービスだと今のところ思ってます。
様々な角度からの検証記事が出ていますが、
個人的にイイねと思うところを4点にまとめてみました。

1.既存のiPhoneのMusicと並行で使える
全体に見れば以前より使い辛くなったことは否めないですが、
ローカルとストリーミングが並行に扱えるのは便利。
プレイリストも作れるので、
既存曲の組み合わせ系映画のサントラとか作っていきたいです。

2.カタログの充実
結局のところ、これが一番大きな要因かもしれません。
USの最新ヒットから日本語ラップを含む、
インディーレーベルまで手広くカバーしています。
僕は基本的に雑食なので、
洋邦問わないカタログの充実度は最優先事項だと思っています。

3.プレイリストの充実
僕はヒットソングだけ追うような聞き方してませんし、
シチュエーションごとに音楽を設定してもらう必要もないです。
けれど、アーティスト、プロデューサー、レーベルによる
プレイリストはかなり重宝しています。
聞くたびに新たな発見があって楽しいです。
とくにプロデューサーはクレジット全部押さえて
横軸を自分で設定するのは相当大変ですから。。

4.ラジオの存在
Beats 1というラジオが設定されていて、
ストリーミングでいつでも聞くことができます。
先週の日曜日にQ-TipのAbstract Radioを聞いたんですが、
豊富なカタログに基づいた彼の自由奔放な選曲が
めちゃめちゃ楽しかったんです!
Future → David Bowieとか。笑
しかも、ラジオでかかった曲で好きなものは
自分のアーカイブに加えることもできます。
radikoでFM聞いたりもするけれど、
いちいちログって後で調べたりしなきゃいけなかったところを
これで一括管理できます。カタログにない音楽は無理ですが。
音楽に偶然出会う体験も得れるのでナイス!
(今は洋楽Onlyですが、日本のラジオもその内できるといいですね)

ここまで割とマンセーな感じで書いてきたんですが、
これだけで十分!とは個人的には思えないのも事実。
1つは音質の問題。
iPhoneで聞く分には気にならないけれど、
家のオーディオで聞くと何か味気ない。。。
音質は宗教と同じで、個人的な感覚に依拠すると考えていて、
千差万別なので何とも言えませんが…
あとは長年培ってきた所有欲との戦い。笑
CDやレコードをモノとして欲しい感覚はあります。
さらに、サービスが終了した場合に
手元に何も残らないことも不安材料の1つですね。
こういったことを踏まえると、
Apple Musicはフル視聴し放題のアプリ
という認識が正しいのかも。
聞いてよかったものだけCDやレコードで手に入れると。
音楽に使ってきた、ここ2-3年の金額を考えると、
月1000円は破格だと思っています。

あと最近手に入れたレコードとの思い出も、
ここに追記しておきたいと思います。
家でテキトーにシャッフルで音楽を聞いていた時に、
Sa-Raの曲がかかって、
そういえば、JamiroquaiのSa-Ra Remixを
血眼で探していたことをふと思い出しました。
それがFeels Just Like It Should


この曲はRhymesterがTokyo FMで
WANTEDというラジオをやっていたときに
DJ JINさんのMixでかかって猛烈に好きになった曲。
深夜放送だったのでMDコンポのタイマー録音を活用し、
通学時や勉強時に聞くというスタイルでしたが、
プレイリストはインターネットで入手できました。
CDにはなっていなくて12インチシングルのみのリリース。
ちょうどターンテーブルを買ってDJを始めたぐらいの頃で
レコ屋に行くたびに探すものの、全然見つかりませんでした。
そして2015年に時計の針は進み、
軽くググってみたところ余裕で聞けるし、
ダウンロード可能になってた!(違法だけどね)
一応ダウンロードしてみるものの、カスみたいな音質。
残念な気持ちになったところ、
Discogsにて3ドルで、しかもConditionはMint!
送料合わせて2000円ぐらいになることは
分かっていましたがソッコーで購入。
無事にアメリカから我が家に到着し、
レコードへ針を落とした時の感動たるや…
12インチだから出音もバッチリだし。
若者からしたら「ウルセ~」と言われそうですが、
山ほど音楽があふれる今の状況では、
こういった瞬間は大切にしていきたいと思う訳です。

100人いたら100人通りの「音楽のある生活」があると思います。 
色んな聞き方にトライしてみて、
改めて音楽との距離を考えてるのもイイのでは?
と思った2015年初夏。

2015年7月12日日曜日

ハッピーエンドが書けるまで



きっと、星のせいじゃないと同じ監督である
ジョシュ・ブーンということで見てきました。
本作がデビュー作で、アメリカでは2012年の公開。
きっと〜と同様、アメリカティーン恋愛ものなんですが、
断然こっちが好みでした!
本好きの僕にとっては物語の中心が本ってこと、
大人の目線が含まれていて良かったです。
原題はStuck In Love.(邦題も好きです)
主人公はある家族で、構成は 父、姉、弟の3人。
小説家の父は離婚して2年近く経つものの、
奥さんのことが忘れられず、
近所にセフレはいるもの、前に進めないでいる。
姉は作家志望の大学生。
作家としての経験を積むためなのか、
男性と深い仲になろうとはせず、
一夜のアバンチュールを楽しむb*tch気質の女の子。
そんな中で同じ作家志望の同級生と恋に落ちていく。
弟は高校生でいわゆるNERD(マリファナ吸いまくりだけど)
クラスに好きな女の子はいるものの、
彼女にはジョックスの彼氏がいる。
こういった3人の恋愛模様を描きつつ、
家族の再生も並行で描かれていきます。
冒頭3人の人となりをざっと紹介していくんですが、
父の情けなさ、姉のインテリb*tchっぷり、
弟の素直な恋と三者三様でツカミはOK
感謝祭から物語は始まり、
父と息子(弟)で料理するシーンがあるんですが、
美味しそうだし、料理、食事の過程で家族が見えてくる。
ここで父は妻の席を設ける未練タラタラっぷり。
情けない男ではあるけれど、2人の父であり、
作家としてのメンターでもあるので、
自分のことを棚に上げて2人には威厳をもって接する。
とくに息子に対して放つセリフが面白くて、
「作家として必要な経験は20歳までに得る」
と言い放ち、彼に積極的に学園生活を楽しめ!
と指南するのが笑えました。
姉、弟の恋物語は王道な話でした。
とくに弟の方がベタ
個人的には姉のエピソードが好きで、
しかも恋する相手は傑作ウォールフラワー
一躍有名となったローガン・ラーマンなんだから言うことなし!
はじめラーマンからアプローチするんですが、
自らの作家としての人生経験を優先し、
他人に心を許さず生きてきた彼女は戸惑う。
ダイナーでの好きな本のくだりとか膝を打ちつつ、
甘酸〜と思いながらニヤニヤしてました。
あと彼女は父を捨てた母を憎んでるんですが、
安易に仲良くならないのも好感大。
出版記念パーティーで、
彼女の母に対する他人行儀な態度とか、
今となっては母側に感情移入する年頃なので、
見ていて辛かったです。。。
(ただ母が娘と不和な理由を自分以外にあると
父に問いただすシーンは、あん?って思った)
弟はあることがキッカケで彼女をゲトるんですが、
童貞喪失シーンが甘酸というかエロくてですね。
彼女はジャンキーでヤリ手な訳ですが、
彼にとっての童貞喪失の思い出と
同じくらい忘れられない体験にしたいということで、
クローゼットでのSEXを提案っていう…エローい!!
そして父のエピソードなんですが、
正直大人である彼が一番情けない展開になってました。
途中で一歩を踏み出すんだけど、
ひたすら未練タラタラで、奥さんを取り戻すための、
具体的な行動はとくに取らないんですよね。
過去の経緯から待ってるという言い分も
分からんでもないけれど、それにしてもなぁ。
でも結局皆ハッピーなエンディングだったから、
まーいっか!とは思いました。
冒頭の感謝祭シークエンスとの円環構造と、
微妙に役割が変わっているのがナイス!
そして、劇中で印象的に使われていた、
スティーブン・キングの電話出演のオマケも
それまでに種まきまくりだったので、
ノイズにならず自然にウォイ!と乗れました。
あとバードマンの中心に据えられていた、
レイモンド・カーヴァーの、
愛について語るときに我々の語ることが
本作でもfeatureされていました。
(いい加減に読まなきゃいけない…)
甘酸要素求めてる人にはオススメです。

2015年7月8日水曜日

きみはいい子



そこのみて光り輝くの呉美保監督最新作ということで、
楽しみにしていた本作。
前作も相当好きでしたが、今回も相当好きな作品でした。
「泣ける」ということが
良い映画のバロメーターではないけれど、
こんなに劇場で泣いたのは初めてかも…
一億総ツッコミ社会の中で、
肯定すること、そして受けれ入れられることの
尊さ、意義を社会問題を通じて、
見事に描き出しているなぁと。
ゴミみたいな邦画が山ほどある中で、
こういった作品に出会うと邦画舐めんなよ!
と大きな声で言いたくなりますね。
原作は短編集で、そのうち以下の物語が描かれている。
① 高良健吾演じる小学校の教師の話。
② 尾野真千子演じる母親のネグレクトの話。
③ 喜多道枝演じる半ボケのおばあちゃんの話。
3つともほぼ同じ分量で並行して話は進んでいくんですが、
前半はいずれのエピソードも不穏というか、
見ていて辛くなる描写の連続。
①だとモンスターペアレンツ、ネグレクトを含めた、
現在の小学校事情。衝撃だったのが生徒の呼び方で、
さん付けっていう…今の小学校が全部が全部、
そういう訳ではないのは承知ですが、
過度な品行方正はここまでキテるのかと。。。
②が正直一番キツイんですが、
尾野真千子のネグレクトシーンのハードさ。
どついてるシーンを直接映している訳ではないんですが、
ワンショットの中で鳴り響く叩く音が辛かった…
さらに公園のママ友間の同調圧力。
理想の母親像を体現したくてもできない、
尾野真千子のどん詰まり具合がまた辛いんですわ…
全体的に撮り方に特徴があって、
引きからじわじわズームになったり、徐々に横に振ったり。
編集という点で見れば、この3つの話を行き来するときに、
その前後で共通の音や 画で切り替えていくのも好きでした。
前半のひたすらに辛い現実の先に待っている、
後半の展開がそれらを肯定していくシークエンスになります。
肯定を「抱きしめる」という行為に集約していくのが、
根源的で素晴らしいことだなぁと思いました。
前半見ている時に①、②はネグレクトで、
やんわり繋がっていて、
③が少しノイズかなと思ってたんですね。
でも後半でそれらがビシーッ!とハマっていくところに
驚いたし、心を鷲掴みにされてしまいました。。
富田靖子の素晴らしさはハンパじゃなくて、
母親だって1人の人間であるということ、
心がフッと楽になる瞬間を求めていること、
これらを本当に体現していたと思います。
さらに自閉症の彼が放つ、
彼が思う幸せな瞬間の話に涙腺決壊。。
さらに②では池脇千鶴が肯定の役割を担うんですが、
前半での少しガサツとさえ思える行動が
良いフリになってるんですなぁ。。
相対化された価値観が極めて強い、
ママ友の中で「ボケ」の立場を取る背景を
後半で知ると見方が一気に変わってしまう。
彼女の「抱きしめる」という行動が、
鬱屈した空気を吹き飛ばす突破口になっているのも、
象徴的で好きだなーと思いました。
さらに①の高良健吾の肯定との向き合い方も、
②、③とは別で興味深くて。
彼が抱きしめるという行為の尊さに
気づくシーンがあるんですが、
ここも素晴らしく愛おしい!!
彼にとってウザい存在でしかなかった子どもが、
世界を変えていく可能性に満ち溢れているっていうねー
彼が終盤に取る行動が果たして正しいかどうか、
それは誰に分からないけれど、あきらめたら終わり!
というのが伝わってくるラストの街を走り抜けるシーン。
音楽も素晴らしくて感極まりまくりでした…
間違いなく今年ベスト級なので是非!!

追伸
RhymesterのHandsって曲があるんですが、
本作を見たあとに聞くと、効き方が異常なのでオススメです。

2015年7月4日土曜日

ラブ&ピース



園子温監督作品ということで見てきました。
新宿スワンも園監督でしたが、脚本が別だったのに対して、
本作は脚本もその監督ということで
完全なるA SONO SION'S MOVIE!!
原作なしのゼロベースなのは地獄でなぜ悪い以来だったので、
とても楽しみにしていました。
見終わったあと、なんやこれー!と思わず言ってしまう。
新境地と言っていいと思うんだけど、
内容自体は「ラブ&ピース」
タイトルどおり、愛と平和を描いた童話で、
かなり好き嫌いハッキリ別れるだろうなと。
主人公は長谷川博巳演じる鈴木良一。
彼は音楽が好きでロックスターになることを夢見ている。
けれど実際は気の弱いサラリーマン。
周りからはバカ扱いされ、自らも卑下しまくりの人生。
そんな彼が亀を飼い始めたことで
運命の歯車が動き出し…というお話。
冒頭いきなり田原総一郎のニュース番組が始まり、
コメンテーターに水道橋博士や津田大介さん等が登場し、
なんなんだ!と思いつつも映画が始まります。
前半は鈴木がいかにダメなやつかが描かれ、
トイレの落書きとか園監督作品見てる!って感じだし、
テンポ良く展開していくのが心地いい。
誇大妄想家につき」 と思わず言いたくなる、
亀とのくだらない人生ゲームごっこは見てて悲しくなる。
その亀を誤ってトイレに流し絶望に明け暮れる中、
亀を惜しむ歌を鈴木が作リ出します。
その一方で亀は下水道に住む謎のオジさんに拾われ、
鈴木の願い事を叶える力を身につける。
(叶える代償として亀の体はどんどん大きくなる)
こうして鈴木はロックスターへの道を着実に歩んでいきます。
トイレに亀を流しちゃうところは、
トイレの渦に亀が飲み込まれる 画を
繰り返してくるから、めちゃ笑ってしまいました。
大きなテーマとして物質社会に対するカウンターという
意味合いが強くて、その槍玉として上がっているのが、
2020年に開催されるオリンピック。
過去を見つめ直すこと無しに、
昔と同じような形で物質で豊かになれるとでも
思っているんでしょうか?ってな具合です。
このテーマを鈴木の成り上がりと、
下水道に住むオジさんのところに集う、
捨てられらたオモチャ、動物で描いていくという作り。
後者のオモチャ、動物のくだりで
乗れる/乗れないが決まると思います。
完全にメルヘンの世界なので…
ただやはり園監督作品なのでMADNESSは健在。
事態がどんどん大きくなるにつれて、
亀もどんどん大きくなるんだけど、
なんか気持ち悪いんだよなー(褒め言葉)
スターへの道を歩む鈴木は
過去の自分はどこへやらで調子乗りまくり。
この2面性を長谷川博巳がキッチリ演じきっていて、
コメディセンス抜群だなと思いました。
彼の恋の相手である麻生久美子は
いつだってkawaiiので無問題。
話全体には乗り切れないところもあったけど、
それぞれの落とし前の付け方が好きで、
あふれきった欲望のなれの果として、
巨大化した亀が東京の街をぶち壊していく
っていうのは痛快だったし、おもちゃの方は切なくて…
鈴木が元の部屋に戻り、麻生久美子が駆けつけて、
というキレのよいエンディングも良かったです。
一概にはオススメしにくいですが、
園監督の新境地として劇場で目撃すべき!

2015年7月1日水曜日

アリスのままで



予告編を見て、好きな女優のジュリアン・ムーアと、
クリステン・スチュアートを同時見れるという
浅はかな理由だけで見てきました。
アルツハイマーの話とは分かっていたものの、
予想の斜め上をいく切り口が提示されてビックリしました。
あと個人的に最近記憶や思い出について、
よく考えることが多い中で、内容がドンズバで刺さり、
改めて色々と考えさせられました。
僕たちがいかに寄る辺ないものをベースに生きてるのか、
ってことを痛感しました。。
主人公はジュリアン・ムーア演じるアリスで、
彼女はコロンビア大学で教鞭を取り、言語発達学の研究者。
それと同時に3児の母親でもあると。
順風満帆な彼女の人生ですが、
ある日突然アルツハイマーを発病し…というお話。
正直ありきたりだなーと思う人が多いと思うんですが、
本作は2つのポイントでフレッシュだなと感じました。
1つ目はアリスが非常に頭脳明晰であること。
2つ目は彼女のアルツハイマーが遺伝であること。
1つ目が本作が好きになった最大のポイントで、
はじめちょっとした単語や物忘れが多いなと思うものの、
持ち前の知性でリカバーしちゃう。
かしこくて万事うまくいってきたんだから、
プライドが高く現実が受け止めきれないわけです。
そこからアルツハイマーと認定されるし、
病状も日々進行していくので、
認めざるを得ない現実が目の前に突きつけられる辛さ。
そして、そのスマートさがゆえに
ある種の時限爆弾を仕掛けたりもする。
彼女は死ぬわけではないけれど、劇中のセリフにもあるように、
知識で自らを定義するような人生だったがゆえに、
知識、記憶が抜け落ちていくことは
人よりも耐え難い苦痛な訳です。ほとんど死と同義。
そんな中で見せる学会のスピーチは素晴らしくて、
瞬間瞬間を生きるしかないっていう話は沁みました。
2つ目の遺伝で発病するっていうのも辛くて、
自分だけならまだしも子どもたちも
将来アルツハイマーになる可能性があって、
しかも、特定の遺伝子を持っていれば100%発病してしまう。
家族との関係性も実話ベースということもありリアル。
彼女の介護を誰が担うかという時に、
家族はそれぞれが己のキャリアや生活を優先する。
そりゃ皆で助け合えば理想かもだけど、
そうもいかないケースを描いていることに好感を持ちました。
アルツハイマー描写は色々あるんですが、
ビックリしたのが場所を忘れるっていうこと。
公園で迷子になったり、
家の中でトイレの場所が分からなくなったり。
さらに前述した時限爆弾のくだりは
「一刻も早く忘れて!!」と思わせる逆転の演出で、
めちゃくちゃハラハラしました。
終盤は喋るのも覚束ない状態となり、
劇中で所々インサートされていた
アリスの亡くなった家族との記憶の中へと沈んでいく。
監督自身がALSという話も踏まえると、
有限な時間の中でどうやって生きていくか、
改めて考えさせられた作品でした。おすすめ!