2015年3月30日月曜日

永い言い訳


永い言い訳

映画監督の西川美和の書き下ろし小説。
本屋で見かけてサクッと購入し、
電車でふわ〜と読み始めたら、
これがとんでもなくオモシロくて、
今年読んだ小説で一番好きでした。
これまでの映画同様に「喪失」にまつわる話。
大事な人に先立たれ、この世界に取り残された人が、
どういった形で生きていくかを
複数の視点を使ってエグり出していく。
本当に「エグる」という表現が正しくて、
救いを用意したかと思いきや、
次のチャプターで全く逆の考えを提示し、
読者に常に考えることを要求するような構成になっています。
主人公が自らの生き方を探す姿が痛々しくもあり、
天邪鬼な彼に共感しまくったがゆえに、
心を揺さぶられたなぁ…
小説で山ほど付箋したのは初めての経験でした。
装丁も美しいので是非本で読んでほしいです。

5つ数えれば君の夢



友人にプッシュされたので見ました。
最近九龍ジョーのメモリースティック
という本を読んでいて、
その中でも登場していて気になっていました。
監督は山戸結希という人で、
これからグイグイ来るやろな〜と感じる、
フレッシュな作品でした。
東京女子流というアイドルが主人公で、
女子高の文化祭を中心に、
それぞれの悩みやスタンスを描き出す。
東京女子流のことをほとんど知らなかったけど、
アイドルが演じる青春映画として
きっちり成立しているので楽しかったです。
それだけじゃなくて、
プラスアルファがあるのが本作の魅力。
中江さんの中盤のワンショットのシーンと、
ラストの新井さんのダンスシーンが好きでした。
とくにダンスはコンテンポラリーで超かっこいい!
自らの存在を身体を使って高らかに宣言する。
「おとぎ話みたい」を劇場で見逃してしまったので、
早くDVD化するか名画座で上映してほしい!

2015年3月29日日曜日

マネーボール



ベネット・ミラー監督作品。
最新作のフォックスキャッチャー
とてもオモシロかったので見ました。
野球を統計で戦ったGMの話なんですが、
本作も当然オモシロかったです。
経験や 感覚を排除し数字をベースに
野球チームを作っていく中で、
ネックとなるのも必要となるのも
「人間」っていうバランス感覚が好きでした。
仕事してても、
「あんたの過去の経験(栄光)なんて知らねーよ」
と言いたくなるけど、
それでしかクリアできない問題もあるから歯がゆいし、
ブラピとジョナヒルの気持ちがよく分かる。
アベレージとしては叩き出せるけれど、
ここぞ!という瞬間は統計では計りきれない、
火事場の底力があるのかも…と思わされました。
あと異端者としての孤独を噛みしめる
ブラピの姿がとても好きでした。
イーストウッド主演の人生の特等席
セットで見ると楽しめると思います。

グランドピアノ〜狙われた黒鍵〜



セッション」という映画が4月に公開されるんですが、
本当にとても楽しみにしていまして、
脚本家の過去作を見てみようと思い鑑賞。
(ちなみに名前はデミアン・チャゼル)
楽器という点では共通していますが本作はサスペンス。
主人公がピアニストでコンサート中に命を狙われて、
「最高難度の曲をミスなくやらんかい!」
と脅迫されて…というお話。
前半は彼の立場やナーバスの性格を様々な描写で表現。
コンサートが始まってインカムで脅されながら、
何とか打破しようと主人公は奮闘していきます。
正直、サスペンスとしてどやねん…
っていうツッコミポイントが多いです。
なんですけど冒頭のアバンタイトルが超かっこいい!
色んなピアノの部品のフォーカスショットの連発で、
ジュンジュワ〜って感じでした。
とにかく早くセッションが見たい!!

ケンタとジュンとカヨちゃんの国



大森立嗣監督作品。
フィルモグラフィーを追いかける一環で見ました。
最新作のまほろ駅前狂騒曲は残念な感じでしたが、
本作は大森監督のヒリヒリした部分が
滲み出ていて素晴らしかったです。
主人公はケンタとジュンで、
2人は児童施設からずっと一緒にいる仲で、
壊し屋として働いています。
終わりのない地獄のような日常に終止符を打ち、
すべてをぶち壊した先を探して旅に出る、
ロードムービーとなります。
松田龍平、高良健吾、安藤サクラと
現在の邦画界を担う若手俳優が
共演してる姿を見るだけでも楽しい。
先が見えない中で毎日を精一杯生きる姿は、
刹那的でありながらも羨ましい。
大人になると先を見通して将来どうするか?
ってことを考えたりすると思うんですけど、
彼らは今日1日をひたすら凌いでいく。
全部ぶっ壊したんだから、何かあるはず。
つまり、見たことのない景色、
もっと俯瞰でいえば「国」があるはずだと。
けれど、周りを取り払っても
自分が変わらないと何も変わらない。
そんなことを痛烈に叩きつけてくる。
それが顕著なのがケンタと兄の面会シーン。
面会窓に映るケンタと兄貴が同じ方向を見ている
という演出は本当に素晴らしかった!
残り2作品なので全部見たいと思います。

2015年3月28日土曜日

HUNGER/ハンガー



シェイムそれでも夜はあけるの監督である
スティーブ・マックイーンのデビュー作。
これがデビュー作なのか…と衝撃を受けました。
僕は本作が一番好きでした。
1980年代の北アイルランドで
サッチャー政権に対してハンガーストライキで
政治犯としてのプライドを取り戻そうとした、
抗議活動を生々しい映像でえぐり出す。
とにかく映像がストイックで、
めちゃくちゃカッコイイ!!
前半はほとんどセリフがなく、
刑務官と受刑者の様子を淡々と見せていく。
「淡々」と書きましたが、
それはあくまで物語の進め方であり、
画面内で展開される内容に呆然…
刑務官の日常茶飯事の暴力、
それに対抗して受刑者は
糞尿を撒き散らしたり、囚人服を拒否し
毛布一丁で刑務所で過ごしたり。
歴史的な背景を知らないし、
説明もないからグイグイ引き込まれていきます。
「見る」ことを観客に要求するスタイル。
そして、神父と受刑者のボブ・サンズのあいだで
行われる20分近くのワンショットによる対話。
それまで大胆な省略話法でテンポよく進んだ分、
ここのワンショットの強烈さが際立つ。
2人の話の内容も哲学的で本作のテーマとなる部分。
ハンガーストライキっていう手法は、
自傷行為で情を誘う方法であり、
そんなことは意味がないと主張する神父と、
己のプライドと次世代のために
自らの命を賭してまでもストライキを決行するボブ。
この受刑者を演じるのが、マイケル・ファスベンダー
終盤はみるみる痩せていくわけですが、その迫力たるや!
静かにゆっくりと着実に死へ向かう姿は、
見てて本当に息が詰まりました。
映像の迫力に圧倒されたので、
文芸座とかで再映されないかなーと思う次第。
あと特典の監督インタビューは必見で、
現在に通じる首尾一貫性と
映画に対する真摯な姿勢が素晴らしいので、
見る方はdon't miss it.

22ジャンプストリート



いつのまにかDVDで出てたので鑑賞。
なんでこれが劇場公開されないのか、
頭を抱えるくらいマジで最高最高!
前作から大幅に予算アップして
見た目がリッチになりながらも
中身は前作と同じアホな感じ!
そのギャップが楽しいし、
前作を踏まえたメタ視点もオモシロい。
話の骨格は同じで、
前作が高校への潜入捜査でしたが今回は大学。
大学で蔓延するドラッグの売人を
2人で突き止めるミッションをこなしていきます。
チャニング・テイタムはジョックスと仲良くなり、
フラタニティへの潜入も成功する。
一方のジョナ・ヒルはナード方面と仲良くなり、
美術学専攻の女の子と恋に落ちます。
実はこの女の子が…っていう展開がマジ最高で、
アイスキューブの顔面力よ!
顔だけであんなに笑ったのは初めてかも。
バディものなので、くっついたり離れたりも魅力。
その同性愛性もギャグにしちゃう、
アメリカ映画の懐の深さを感じました。
あと音楽もイイ感じにバカっぽいEDMや、
ヒップホップがガンガン鳴ってて調子良かったな〜
(タートルズもこの路線の音楽で良かったと思う)
ラストのエンドロールの続編ネタも、
ビル・ヘイダーやセス・ローゲンが出てきて、
テンション上がって楽しかったです。
本作の監督であるフィル・ロード&クリス・ミラーの
今後の作品もめちゃ楽しみです。次は劇場で見たい!

2015年3月27日金曜日

ワイルド・スタイル



タマフルで荏開津広さんをゲストに特集されて、
「これは見ないと!」と思い、
K-DUB SHINE氏のトークショー付きで見てきました。
特集でも言及されていましたが、
映画としての出来は確かに今イチなんだけど、
自分の好きなHIPHOPのオリジンを目撃した!
という衝撃が勝ったなーという印象です。

舞台は1982年のニューヨークのブロンクス。
ゾロという名で活躍するグラフィティライターが、
ひょんなきっかけで仕事として
絵を描いてもらうように頼まれ、
最終的にフェスの舞台にグラフィティを描くまでを
ドキュメンタリータッチで捉えた作品です。
冒頭かわいらしいグラフィティのアニメで、
タイトルクレジットが流れて意外だなーとか考えてたら、
当時のサウスブロンクスの風景が映り、
その考えはすべて吹き飛びました。
「空爆されたのか?!」と思ってしまうほど、
街が荒れ果てている様子がスクリーンに映し出される。
先進国のアメリカに1980年代とはいえ、
こんな街が存在していたこと自体が衝撃…
そんな街の中でもHIPHOPの4大要素である、
ラップ、DJ、グラフィティ、ブレイクダンスで
日々街を彩る若者たちの姿が眩しい。
本作のメインは主人公も虜になっているグラフィティ。
地下鉄に書くことが一つのステータスなんだけど、
警察に捕まるリスクも伴う。
しかし、彼らは自らの存在を叫ぶかの如く、
地下鉄をグラフィティで埋め尽くします。
そういった自由に描くことと、
商業的に描くことを物語を進めながら
対比して描くんですが、
その葛藤の部分は作り込みが足りないかな〜と思います。
(おばさんの誘惑シーンは楽しかった!)
そして音楽の部分を担うラップとDJも
本作の大きな魅力だと思います。
HIPHOPは世界的なものとなり、
その影響を受けていない音楽を探す方が難しい状況です。
しかし、当時はDJが2枚使いブレイクを繋いで、
その上にひたすら言葉を乗せていき、
パーティーを盛り上げていくスタイル。
「なんて原始的でかっこいいんだ!」と思いました。
バスケットの試合でミュージカル調になるシーンも
唐突だけど好きでした。
個人的なハイライトはグランドマスターフラッシュが
キッチンにターンテーブルをセットし、
ストイックな2枚使いを披露するシーン。
めちゃくちゃタイトなんですよねーその2枚使いが!
荏開津さんも特集で言っていましたが、
ヒップホップがビートの音楽であり、
それがコラージュの形で様々な要素の
ハイブリッドとなっているところにグッとくる。
僕がヒップホップを本格的に好きになったのは、
KANYE WESTのTHROUGH THE WIREで、
今となればソウル早回しの代表的な曲ですが、
当時見ていた全米TOP40の番組で聞いたときの
衝撃は今でも忘れられません。
本作を見ると、その頃の気持ちを思い出し、
この「何でもあり」感なんだよなーと改めて。
あと、僕の好きなRHYMESTERが、
本作の要素を多分に反映していると思います。
ウワサの真相の「勝算」は
ユニゾンの掛け合いラップですが、
ダブルトラブルの階段でのラップに似てるし、
肉体関係PART2のライブ中の
「SEX!」というコール&レスポンスは、
ビジー・ビーが元ネタだろうし。
他にも日本語ラップ好きな人が、
アガる場面も多いと思いますし、
すべてはここから!という感動が
めちゃくちゃ大きいのでHIPOHOP好きはマスト!
見終わったら、これを聞くと倍で楽しめる→リンク

2015年3月25日水曜日

劇場版プロレスキャノンボール2014



友人に誘われて見てきました。
僕は中学〜高校の頃までワールドプロレスリングを
録画し欠かさず見ていた隠れプロレスファンでした。
ここ最近KAMINOGEやプチ鹿島さんのおかげで、
再び熱を取り戻しつつあったんですが、
時間も限られている中であんまりチェックできておらず…
という状態で見たので、めちゃくちゃ刺さった!
本家のテレクラキャノンボールと比べると、
画面のインパクトには欠ける分、見劣りするかもしれません。
しかし、本作ではプロレスが極めて優れた
エンターティメント、スポーツであることを鮮やかに描き、
なおかつプロレスとは何なのか?という
本質的な問いに対する回答にもなっています。
とにかく喜怒哀楽全部乗せで最高最高!

DDTというプロレス団体のメンバーが参加者で、
加えて鈴木みのるや葛西純も参戦。
テレクラ〜はナンパしてハメ撮りし、
その内容に基づきポイント加算というスタイル。
一方の本作は旅をしながら道中で
プロレスの試合を行いポイントを稼ぎ、
勝敗を争うという話です。
いきなり街中の人とプロレスの試合をする訳にもいかないので、
各々のコネを生かして現役プロレスラーは勿論のこと、
元プロレスラー、女子プロレスラー、学生プロレスラーなど、
様々な人とDDTの面々が試合をそこかしこで繰り広げる。
公園とか人の家で試合するのを見てるだけでオモシロいし、
ギミックに溢れた新日本プロレスへの道場破りとか、
ゴージャス松野のケイオスさが笑えました。
2ステージ制に別れていて、
1stステージのプレビューを皆で行うのが前半。
ここでポイントになるのがガンバレプロレスチーム。
ガンバレプロレスはDDTの派生団体。
何とか名を挙げたい彼らは様々な手法を使って、
ポイントを稼ぎだし1stステージの1位に躍り出る。
しかし、他のチームから「仕切りが甘い」とか
「プロとして見せれるもの出せや!」と怒られてしまう。
ここにプロレスの本質が描かれてると思うんです。
総合格闘技真っ盛りの時代に、
プロレスを見ていた人が野暮と感じていた
「ガチじゃないじゃん」という正論。
でも果たしてガチであれば、それだけでオモシロいのか?
スポーツとエンターテイメントの狭間にあるプロレス。
その魅力が炸裂しまくりなのが後半です。
様々な形でプロレスが地元に根付いているんだなぁと
感慨深く見たし、ゴールが地元志向型の草分け的な
みちのくプロレスの道場っていうのも納得。
なんといってもガンバレプロレスの大家選手。
彼のために用意された映画と言っても過言ではないくらい、
人間味に溢れる姿は本当に最高だったなぁ。
前半〜中盤にかけては根性ない口だけの人間で、
そのどうしようもない様子を見て笑っていたんですが、
これらがフリになって後半のエモい展開へと繋がっていく。
(全裸でのビンタしばき合いは必見!)
HIPHOPでいうところのブロックパーティーで、
不器用な彼が自分なりのスタイルで残す成果に
号泣メーン!でした。でも、やるんだよ!
世界観に入りにくいかもだけど、
前情報無しで見てプロレスの魅力を体感して欲しいです!

2015年3月22日日曜日

博士と彼女のセオリー



イミテーション・ゲームがチューリングなら、
本作はホーキング博士!同タイミングで学者自伝映画が
公開される数奇な運命を感じつつ見てきました。
(ちなみにホーキング博士を題材としたイギリスのドラマでは、
カンバーバッジが主演を務めている)
とても素晴らしい作品で画の構成力というべきか、
なんてフォトジェニックな映画なんだ!
と終始ニヤニヤしながら鑑賞しました。
美しい映像を見てるだけで楽しいし、
もちろんお話自体もオモシロくて、
ホーキング博士はALSの物理学者ぐらいの前知識で見たので、
「そんなことが?!」と思ってしまう内容。
複雑な愛の形と過ぎ行く時間の流れの残酷さと希望。
ホーキングの研究内容は広く言えば、
時間に関するもの(時間の起源かな?)なので
倍で突き刺さる内容なんやで…

お話としてはホーキングの大学時代から始まり、
ALS発症、奥さんのジェーンとの結婚、
最終的に女王陛下との面会までを描いたものです。
冒頭温かい光の中ボヤけた人物像が映され、
ホーキングと思われる車いすがグルグル回り、
それが自転車の車輪とオーバーラップし、
大学時代から物語が始まっていきます。
この時点で「映像のセンスよ!」と思わざるを得ない。
前半は病気の発症と奥さんの出会いから結婚まで。
パーティーで出会って意気投合し、
だんだん仲良くなっていく姿は甘酸。
(ホーキング家の一筋縄でいかない感よ!)
特に舞踏会に2人で行くシーンは、
メリーゴーランド、花火、ダンスをvividに映し出していて、
極上甘酸で最高最高やったな〜
あと大学での研究テーマを模索する中で、
かつてのケンブリッジの偉人たちが
使っていた研究室を訪れて、
黒板に思いを馳せるシーンは、
脈々と受け継がれる知の巨人のDNAよ!
って感じで理系人間としてはガン上がりでした。
(黒板がイイ感じに汚いから足跡のように見える)
ALSを発症し自閉的になっているホーキングを
助けるのが奥さんとなるジェーン。
彼女が説得するシーンの赤色の使い方が印象的だし、
ホーキングがクロッケーをヨボヨボの体でするのが
見ていて辛かったけど、それでも彼を受け止める
ジェーンの覚悟がカッコいいなーと思いました。
残された少ない時間を共に過ごすため、
2人は結婚し子どもをもうける。
そして物語が進むに連れてALSの症状は悪化する訳ですが、
主演のエディ・レッドメインの演技よ!!
歩き方、表情など、どれを取っても
病気を発症しているようにしか見えない…
俳優の覚悟、ここに極まり!っていうレベルで、
韓国映画のoasisを思い出したりしました。
彼はこの役のために体重を落とし、
40人以上のALS患者と会い、
4ヶ月、自らの体をコントロールできるように
ダンサーとトレーニングを重ねたとのこと。
体は衰えていくんですが、頭脳は明晰なので、
物理学者として着々と成果を残していくんですが、
博士論文の結果のところで号泣メーンでしたね。
(その後の打ち上げでの彼の歯がゆさも含めて)
彼のボスはキップ・ソーンですが、
ソーン博士はインターステラーの
製作総指揮を担った人ということで、
ここでも男の星座が繋がっています…宇宙!
後半は奥さんとの関係が歪み始める過程を
丁寧な描写で描いていきます。
大きな要因としては聖歌隊の先生が、
ホーキング一家のヘルパーを始めて、
ジェーンが彼のことを好きになってしまうこと。
でも、それだけではなく日々の生活の細かい部分で
だんだん不満が蓄積していくっていう描き方が好きでした。
一方のホーキングも超優秀なヘルパーと
関係を深めていき夫婦仲が上手くいかなくなる。
ただ、どっちが悪いとか無くて、
お互いが許し合っている関係とも言うべきか。
それが描かれた部屋で2人が泣き合うシーンは
グッときましたね〜
ラストは女王陛下との面会シーンで冒頭と繋がる。
2人で子どもを眺めるシーンを見ると、
共に時代を生き抜いた同志として、
互いをリスペクトしているのがかっこいい。
ここから2人の出会いまで時間が巻き戻るんですが、
ホーキング博士の研究テーマと重なり、
相当好きな終わり方でした。
さらに、エンドロールの宇宙にホーキングの後ろ姿が
最後に映るところでサムアップ!
理系偉人系伝記映画をもっと見たい!

2015年3月18日水曜日

毒薬(日本の名随筆)



正月にブックオフで入手した代物。
中島らもが編纂した日本の名だたる作家たちの
「毒」にまつわるエッセイ集。
顔ぶれが超豪華で本人自身はもちろんのこと、
芥川龍之介、坂口安吾、江戸川乱歩、
植草甚一、筒井康隆など挙げればキリがない。
ここまでの説明でヨダレ垂らしている人とは、
友達になれそうな気がします。

毒といっても時代や人によって捉え方が
様々で非常に興味深かったです。
前半は麻薬中心で阿片やヒロポンの体験談、
キメながら本を書いてた話もあったり。
そんな中でも坂口安吾のエッセイはやっぱり強烈。
宗教と麻薬を並列に扱い、中毒性という観点では
何も変わらないと主張しています。こんな風に。

どんな深遠らしい理屈をこねても、
根をただせば同じことで、意思力を失った
人間の敗北の姿であることには変わりはない。

中盤は人を殺す道具としての毒にフォーカス。
とくに中世ヨーロッパで立場の弱い女性が
毒を盛りまくって人を殺しまくってた話が
目から鱗で驚きました。
後半にかけては近代の毒、ドラッグと呼ばれる
類いのLSDやマリファナの話。
フグの毒やアルコールも広い意味の毒として扱われてました。
日本ではタバコ、アルコールぐらいが合法的に
認められているドラッグであり、
危険ドラッグが社会問題になったのも記憶に新しい。
一方でアメリカではマリファナの合法化が進んでいる。
本著でも語られていますが、毒は文化だと思います。
そして色んな毒を服用しないままに体験できる
読書がもっとも危険なドラッグかもしれませんね!

2015年3月16日月曜日

ブルックリンの恋人たち



アメリカ映画の中でブルックリンがホットだということを、

長谷川町蔵氏×山崎まどか氏のトークショーで
話されている のを聞き見てきました。
(と思っていたけど、原題はSong One)
主演がアン・ハサウェイで、
Producerがジョナサン・デミなので
大好きなレイチェルの結婚を思い出したり。
内容的にはビフォアサンライズに近いかな?
ただ、もっとビターな味わいで好印象でした。
アン・ハサウェイ演じるフラニーは、
モロッコで研究してPhDを取得しようとしている学者。
彼女の弟が交通事故で意識不明の重体に。
何とか弟の目を覚まさせようと、
弟の住むブルックリンの街の音を集めて聞かせたりする。
さらに弟が大ファンのシンガーソングライターと出会い、
彼とフラニーが恋に落ちていく話。
冒頭、弟がNYの地下鉄で歌っているシーンから始まり、
帰り道に交通事故に遭ってしまう。
モロッコで研究してるフラニーはNYの病院へ駆けつける。
ビビったのはモロッコで実際にロケしてるところ。
お金かけてロケしてるから後半に活きてくると思いきや、
そこまで明確な伏線でもなくて。
ただ冒頭でこのシーンが挟まれることで
物語の説得力がグッと増してるし、
現地で暮らすアン・ハサウェイの美しさたるや!
弟は大学を辞めてミュージシャンを目指していた訳ですが、
前述したとおりジェームズという歌手の大ファン。
弟の作った曲をフラニーがジェームズに渡すことで
2人は出会い、徐々に距離を縮めていきます。
フラニーが居ても立ってもいられず、
弟の荷物を探し始めると自作のCDと日記が出てくる。
この2つが物語を動かすポイントになっています。
CDは見つけて聞くところが印象的ですよね。
本作を見て感慨深いなと思ったのは、
CDプレイヤーに入れて音楽を再生することが、
アナログな行動に見えるということ。
しかも、曲の冒頭に弟からのメッセージが入っていて、
彼女は再生を一旦止めるんですが、
これがきっちり伏線になっていました。
ただ、このシーンはもっと後半に持ってきて、
エモさ全開で見せた方がよかったかなーとは思います。
(そして、父になるのカメラ演出のように)
一方で日記がこれまたkawaiiんですよねー
おそらくモレスキンだとは思うんですが、
歌詞や彼の住むブルックリンでの思い出が
絵も交えて描かれている。
この内容に沿ってフラニーは
弟の幻影を追いかけるかの如く、
ブルックリンの街を徘徊していきます。
それと同時にジェームズと仲良くなり、
一緒に街を徘徊しながら街の音を集めていく。
特に好きだったのがビンテージ楽器を集めるシーン。
ここはまさにビフォア・サンライズ。
ただ関係はもっと大人で探り合う感じ。
それぞれが失ったものを埋め合うかのように惹かれていき、
付かず離れずだな〜と思いきや、
いきなり濃厚なFuckが始まってビックリ!
そこも大人の恋愛な訳です。
けれど必要以上の深入りは決してしない。
ビタ〜やないの〜って感じでした。
あと広い意味で音楽映画になると思うんですが、
決定的な歌がないのはウィークポイントかなと。
好みの問題はあると思うけれど、
ジェームズの歌にグッとくることは無かった…
唯一良いなーと思ったのはレコードかけながら、
アン・ハサウェイが歌うシーン。
AmericaのI need youっていう曲です)
ラストのご都合主義な結末に少しがっかりしましたが、
そのあとの甘酸演出でそれぞれが
日常に戻っていくシーンが最高だったのでAll OK!!
邦題で敬遠してる方も是非どうぞ。

暗黒映画評論 続悪魔が憐れむ歌


暗黒映画評論 続悪魔が憐れむ歌

映画ライターの高橋ヨシキ氏の映画評論集第二弾。
たくさん映画を見ているんですが、
ホラーは進んで見る気が起きず…
怖いからというのもあるんですが、
予定調和なことしか起こらないよなーという
偏見を持ってしまっていまして。。。
そんな僕みたいなやつに冷水をぶちまけるかの如く、
知のウォーリアーであるヨシキ氏が
ホラーを中心にバイオレントな映画を徹底的に論じています。
こういった批評本って見たことない映画の評だと
「へーそうなんや」で終わってしまうことが多い。
ただヨシキさんの評はどうしても見たくなる。
それは圧倒的知識に基づいた氏の分析が
ふんだんに盛り込まれているからだと思います。
セデック・バレを「血」という視点で分析した評と、
未来世紀ブラジルの評は超Freshで興奮しながら読みました。
見たい映画も山盛りで徐々にでも追いかけたい次第。
あとがきの非常に印象的なラインで締めさせていただきます。

金ピカに飾り立てられた偽りの神殿の非人間性とは対極の、
どこまでも「人間的な」あり方の表明である。

ゼイリブ



ジョン・カーペンター監督作品。
TSUTAYAの発掘良品で見かけて借りてみました。
何気なく暮らしていた街が、
実は宇宙人に支配されていたというディストピアSF。
最近SFおよび宗教にまつわる本や映画に触れまくりで、
色んなことを考えてながら生きてるんですが、
これはとてもオモシロかったです。
アイデアがフレッシュで宇宙人が襲ってくるのではなく、
すでに身近に存在していて人間を支配しているということ。
それを分かるツールがサングラスっていうのもナイス。
(正しく言えば偏光グラスかな?)
OBEY, Stay asleep, Consumeといったメッセージが、
街中の広告に埋め込まれている!
くだらね〜と思うけれど、笑えない側面もある訳です。
本作はデフォルメし過ぎだけど、
同調圧力や特定の報道による偏向は最近強く感じます。
多様な価値観があって然るべき時代なのに。
と真面目なことを書いてみましたが、
ドンパチ多めで裏切りもあったりして単純にオモシロいです。
(too muchな殴り合いシーンがとても好きです)
SALUの「Goodtime」の元ネタなので、
そっちが好きな人も見てみてね。

2015年3月15日日曜日

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密


チューリングのエニグマ解読を題材にした映画?!
と理系男子の端くれとして予告編で興奮し見てきました。
暗号解読のオモシロさもあるんですが、
それよりもチューリングの人間性に迫った内容であり、
2015年現在でも顕在する社会の諸問題も包含した
意義深い作品でした。
チューリングの存在を知ったのは、
その中でも変人扱いされていたので、
本作がどういったバランスで描いているのか興味津々でした。
「変わっている」ことに間違いないんだけど、
それでも時代を精一杯生き抜いた彼の姿が
スクリーンに克明に刻まれていて感動しました。
それをチューリング役のカンバーバッジが見事に体現。
ドラマのシャーロックも早く見ないとなーと思います。

舞台は1939年のイギリス。
チューリングがドイツ軍の使用する当時最強と言われた、
「エニグマ」という暗号を解読する任務につき、
解読に至るまでの過程と彼の人生を描いた物語。
構成としては、戦時中の解読シークエンス、
終戦後に逮捕されたシークエンス、子どもの頃のシークエンス、
上記3つから描かれていきます。
冒頭は1950年でチューリングの家に強盗が
入ったところから始まります。
そして一気に時代が1939年までシフトし、
彼が英国軍に暗号解読のために入隊する面接へ。
こういった感じで3つの時代が前後しながら
物語は進んでいくんですが、この少しのシーンで、
彼の屁理屈こね太郎な側面が全開。
しかも、それが史上最高の数学者なんだから、
同じ屁理屈こね太郎としてたまんない。
そんな彼なので仕事が始まっても周囲と上手くいかない。
仕事論としてオモシロくて、
使えないヤツのクビは遠慮なく切って、
使えるやつだけで進めようとする方法を最初に選択する。
その強権政治で実務レベルは上がるけれど、
トータルで見たときに仕事は上手くいかない。
そんな行き詰まった彼の転機となるのが、
キーラ・ナイトレイ演じるジョン・クラークという数学者。
優秀な彼女から1人での限界性を指摘されたことで、
チューリングは周囲と協力して仕事を進めようとする。
この仲良くなろうとする姿がめちゃチャーミングで最高!
(リンゴっていうのと、ジョークを話した後の周囲の顔!)
あとジョンの存在によって、
職場での女性の地位の問題がフォーカスされるのもポイント。
皆で協力しながら何とか解読しようとするものの、
なかなか進まなくて軍に中止させられそうになる。
そこで彼を助けるのが仲間の存在って言うシーンは、
グッときたし、解読に至るキッカケが仲間との談笑というのも
良いなーと思いました。(史実がどうなのかはさておき)
解読には非常に大きなマシーンを使っています。
それにたくさんのダイヤルが付いていて、
ガチャガチャ回っているのだけでも圧巻なんだけど、
解読の瞬間にぴたっと止まる。
「え、もしかして上手くいったんちゃう…?」
そして解読したメッセージをエニグマに打ち込んで、
解読できた瞬間の高揚感たるや!
これでドイツ軍を破り、平和が訪れるかと思いきや、
そんなに単純な話ではないんですなー
暗号解読したことがバレてはならない訳です。
つまり、すべての攻撃に対して反撃できてしまうとダメ。
ある程度の犠牲を伴いながら、
ここぞ!というときだけ裏をかかなきゃいけない。
「感情ではなく理性で動かなければならない」
というチューリングのセリフが印象的で、
残酷かもしれないけど真実なのかもしれません。
そして本作でもう1つのポイントが
チューリング自身が同性愛者であるということ。
当時のイギリスでは同性愛者であるだけで、
わいせつ罪として捕まるような時代。
そんなことになっていたなんて知らなかったし、
彼の同性愛のきっかけとなる子どもの頃のシーン
いじめられっ子だったチューリングが唯一、
心から仲良くなることのできた親友との関係は
見ていて微笑ましい一方で残酷な結末が待っています。
チューリングは戦後、同性愛者であることを理由に
警察に捕まってしまいます。
牢屋に入るか、ホルモン投与かの2択で
彼は自分の研究を優先しホルモン投与を選択する。
こんな制度が平気で戦後にも存在していたことに
驚いたんですが、さらに辛いのはラストシーン。
戦後の彼に残っていたのは研究のみで、
虚無感/孤独に苛まれているのが辛かった…
変化を許容しない社会が生む悲劇。
最後は皆でエニグマ解読で使った書類や機械を
燃やす打ち上げシーンとともに史実がテロップで流れる。
「自分が自分であることを誇る」マインドが
刺激された素晴らしい作品でございました。

2015年3月14日土曜日

ソロモンの偽証 前篇・事件



宮部みゆき原作。
予告編見てオモシロそーと思い見てみました。
これが久々のハードコアな邦画で素晴らしかった!
監督は成島出という人で八日目の蝉は見てて、
同じサスペンスなんですが、何倍も進化してると思います。
原作がミステリーなので犯人は誰なのか?
そもそも犯人がいるのか?という話ではあります。
しかし!そんなことはどうでもよい!
と言えるくらい俳優陣のパワーを含めて、
映像の魅力が炸裂しまくり。
ほとんどの映画が原作ありきの昨今、
やっぱこのぐらいパンチ効いてないと
映画化する意味なんてないなーとも思いました。

お話の構成としては尾野真知子演じる女性教師が
母校に赴任してきて、校長に対して
彼女が中学生の頃に体験したことを語るという回顧形式。
1990年のクリスマスイブにある男子生徒の遺体が発見され、
一旦は自殺として片付けられるんですが、
犯人を指摘する怪文書が出回り他殺の線が浮上。
しかし、その怪文書も真偽が怪しいと扱われる中で、
中学生達が自ら何が真実なのか?を突き詰めるために、
彼らだけによる裁判を開催する…という話です。
冒頭の死体発見シーンからillなバイブス全開で、
雪の中から顔が出てきて、それを上から押さえて
タイトルどーん!イヤな気配たっぷりで最高。
(タイトルバックがダサイのはご愛嬌)
自殺と結論づけるまでの捜査と、
中学生たちのキャラ紹介が前半に展開されるんですが、
1990年という舞台設定もあり画面が荒々しい。
それが描写のハードさとマッチしていて素晴らしい。
これだけでも映画館で見る価値があります。
ハードさの象徴となるのが不良グループによるイジメ。
バイオレンス度合いも然ることながら、
男が女の子に躊躇なく暴力を振るう陰惨さよ…
こんだけbig badgetでも、ここまでやれるんじゃん!
とグッと高まりましたね〜
主人公の女の子は学級委員を担うような、
いわゆる模範的な生徒なんですが、
それゆえのギャップに苦しむ姿が痛々しい。
殺された少年との対話シーンは息をのみました。
(彼女の涙も印象的でしたね〜)
本作の良さを担保するのが俳優陣の演技。
とくに子役陣はほとんど見たことない人ばかりだけど、
キャラの立ち具合が抜群でした。
何年後かには彼女ら/彼らが日本の映画を担うとすれば、
こんなに楽しみなことはありません。
もちろん大人側も配役ばっちり。
特に永作博美が最高最高過ぎた!
出てる時間は短いけれど強烈なインパクト!
冷たい熱帯魚を彷彿とさせる、
クソまずそうなご飯描写が雄弁に彼女を物語っている。
しかも、子どもがニキビで苦しんでいて、
「野菜中心にしてって言ってるじゃない!」
というセリフはオモシロかったです。
中学生が自ら裁判を行うという設定からも分かるように、
大人が振りかざす論理が正解なのか?というテーマ。
自我が萌芽する瞬間を丁寧に捉えてると思います。
決定的なのが先生と文集の内容で揉めるシーン。
「そんなキレイごとはもうたくさんです!」
このセリフが持つ意味は大人が考えないといけない。
ラストの終わり方が超好きで、
横からのショットで永作博美がインサートしてきて、
「うおー久々に震えるレベルきたっ!」と思いました。
後篇は来月初めなので今からとても楽しみ〜

2015年3月8日日曜日

チェイシング・エイミー



主演がベン・アフレックでこのタイトル。
ゴーン・ガールを思い出さずにはいられない訳ですが、
こちらも恋愛に対する考察に優れた楽しい映画でした。
主人公は2人の漫画家。
ベン・アフレックがある女の子に恋をするんですが、
その女の子はレズビアンで…っていう話。
前半はその問題を前にしながらも、
どうにかして彼女を振り向かせようと頑張る。
けれど、後半にかけて彼女の過去が明らかになり、
実はヤ○マンだったことが発覚。
それまで「ベストパートナーを見つけた!」
と心底惚れ込んでいたのに、
彼はその事実に耐えきれず彼女と距離を置くようになる。
人のことを好きになるのは見た目だったり、
性格だったりが最初だと思うんですけど、
付き合いが深くなるとそれ以上のことを知ろうとするし、
その結果知りたくもない過去のことも分かったり。
(日本だと家柄等も未だに根強いんじゃないでしょうか?)
僕はそんなことはbullshitだと思いますが、
そうとはならない局面も多い訳で…
あとポイントなのが、
この彼女の名前がエイミーじゃないってところ。
過去にいた素晴らしい彼女を捨ててしまったけど、
それを後悔しながら幻影を追い続けることを
"Chasing Amy"と劇中で表現しているんですなー
男性にはぶっ刺さる間違い無しなので是非!

ロープ



ヒッチコック監督作品。
時間を見つけて少しずつ見ています。
いつかトリュフォーの本を買うために…
80分でめちゃくちゃタイトなサスペンスなんですが、
ラストのハラハラ具合はさすがの手腕としか言いようが無い。
2人の男が友人を殺し、それをチェストに隠した中で、
パーティーを行うというキ○チガイ設定なんだけど、
スリルを味わいたいという人間の本能的な欲求といいますか。
殺人犯が再び現場に戻る心理はこれなのかなー
と思ったりしました。
ワンショットが多くて、場面をスイッチするのに、
背中や物にアップにして画面を真っ黒にしてるのかー
と見ながら思っていたら全編ワンショットで
繋いでいるとのことでした。
ラストに繰り広げられる、
人の優劣の話は今でも通用する真理。
どの作品を見てもその偉大さを痛感する次第です。

シェフ 三ツ星フードトラック始めました



ジョン・ファブロー監督作品。
彼と言えばアイアンマンシリーズで
一躍有名監督となった訳ですが、
今回は比較的低予算の映画となります。
(アイアンマン3の監督を断って作成)
本作はフード映画として出てくる料理の数々が
とても美味しそうで最高なんですが、
それに加えて親子再生物語でもあるんだから最高最高!
友人のMatsumaeとも以前話していたんですが、
食べ物が美味しそうに見える描写はイイよね!と。
それだけで場が成立するし、
見ていて楽しくなるってことを改めて感じました。
主人公は監督自身が演じるLAの有名レストランのシェフ。
結婚して10歳の息子がいるんだけど、
すでに離婚していて息子とは別居、
さらにシェフとして毎日忙しくしているため、
息子と触れ合える時間は少ない。
彼のレストランに有名ブロガーが来るということで、
ファブローは張り切って新メニューで挑もうとするんだけど、
レストランのオーナーと衝突。
クビになった彼が純粋な気持ちで料理を作るために、
フードトラックを始めて…というお話。
冒頭シンプルに白黒でCHEFというタイトルが出て、
そこからはファブローが厨房でひたすら料理をするシーンが
始まるんですが、その包丁さばきに驚愕!
本作用に修行したんだろうけど、
それにしても凄まじいなーと思いつつ、
料理のシズル感に心を奪われていました。
(あと右腕の包丁のタトゥーがイカす!)
美味しそうな料理を準備するんだけど、
オーナーからはいつも通りのメニューを出せと言われてしまう。
(Rolling StonesのSatisfactionの話は一理あり)
結局ブロガーには酷評されてしまって、
それにファブローが激怒!
このシーンの醜悪さは最高で、
批評家に対するクリエイター側の叫びがよく分かる。
またレストランをクビになるところは、
常に誰かのコントロール下に置かれるという
サラリーマンの辛い部分を描いている。
この辺はファブローがハリウッド大作を作ってきて
感じたことでもあるのだろうなと。
本作ではTwitterが大きくフォーカスされていて、
ファブローが全然無知で息子が詳しいという設定。
リプライがオープンだったり、ハッシュタグ、ジオタグ等、
その特性を生かして物語が構成されているのがFRESH
また、息子が父親に教えるという構図があることで、
後半の展開に生きてくる作りになっていました。
あと全編に渡って音楽が素晴らしくて、
FUNKYチューンのつるべ打ち!
HIPHOPの元ネタ多めなのもアガるし、
LA→マイアミ→ニューオリンズ→テキサスと
それぞれの場所の音楽が鳴っているのが良かったです。
Sexual Healingの合唱シーンは息子のリアクション含め最高!
フードトラックを始めることにするんですが、
そのトラック提供者がロバート・ダウニーJr
彼はファブローの元妻の元旦那という複雑な関係なんですが、
このシーンのくだらなさたるや。
会話が一切通じなくて自分本位ですべて話す人って
マジで面倒!ってことがよく分かるシーンでした。
フードトラックを始めるあたりからは親子物語へ。
最初にボロボロのトラックを綺麗にするんですが、
息子は命令されてばっかりなことにすねてしまう。
彼が求めているのはリスペクトを伴った親子関係で、
いつまでも子ども扱いすんじゃねーよ!っていう話。
ここからファブローも息子を一人の男として
向き合うようになります。
(それがよく分かって好きだったのが
息子に包丁を買い与えるシーン)
さらに実際にフードトラックとして稼働するようになってからも、
ファブローが息子を1人の従業員として扱う姿勢が好きでした。
また店の宣伝を息子がSNSをフル活用して、
父親は料理、息子は宣伝というお互いの得意分野を
生かしている姿も素晴らしいなーと思いました。
ファブロー親子と元同僚の3人で
キューバンサンドを売りさばきながらアメリカ横断。
映画見たり、遊園地に行ったりと父親と息子の関係が
非日常にしかないことに息子は不満を持ってい訳ですが、
旅で寝食を共にすることで父親との関係は日常へと変わる。
2人が楽しそうにしているのを見ると心がほんわかしました。
(コーンスターチを金○マにぶっかけるくだりが最高)
旅が終わったときに息子が作った
1秒ムービーのくだりで号泣メーン!
そこからの流れは多幸感全開で素晴らしかったな〜
万人にオススメできるフード映画でございますので是非!