2014年3月16日日曜日

それでも夜は明ける



アカデミーで作品賞を受賞したことで、話題の本作。
12 years a Slaveっていう原題で、町山さんが押していたので、
予告編見たときに違うやつかな〜とか思ったり。
(まぎらわしいから、もう原題ママにして欲しい…)
12年間の奴隷生活の映画なんやろうなとタイトルを見て、
ある程度の覚悟はしてけれど、
その想像を超えた超絶な映画体験でした。
黒人問題を取り上げたものだと、
最近見た「大統領の執事の涙」も同系統ですが、
あれも相当でしたが、救われてる部分が多分にありましたが、
本作は相当厳しい姿勢で攻め倒しています。
しんどかったな〜と思いましたが、
それは映画に存分に没入した証拠。素晴らしい映画でした。

ソロモン・ノーサップという黒人が主人公で、

NYで自由黒人のバイオリストとして、家族と幸せに暮らしていた。
ある日、ワシントンでのサーカスに演奏しに行った帰りに、
仲間と食事し、泥酔してしまう。
そして、目が覚めると手足に鎖がつけられ、奴隷になっている…
そこから12年間の奴隷生活の物語です。
(実話ベースで、原作が1800年代というのに驚愕)
はじめはカンバーバッジに買われて、奴隷生活がスタート。
この人は人格者で、能力のあるソロモンを重用する。
それに対して、ジェラシー全開なのが、
ポール・ダノ演じる白人大工。
何とか因縁つけて、ソロモンしばこうとするものの、
ソロモンは仕返しで、しばき返してしまう。
その結果、首を吊られて復讐されてしまいます。
このシーンのつま先立ちのギリギリさ。
そして、ソロモンが首吊られてるんだけど、
周りの人間がまるで何も無いかのごとく、
日常を生きているのがロングショットで残酷に映し出される。
あの居心地の悪さはホント辛かったな〜
この映画で初めて知ったんですが、奴隷は手形のような扱いで、
金が無くなったら、仕える主人が変わる。
そして、カンバーバッジ→ファスベンダーへと、
チェンジしてからが本当の地獄のスタート。
ファスベンダーは奴隷のことを家畜程度にしか見ていない。
ちょっとでも自分が気に入らなかったら、
容赦がなくムチ打ちし倒す。
ソロモンはその利口さが仇となり、目を付けられてしまう。
それと同じく目を付けられるのが、パッツィーという女の子。
(彼女はアカデミー助演女優賞を受賞)
この2人のいびられ方がホンマにエゲつなかった、、、
とくにムチの暴力性。あの背中の傷が語る壮絶さよ…
漫画バキでも語られてましたが、銃殺された方がマシかもと
見ている間に何度も思わされました。
ファスベンダーは綿花畑を営んでいる訳だけど、
綿の収穫キロ数で、ムチ打ちの有無が決まる。
こんな頃からノルマ制度始まってんの?と驚きました。
(いや、むしろこれがルーツなのか?)
なにしろファスベンダーが本当に狂気の沙汰!
アカデミー蛮行男優賞あれば、間違いなく彼でしょう。
ソロモン演じたチュイテル・エジオフォーの超体当たり演技も秀逸。
顔がドアップになって、こちらを見るシーンの顔面力よ!
あと、仲間の死を追悼して「Roll Jordan Roll」を
歌うシーンも、徐々に歌っていくところに胸を打たれました。
厳しい描写を立て続けに見ると、
人間って怖いし、モロい生き物やなーと痛感しました。
誰かを排他的に扱うことでしか、気持ちよくなれない思考回路。
この辺は最近問題になっているレイシズムにも繋がる話かと。
右肩下がりに状況はどんどん悪くなっていくから、
最後のカタルシスは少なめ。
前半に似たような状況が重しになっていて、
なにも解決していないことがよく分かる作り。
あとブラピがね〜本作の製作に携わってて、
この作品を世に産み出していた偉さは賞賛すべきなんですが、
あの役目はちょっとズルいと思います。
(ファスベンダーとブラピは入れ替えで良かった)
自分の手を汚さないという点で考えると、
ソロモンにムチ打ちさせたのと
本質的に変わらんやんって思ってしまいました。
いかんせん、勉強になる映画でしたし、
これきっかけに関連本読み進めようかなと思わされました。

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