2014年3月29日土曜日

フルートベール駅で



予告編を映画館で見て、かなり気になっていた本作。
昨年、トレイボーン・マーティンという黒人青年が
白人自警団のジョージ・ジマーマンに
殺された事件も記憶に新しい訳ですが、
インターネットで探すと、
そこそこの頻度で似たような事件がアメリカで起こっている。
そして、どれもが黒人が被害者で、白人が加害者。
「それでも夜は明ける」で描かれていた奴隷制から、
脈々と続く人種差別は現在進行形の問題なのか…
と思わされた次第でございます。
主人公はオスカー・グラントという黒人青年。
奥さんと娘が1人いる一般的な家庭。
ただし、オスカーは前科一犯。
出所後スーパーで働いていたものの、
遅刻でクビになってしまい、無職状態。
そんな彼が1月1日に殺されてしまう
前日からの様子を描いた実話ベースの物語。
いきなり冒頭で、電車の乗客が撮影した
殺されるまでの実際の映像が流されて、
どういった事態が起こったかがボンヤリと分かる。
そこからは前日の彼の行動を通じて、
人間性や置かれている状況が明らかになってくる。
ここで重要なのが、彼は決して特別な人間ではなく、
ごくごく普通の青年であること。
家族、仲間を大切にし、前科一犯であるものの、
なんとか今の状況を打開しようと必死にもがいている。
イイ人なだけではなく、彼の短所も描かれていて、
結局はそれが悲劇を生むことになってしまう。
これらのバランスの良さ、なにげなさが
迎える結末の重みを増幅させていく感じ。
オスカーを演じているのが、マイケル・B・ジョーダン。
(クロニクルでイケテル男子を演じていた)
この彼の演技も本当に素晴らしくて。
スーパーでのくだりや、海を眺めていたときの
フォトジェニックさといい。
本来であれば、退屈になりやすい単純な日常描写なんだけど、
彼の役者パワーで、興味の持続が保てました。
そして、1月1日。彼は駅のホームで警察官に撃たれて殺される。
時間にしたら、15分くらいのシーンなんですが、
前半〜中盤のユルい描写と異なり、
ここでの緊迫感は本当に凄まじい!
冒頭で結末自体は知っていたとしても、
この状況で撃たれるの?っていう、
信じられない思いが頭の中をよぎり続ける。
そして、最悪の結果を迎え、映画は終わる。。。
死は突然訪れる者で、ドラマティックでもなんでもない。
引き金をひけば、簡単に亡くなってしまう命。
ドキュメンタリーにしちゃうと決して味わえない
「追体験性」が存分にあって、
映画館で見てよかったなと思いました。

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