2014年3月8日土曜日

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅



アレクサンダー・ペイン監督最新作。
ファミリーツリーやサイドウェイなど大好きな作品を
産み落としてきた巨匠です。
正直なところ、過去作に比べると、
面白みに欠けるんだけど、見終わったあとの
清々しさや多幸感は過去作に通じるものがありました。
面白みに欠けると言いましたが、見るタイミングの問題ですね。
今の段階(26歳)で見て、最高!とはなりにくくて。
40~70歳のときに見たら響き方、全く違うやろなーと思いました。

主人公はウディというおじいさん。
彼はキャッチ広告の「100万ドル当たりました!」を真に受けて、
それを換金しようと街中を徘徊しまくる。
その換金できる場所がリンカーンという場所で、
彼の住んでいるところからは超遠い。
息子や奥さんは嘘と分かっているから、必死になだめるんだけど、
頑固親父で、全く聞く耳を持たない。
それに根負けした息子がリンカーンまで、
車で一緒に行くというロードムービーです。
まず目につくのが全編モノクロという点です。
どういう意図があったかは定かではないんだけど、
なめらかなモノクロって感じで、
物語自体の低体温性とはマッチしてました。
(前半は眠たくなるくらいではあった…)
ウディはボケてるか、ボケてないか、ギリギリのライン。
口下手で頑固な典型的な昔ながらのおじいさん。
息子が換金場所に着くまでのあいだに、
ウディの故郷があり、そこに立ち寄ることに。
物語の半分くらいがこの街での話なんですが、
ここのシークエンスが一番好きでした。
特にウディの奥さんがあとから親父&息子に合流してからの
物語全体にアクセルかかる感じが良かった。
ホーソンという田舎町で、若者なんてほとんどいないから、
登場人物はジジババばっかりなんですが、
全員の顔の濃さによるキャラ立ちがハンパじゃない。
ウディの金の話が街中の噂になるんだけど、
そのときのジジババのそれぞれのスタンスが興味深くて、
こういう非日常が訪れたときに現れる
人間の本質をファニーに楽しませてくれます。
一番顕著なのが、親戚一同が会する食事会。
まず、大量のおじいさんの顔をロングショットで押さえつつ、
金目当てに寄ってくる親戚に奥さんが放つ言葉の痛快さ。
前述したとおり、ウディは背中で語るタイプの父親なので、
息子はウディの過去のことなど、これまで一切知らなかった。
けれど、故郷を訪れたことで、親父や母親の過去のことを
人づてに知るというね。この過程もおもしろくて、
母親のサセ子疑惑は笑いましたw
後半は父-息子関係にフォーカスしていき、
息子が父のために一肌も二肌も脱ぐ。
あのトラック買ってからのラストまでの10分間の多幸感たるや!

この話では、おじいさんの要求をデフォルメした形で、
描いていますが、親の無理難題に付き合うというのは、
人生において誰もが抱えうる話でもある訳です。
それを独特の視点や暖かみを加えて描いてきたのは、
ペイン監督らしいし、人生の予習として素晴らしい映画体験でした。

※ちなみに見てるときに、劇中のウディと同じ年齢ぐらいの
おじいさんがトイレにいくため、
ヨボヨボとスクリーンを横切ったときが最高瞬間風速!

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