2015年5月8日金曜日

Mommy



グサヴィエ・ドランの最新作を見ない訳には行かない!
ということで見てきました。
昨年のトム・アット・ザ・ファームも素晴らしかったんですが、
本作もまたやってくれた!と感動しきりでした。
私はロランスで見せたMVのような画面の魅力、
トム〜で見せたヒリヒリしたストーリーテリング、
この2つの合わせ技といったところでしょうか。
センスがイイという表現は本作のような作品にこそあてはまる。
これでまだ20代だから末恐ろしくもあり、
一体これからどんな作品を見せてくれるんだろうと。
リアルタイムで追えることの喜びをひたすら噛み締める次第です。
主人公はある母子家庭で、
息子のスティーブはADHDを患っています。
(ADHD:注意欠陥・多動性障害)
入院先の施設で放火を行ってしまい、
そこから追い出されて母のもとへ帰ってくる。
母親のことを大切に思っているんだけど、
それが上手くいかず2人の生活は困窮を極める。
向いに住む吃音症を抱えた元教師の女性と
交流が始まって事態は好転するものの…という話。
まず度肝抜かれるのは1:1という画面のアスペクト比。
大きなスクリーンの真ん中に画面がポツーン。
この抑圧されたとも言える画面構成が、
2人の立ちゆかない生活を象徴していると言えます。
さらに冒頭スティーブが施設で起こした問題が
放火で人に大やけどを追わせるという
超ハードなエピソードを置くことで、
スティーブの潜在的な危険性を匂わせる冒頭が印象的。
タイトル通り母親との関係がメインテーマになるんですが、
スティーブの人懐っこさと暴力の2面性に
グイグイ引きつけられます。
(ババア、ノックしろ!のくだり入ってて笑った。)
良かれと思ってスティーブが行うことが、
母にとって重荷になってしまう。
2人オンリーの関係だと破綻してしまうから、
第三者の視点が必要になることが
よく分かる描き方になっています。
DVやネグレクト等の家庭内問題における、
家族以外のバッファーの必要性は
Session22で荻上チキさんがいつも言っている部分と
重なるなーと思いました。
前述した通り、その役目を吃音症を抱える女性が担う。
大人しそうに見えた彼女の最初のカマシの迫力たるや!
彼女がスティーブを子守しつつ、勉強を教えることで、
母親が仕事に専念できるようになり、生活がうまく回り始めます。
ここでoasisのwonderlandがかかって、
3人の買い物帰りのシーンがあるんですが、
恐ろしいほどにかっこ良くて美しい!
しかも、ここでスクリーンが展開する演出の解放感たるや!
意味もなくボロボロと泣いてしまいました…
このシーンが最大の見どころだと思いますが、
他にもスティーブがカートを振り回すシーンや、
1人でロングボードで街を徘徊するシーン等、
何気ない日常を美しく切り取るセンスに脱帽しっぱなし。
後半はスティーブが起こした事件に対する訴訟が問題となります。
母に好意を持つ弁護士が助けてくれそうになるんですが、
彼に対するスティーブの態度と、
カラオケでの爆キレシーンが好きでしたねー
母親を取られるかもしれないというジェラスの気持ちと、
自分のことをバカにするやつらがムカつく気持ちが
綯交ぜとなり炸裂するのを見事に描いています。
(自意識が煮詰まっていく感じ)
そしてスクリーンが再度展開するシーンがあるんですが、
「えっ、マジ最高のエンディングやん」と期待させといて、
再び戻る現実のエゲつなさ。
臭いものには蓋しちゃえという考えで嫌だなーと思うけど、
一体誰が母のことを攻められようか、
というアンビバレントな気持ちになりました。
そしてラスト手前での母と先生の対峙シーンが
またヒリヒリもので「希望」という言葉が
あんなに重いトーンで響いたことはなかったです。
さらに圧巻なのはラスト。
拘束衣を着たスティーブの母へのTELからの~
Lana Del RayのBorn To Dieが流れて疾走するスティーブ。
母への愛、自由への渇望という彼のすべての気持ちが
凝縮されていると思いました。
DVDリリース済みですが、映像のカッコよさ、美しさを
体験するためにも劇場で見ることをオススメします!

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