上田岳弘最新作。
新刊出たら必ず購入している作家の1人で、
本作も楽しみにしていました。
結果的に2回読んだんだけど、
今回も上田節健在!といった内容でオモシロかったです。
上田さんの小説の何が好きかといえば、
SFと文学のバランスの良さです。
完全にSFという訳ではなく、
SFのモチーフを使った純文学とでも言えばいいのかな?
SFの設定が近年のトレンドを汲んでいるので、
突拍子がない様に見える中にも
「もしかして近い将来あるのかも…?」
と思わせられてしまう。
表題作がメインに据えられていて、
スピンオフ的な短編が2作収められています。
以前から集合知の考え方を作品で提示していて、
それを「肉の海」という言葉で表現していましたが、
本作でも大筋としてズレはない。
ただし、本作は過去の作品に比べて
かなり卑近な物語になっていました。
僕がオモシロいと思ったのは、
人間の個性をパターンの組み合わせと考えるところ。
これだけ演算技術が高まった世界で、
なおかつAIが本格的に活用される時代において、
自分という存在は本当に唯一無二?
もうすでに存在しているパターンの
組み合わせの1つにしか過ぎないのでは?という問い。
また、自分は下界で生きる器でしかなく、
本当の自我は別のところにあるっていう、
マトリックスに代表される設定も、
「小窓」から世界を覗くという表現になっているのが
「肉の海」と同様の感覚でオモシロい。
ハイテクな話って横文字使って
かっこ良く言いたい願望ってあると思うんですけど、
それに冷や水ぶっかけてるみたい。
あとFacebookを使った展開がフレッシュかつ、
確かに!と思うところ山の如し。
全体に厭世観が漂っているものの、
ラストは性→生へとランディングしていくので
読後は比較的穏やかな気持ちになりました。
次作も必ず買います。
0 件のコメント:
コメントを投稿