地球にちりばめられて/多和田葉子 |
Kindleのセールで買って積んでおいたのを読んだ。著者なりのディアスポラ物語という感じでオモシロかった。毎回たくさん気づきを与えてくれる作家で、ドイツ在住だからなのか日本に対して客観的な視点をスイングしまくりの日本語で提供しているところが唯一無二だなと思う。
物語内で明示されないものの日本が何らかの理由でなくなっておりヨーロッパ圏で難民として生きていく状況を描いている。その中で言語、出身国がバラバラの登場人物が奇妙な関係を形成していく過程がオモシロかった。日本だと移民が少ない状況なので、出身国が日本であれば十中八九、母語は日本語になるものの、移民の受け入れが進んでいるヨーロッパ圏では言語、出身国は必ずしも一致しない。事実としては知っているけど小説で読むと身近さがグッと上がった。
登場人物が誰もが曲者で全員揃うまでは正直掴みどころがなかったけど、揃ったあたりからは会話劇としてのオモシロさが加速度的に増していき終盤はかなり読みやすくなった。あとがきにもあったけど演劇を見ているかのよう。
毎回のごとく直喩/隠喩の使い手としてのセンスの良さが炸裂しまくり。一番好きだったのはインターネットにまつわる以下のライン。著者は世代が違えば、とんでもないラッパーになっていたかもしれないと読むたびに思う。
今日はディスプレイの放つ光を思い出しただけで嫌悪感を覚えた。人を無理矢理、明るい舞台に引き出すようなあの光。スポットライトがまぶしくて何も見えない華やかな舞台の上で僕は虚構のスターになる。
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