日本と韓国のヒップホップの融合を志す『Go Aheadz』が、今回はJUSTHISを日本に招聘してくれたので見に行ってきた。私が韓国ヒップホップにのめり込むきっかけはSMTM9が大きいのだが、そこで知ったJUSTHISは最も衝撃を受けたラッパーである。彼のことを知らない人は、まずこのYouTubeを見てもらいたい。
この圧倒的なラップスキルはアメリカを含めても、ヒップホップという音楽の中でも間違いなくトップ・オブ・トップと言える。画面越しでもライブが素晴らしいことは重々わかっていたが、その桁外れのラップ力は生で見ると感動もひとしお。生涯忘れられないライブの一つになった。
最新アルバム『LIT』のタイトル曲で登場したJUSTHIS。口から音源そのままのラップが飛び出してくることに心底驚いた。これまで色んなラッパーのライブを見てきたが、段違いのレベルだ。そのラップマスターっぷりを、ステージングからヒシヒシと感じた。ライブは『LIT』、『2 MANY HOMES 4 1 KID』、ヒットソング&客演パートという3つのパートで構成されいた。
音像的には、最新の彼のスタイルを思う存分堪能できる『LIT』の曲たちがかっこよかった。特に「Gimmie」は彼のオーセンティックなラップのスタイルと、シンギングスタイルの両方を堪能できるアルバム内でもお気に入りの曲。生で聞くことができて嬉しかった。欲をいえば、Hit-Boy作の「Wrap
It Up」が聞けなかったことが残念ではあった。
今回の公演の見所としては『2 MANY HOMES 4 1
KID』パートだろう。リリースから10周年を迎え、韓国では生バンドによる記念ライブも予定されているらしい。そんなタイミングもあいまって、「Motherfucker」のイントロが流れた瞬間にぶち上がり。Edie
Kendricks「Intimate
friends」使いの極メロウなビートの上で歌い、スピットするJUSTHISを見ていると「本当に来て良かった…!」という思いが去来した。他にも同作からは「Motherfucker
2」「Nowon」なども披露された。
トラップというよりオーセンティックな曲が多く、ライブのスタイルもコール&レスポンス多めのオールドスクールマナーが印象的だった。ウータンのキャップをかぶってフットボールシャツを着たバックDJは「Motherfucker 2」でスクラッチもかましていた。こうしたスタイルでJUSTHISがライブをしていることに、ヒップホップカルチャーへのロイヤリティを感じた。
驚いたのは曲間のMCがほぼ日本語だったこと。英語が流暢なことは楽曲やYouTubeのドキュメンタリーから理解していたものの、日本語がこんなにしゃべれることに驚愕…ラップというより言語の達人なのかもしれない。そんな彼から見た日本に関するMCの内容も興味深かった。ゼロカフェインのコーラに感動したというミクロな話から、ライブの音響のクリアさに驚いたという話まで、彼ならではのパースペクティブは逐一面白い。「Nowon」を披露する前には、『風の谷のナウシカ』が自分を表現、アーティストの道に導いたというエピソードまで繰り出されて、彼との繋がりを感じて嬉しい気持ちになった日本のファンは私だけではないはず。
最後は盛り上げパートとして自身のアルバム外からヒット曲やクラシックを投下。YUMDDAとの「John Cena」、直近のSMTM12でのゲスト参加したZene the zillla「Mr.ROCKLEE」で盛り上げにかかり、ラストは「Indigo」「Gone」で大団円。両方とも大好きな曲だが、特に「Indigo」は韓国ヒップホップを好きになってから繰り返し聞いてきた曲だったので感無量だった。これが最後になることなく、もっとカジュアルに来日して定期的にライブを見せて欲しい。
とここまでJUSTHISのことを熱っぽく語ってきたが、この日は日本のラッパーも出演しており、普段なかなか見ることのできないロングセットのライブを楽しめたのもよかった。
トップバッターはSonsi。RAPSTAR2025で見つかった原石が、もうこのレベルのステージに立っていることは驚くべきことである。ライブは今年リリースされたアルバム『ニセモノ』とRAPSTARの曲で構成されており、大いに盛り上がっていた。
とはいえキャリア初期でまだライブ慣れしてないステージングだったことは否めない。この百戦錬磨のメンツに並べられること自体、かわいそうではある。ただ驚いたのは、ガイドボーカルなしでラップしていたこと。「BBA Spice」でそのことに気づいたのだが、若いうちから場数をこなし、鍛錬していこうという意思を感じた。
続いてはBenjazzy。解散後、アクティブにリリースを重ねる彼ならではのラップ圧力満タンのステージングはかっこよかった。「NOFFSEASON」でド派手にかましたあと、まさかの「Cyberpunk」でぶち上がり。2年前に同じZepp HanedaでJJJのみの「Cyberpunk」を聞いたので、個人的には感慨深いものがあった。さらにBAD HOP時代の曲である「Shoot My Shot」も投下されて驚いた。最近若干ドリルは下火になりつつあるが、Benjazyyのドリル曲のライブでの破壊力は並外れたものがある。どこかでまたドリルがリバイバルするはずなので、そのタイミングでドリルに特化した作品は是非聞かせて欲しい。
Bonberoとの最新コラボアルバムから「R2R」、その大元である「B2B」、「Fashion Week」の2ステップメドレーはDJ MIXのような構成で素晴らしかった。これまでの作品の流れがわかりつつ、やっぱりこの手の曲はストリーミングじゃなくて、ライブで全身で聞くことに意味があることを再認識した。
ほぼMC無しでひたすらラップしていたので、数少ないMCのシーンはいずれも印象的だった。一つはヤングガンに向けた「夢あきらめんな」という熱いメッセージ、もう一つはJUSTHISを意識した曲振り。後者はこの日の出演者の中で唯一JUSTHISに触れた場面で、「今日は韓国からヤバいラッパーがきてるんで、俺も負けてられないから、3分でわからせます」と言って披露された「3MINITS」がバチバチにキマっていてかっこよかった。Benjazzyは誰もやっていないラップの変態領域(褒め言葉)に音源の中でトライしているからこそ、ライブでは追いついていない場面がたまにあるが、この曲は有言実行していて誇らしかった。
JUSTHISを挟んでのTiji Jojoはとにかくその人気に驚いた。キャッチーなメロディと一言一句聞き取れるラップ巧者っぷりはステージでも健在。ハイプマンとしてサイドMCをつけていたのは意外で、メロウなTiji Jojoだけだと不足しがちなラウドさをフォローしていて理にはかなっていた。少し涼しくなってきたものの、サマーソングパートのメロウネスはたまらないものがあった。特にSTUTS & ZOT on the WAVEによる「Perfect Blue」が聞けてアガった。
個人的には今年リリースされた『LONG LIVE LOUD』が好きで「Do It Right Now」「Talk To Me」あたりのアンセム曲は大きな会場に映えしていたし、ロングセットだからこそしっとりめの「Misfit」「Nightmare」も披露されて、ライブで見ることができてよかった。
が、一番嬉しかったのは「White T-Shirt」を聞けたことだった。この曲も10周年で、時の流れが信じられない。BAD HOPの曲の中でも等身大なリリックがお気に入りで、まさか2026年の今、聞けるとは思いもしなかった。ただ、もうBAD HOPのファンも代替わりしていて、その後に披露されていた「White T-Shirt 2」の方が盛り上がっていて加齢を感じる。そして2曲続けて聞いたことで、同じトラップでも10年かけてハイハットの量など含めてグルーヴの質が大きく変わっていることにも気づかされたのだった。
今回はJUSTHISを招聘してくれただけで本当にありがたかった。ただ、正直ブッキングの意図を汲み取るのは難しいラインナップであり、実際お客さんもそこまで多く入っていなかった。フェスが乱立する中で、単純に人気のあるラッパーを並べるだけではお客さんも集まりづらい状況になっている。だからこそ、もう少しコンテキストが見えるようなラインナップにしてこそ、本当の意味で日本と韓国のヒップホップが融合していくのではないだろうか。たとえば、Sonsiで集客したい気持ちは理解できるが、この日同じく若手のラッパーで呼ぶとすれば、間違いなくFisongだろう。
とはいえ、日本で韓国ヒップホップがK-POP的な受け止められ方をするなかで、こうしたイベントがあるからこそ、ヒップホップをカルチャーとして捉えたときの奥行きを伝えることができるはず。日本と韓国、それぞれのヒップホップが持つ文脈を接続しながら、こうした試みが末長く続いていってほしい。










