2014年8月30日土曜日

TOKYO TRIBE



かなり前から楽しみにしていた本作。公開初日に見てきましたYO!!
園子温監督がメガホンを取っていて、相当カオスな映画でした。
近年の作品のようなストーリーがしっかりしていて、
メッセージ性があってというものを期待して見に行くと、
大怪我」すると思います like BUDDHA BRAND
むしろ監督の初期フィルモグラフィーにある、
グシャグシャなんだけど、異様なPassionが伝わってくるのに近い。
ゆえにストーリー的なカタルシスはあまり無い代わりに、
瞬間最大風速が吹いたときの気持ちよさがある。
あとは日本語のラップがこんなに大々的にfeatureされた作品が、
超ビッグバジェットで見れたことの喜び。
愛憎を抱えながら日本語ラップを聞き続けてきた身からすると、
なんて夢があるんだろうと惚れ惚れ。
映画化するにあたって、役者を使い、
東京の街でロケするという手法ではなく、
本物の現役ラッパー使ってオープンセットの仮想空間で、
ラップミュージカルとして作るというのは、箱庭感があって超楽しい。
園子温監督の作品では素晴らしい新人が主役となるのは
ここ最近の流れですが、
今回もYOUNG DAIS、清野菜名という素晴らしい才能が見れます。
YOUNG DAISのスクリーンでの躍動っぷり、突き抜け感は
めちゃくちゃ気持ちいいし、かっこいい。
正直、作品もほとんど聞いたことなかったんですが、
ラップでの演技が本当に良かったな〜
役者陣のラップもEGOとSIMONがラップ指導に入っているので、
ノイズにならないレベルではあるんだけど、
それをYOUNG DAISのラップで補強するような構造になっていました。
(染谷君のラップはザワザワするけど、徐々に好きになりました。笑)
もう一人の主役である清野菜名は、パンチラ、おぱーいボロンに加え、
アクションがとんでもないなんて、最高やないか!って感じ。
敵役の鈴木亮平も素晴らしくて、肉体の作り込みもさることながら、
こいつの超くだらない見栄からTRIBE同士の抗争が始まるのとかも
アホっぽくて、最高だったなー
映画全体が極彩色で色どられていて、
なおかつずーっとビートが流れ続けているので、
HIPHOPがそこまで好きじゃない人は疲れるかもしれません。
前述したとおり、ポイントポイントではアガるシーン多くて、
窪塚君演じるンコイの部屋がホドロフスキー調だったり、
竹内力の過剰なまでのCrazyっぷりだったり。
(叶美香のおっぱいをもみしだき、人の指をしゃぶったりしてた)
ただねーお話運びがあまりにも雑やしませんか?と。
複数のTRIBEとWARUの戦いのはずが、ぐずぐず感が否めなくて。
もう少し交通整理して欲しかったなーと思います。
(ミュージカルとして考えれば、
そこは一番大事なポイントではないかもしれないんだけど)
ただ、そのぐずぐず感が本作のカオス感とはマッチしているので、
そういう意味では全部乗せStyleとして楽しめばよいかも。
現役バリバリのラッパーが出てるのも大きなポイントで、
しかも、キャスティングが今のシーンをしっかり押さえていて絶妙。
ラップのStyle Warsとしてミュージカルになっているんだから、
好きな人間にとってはたまらないものがあります。
ラストシーンでのサイファーは感慨深くて泣いてしまった…
絶対映画館で浴びるように見た方が良いと思いますYO!!

STAND BY ME ドラえもん



話題作だし、タマフルで課題作品にもなったので見ました。(2Dです)
山崎貴監督の映画見るのは初めてで、
どんなもんかなーと期待0.2不安0.8で見に行ったら、
悪くないけど、好きとは言えないなぁって感じでした。
僕自身ドラえもんに対して、そこまで思い入れがなくて、
子どもの頃にふわーっと見てたぐらい。
このフラットな感覚で見て、「これは…」と思ったので、
理想のドラえもん像を持っている人ほど、
辛い気持ちになる可能性は高いような気がしています。
(逆にぴったりハマる人もいるのかもしれませんが…)
本作は原作漫画から複数のエピソードをピックアップし、
ドラえもんの始まりから終わりまでを描いている話です。
冒頭ビックリしたのが絵の精度。
子どもの頃に見てた平べったい映像が
生々しく立体的な映像になってる!と興奮しました。
エンドロールがアウトテイク集なのも含め、
トイストーリーを意識してるのは間違いない。
んで、ドラえもんの定番の型で、
様々な道具を使って、豊かな生活を享受する。
ここのくだりは3Dで見ときたかったなーと思いました。
んで道具を使って表面的にはのび太の学校生活は良くなるけど、
彼自身は何も成長しないという定番の形。
僕が本作に乗り切れなかったポイントは大きく3つなんですが、
1つ目が余りにものび太がダメ人間過ぎる点。
これはドラえもんという作品の魅力なのかもしれないんですが、
見ててイライラしてきたんですよねー笑
雪山のシーンも自分でなんとかしてるんだけど、
結局は他力本願じゃん!ってなるし、
ジャイアンとの殴り合いも、グッとくるんだけど、
そこまで頑張る理由が見えてこない。
これらに関連した2つ目が、
物語の半分くらいがしずかちゃんとの結婚にフォーカスしていること。
原作がそうだからと言われたら、「何も言えねぇ」なんですが、
小学生があそこまで結婚に固執する感じが飲み込み辛い。
あとジャイ子との結婚が嫌な未来という設定になってるんすけど、
外見以外の嫌な理由が特に説明されないところも、
そういう価値観を子どもが見るものに入れるのはヤダなーと。
3つ目は、これが山崎メソッドなのかもしれないけど、
道徳の教科書に出てきそうな内容を恥ずかしげもなく、
登場人物に言わせるところ。
そこに話の積み重ねやロジックがあってこそ、
人の心を打つと思うだけど、取ってつけたように放り込まれると、
急に冷めるのよねー特にしずかちゃんのお父さんの台詞とか、
「はっ?」と思いましたね。
あとドラえもんがのび太を幸せにしないと帰れなくて、
ネガ発言すると電気が流れる拷問スタイルは
本作が泣かせの拷問スタイルであることのメタファーかな?(白目)
ドラ泣きなんてできるかバカヤロー!と思いましたYO!!

2014年8月27日水曜日

Book (2014 July)


九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響

帯にもあるように、いとうせいこうさんのプッシュで気になってて、
タマフルでも紹介されたので、読みました。
関東大震災時に朝鮮人が井戸に毒を流してるというデマが流れ、
朝鮮人の方々が殺された。という話は教科書で読んだなー
という記憶があったんですが、そのレベルが想像を遥かに超えてました。
これまでジェノサイドはどこか他人事のように感じてたんですが、
此処日本でも起こった事実が様々な資料をベースに書かれています。
最近はヘイトスピーチなるものも登場し、
外交レベルだけでなく、個人間でも憎悪がまき散らされてる時代な訳ですが、
そんな今だからこそ読まれるべき作品だと思います。


だから日本はズレている (新潮新書 566)

一番好きな社会学者である古市氏の新書。
この人は好き嫌いがはっきり別れるタイプで、
もしかしたら嫌いな人が多いかもしれません。
でも、言ってることは至極真っ当だし、
若者が感じている違和感を客観的なデータと、
的確な言葉で書かれているので、そうだよなぁと思うことばかり。
この本では「おじさん」を古市さんが改めて定義しているんですが、
まさにその通り!と膝を打ったので、「若者」にオススメです。


痛みの作文

日本のラッパーANARCHYの自叙伝。
元の本は絶版しているのですが、
今回メジャーデビューのタイミングで、
CD+文庫本という形で販売されていて買いました。
映画がめちゃくちゃオモシロかったんですが、
本作も同様にオモシロかったです。
映画の方が作品としての完成度は高いと思いますが、
本では口語体で自分の生い立ちを語られており、
生々しさが本の方が強烈。
とくに暴走族を始めてから、逮捕されて、
HIPHOPに傾倒していくまでの流れが好きだったなー
自叙伝として素晴らしい作品だと思います。


鼻に挟み撃ち 他三編

いとうせいこう氏の新刊。
レトロスペクティブシリーズという形で、
過去作も毎月のようにリリースされており、
今年はせいこうさんの本を大量に読んでいます。
本作は短編集で、タイトルもその一つ。
たくさん読んできて思うのは、「小説」という構造への挑戦、
これまで読んだことない形の物語を追求する姿勢が、
素晴らしいと思うし、毎回読む度に
普段使っていない脳の部分を使うような感覚になります。
特に「鼻に挟み打ち」はエッセイでもあり、
フィクションでもあり、虚実が入り交じった独特の世界観が好きでした。
あと、御茶ノ水の聖橋付近が舞台で、
職場が近かったりするので、感情移入濃度高めでした。笑


おこりんぼさびしんぼ

山城新伍氏のエッセイです。
チョメチョメのイメージが先攻している人は多いと思うんですが、
まー無類におもしろい。題材が若山富三郎、勝新太郎という
凄まじい兄弟ってこともあるんですが、
彼の目から見た2人の姿の描写がいちいちグッとくる。
残念ながら、彼自身も亡くなってしまいましたが、
昭和芸能史に残るマスターピース!
春日太一さんの「天才 勝新太郎」と一緒に読むのがオススメです。


ヒップの極意 EMINENT HIPSTERS

ミュージシャンであるドナルド・フェイゲンのエッセイ。
本人名義はさることながら、Steely Danとしても
名盤をたくさん残してきたレジェンド。
そんな彼が過去を懐古した文章やツアー中の日記等が
彼独特のウィットに富んだ文体で書かれています。
びっくりしたのは、天邪鬼で屁理屈ばっかり言ってるところ。笑
美しいメロディの音楽が多いので、
もっと温厚かと思いきや、頑固おじいさん!って感じ。
子どもの頃からジャズバーに通ってた話や、
ラジオへの愛憎を語るところが特に好きでした。

2014年8月23日土曜日

るろうに剣心 京都大火編



前作をしっかり予習して、万全の状態で見ました。
3作目が約1ヶ月後に控えており、
連作となっているのは承知してたんですが、
完全に次の前フリ映画でした…
ただポイントポイントでアクセルベタ踏みの
素晴らしいアクションが見れたので、その点は満足しました。
前作のレビューで剣心を佐藤健にしたのは100点!と書きましたが、
本作は最大の敵である志々雄真に藤原竜也を配役したのは100点!
(山田孝之でもよかったんですが…)
血も涙もないゴリゴリの弱肉強食主義っぷりが最高でした。
舞台は明治10年で、幕末の動乱が治まり、ある程度は平和になった日本。
その一方で食いっぱぐれ武士の残党もいて、その最恐なやつが志々雄。
彼を中心に明治政府の転覆を謀るのを、
剣心を含む政府軍が止めることができるのか?!という話。
冒頭がかなり良くて、斉藤一が率いる警察軍団が
志々雄のアジトに潜入するところから始まります。
すげー狭い空間で音も無く忍び寄る志々雄軍団に
警官たちがバコバコ殺されていく。
斉藤と志々雄がアジトで邂逅するんだけど、
そこが地獄のような空間で、警官が吊るされていて、
ドンドン火の海に落としていくっていうね。
からのタイトル!の流れは最高。
大久保利通が剣心に志々雄を倒してくれと頼み、それを引き受ける。
京都への道中で立ち寄った村で、志々雄と遭遇し、
志々雄軍団の1人である瀬田と戦う。
このシーンのアクションもハンパなくて、
2人ともフットワーク軽い系なので、チョンチョン飛んで、
バチバチのしばき合いするのは見てて超アガル!
あと幕府の諜報部隊の頭やった四乃森蒼紫を
伊勢谷友介が演じてるんですが、狂気じみてて超良い。
登場シーンで相楽をフルボッコにするのは
最近見た暴力シーンの中では相当好きな方です。
とまぁ、アクションそれ自体は見所多くて楽しいんです。
ただ、お話がね…これは完全に次の作品の前フリでしかなくて。
だから、風呂敷結構広げるわりに、あんまり回収されないという
悲しい構成にはなっています。
あとねー京都大火編っていうタイトルやのに、
あんまり燃えへんのおかしいと思うんですよ!
もっと阿鼻叫喚の絵図を期待している側からすると!
この大火自体が志々雄の罠だから、しょーがないんだけどさー
見終わったあと、パイレーツオブカリビアン2を劇場で見たときの
ガッカリ感に近いものを感じたのは事実。
でも来月には完結編見れるので、
そちらを楽しみに待ちたいと思います。

ローマ環状線、めぐりゆく人生たち



ベネチア映画祭で金獅子賞に輝いたドキュメンタリー
ということで見ました。
正直なところ、あまりにも単調で楽しめなかったです…
おそらく、これは優れた小説の表現を楽しむかの如く、
鑑賞すれば、初めて意味が立ち上がり、
感動するタイプの映画だと思います。
舞台がローマの環状の高速道路で、夜の美しさ、
登場人物のさまざまなバックボーンなど、
楽しめる要素はあるんだけど、
それぞれが表面上は一切交差しないから、
なんか退屈なんですよねー盛り上がりがないというか。
撮り方がフィクションっぽいところや、
それぞれの人物のフィクション性もあいまって、
ドキュメンタリー感が希薄で、夢か現かという点は興味深い。
ローマの環状高速道路の周りに住む人達の話で、
6人くらいにフォーカスして交互に語っていく。
前述した通り、話に起伏は無く、
どこにでもいる市井の人々の生活に密着して撮影されています。
ヤシの木の害虫を研究しているオジさん、ウナギ漁のおじいさん、
団地に住む父娘、没落貴族、救急隊員などなど。
話に魅力はないものの、1人1人の内情はオモシロい。
害虫研究のオジさんは結構象徴的で、
この人が語るのは害虫の話なんだけど、
1つの都市論のように聞こえてくる。
ヤシの木の害虫というウルトラニッチから、
救急隊員という最前線で誰かに役立つ話まで
振れ幅があることで、同じ街に住んでいても
様々な人がいるなぁという至極当たり前なことを思ったり。笑
没落貴族の話は物悲しくて、香ばしさがありました。
1個1個が平坦で、つながりが無いので、興味が持続しないんすよね…
ストーリーの裏読みや映像から意味を読み取るのにも限界あるし、
こういった観察スタイルは対象を1つにしてないと、
おもしろくないのかもなーと思いました。
ただローマという街の雰囲気が、僕達日本人のような外部の人が
イメージするものだけじゃないという点では興味深いです。
ある程度のリテラシーが必要なのかもしれませんが、
興味ある人はどうぞ!

マダム・イン・ニューヨーク



インド人がNYを訪れて英語を学び…という予告編を見て、
英語難民として興味を持ち、見てみました。
読み書きはそこそこできるんですが、
話せないというコンプレックスを持ってまして。
仕事上もヒスなので、英会話行かないとなーと思いつつ、
なかなか最初の一歩が踏み出せず…という状態。
本作がなにかのきっかけになればという気持ちだったんですが、
完全にヤラレちゃいました!
インド映画なのでベタめなんですが、
持たざるものが自らの言葉を手に入れて、
苦難を乗り越える話でアガラない訳がなかろうよ!
(あくまで個人的な好みですが。笑)
インドは2014年現在、どんどん発展してきている訳ですが、
ヒンドゥー教に基づいた封建制や、英語弱者の人もいる状況は、
日本人にも思い当たる節が大いにあるように思います。
主人公はインド人の婦人。
インドの公用語は英語とヒンディ語の2つある中で、
旦那さんは仕事では英語だし、娘、息子の学校での公用語も英語。
奥さんだけが英語を話せず、家族から馬鹿にされてる。
そんな中でNY在住の奥さんの姉の娘の結婚式準備のために、
5週間のあいだNYに滞在することになります。
カフェでろくに注文もできない街で嫌気がさすものの、
「4週間で英語がしゃべれるようになる」という広告をみつけ、
英会話教室に通い始めて…というお話です。
前半は彼女が英語を話せないくだりが続くんですが、
どれも辛くてですね…「ジャズ」の発音に始まり、
学校の先生との面談、カフェでの注文などなど。
とくにカフェでの注文シーンは地獄絵図。
そんな彼女も英会話教室に通い始め、事態は変化し始める。
NYの英会話教室には自分と同じように英語が話せない
色んな国の人達が集まっていて、
共に切磋琢磨し、英語が話せることの楽しさを覚えていく。
結婚してからは受動的な人生だった彼女が、
能動的に何かを学ぶようになり、
必死に勉強する姿はグッときました。
とくに映画館行ってから、家でもDVD見ながら、
自主勉強するシーンが好きだし、身につまされたなぁ。
前半にNYを訪れる際の飛行機で隣の席だった人が
彼女に伝える「初めて」の大切さの話がリフレインしました。
能動性の獲得というのが、
インド社会の封建制からの離脱でもあるのもポイントで、
女性が自立する話にもなっています。
インド映画らしく感情表現を歌で見せるのもナイス!
とまぁここまで色々語ってきましたが、
本作はなんといってもラストのスピーチシーンに尽きる!
たどたどしくも、きっちりとした英語で、
自分の感情を伝える彼女の姿に号泣メーン!
これきっかけでキッチリ英語の勉強始めたいと思います。

2014年8月20日水曜日

るろうに剣心



帰省の新幹線にてiPadで鑑賞。
iTunesはレンタル料金が高めなので、
DVDでレンタルが難しいのとか、
安くなっているものを見ます。
んで、現在続編が公開中の本作をチョイス。
話運びはアレな部分あるものの、
全体で見ると結構好きな作品でした。
よく分からない目的で、
クソつまんなそうな作品が製作されている邦画の
現在の状況を考えると相当良い方だと思います。
子どものころ、ジャンプでの連載を読んだりしてましたが、
改めて内容を見ると、設定自体が超オモシロい。
最近のアメコミは内省的な部分が多いですが、
それに先駆けて、人を助けるために人を殺すことについて、
きっちり描いてるなーとも思いました。
あとキャスティングの妙もあって、
剣心を佐藤健にしたことは100点満点。
斉藤一の江口洋介は少しオジさん過ぎやしないかと思いますが、
一癖ある感じはさすがの一言。
ただ悪役に香川照之使うのは禁止令出してほしいです。笑
アクションも全体に躍動感があってナイス!
続編ありきって感じだし、1作目は色んな説明しないといけないので、
話が散らかってしまうのは致し方ないかなと。
京都大火編も早速見に行きたいところです。
馬鹿にしてる人ほど、見てほしいなと思います。

2014年8月13日水曜日

リアリズムの宿



山下敦弘監督作品を見る流れの一環で。
これ3作目なんですが、
デビュー作のどんてん生活に比べて格段にオモシロかった!
原作はつげ義春氏の漫画。
大学の映画サークルの3人で旅行するはずが、
仲立ちしてるメンバーが来れなくなり、
ほとんど面識ない2人が旅をするという話。
この初対面同士の人間の距離感の表現が素晴らしくて、
あー分かるなぁと膝を打つこと山のごとし。
基本的に行き当たりばったりの旅なので、
居心地の悪い空間に放り込まれるんですが、
それが日本独特の気遣いに起因することがよく分かります。
謎の美女役で尾野真千子が出てるのも鑑賞ポイント。
ここ数年でメキメキ売れていますが、
ナチュラルさや実在感はこの頃からすでに素晴らしくて。
途中、突飛な行動を取るんですが、
それも納得できる印象を見ている側にきっちり与えるのは
役者パワーがなせる技だと思います。
邦画のロードムービーって数少ないけれど、
これまで見た中だと一番好きだなーって感じです。

2014年8月11日月曜日

俺たちニュースキャスター 史上最低!?の視聴率バトルinニューヨーク


前作 をしっかり予習して見ました。
キャラが強烈なので、またアイツらに会えた!
という喜びでお腹いっぱいでした。笑
前作同様、ギャグが最高にトバしてるし、
得意のブラックユーモアのレベルも段違い。
言ってることはマジで最低なんだけど、
振り切るとオモシロくなるというね〜
前作と構造的には同じで、
一旦頂点まで登り詰めたのちに失脚し、本当に大事なことに気づく。
前作の流れも踏襲してて、
特に上がったのは、色んなTV局同士の決闘のシーン。
終盤にあるんだけど、死ぬほど豪華なんすねー
サシャ・バロン・コーエン、カニエ・ウェスト、
ウィル・スミス、リーアム・ニーソン!
旬な男たちが一同に会している瞬間はそれだけでアガる!
ゲラゲラ笑いながら、楽しむのがいいと思います。

2014年8月10日日曜日

どんてん生活



山下敦弘監督のデビュー作。
日本の青春映画の代表選手と言っても過言じゃないし、
favoriteな監督の一人です。
IKBのTSUTAYAで特集組まれてて、借りてみました。
話だけ切り取ると、鬱屈した話なんだけど、
全体にカラっとした仕上がりなのが印象的。
モラトリアム期という点では、
最新作であるもらとりあむタマ子 に近いなーと思いました。
ただ本作はビックリするくらいお話が平板なので、
そこは少し退屈かなーと思います。
でも、このどうしようもない若者の姿というのは、
いつも魅力的で切ないから、ずっと見てられる。
彼のフィルモグラフィーを考えると、
見ておいて損はないと思います。

名探偵ゴッド・アイ



ジョニー・トー監督作品。
ドラッグウォー 毒戦と同様、2013年に製作された本作。
彼の探偵ものといえば、MAD探偵 7人の容疑者を思い出しますが、
それにも劣らないマッドネスぶり!
いや、マッドぶりはこちらの方が上かも…
Blind Detectiveというのが英題で、
文字通り主人公は盲目の探偵。
そんな彼と身体能力は高いけど、
推理能力がまったくない女警官のバディサスペンス映画。
目が見えないので、鼻をクンクンと効かせ、
白杖をタンタンと地面に叩き付ける。
目が見えないことと探偵はもっとも遠いことのように思えるけど、
心の目で当時の状況を思い描き、犯人の逮捕を目指していきます。
全体にオフビートなコメディタッチなんだけど、
終盤は壮絶な展開になって、サスペンスとしてもオモシロかったです。
ジョニー・トーの映画はご飯が超うまそうに見えるのもよくて、
完全に中華料理の口になっています。笑
このバランスに慣れて楽しめるようになったら、
ジョニー・トーの作品にヤミツキになるんだろうなーと思います。
多作な監督ですが、少しずつでも見ていきたいところです。

私はロランス


劇場で見たかったけど、見逃したやつ。
見た人の評判が超高かったので、期待してました。
オモシロかったんだけど、3時間弱は長過ぎかな…
性を超越した愛の形を模索するという点では
アデル、ブルーは熱い色に似てると思います。
アデルの方は若い頃の話なので、
甘酸っぱい要素も多分にあったけど、
本作はオジさんがある日突然女性として生きるという話。
ゆえに重みが違うというか…
自分の性を抑圧していて、そこから解放されるオジさんと
その解放によって戸惑う彼女という対比が興味深かったなー
2014年現在では映画の舞台となっている90年代よりは
トランスセクシャルやバイセクシャルに対する接し方というか、
なんともならない部分との葛藤がね〜
映像もオモシロくて、MVみたいな演出がたくさんあります。
話自体はシンプルな男女関係の話だけど、
その演出のおかげで飽きずに見れました。
(にしてもちょっと長かったけれど…)
新たな愛の形について考えるにはうってつけの作品。

2014年8月6日水曜日

ハート・ロッカー



ずいぶん放置してましたが、やっと…
本当は昨年のゼロ・ダーク・サーティー見たタイミングで
見とくべきだったんですが、延び延びになってしまいました。
とてもオモシロかったです。
政治的な観点で考えると、
単純にオモシロいとは言いにくいんですが…
イラクでのアメリカ軍の爆弾処理班のお話で、
爆弾を次々と処理していく中で、
戦争に対する葛藤が産まれてきて…という感じ。
爆弾処理班っていうのは人を殺す訳じゃないし、
誰も傷つけずに、人を救う仕事なんだけど、
一筋縄ではいかないというのがよく分かる。
最近、日本も物騒になってきていますが、
70年近く血を流さなかった民族がいきなり最前線で戦えんの?
と迫力ある戦争映画を見る度に思います。
冒頭に「戦争はドラッグだ」という台詞からの、
あの落とし方だと、完全にそれを強化するような作り。
と思いきや、色んな解釈があるんですなー
宇多丸師匠 vs 町山さんの論評は、
この映画見た人は必聴だと思います。

エスケープ・フロム・トゥモロー



アメリカのディズニーランドで無許可撮影した、
ダークファンタジーという超楽しそうな触れ込みに
惹かれて見てきました。
白黒映画ということや、前半が少し退屈で何だかなー
と思っていたんですが、中盤からラストまでは
目が離せない展開でオチも最高!って感じでした。
フロリダのディズニーワールドで撮影されてるんですが、
実はまだ心が腐ってない小学生の頃、一度訪れたことがあって、
そこで弟が迷子になり、
ひたすら日本語で自分の名前を泣き叫んでいたことをレミニス。
その一方で、東京ディズニーランドは行ったことないっていう…
本格派ぶりたいほど浅はかではなくて、
それもこれも天邪鬼の塊と化している僕にとって、
ディズニーファシズムみたいのが気持ち悪いなぁって。
(従業員のことをキャストと呼んだりするところとか)
ディズニー映画は大好きなんですけどね。
そんな大人のボンクラに向けた、
ディズニーの楽しみ方指南って感じで楽しく見ました。

主人公はジムというお父さん。
奥さん、息子、娘の4人でディズニーに遊びに来ている。
その朝に突然仕事をクビになり、遊んでる場合じゃないけど、
夢の国へと現実逃避。家族サービスのつもりで向かったけど、
園内で楽しそうなフランス人女子2人に心惹かれる。
どこにいても2人が視界に入ってしまい、
途中からは2人を追いかけて園内をかけ回る。
吉田恵輔監督初期作に代表されるように、
男の僅かな可能性にかける悲しいサガは何回見てもオモシロい。
しかも、合間合間にジムのくだらない妄想も挟まれるしね。
ただ、これといって何もないから前半は少し退屈。
ワンチャンスにかける気持ちが実を結び、
フランス人とは別の人妻とのSEXにこぎ着ける。
この辺から妄想と現実との区別がつかなくなってくる。
ジムにとっての現実はろくでもないもので、
仕事はクビになったし、奥さんとは仲悪いし、
息子はスペースサンダーマウンテン乗ってゲロ吐くし、
娘はケガさせられるし。
少しでもそんな現実を忘れさせてくれるかもしれないのが、
ディズニーランドで楽しそうに遊ぶ女子2人。
この構造はなるほど!と思いました。
確かにディズニーで楽しく遊んでる女子を
愛でるというのは間違いじゃないぜ!
中盤からはEpcotに移動。 (巨大なゴルフボールみたいなやつね)
ここから悪夢の連続で、フランス人女子に声かけられるものの、
ぎりぎり残っていた理性でなんとか断る。
そこで顔に水をかけられて、これがラストへの悲劇の始まり。
娘は誘拐されるし、Epcotの下にある秘密組織に拉致されたり。
誘拐は白雪姫オマージュで、特に好きだったのが拉致のくだり。
お前の妄想力を測定するって言って、
変な機械に縛り付けられるんですが、その結果、
「オメースゲーよ!ウォルトもここまでじゃなかったよ!」
っていう皮肉たっぷりな演出が最高。
悪夢が終わったかと思いきや、更なる地獄の猫インフル!!
身の毛もよだつ症状を発症する…
あまりにもデカ過ぎる妄想とescapeの代償。
そして、ラストの展開がウオーって感じで度肝抜かれた。
夢の国に行くことで、日常から離脱し、
新たな人生を生きるってことか…
色んな解釈が生まれそうなオチだし、
全体の寓話性がディズニーっぽい。
逞しい想像力を身につけ、
オモシロくない世の中をオモシロきにして生きたいものです。

2014年8月5日火曜日

怪しい彼女



韓国での大ヒットの噂を聞きつけて。
なんといっても主演がサニーで好演してたシム・ウギョンで、
監督がトガニのファン・ドンヒョク。
トガニが凄惨な実話ベースだったのに対して本作はコメディ。
これらの要素があいまったら、どうなるんだ…
という怖いもの見たさの気持ちと共に鑑賞しました。
オフビートなコメディとしてしっかり笑わせてくれるし、
ラストはきっちり泣かされるしで、映画見たな!
という感触を久々に味わいました。
銀座のみゆき座で見たんですが、韓流ブームの熱は根強く、
劇場はいっぱいだったし、全体のアットホームさもナイス!
1人のおばあさんが主人公。
早くに夫を亡くし、息子を立派な大学教授に育て孫もいる。
典型的なおばあちゃんで小言が多く、息子の嫁には厳しい。
その嫁がストレスによる病で倒れてしまう。
おばあちゃんを施設に入れてしまおうかと話になる中で、
ある写真館で写真(遺影)を撮ったところ、
ぴちぴちの20歳に若返っとるやないか!
もともと歌が上手かったこともあり、
孫のバンドとともに歌手への道を突き進みつつ、
プロデューサーとの恋など、
2回目の青春を謳歌するも…という話。
前半はおばあちゃんの背景説明で、
ホント「うるせーなー!」って感じ。笑
ずっとしゃべってるし、小言ばっかり。
(大根と煮魚のくだりは最たる例)
このババアがシム・ウギョンになるというね…
中身そのままで、あの見た目というギャップがとにかく最高!
年代ギャップものを1人で体現する演技力は完全に脱帽。
言葉はもちろん顔面力とでも言うべきか、
たたずまいまでもババア。最たる特徴が歌ね。
物語を進行させる上でも非常に重要な要素なのですが、
本人が歌ってて、なおかつめちゃくちゃイイ!
バラードからアッパーチューンまで乗りこなす。
彼女の演技を目撃するだけでも見る価値あり。
もの凄く当たり前なんですが、
どんなジジイ、ババアにも青春は存在する訳です。
しかし、物理的な時間で考えると、一方通行でもう戻れない。
その反面、精神的な部分はどうなんだという話で、
心はいつだって戻れるというreplay性が作品を通じて伝わってくる。
この年齢になると色々考えさせられました。
正直、ギャグはドヤ感強いので、興醒めするかも。
ただ、映画全体がキッチュでポップだし、
きっちり映画文法に乗っ取った上でのギャグなので楽しかったです。
終盤の息子とのやり取りは泣くに決まってるやろがい!
女性にとっての結婚や出産は予定していた人生を
ときには狂わせてしまうものかもしれません。
だけど、最後の選択が物語るのは、
これまで生きてきた人生に誇りを持ち、
1回しかない人生を肯定するという至極真っ当な結論な訳です。
そんなメッセージを受け取って、号泣メーン!でした。
ベタな部分も多いけど、素晴らしい映画だと思います!

2014年8月4日月曜日

思い出のマーニー




ジブリは予告編が本当に素晴らしくて、風立ちぬと同様に予告編で涙。
安定の板垣恵一氏works。超楽しみにしながら見てきました。
これまでのジブリ感は希薄なので、
その点を期待しちゃうと損するけど、
じわーっとくる感じが僕は好きだなぁって感じ。
甘酸っぱい女の子が経験するひと夏の不思議な体験を通じた成長物語。
年をとる共にこういった青春物語を客観視 a.k.a 神の視点で
楽しめるようになったため、この手の話にはめっぽう弱い。
最終的には女の子の成長譚としてHappy endingなんだけど、
全体のトーンは暗めなのが特徴的。
こっちの方が今の時代の空気と合ってるし、
好きなんだけど、乗り切れない人はいるのかもしれません。
(ジブリという看板に期待している人は特に)

アンナという女子高生が主人公。
彼女は幼い頃に両親を亡くしていて、
養女として札幌で育てられてきた。
他人と関わるのが苦手で、それは里親でさえも同様。
持病の喘息療養のために、釧路の湿地帯エリアに住む親戚のところへ
夏休みの期間限定で居候することになります。
その湿地帯にたたずむ古い洋屋敷に心惹かれる。
そして、そこに住むマーニーと仲良くなるものの…という話。
アンナは引っ込み思案で、
親がいないという自分の出自に苦しみつつ日々生きてる。
一方で里親は過度に彼女に干渉してくる。
孤独と調和の狭間で揺れる彼女の気持ちに
冒頭からめちゃくちゃ感情移入してしまいました…
そんな彼女が夢に見たマーニーが現実に現れ、
退屈と思われた避暑地での生活も楽しくなってくるし、
アンナ自身の心境にも変化が出てくる。
中盤以降は夢か現かという形で物語は進んでいくんですが、
前半は徹底的に現。太っちょブタや短冊への願いに象徴されるように、
とことん閉じているアンナ。
良かれと思って干渉してくる人の暴力性に共感しまくり。
マーニーとの出会いから楽しい夏の思い出が始まっていきます。
その世界は一切の男性成分が排除されていて、
ある種のズーレー的な要素さえ感じさせるぐらい。
ラストまで見ると、この距離近さは意図的なものだったのね〜
と腑には落ちましたが、見てる間はジブリもここまできたのか…と、
あらぬ感慨に浸っていました。笑
他人と違うことの辛さや良さを2人のそれぞれの立場を持って
描いていくのが良かったな〜結局のところ無い物ねだりで、
100%満たされている人なんていなくて、それぞれが事情を抱える中で、
足りない部分を埋めていくしかないよな〜とか思ったり。
後半にかけてはマーニーの存在の真偽を解き明かす方向にシフト。
東京からきたサヤカ、マーニーの日記、絵描きのおばさんなどなど。
この映画ネタバレしたら本当に楽しめないので、
ここには書きませんが、終盤までの展開が音を立てるかの如く、
現実にシフトしていくのは結構ビックリ。
ちょっと説明的すぎるかなーとは思ったけど、
アンナの一皮むけた姿とエンディング曲でALL OK!!
駿がいなくなった分、多様な作品生まれるかもしれないし、
そんなジブリの今後も楽しみになりました。必見だと思います。