ラベル Music の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Music の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2026年1月28日水曜日

『Skippin' on Step』 Worldwide Skippa Release Party

 Worldwide Skippaのリリースパーティーに行ってきた。彼の存在を知ったのは、ソングウォーズの第1回目で、当時まさかここまでシーンの中心的な存在になるとは、誰も想像していなかっただろう。1年弱という短期間で、ハードワークを武器にヒット曲を立て続けに生み出し、確固たるポジションをシーンに築いたことをあらためて証明するような、素晴らしいパーティーだった。

 仕事終わりに行ったので、19時過ぎにWWWに到着するとTakaryuというDJの時間だった。深夜帯のパーティーから足が遠のいて久しい身にとって、この時間に爆音でDJを浴びられるありがたさを噛み締める。現場でしか聞けない日本語ラップのマッシュアップもあって到着早々ブチ上がった。(プレイリストを本人が公開してくれていました→リンク)ストリーミングばかりで音楽を聞いていると、こういう瞬間には一生出会えないので、現場に行くことの大切さを実感した。

 続いて登場したのはBBBBBBB。Dos Monosのポッドキャストで名前を聞いて気になっていたのだが、こちらの想像の上の上の上くらいのライブで圧巻だった。Underworld「Born Slippy」が流れる中、長髪の男が一人、さらにもう一人と現れ、彼らがBBBBBBBだとわかる。BPMの早い四つ打ちビートの上でひたすらシャウトし続け、WWW独特の傾斜きつめの客席へ移動していく。もう一人の男は徐々に衣服を脱いでいく。そんな奇想天外で自由なステージングをみると、自分の凝り固まっていた音楽観が気持ちよく破壊されていった。パンクのようなアプローチであるものの、煽りが「3、2、1、Let's go!」という近年のヒップホップライブの定型であり、ヒップホップ好きとしては親近感を抱きやすかった。さらにビートが四つ打ちからグライムっぽいノリになると、彼らの表現したいことが一気に伝わってきて、結果的に「なんか好きかも?」と思わされているから、ライブこそが彼らの最大の魅力なんだろう。

 BBBBBBBの出番で客演した徳利がそのままライブへ。正直に言えば「インターネットのミーム的な存在」という雑な認識しかなかった。しかし、ガイドボーカルに頼らず、汗をかきながらストイックにラップし続ける姿は、予想を裏切られた。キャッチーな曲名やトピックは、ライブにおいて圧倒的な強度を持ち、ワンコールでフロア全体を巻き込む力がある。「ネタラップ」として一括りにされがちだが、観客をロックする力を目の前で見れたことは新たな発見だった。

 その後はグライムかけおことsoakubeatsによるDJ。ここにsoakubeatsを招聘することに、パーティー主催者の感性の豊かさ、コンテキストを大事にしていることが伝わってくる。グライムに留まらない広義のUKダンスミュージックが流れまくり。普段聞かないサウンドばかりでブチ上がった。ストリーミングでいつでも何でも聞けるからこそ、DJというフォーマットの価値が高まっているように感じた。つまり、何をどういう順番でかけるのか?ということ。

 そんなUKミュージックをサンドイッチするかのように、最初と最後の曲は自身がプロデュースした日本語ラップというのがニクい。冒頭は「The Bridge feat. A-THUG」この日初めて聞いたのだが、どんなビートでもA-THUGの曲にしてしまうオリジナリティには毎回驚かされる。ラストは「ラップごっこはこれでおしまい feat. ECD」このパーティーで流れること自体に意味がある一曲だ。素直に見れば、ECDが日本語ラップにもたらしたコンシャスの系譜がECD→MOMENT JOON→Worldwide Skippa と引き継がれる様が刻印されたと言える。しかし、事はそんな簡単な話ではない。後述するMOMENT JOONのライブでも示されたとおり、「コンシャス」な側面はそのラッパーの一側面でしかない。それはSkippaもインタビューで話していたとおりである。内容偏重ではなく、あくまで音楽としてかっこいいかどうか。そして、<将来の夢は犯罪者>と喝破するECDのラップは「コンシャス」というわかりやすいフレーミングに対するカウンターに聞こえてしまうのだからヒップホップは不思議な音楽である。

 そんなECDの曲を聞いたあとのMOMENT JOONのライブ。旧知の仲なので、もう何回も彼のライブを見ているが、ここまで諦念が漂うライブは初めて見たかもしれない。一番顕著だったのは「シャトレーゼやめた」のフロウを引用して披露したアカペラのラップである。「正しいことの代弁者」という他人に背負わされた十字架の重さについて、こんなふうにラップで表現できるのは彼しかいないだろう。「TENO HIRA」という代表曲も披露されたのだが、そこに至るまでの構成から、従来あったエンパワメントのムードがシニカルに反転し、顕在化した強烈な諦念に思わず泣いてしまった。今の彼を支配する気持ちが具体的にどういったものなのか。その辺りは連載中のエッセイなのか、はたまた次のアルバムなのか、是非とも知りたいところである。ただ、そんな諦念を払拭するように五本指の手のひらから中指だけを残し「We Don’t Trsut」に流れていくあたりは流石。彼のビーストモードが開放され、ラップをスピットしていて、ひたすらにかっこよかった。

 そして、大トリを飾るのはもちろんWorldwide Skippa。「まほろば」から始まったわけだが、実質ワンマンとはいえ圧倒的な合唱率で驚く。30分という短い尺の中で「メタナイト」「Tee Shyne Flow」などの人気曲を本人が「出し惜しみなし」と言う通り、立て続けに披露され、フロアの盛り上がりはとんでもないことになっていた。特に「俺が出るライブで痴漢したら殺す」の大合唱は本当に信じられなかった。こういった啓蒙ソングで、ここまで盛り上げることができるのは、先述したコンシャスの文脈でいえば、内容に即してしんみり聞く必要もなく、曲としてかっこよければ、それはそれで盛り上がるということを体現している。まさに彼が日本語ラップをネクストステージに導いた証左と言える場面だった。

 ゲストゾーンが豪華メンツでこちらも出し惜しみなし。同じく名古屋を拠点とするXameleonとは「King’s anthem」を披露。目下最注目のプロデューサーである808 Edi$onのビートを初めてデカい音で聞けたので、私にとって1月27日が<Edi$on記念日>。そして、サプライズゲストとしてShowyの二人。翌日リリースのShowyのシングルにSkippaが客演で参加しており、その曲がこの日歌い下ろし。その名も「Worldwide lit」Showyのステージングはキャリアを感じさせるもので、圧倒的に華があった。そして個人的に一番好きな曲である「Go Taxi」では、Sad Kid Yazを召喚。圧倒的なアンセムっぷりをライブで体感することができた。

 MOMENT JOONを再び呼び込んでの「We Don’t Trust REMIX」はまさかのフルメンバー!Skippaが、2021年に行われたMOMENT JOONのWWWXでのワンマンを見にきていたというエピソードも相まって、エモーショナルな展開だった。REMIXの他の客演参加者であるFisong、SiX FXXT UNDXRを見れたことも貴重な機会だった。二人ともラップのフィジカルが仕上がっており、間違いなく今後注目のラッパーである。今回でいえば、SiX FXXT UNDXRがこの場にいたことの意味は特に大きい。なぜなら彼は、Skippaの楽曲のミックス、マスタリングをほとんど手がけており、Skippaの活躍の陰の立役者だからだ。いわゆるアングララッパーの音源を聞いていると、ミックスやマスタリングの粗雑さが耳につくこともある中で、Skippaの音源はその点がしっかり整理された音像、鳴りになっているのは彼がいてこそだ。これもパーティー主催者のキュレーション力の賜物と言える。

 『Skipping tape vol.1』から「徳利とブラピ」「Trust me」なども聞くことができた。「徳利とブラピ」のアウトロに言及があって、彼自身もここまでのスピード感を想定していなかったのだろうと腑に落ちる。今後はなかなか聞けないかもしれない。終盤は「don’t stop freestyle」「Nagoya rich boy」「Fuck hater 裏」といった最近のリリース中心の構成。最後は「シャトレーゼやめた」で大団円。当日はSkippaの誕生日だったらしく、ステージにHABUSHとケーキが用意されてライブが終演した。

 30分とは思えないほど充実したショーケースでいかに彼がヒット曲を生み出してきたか、よくわかるステージだった。一方で、キャリアの短さゆえにラッパーとしてのフィジカル性はまだ足りていない印象を受けた。そもそも1年で50曲近くリリースして、さらにそれらをライブでしっかり歌えるように仕上げていく、というのは土台無理な話で期待しすぎではある。その不足をシンガロングで補う観客との関係性こそ、新世代のライブスタイルなのだろう。Skipping tapeシリーズではないアルバムを用意しているらしく、2025年の間に出したミクステで、これだけのリスナーを巻き込んだSkippaだからこそ期待は否が応でも高まるわけで楽しみに待ちたい。

2024年5月9日木曜日

2024/04 IN MY LIFE Mixtape

 4月は光の速さで過ぎ去っていった気がする。3月よりは新譜のリリースは落ち着いていて比較的じっくり聞いたアルバムが多かった。改めてLEXの魅力に気づいたのも大きな収穫。あとは久しぶりにフェスに行って現場を体感すると色々見えてくるものもあった。その辺は別記事でざっくばらんに書いたので、そちらを読んでみてください。

https://afro108.blogspot.com/2024/04/go-aheadz-day-2.html

 一番のトピックでいえば坂本龍一のNHKのドキュメンタリー。音楽と死があれだけ濃厚に漂う映像作品はなかなか見れないと思う。それをきっかけに坂本龍一のアルバムをよく聞くようになった。ビートレスな曲って昔はアガれないからそんなに聞かなかったけど、家でスピーカーで聞くとイヤホンで聞くのと全然違って音を楽しめるので好きになった。膨大なアーカイブがあるのでじっくり楽しみたいところ。ちなみにジャケは車で通りかかったときに見かけた橋下のグラフィティ。

🍎Apple Music🍎


🥝Spotify🥝

2024年4月13日土曜日

Go-AheadZ Day 2 雑感

 コロナ明け以降、韓国ヒップホップのアーティストのライブを見れる機会が増えて、ついにフェスが開催されると聞いて足を運んだ。日本と韓国のヒップホップのトップどころのアーティストを一度に召喚するスタイルで両方ともガチで追っている身からすると最高のフェスだった。ただ需要はあるのかという一抹の不安が…ストリーミング世代の若い人は垣根なく聞いているとはいえ、これでどれだけお客さんが集まるのか。市場はどんなもんだい?というスケベ心を携えつつ会場に向かった。

 朝から参加できる体力もないので、午後から参加。幕張メッセのフェスでの客入りがどの程度が適正か預かり知らないが正直かんばしくない感じだったかなと思う。見る側としてはめちゃ快適だったけども演者側は苦労したかもしれない。ヤンキーの男性がたくさん、あとはKポップ勢の女性がいてとにかく皆若い。自分の加齢をひしひしと感じつつJay Park御大のWONSOJUのソーダ割りをひたすら飲みまくっていた。

 日韓のアーティストを交互に組むタイムテーブルで人の好みが細分化した時代に未知なものを楽しめる人がどれだけいるのかと勘繰っていていた。しかしそれは杞憂であり若い人たちは柔軟で客層はそこまで入れ替わることなく盛り上がっていた。韓国勢はボーカルの被せなしのストロングスタイルが基本でお客さんを盛り上げるライブ力、エンタメ力がかなり高い。Changmoは圧倒的なラップと歌の力でひたすら歌い続ける力強いパフォーマンスだったし、Lee Young-jiはSMTMで優勝した理由がよく理解できた。音源とライブの乖離のなさに加えてステージングが相当完成されていた。そしてDynamic Duoはベテランの立ち振る舞いでぶち上げまくり。DJをフィーチャーしたオールドスクールなスタイルかつラップは超タイトだった。特にGaekoはラップがクソ上手いの知ってたけど歌も死ぬほど上手くて完全にGOAT。pH-1もSprayを連れて先輩のスタイルを継承するかのようでアツかった。最新アルバムの曲多めなのも個人的には嬉しかったところ。

 日本勢だとralphのライブは異次元で古参うるさ型日本語ラップクソオタクリスナー全員をkillするクオリティだった。あとはKaneeeの華。ヒップホップの枠とか関係なくスターになる人だと見た瞬間に思うレベル。こういう才能がヒップホップに集っていることが今のシーンの豊かさに繋がっているのことを痛感した。舐達麻のライブを見れたことも大きなトピックだった。Beef以降ライブを結構キャンセルしてる中で見れたのは貴重な機会であった。彼らの曲は比較的内省的であり文学のような曲なので、デカい会場で皆で聴くのにはあんまり向いていないのかもしれない。一番人が集まっていたけど、皆がカメラを構えて何か起こるのを待つみたいな空気だった。例の曲はやらなかったので、もうBeefも終焉だろうか。¥Bは時間の都合で見れず無念…

 ざっくばらんだけど、韓国ヒップホップ好きとしてはかなり楽しめたし合間で現行の日本のヒップホップ最前線も見れたしでお買い得ではあった。もし今度やるなら、もっとアーティスト同士の交流が進み有機的なコラボが実現するケースが増えてから開催して欲しい。(この点についてPop Yoursはかなり意識的に取り組んでいる)この日も会場でDJ CHARIが”GOKU VIBES”を流していたが、あの曲は日韓コラボの一つのメルマークとして機能するはずが、あまりにヒットしたがゆえにそういった語られ方が無くなってしまった。Elle以降のバースはないものになっている場面を多く見る。またコラボという観点では日本のヒップホップの外交官であるJP THE WAVYを呼んでSik-K、Kid Milliを呼ぶという選択肢もあったはず。

 直近あったデカ案件でいえば、ASHISLANDとちゃんみな、IOとGRAYなどがあるが、ビジネス案件に見えてしまってそこまで乗れない。ちょうどいい塩梅を模索していけば、もしかすると1曲で何かゲームチェンジが起こるかもしれない。実際オーバーグラウンドではBIMがGRAY、Coogieとのセッションを公言していたり、socodomoの次のアルバムにLEXが参加している模様だし。アンダーグラウンドではTade Dustがドリル勢と交流しているし、NSW YOONがなぜか和歌山勢と急接近していたり。だから何かが起こる予感はある。その前夜のフェスとしては悪くなかったはず。日韓のヒップホップの未来は暗くない。

2024年4月5日金曜日

2024/03 IN MY LIFE Mixtape

 今月は本当に新譜を追うのが大変だった…マジで無限に毎週リリースが続いて1枚聞いては次を聞くという感じであんまり深掘りできていない。それでも取りこぼしが発生しているので来月分でカバーしていきたい。あと旧譜もそこまで入れられてないのも反省点。新譜だけならレコメンドシステムの仕事であり、そこに旧譜をどう混ぜるかが醍醐味なのでセレンディピティを大切にしたい。

 SpotifyのレーダーとApple musicの新譜レコメンドの組み合わせでフォローできる新譜の範囲がかなり広がったことも影響している。新しいものを貪欲に聞くこと、好きなものを繰り返し聞くことの違いについて考えることも多かった。本でいえば再読にあたる行為であり、最近そういうマインドが起こりつつある。これは加齢に伴うキャパの縮小化、保守モードへの突入の予兆かもしれないので新年度になったことだし積極的に新しい刺激を取り入れていきたい。

 リリースタイミングというより毎月自分が聞いた曲をベースにプレイリストを作っており、あくまで自分基準なので無理がないのはヘルシーである。プレイリストを聞いていると音楽日記を読んでいるようでそれも今のところは楽しい。ジャケは手作りしたワッフル。異常にQOLアガるので皆におすすめしたい。

🍎Apple Music🍎


🥝Spotify🥝

2024年4月2日火曜日

2023 JAPANESE HIPHOP BEST 100

 韓国のヒップホップで作ったので日本のヒップホップでもBEST 100のプレイリストを作ってみた。選んでいるときに思ったのはスタイルの細分化が本当に進んでいるなということ。各ラッパーがいろんなかっこよさを提示していて、それぞれにファンダムが形成されていることにカルチャーとしての豊かさを感じる。100曲選ぶとなると本当に100人100通りのパターンが出てくると思う。なのでシーン全体を見てどうのこうの議論するのも難しい。

 アルバム単位で基本的に聞いており、その史観でいえばこの辺が好きだった。なかでもJJJのアルバムは2020年代を象徴する一枚だった。

  • Makutub by JJJ
  • Nobori by JUMADIBA
  • 東京時代 by TOCCHI
  • WHO IS VLOT by VLOT
  • Golden Virginia by Sadajyo & Jeff Loik
  • HOLLOW by (sic)boy
  • THE UNION by Awich
  • 東京人 by Jinmenusagi
  • four/IO
  • 犯行予告 by NORIKIYO

 プレイリストの構成としては前半はメロウ、中盤からトラップ、終盤はドリル、ダンス系みたいな感じで曲順含めて選ぶのが楽しかった。ドリル元年とでもいうべきか、ジャージー含めてアンダーグラウンドでもオーバーグラウンドでも席巻していたのが印象的。2024年はBAD HOPの東京ドームとそれに伴うメディアジャック、そしてBAD HOPに対抗するようなチーム友達ムーブメントと、これからどうなっていくのか今年も楽しみである。ちなみにSpotifyは1曲足りてないけど、それは察してください。



2024年3月20日水曜日

2023 KOREAN HIPHOP BEST 100

 pH-1の新曲を聞いて去年の好きな曲を100曲選んだ。今のシーンに対するフラストレーションを感じたからだ。自分自身は韓国のヒップホップの楽曲がとにかく好きでひたすら新譜を聞いているのだが、彼からするとかつてのヒップホップの在り方からかけ離れてしまっている、つまり音楽以外の要素で注目されることを憂いている。こういった発言はOGに多い傾向があるが、第一線にいる彼から発せられるのは重い話だ。(サムネイルが松屋と吉野家と牛角で全部牛系なんだけどBeef を意図している??)

 去年はShow Me The Money(SMTM)が開催されないという異例の事態が発生した。毎年お祭りのように開催され、メンターのラッパー、プロデューサーたちが期待の若手をフックアップし、その年のトレンドが浮かび上がる。賛否があるにせよシーンを総括する役割を担っていたのは間違いない。それが無くなったことで何となく1年が経過したのは確かに否めなかった。そしてお祭りがない中でpH-1からするとネガティブな出来事が目に付いたのかも知れない。

 ただ2023年は本当に素晴らしい楽曲が多かったと個人的には感じている。特にSMTMがないから今がチャンスと見た数年単位でリリースのなかったベテランたちのリリースがHIPHOP、R&Bともに充実していた。当然若手も有望なラッパーが雨後の筍のごとく沢山でてきているのだが、アルバムやビデオのリリースだけではどうしても頭ひとつ抜けるのは難しい状況でありオーディション番組の効果を思い知る結果となった。今年は何らかSMTMの代替番組が登場してほしいところ。

 こういった背景の中でも100曲選ぶのは本当に楽しかったし難しかった。シングルはなるべく選んでいなくて、アルバムもしくはEPからお気に入りの曲を選んだ。なので各曲をきっかけに好きなアーティストを見つけられるはず。あと曲順もDJ的に選んでいて前半はトラップ、中盤はメロウな感じで、後半はダンサブルな感じ。どの曲もビートのクオリティとフロウの豊かさがとにかく最高でUSのトレースではあるのだけど、どのアーティストも絶妙にそこにオリジナリティを加えている。その点が韓国ヒップホップの好きなところであり、日本でもっと盛り上がるポテンシャルがあるので、このプレイリストが誰かの入口になればと祈る。

2024年3月10日日曜日

ACE COOL『群青ノ痕』


 ACE COOLのワンマンライブ”群青ノ痕”@渋谷WWWを見てきた。『GUNJO』 は1年に1回は必ず聞き返すアルバムであり、個人的には現在のシーンで最もunderratedなラッパーだと思う。RED BULLの64barsや各種客演曲などで知名度が飛躍的に向上したこともあってか会場のWWWは階段までパンパン。本人もライブ中に言っていたが、こんなに人気あるのかという驚きもありつつ、とはいえ彼の実力からすればまだまだ序章と言っていいはずだ。

 ライブはキャリアを総括すると共に新曲も盛り沢山、未来に向かう内容で本当に素晴らしかった。ラップ筋力が尋常ではなく基本的にボーカルなしのインストの上でアンコール含む約1時間半ひたすらスピットしつづけていた。あれだけ複雑なフローなのに音源との乖離がなく聞き取りやすさもある。リリックはウィット、叙情性もあり、さらに固有名詞もユニークなチョイスが多い。ビートもオーセンティックなものからトラップ、トレンドのジャージーまで、どんなものでも彼は自分のスタイルを崩さずACE COOLの曲として聞かせてしまう。こういった多面的な魅力があるがゆえ密度の高いラップの塊のようなショウが成立していた。

 またインハウスのプロデューサーであり、そしてこの日バックDJを務めていたAtsu Otakiもライブで大きな役割を果たしていた。ACE COOLのボーカルにディレイをかける演出がユニークでライブに展開、緩急を生み出していた。またビートの大きさ、鳴りのコントロールも素晴らしかった。WWWでヒップホップのライブを見るとき、大した音質でもないオケの音がバカでかくてボーカルが聞こえないことが多々あるのだけども、この日は鳴りもバッチリな上に彼のラップがちゃんと映えるようになっておりDJイング、ひいてはエンジニアリングの巧みさが光っていた。

 Featは2023年の彼を象徴するような客演曲であるCampanellaとの”YAMAMOTO”とOZworldとの”Gear 5”がかなり盛り上がっていた。ACE COOLのスキルに呼応してシーンきってのラップ功者であるCampanellaとOZworldから声がかかるのも納得だし2人との曲をワンマンで聞けたことはありがたい。そして盟友MOMENT JOON、Jinmenusagiの2人もかっこよかった。MOMENT JOONは”IGUCHIDOU”という彼の持ち曲から”BOTTOM”へという大胆な展開。ACE COOLのMOMENT JOONをリスペクトする姿勢が伝わってきた。そしてJinmenusagiとはスキルメーターが完全に振り切れてる”Kiwotzukenah”から昨年リリースされた”SAKURABA”のREMIXとして新たにACE COOLが参加したバージョンがエクスクルーシブとして披露。この2人は最近KREVAに曲を作ってみたいラッパーとして名指しされていた。それは置いておいても2人でEP作ったら確実にハネると思わされるほどライブでの相性はバッチリだった。この盟友2人が今のACE COOLのスタイルを形成していると言っても過言ではなくスキルはJinmenusagi、リリシズムはMOMENT JOONに触発されているのは間違いないはず。だからこそアンコールの最後で2人が飛び出てきたのは非常に象徴的だった。それは「俺たちのACE COOLが!」という観客の気持ちを代弁していたとも言えるだろう。

 Jinmenusagiがステージ上でシャウトアウトしていたようにACE COOLは日本のヒップホップの中でも誰も登ってこなかった山に挑戦している。それは前述のとおりスキルとリリシズムを含むストーリーテリングの両立だ。長いキャリアの中で彼は両方を追い求め続けた結果、唯一無二のポジションを獲得している。この日のライブでも顕著で”RAKURAI”、”EYDAY”といった圧倒的なフロウでバースをかまし、盛り上がりやすいフックでクラウドを扇動するような楽曲もあれば、”AM2:00”、”SOCCER”のような情景を鮮明に焼き付けるように聞かせる曲もある。*”派手なバックグラウンド、ボースティングないんだ特に”*というリリックにあるように、彼は分かりやすいヒップホップクリシェを使わずにヒップホップという頂へ挑戦している。つまり表面的ではない、借り物ではない自分の胸の内にある言葉でラップをビルドアップしている。あれだけたくさんの観客がいる中、ラップが終わって完全な静寂が訪れ、観客それぞれが過ぎた時間を噛み締めるといった場面はヒップホップのライブで体験したことがなく本当に新鮮だった。

 今はYouTubeやストリーミングがあり地元にいたまま十分活動できる環境が整っているし自分がいかにすぐに正解にたどり着き人気があるかを誇示する時代となっている。しかし、彼がラップを始めた頃は音源を他人に聞いてもらうまでのハードルが今では想像できないくらい高かった。日の目を見るまでの長いあいだの鬱屈した感情や下積みといった彼のバックグラウンドをリリックで可視化、共有しているからこそ、この日のライブは特に感動が大きかった。ヒップホップのインスタントな部分も大いに愛しているのだが、結局自分が好きなラッパーは楽曲やアルバムでナラティブを愚直に綴っていきライブへ還元していくスタイルなのだと再認識した。次のワンマンライブは新しいアルバムがリリースされるときだろうか、もっと大きいステージで見れることを願ってやまない。”戸愚呂兄弟”やJJJのビートを含む新曲など漏れるものが多いが当日のプレイリスト。リリースされれば補完していきたい。

2023年2月20日月曜日

2023年2月 第3週

Proof of Magnetic Field by MONJU

 MONJUのアルバムがLPでリリース。1年前に予約しててすっかり忘れてた。しかも今回はピクチャー版!改めてLPで聞くと16FLIPのビートのオリジナリティと3本マイクのコンビネーションにぶっ飛ばされるアルバムだった。そろそろ仙人掌の新しいアルバムを聞きたい。

Odorata by Le Makeup

 Le Makeupによる3rdアルバム。『微熱』で初めて知ってそのときの衝撃もそのままに本作も最高だった。日本語にこだわったポエティックかつ等身大の表現は唯一無二。日本語にこだわっている点は舐達麻と同じ方向性というか日本のらしさを追求していくことでそれが世界に訴求するようなアートになる感じ。ブレイクビーツ、ドラムン、2ステップ、ロックなんでもござれの中で音の質感は統一されメロウさは常にそこにある。そこで彼の憂いのある歌声が加わって美しい音楽になる。好きな曲を選ぶのは難しいのだけど、クラシックなブレイクの上で大阪の思い出を歌う”Dress”が好きな曲。

Enter The Wu-tang by Wu-Tang Clan

 Wu-tang clanのドラマをDisney+で見てブチ上がった流れでアルバムを久しぶりに聞いた。ヒップホップの初期衝動を思い出したしドラマを見たことで当時より解像度の上がった状態で聞くことで改めてこのアルバムのかっこよさや渋さにヤラれた…
 ドラマでも強調されていたがRaekwon、Ghostface Killahのラップのうまさは本当に異常。今週からFinal Seasonが始まるので、こんなポストも。
https://www.okayplayer.com/originals/how-true-is-wu-tang-an-american-saga.html
 2人が仲悪かったのはフィクションなんすね〜ストリーミング時代が素晴らしいのはここから各メンバーのソロとか無限にディグできるところ。クラシックだけど聞けてないのいっぱいあるので毎日の楽しみになった。

Panorama Apartments Series by HI-TEK

 HI-TEKのロストテープがリリース。タイトルにあるようにMPC60によって作られたビートの数々は全く古びない音で、サンプリングベースかつヘビーなドラムサウンドは大好物の音。 コンピューターでこういった音の質感は再現できると言われる最近だけども、やはりここにはサンプリングマジックが宿っているのでは?と思わされるビートの数々だった。毎月リリースで5月まで続くっぽいので続編も楽しみ。

Rihanna’s FULL Apple Music Super Bowl LVII Halftime Show

 スーパーボウルのハーフタイムショウでRihhanaが久しぶりに公の場で歌うとなれば見るしかない。この人が持つクラシックの数々が惜しげもなく詰め込まれた10分強でブチ上がった。Kanye West関連曲をしこたま入れてくるあたりに批評性があってオモシロかったし、実際Kanye Worksの素晴らしさは間違いない。キャンセルされてしまったのは仕方ないが何とか持ち直して欲しいという思いも込められたパフォーマンスではないのだろうか。

Exclusive! J.PERIOD & Black Thought Present The Live Mixtape: Dilla Day Edition [Recorded Live]

 Dilla Dayを祝う系のコンテンツは毎年2月に色々リリースされる。ミックステープ、ブレンド職人のJ.PERIODとBLACK THOUGHTによるミックステープ。 もちろんThe Roots”Dynamite!”とかもやりつつDillaのインストかけてその上にラップしまくるのが楽しい。ライブ録音らしくバイブスがとにかく高くてBLACK THOUGHTのラップおばけっぷりが発揮されていた。結構しっとりしたTributeが多い中でエネルギッシュな1枚。

Live at Tramps by De La Soul

 Plug 2ことTrugoyが逝去した。De La SoulはWUと同じくUSのヒップホップを聞き始めてすぐに買ったCDの1つであり、DJしていたときも”Me Myself & I”や ”Ring Ring Ring”を何回もかけていた。こうやって自分が好きだったアーティストが亡くなっていくニュースを聞くにつれて自分も歳をとっているのだなと思う。月並みだけど。
 でラッパーのKN-SUN氏がInstagramにポストしていたのを見て即ゲットして聞いた。ストリーミングはなし。これがハンパじゃなくかっこよかった…De La Soulはアルバム聴いてる限りだと割とクールなイメージを持っていたのだけど、ライブではバイブス満タンで盛り上げる為の仕掛けがたくさん用意されていてライブCDでもライブが上手いことが伝わってきた。またエデュテイメントなバイブスもありTrugoyがこのライブの最後のMCは今こそ聞かれて欲しい言葉だった。以下引用。これが96年時点の話なんだからすげえっす。

"Thank y'all for not forgetting what hip-hop is.Y'all make that shit for real tonight. Everybody talking about keep it real. This is real-white, black, purple, blue, green, yellow, up in here enjoying themselves, having a good time. Cut that ignorant sh-t out. We don't want to duck from guns. We don't want to call our women 'hos. We don't want to call our brothers 'niggas. Hip-hop for real. Ban the bullsh-t and get down with this ban. Native Tongues forever. We out of here."

Quest For Fire by Skrillex

 Fourtetが参加しているのでとりあえず聞いてみると、恐ろしいほどかっこいいダンスミュージックの洪水で悶絶死した。なんとなく「どうせEDMっしょ〜」くらいの偏見混じりで聞いた自分が恥ずかしくなった。友人と話していたのは、同世代のSkyrillexも若い頃聞いていただろうダンスミュージックの感じもありつつ、それが現代に向けてアップデートされているということ。どの曲も大体サンプル使いなのもアガるし特筆すべきは音の鳴りの異常なまでのかっこよさ。Kelelaのアルバムも相当鳴りの気持ちよさがあったが、これはまた別次元の鳴りでクラブで聞いたら最高なんだろうなと思う。Skrillex,Fred Again…, Fourtetの3人が満員のマディソンスクエアガーデンをブチ上げているのを見るとDJの偉大さを痛感した。どの曲を選ぶか難しいが最近はハウスな気分なので”Butterflies”

NEO TYO by MadeinTYO

 MadeinTYOのニューアルバム。こちらは通常運転でメロウなトラックの上でシンギンスタイルでラップしている。最近はもうトラップのヘビーでドープなやつはほとんど聞けなくなっていて、こういうメロウなやつをだらっと聞くのが好みです。で結局好きなやつは”Thinking to Myself”というサンプリング ベースのオーセンティックなビートだったりする。ビデオは東京で撮影されていた。しかし”Thinking to Myself”は去年リリースなので、24hrsとのナイスコンビネーションで中毒性のあるフックの”Must Be Nice”が好きな曲。

 韓国では再びレーベル再編の動きが始まっている。Swingsが既存のレーベル各種を集めてAP ALCHEMYを始動。第一弾シングルとして若手2人とSwingsによるシングルがリリースされて、それがめちゃくちゃかっこいい…ここ数年P-nation入ったり自社ビル買ったりビジネスマンっぽい動きが多くてもう余生なのかな?と思っていたら、また混ぜ返しにくるところがアツい。Jay Parkはユニティの人で彼のHIPHOPへの愛は大好きなんだが、こういうSwingsがそれら全部を薙ぎ倒すようなビジネススタイルで話題をかっさらっていく歪んだ愛もまた最高だ。ここからの動きは以下Tweetのツリーにまとまっている。

THE FROST ON YOUR EDGE by 30

 もう一つの驚きといえば、Deepflowの30への加入である。VMCのオーナーとしての役目を先日終えたばかりの中、まさか同じような後輩クルーに途中可能するなんて誰も想像していなかったと思う。30はKhundi Panda,DSEL, Som Simnba などのスキル鬼系ラッパーの集団で音楽の方向性としては納得できる。で今回アルバムがリリースされたのだけど、現時点では2023年韓国ヒップホップの個人的AOTY。まずビートが最高にDooooope!1曲目”Cakewalk”がJuke(しかも最初のバースはDeepflow)でぶっとばされたしタムでビートを刻む”The Bold Crew”とか。単純にブーンバップ志向というよりも次のサウンドを作ろうとする気概を感じた。1曲除いてすべてViannというプロデューサーによるものらしく今後要注目。そのビートに乗るラップはもちろん全員タイトでかっこいい。ラストは韓国のビールと同名の”Dry Finish”で大団円。これが一番好きな曲だった。Deepflowはアルバム内でJUSTHIS,TAKEONE,DON MALIKをディスしている模様なので、またビーフが始まるかもしれない。。。

XARCHIVE by Xwally

 changmoのストーリーで知った韓国のラッパー。現行のTravis的なUSスタイルを踏襲していてかっこよかった。NSW Yoonはドリル曲だと本当にハズしがなくてかっこいいし、Xwallyはシンギンスタイルでかっこいい。”3AMSEOUL”はジャージードリルでそのネタがJorja Smith”On My Mind”で好きだった。

THE CORE TAPE, Vol.1 by Dok2

 Mixtapeという形でラフなリリースが定期的に続いているDok2。今回も録ってだしな感じだが、ラップかっけぇということと最近の中ではビートのバリエーションが豊富で好きな方だった。ハングルも最近の中では使っている方だと思うし、英語で意味を取れるよりもハングルでスピットしているDOK2の方がカッコよいと思っているのでシーンにカムバックする日を待っている。好きな曲は2010年代のエモバイブスをそこはかとなく感じた”Pursuit Of Happiness”

2023年2月13日月曜日

2023年2月 第2週

 Rainbow by Nihil

 新譜紹介サイト経由で知った新人。歌もラップもかっこよくてビビった…アルバムタイトルどおり各曲名が色の名前になっておりサウンドもそれぞれ異なる。ヒップホップ、R&Bもあればレゲエノリのものやフォーキーなものまで。どの曲もめちゃくちゃかっこいい。声が低いのでWooを思わせるところもある。なのでWooが好きな人には間違いなく刺さるはず。どの曲も魅力的なのだが最後にQ the trumpetのトランペットソロが泣かせる”Purple”が好きな曲。

feel you, kon by Rakon

 Rakonのアルバムがリリース。もはやクラシックと化したSINCEの”Spring Rain”で存在を知ったラッパーでシンギンラップ、いやもはやシンギンというレベルでかっこよかった。Leellamarzがfeatで参加しているが、彼とスタイル的には近い。まぁFeatにPaloaltoとThe QuiettのP&Qが揃い踏みしている時点で間違いない。ギターベースのヒップホップは日本でも流行っているし1曲目の”mistakes”とかdubby bunnyのサウンドタグ聞こえてきそうな感じなので、そういうのが好きな人にはおすすめ。久しぶりに聞いたThe Quiettのラップに昂った”fire danger”が好きな曲。

<3 by 1300

 オーストラリアベースの韓国ヒップホップコレクティブによるEP。いわゆる逆輸入型だけどオーストラリアというのは珍しいパターン。前作のアルバムのエッジな感じが好きだっただけに今作は個人的にはポップ過ぎたかも。タイトル通りLOVEがテーマのようなので仕方ないかもしれない。好きな曲は”brb”

I Have a Dream. by DJ RYOW

 名古屋のDJ RYOWによる13枚目のアルバム。続けることの重要性や意味を教えてくれる素晴らしいアルバムだった。ストリーミング全盛で細分化が進むシーンにおいて、こういったある種の「まとめ」は時代を切り取るアーカイブの意味でも貴重で大切なことだと思う。
 ビートを手がけるSPACE DUST CLUBのビートのクオリティがめちゃくちゃ高くなっていてUSや韓国と遜色ないレベルにある。その素晴らしいビートに旬のラッパーもしくはローカルのラッパーを呼んで曲にする。まさにHIPHOPのProduce業と言えると思うし、これは誰でもできるわけではなくラッパーからプロップスを得ている人間にしかできない。その中で1曲選ぶなら¥BとAnarchyの初めての邂逅”I know What”かな。。”MVP”、”Slide”、”Bling Bling”、”All Through the Night”とかもマジで好きなんだけども。それはそうとFREE ¥B!!

Beatitudes by J Rocc

 J Roccのビートアルバム。去年もリリースしてたのでかなり精力的で、なおかつ圧倒的にあ今回のビート集の方が好きだった。20世紀のゴスペルにインスパイアされて作られたビート集らしく確かにソウルフルなトラックが多かった。なかでもドラムの鳴りがデカくてピアノとサンプルの声がマッチしている”The Best”が好きな曲

Raven by Kelela

 Kelelaの久しぶりのアルバム。エレクトロニクミュージックといわゆるブラックミュージックの接合点的なアーティストのイメージがある。過去作に比べてかなりサウンドの抽象度は高く感じた。一方でインタビューにもあるようにブラックフェミニズムやアフローフューチャリズムの観点で音楽を捉えクラブミュージックへの愛がふんだんに詰まっている。音の気持ちよさがハンパなくて家で無限に聞いていた。KAYTRANADAとかMockyが参加しているけど、いい意味で彼らの色はそこまで出てなくてKelelaの音楽になっている。今回知ったLSDXOXOがProduceした”Bruises”が好きなタイプのハウスで最高。
 このアルバムの前段としてKelela&Asmara 『Aquaphoria』っていうmixtapeがあることを知って、それがアンビエントのその先みたいな音楽で最高だった。これも音がめっちゃ気持ちよいし、2019年にヒップホップでいうところのビートジャックをこんな形で作品にしているのがかっこいい。大元のsoundcloudは消えているみたいだけど、誰か有志の人がYoutubeで権利対応してアップロードしてくれている。

Audiodidactic by Lance Skiiwalker

 TDE所属、シカゴ出身のラッパー。揺蕩うようにフローして歌っているようなラップしているような、いやポエトリーリーディングに近いのか、それがかっこよかった。しかもこのスタイルに珍しく比較的オーセンティックなドラムとベースのビートだから余計に新鮮に感じた。”Sample Talkは ベースのかっこいい曲の上でLance Skiiiwalker & Isaiah Rashadがサンプリングのかっこよさについて語っていて斬新な曲だし、タイトル曲の”Audiodidactic”や “(Ni)Radio Whispers”とかはほぼインスト。TDEって割とスピット系のイメージがあるので彼の存在は意外。前のアルバムも聞いたけど同じようなスタイルなのでこれが彼のスタイルなのだろう。好きな曲は”Everybody Hurts Somebody”

Girl in the Half Pearl by Liv.e

 先月のリードシングルを経てついにアルバムリリース。いきなりドラムンっぽいのから始まって意表をつかれつつ、そこからは音の洪水にただ身を浸すのみ…という感じだった。今どきこんなにジャンルで形容できない音楽をやっている人はおらず、圧倒的なオリジナリティがあると思う。いろんな音がコラージュされているけど調和しているし、ただ単にアブストラクトなだけではなく根底にメロウネスがある。なのでドープ一辺倒というわけでもなく飽きずに聞ける。あとイヤホンとスピーカーで聞くのでは全然音の聞こえ方が違ってびっくりした。(特に”Clowns”とか”Snowing”のハイファイ系のサウンド)好きな曲は展開がかっこいい”RESET!”

The Rebirth of Marvin by October London

 Snoop Dogの支配下となったDeath Row Records所属のR&Bシンガーのアルバム。ライターの川口真紀さんのポストで知った。タイトル通りMarvin Gaye再誕!といっても過言ではなく、声が似過ぎ。その声でトロトロのR&Bを歌われたらそれはもう最高…しっかり今の音というか懐古主義ではなくヒップホップ好きが好きなソウルミュージックになっていて、その辺はSnoop御大の意向かなと思う。あと合間にSnoopがシャウトしていてミックステープっぽさがあるのも好きだった。
 これまでSnoopのアルバムでFeatでいくつか参加しているので聞いているはずと思って聞き直すとそのときはマービンっぽさはそこまで感じない。今回はビート含めて完全に仕掛けている模様。好きな曲はカッティングギター、サックスの音が気持ちいいミッドチューン”Make Me Wanna”

Space 2 by Marlon Craft

 okayplayerの新譜紹介で知ったNYのラッパー。メロウなトラックの上で内省的な内容をスピットしておりかなり好き。Mac MillerやKota The Friendとか好きな人には刺さるはず。日本で人気出そうな感じなのに全然聞いたことない割に他国ではかなり再生されている。アンダーグラウンドなラッパーでもいい曲出していれば報われるのはストリーミング時代の産物だと思う。ひびの入った窓をそのままにしておいてくれとフックで言い放つ”Window Cracked”が好きな曲。

2023年2月6日月曜日

2023年2月 第1週

97’s BABY by DADA

 SINCEがfeatで参加していることで知った。タイトル通りのジャケがキュートだしオーセンティックなR&Bでかっこいい。これがまだまだアンダーグラウンドレベルだ思うと韓国のレベルの高さに恐れ慄く。MckdaddyとのドリルR&Bも捨てがたいが、やはりSINCEが好きなので彼女が参加した”Trust me”が好きな曲。

Strawberry by Epik high

 韓国ヒップホップのベテランEpik HighのEP。当たり障りないといえばそれまでだけど、このくらいのキャリアになるとそれを続けることに意味があると思える内容だった。ベースとドラムとラップでぐいぐい引っ張る”Down Bad Freestyle”が好きな曲。

Slur by KONA

 女性プロデューサーKONAによるEP。4曲入りなんだけど1曲が長いこともあり聞き応え十分。EPの1曲目で6分強のインストの時点で攻めまくり。しかもそれがブロークンビーツ。久しぶりに聞いたけど2STEPリバイバルとかあるしこれからくるかも?と思えた。SUMINしかり韓国の女性のプロデューサーのエッジが効いているのかっこいい。Jiselleとの曲はブギーって感じでいいのだけど、Michael Jacksonかよ!みたいなメロディのXin Sehaが参加した”Tremble”が好きな曲。

Object by Kuonechan

 Wonsteinのインスタで知ったKuonechan。これぞKorean R&Bという感じの大好きなメロウネスで最近かなり聞いている。ビートがユニークなものが多くて繰り返し聞いても全然飽きない。Wonstein参加の”Scarecrow”はかなりのキラーチューンなんだが、もっとミニマルでドラムのエフェクトがオモシロくHookがかっこいい”Glass”が好きな曲。

ocaenfromtheblue by ocaenfromtheblue

 Korean R&Bを代表するocaenfromtheblue によるセルフタイトルアルバム。個人的にはラッパーとの絡みが多く、サウンド的にもよりR&Bよりだった”forward”が好きだけど、本作は誰にでも勧めやすいポップさがあって良かった。好きな曲はシティポップを彷彿とさせる”Close to You”

In My Mood by NSW yoon

 SMTM11で一躍シーンに躍り出たNSW yoonのEP。もちろんドリルで哀愁メロウ系で好きだった。FeatにGistとMarvというのが分かってるな〜と思ったし、彼の声とフロウはドリルにフィットしていてかっこいい。それについてHypebeast Koreaでも言及していたので、なるほどという感じ。しっかりしたアルバムを聞きたい。強めにスピットしている”Do You Love Me”が好きな曲。

9th Wonder by VMC

 VMCがレーベルとして解散するため、その花道を飾るようにリリースされたEP。各MCが思いっきりスピットしており好きだった。クルーとしては存続するらしいので、今後どうなるかはわからないけど間違いなくラップがかっこいいメンバーばかりなので皆の未来に幸あれ!と願っている。好きな曲はもちろんタイトル曲でメインメンバー勢揃いのマイクリレー”9th wonder”

My 21st Century Blues by RAYE

 今週聞いた中で一番ブチ上がったアルバム。Okayplayerの新譜紹介で聞き始めたのだけど、サウンドデザインの幅広さとかっこよすぎるボーカリゼーション、ポップとドープの混ぜ具合、全部が揃っていてめちゃくちゃかっこいい。特に”Hard Out Here.”、”Escapism.”の2曲はベーシックなブレイクビーツをベースにしているのに今まで聞いたことないサウンドでブチ上がった。オーケストラの使い方、転調、歌とラップ、どれをとっても一級品。それと同時にバラードもあるしダンスポップもあるしアルバムでいろんな音像を提示しているアーティストが個人的には好きなので最高だった。もともとソングライティングで名を上げており既に著名とはいえ、これでデビューアルバムというのだからこの先楽しみししかない。彼女はUKのアーティストでしかもここ数年の音楽の震源地であるサウスロンドン育ち。これがメインストリームど真ん中で鳴っているUKの今の勢いを感じた。
 1曲選ぶの激ムズなんだがディケイド単位の名曲になるだろう”Escapism.”が好きな曲。BBCのチャンネルでライブもアップされていたのだけど、レイドバックしたフローが死ぬほどかっこいい…日本でライブあるなら絶対に行く。

ebony by Ebony Riley

 これもOkayplayerの新譜紹介で知った。デトロイト出身でモデルの彼女によるデビューEP。R&Bど真ん中な感じは最近聞いていない中でとてもフレッシュだった。Frank Oceanの”Thinking about you”やBeyonce,Ariana Grande,Rihannaなど近年のR&Bのトップどころに深く携わるShea Taylorがメインプロデューサーとなっているのでクオリティの高さは保証済み。彼のプロデュースではないけど“Champagne” King の “Love Come Down”を大胆にサンプリングした”Draw”が好きな曲。

Communication by 八神純子

 レコ屋パトロールしてたら先月にLPがリリースされていた。ONRAのミックスで”Johannesburg”を知ってからずっと探していたレコードなので買おうかどうか悩み、とりあえず検索したらApple musicに入っていて即聞いた。いわゆるシティポップの文脈にありナイスブギーがたくさん入っているアルバム。その中でもやはり”Johannesburg”が最高としかいいようがない…シティポップならぬシティレゲエ。このキックの音は一体どんなことしたら、こんな鳴りになるのか?と毎回聞くたびに思うし歪み合う世界に疲れたらレゲエを聞くのが一番!

A440 by DJ Q & tofubeats

 UKのプロデューサーDJ QとtofubeatsのコラボEP。UKガラージmeets日本のヒップホップでかっこよかった。最近ガラージ、2STEPが日本のラップのビートで使われているケース増えている中で、本場のプロデューサーの要素と、さらにtofubeatsの日本のヒップホップへの理解度の高さが加わってこれぞプロデュース!というEPになっている。3曲とも本当にいいのだけどKohの新たな側面を見れたので”440hz”が好きな曲。

That's Life by EVISBEATS

 久しぶりのEVISBEATSのアルバムはインストアルバム。(田我流との1曲を除く)いわゆるローファイ、チルビートにおける日本の先駆者と言ってもいいと思うのだけど、彼がどうこうではなく巷にこの手のビートが溢れまくっている結果、あたりさわりないサウンドにしか聞こえなくて無念…いやそもそも自分の解像度が落ちているだけかもしれない。彼のオリジナリティがコモディティ化してしまっていると思う。ただ部屋でBGMとして流すにはマジで最高。

2023年2月1日水曜日

2023年1月 第4週

Souly by Marv

 Featで参加しているOwenがおすすめしていたので聞いた。いわゆるアフロビーツと歌フロウでモロにDrakeのそれなんだけど、こういうトライの積み重ねでどんどん他のアーティストも乗っかっていくことが多いので韓国ヒップホップにおけるアフロビーツの隆盛の可能性はあるかも。ちょっと遅いか。とはいえビートのレベルめちゃくちゃ高いしメロディも心地よいので繰り返し聞いていた。好きな曲は”Vinyl”

HOLY by HOLYDAY

 レーベルとしての解散が近づく中、VMCからHOLYDAYというビートメイカーのアルバムがリリース。VMCは韓国ヒップホップのアンダーグラウンドの屋台骨であり、それを象徴するようなドープなシットがたくさん入っていて最高だった。ビートメイカーのアルバムならではの組み合わせがオモシロくて”ANTI Feat YUMDDA, QM & punchnello”、”Last Call feat. Jambino & Deepflow”とか。またドープというもののメロウ系もいくつか入っており、その中で”Wavin’ feat. Paloalto”のオーセンティックなサウンドとPaloaltoのフック、バースがめちゃくちゃ心地よい…Paloaltoは昨年のアルバムも素晴らしくてこの年齢でキャリアを更新していくのは本当にかっこいいと思う。
 ビートとしてはオルガンっぽいサウンドが多用されていたり、SEとしてKANYEのシャウトを使っていることもありKANYEの影響が強くあるように感じた。DingoではVMCメンバーによるメドレーが公開。ラップがうまいやつしか入れない厳しいスタンダードがあることがこの動画からもよく分かる。

Toast by TOIL & Gist

 ビートメイカーのTOILとシンガーGistのコラボアルバム。2人ともDaytona所属。TOILのポップなビートとGistの声の相性が良く聞きやすい。ただGistはもう少し深めのR&Bテイストの曲を聞きたいのが正直なところ。その点でいうとJason Leeの泣きのサックスがいいアクセントになっている”On Repeat” が好きな曲。

Raw Gems Vol.1 by Miso

 プレイリストで聞いて「うぉ!」と思って聞いたらアルバムとしてもめちゃくちゃ好きだった。DEANのレーベルyouwillknovv所属で、もともとアイドルグループ出身。しかし楽曲はセルフプロデュースかつ歌も自分で歌う。最近だと椎名林檎のREMIXアルバムで”丸の内サディスティック”を手がけているし、韓国サイドでいえばoffonoffによる大名盤『Boy.』にも参加している。
 アンニュイな声と隙間の多いメロウなトラックとの相性が良くてかなり好みなサウンドだった。Raw Gemというのはまさにそのとおりでビートがブラッシュアップされる前だからこそ感じる繊細な要素がふんだんにあった。韓国のアーティストだけど歌詞は英語なので意味が取れるのもありがたい。好きな曲はシンセの音が気持ちいい”Ache”

COLOR PAPER HOTEL by 87dance

 Khundi panda, Deepflowという渋いFeatに惹かれて聞いてみると生音ベースのR&B、FUNKな音でかなりご機嫌&シャレ乙サウンドだった。3人組でオリジナルメンバーはシンガー、ギター、ドラマーの3名でサポートメンバーが他の楽器を担当してる模様。ギターの音色は渋くて哀愁たっぷりだしドラムもかっこいい、ボーカルは色気たっぷりで言うことなし。上記2人のラッパーがfeatしてる曲はいずれもかっこよくて特にKhundi Pandaは最近のバースの中ではかなり好きだったので”Tommy cooper”が一番好きな曲。

King of Everything by LEX

 LEXは毎度アルバム通して聞いても結局なんだっけ?みたいになってピンとくることがなかったけど今回はアルバムとして完成度がめちゃくちゃ高くて好きだった。前半のイケイケモードと後半の内省モードで躁鬱を表現する。ここまでなら他のラッパーでもできるだろうけど、彼がスペシャルなのは音楽のスペクトラムの広さゆえにリリックだけでなく音でも表現できる点だと思う。普段何を聞いていてどういう音楽にインスパイア受けているのか知りたくなった。それはつまりオリジナリティがめちゃくちゃ高いということだと思う。アルバム公開に合わせて公開されたドキュメンタリーも興味深くKMの言うとおり日本人のアーティストとしてどこまでも羽ばたいてほしい。(ドキュメンタリー内でsokodomoが出演しており彼のニューアルバム(!) を聞いてLEXがブチ上がっていたのでそちらもとても楽しみ)色んなタイプがあって好きな曲を選ぶのむずいけど、やはりタイトル曲の”King of Everything” 職種は問わ〜ない

Candemic by Candee

KowichiのレーベルSELF MADEにサインアップしてついに1stアルバムをリリース。各種客演でメロディセンスを見せていてアルバムでもそのメロディーのよさが存分に発揮されていた。自分の性の奔放さについてラップするラッパーは山ほどいると思うけど、キャッチーなビートの上でここまでディテールを語るラッパーはいないと思う。ゆえに聞いていると、しんどい部分があった。
 ダブルミーニングやウマいこと言うリリカルなスタイルかつ音がUS志向なのは珍しい。Watsonは1ラインで沸かす感じだけど、Candeeはバース全体で沸かすフリオチスタイルで個人的にはこっちの方が好き。好きな曲はそれが炸裂した”Tokyo Druggy Land”

Xlarge ✖︎ Chillaxing

 アパレルブランドのXlargeとChillaxingというイベントがキュレートして若手を中心にまとめたコンピ。Xlarge recordsとしてシングルではCyber Rui, Showy lit、Skaaiなどラップスタア誕生で跳ねた若手をフックアップしていたが、その流れをコンピでも汲んでおりeyden、Fuji Taito、Ken Francisが今回参加している。彼らの曲もいいのだがやはりOVER KILL,Jin Dogg, Henny K, Ralphの”Never Get It”がぶっちぎりにかっこよかった。最近猫も杓子もジャージだけど、個人的にはNYドリル、UKドリルが好きなので流行ってほしい。

Let’s Start Here by Lil Yatchy

 今週はもうこれにすべて持っていかれた感じだった。友人からもヤバいとは聞いていたしTwitterでもこのアルバムの話で持ちきりで聞いてみたら即ブッ飛ばされた。。。いわゆるプログレロックの音の上でLil Yatchyが歌い、ラップしている。すべてが謎なのだけど中毒性が本当に高くて聞き始めてから隙あらば再生、耽溺している。語り口は死ぬほどあるから、それゆえ話題になっていると思うのだけど、やっぱりバランス感が素晴らしいと思う。単純にプログレの音でラップしましたとかそういう次元ではない。何をどういう塩梅で演奏し歌うかラップするか。温故知新によって新しい音楽を生み出していることに意義がある。センスない人が同じことやっても単純に昔を懐かしんだものになってしまうし。とにかくしばらくは聞きたいアルバム。好きな曲は本アルバムの助演賞であるDiana Gordonが冒頭からかましまくりのディスコティックな ”drive ME crazy!”

To What End by Oddisee

 定期的にアルバムをリリースしているイメージあるNYベースのラッパー、ビートメイカー。オーセンティックなスタイルのビートとラップが心地よい。1人で両方できる人がどんどん減っている中でこのクオリティを3年ごとに出せるのめちゃくちゃカッコいい。同世代なので好きなものが似ているのだろうなと聞くたびに思うし安易にローファイせずに生音っぽいタッチのビートが多くクオリティに妥協がなくてアガる。好きな曲は生音チキチキ感とラストのバイオリンソロがたまらない”Already knew”

Love Is War by Reuben Vincent

 9th wonderのレーベルJamla Records(Rocnation傘下)からのリリース。9th wonderのレーベルということは言わずもがなでオーセンティックなヒップホップを体現している。御大Young GuruもProducerとして参加しておりドラムの鳴りだけで飯三杯食えます!みたいな曲の上でスピットしまくるラップはどの曲もかっこいい。ヒップホップ原理主義者なので否が応でも上がってしまう。FeatにはレーベルメイトのRapsodyやTDEからReasonなど。好きな曲はJanet Jackson使いの9th wonderがプロデュースした”2time Flies”

Lyrics to GO, vol.4 by Kota the Friend

 定期的にリリースを怠らないKota the Friendのバース集。まるで日記のようにラップを滔々とビートの上でスピットするシリーズの四作目となる。ビートがどれもかっこよく良い意味で軽いので聞きやすい。Statik Selectahとの相性はいつも通りだし今回知ったGC beatsというプロデューサーは『Lyrics to GO, vol.2』でかなり使われていた模様でこちらもいわゆるChill系で心地よい。Genius見てたら、たかやんというアーティストに曲提供していてタイプビートの世界は複雑でオモシロいなと思えた。歌詞はかなりポエティックでじっくり読んでいると楽しい。一番好きな曲は”LIFE LESSONS”

Soulection Takeover:2K23 Edition by Soulection

 NBAのビデオゲーム向けにリリースされたSoulectionのコンピ。以前にもお伝えしたとおりSoulectionは本当に好きなレーベルでこういうのはもう大好物。四つ打ちもあるし、トラップもあるし何でもござれだけど、その中でも彼らのサウンドシグネチャーを感じるのがすごいところ。今回知ったアーティストで Jbirdというマルチインスト演奏者によるラストトラック”The Shattuck Effect (B.99 Suite, Pt. II)”が一番好きだった。

Portrait of a Dog by Jonah Yano

 広島産まれ日系カナダ人のJonah Yanoの2ndアルバム。Clairoのツアーでサポートしたりすることもあり前作は比較的フォーキーであり、そこにエレクトリックミュージックの要素もあり好きなアルバムだった。
 今回のアルバムは全曲でBADBADNOTGOODが演奏、アレンジに参加しておりYanoをボーカルに迎えたBBNGのアルバムとも言える。なのでがっつりジャズ。BBNGの前作のアルバムよりも少し柔らかさを伴っていて何となく優しく感じる。彼の声がそのバイブをもたらしているのかもしれない。アルバムの細かい話や彼のバイオグラフィーはBandcampが有益だった。好きな曲は”So Sweet”

Mama’s Gun by Erykah Badu

 Jose Jamesのアルバムをふまえて再聴。Soulequliansがアルバム全体に大きく貢献しているアルバムという認識がまったくなかった。あらためて聞くと音の気持ちよさがハンパない。Roy Ayer Ubiquityが参加している”Cleva” とか特にたまんない。このアルバムは生音中心なのでJose Jamesがバンドでカバーするとなると一番スムーズだったのかもしれない。色々調べていると、このアルバムがリリースされた2000年って『Voodoo』『Like Water For Chocolate』もリリースされていて恐ろしい年…両方とも聞き直したけど、いつ聞いても洗練された音に自然と首を振ってしまう。Soulequliansは最高。

LOUIE by KENNY BEATS

 ストリーミングでリリースされたときに相当聞いたのでレコードも発注しておりやっと今月届いて聞いていた。新譜のレコードを割と買う方だけど、その中でもマジックが発動しているレコードだと思う。この感覚が言葉で表現できたら音楽いらんやろと思うのだけど、レコードというフィジカルが誘う感情というか何というか。KENNY BEATSが父に捧げたスペシャルなアルバムだからなのか。 

2023年1月16日月曜日

2023年1月 第2週

Beat Tape by Soulflex

 名前とは裏腹にバンドサウンドのインスト集。単純なワンループではなくきっちり展開があってかっこいい。もう一音目からして鳴りのダイナミックさが打ち込みとは違ってかっこいい。跋扈するローファイチルヒップホップ風インストとは全然違う。”Jerk”のウエッサイなノリも好きだし、王道ファンクな”Spinach”もいい。サックスやフルートが導入されているのはバンドならではだし「ビートテープ」としてフレッシュだった。

[Rising Verse] KHAN, NSW yoon, Fleeky Bang


 SMTM11で名を大きく上げた3人の韓国のドリルシーンを代表するラッパー。フロウが全員最高過ぎてめちゃくちゃ好き。。。3人とも声色が特徴的できちんとそれに合うようなビートでラップしていて若いのに聡明だなと思う。韓国はNY、UKよりも早くドリルの多様化が進んでおり、大喜利が上手いというか、1つのテーマや流行が発生したときにそれをアップデート、進化させていくのが本当に早いしかっこいい。ドリルは音楽の背景を考えるといわゆるストリートと不可分なのは理解しているが音楽として捉えれば楽しめるはず。2023年も言っていきたい、GANG GANG GANG! あとこの曲きっかけでFreeky BangとNOELによるビーフが開戦。(大元はBLASEだが…)NOELは素行が悪すぎて全然味方できないけどラップうまー!


Soulection All Day 2023

 仕事で長い時間集中するときにはよくSoulection radioを聞いている。Soulectionは青春の一つなので年月が経っても現行シーンをSoulection解釈でセレクションされており、何を聞いてもいつでもかっこいいので信頼している。新年一発目は毎年All Dayシリーズという形で複数名のミックスが公開されていて、今年は特にJeftuzのミックスがめちゃくちゃかっこいい。2000年代のR&Bなどを中心にエディット、リミックスのバンガーがこれでもかとパンパンに詰め込まれており、どれも高いクオリティなのでブチ上がった!まさに新年を祝うにふさわしい。

Rich Bourne NINE by RB NINE

 Daytona Recordsからのリリース。Koo Bon-gyeomとしてSMTM11にもエントリーしておりTeamSlayに加入してゲリラサイファーで脱落している。脱落したものの、そこまで到達するのも難しいのが最近の韓国ヒップホップのレベルであり、返り血を浴びている怖すぎるジャケ同様にハードコアなスタイルでかっこいいラッパー。ドリル中心の構成でPolordared, NSW yoonは世代の勢いをバチバチに感じるし、Los, Don Mills, northfacegawdといったベテランfeat勢は適材適所な配置、全体としていいバランスとなっている。好きな曲は”Benchpress feat. Don Mills”

The Emancipation of Mimi by Mariah Carey


Jeftuz のミックスでエディットながら”We Belong Together”を久しぶりに聞いたので、オリジナルを聞きたくなった。Mariah Careyでどのアルバムが好きと言われれば、間違いなくこれ。Jermaine Dupriを中心にThe Neptunes, Kanye Westといった最高のビートと彼女のポップなメロディの相性が好き。クレジット見てたら”Mine Again”がJames Poyserだと今更知って驚いた。抜け目のないアルバム。

Neighborhood by CENJU, YAHIKO & DJ HIGHSCHOOL

 CENJUとdoggear records所属のYAHIKOの2人のラッパーがDJ HIGHSCHOOLのビートを乗りこなすEP。気持ちいいシンセの音、パキッとしてる808のビートとイナたいラップの相性が良い。DJ HIGHSCHOOLのビートは聞くと彼のビートだと分かる独特なノリがある。好きな曲はCENJUの”Memories feat. Chiyori”

KANDYTOWN Billboard TOKYO LIVE

 Abemaで無料配信されていたのを生で見た。昨年の傑作アルバム”LAST ALBUM”が文字通り最後のアルバムとなり、アルバムツアーの一環のライブのよう。バンド編成によるライブで、こういうケースはいつもバンドメンバーが気になるところだけどめちゃくちゃ豪華。キーボード宮川純、ベース新井和輝(King Gnu)、ドラム荒田洸(WONK)は3人でライブする予定されており、その延長に今回のバンド編成があるっぽい。彼らに加えてバンドアレンジには不可欠なマルチプレイヤーのMELRAW、マニピュレーター檜原航介という編成だった。
 ライブはかなりかっこよかった。特に過去曲はサンプリングが多いので、その音がバンドで置換されると別のノリが生まれいた。 『LAST ALBUM』からだとドリルっぽいビートの“PROGRESS” を生でドラムで叩いていてかっけー!となった。各人のライブスキルも高く、なかでもKEIJUの声の通り方と安定感は圧倒的だった。本当に最高の状態で活動休止するのか…と何ともいえない気持ちに。とりあえずエアチェックしたので繰り返し聞きたい。

SANGO MIX PACK 2016-2023

 SANGOによるブートレグなマッシュアップ、REMIX集。相変わらずバンガーだらけでかっこいい。2022年のヒット曲はもちろんのこと、DillaとGunnaとか意外な組み合わせもあってオモシロい。
 マッシュアップ関連だとPUNPEEのがオモシロかった。今どきはRXでボーカルデータ抜くんですね。昔はインストを逆位相にして当てるとかあったけど。

 あとHFがマッシュアップしまくっているというFNMNLの記事も興味深かった。高等遊民の遊び。以下ラインが興味深かった。

J-POPに関していうと、今トップに並んでるような音楽は全然面白くないと思う。なんでかっていうと、大抵はトラックに緻密で難しいコードを使ってて、そこに寄り沿うメロディを当ててるから。僕からするとそれが機械的に思えちゃう。インターナショナルなポップスのトラックはひとつのベースラインなり、コードなりで作っているんです。その上でヴォーカルのメロディがどんどん変わっていくのが面白い。僕はそっちのほうがより人間的だと感じるんです。

https://fnmnl.tv/2023/01/08/150434

good1ife by J’Kyun & Marco


 SMTM11で改心した様を見せつけたJ'Kyunによるシングル。ベテランならではの安定したフローでラップ上手いなーと思うし、得意なメロウなビートの”good1ife”が特に好きだった。最後にドリルビートが入っており、もう韓国ではドリルは無視できないスタンダードとなっていることがよくわかる。

The vibe is a Chance by youra & Mandong

 韓国ではダンスミュージックが中心だけどもロックやジャズにもかっこいいものがある。youraは前作EPの『Gaussian』で知って好きだったのだけど、今作は大きくシフトチェンジしてMandongというバンドとのコラボEP。彼女のアンニュイな声と比較的マイナーなトーンのバンドサウンドがあいまってかっこいい。808ベースがトレンドの中でウッドベースの音が心地よかった。

Still Hurt by Airplane James

 Apple musicで新譜チェックしてたらジャケが目に止まったのと、featでRose Goldが参加していたので聞いてみた。LAのサウスセントラル出身でLAの先輩ラッパーProblemのレーベルからリリース。最近のLAっぽいサウンドでかっこいい。それこそRose Goldが懇意にしているTerrace Martinぽさもある。それはともかくRose Goldのソロアルバムを本当に待っています。

The Mind of A Saint by Skyzoo & The Other guys

 2dopeboyzで知って聞いた。コンセプトアルバムで『Snowfall』というドラマの主人公であるSaintの考えにラップで深く迫った作品らしい。ビートはThe Other guysが担当しておりオーセンティックなサンプリングビートの上にかっこいいラップが乗ってくる。トランペットが生音で色気たっぷりで最高。リリックを知りたいので早くGeniusにあがってほしい。好きな曲はMVにもなっている”Straight Drop” 
 ぶれずにひたすら自分のスタイルを貫いてスピットし続けているかっこいいラッパーという印象だし、実際2008年から毎年アルバムリリースしているの凄すぎる。
 ドラマの内容としてはクラック、コカインが蔓延した80年代のLAをストラグルする話らしいので見てみたい。Disney+で見れる。最近全然ドラマ見る気にならないのだが…

Couldn’t Wait to Tell you by Liv.e

 2月にアルバムが出るらしく、その先行シングルが出てProducerとしてMndsgn, で安易なローファイではなく、ダスティーかつメロウなサウンドプロダクションは唯一無二だし、ラップのような歌のような気だるいフロウもあいまってトロける系音楽だと思う。シングルも良かったのでアルバム楽しみ。

Soul Pop City by NAUL

 いつだってクオリティが高いKorean R&B。日本だとSoulflex周りなどはブラックミュージックオリエンテッドなメロウを追求していると思うけど、韓国はその追求を続けてきた歴史があり、歌もビートもその点でのクオリティは本当に高い。もともとBrown Eyed Soulというグループに所属していたNaul。今作は2018年以来のリリースらしい。ド直球シティポップの”1985”もいいけど、90sバイブス溢れるミッドチューンの”I still Love you”が好きだった。MVにも登場するアナログシンセによる後半のソロが激渋い。。。どの曲も今の基準だとめっちゃ長いんだけど、展開がきっちり用意されたマチュアっぷりはベテランだからこそ。

Dah Shinin’ by Smif-N-Wessun

 XXLの記事で取り上げられていたので聞いた。若い頃クラブで死ぬほど聞いているけど、実際にアルバムとして聞くのは初めてで今聞くと新鮮だった。ベース、ドラムのみ、もしくはそこにシンプルなウワモノで構成されたサンプリングスポーツの最たるもの、みたいなサウンドがかっこいい。言い回し、サンプリングソースなど初期〜中期日本語ラップへの影響がめちゃくちゃ大きいなとも思う。ブルックリンのグループなので”Home Sweet Home”が一番たぎります。


2023年1月9日月曜日

2023年1月 第1週

  ずっとTwitterで音楽のログを取っていたが最近のゴタゴタもあり不安定そうだし結局聞いたことしか分からないログだったので雑記として聞いた曲などについて書いていくことにした。どこまで続けられるか怪しいけど1年間頑張ってみたい。

Show Me The Money 11 Final by Various Artists


 年末のSMTM11 Finalから。大方の予想どおりのLee Young Ji優勝。勝ち負けはもちろん大事だが、ここまでくるとどんな曲をFinalで披露するかが各アーティストのアティチュードとしては重要でHIPHOP的にはBLASEが圧倒的正解。残りはポップサイドに振れてしまった。もともと9以降のFinalはアンセム感、エンディング感強めの曲が多いので必然的にPOPになるとはいえ、今回はR.Teeとそれを支持するオーディエンスにより、結果どの回よりもPOPなエンディングとあいなった。日本国内だとK-HIPHOPとK-POPは混同して語られがちだが、やはり別物だということが今回よく分かった。
 BLASEは2曲とも素晴らしく、特にLILBOI、DJ Sprayを招いた”DIAMONDS”は初期カニエを彷彿とさせるトラック、2人のタイトなラップ、スクラッチという、これをFinalで見せるBLASEのヒップホップ愛に胸を打たれた。SMTM11については改めて文章にしたい。

Empire State Motel - EP/ QM & Fredi Casso


 SMTMで結果を出したQMとビートメイカーFredi Casso によるEP。QMはリリックが素晴らしいことをSMTM11で思い知ったので、そこを知りたいけど、韓国語が分からないからそれが知りたい… 
 Fredi Cassoは近年のAlchemistのようにドラムレスもしくはドラムのアタックが弱いサンプリングサウンドを最近提示しているビートメイカー。(本作にも参加しているDSELとリリースしたアルバムはモロにバッファローサウンドへのオマージュだった。)今回もざらついた質感のサンプリングサウンドの上でQMがスピットしておりかっこいい。Wooが参加してるのが意外。タイトル作の“Empire State Motel”がドラムの鳴り含めて一番好きだった。QMはライブもクソやばい。レーベルとしての活動に終止符を打つVMCにBig shout out.

Live: Cookin' with Blue Note at Montreux by Donald Byrd


 Giles PetersonがBlue noteに問い合わせしてマスターが見つかってBirdの誕生日にリリースされた。このシリーズのMarlena Shawのレコードを持っていて好きな1枚なので期待大で聞いたら”Black byrd”, ”You've got it bad girl”の冒頭2曲で持ってかれた。10人編成の大所帯ジャズファンクバンドでリッチなサウンド。こんな昔の録音なのにとても綺麗で臨場感のある音で驚いた。

Parade/ Prince & The Revolution


 年末のセールでレコードで買った。最近はこういうマスターピースを手堅く買ってレコードで楽しむことが多い。“Kiss”はいつ聞いても新鮮でミニマルファンクの最高峰だと思う。あと”Somtimes It Snows in April”が歳をとるごとに良さが分かってきた感じがある。

Real Talk by Fabolous


 これも年末のセールでレコードで買った。基本状態確認なしで買うのだけど、これはSide A のチリノイズがきつくてしょぼん。それはともかく2000年代のHIPHOPの勢いを感じる作品でとても好きだった。The Neptunes, Just Blaze, Scott Storch が入っている時点でもう最高。DJ Khaledがプロデュースした曲も入っており、”We the best music!!!”と連呼するただのコミュ力高いおじさん、というわけではないのだなと知った。
 AK-69が一時期連呼していた「イエェメン」はFabolousが元ネタだと今更知った。最終的に2014年にコラボしているのだから、AK-69の実行力は馬鹿にできない。そしてついにCOSAとAK-69が邂逅。¥BにCOSAから秋波送っているのはSNSで感じてたけどAK-69とDJ RYOWがバイパスになるなんて!肝心の曲はカラシニコフ名義で王道って感じ。先日のライブではMaRIも含めてBUSSIN’のREMIXも披露されたみたいだし、こういう意味のあるユニティは歓迎したい。

Inner Ocean by さらさ



 Flip side planet で知り衝撃を受けて即チェックした。この音楽が日本のポップスの中心にあれば未来は暗くないのにと思うほど最高だった。声質が特徴的で耳を惹くしリリックも面白い。1曲目の”朝”にある「いい感じでいたい」という口語の日本語の面白さが詰まっている。
 Kota Matsukawaという方がほとんどのビートをプロデュースしているようで、サウンドはもう間違いなく1級品。アルバムとしての完成度がめちゃくちゃ高く聞き終わりの満足感がハンパない。アルバムの中にボーナストラックではなく合間にREMIXを入れてくる、しかもそれがMitsu the beats, Olive Oilだなんて…センスしかない。ネオソウル的なアプローチは過去にも多くのアーティストが行ってきたことだけど、このナチュラルさはとても好みだった。

Snow Dome by hyunis1000, caroline


 今年も新譜を追う生活が始まるわけだが年始最初のアルバムはこれ。carolineはビートメイカーで2人のタッグアルバムとなる。昨年のフルアルバムも良くて今作もまた良し。力感なく軽やかなフローとデザイン性の高いサウンドの相性が素晴らしい。feat には前作から引き続きCampanella, 神戸コネクションでandy toy storeが脇を固めてていい感じ。
 ヒップホップに限らず色んなジャンルの音楽をインプットしてるからのラップとサウンドであり、ヒップホップの雑食性を体現していてかっこいいと思う。好きな曲は”Kobe dope”

[AOMIX] EP.25 by Sina Hill

 韓国のヒップホップレーベルであるAOMGが定期的にアップロードしているミックスシリーズ。洒落てる場所なのはさることながら、毎回選曲がツボすぎてテレビでよく流している。(プロモーションを含むためCMが入らないのがいい)
 今回は2000年台ハウス、ブレイクビーツなミックスでめちゃくちゃ良かった。”The Revolution Will Not Be Televised” から始まり、Talc, Grooveman spot, Julien Dyne, Moodyman, Theo Palishあたりがかかって懐かしい気持ちに。AOMG mix聞いていると毎回自分達がDJしていたころのノリを思い出す。ヒップホップを軸にどういう風に横展開していくのか皆が考えていたし、このノリに共感できるのも韓国ヒップホップが好きな理由の一つかもしれない。