ラベル Music_2024 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Music_2024 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025年1月15日水曜日

2024/12 IN MY LIFE Mixtape


 もう誰も2024年の音楽の話をしていないと思うけど、無事に1年間完走したので記録として書いておく。ここ数ヶ月はもうSoulectionのおかげで、知らない新譜との遭遇率は上がるし、そのクオリティは死ぬほど高いので、聞く音楽に困らない状況だった。そして、12月も継続といった感じだった。やはりクリスマスムードに引っ張られて、バラードとか聞きたくなるのは音楽特有だと思う。(クリスマスにクリスマス題材の映画や本を見たり、読むより圧倒的にハードルが低いからだろうけど)

 ミクステスタイルをとったことで、ここ数年のひたすら新譜だけを追い続けるだけの主体性のない音楽リスニング体験から少しは逸脱できた気がする。毎月曲順考えて、ジャケ用意してという作業も好きだった。そして、一番大きかったのは車が運転できるようになったこと。車で自分のプレイリストを聞きながら街を流すのは、心がリラックスする効果が如実にあった。あと聴きたい音楽に悩んだときに、とりあえずプレイリスト選んでシャッフルできるのもいい。

 2024年のラップアップはこんな感じ。プリンスの本を読んだり、ISSUGIのライブ行ったり、そういった繰り返し聞くための動機があってこそ、何度も同じものを聞くことがデータからわかる。21 savage は1月リリースで一番好きだったから、結果的に一番聞いたのだろう。ストリーミングサービスの年末のラップアップは、ファクトフルネスなアプローチ、つまり客観的な再生データであり、そこに個人の思いは載っていないことは意識しておきたいところだ。SNSで「特定のアーティストの再生回数上位何%かに入っている」というアーティストに対するロイヤリティの示し方は未来が来ていると感じた。


 2025年は月単位でまとめるのは止めて、一つのプレイリストに貯めていくスタイルかな。ちなみに12月のジャケットは子の手作りアドベントカレンダー。これでも毎日シール貼ることを楽しみにしていた健気さに胸が洗われた。


2024年12月12日木曜日

2024/11 IN MY LIFE Mixtape

 11月も新譜チェックで手一杯というかヒップホップのリリースが多過ぎて堪能してたらキリないぜって感じだった。先月に引き続きSoulection Radioには大変お世話になり、なかでもアフロビーツの新譜の量の多さと質の高さに驚いた。ある程度、ジャンルとしての型が決まってきた中で、クリシェから逸脱を試みるメロディーやリズムの変化があり、その中で個人的に好みなものがたくさんあった。

 ライブはISSUGIのワンマン、韓国ヒップホップのイベントであるRAPHOUSEに遊びに行った。両方とも雑感踏まえて書いたので読んでみてください。

ISSUGI & GRADIS NICE 『Day’N’Nite 2』 Release Party

RAPHOUSE Japan

 季節的にWrap up系の投稿をよく見るけど、今年はまだ終わっていない!といつも思うので、また12月が終わったらベストを考えたい。ジャケットはライブ帰りに1億年ぶりに食べたやしま。インバウンド客に囲まれて食べるうどんは異国情緒もあり美味しかった。

2024年12月7日土曜日

RAPHOUSE Japan


 韓国のヒップホップシーンの一種の登竜門的な役割を果たしているRAPHOUSEの日本版が開催されるということで渋谷のO-westまで見に行ってきた。韓国のラッパーによるショーケースは近年日本で増えつつあるものの、深夜帯だったりして見に行けないこともある中、デイタイムで一種のフェス的にいろんなラッパーが見れるRAPHOUSEのようなフォーマットは大変助かる。なので、継続して開催してほしい。

 今回は日本開催ということで日本サイドのラッパーも合わせて参加、計6組のライブで構成されていた。先に日本サイドの話をすれば、Rude-α、チプルソ、LIBROが出演しており、こんな独特の並びで見れることはなかなかない。三人ともそれぞれのベクトルでライブ巧者であり、さらに共通点を挙げるとすれば、ラップのグルーヴが挙げられるだろう。音楽的な成分が高いほうが、言語の壁を超える可能性が高いと考えれば、この人選に納得感はある気もする。

 なかでもチプルソのライブは今年見たショーケースのレベルとしては最高クラスだった。この日の客層からして自分のことを知っている人が少ないことを利用し、冒頭いきなり客席からラップを始めたり。”このグルーヴを捕まえて それがすべてさ”という七尾旅人、やけのはらによる「Rollin’ Rollin’」を引用したり。バブルソやThe Clap Brothersとしてのリリースはチェックしていたが、それらがライブで表現されるときのフィジカル性が異様に高くて魅了された。ヒット曲がなくても客をロックできるラッパーの底力をみた。むかし、NOONでMPC1000とアコギでライブしていた頃から見ているので隔世の感があった。

 前置きが長くなったが、この日の目当ては韓国サイドのラッパーである。出演者はSkinny Brown, Changmo, The Quiett。Qが運営するAmbition musik, Daytona Entertainmentから、それぞれメインどころを持ってきており、日本市場を真面目に狙っていることが伺える。

 Skinny Brownはまさに今どきのラッパーという感じ。正直そこまで熱心には聞いていなかったものの、素晴らしいメロディメーカーなので、曲を聞いて「おーこれもか!」と思うことが多かった。Changmoはアルバムタイトルにもあるとおり、完全にロックスターモード。前回出演していたGo Aheadzの方がパフォーマンスは安定していたように感じたが、今回は会場がコンパクトなこともあり、とにかくバイブス、熱量の高さが印象的だった。そして、この日一番楽しみにしていたThe Quiett は安定感抜群のこれぞベテラン…!というライブで一番ブチ上がった。Illionare Records時代の曲から最新アルバムの曲までバラエティに富んだ選曲でさすがとしかいいようがない仕上がり。音源通りの声がラップとして生で聞ける喜びを久しぶりに味わった。こんだけ現役感たっぷりでライブもやりつつレーベル運営、ライブ企画までやって、後進の育成に励んでいる姿を見ると、ヒップホップアクティビストという言葉は彼のような存在を言うのだろう。

 今回はがっつり身内編成でのライブだったが、次回開催されるメンツのようなローカル度の高いメンバーで来日してほしい。すでにSkinny Brown、Rude-αで曲を作っていたが、RAPHOUSE起点で日韓のラッパー同士のコミュニケーションが進んでいったりすれば、アジアのヒップホップの新たな震源地になるかもしれない。

2024年11月22日金曜日

2024/10 IN MY LIFE Mixtape


 10月も怒涛の新譜リリースがあり、毎日それを聞いていた。秋だからか、ベースが際立った曲をたくさん選んだ気がする。

 大きな変化としては久しぶりにSoulectionの番組を聞くようになったことだ。Soulectionは自分の音楽の嗜好性に大きく影響を与えたレーベル、コレクティブだ。彼らの番組は新譜のディグの深さと、そのトーンに合わせた旧譜のセレクトが抜群で聞いていて本当に楽しい。最近、ネプチューンズ特集があって、そこで気になった曲を最後にプレイリストの最後にまとめておいた。エディット、REMIXがたくさんかかってたけど、オリジナル曲でも古びないヤバすぎるスキルを感じたネプチューンズでした。写真はシルバニアファミリーの車。


2024年11月9日土曜日

ISSUGI & GRADIS NICE 『Day’N’Nite 2』 Release Party



 ISSUGIの新しいアルバム『Day’N’Nite 2』のリリースライブへ行ってきた。2016年以来、二度目のGRADIS NICEとのタッグアルバムだ。GRADIS NICEはさまざまなラッパーにビートを提供しているが、やはりISSUGIとのあいだには特別なケミストリーがあり、今回のアルバムの素晴らしい曲の数々をライブで聞けることを楽しみにしていた。

 基本的にアルバムの流れで順番にパフォーマンスを披露していくスタイル。GRADIS NICEがバックDJを務め、アルバム冒頭を飾る「BK Suede」を流したところでISSUGIが登場。Navy NubackからBlack suede という変化と、下げたジーンズという変わらないスタイルの対比から放たれる”東京のアクセント”は誰もが簡単に真似できない彼のB-BOYスタンスだ。

 矢継ぎ早にfeatを呼んだ2曲へ流れ込む。「YingYang」「Step into the game」のいずれもEpic, Eujun, Sadajyo といったフロー巧者を召喚した曲だが、これらの曲におけるISSUGIのリリックに注目したい。”貧しさから握ったマイクじゃない”、”Japanese rap 悲劇の悪趣味をオレが喜劇でOver”というラインは明らかにRAPSTAR誕生以降を踏まえているように映る。それはSadajyoをフックアップしていることからも明確で、Sadajyoにはリアリティショーとして分かりやすい一種の「不幸自慢」がなかった。それだけが彼が敗退した理由ではないとはいえ、スキル、アティチュード至上主義のISSUGIが彼を大きくフックアップすることにシーンに対する一種の宣言が透けて見える。MONJU以外でSadajyo、JJJだけが2曲客演したこと、この日のセットリストにもあった「Lyrics, Gemz, Peeps & Treez」のリリックからも明らかだろう。

 GRADIS NICEとの1作目である『DAY AND NITE』からどの曲が披露されるのか楽しみにしていたが、仙人掌、Mr.PugというMONJUの盟友二人がそれぞれFeatで参加した曲だった。一作目は本当によく聞いたので、久しぶりにライブで聞くことができて嬉しかった。当時のリリパは代官山の「晴れたら空に豆まいて」だったことも踏まえると、この日の観衆の多さは隔世の感があった。

 上述したメンバー以外の客演はJJJ、BESといった安定感抜群な馴染みのメンツ。前回のライブでもバイブス番長としてのBESは際立っていたが、今回もそれは健在だった。アルバムの中では隙間の多いビートだが、ラップ魔神二人にかかれば極上の仕上がりになる。ここ5〜6年でBESのライブパフォーマンスを何度も見てきているが、確実に息を吹き返しており「あの頃のBESが!」という気持ちで本当に嬉しかった。JJJは言わずもがなの仕上がりであった。

 惜しむらくは今回のライブで5lackがいなかったことだろう。というのもアルバムにおける5lackの役割はアルバム全体のクオリティを支える大きな屋台骨だからだ。「Janomichi」で素晴らしいメロディでフックを歌ったかと思えば、「Wizards」で放たれるラップは独特の間の使い方で完全にネクストレベル。そんな彼の不在は痛手だったものの、そこは見せ方を工夫していた。特に「Wizards」では、5lackのバースをアカペラで聞かせてから、GRADIS NICEのエグいビートがドーン!と鳴ってぶち上げるという百戦錬磨のラッパーゆえの魅せ方が素晴らしかった。

 この日のハイライトはなんと言っても「XL」である。ヒップホップに対するアティチュードの表明は前作から特に顕著になっているが、今回のアルバムでは「XL」がそれを担っている。今のISSUGIのライブへ来ている観衆の多くは礼拝するかのように、そのアティチュード、つまり「俺たちの好きなヒップホップとは何なのか?」を確認しに来ているはずだ。だからこそ盛り上がりは他の曲と段違いだった。そして、この曲から「One on One」 へ流れていくことで「XL」の意味がより輝く。彼の数あるパンチラインの一つ、”XLのシャツに意味なんて求めるな”をリリースから11年も経った曲で回収していくのは本当にかっこよかった。本人も「一番ライブでやりたかった」と言っていたので、「366247」のような新たな定番になるかもしれない。

 また、ISSUGIのDJに対する独特の熱い想いも光った。スクラッチ要員としてDJ SHOEを呼びこんだり、一通り今回のアルバムの曲をやり終えると、バックDJとしてわざわざScratch Niceを呼び込んでいた。ヒップホップのライブでは、バックDJが単なるポン出しになることも多い中で、彼がDJに見出している意味がステージングから伝わってくる。ラップがうまいラッパーはいくらでもいるかもしれないが、こういう細かく、そしてかっこいいアティチュードの積み重ねが、ISSUGIというラッパーを形成していることが如実に現れた場面だった。

 今やヒップホップは日本でもポップカルチャーの一部となりつつあるが、それに伴った歪みを感じる場面はリスナーレベルでもたくさん遭遇する。プレイヤーサイドはそれ以上にどういう表現をするのか、アティチュードが問われる場面が今後ますます増えていくだろう。そんなとき、ヒップホップを文字通り体現するようなラッパーたちが最後の砦となり、私たちが愛するカルチャーを死守してくれるはずだ。そんな最後の砦のラッパーの一人、ラストB-BOYは間違いなくISSUGIだという思いを新たにするライブだった。


2024年10月7日月曜日

2024/09 IN MY LIFE Mixtape

 今月は訃報が多く、特にFrankie Beverlyが亡くなった話は辛いものがあった。ヒップホップの元ネタ入りの浅いソウル好きのような僕にとっても、Frankie Beverlyは本当に大好きなシンガーであった。ソウルのレコードはかなり手放したものの、MAZEのアルバムはまだ手元に置いてある。亡くなってからライブ盤を久しぶりに聞き直すと、そのマチュアな音楽性に改めて敬意を抱いた。彼が残した音楽は無くならないから、これからも聞いていきたい。

 また、今月は読書で音楽が触発された。なかでも『プリンス録音術』という本は、プリンスのアルバムをスタジオワークから再評価するという斬新な内容で、本に載っている話を読みながらアルバムを聞くと、アルバムの持っている別レイヤーが見えてきて楽しかったし、なによりもプリンスの偉大さよ…!膨大な量のアルバムを残しているが、今はストリーミング、Youtubeなどでかなりのカタログを網羅できてしまう。聞いたことがないアルバムを聞くと、知らないかっこいい曲がゴロゴロ出てくる。人生レベルでDigっていきたい。

 あとは『イッツ・ダ・ボム』もおすすめしたい。グラフィティの小説だが、現在のラップミュージックの捉えられ方と重なる部分も大いにあった。同じヒップホップというカルチャーに包含されるので、当然といえば当然なんだけど、重ね合わせて考えたことがなかった。ラップミュージックが語られる場面で感じる違和感の正体がずっと謎だったんだけども、それは究極的にいってしまうと、小池百合子がバンクシーもどきと一緒に写真を撮ったときの嫌悪感と一致することに気づいた。ラップミュージックがポップスとなり、マス化している時点で避けられないことではあるものの、表面的な知識だけ薄手の長シャツみたいに羽織って、足元は土足で入ってくるから、そらゲートキープしたくなるよな〜と。なんてことを考えたのでした。

 ジャケットは公園でひろった落ち葉とバケツ。砂場の季節 has come.



2024年9月10日火曜日

2024/08 IN MY LIFE Mixtape

 


 夏なので、やはり夏を意識した音楽を選んでしまう8月だった。とにかく最近はUS、UKを中心にR&B新譜のどれもがクオリティ鬼高くて、一枚聞き始めると無限リピートしてることがよくある。プレイリスト時代対応型というか、アルバムの中でいろんなムードの曲をきっちり盛り込みつつ、流れも素晴らしい、みたいなアルバムばっかり。そんなこんなで旧譜との接点はますます失われていくなーと思う。ジャケットは子どもが作ったぶどうみたいな液。



2024年8月8日木曜日

2024/07 IN MY LIFE MIXTAPE


 今月もリリース多過ぎかつ質が高いアルバムが多くて新譜を聞いているだけで日々が過ぎていくのであった。やっぱり夏なので全体に夏っぽい曲を選びがちだった気がする。この「夏っぽい」というのは何となくの感覚であり、冬の曲でも夏のムードを感じることもある。特定の楽器の音色やテンポとかで決まっていくのだろうけど定義は曖昧だといつも思う。ただこのムードというのは奥深くバカにできない。Spotifyには「ムード」というカテゴリまで用意されているし、実際特定のアーティストを再生するよりも何となく音楽を聞きたいときに優先されるのはムードもしくはシチュエーションだろう。というボヤ〜としたプレイリスト論を展開するほどに毎日が暑すぎる。

 7月はJJJのライブをZEPPで見たり、帰省タイミングのアマチュアナイトでJambo Lacquer, anddy toy store、Kay-onのライブを見たり。いずれも今の若い世代におけるヒップホップの人気っぷりを体感するには十分であり加齢を感じるのであった…いつか家でしか聞かない音楽になってしまうのだろうか。

 選んだ各曲、色々話したいことがてんこ盛りではあるが、今月はSUMIN,slomのアルバムが本当に素晴らしかったので皆に聞いてほしい。大人の金稼ぎに使われる年端もいかないK-popアイドルをしたり顔で音楽的に語る言論が本当に苦手なのだけども、そういう解釈好きな輩にこそ聞いてほしい。シティポップ含めたJ-Pop経由のK-R&Bが洗練されまくった結果、ノスタルジーと新しさが同居している。今月はアルバム単位で好きな作品が多かったけど傑出していた。

 今月のジャケは保育園に放置された オールドiMac…以前から保育園、幼稚園レベルではないオーディオ機器の充実具合を不思議に思っていたのだが経営者はガジェオタなのかもしれない。

 🍎Apple music🍎

🥝Spotify🥝

2024年7月12日金曜日

JJJ JULY TOUR


 JJJのワンマンライブに行ってきた。昨年リリースのアルバムは個人的に2023年のベストだったし、リリース後に初めてライブを見るのでとても楽しみにしていた。その期待をはるかに上回る圧巻の完成度の素晴らしいライブだった。約2時間MCなしでスピットし倒すラップ力、ライブのうまさは健在。今回はヒップホップのラウドさを活かしつつ音楽的な挑戦と拡張を掲げた野心的な編成が特に目を引いた。それは生楽器の導入だ。コントラバスとしてSTUTSバンドでおなじみの岩見氏を招聘するところまでは予期できる範囲だが、尺八、琴の奏者を召喚するのは想像の上の上だった。尺八、琴も海外のラッパーたちがオリエンタリズムの要素の一つとしてビートで使っているケースがあるが、日本のラッパーがそういった象徴的なものではなくモダンな音として採用している点が本当にかっこいい。JJJで琴といえば当然「wakamatsu 」を想起するわけだが、それだけではなく元のビートにその手の音が入っていない曲も含めアレンジが施されており各曲をネクストレベルに押し上げていた。

 なかでも最高だったのは「Friends kill」への入り方。尺八奏者がサックスさながらのソロプレイを始めて徐々に当該曲のフレーズを混ぜていき徐々に寄せていく構成が憎い。ツアータイトルにもなっている「July」が琴使いとしてはハイライト。琴に対してなんとなく正月のイメージを持っているけど、音色としては完全に夏であり清涼感の演出に大きく貢献していた。コントラバスは尺八、琴に比べて、かなり多くの曲で参加していたが際立っていたのはイントロ。特に「Strand」前のソロ演奏、「心」前のSTUTSとのセッションが白眉だった。

 ここまでアレンジがどうのこう書いてきたが、それらはすべて後付けでありベースとなるビートの圧倒的な鳴りがあってこそである。彼がキャリア初期からこだわってきたその鳴りがZEPPのような大きな会場で爆音で響き渡っていた。”そんなビートじゃ たたねえよ Right?”は彼だからこそ言えるラインであることの証左となっていた。

 フィーチャリングの充実度も想像以上で盟友Campanellaの八面六臂の活躍しかりISSUGIのOGとしての立ち振る舞い、Kid fresino のフリーキーさ、Daichi Yamamotoのクールネス、盛り上げ番長C.O.S.AとOMSBのSummit組、フックだけでクラウドを掴み切るKEIJU、ミューズのMFSなど。フィーチャリングだけで十分お釣りがくる豪華さであった。

 キャリアを総括するように1st、2ndの曲もふんだんに披露してくれたのも長い尺が可能なワンマンライブならでは。特に「Place to go」や「Room」は個人的なフェイバリットだったし比較的キャリア初期からライブを見ている身からすると感慨深いものがあった。

 そして今回のライブで際立っていたのはFEBBの存在だ。亡くなってしまってからもう六年経つわけだが、そんな中でも彼は忘れられることがなく観客の心の中で生きていることがライブで証明されていた。楽曲で生き続けていることを示すかの如くFla$hBackS時代の曲を含めて多く披露していた。そして観客もFEBBに対するJJJの思いを汲むかのようにフックやバースをシンガロングする様子が印象的だった。そういった観客たちの想いが一番昇華されたのは「Beautiful mind」だろう。この曲を若い子たちがみんな全力で歌っている様を見ると、こういった形で一種のペインを共有しながら盛り上がることのできるヒップホップの素晴らしさを改めて感じてこみ上げるものがあった。(オープニングDJで16FLIPがFEBBの曲をかけたときの盛り上がりも記しておきたい。)そして最後は“Changes”で大団円。

 寡作なアーティストではあるので次のリリースまでもしかすると時間がかかるかもしれない。しかし、それは彼に音楽に対する真摯な姿勢があるからこそ。そんなJJJが生み出す次の音楽はいつまでだって待ちたい。


2024年7月6日土曜日

2024/06 IN MY LIFE Mixtape

 もう上半期が終わってしまったことが未だに信じられない。そんな加齢を感じまくる6月だった。最近は負荷強めの仕事が多くそんなときは音楽が心の支えになる。

 今月もAOTY候補になるようなアルバムがたくさんリリースされており、Tems, Kaytranada, JasonMartin & DJ Quick, Bilalは繰り返し聞いた。なかでもTemsの”Burning”は火葬するときにかけて欲しいくらいの人生レベルで好きな曲の一つになった。ビートも歌詞も特別なことは何もない、なのにこんなに感動してしまうことに音楽のマジックを改めて感じた。

 韓国のヒップホップはベテラン勢のリリースが目立ちLos, The Quiett, Epik highなど。特にQ御大がついにアルバムをリリースしたのが大きなトピック。ここ数年Daytonaを立ち上げて数々の若手、ベテランのリリースを支えてきたなかでその活動の結果を交えたウェルメイドな内容であった。Daytonaはレーベルでの動きは見せないのがポリシーらしいが、コンピ聞きたいっす…とアルバムを聞いてなおさら思った。またLee young jiがついにまとまった音源をリリース、その内容に驚いた。すでにマス受けしている状況でこんなにネオソウル的なアプローチを取るなんて正直想像もつかなかった。韓国におけるメロウを受け止めるリスナーサイドの懐の深さを改めて感じる。またSMTM11でJay Park & slomチームに加入したのもJay Parkではなくslomのビートに惹かれていたのかも?と思うと今まで彼女のことを大きく誤解していたのかもしれない。

 日本のヒップホップだとKaneee, SANTAWORLDVIEW, Le Makeupあたりが好きだった。Kaneeeのアルバムはいわゆるアルバムとしての完成度が異常に高く、ポップミュージックとしてのヒップホップ、コンペティションとしてのヒップホップ、この両方を満たす圧倒的なクオリティ。一方でSANTAのアルバムはどストレートな「日本語ラップ」で久しぶりにこのテイストを味わえるのが嬉しかった。ただ一番再生していたのはLe Makeup。ヒップホップというかR&Bの方が近い?のかもしれないが、歌詞、歌、ビートのすべてが調和して最高のアルバムとなっている。ギター中心でインディロックテイストだけどもビートはヒップホップやR&Bのそれというのはここ数年の一大トレンドで日本からその最高傑作が出たといっても過言では無い。そして日本語詞にこだわり叙情性に妥協がない点もめっちゃ好きだった。もっと聞かれてほしい。

 今月はツラツラと個別に雑感を書いてみたが、梅雨を飛び越していきなり夏ムードがきたことも影響して去年あたりからハマっているレゲエ、なかでもダブをよく聞いていた。プレイリスト後半はそんなバイブスになっている。プレイリストのジャケットは公園でみたLove & Peace.

🍎Apple Music🍎

🥝Spotify🥝

2024年6月8日土曜日

2024/05 IN MY LIFE Mixtape

 5月も新譜を追い続けてたらいつのまにか終わった感じ。とにかく旧譜の接点が少ないな〜ということがプレイリスト作りを始めて気づいたこと。新譜が大量供給されるので、それは自動的に聞くけど、昔の曲を聞くきっかけはラジオかSNSしかなく、そこが機能しなくなると途端に減っていく。世間では特定の曲を愛でるように繰り返し聞く人の方が多いのだろうけど、それだと音楽を楽しく聞けなさそうなので難しい。こんなことで悩んでいるのはごく少数だろう。

 現場でいえば韓国のラッパーBLASÉのライブも楽しかった。新しいEPも素晴らしい出来だった。ライブのレビューは別で書いたので、こちらを読んでみてください。

BLASÉ JAPAN LIVE SHOWCASE

 日本のヒップホップで言えば、ACE COOLとエムラスタさんのアルバムが人生において重要な役目を今後も担うであろう作品でかなり好きだった。両方ともフィジカルでゲットしたい。

 プレイリストは前半ゆっくりメロウで後半にかけてアッパーになる感じ。こうやってプレイリストを組んでおくと何を聞くか悩んだときにとりあえず再生できて、しかも好きな要素が詰まっているから気分も上がるので最高。ジャケットは子どもと行った公園での一コマ。

🍎Apple Music🍎

>

🥝Spotify🥝

2024年5月22日水曜日

BLASÉ JAPAN LIVE SHOWCASE

 昨年のat area のレーベルライブ以来、二度目の来日公演があるということでBLASÉを見てきた。前回のライブでも本当にタイトなラップを披露していたが今回もバチバチにかましていた。前回と大きく異なるのは日本勢とのコラボレーションだ。オープニングアクトにTade Dustが抜擢されておりライブ尺を考えると実質ツーマンのような形となっていた。

 Tade Dust の1曲目はもちろん ”Chapter 1” この曲の冒頭「I fuck with UK accent」はBLASÉ と彼を繋ぐキーワードである。もともと彼が”We higher”で使った「I got UK accent」への意趣返しだろう。現行のUKのヒップホップをリファレンスにしている2人の相性が最高であることの証左とも言える。ドリル中心のセットリストで新曲が3曲披露された。なかでもD3adStockがproduceかつフックも歌っているガラージスタイルの曲がめちゃくちゃかっこよかった。

 そして肝心のBLASÉは“Peace out”のアカペラから登場。ラップうま!と何回も言いたくなるほどタイトに決めていくのがかっこいい。前回のat areaのライブ時に日本語でMCがなかったことを反省(?)して日本語でMCを繰り広げていて驚いた。「カンペをみてる」と本人は謙遜していたけれどサービス精神たっぷりな様子はタイトなライブとのギャップがあってオモシロい。”Pop it”ではステージから客席に降りてパフォーマンスし会場は一気に爆発。韓国のラッパーたちがこぞってライブが上手いのは踏んでいる場数の多さなのだろうなと改めて感じた。個人的に今回のライブで一番アガったのは新しいEPからの四つ打ちチューンの”Mean”。フックであんまり歌わない引き算のスタイルがめちゃくちゃカッコいいしグルーブがダンスミュージックのそれで最もフロア映えしていた。この曲はouidaehanによるプロダクションとのことで、ここでPop Yoursの件について点が線となった。(JJJのアルバム収録曲”July”はouidaehanのビート)

 またTade Dustを途中で呼び込み、新しいEPに収録されている”Track Suit”に加えて他に2曲も2人で作っているらしく合計3曲一緒にライブで披露していた。 盟友CODECの世界最先端のビートを乗りこなす”Track Suit”はもちろん超絶かっこいいのだけども、他2曲もドラムンベース(D3adStock×CODEC!)、王道ドリルといった感じでかっこよかったので早くリリースされて欲しい。またPop yoursが突如韓国とのコラボレーションを企画、そこに韓国サイドでBLASÉが参加した”YW”も披露されTade Dustと同じ夜猫族に所属するBonberoも登場して盛り上がっていた。ここから粋だったのは彼が「2人のかっこいい曲聞かせてよ」と言って2人の代表曲である“Life goes on”を呼び込んだところ。トップダウンのコラボではなくボトムアップだからこその信頼感がライブから伝わってきた。終盤はSMTM11メドレーで大団円。お約束が過ぎるとは思いつつもSMTMの曲は聴くだけで当時の番組に対する思いが走馬灯のように頭の中を駆け巡るので普通の曲の倍は盛り上がる。特にSMTM苦労人なので、そのこと含めて色々と思い出してしまうのであった。リアリティショーとヒップホップの相性の良さを改めて感じた。

 韓国のヒップホップと日本のヒップホップの近接は今年に入って急激に加速している中で、この2人が見せた相性の良さは本当に素晴らしかった。2人のライブを通しで見ると互いに高めあうようなシナジーが炸裂していた。誰かが用意した枠の中でコラボレーションするのも悪くないがアーティスト同士が互いにリスペクトしあってこそ表現できる景色があることを気づかせてくれるライブだった。Tade DustはInstagramのストーリーを見ている限り他の韓国のラッパーとも友好関係を築いていそうなので今後のリリースが楽しみである。そしてBLASÉのNew EPは死ぬほどかっこいいので繰り返し聞いていきたい。


2024年5月9日木曜日

2024/04 IN MY LIFE Mixtape

 4月は光の速さで過ぎ去っていった気がする。3月よりは新譜のリリースは落ち着いていて比較的じっくり聞いたアルバムが多かった。改めてLEXの魅力に気づいたのも大きな収穫。あとは久しぶりにフェスに行って現場を体感すると色々見えてくるものもあった。その辺は別記事でざっくばらんに書いたので、そちらを読んでみてください。

https://afro108.blogspot.com/2024/04/go-aheadz-day-2.html

 一番のトピックでいえば坂本龍一のNHKのドキュメンタリー。音楽と死があれだけ濃厚に漂う映像作品はなかなか見れないと思う。それをきっかけに坂本龍一のアルバムをよく聞くようになった。ビートレスな曲って昔はアガれないからそんなに聞かなかったけど、家でスピーカーで聞くとイヤホンで聞くのと全然違って音を楽しめるので好きになった。膨大なアーカイブがあるのでじっくり楽しみたいところ。ちなみにジャケは車で通りかかったときに見かけた橋下のグラフィティ。

🍎Apple Music🍎


🥝Spotify🥝

2024年4月13日土曜日

Go-AheadZ Day 2 雑感

 コロナ明け以降、韓国ヒップホップのアーティストのライブを見れる機会が増えて、ついにフェスが開催されると聞いて足を運んだ。日本と韓国のヒップホップのトップどころのアーティストを一度に召喚するスタイルで両方ともガチで追っている身からすると最高のフェスだった。ただ需要はあるのかという一抹の不安が…ストリーミング世代の若い人は垣根なく聞いているとはいえ、これでどれだけお客さんが集まるのか。市場はどんなもんだい?というスケベ心を携えつつ会場に向かった。

 朝から参加できる体力もないので、午後から参加。幕張メッセのフェスでの客入りがどの程度が適正か預かり知らないが正直かんばしくない感じだったかなと思う。見る側としてはめちゃ快適だったけども演者側は苦労したかもしれない。ヤンキーの男性がたくさん、あとはKポップ勢の女性がいてとにかく皆若い。自分の加齢をひしひしと感じつつJay Park御大のWONSOJUのソーダ割りをひたすら飲みまくっていた。

 日韓のアーティストを交互に組むタイムテーブルで人の好みが細分化した時代に未知なものを楽しめる人がどれだけいるのかと勘繰っていていた。しかしそれは杞憂であり若い人たちは柔軟で客層はそこまで入れ替わることなく盛り上がっていた。韓国勢はボーカルの被せなしのストロングスタイルが基本でお客さんを盛り上げるライブ力、エンタメ力がかなり高い。Changmoは圧倒的なラップと歌の力でひたすら歌い続ける力強いパフォーマンスだったし、Lee Young-jiはSMTMで優勝した理由がよく理解できた。音源とライブの乖離のなさに加えてステージングが相当完成されていた。そしてDynamic Duoはベテランの立ち振る舞いでぶち上げまくり。DJをフィーチャーしたオールドスクールなスタイルかつラップは超タイトだった。特にGaekoはラップがクソ上手いの知ってたけど歌も死ぬほど上手くて完全にGOAT。pH-1もSprayを連れて先輩のスタイルを継承するかのようでアツかった。最新アルバムの曲多めなのも個人的には嬉しかったところ。

 日本勢だとralphのライブは異次元で古参うるさ型日本語ラップクソオタクリスナー全員をkillするクオリティだった。あとはKaneeeの華。ヒップホップの枠とか関係なくスターになる人だと見た瞬間に思うレベル。こういう才能がヒップホップに集っていることが今のシーンの豊かさに繋がっているのことを痛感した。舐達麻のライブを見れたことも大きなトピックだった。Beef以降ライブを結構キャンセルしてる中で見れたのは貴重な機会であった。彼らの曲は比較的内省的であり文学のような曲なので、デカい会場で皆で聴くのにはあんまり向いていないのかもしれない。一番人が集まっていたけど、皆がカメラを構えて何か起こるのを待つみたいな空気だった。例の曲はやらなかったので、もうBeefも終焉だろうか。¥Bは時間の都合で見れず無念…

 ざっくばらんだけど、韓国ヒップホップ好きとしてはかなり楽しめたし合間で現行の日本のヒップホップ最前線も見れたしでお買い得ではあった。もし今度やるなら、もっとアーティスト同士の交流が進み有機的なコラボが実現するケースが増えてから開催して欲しい。(この点についてPop Yoursはかなり意識的に取り組んでいる)この日も会場でDJ CHARIが”GOKU VIBES”を流していたが、あの曲は日韓コラボの一つのメルマークとして機能するはずが、あまりにヒットしたがゆえにそういった語られ方が無くなってしまった。Elle以降のバースはないものになっている場面を多く見る。またコラボという観点では日本のヒップホップの外交官であるJP THE WAVYを呼んでSik-K、Kid Milliを呼ぶという選択肢もあったはず。

 直近あったデカ案件でいえば、ASHISLANDとちゃんみな、IOとGRAYなどがあるが、ビジネス案件に見えてしまってそこまで乗れない。ちょうどいい塩梅を模索していけば、もしかすると1曲で何かゲームチェンジが起こるかもしれない。実際オーバーグラウンドではBIMがGRAY、Coogieとのセッションを公言していたり、socodomoの次のアルバムにLEXが参加している模様だし。アンダーグラウンドではTade Dustがドリル勢と交流しているし、NSW YOONがなぜか和歌山勢と急接近していたり。だから何かが起こる予感はある。その前夜のフェスとしては悪くなかったはず。日韓のヒップホップの未来は暗くない。

2024年4月5日金曜日

2024/03 IN MY LIFE Mixtape

 今月は本当に新譜を追うのが大変だった…マジで無限に毎週リリースが続いて1枚聞いては次を聞くという感じであんまり深掘りできていない。それでも取りこぼしが発生しているので来月分でカバーしていきたい。あと旧譜もそこまで入れられてないのも反省点。新譜だけならレコメンドシステムの仕事であり、そこに旧譜をどう混ぜるかが醍醐味なのでセレンディピティを大切にしたい。

 SpotifyのレーダーとApple musicの新譜レコメンドの組み合わせでフォローできる新譜の範囲がかなり広がったことも影響している。新しいものを貪欲に聞くこと、好きなものを繰り返し聞くことの違いについて考えることも多かった。本でいえば再読にあたる行為であり、最近そういうマインドが起こりつつある。これは加齢に伴うキャパの縮小化、保守モードへの突入の予兆かもしれないので新年度になったことだし積極的に新しい刺激を取り入れていきたい。

 リリースタイミングというより毎月自分が聞いた曲をベースにプレイリストを作っており、あくまで自分基準なので無理がないのはヘルシーである。プレイリストを聞いていると音楽日記を読んでいるようでそれも今のところは楽しい。ジャケは手作りしたワッフル。異常にQOLアガるので皆におすすめしたい。

🍎Apple Music🍎


🥝Spotify🥝

2024年3月10日日曜日

ACE COOL『群青ノ痕』


 ACE COOLのワンマンライブ”群青ノ痕”@渋谷WWWを見てきた。『GUNJO』 は1年に1回は必ず聞き返すアルバムであり、個人的には現在のシーンで最もunderratedなラッパーだと思う。RED BULLの64barsや各種客演曲などで知名度が飛躍的に向上したこともあってか会場のWWWは階段までパンパン。本人もライブ中に言っていたが、こんなに人気あるのかという驚きもありつつ、とはいえ彼の実力からすればまだまだ序章と言っていいはずだ。

 ライブはキャリアを総括すると共に新曲も盛り沢山、未来に向かう内容で本当に素晴らしかった。ラップ筋力が尋常ではなく基本的にボーカルなしのインストの上でアンコール含む約1時間半ひたすらスピットしつづけていた。あれだけ複雑なフローなのに音源との乖離がなく聞き取りやすさもある。リリックはウィット、叙情性もあり、さらに固有名詞もユニークなチョイスが多い。ビートもオーセンティックなものからトラップ、トレンドのジャージーまで、どんなものでも彼は自分のスタイルを崩さずACE COOLの曲として聞かせてしまう。こういった多面的な魅力があるがゆえ密度の高いラップの塊のようなショウが成立していた。

 またインハウスのプロデューサーであり、そしてこの日バックDJを務めていたAtsu Otakiもライブで大きな役割を果たしていた。ACE COOLのボーカルにディレイをかける演出がユニークでライブに展開、緩急を生み出していた。またビートの大きさ、鳴りのコントロールも素晴らしかった。WWWでヒップホップのライブを見るとき、大した音質でもないオケの音がバカでかくてボーカルが聞こえないことが多々あるのだけども、この日は鳴りもバッチリな上に彼のラップがちゃんと映えるようになっておりDJイング、ひいてはエンジニアリングの巧みさが光っていた。

 Featは2023年の彼を象徴するような客演曲であるCampanellaとの”YAMAMOTO”とOZworldとの”Gear 5”がかなり盛り上がっていた。ACE COOLのスキルに呼応してシーンきってのラップ功者であるCampanellaとOZworldから声がかかるのも納得だし2人との曲をワンマンで聞けたことはありがたい。そして盟友MOMENT JOON、Jinmenusagiの2人もかっこよかった。MOMENT JOONは”IGUCHIDOU”という彼の持ち曲から”BOTTOM”へという大胆な展開。ACE COOLのMOMENT JOONをリスペクトする姿勢が伝わってきた。そしてJinmenusagiとはスキルメーターが完全に振り切れてる”Kiwotzukenah”から昨年リリースされた”SAKURABA”のREMIXとして新たにACE COOLが参加したバージョンがエクスクルーシブとして披露。この2人は最近KREVAに曲を作ってみたいラッパーとして名指しされていた。それは置いておいても2人でEP作ったら確実にハネると思わされるほどライブでの相性はバッチリだった。この盟友2人が今のACE COOLのスタイルを形成していると言っても過言ではなくスキルはJinmenusagi、リリシズムはMOMENT JOONに触発されているのは間違いないはず。だからこそアンコールの最後で2人が飛び出てきたのは非常に象徴的だった。それは「俺たちのACE COOLが!」という観客の気持ちを代弁していたとも言えるだろう。

 Jinmenusagiがステージ上でシャウトアウトしていたようにACE COOLは日本のヒップホップの中でも誰も登ってこなかった山に挑戦している。それは前述のとおりスキルとリリシズムを含むストーリーテリングの両立だ。長いキャリアの中で彼は両方を追い求め続けた結果、唯一無二のポジションを獲得している。この日のライブでも顕著で”RAKURAI”、”EYDAY”といった圧倒的なフロウでバースをかまし、盛り上がりやすいフックでクラウドを扇動するような楽曲もあれば、”AM2:00”、”SOCCER”のような情景を鮮明に焼き付けるように聞かせる曲もある。*”派手なバックグラウンド、ボースティングないんだ特に”*というリリックにあるように、彼は分かりやすいヒップホップクリシェを使わずにヒップホップという頂へ挑戦している。つまり表面的ではない、借り物ではない自分の胸の内にある言葉でラップをビルドアップしている。あれだけたくさんの観客がいる中、ラップが終わって完全な静寂が訪れ、観客それぞれが過ぎた時間を噛み締めるといった場面はヒップホップのライブで体験したことがなく本当に新鮮だった。

 今はYouTubeやストリーミングがあり地元にいたまま十分活動できる環境が整っているし自分がいかにすぐに正解にたどり着き人気があるかを誇示する時代となっている。しかし、彼がラップを始めた頃は音源を他人に聞いてもらうまでのハードルが今では想像できないくらい高かった。日の目を見るまでの長いあいだの鬱屈した感情や下積みといった彼のバックグラウンドをリリックで可視化、共有しているからこそ、この日のライブは特に感動が大きかった。ヒップホップのインスタントな部分も大いに愛しているのだが、結局自分が好きなラッパーは楽曲やアルバムでナラティブを愚直に綴っていきライブへ還元していくスタイルなのだと再認識した。次のワンマンライブは新しいアルバムがリリースされるときだろうか、もっと大きいステージで見れることを願ってやまない。”戸愚呂兄弟”やJJJのビートを含む新曲など漏れるものが多いが当日のプレイリスト。リリースされれば補完していきたい。

2024年3月8日金曜日

2024/02 IN MY LIFE Mixtape

 ついに2024年がスタートしたという感じで膨大な量の新譜を聞く毎日が始まった。と同時に今年は旧譜との出会いも大切にしているので毎日聞く音楽に事欠かない。

 前職の先輩方と数年ぶりに飲みに行って人力レコメンドの偉大さも知ったし、SpotifyのRelease Radarを久しぶりに見てるけど、その精度はApple musicのそれとは雲泥の差でとても便利。ただApple Musicはアルバム単位のレコメンドが結構優れていてR&BやJazzはそれで知った去年リリースの作品で「こんなんあったん?」みたいな出会いが多かった。

 変わり種でいうとフジコ・ヘミング。最近NHK+をめっちゃ見ていて、そこで出会ったドキュメンタリー「漁師と妻とピアノ」で知った。50過ぎまで漁師を生業として休日はパチンコしまくりだった人がある日突然ピアノに目覚めて超絶難易度の高い”La Campanella” を弾けるようになるまで練習しまくった結果、全国で講演するようなピアニストになった。そのピアノに目覚めるきっかけになったのが、フジコ・ヘミングによる”La Campanella”ということで選んだ。

 なおジャケは雪の日の保育園の送り帰りに撮った小学校の風景。久しぶりに雪を見た。

🍎Apple music🍎

🥝Spotify🥝

2024年2月9日金曜日

2024/01 IN MY LIFE Mixtape

 去年は新譜のレビューをひたすらポストするという労力をかけていたが、結構しんどかったので今年はプレイリストを作っている。これが一周回ってめっちゃ楽しい。新譜縛りではなく、その月の出来事、たとえばレコード買ったり、惜しくも亡くなってしまったアーティスト、ラジオで聞いた曲など、偶然出会った音楽と新譜を混ぜて1つの流れを作っていく。この作業がDJするのと同じで楽しく音楽の記録としても結構分かりやすくて良かった。新譜は「新しい」というトリガーで聞けるのだけど、旧譜との出会いは意外に少ないがゆえにセレンディピティを大事にしたいし記録に残っていけばよい。

 あと単純に自分の好きな曲を集めて、それを聴く快楽が想像以上にあったことに驚いた。これは皆アルバム単位で聞かずに自分の好きなものだけ繰り返し聞くようになるよなと納得した。

 今月分はこれ。車を角にぶつけたので自戒のジャケ。こういうジャケ作りも昔から好きなので楽しい。

🍎Apple music🍎


🥝Spotify🥝