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| リスペクト/宮下裕加 |
noteで日本語ラップに関するポストを読んでいる中で著者の記事に遭遇し、最近ZINEを刊行されたと知って読んだ。取材対象であるラッパーへの愛に満ちた素晴らしい作品だった。
90年生まれの著者が、自身の好きなラッパーたちに取材し、そこから見えてくる彼らの魅力を、著者自身のパースペクティブを交えながらさまざまな形で紹介している。フォーカスされているのは神戸のラッパーたち。それも、近年盛り上がりを見せている神戸のヤングガンたちではなく、神門、ZIGEN、小林勝行という3人のベテランだ。小林勝行は比較的聴いてきたものの、残り2人の音源はあまり聞いたことがない状態で読み始めたのだが、興味深く読めた。
個人的にラッパーの制作背景を知るのが大好きなので、そこを深掘りしてくれているのがありがたい。神門のノートの密度には圧倒されたし、ZIGENのウクレレ(!)を駆使したスタイルは斬新だった。そして、小林勝行がiPad+タッチペンでリリックを紡いでいるだなんて!長いキャリアを積み重ねてきたベテランたちが、それぞれのスタイルにたどり着き、売れる、売れない関係なく、今なおスキルを磨き続けている姿がとにかくかっこいい。
こういった音楽系の書籍を読むたびに感じるのは、サブスクリプションサービスのありがたみだ。取り上げられている音源を、読みながらすぐに聴くことができる。恐ろしい速度で新譜がリリースされていく現在、過去の作品とじっくり向き合う時間はなかなか取りづらい。そんなとき、こうした本が音楽を聴くきっかけを新たに与えてくれる。もちろんSNSもその役割を果たしていると思うが、並々ならぬ熱量が込められた書籍、なかでも個人的な思いが乗ったZINEだからこそ、人を動かす力があることは間違いない。実際、久しぶりに『神戸薔薇尻』やDJ NAPEY『FIRST CALL』を聞いて、改めてそのかっこよさに痺れた。
3人それぞれの魅力があるが、やはり小林勝行のパートに惹かれた。彼のことを愛するDJ KAMAと著者による対談が掲載されており、小林勝行の魅力を「労働歌」の観点から見事に言語化していた。ラッパーの魅力をきちんと言葉にして記録として残していくアプローチは貴重なものと言える。
労働歌って自分自身のためだけに歌われてきたわけじゃなくて、他者のために歌うっていう感覚があったと思うんです。自分以外の誰かを想って歌われて、広まったものだと僕は思うんです。小林さんのリリックのつくりもそれと同じで、主観で他者を見てるというか、自分の目で見た自分以外のものっていう視点をすごく感じます。
日本語ラップの爆発的な人気の拡大に伴い、多くの人にとってヒップホップやラップが身近なものになった。ヒップホップはサウンドが常に更新されていくし、基本的には若者の音楽であることも否めない。しかし、長いキャリアを積み重ねてきたからこそ可能になるアプローチで、それぞれがヒップホップに取り組んでいる姿を本著のような形で知ると、読んでいるだけで勇気をもらえた。
私自身も個人でZINEを制作しているのでよくわかるが、このクオリティの作品を一人で完成まで漕ぎ着けるのは並大抵のことではない。レイアウト、構成、内容の隅々にまで配慮が行き届いており、自分のZINE作りにもフィードバックしたいと思った。3人のラッパーに少しでもくらった人は必読。そうでなくても、「ヒップホップと人生」というテーマの読み物として抜群に面白い。日本語ラップ好きはマストチェック。
<余談>
2000年代後半〜2010年初頭まで、私は大阪で大学生をしながら、ヒップホップシーンの末席中の末席でDJをしていた。本著を読み始めた際に、ZIGENという名前を見て「どこかで見覚えある…」と思って記憶を辿っていくと、友人のNao君が初めてパーティを主催した際のゲストアクトだった。フライヤーも出てきた。
さらに、DJ KAMAの紹介文にあった「Code0898」と「KENGO」の文字にも見覚えがあるなと思ったら、当時Nao君と同じく仲良くしてもらっていたKENGO君で、彼もそのパーティにDJとして出演していて人の縁を感じたのだった。みんな元気かな〜〜〜〜


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