2021年3月3日水曜日

科学者18人にお尋ねします。宇宙には誰かいますか?

科学者18人にお尋ねします。宇宙には誰かいますか? 

 地球外生命体の可能性について18人の学者に話を聞いたアンソロジー。NASAが火星にPerseverance Roverを着陸させたことで話題になっている中で読めて良かった。(この動画、超テンション上がるので何か辛いこと、嫌なことがあった人はぜひ見てみて欲しい)
 

 この手の本は難しいことも多いけど質疑応答形式なので比較的話し言葉で説明してくれておりとっつきやすい。冒頭のウィスット・ポンニミットの漫画や2017年時点での「地球外生命の探しの今」と題して概況をざっくり説明してくれているのも助かった。
 学者と一口に言っても天文学者、生物学者、物理学者、化学者といった様々なバックグラウンドを持った人たちが登場していて、彼らが横断的に話していくことが地球における学問の進歩なのだという大きな話になっていて、MARVELのアベンジャーズのようなロマンがある。その中でも宇宙生物学(アストロバイオロジー)なる学問が近年構築されている。そこでは宇宙における生命の在り方について日々研究が進められているらしい。
 各学者が考えていることをそれぞれ述べるのではなく同じ質問に対して回答している点がミソだと思う。なぜなら各自の研究対象と地球外生命体の距離感が良くわかるから。まず生命の定義自体が十人十色なところからして興味深い。当然教科書的な正解はあるのだけど、宇宙に生命がいるとなるときにはどういう定義が適当なのかはまた別問題らしい。回答スタンスからSF好きなんだろな〜と思えたり逆に超リアリスティックな回答をしている人もいたり。分かっていないことが最も多いと言っても過言ではない分野だからこそたくさんの見解があってオモシロい。とはいえ様々な分野の人がこの研究にコミットできるようになったのは系外惑星の発見が大きな影響を及ぼしているらしい。もしその発見がなければ学会で「とんでも」扱いされていたという話もあり技術が発展することは大切なことだと改めて。
 地球外生命体との遭遇を考えるとき宇宙のことばかり考えがちだけど、人類が文明を長く維持して地球外生命体と遭遇する確率をあげることも重要だという話が印象的だった。(ドレイクの方程式の係数(L)になっている。)タイムスケールのめちゃくちゃ大きい話を軽々とこなしている学者の方々へのリスペクトとそういった思考をトレースすることで日々の煩わしいことが些細に思える副次効果もあった。これが本当の自己啓発なのかもしれない。 

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