2014年9月28日日曜日

ケープタウン



仕事でMADな気分だったので、映画を見て帰ろうくらいの
軽い気持ちで見に行きました。
オーランド・ブルーム主演くらいの前情報しか知らず、
見てみたら、とんでもないやないか!と度肝を抜かれました。
見終わった後の感触では、プリズナーズに近くて、
見てはいけないものを見たような気持ち。
多少設定に無理がある部分はあるものの、
その設定を生かしたドラマ、バイオレンスがオモシロいから無問題。
原題はZULUなんですが、邦題にあるように、
舞台は南アフリカのケープタウン。
オーランド・ブルームは私生活がだらしないけど、
やるときはやる敏腕刑事。
その上司をフォレスト・ウィテカーを演じています。
大統領の執事の涙で主演を務めていました)
ある日、植物園で女の子の死体が見つかり、
その遺体からドラッグが検出されるところから物語が始まります。
目撃証言や物的証拠を含め、ドラッグの売人が怪しいとなり、
捜査を進めていく中で、ドラッグシンジケートの存在まで
辿り着くものの…というお話です。
最初の事件捜査のところでは、何の変哲も無い刑事サスペンスかー
と思っていたところから、海岸での事情聴取で一変。
南アフリカの凶悪なバイオレンスと、
人が死ぬときはドラマティックなことなんて一切無いんですよ、
という本作内での死を定義するシーン。
あまりに痛烈で、心がグッと掴まれました。
南アフリカの治安の悪さは知っていたけれど、
ここまでとは思わなかったし、格差もえげつなくて、
さらに人種差別の歴史を背負っている国でもある。
これらの要素をふんだんに生かしていて、
舞台を南アフリカにしたところは、
目の付けどころがシャープだなぁと思いました。
ある種、無秩序な世界の中で、
2人が懸命に捜査していくのが中盤から後半で、
バディムービーとして気持ちいい。
それぞれ家族にまつわる背景を抱えていて、
物語全体の不穏な空気にマッチしていると思います。
ブルームのヨレヨレ刑事も意外にはまっているし、
ウィテカーの優しい側面がありつつ、
謎の深い闇が垣間見える感じが怖い。
前述した無理な設定というのはドラッグの部分。
このドラッグは摂取量によって、
取る行動や凶暴さが異なる訳なんですが、
これが鬱への特効薬に…みたいな流れ。
その治験で子どもが街から消えたって
いくらなんでも無理ない?大人で試せよとか思ったんですが、
終盤、復讐物語への流れで、
復讐する気持ち=ドラッグという構造が提示されていく。
前半で白人女性がウィテカーに人種差別の話をする前フリが効いて、
あんなに冷静で物わかりのよいウィテカーが、
復讐は犠牲者がただただ増えていくことが分かっているのに、
それが自分の目の前に差し出されてしまうと、
歯止めがきかない。まさにドラッグ。
その復讐を果たす砂漠をひたすら追いかけるシーンは、
しつこいぐらいに長くて、地獄を体感させられる。
サスペンスとしても十分楽しいし、多層的な構造、
強烈なバイオレンスに満ちた素晴らしい映画でした。

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