2014年9月15日月曜日


ガエル・ガルシア・ベルナル主演ということで。
仲のよい先輩がベルナル好きで、その影響を受けて、
彼が出てる作品は見るようになりました。
予告編で見て、これまでのよりは良さそうと思って見たら、
想像してた以上に興味深い作品でした。
最近ハリウッドのビッグバジェット映画ばかりを、
見ていたからかもしれませんが、社会派映画として、
相当なクオリティだと思います。
時代は1980年代、ベルナルはチリ在住の広告屋を演じています。
その当時、チリはピノチェト政権という
軍事独裁政権のもとで統治されていました。
1988年のピノチェトの任期延長の是非を問う国民投票までの
選挙活動を描いた作品です。
実話ベースのフィクションであり、
全編にわたってフィルムカメラを使い、
当時の雰囲気を表面的にも演出しています。
独裁政権なんで、反対派は握りつぶせばいいんだけど、
国際的なバッシングの中で民主的なプロセスを踏んで、
国際社会に認めてもらう必要があったという経緯があります。
普段のテレビはピノチェトべったりの放送なんですが、
投票までの27日間、反対派の宣伝番組を
1日15分だけ放送させてもらえることに。
その番組を任されたのが広告屋のベルナル。
反対派の人は迫害、暴力を受けてきた人達だから、
ピノチェト政権がこれまで行ってきた、
残虐行為にフォーカスした番組にしようとする。
いわゆるネガティブキャンペーンですね。
ベルナルはそれじゃダメだと一刀両断。
投票率を上げないと勝てないんだから、
もっと明るくてユーモアに満ちあふれたものにしようと訴える。
反対意見に晒されつつも、ポップなものや
ユーモアに溢れた番組を作り続けていきます。
ピノチェト側も出来レースと思っていたのに、
反対派の番組の出来に焦り出して、
番組対決は加熱していき…という話。
なにがオモシロいって堅苦しくて、ものが言えない空気を、
広告手法のユーモアで打破していくところ。
そのユーモアに政権側までも影響されていくのは痛快。
しかも、政権側の番組担当が職場の上司という、
師匠対決になるのもナイス!
選挙番組も流れるんですが、それが逐一オモシロい。
アイロニー成分高めのものから、ユーモア成分高めのものまで。
日本人の僕が声だして笑っちゃうくらいに普遍性がある。
ベルナルは徹底的に広告屋の流儀にそって進めようとするけど、
やっぱり選挙対決ということで政治的メッセージを乗せようとする
ディレクターもいるんだけど、
「ユーモアが絶対に必要なんだ!」と頑なに譲らない。
(民主主義という言葉は気持ち悪いというセリフが印象的)
「人を動かす」という、まさに広告の力が問われるところで、
結果が出せなかったら、自分の仕事の意味がないという
脅迫観念に駆られているようにさえ見える。
見てる間に思ったのが、これが反独裁だったから、
良きことのように思えるけど、逆だったら?ってこと。
シングルイシューで反既得権益という皆が分かりやすい形で、
大勝を収めた小泉政権なんてのもありましたが、
彼の作った仕組みで現在苦しんでいるのは、
そのときに自民党に投票した人だったりする訳で。
したがって、安易に分かりやすいことが良いとは思いません。
こういった意見に対する回答が終盤のベルナルの表情。
結局のところ、彼の広告手法のおかげで、
ピノチェトを政権から引きずり落とすことになります。
TVの速報で皆が喜んでいる中、
ベルナルは静かに選挙事務所を後にするんですね。
このときの表情が何とも言えない感じで…
色んな解釈ができるので、そこも楽しめるポイントだと思います。
良い言い方ではないかもしれないですが、
こういった大衆煽動を映画という「のぞき」の視点、
客観視することで見えてくることは多分にあります。
今の日本の現状と変わらない部分もあって、
そこが気持ち悪かったりするんですが…
政治のことを考えるキッカケにもなるし、
作品としてもオモシロいので、選挙前とかに見て欲しいと思います。

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