2015年2月18日水曜日

味園ユニバース



山下敦弘監督最新作ということで見てきました。
まだまだフィルモグラフィーは全部見切れていませんが、
少しずつ見進めています。
山下監督といえば現在放映している、
山田孝之主演のモキュメンタリー
「東京都北区赤羽」も抜群にオモシロいので
まだ見られていない方は是非に。
肝心の本作はというと、僕が大阪出身で
これを東京で見ると郷愁を覚えざるを得ない。
しかも、舞台が味園ユニバースで、
ユニバース自体は1回ぐらいしか行ったことがないけど、
味園ビルによく行っていた時期がありました。
その頃とかも思い出したりしちゃって、
少しおセンチな気持ちになったりね〜
関ジャニ∞の渋谷すばる演じる茂雄(a.k.a ポチ夫)が
刑務所から出所したところを何者かに襲われて記憶喪失に。
そんな彼をライブスタジオを経営しつつ、
赤犬のマネージャー兼PAのカスミが引き取ります。
(カスミを演じるのは二階堂ふみ)
共同生活が始まると同時に、
茂雄を赤犬のボーカルに据えようとするものの…っていう話。
冒頭、出所のシーンから始まるんですが、
背後からのワンショットでぐーっと見せてくれるし、
壁が異様に大きくてアメリカの刑務所みたいなのも
アガるなーと思いながら見ていました。
明らかにカタギではない人(天竺鼠!)に出迎えられ、
帰路につくものの襲われて記憶喪失。
公園で寝てたところ、赤犬のライブに引き寄せられて、
おもむろにマイクを取り歌い出す…
正直、関ジャニ∞の渋谷すばるが主演ってことで
なめてる人が多いと思うんですよ。
僕も果たしてどのレベルで歌の映画やるつもりやねんと。
そんな舐め腐ったクソ野郎どもに
冷水を浴びせかけるかの如く、
渋谷すばるの歌い出しの素晴らしさがハンパない!
歌うのは和田アキ子の「古い日記」
「あの頃はっ!」のソウルフルでブルージーなシャウトを
アカペラで披露するんですが、
僕はここで完全に心を鷲掴みにされると同時に、
舐めてて本当にすみません!と心の底から思いました。
そして歌だけに限らず、
大阪のガラの悪いゴロツキをきっちり演じているのが、
およそジャニーズとは思えなくて最高!
ガンガンどつかれるし、どつき倒す。
不器用な生き方しかできないブルースを
文字通り体現しているのが良かったなーと思います。
前半は記憶を喪失した人として、
割とファンシーな感じで演技しているので、
その対比で余計に後半のガラの悪さが際立つ作り。
二階堂ふみは大阪弁どうなんかな〜と思っていましたが、
違和感が一切なくて、どの作品見てもこの人が出ていると、
きっちり映画が成立するという意味で素晴らしいなと改めて。
彼女が劇中で何度も放つ「しょーもな」というセリフは
クライマックスで意味を持って結実するのが好きでした。
茂雄とカスミの掛け合いも面白くて、
恋愛関係にはならないパートナーということに好感を持ちました。
2人での共同生活の丁寧に暮らしている様子が印象的で、
とくに朝ご飯がめちゃくちゃ美味しそうなんですよね。
マイメンのMatsumaeとも以前話していたんですが、
ご飯をむしゃむしゃ食べるシーンって非常に重要で、
それだけで 映画が持つ説得力が増すんですよね。
あと家の縁側でスイカの種を飛ばすワンカットのシーンは、
めちゃくちゃ叙情的で最高最高でした!
後半にかけては茂雄の過去が明らかになりつつ、
彼自身の記憶も戻ってくる。
その過去についても説明を比較的省略していて、
あくまで文脈の中でしか語られない。
この辺もワビサビ効いてて好きでした。
茂雄の父親との関係を繋ぐのが歌であり、
それが和田アキ子の「古い日記」な訳です。
しかもテープで…っていうところもイイ!
でも、茂雄は自分の気持ちに正直になれず、
本当は歌いたいんだけど悪の道を再び歩み始めてしまう。
自分にとって意味のないことだとしても、
他者にとっては意味があることもある、
というテーマは良かったんだけど、
終盤の脚本の甘さは気になりました。
(茂雄がステージに立つと決心するロジック)
ラストに歌う曲は確かに多幸感があって悪くないんだけど、
関ジャニ∞の曲の延長でしかないというか…
せっかくソウルフルな歌声を持っているのに、
もったいないなーと思いました。
魅力的な瞬間が多いので、是非映画館で!

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