2015年2月15日日曜日

ラブストーリーズ エリナーの愛情(Her) / コナーの涙(Him)


予告編を見たときに1つのラブストーリーズを
男/女の視点の両方から描いた2本立てという宣伝に
惹かれて2作連続で見てきました。(100分+95分)
1本目を見終わった後に、
話の中身を全部知っている状態から
2本目を見る訳で果たしてどうなんかなーと思っていたら、
これがとんでもなくオモシロかった!
こんなに多層的なラブストーリーは見たことがありません。
1本目にどちらの作品を見るかによっても
全く印象が異なるような作りになっています。
2本目を見始めたときに、
「そのとき彼/彼女は実は…」とかすれ違いを描くのまでは
想像がついたけれど、2人で共有している思い出を
男視点と女視点で微妙に異なる内容になっているのが、
映画のテーマともバッチリ合っていて深いな〜と。
ゴーン・ガールでも描かれていましたが、
他者が何を考えているか、感じているかなんて分からない。
ゆえに他者を最大限尊重し、想像力を働かせなければならない。
夫婦という最小単位の社会ではより大切になってきますが、
最近のイヤな世間の空気を考えると、
普遍的に考えなければならない話だと思います。
これはOnce Againものでもあり、
如何に喪失から再生していくかが男女で異なるのも
グッとくるポイントでした。
あと苦難が訪れたときに2人で力を合わせて乗り越えよう!
みたいな方法ではなく、距離を取って、
問題を解決しようとする姿勢が極めてリアリスティックで
そこも好感を持ちました。(しかもラブストーリーで)

原題はThe Disappearance of Eleanor Rigby。
女性の主人公名がEleanor Rigbyで、
これはThe Beatlesの曲名です。
その曲中の
というリリックから本作を着想したとのこと。
男サイドの副題がHim、女サイドがHerとなります。
ちなみに僕はHer→Himの順番で見ました。
僕自身が男ということもあるのか、見た順番なのか、
Himサイドの方が好きでした。
お話としては単純で、ある夫婦には子どもがいたんだけど、
その子どもが亡くなってしまったことで2人は別居。
子どもの死から2人が再生していく過程を
男女の視点で分けて2本の映画で描いた作品。
それぞれの物語の始まり方からして、
2人の世界の捉え方の違いがよく分かる。
Herの方はジェシカ・サスティン演じるエリナーが、
ヤク中か!というレベルの顔色が悪い状態で、
橋の上を自転車で走るショットから始まり、
橋の上から身を投げて自殺未遂を起こしてしまう。
一方でHimの方は2人で食い逃げしーの、
公園でイチャイチャという極上甘酸シーンから始まります。
(コナーはジェームズ・マカヴォイが演じています)
過去を捨て、イチからやり直そうとするエリナーと
過去を受け止めながら何とかもう一度やり直そうとするコナー
この冒頭だけでも2人のスタンスの違いが
よく分かる作りになっているし、
上記シーンが互いの作品でどのような使われ方をしているか、
それ自体も意味を持ってくる。
エリナーは大学教授の父のコネもあり、大学で授業を受け始めます。
コナーは自らの経営するレストランの運営が上手くいかない中でも
エリナーの行方を探そうと画策する。
これらの通常のラブストーリーなら何気ないシーンにも関わらず、
追う/追われるの構造を持ち込むだけで、
そのシーンが持つ意味が多様化していくのは興味深かったです。
2人とも別居のため実家に帰るんだけど、
家族の力を借りようとはせず、自らの力でなんとかしようと、
日々の生活をStruggleしていきます。
それは自分たちが失ったものであるがゆえのことなんでしょう。
しかし、弱っている彼らにとって家族は唯一無二の存在で、
その触れ合いを通じて己を取り戻していく。
特にコナーと父親の関係性が好きでした。
愛憎入り乱れつつ、男2人で生きてきた
それは死線をくぐり抜けてきた戦友さながらの雰囲気。
金魚を弔うために向かった海での2ショットは大好きでした。
(男は背中で語れてなんぼとはまさにこれ!)
エリナーには家族に加えてキーとなるのが大学講師。
彼女自身は結婚して子どももいるけど何年も会っていない。
はじめ、家族が彼女のことをハレモノのように扱うのに対して、
何も知らない彼女は遠慮なく意見を述べてくることに、
はじめは不安を覚えつつも「子どもを亡くした人」
というレッテルから解放される彼女の
生き生きとした表情が印象的でしたね。
ドライブデートが本作の一つのキーで、
物語の中盤でエリナーがコナーの店を訪問し、
そこから2人で目的地の無いドライブを始めるんですが、
豪雨で立ち往生してしまう。そこでいい雰囲気になるものの…
っていうね〜このデートが始まるまでの流れがポイントで、
このドライブデートはエリナーにとって、
コナーと過ごしたかけがいのない思い出の一つな訳です。
「同じことをすれば、もしかしたらあの頃の気持ちが…」
というテンションで挑んでいる訳です。
一方のコナーはその思い出のことを特に気にしていない。
自らが大切だと思っていることは必ずしも他人が大切に
思っている訳ではないというテーマがどーんと押し寄せる。
しかも、この悲惨な結果に終わるドライブデートは、
HerとHimで微妙に異なっている。
単純に視点、カット割りが異なっている作品ではなく、
2人の思い出ベースで作られているがゆえの仕掛け。
こんなん見たことないよ!!
コナーが引っ越す直前からラストまでの流れも
2作間で異なる部分が多くて楽しかったなー
ラストこそどっちを先に見るかで全く印象が異なると思います。
見た目で敬遠している人にも大推薦の傑作!

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