2014年12月23日火曜日

毛皮のヴィーナス



ロマン・ポランスキー監督最新作。
2年前に見たおとなのけんかが相当好きで、
DVDを購入し繰り返し見ています。
(本当は過去作見なきゃなんですが…)
おとなのけんかも登場人物4人の密室会話劇だった訳ですが、
本作もそれと地続きで、さらにミニマル化が進み、
登場人物は2人だけで、場所も劇場のみ。
間延びする瞬間もあるものの、極めて演劇的な作りで、
演技論にまで足を踏み入れるような作品で、
見ながら考えさせられまくりでした。
舞台はパリの小劇場。
そこで脚色家のトマがオーディションをしてたんだけど、
どうにも目当てな人が見つからない。
あきらめて帰ろうとしたところで、
年増のイタめなおばさん女優ワンダがやってきて、
オーディションを始めて…という話。
前半はおそろしくテンポが早い会話で、
2人の小気味いい丁々発止のやり取りが描かれます。
トマは約束あるから早く帰りたいのに、
ワンダがめちゃしつこくて、
何を言っても、こちらの意図が通じない感じが絶妙で、
良い意味で相当イライラさせられました。
懇願というより「オーディションやるっしょ?」みたいな。
あまりにしつこいから、トマも
「3ページだけやで」と言い、渋々始めてみたら、
ワンダはトマが追い求めていた演技を披露する。
演劇の題目がマゾッホという作家の毛皮のヴィーナス。
マゾヒズムの語源となった作品で、
ざっくり説明すると、男性が女性に対して、
支配を要求するような内容。
そもそもこの2人の関係は、
女優を使う側/女優として使われる側な訳ですが、
演劇中のSとMの支配関係が現実世界にも反映され、
徐々に関係性が逆転していくのがオモシロい!
SMプレイと演劇を内混ぜにするという発想が素晴らしい。
オーディションという形なので、
初めのうちは演劇上の役に入っているときと、
入っていないときが明確なんだけど、
Sadistとしてワンダが主導権を握るところから、
演技と現実の境界が曖昧となります。
見ている観客の脳は、溶けていくかのような感覚に陥る。
ずーっと2人で喋って舞台稽古しているだけなので、
退屈といえば退屈なシーンもあります。
でも、なんとなく見てたらシームレスに役割が変わっていく。
この辺は巨匠ならではなのかなーと。
終盤は性別さえも超越していきます。
しかも、今まで知性の欠片もなかったワンダに、
おだてられるがままに調子乗ってしまった結果、
取り返しがつかない事態に陥ってしまいます。
悲しい男のサガとでも言うべきでしょうか。
「演技だよね?演技だよね?」と言っても、
時すでに遅しで、悪夢のようなラストを迎える。
早急にポランスキー監督の過去作を見たいと思います。

0 件のコメント: