2013年11月4日月曜日

ばしゃ馬さんとビッグマウス





「好きなタイプの芸能人は?」という質問に対して、
ここ5年くらい「麻生久美子」と答えている私なので、
当然見に行きました公開初日。
しかも監督が吉田恵輔氏。
「純喫茶磯辺」「さんかく」とオモシロい作品ばかりでしたが、
僕は本作が一番好きな作品でした。
宣伝から受けるイメージはホンワカしてますが、かなり厳しいです。
なぜなら、良い歳の大人が夢をあきらめる過程を
丁寧に見せつけられるからです。
それと同時に、その潔さみたいなのも
伝わってくる不思議なバランスの映画でした。

主人公は30代の脚本家志望の女性。
コンテストに出してるけど、万年一次審査落ち。
お洒落や恋愛にも興味は無く、夢へむかって邁進中。
でも、にっちもさっちももいかないから、
シナリオスクールに通い始める。
そこで出会うのがビッグマウスの男。
これまで1回も脚本は書いた事はないけど、
口だけはイッチョマエ。
これを関ジャニ8の安田君が演じてます。
最初、この映画の宣伝を見たときに
この要素だけが嫌だったんですが、見てみると
どんぴしゃのハマリ役でした。
(あるシーンのTシャツの横文字に要注目!)
僕の思う関ジャニ8像と役が合っていたと思います。
この2人の存在が対照的で、麻生久美子はまさにばしゃ馬。
要領が悪い分、質より量って感じで書きまくり。
一方、安田君は口だけで何にも書かない。
この2人の立ち位置が映画を通じて変化していくのが
とてもオモシロかったです。
何よりも麻生久美子の痛々しさ。
「モテキ」のときの比じゃなかった。
一番キツかったのは、結婚式の余興のところ。
(あぁぁー!!!って映画館で叫びそうになりましたw)
自分には才能がないのかもしれないと薄々気づいてるけど、
なりふりかまわず、がむしゃらに脚本作成に取り組む。
このカウンターとなるのが、元カレの岡田義徳。
過去に俳優を目指していたけど、
あきらめて介護施設で地道に働いている。
そこへ脚本の取材をかねて、
麻生久美子がボランティアで働き始める訳ですが、
要領悪いし、彼の仕事をなめた感じがある。
結果、目も当てられない事件を起こしてしまう。
このなめたところや定石にすがり正論を説く部分を
岡田義徳や安田君からびしばしと指摘されてしまうんですね。
一方で、安田君は書いていないんだから、
言う資格ねぇ!といわれて、一念発起して脚本を書く。
これまでビッグマウスだったんだけど、
コンテストに応募し、落選することで
「ものづくり」の大変さを痛感する。
このシーケンスは最高でした。

あと小ネタもオモシロいのがてんこ盛り。
とくに映画監督のくだりは
最近のTV主導の映画に対するカウンターとして抜群。
実際にあんなやついるんだろうな〜という実在感込みで最高。
脚本に関する映画なので、メタ構造をはらんでいるんですが、
それを利用した映画の作りもフレッシュ。
ト書きと実際のシーンがカットバックになってたり、
麻生久美子が最後に書く脚本が本作というところとか。
誰もが信じて努力すれば、夢が叶うという
フィクションの果実はとても魅力的だし、嫌いじゃないです。
でも、「本当にそうですか?」
そして、夢を追いかけているあなたは「そのままkeep onできますか?」
と、この映画は問うてきます。
コメディでもあるし、ラブストーリーでもありますが、
この自意識の突き詰め方、突き放し方は色んな人に見てほしいです。
見た目で敬遠しないで、是非!

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