2013年11月16日土曜日

Like Someone In Love



某先輩の2012年1位と聞きまして、見てみました。
結果、ホントに素晴らしい作品でありました。
アッバス・キアロスタミというイラン人の監督なんですが、
日本が舞台となっています。
登場人物はデリヘル譲と、その彼氏、
デリヘル譲を話相手として呼ぶ大学教授。
この3人の微妙な人間関係が描かれています。
説明を一切排除した 超ミニマルな構造も特徴的ですが、
なんといっても本作の特異点は撮り方です。
映画見てるときにカット割りなど、
その撮り方までは気にして見れていませんが、
本作が明らかに普通じゃないことは誰が見ても分かると思います。
冒頭はバーのワンショットから始まって、電話の話声が聞こえる。
でも、その画の中に写っている人が喋っている訳ではなくて、
画面に映ってない人の声なんですね。
そこから、でんでんが出てきて、女性と喋り始める。
映画全体に共通するんですが、
2人の人間が話すときはカットバックさせたりして、
しゃべっているところを引きで撮っているショットは一切無い。
今度は逆に、デリヘル譲が大学教授のところへ、
出勤するシーンではしつこいぐらいの長回し。
デリヘル譲のおばあちゃんからの留守電をBGMに
東京のillな街中を走り抜ける。
(新宿のローターリーを回るところは、切なくて死にそうになった)
物語は地味だけど、撮り方のメリハリが効いてるから飽きない。

デリヘル譲は大学教授のもとへ行く訳なんですが、
この教授が良い案配のおじいちゃん。
家族はいてるけど、別々の場所で暮らしている。
話相手が欲しくて、デリヘルサービスを利用してるんですね。
園子温監督の「紀子の食卓」に近いニュアンス。
この2人は本当の家族よりも擬似的な関係性に重きを置いている。
(置き方は全然別ベクトルですが)
それが良い/悪いの話じゃなくて、
そういう関係性もありじゃね?っていうスタンスは好きだったなー
なんしか、教授が彼女を迎えるためにしてた準備や、車での送り迎えとか。
ものすごい幸せそうにやってる訳ですよ。愛おしい。
そんな中で彼氏がやってくる。加瀬亮が演じてます。
この彼は理論があるようでなくて、しかも、他人と対話する気がない。
彼と教授の結婚論は最高。理想vs理論。肝に銘じたい。
最後は怒濤の展開を見せる訳ですが、
実はこの映画にはBGMがないんです。
最後まで比較的落ち着いたトーンで進んでた物語が
近所のおばちゃんの独白あたりからエンジンかかってきて、
最後ドーン!で終わる。そこで流れるのが、この曲!
抑制しまくったあとに聞くElla Fitzgeraldの歌声の多幸感たるや…
変な映画だけど、愛さずにはいられない。

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