2016年3月19日土曜日

軽率の曖昧な軽さ

軽率の曖昧な軽さ

中原昌也最新作ということで読みました。
いつも通りというか、
中原昌也の小説を読んでるなぁと実感できる
楽しい時間を味わいました。
荒唐無稽にも程がある話は、
一体どこに向かうんだろう。。
というオモシロさと若干の不安を与え、
その磁場が歪んだ中でハッとさせられる文章が
紛れ込んでいるのが好きなんですよねー
中原さんは小説の中に自分の考えを
かなり入れ込むタイプの作家だと思います。
社会で嫌だなとか変だなと思うことに対して、
鮮やかにエグり取るパンチライン力が素晴らしく、
その考えに僕はかなり共感しているので、
毎回読んでいて、そうそう!と共感しています。
短編集なんですが、タイトルにもある、
「軽率」という話が一番ボリュームがあって、
結果的には一番好きな話でした。
ある作家が街を彷徨い歩き、
出会った人々との奇妙なやりとりを描いているんですが、
どれもキャラクターが強烈。
極端にデフォルメしているけど、
それぞれのキャラクターが持つ本質的な部分は
現実社会でも見ることがあるので他人事じゃないなー
と思ったりしました。
あと表現でかなりグッときたものがあって、
無表情であることをこんな風に描いています。

家の表札に本来書いてあるべき「石田」の文字すらなく、
代わりにただのカマボコの板が打ち据えてあるかのようだ。

なんなん、この感覚!と思わざるを得ません。
中原昌也作品を端的に示しているのが、
前作の知的生きかた教室の加瀬亮による
名帯文だと思いますので、
これを読んで気になった人はオススメです→リンク

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