2016年3月1日火曜日

ヘイトフル・エイト




大雪のため閉ざされたロッジで繰り広げられる

密室ミステリーを描いた西部劇。
全員が嘘をついているワケありの男女8人が
雪嵐のため山小屋に閉じ込められ、
そこで起こる殺人事件をきっかけに、
意外な真相が明らかになっていく。
映画.comより)

タランティーノ監督最新作ということで、
公開初日に見てまいりました。
公開前から評判の高さは聞いていましたが、
タランティーノ節炸裂しまくりで最高最高!
西部劇ということで、
前作のジャンゴに続く流れにあるんですが、
ただの西部劇ではなく今のアメリカのムード、
つまり、Black lives Matterのエッセンスが
入っているところが流石だなーと思いました。
それを100%のエンタメでやり切ってしまうんだから、
たまんねぇーなおい!って感じでした。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。


雪山を背景に木彫りのキリストなめのショットと共に、

厳かなストリングスの音楽が、
鳴り響きながら映画は始まります。
本作のスコアを務めたのは、なんとエンニオ・モリコーネ!
タランティーノが大好きなマカロニ・ウエスタンの
諸作品のスコアを務めた訳ですが、
その音楽をこれでもかと爆音で聞かせる作りになっています。
もともとタランティーノ作品において、
彼の音楽はたくさん使用されてきた訳ですが、
初めてのオリジナル曲ということで、
相当気合入ってるんだろうな!と思わせる冒頭でした。
(そして本作がアカデミー賞の作曲賞を受賞!)
4つのチャプターで構成されている作品なんですが、
前半2つが事の始まりから全体像まで、
後半はそのネタばらしになっています。
馬車が雪山の中を走っている中、道の真ん中に居座り、
積み上がった死 体に腰かけた黒人の男。
それが賞金稼ぎのウォーレン、
演じるのはサミュエル・L・ジャクソン!
このファーストショットでもうたまらんっ!
馬車の中にいるのはカート・ラッセル演じるルース。
彼も賞金稼ぎで、連れているのは1万ドルの賞金首。
その後、保安官と名乗る男を乗せつつ
吹雪を凌ぐために山小屋へ流れ込むと、
そこには4人の男が待ち受けていて、
それぞれの背景が判明しつつ駆け引きが始まっていきます。
このパートがひたすら会話会話で、
好き嫌いは分かれるかもしれませんが、
タランティーノ好きにはたまりません。
ここでテーマとなるのが南北戦争。
ざっくり言うと奴隷制に反対した北部と
賛成とした南部が戦った戦争です。
小屋の中で北軍と南軍にいたもの達が同居する中で、
1人黒人のウォーレンは n*ggaと呼ばれ、
下手すると殺されるかもという状況になります。
南北戦争は19世紀の出来事なんですが、
奴隷制をベースとしたアメリカの人種差別問題は、
丸腰の黒人を白人警官が撃ち殺してしまう事件が
近年多発したことにより、現在進行形の問題となっており、
Black lives matterという
カウンタームーブメントが起こっています。
これらの動きに対するタランティーノ流の回答なのでは?
と僕は感じました。
つまり、イングロリアス・バスターズから始まる、
史実で辛酸を舐めた側が復讐するという構造を使って、
黒人が丸腰の白人を撃ち殺すことを描いています。
(銃を取り上げる描写をいちいち描いているところも、
それゆえの言動なのでは?と思います。)
西部劇でメキシコ人が出てくることって
あまり見られないことだと思うんですが、
それはタランティーノが密室内を
アメリカに見立てていることの証だと思います。
当然登場人物内の善悪は存在するし、
これまでの作品と同様、勧善懲悪の流れで、
トータルで見れば報いを受けるべき人間と分かるんですが、
途中までは背景が見えないので、
一方的に殺しているように見える訳です。
「白人よ分かるか?」と問うているような。。。
密室劇はキャラクターが立ってないと飽きてしまうですが、
キャラ立ちはもちろん抜群!僕はルースが大好きで、
殺して持っていけばいいのに、生け捕りにして首吊らせるんや!
という謎の漢気がとても魅力的でした。
タランティーノの作った映画ですので、
バイオレンス描写もこれでもか!と見せてくれます。
とくに銃で顔をぶっ飛ばす描写が
最近見ない感じでフレッシュだなーと思いました。
後半にどんでん返しの展開があって、
そのトリガーとなるのがチャニング・テイタム!
美味しいところ持っていくんですよね〜
コメディ俳優として現状最高峰だと思います。
(このあいだのビヨンセのLIPSYNCも最高最高!)
後半の展開において裏切りフラグが立つんですが、
決して肌の色で選ぶことはなく、
あくまで理知的な判断で物事が進む点も良かったです。
ラストは一番悪い奴のハンギングを楽しむという
ざまぁ!な展開で大団円。
もう少し前半をアップテンポにしてもらって、
全体の尺が120分くらいだったら大傑作でした。

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